説明

水中油型シリコーンエマルジョン組成物

【課題】 貯蔵安定性に優れ、錫触媒を使用しなくても水分を除去することで十分な弾性を有する硬化皮膜を形成し得る、低分子量シリコーンの含有量の少ない水中油型シリコーンエマルジョン組成物を提供する。
【解決手段】 (A)ケイ素原子に結合した水酸基または加水分解性基を1分子中に少なくとも2個有するポリオルガノシロキサン100質量部、(B)コロイダルシリカ0.1〜200質量部、(C)イオン性乳化剤1〜100質量部、(D)ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合型ノニオン乳化剤0.1〜50質量部、および、(E)水10〜500質量部からなる水中油型シリコーンエマルジョン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中油型シリコーンエマルジョン組成物に関するものであり、詳しくは、コロイダルシリカを含有する貯蔵安定性に優れた水中油型シリコーンエマルジョン組成物に関するものであり、さらに詳しくは、錫触媒を使用しなくても水分の除去によってシリコーンエラストマーに変化し、十分な強度、すなわちゴム状の弾性と基材に対する密着性を有する硬化皮膜を形成する、コロイダルシリカを含有する貯蔵安定性に優れた水中油型シリコーンエマルジョン組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水分の除去により、離型性、剥離性、撥水性、防汚性、耐熱性を有する硬化皮膜を形成する水中油型シリコーンエマルジョン組成物は、塗料、ペーパーコーティング剤、離型剤、剥離剤、繊維処理剤、化粧品などに使用されている。近年、硬化触媒として錫触媒を使用しない水中油型シリコーンエマルジョン組成物が求められ、ヒドロキシル基含有ジオルガノシロキサン、シリコーンレジン、およびアミノキシ基末端ジオルガノシロキサンからなる組成物(特開平06−73291号公報参照)や、ヒドロキシル基含有ジオルガノシロキサンや架橋剤として側鎖にアミノキシ基を有する線状シロキサン、環状アミノキシシロキサン、アミノキシシラン、及びそれらの部分的加水分解生成物から選ばれる化合物を混合後、乳化した組成物(特開平11−193349号公報参照)などが提案されている。しかし、これらの組成物は、硬化皮膜の強度や硬化皮膜の基材への密着が十分ではないという問題があった。
【0003】
この問題を解決するために、コロイダルシリカを含有する水中油型シリコーンエマルジョン組成物が提案されている(特開昭56−16553号公報、特開昭59−152972公報、特開平09−165554公報、特開平10−168393公報参照)。
【0004】
しかし、従来のコロイダルシリカを含有する水中油型シリコーンエマルジョン組成物は、貯蔵安定性の点から、エマルジョン製造時に、強酸又は強アルカリを重合触媒としてオクタメチルシクロテトラシロキサンやデカメチルシクロペンタシロキサンを乳化重合して高重合度化したポリオルガノシロキサンを含有していた。このような水中油型シリコーンエマルジョン組成物は、乳化重合時にシロキサン結合の解裂反応が同時に進行して低分子ポリオルガノシロキサンが新たに発生するため、最終製品にオクタメチルシクロテトラシロキサンやデカメチルシクロペンタシロキサンなどのシロキサンオリゴマーを多く含むという問題があった。オクタメチルシクロテトラシロキサンやデカメチルシクロペンタシロキサンなどのシロキサンオリゴマーは揮発性であるため、用途によっては、このような水中油型シリコーンエマルジョンが使用できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−73291号公報
【特許文献2】特開平11−193349号公報
【特許文献3】特開昭56−16553号公報
【特許文献4】特開昭59−152972公報
【特許文献5】特開平09−165554公報
【特許文献6】特開平10−168393公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、貯蔵安定性に優れ、錫触媒を使用しなくても水分を除去することでゴム状の弾性を有し、基材に対する十分な密着性を有する硬化皮膜を形成し得る、揮発性のシロキサンオリゴマーの含有量の少ない水中油型シリコーンエマルジョン組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物は、(A)ケイ素原子に結合した水酸基または加水分解性基を1分子中に少なくとも2個有するポリオルガノシロキサン100質量部、(B)コロイダルシリカ0.1〜200質量部、(C)イオン性乳化剤1〜100質量部、(D)ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合型ノニオン乳化剤0.1〜50質量部、および、(E)水10〜500質量部からなることを特徴とする。本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物中の4〜5個のシロキサン単位からなるシロキサンオリゴマーの含有量の総量は、2%以下であることが好ましい。
【0008】
前記(A)成分のポリオルガノシロキサンとしては、分子鎖両末端水酸基封鎖ジオルガノポリシロキサンであることが好ましく、その25℃における粘度が50mPa・sから2,000,000mPa・sであることがより好ましい。
【0009】
