説明

水中油型メイクアップ化粧料

【課題】みずみずしくぬるつきがない良好な塗布感触を有し、顔料を高配合でき、かつ広い粘度領域において安定で高品質な水中油型メイクアップ化粧料を提供する。
【解決手段】(A)2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はその塩、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステル、並びにN,N−ジメチルアクリルアミドを構成単位として含むクロスポリマー、
(B)無機塩及び有機塩の一種又は二種以上を水相成分の0.2〜3質量%
(C)粉体
を含有することを特徴とする水中油型メイクアップ化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型メイクアップ化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料に配合される増粘剤としてキサンタンガム等の天然高分子、アクリル酸ポリマー、カルボキシビニルポリマー等の合成高分子、モンモリロナイト等の粘土鉱物等が用いられていた。中でも、クリームや乳液などの化粧料では、アクリル酸ポリマーやカルボキシビニルポリマーがみずみずしい感触を有することから非常に好まれ、多用されている(特許文献1)。
【0003】
一方、ファンデーションなどにおいては、隠蔽成分或いは着色成分として用いられている原料は、その多くが二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛又はこれらの複合化物等の様な金属酸化物が殆どであるが、当該金属酸化物は部分的に電離し、等電点を有する性質を有することから、静電的相互作用に起因する架橋構造によって増粘する、カルボキシビニルポリマーやアルキル変性カルボキシビニルポリマー等を用いての粘度維持は実質的に不可能であった。これは金属酸化物の部分電離部分が、増粘剤の静電的相互作用による架橋構造を壊すため、増粘剤を添加しても、系の粘度が増加しないことに起因する。
【0004】
増粘剤として、顔料の影響を受け難い、非イオン性の水溶性増粘剤を選択することもできるが、非イオン性の水溶性増粘剤を配合した外用組成物は、べたついた感触を有する等、使用性の面に不都合を有する。このような背景から、特に、メイクアップ化粧料においては、みずみずしい使用感を有し、静電的相互作用のみの増粘機構ではない増粘剤が切望されていた。
【0005】
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はその塩、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステル、並びにN,N−ジメチルアクリルアミドを構成単位として含むクロスポリマーは、みずみずしい使用感を有し、かつその増粘機構が静電的相互作用と疎水性相互作用の両方からなるという特徴を持つため、顔料との併用が可能であることが報告されている(特許文献2)。特に、その疎水性相互作用のみを利用することができれば、顔料高配合時にも安定で高品質な化粧料を提供することが可能である。この増粘剤は濃度により増粘機構が静電的相互作用と疎水性相互作用の依存性が異なると考えられ、高濃度域であれば、疎水性相互作用が支配的であることにより顔料の影響を受けにくいと言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−43417号公報
【特許文献2】国際公開第08/087326号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記のクロスポリマーを用いた化粧料においては、低濃度域では、疎水性相互作用と静電的相互作用が拮抗しているため、粉体の影響を受けやすく、安定性が損なわれる可能性があり、系のコントロールが困難であった。このことから低粘度領域でも前記のクロスポリマーの疎水性相互作用が支配的な状態を得る方法を見出す必要があった。
従って、本発明の課題は、前記のクロスポリマーを含有するメイクアップ化粧料であって、低粘度領域においても安定で、みずみずしい使用感を有するメイクアップ化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は、前記のクロスポリマーと粉体を含有する化粧料において疎水性相互作用が支配的な状態を得るべく検討した結果、前記のクロスポリマーと粉体に加えて特定量の無機塩又は有機塩を組み合わせることにより、得られた系が疎水性相互作用が支配的な状態となり、低粘度領域であっても安定なメイクアップ化粧料が得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、次の成分(A)〜(C):
(A)2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はその塩、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステル、並びにN,N−ジメチルアクリルアミドを構成単位として含むクロスポリマー、
(B)無機塩及び有機塩の一種又は二種以上を水相成分の0.2〜3質量%、
(C)粉体
