説明

水中植生装置

【課題】外部から水中の水深を調整できる水中植生装置を提供する。
【解決手段】プランタ本体10と重量調整体20によって構成する。プランタ本体10は、内部に凹設した植生槽11と、植生槽11の底部備えた係合穴12によって構成する。重量調整体20は、中空容器21と、その上部に形成した鍔状の係合蓋22とによって構成する。中空容器21には、その内部に外部から注水、排水できる注排水管13を取り付けて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川や湖沼、海洋等の植生技術に関し、より詳細には、水中の生態系を修復するための水中植生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水生植物、例えば海草類が群生する藻場は、水質浄化及び生態系維持の観点から非常に重要である。しかしながら、近年、水質汚染や沿岸海域の埋立て事業の促進等によってこのような藻場の消失が著しい。
このため、人工的に代替藻場を造成するなどして回復を図っている。
その例として、特許文献1記載のような水中植生工法も開発され、実用化されている。
この特許文献1記載の発明は、失われた生態系を効率よく修復することができ、埋立て工事の時間的影響を受け難く、低コスト化が図れる、という特徴を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−136282号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記したような従来の水中植生工法に使用する装置にあっては、海洋に浮かせてアマモなどの水中植物を育成するものであるが、重心が高いために台風の波浪で転覆、破損、流出の可能性があった。
台風の場合に限らず、浮力の調整によって装置の深度を調整したい場合に、その作業のためには、作業員が水中植生装置に搭乗してから行わなければならない、という非効率性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような課題を解決するために、本発明の水中植生装置は、プランタ本体と重量調整体によって構成し、プランタ本体は、内部に凹設した植生槽と、植生槽の底部に備えた係合穴によって構成し、重量調整体は、中空容器と、その上部に形成した鍔状の係合蓋とによって構成し、係合穴の内形は、中空容器の外形より大きく、係合蓋の外形より小さい形状に開口し、中空容器には、その内部に外部から注水、排水できる注排水管を取り付けて構成したものである。
また、中空容器には、外部から重量体である砂などを供給できる充填筒を設けて構成することもできる。
注排水管の海上側の端には、注排水用のポンプを取り付け、このポンプには遠隔操作ができる駆動源を取り付けて構成することもできる。
【発明の効果】
【0006】
本発明は次の効果のうちの少なくとも一つを達成することができる。
<1> プランタの係合穴に嵌合して吊り下げた中空容器の重量調整が可能である。そのために、重心が低くなり、常に安定した状態を保つことができ、波浪の影響を最小限に抑えて、転覆の危険を回避することができる。
<2> 中空容器の内部への水の供給と排水によって、中空容器の重量の調整を外部から行うことができる。そのために台風の来襲前に、中空容器に注水して重量を増加させて海中に沈めておくことができる。また台風などの過ぎ去った後には。中空容器から排水して重量を軽減させて最適温度の深度まで装置を上昇させることができる。さらに水中植生装置を海面まで浮上させ、曳航して静穏域等へ移動することもできる。
<3> プランタ本体と重量調整体を別構造としておけば、水中植生装置の製作、運搬、現場での設置が容易であるだけでなく、これらのすべての人力施工が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の水中植生装置の実施例の分解した説明図
【図2】静水時の水中植生装置の状態の説明図
【図3】台風時の水中植生装置の状態の説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0009】
<1>全体の構成。
本発明に係る水中植生装置は、水中植物を育成するプランタ本体10と、プランタ本体10に取り付けた重量調整体20で構成する。
両者は分割して製造し、現場の近くで、プランタ本体10に重量調整体20を嵌合して一体化することができる。
そのために、製造、運搬、保管が容易である。
【0010】
<2>プランタ本体10。
プランタ本体10は、水上、水中に位置させる軽量な容器である。
そしてその内部を凹設して、浴槽状の植生槽11を形成する。
植生槽11の内部には植生基盤3040を充填して水中植物の育成に供する。
ここで、水生植物とは、海草藻類等の海洋に生息する植物や、河川や湖沼などの生息する植物を意味する。
植生基盤3040とは、水生植物を生育するために根付かせるための基盤30である。
例えば、水生植物が砂泥性海草藻類の場合には、植生基盤3040材を砂泥とすることができ、水生植物が岩礁性海草藻類の場合には、植生基盤3040材を岩礁とすることができる。