本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物は、さらに(F)成分として、RaSiX4−a (式中、Rは非置換一価炭化水素基または置換一価炭化水素基であり、Xはアルコキシ基またはアルコキシアルコキシ基であり、aは0,1または2である)で示されるアルコキシシランもしくはアルコキシアルコキシシラン、または前記アルコキシシランもしくはアルコキシアルコキシシランの部分加水分解縮合物を0.1〜50質量部含有することが好ましく、さらに、(G)成分として、アミンを含有することが好ましい。本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物のエマルジョン粒子の平均粒子径は、300nm以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物の製造方法は、(A)ケイ素原子に結合した水酸基または加水分解性基を1分子中に少なくとも2個有するポリオルガノシロキサン、(C)イオン性乳化剤、(D)ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合型ノニオン乳化剤、および、(E)水の一部を乳化分散する工程と前記工程で得られた乳化物に(B)コロイダルシリカおよび残余の(E)水を配合する工程からなることを特徴とする。
【0011】
本発明の表面処理方法は、基材表面を本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物で表面処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物は、錫触媒を使用しなくても水分の除去によって硬化皮膜を形成でき、コロイダルシリカを含有しているため形成された硬化皮膜が十分な強度、すなわちゴム状の弾性と基材に対する十分な密着性を有する。また、イオン性乳化剤とポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合型ノニオン乳化剤とを含有しているので、貯蔵安定性や硬化被膜の形成性に優れるという特徴を有する。また、ケイ素原子に結合した加水分解性基を1分子中に少なくとも2個有するポリオルガノシロキサンを乳化分散しているので、オクタメチルシクロテトラシロキサンやデカメチルシクロペンタシロキサンなどのシロキサンオリゴマーの含有量が少なく、広範な用途に使用することができる。本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物の製造方法によれば、本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物を効率よく製造することができる。本発明の表面処理方法によれば、広範な種類の基材表面にゴム状の弾性を有するシリコーン硬化皮膜を効率よく形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(A)成分は、ケイ素原子に結合した水酸基または加水分解性基を1分子中に少なくとも2個有するポリオルガノシロキサンであり、本発明の水中油型シリコーンエマルジョンの主成分である。(A)成分のポリオルガノシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、樹枝状、網目状の何れであってもよいが、直鎖状または一部分岐を有する直鎖状であることが好ましい。水酸基または加水分解性基は分子鎖末端に存在してもよく、分子鎖側鎖に存在してもよく、その両方に存在してもよい。加水分解性基としてはアルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基、エノキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基が例示されるが、メトキシ基,エトキシ基,n−プロポキシ基,イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基などの炭素原子数1〜10のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシメトキシ基、メトキシプロポキシ基などの炭素原子数2〜10アルコキシアルコキシ基であることが好ましい。
【0014】
水酸基または加水分解性基以外のケイ素原子に結合する有機基としては、非置換一価炭化水素基または置換一価炭化水素基が例示される。非置換一価炭化水素基は、乳化補助作用の点で炭素原子数1〜10のものが好ましい。非置換一価炭化水素として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などの炭素原子数1〜10のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの炭素原子数3〜10のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、5−ヘキセニル基、9−デセニル基などの炭素原子数2〜10のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基などの炭素原子数6〜10のアリール基;ベンジル基、メチルベンジル基、フェネチル基などなどの炭素原子数7〜10のアラルキル基が例示される。中でも炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基または炭素原子数2〜10のアルケニル基であることが好ましく、特にはメチル基またはフェニル基であることが好ましい。
【0015】