を含有することを特徴とする水中油型メイクアップ化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、みずみずしくぬるつきがない良好な塗布感触を有し、粉体を高配合でき、かつ広い粘度領域において安定で高品質な水中油型メイクアップ化粧料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】NaCl添加によるクロスポリマー含有液の動的粘弾性の損失正接(tanδ)に及ぼす影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に用いられる水溶性増粘剤は、(A)2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はその塩、(メタ)アクリル酸及び/又は及びそのエステル誘導体、並びにN,N−ジメチルアクリルアミドを構成単位として含むクロスポリマーである。ここで(メタ)アクリル酸のエステルとしては、アルキル(メタ)アクリレート、アルキルポリオキシエチレン(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートとしては、C6-20アルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート等が好ましく、ラウリル(メタ)アクリレートがより好ましい。また、アルキルポリオキシエチレン(メタ)アクリレートとしては、C6-20アルキルポリオキシエチレン(メタ)アクリレートが挙げられ、ラウリルポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ミリスチルポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、パルミチルポリオキシエチレン(メタ)アクリレート等が好ましく、ラウリルテトラオキシエチレン(メタ)アクリレートがより好ましい。なお、(メタ)アクリル酸のエステルは、2種以上が含まれていてもよい。また、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の塩としてはアンモニウム塩が好ましい。
【0013】
より好ましいクロスポリマーの例としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はその塩と、C6-20アルキル(メタ)アクリレート及び/又はC6-20アルキルポリオキシエチレン(メタ)アクリレートと、N,N−ジメチルアクリルアミドとの共重合体が挙げられる。
具体的なクロスポリマーとしては、(2−メチル−2−[(1−オキソ−2−プロペニル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸アンモニウム/N,N−ジメチルアクリルアミド/ラウリルテトラオキシエチレン(メタ)アクリレート)クロスポリマー、(2−メチル−2−[(1−オキソ−2−プロペニル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸アンモニウム/N,N−ジメチルアクリルアミド/ラウリル(メタ)アクリレート/ラウリルテトラオキシエチレン(メタ)アクリレート)クロスポリマー等が挙げられる。市販品の例としては、SEPPIC社製のSepiMAX ZENを挙げることができる。
【0014】
これらの水溶性増粘剤は、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はその塩と、一種又は二種以上の(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルと、N,N−ジメチルアクリルアミドを共重合させることにより得ることができる。
【0015】
本発明の水中油型メイクアップ化粧料における(A)水溶性増粘剤の含有量は、メイクアップ化粧料の総量を基準として0.1〜5質量%が好ましく、0.15〜3質量%がより好ましく、0.5〜2質量%がさらに好ましい。(A)水溶性増粘剤をこの範囲とすることにより、塗布時のみずみずしさに優れるとともに、安定性が良好であり、かつべたつきも生じない。
【0016】
本発明で用いられる(B)無機塩としては、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸等の無機酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩又はアンモニウム塩等が挙げられる。好ましい無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化アンモニウム等の塩化物;硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸アンモニウム等の硫化物;硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸アルミニウム、硝酸亜鉛、硝酸アンモニウム等の硝酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸化物;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のリン酸化物が挙げられ、より好ましくは、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムである。
【0017】
また(B)有機塩としては、有機酸のアルカリ金属塩等が挙げられ、より好ましくはアルギン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0018】
これらの無機塩及び有機塩は一種又は二種以上を用いることができ、十分な静電的相互作用を抑制し、疎水性相互作用支配とする点から、本発明の水中油型メイクアップ化粧料の総量を基準として0.08〜2.7質量%含有するのが好ましく、0.1〜1.8質量%含有するのがさらに好ましく、0.12〜0.9質量%含有するのがさらに好ましい。
また、(B)無機塩及び/又は有機塩の含有量は、水相成分の0.2〜3質量%であり、0.2〜2質量%が好ましく、0.2〜1質量%がさらに好ましい。この範囲の含有量とすることにより、十分な静電的相互作用の抑制効果が得られ、ミクロゲルの収縮が生じず、安定した増粘効果が得られる。