プランタ本体10の植生槽11の底部には一定の寸法を有する係合穴12を開口して、外部まで貫通させる。
【0011】
<3>中空容器21。
中空容器21は、バケツ状の筒体である。
中空容器21の形状は、一般のバケツのような円筒形でも、角柱形でもよい。
中空容器21の上部は蓋板で閉塞するが、この蓋板を外方に鍔状に張り出して、これを係合蓋22として形成する。
【0012】
<4>中空容器21の係合。
係合穴12の内形は、中空容器21の外形より大きく、係合蓋22の外形より小さい形状に開口する。
そのために、係合穴12の内部に中空容器21をつり下ろして嵌合することができ、係合蓋22によって植生槽11の底部に係合することができる。
【0013】
<5>注排水管13。
中空容器21には、その内部に外部から注水、排水できる注排水管13を取り付ける。
さらに中空容器21の上部は係合蓋22で密閉しているから、注水量に応じた内部の空気の排出のために、排気管14を取り付ける。
そのために、係合蓋22には両管体の貫通孔を開口する。
【0014】
<6>充填筒23。
中空容器21への重量付与を水だけで行うには不十分である場合には、中空容器21の内部に砂や砂利等の重量物24を投入することもできる。
その際には中空容器21の係合蓋22を貫通した充填筒23を設ける。
この充填筒23を介して、中空容器21の外部から重量体である砂などを供給することができる。
【0015】
<7>注排水機構。
注排水管13を介して水を供給し、あるいは排水するために、注排水管13の海上側の端には、注排水用のポンプを取り付けることもできる。
さらに、このポンプに遠隔操作ができる駆動源を取り付けて構成することもできる。
そうすると、プランタ本体10に搭乗しないで、遠方からポンプを駆動して中空容器21内に水を供給し、あるいは排水して重量を調整し、プランタ本体10の沈降、浮上を行うことができる。
【0016】
<8>組み立て。
上記したプランタ本体10の係合穴12に中空容器21を吊り下げて水中植生装置を完成させる。
組み立て後は、水や重量物24を収納した中空容器21は、プランタ本体10の底面よりも下に位置する。
そのために装置全体の重心が低くなり、水中で安定した姿勢を保つことができる。
【0017】
<9>静水時。(図2)
台風などの影響のない静水の場合には、上記した構成のプランタ本体10をフロート15に係留して係留索の長さを調整して水中の最適な水深位置に浮遊させる。
最適な水深とは、温度、栄養素、流れの速度などによって決まる。
注排水管13と排気管14は、フロート15などに取り付けて水上に位置させておく。
この注排水管13から供給、排水する中空容器21内の水量の調整によって、浮遊深度を調整することができる。
【0018】
<10>台風の時。(図3)
台風、その他で水面が乱れることが予想される場合には、事前に注排水管13を船舶や陸上のポンプに接続し、この注排水管13を通して中空容器21内に水を供給して重量を付与する。
こうした外部からの調整によって、プランタ本体10の浮力を調整することができ、その水深位置を調整できる。
台風などが去った場合には、注排水管13を通して中空容器21の内部の水を排除して重量を低減してプランタ本体10を上昇させることができる。
これらの水の供給、排水を無線操作で駆動するポンプによって行うように構成すれば、プランタ本体10に接触しない、遠距離からの操作によって水深の調整を行うことができる。
逆に水中植生装置を浮上させて静穏域に曳航して移動することもできる。
【符号の説明】
【0019】
10・・・・・プランタ本体
11・・・・・植生槽
12・・・・・係合穴
13・・・・・注排水管
14・・・・・排気管
11・・・・・植生槽
21・・・・・中空容器
22・・・・・係合蓋
23・・・・・充填筒
30・・・・・植生基盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランタ本体と重量調整体によって構成し、
プランタ本体は、内部に凹設した植生槽と、植生槽の底部備えた係合穴によって構成し、
重量調整体は、中空容器と、その上部に形成した鍔状の係合蓋とによって構成し、
係合穴の内形は、中空容器の外形より大きく、係合蓋の外形より小さい形状に開口し、
中空容器には、その内部に外部から注水、排水できる注排水管を取り付けて構成した、
水中植生装置。
【請求項2】
前記の中空容器には、外部から重量体である砂などを供給できる充填筒を設けて構成した、請求項1記載の水中植生装置。
【請求項3】
前記の注排水管の海上側の端には、注排水用のポンプを取り付け、このポンプには遠隔操作ができる駆動源を取り付けて構成した、請求項1記載の水中植生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−200121(P2011−200121A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67644(P2010−67644)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000229128)日本ゼニスパイプ株式会社 (31)
【Fターム(参考)】