置換一価炭化水素基として、上記の非置換一価炭化水素基、特には炭素原子数1〜10のアルキル基またはフェニル基の水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素などのハロゲン原子;グリシジロキシ基、エポキシシクロヘキシル基などのエポキシ官能基;メタクリルロキシ基などのメタクリル官能基;アクリロキシ基などのアクリル官能基;アミノ基、アミノエチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジブチルアミノ基などのアミノ官能基;メルカプト基、テトラスルフィド基などの含硫黄官能基;アルコキシ基;ヒドロキシカルボニル基;アルコキシカルボニル基などの置換基で置換された基が例示される。
【0016】
置換一価炭化水素基の具体例として、3,3,3−トリフルオロプロピル基、パーフルオロブチルエチル基、パーフルオロオクチルエチル基、3−クロロプロピル基、3−グリシジロキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、5,6−エポキシヘキシル基、9,10−エポキシデシル基、3−メタアクリロキシプロピル基、3−アクリロキシプロピル基、11−メタアクリロキシウンデシル基、3−アミノプロピル基、N−(2−アミノエチル)アミノプロピル基、3−(N−フェニルアミノ)プロピル基、3−ジブチルアミノプロピル基、3−メルカプトプロピル基;3−ヒドロキシカルボニルプロピル基;メトキシプロピル基、エトキシプロピル基が例示される。
【0017】
(A)成分の25℃における粘度は特に限定されないが、本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物の硬化皮膜の強度、製造時の取り扱い作業性、および、乳化分散時の粒子径や安定性の点から、50mPa・s〜2,000,000mPa・sであることが好ましく、100mPa・s〜500,000mPa・sであることがより好ましく、500mPa・s〜100,000mPa・sであることがさらに好ましい。
【0018】
このような(A)成分としては、分子鎖両末端水酸基封鎖ジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。このような分子鎖両末端水酸基封鎖ジオルガノポリシロキサンとしては、一般式:HO(R2SiO)Hで示されるポリオルガノシロキサンが例示される。式中、Rは上記の水酸基または加水分解性基以外のケイ素原子に結合する非置換または置換の一価炭化水素基と同様であり、中でも、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数2〜10のアルケニル基であることが好ましく、特には、メチル基またはフェニル基であることが好ましい。mは2以上の整数であり、25℃における粘度が50mPa・sから2,000,000mPa・sとなる数であることが好ましい。
【0019】
(B)成分のコロイダルシリカは、硬化皮膜の強度や基材に対する密着性を向上させるための成分である。コロイダルシリカは、シリカ粒子を水中に分散してコロイド状にしたものであり、多くのシラノール基を表面に有し、粒子径は一般的に約1nm〜1μmである。コロイダルシリカとしては例えば、日産化学工業(株)製のスノーテックス20,30,40,スノーテックスC,スノーテックスN,スノーテックスO,スノーテックスS,スノーテックス20L,スノーテックスOL,スノーテックスST−XS,スノーテックスST−SS,スノーテックスAK,スノーテックスBKなどが例示される。これらのコロイダルシリカは通常、5〜40質量%水に分散したものである。(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜200質量部の範囲であることが好ましく、より好ましい範囲は1〜100質量部である。
【0020】
(C)成分のイオン性乳化剤、および、(D)成分のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合型ノニオン乳化剤は、(A)成分および必要に応じて(F)成分を(E)成分中に安定に乳化させる成分である。(C)成分の配合量は(A)成分100質量部に対して1〜50質量部であり、1〜20質量部であることが好ましい。
【0021】
(C)成分のイオン性乳化剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤および両性界面活性剤を使用できる。イオン性乳化剤としては、このような界面活性剤の一種を単独で用いてもよく、種類の異なる界面活性剤を2種類以上併用してもよい。
【0022】
アニオン系界面活性剤として、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルナフチルスルホン酸塩、不飽和脂肪族スルホン酸塩、水酸化脂肪族スルホン酸塩が例示される。ここでアルキル基として、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、セチル基、ステアリル基などの高・中級アルキル基が例示される。不飽和脂肪族基として、オレイル基、ノネニル基、オクチニル基が例示される。また、対イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムまたはアンモニウムイオンが例示され、中でもナトリウムが一般的である。
【0023】
カチオン系界面活性剤として、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアルキルトリメチルアンモニウム塩;ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドなどのジアルキルジメチルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム型塩の界面活性剤が例示される。