【0019】
本発明の水中油型メイクアップ化粧料において、(C)粉体としては、化粧品一般に使用される粉体であれば、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず用いることができる。具体的には、酸化チタン、黒酸化チタン、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、窒化硼素等の無機粉体類;オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄コーティング雲母、酸化鉄雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類;ウールパウダー、シルクパウダー、結晶セルロース等の有機粉体類;シリカ、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体パウダー、ポリエチレンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー等の樹脂粉末類;有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類;微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
【0020】
本発明における(C)粉体の含有量は、水中油型メイクアップ化粧料の総量を基準として0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜25質量%がより好ましい。粉体の含有量が、この範囲であると、発色が良好であり、メイクアップ化粧料として十分な化粧効果を期待することができ、化粧持続性も良好であり、さらに粉体を安定に分散することができ、乳化安定性も良好となる。本発明のメイクアップ化粧料は、粉体分散性に優れるため粉体を高配合することが可能であり、ベースメイクアップ化粧料として使用する場合には、カバー力を考慮し、(C)粉体をメイクアップ化粧料の総量を基準として、10〜30質量%含有することができる。
【0021】
本発明の水中油型メイクアップ化粧料においては、上記した必須構成成分の他にこれらの所望する形態や剤型に応じて通常公知の基剤成分等を、その配合により本発明の所期の効果を損なわない範囲で広く配合して用いることができる。例えば、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、セチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、2−ヘキシルデカノール、2−エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ジ2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリル酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリイソステアリン酸グリセリン、オリーブ油、マカデミアナッツ油、ヒマワリ油、ラノリン、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ビースワックス、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ジメチルポリシロキサン、ポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等の油性原料;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、モノイソステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ラウロイルジエタノールアミド、ショ糖脂肪酸エステル、ラウリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリエーテル変性シリコーン等の界面活性剤;ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、ビタミンEアセテート、ビタミンH、センブリ抽出物、グリチルレチン酸、パントテニルエチルエーテル等の薬効成分;パラアミノ安息香酸等の安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸メチル等のアントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメチル等のサリチル酸系紫外線吸収剤、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、〔4−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル−3−メチルブチル〕−3,4,5,−トリメトキシケイ皮酸エステル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウム等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−tert−ブチル−4’−メトキシベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤;アラニン、エデト酸ナトリウム塩、ポリリン酸ナトリウム等の金属イオン封鎖剤;安息香酸、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸エステル、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素、フェノキシエタノール等の防腐剤;アスコルビン酸、α−トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等の酸化防止剤;乳酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、dl−リンゴ酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等のpH調整剤;保湿剤、皮膜剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、皮膚栄養剤、香料、色剤、水等を適宜本発明の化粧料中に配合し、目的とする剤形に応じて常法により製造することができる。