【0024】
両性界面活性剤として、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリンが例示される。
【0025】
(D)成分のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合型ノニオン乳化剤は、通常、下記一般式(1)または一般式(2)で表される化合物である。
HO(CH2CH2O)a(CH(CH3)CH2O)b(CH2CH2O)CH (1)
HO(CH(CH3)CH2O)d(CH2CH2O)e(CH(CH3)CH2O)fH (2)
一般式(1)、(2)において、a、b、c、d、e及びfは、エチレンオキシドないしプロピレンオキシドの平均付加モル数であり、それぞれ独立して、1〜350の数である。(D)成分の重量平均分子量は、1,000〜18,000が好ましく、より好ましくは1,500〜10,000である。(D)成分が固体状である場合は、水溶液にして使用することも可能である。これら化合物は、「プルロニックL」シリーズ、「プルロニックP」シリーズ、「プルロニックF」シリーズ、および「プルロニックTR」シリーズの商品名でADEKA社から入手可能である。
【0026】
(D)成分の配合量は(A)成分100質量部に対して0.1〜50質量部であり、1〜20質量部であることが好ましい。(D)成分には、(C)成分と共同してエマルジョン粒子の粒子径を小さくする働きが認められた。
【0027】
(C)成分と(D)成分の配合量の合計は、一般的には、(A)成分と必要に応じて配合される(F)成分の合計量の1〜30質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましい。(C)成分の配合量と(D)成分の配合量の比率は、3:1 〜100:1の範囲であることが好ましい。
【0028】
(E)成分の水は、乳化および乳化物の貯蔵安定性を阻害する成分を含まないものが好ましく、イオン交換水、蒸留水、井戸水、水道水が例示される。(E)成分は、安定な水性エマルジョン状態を保つのに十分な量であればよく、配合量は特に限定されないが、通常、(A)成分100質量部に対して10〜500質量部、好ましくは10〜200質量部配合される。
【0029】
本発明の水中油型シリコーンエマルジョンは、硬化被膜の強度や密着性の向上の点から、さらに、(F)一般式:RaSiX4−aで示されるアルコキシシランもしくはアルコキシアルコキシシラン、または前記アルコキシシランもしくはアルコキシアルコキシシランの部分加水分解縮合物を含有することが好ましい。式中Rは前記と同様であり、中でも、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数2〜10のアルケニル基であることが好ましく、特には、メチル基またはフェニル基であることが好ましい。Xは炭素原子数1〜10のアルコキシ基または炭素原子数2〜10のアルコキシアルコキシ基であり、前記と同様の基が例示される。aは0,1または2であるが、0か1が好ましい。
【0030】
好ましいアルコキシシランとして、具体的には、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランなどのテトラアルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシランなどのアルキルトリアルコキシシラン;前記アルキルトリアルコキシシランのアルキル基の水素原子の一部がメタクリロキシ基、グリシドキシ基、アミノ基などで置換された置換アルキルトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのアルケニルトリアルコキシシラン;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどのアリールトリアルコキシシラン;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノ−1−メチルエチルトリエトキシシラン、N−メチル−γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどの置換アルキルトリアルコキシシラン;が例示される。
【0031】
好ましいアルコキシアルコキシシランとして、具体的には、テトラメトキシメトキシシラン、テトラエトキシエトキシシラン、テトラメトキシエトキシシラン、テトラエトキシメトキシシランなどのテトラアルコキシアルコキシシラン;メチルトリメトキシメトキシシラン、メチルトリエトキシエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリエトキシメトキシシラン、エチルトリメトキシメトキシシラン、エチルトリエトキシエトキシシラン、エチルトリメトキシエトキシシラン、エチルトリエトキシメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシエトキシシラン、オクチルトリメトキシエトキシシラン、テトラデシルトリメトキシエトキシシランなどのアルキルトリアルコキシアルコキシシラン;前記アルキルトリアルコキシアルコキシシランのアルキル基の水素原子の一部がメタクリロキシ基、グリシドキシ基、アミノ基などで置換された置換アルキルトリアルコキシアルコキシシラン;ビニルトリメトキシメトキシシラン、ビニルトリエトキシエトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、ビニルトリエトトキシメトキシシランなどのアルケニルトリアルコキシアルコキシシラン;フェニルトリメトキシメトキシシラン、フェニルトリエトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリエトキシメトキシシランなどのアリールトリアルコキアルコキシシシラン;が例示される。
【0032】
中でも、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、テトラアルコキシアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシアルコキシシランであることが好ましく、テトラアルコキシシランまたはアルキルアルコキシシランであることがより好ましい。
【0033】
(F)成分は、前記オルガノアルコキシシラン、オルガノアルコキシアルコキシシラン、テトラアルコキシシランもしくはテトラアルコキシアルコキシシランの部分加水分解縮合物であってもよい。
【0034】
(F)成分は、(A)成分の100質量部に対し、0.1〜50質量部配合することが好ましく、1〜15質量部配合することがさらに好ましい。(F)成分の配合量が、(A)成分100質量部に対して0.1質量部未満であると生成した水性エマルジョンの硬化皮膜の強度の向上が十分でない場合があり、50質量部を超えると副生するアルコール量が増加し、環境や人体に悪影響を与えることや、硬化皮膜の形成性が経時で変化する場合があるために好ましくない。
【0035】
また、本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物には、必要に応じて他の成分、例えば、増粘剤,消泡剤,浸透剤,帯電防止剤,無機粉体,防腐剤,シランカップリング剤,pH調整剤,緩衝剤,紫外線吸収剤、錫を含まない硬化触媒、水溶性樹脂、有機樹脂エマルジョン、顔料、染料などを適宜配合することができる。
【0036】
中でも、さらに、(G)アミン化合物をpH調整剤として配合することが好ましい。アミン化合物としては、ジエチルアミン、エチレンジアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、モルホリン、モノエタノールアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジプロパノールアミン、および2−アミノ−2−メチル−2−プロパノールが例示され、中でもジエチルアミンが好ましい。pH調整剤としての(G)成分の配合量は、好ましくは0.01〜5質量%の範囲であり、より好ましくは0.1〜2質量%の範囲である。
【0037】
本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物は、(I):(A)成分、(C)成分、(D)成分および(E)成分の一部をホモミキサー、ホモジナイザー、コロイドミル、コンビミキサー、インライン式連続乳化機,真空乳化機,超音波乳化機、連続混合装置などの乳化機を用いて乳化分散する工程、および、(II):前期工程で得られた乳化物に(B)成分および残余の(E)成分を配合し分散させる工程からなる製造方法で製造することができる。(F)成分は必要に応じて、前記の何れの工程で配合してもよく、両方の工程で分割して配合してもよい。なお、エマルジョン粒子の平均粒子径は、貯蔵安定性や硬化皮膜の形成性の点から、300nm以下であることが好ましく、250nm以下であることがより好ましい。エマルジョン粒子の平均粒子径は、動的光散乱法などにより測定できる。
【0038】
本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物は、4〜5個のシロキサン単位からなるシロキサンオリゴマーの含有量の総量が2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。4〜5個のシロキサン単位からなるシロキサンオリゴマーとしては、オクタオルガノテトラシクロシロキサン、デカオルガノペンタシクロシロキサンなどの4〜5量体の環状シロキサンオリゴマー;分子鎖両末端ヒドロキシジオルガノシロキシ基封鎖テトラオルガノジシロキサン、分子鎖両末端ヒドロキシジオルガノシロキシ基封鎖ヘキサオルガノトリシロキサンなどの4〜5量体の直鎖状シロキサンオリゴマーが例示される。本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物中のシロキサンオリゴマーの含有量は、ガスクロマトグラフィーにより測定できる。
【0039】
本発明の表面処理方法は、基材表面を上記の水中油型シリコーンエマルジョン組成物で表面処理することを特徴とする。基材としては、金属、セラミック、コンクリート、紙、繊維、プラスチック、ガラス、ゴムが例示される。
【0040】
基材表面を上記の水中油型シリコーンエマルジョン組成物で表面処理する方法としては、(I)基材表面に水中油型シリコーンエマルジョン組成物を塗工する工程、および、(II)基材表面上の水中油型シリコーンエマルジョン組成物中の水を除去して硬化皮膜を形成する工程からなることが好ましい。工程(I)の具体的手段としては、スプレー、ディッピング、グラビアコート、ナイフコートなどが例示される。工程(II)の水分除去は、常温で放置して風乾してもよく、20〜200℃に調整した雰囲気温度下に放置してもよく、赤外線、紫外線その他の高エネルギー線を照射してもよい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例と比較例によって詳しく説明する。実施例中、粘度は25℃における測定値であり、配合量を表す部は質量部を意味し、含有量を表す%は質量%を意味する。式中Meはメチル基を、Etはエチル基を示す。
【0042】