【0022】
本発明の水中油型メイクアップ化粧料の形態としては、ファンデーション、メイクアップベース等のベースメイクアップ化粧料、アイシャドウ、ハイライト、チーク、マスカラ等のポイントメイクアップ化粧料、BBクリーム等のスキンケア化粧料にベースメイクの機能を付与したもの等が挙げられる。
【実施例】
【0023】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、配合量はすべて質量%である。
【0024】
試験例
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はその塩、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステル、並びにN,N−ジメチルアクリルアミドを構成単位として含むクロスポリマーは、大きさが3〜4ミクロンのミクロゲルから構成され、このミクロゲルは、濃度変化に応じてその増粘機構が変化していく。この変化は、回転型レオメーターを用いた動的粘弾性の測定を行い、その損失正接(tanδ=損失弾性率G”/貯蔵弾性率G’)により知ることができるので、クロスポリマー(水溶性増粘剤)に塩を添加して動的粘弾性を測定した。
【0025】
(動的粘弾性測定の条件)
測定機器:回転型レオメーターPhysica MCR−301(Anton Paar社製)
測定用セルの形状・寸法:直径50mmパラレルプレート、ギャップ1mm
適用応力orひずみ:線形領域の範囲内
適用周波数:1Hz
【0026】
例えば、図1に示すように、塩無添加の場合、増粘剤濃度が0.1〜0.5質量%の領域では、濃度上昇とともにtanδが大きく減少している、すなわち増粘剤の濃度が上昇するに従い、大きく弾性的に変化していることがわかる。これは、この低濃度領域下では、ミクロゲル同士に距離があるため、濃度上昇に伴い、静電的相互作用が増大しているためと考えられる。増粘剤濃度が0.5〜2.0質量%の領域では、tanδの変化量が緩やかに減少している。このことから、この濃度領域下では、序々にミクロゲル同士が接近し、静電的相互作用による影響も少なくなっていると考えられる。増粘剤濃度が2.0質量%以上の領域では、tanδが平衡となり変化しないといえる。これは、この高濃度領域下では、ミクロゲル同士の重なりが増え、増粘機構が粘弾性の性質が変化しない、疎水性相互作用が支配的な状態になっているためと考えられる。
【0027】
本発明では、無機塩及び/又は有機塩の添加により、ミクロゲル間に働く静電的相互作用を抑制し、増粘剤濃度の変化に対してtanδが変化しない領域を低濃度側へ広げることに成功した。その結果、図1に示すように、塩化ナトリウム0.2質量%添加により、増粘剤濃度1.0質量%以上でtanδが平衡を示すことから、塩添加により、より低濃度下でtanδが変化しない領域、つまり疎水性相互作用が支配的な状態を得ることが可能となった。
【0028】
例えば、本発明で使用する増粘剤1.0質量%で低粘度の化粧料を調製しようとした際、無機塩及び/又は有機塩を添加していない場合、顔料の添加に伴う静電的相互作用の抑制が生じ、減粘する可能性が危惧される。しかしながら、塩化ナトリウム0.2質量%添加下で、疎水性相互作用が支配的な状態にすることで、顔料の添加に伴う減粘の恐れが回避される。さらに、増粘剤が十分弾性的であることから、低粘度ながら顔料の沈降が抑制された化粧料の提供が可能となる。
【0029】
また、塩化ナトリウムを3.0質量%以上添加すると、tanδが変化しない領域が再び高濃度領域へ狭まってしまう。これは、高塩濃度によってミクロゲル内に働く静電的相互作用までも強く抑制してしまい、ミクロゲルが収縮することにより、再びミクロゲル同士が十分重なることができなくなるためと考えられる。したがって、疎水性相互作用が支配的な状態かつ、最大限に増粘効果を利用するためには、塩化ナトリウム3質量%より低濃度での使用が望ましいと考えられる。
【0030】
実施例1〜3、比較例1、2
下記表1記載の水中油型メイクアップ化粧料を調製し、保存安定性、及び顔料分散性を下記の評価基準に基づいて評価した。結果を表1に示す。
【0031】
(1)保存安定性の評価基準
試料の経日の粘度変化を測定、評価する。
○:30℃1ヶ月で減粘しない。
△:30℃1ヶ月でやや減粘する。
×:30℃1ヶ月で大きく減粘する。
【0032】
(2)顔料分散性の評価基準
試料の外観の色ムラ、沈降を評価する。
○:色ムラ、沈降が見られない。
△:色ムラ、沈降が経日でやや見られる。
×:色ムラ、沈降が経日で見られる。
【0033】
【表1】

【0034】
・製造方法
油相成分、水相成分をそれぞれ加温溶解し、水相成分に顔料を加え分散させた。これに油相成分を添加、分散後、室温まで冷却した。
【0035】
本発明の実施例1〜3の試料は保存安定性、顔料分散性のどちらにおいても優れており、一方、比較例1、2は劣っていた。
【0036】
以下に、さらに本発明の処方例を示す。
【0037】
実施例4
(メイクアップベース)
(質量%)
1. モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 0.3
2. ポリオキシエチレン(60)硬化ひまし油 0.8
3. メトキシケイヒ酸オクチル 6.0
4. ブチルメトキシベンゾイルメタン 1.5
5. ミリスチン酸オクチルドデシル 5.0
6. フェニルトリメチコン*4 2.0
7. ジメチコン*5 1.0
8. イソノナン酸イソノニル 1.0
9. エタノール 8.0
10.グリセリン 5.0
11.(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー*6 0.1
12.SepiMAX ZEN*3 0.8
13.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体*7 0.6
14.グリチルリチン酸二カリウム 0.1
15.アスコルビン酸二グルコシド 2.0
16.水酸化カリウム 0.7
17.塩化ナトリウム 0.2
18.精製水 残 量
19.酸化チタン 1.0
20.雲母チタン 2.0
*4;商品名:SH556、東レ・ダウコーニング社製
*5;商品名:KF−96A−6CS、信越化学工業社製
*6;商品名:トレフィルE508、東レ・ダウコーニング社製
*7;商品名:PEMULEN TR−1、Lubrizol Advanced M aterials,Inc.社製
【0038】
実施例5
(メイクアップベース)
(質量%)
1. ステアリン酸 0.5
2. モノステアリン酸グリセリル 1.5
3. ベヘニルアルコール 0.5
4. α−オレフィンオリゴマー 14.0
5. ジメチコン*8 1.0
6. SepiMAX ZEN*3 0.8
7. ベントナイト*9 0.1
8. ステアロイルグルタミン酸ナトリウム 0.3
9. グリセリン 10.0
10.(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー水分散液*10 1.0
11.アスコルビン酸リン酸マグネシウム 0.2
12.ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
13.酵母エキス 0.1
14.シルクエキス 0.1
15.ハマメリス水 1.0
16.クロルフェネシン 0.2
17.フェノキシエタノール 0.4
18.デヒドロ酢酸ナトリウム 0.1
19.精製水 残 量
20.酸化チタン 2.0
21.酸化鉄 0.5
22.タルク 1.0
23.硫酸バリウム 1.0
24.シリカ 0.5
*8 ;商品名:KF−96A−100CS、信越化学工業社製
*9 ;商品名:クニピアG4、クニミネ工業社製
*10;商品名:PF−2001 Powder in Fluid Emulsio n、東レ・ダウコーニング社製
【0039】
実施例6
(ファンデーション)
(質量%)
1. メトキシケイヒ酸オクチル 7.5
2. ミリスチン酸イソセチル 5.0
3. シクロメチコン*11 4.0
4. エタノール 10.0
5. SepiMAX ZEN*3 3.0
6. (アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー*12
2.0
7. (ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー*13 0.5
8. グリセリン 2.0
9. アスコルビン酸リン酸マグネシウム 0.1
10.塩化ナトリウム 1.0
11.エデト酸二ナトリウム 0.02
12.精製水 残 量
13.酸化チタン 5.0
14.酸化鉄 0.8
15.タルク 1.5
16.ポリメチルシルセスキオキサン*14 0.5
*11;商品名:KF−995、信越化学工業社製
*12;商品名:SIMULGEL EG、SEPPIC社製
*13;商品名:KSG−15、信越化学工業社製
*14;商品名:TOSPEARL 2000B、モメンティブ・パフォーマンス・マ テリアルズ・ジャパン社製

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(C):
(A)2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はその塩、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステル、並びにN,N−ジメチルアクリルアミドを構成単位として含むクロスポリマー、
(B)無機塩及び有機塩の一種又は二種以上を水相成分の0.2〜3質量%
(C)粉体
を含有することを特徴とする水中油型メイクアップ化粧料。
【請求項2】
成分(B)が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、アルギン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム及びグルタミン酸ナトリウムから選ばれる一種又は二種以上である請求項1記載の水中油型メイクアップ化粧料。
【請求項3】
成分(A)と(C)とが同一相にある請求項1又は2記載の水中油型メイクアップ化粧料。
【請求項4】
成分(A)の含有量が、0.1〜5質量%である請求項1〜3のいずれか1項記載の水中油型メイクアップ化粧料。

【図1】
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【公開番号】特開2012−241003(P2012−241003A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116296(P2011−116296)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】