エマルジョン粒子の平均粒子径は、サブミクロン粒子アナライザー(コールターエレクトロニクス社製のCOULTER MODEL N4 MD)を用いて25℃で動的光散乱法により測定し、単分散モード解析で算出した。
【0043】
硬化皮膜の強度とガラスパネルに対する密着性評価は、ガラスパネルにエマルジョン組成物を塗布、25℃で1日放置して水分を除去後、指触により行った。硬化皮膜の強度は、指触により、硬化皮膜が十分硬化してゴム状の弾性を有するかどうかを調べて評価した。硬化皮膜に弾性が認められたときは、さらに、強く指でこすって塑性的変形が認められるかどうか確認した。硬化皮膜のガラスパネルに対する密着性は、硬化皮膜を強く指でこすってガラスパネルからの剥離が認められるかどうかで評価した。
【0044】
作製した水中油型シリコーンエマルジョン中の4〜5個のシロキサン単位からなるシロキサンオリゴマーの含有量の総量は、試料1.0gを秤量し、メタノール5ml、ヘキサン10mlおよびn−ウンデカン10μlを加えて、数分間撹拌した後、一晩静置後、超純水5mlを静かに加えてから、ヘキサン層を採取して、ガスクロマトグラフィー(島津製:GC−2010)により測定した。
【0045】
[実施例1]
粘度2,400mPa・sの分子鎖両末端ヒドロキシジメチルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン50.0部とテトラエトキシシラン1.0部を混合した。その後、ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムの70%水溶液を8.0部とポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合型ノニオン乳化剤(アデカ製 製品名プルロニックF68)を1.0部、および水3.0部を添加し、混合後、連続混合装置を用いて乳化を行った。水19.0部とコロイダルシリカ(日産化学製 商品名スノーテックスC 有効成分20%)16.5部で希釈後、pH調整剤としてジエチルアミン0.5部を水1.0部で希釈した水溶液を1.5部添加して、水中油型シリコーンエマルジョンを調製した。得られた水中油型シリコーンエマルジョンのエマルジョン粒子の平均粒子径は190nmであり、4〜5個のシロキサン単位からなるシロキサンオリゴマーは、オクタメチルテトラシクロシロキサンおよびデカメチルペンタシクロシロキサンでありこれらの含有量は0.12%であった。得られた水中油型シリコーンエマルジョンを25℃で放置したところ6ヶ月後でも分離などは認められず分散状態は安定であった。得られた水中油型シリコーンエマルジョンを調製3日後にガラスパネルに塗布し、硬化皮膜の状態を評価したところ、十分な密着性とゴム状の弾性が認められた。また、硬化皮膜表面を強く指でこすっても塑性的変形は認められなかった。
【0046】
[実施例2]
実施例1のテトラエトキシシランをメチルトリエトキシシランに変更した以外は、実施例1と同様にエマルジョンを調製した。得られた水中油型シリコーンエマルジョンのエマルジョン粒子の平均粒子径は200nmであり、4〜5個のシロキサン単位からなるシロキサンオリゴマーは、オクタメチルテトラシクロシロキサンおよびデカメチルペンタシクロシロキサンでありこれらの含有量は0.12%であった。得られた水中油型シリコーンエマルジョンを25℃で放置したところ6ヶ月後でも分離などは認められず分散状態は安定であった。得られた水中油型シリコーンエマルジョンを調製3日後にガラスパネルに塗布し、硬化皮膜の状態を評価したところ、十分な密着性とゴム状の弾性が認められた。また、硬化皮膜表面を強く指でこすっても塑性的変形は認められなかった。
【0047】
[実施例3]
実施例1のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合型ノニオン乳化剤をアデカ製プルロニックF68から、アデカ製プルロニックP85に変更した以外は、実施例1と同様にエマルジョンを作製した。得られた水中油型シリコーンエマルジョンのエマルジョン粒子の平均粒子径は210nmであり、4〜5個のシロキサン単位からなるシロキサンオリゴマーは、オクタメチルテトラシクロシロキサンおよびデカメチルペンタシクロシロキサンでありこれらの含有量は0.12%であった。得られた水中油型シリコーンエマルジョンを25℃で放置したところ3ヶ月後でも分離などは認められず分散状態は安定であった。得られた水中油型シリコーンエマルジョンを調製5日後にガラスパネルに塗布し、硬化皮膜の状態を評価したところ、十分な密着性とゴム状の弾性が認められた。また、硬化皮膜表面を強く指でこすっても塑性的変形は認められなかった。
【0048】
[実施例4]
実施例1のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合型ノニオン乳化剤をアデカ製プルロニックF68から、アデカ製プルロニックF88に変更した以外は、実施例1と同様にエマルジョンを作製した。得られたエマルジョン粒子の平均粒子径は180nmであり、4〜5個のシロキサン単位からなるシロキサンオリゴマーは、オクタメチルテトラシクロシロキサンおよびデカメチルペンタシクロシロキサンでありこれらの含有量は0.12%であった。得られたエマルジョンを25℃で放置したところ5ヶ月後でも分離などは認められず分散状態は安定であった。得られたエマルジョン組成物を調製5日後にガラスパネルに塗布し、硬化皮膜の状態を評価したところ、十分な密着性とゴム状の弾性が認められた。また、硬化皮膜表面を強く指でこすっても塑性的変形は認められなかった。
【0049】
[実施例5]
T.K.COMBIMIX(特殊機化製)にポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムの70%水溶液を6.4部とポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合型ノニオン乳化剤(アデカ製 製品名プルロニックF68)を0.8部、および水2.0部を投入、混合した。次いで粘度2,400mPa・sの分子鎖両末端ヒドロキシジメチルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン40.0部とテトラエトキシシラン0.8部を投入し、3時間乳化を行った。その後、さらに、水22.1部とコロイダルシリカ(日産化学製 商品名スノーテックスC 有効成分20%)26.4部、pH調整剤としてジエチルアミン0.5部を水1.0部で希釈した水溶液を1.5部投入、混合して、水中油型シリコーンエマルジョンを調製した。得られたエマルジョン粒子の平均粒子径は200nmであり、4〜5個のシロキサン単位からなるシロキサンオリゴマーは、オクタメチルテトラシクロシロキサンおよびデカメチルペンタシクロシロキサンでありこれらの含有量は0.10%であった。得られたエマルジョンを25℃で放置したところ1ヶ月以上たっても分離などは認められず分散状態は安定であった。得られたエマルジョン組成物を調製7日後にガラスパネルに塗布し、硬化皮膜の状態を評価したところ、十分な密着性とゴム状の弾性が認められた。また、硬化皮膜表面を強く指でこすっても塑性的変形は認められなかった。
【0050】
[実施例6]
実施例1において、連続混合機による乳化前に下式:
Me3SiO(Me2SiO)3(MeSi(ONEt2)O)SiMe3
で示されるアミノキシ基含有シロキサンを1.0部添加した以外は、実施例1と同様に水中油型シリコーンエマルジョンを作製した。得られたエマルジョン粒子の平均粒子径は190nmであり、4〜5個のシロキサン単位からなるシロキサンオリゴマーは、オクタメチルテトラシクロシロキサンおよびデカメチルペンタシクロシロキサンでありこれらの含有量は0.12%であった。得られたエマルジョンを25℃で放置したところ6ヶ月後でも分離などは認められず分散状態は安定であった。得られたエマルジョン組成物を調製3日後にガラスパネルに塗布し、硬化皮膜の状態を評価したところ、十分な密着性とゴム状の弾性が認められた。また、硬化皮膜表面を強く指でこすっても塑性的変形は認められなかった。
【0051】
[実施例7]
実施例6において、テトラエトキシシランをメチルトリエトキシシランに変更した以外は、実施例6と同様にして水中油型シリコーンエマルジョンを作製した。得られたエマルジョン粒子の平均粒子径は220nmであり、4〜5個のシロキサン単位からなるシロキサンオリゴマーは、オクタメチルテトラシクロシロキサンおよびデカメチルペンタシクロシロキサンでありこれらの含有量は0.12%であった。得られたエマルジョンを25℃で放置したところ3ヶ月後でも分離などは認められず分散状態は安定であった。得られた水中油型シリコーンエマルジョンを調製3日後にガラスパネルに塗布し、硬化皮膜の状態を評価したところ、十分な密着性とゴム状の弾性が認められた。また、硬化皮膜表面を強く指でこすっても塑性的変形は認められなかった。
【0052】
[比較例1]
粘度4,000mPa・sの分子鎖両末端ヒドロキシジメチルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン50.0部とテトラエトキシシラン1.0部を混合した。その後、ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムの70%水溶液を4.57部とポリオキシエチレン分岐デシルエーテルの85%水溶液を1.18部、および水3.0部を添加し、混合後、連続混合装置を用いて乳化を行った。水5.8部とコロイダルシリカ(日産化学製 商品名スノーテックスC 有効成分20%)33.0部で希釈後、pH調整剤としてジエチルアミン0.5部を水1.0部で希釈した水溶液を1.5部添加して、水中油型シリコーンエマルジョンを調製した。得られたエマルジョン粒子の平均粒子径は300nmであり、4〜5個のシロキサン単位からなるシロキサンオリゴマーは、オクタメチルテトラシクロシロキサンおよびデカメチルペンタシクロシロキサンでありこれらの含有量は0.25%であった。得られたエマルジョンを25℃で放置したところ1日後に分離が認められた。得られたエマルジョンを調整後13日後に再攪拌してからガラスパネルに塗布し、水分を除去して得られた皮膜は、粘着性のある、軟弱で弾性のない皮膜であった。
【0053】
[比較例2]
粘度2,400mPa・sの分子鎖両末端ヒドロキシジメチルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン50.0部とテトラエトキシシラン1.0部を混合した。その後、ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムの70%水溶液を8.0部とポリオキシエチレン分岐デシルエーテルの85%水溶液を1.2部、および水3.0部を添加し、混合後、連続混合装置を用いて乳化を行った。水18.8部とコロイダルシリカ(日産化学製 商品名スノーテックスC 有効成分20%)16.5部で希釈後、pH調整剤としてジエチルアミン0.5部を水1.0部で希釈した水溶液を1.5部添加して、水中油型シリコーンエマルジョンを調製した。得られたエマルジョン粒子の平均粒子径は230nmであり、4〜5個のシロキサン単位からなるシロキサンオリゴマーは、オクタメチルテトラシクロシロキサンおよびデカメチルペンタシクロシロキサンでありこれらの含有量は0.12%であった。得られたエマルジョンを25℃で放置したところ1日後に分離が認められた。得られたエマルジョンを調整後13日後に再攪拌してからガラスパネルに塗布し、水分を除去して得られた皮膜は、粘着性のある、軟弱で弾性のない皮膜であった。
【0054】
[比較例3]
粘度2,400mPa・sの分子鎖両末端ヒドロキシジメチルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン50.0部とテトラエトキシシラン1.0部を混合した。その後、ポリオキシエチレン分岐デシルエーテルの85%水溶液を7.8部、および水6.0部を添加し、混合後、連続混合装置を用いて乳化を行った。水17.2部とコロイダルシリカ(日産化学製 商品名スノーテックスC 有効成分20%)16.5部で希釈後、pH調整剤としてジエチルアミン0.5部を水1.0部で希釈した水溶液を1.5部添加して、水中油型シリコーンエマルジョンを調製した。得られたエマルジョン粒子の平均粒子径は180nmであり、4〜5個のシロキサン単位からなるシロキサンオリゴマーは、オクタメチルテトラシクロシロキサンおよびデカメチルペンタシクロシロキサンでありこれらの含有量は0.12%であった。得られたエマルジョンを25℃で放置したところ1日後に分離が認められた。得られたエマルジョンを調整後13日後に再攪拌してからガラスパネルに塗布し、水分を除去して得られた皮膜は、粘着性が強く、非常に軟弱で弾性のない皮膜であった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物は、コロイダルシリカを配合していても貯蔵安定性が良好であり、かつ基材に塗布あるいは含浸した後、水分を除去するとゴム状の弾性を有する、すなわち強度に優れた硬化皮膜を形成するので、水系塗料やインク、感熱紙やインクジェット用紙などに使用されるペーパーコーティング剤、金型やゴム用の離型剤、自動車ウェザーストリップ、ガスケット、ゴムホースなどに使用される樹脂コーティング剤、衣料やエアバッグに使用される繊維処理剤、剥離剤、化粧品などとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ素原子に結合した水酸基または加水分解性基を1分子中に少なくとも2個有するポリオルガノシロキサン100質量部、(B)コロイダルシリカ0.1〜200質量部、(C)イオン性乳化剤1〜100質量部、(D)ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合型ノニオン乳化剤0.1〜50質量部、および、(E)水10〜500質量部からなる水中油型シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項2】
4〜5個のシロキサン単位からなるシロキサンオリゴマーの含有量の総量が2質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の水中油型シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項3】
(A)成分のポリオルガノシロキサンが、分子鎖両末端水酸基封鎖ジオルガノポリシロキサンである請求項1または請求項2に記載の水中油型シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項4】
(A)成分の25℃における粘度が50mPa・sから2,000,000mPa・sである請求項3に記載の水中油型シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項5】
さらに(F)成分として、RaSiX4−a (式中、Rは非置換一価炭化水素基または置換一価炭化水素基であり、Xはアルコキシ基またはアルコキシアルコキシ基であり、aは0,1,または2である)で示されるアルコキシシランもしくはアルコキシアルコキシシラン、または前記アルコキシシランもしくはアルコキシアルコキシシランの部分加水分解縮合物を0.1〜50質量部配合した請求項1〜4の何れか1項に記載の水中油型シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項6】
さらに(G)成分として、アミンを配合した請求項1〜5の何れか1項に記載の水中油型シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項7】
エマルジョン粒子の平均粒子径が、300nm以下である請求項1〜6の何れか1項に記載の水中油型シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項8】
(A)ケイ素原子に結合した水酸基または加水分解性基を1分子中に少なくとも2個有するポリオルガノシロキサン、(C)イオン性乳化剤、(D)ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合型ノニオン乳化剤、および、(E)水の一部を乳化分散する工程と前記工程で得られた乳化物に(B)コロイダルシリカおよび残余の(E)水を配合する工程からなることを特徴とする請求項1に記載の水中油型シリコーンエマルジョン組成物の製造方法。
【請求項9】
基材表面を請求項1〜7の何れか1項に記載の水中油型シリコーンエマルジョン組成物で表面処理することを特徴とする表面処理方法。

【公開番号】特開2010−235931(P2010−235931A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51228(P2010−51228)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】