説明

水中油型乳化下地化粧料

【課題】 速乾性、くすみ補正効果、化粧持ちなどの下地化粧料として好適な特性を有する水中油型乳化化粧料の利点を活かし、なおかつシリコーン系樹脂皮膜のようなつっぱり感やごわつき感を生ずることなく、快適な使用感触を持つ唇用下地化粧料を提供する。
【解決手段】 柔軟で密着力のある炭化水素系樹脂であるポリイソブチレンと揮発性炭化水素油とを組み合わせて配合するとともに、ポリイソブチレンとして所定範囲の相対質量(分子量)を有するものを特に選択することにより、耐移り性に優れ、匂いもなく、なおかつ糸引きも生じない油性化粧料が得られることを見出した。すなわち、30,000〜100,000の相対質量を有するポリイソブチレン、揮発性炭化水素油、顔料、水膨潤性増粘剤、及び水性媒体を含有することを特徴とする水中油型乳化下地化粧料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、唇用下地化粧料として用いられる水中油型乳化化粧料に関する。より詳細には、塗布後の速乾性に優れ、フィット感やしっとり感等の使用感触及び耐色移り性にも優れ、口紅等の下地化粧料として好適な特性を有する水中油型の唇用下地化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
口紅の染着を防止したり、口紅やグロスの口唇周辺へのにじみを防止したりすることを目的として、口紅等を適用する前に塗布される唇用下地化粧料が従来から用いられている(特許文献1及び2)。
しかしながら、これら従来の唇用下地化粧料には粉末が多量に配合されているため、被膜が厚ぼったく、輪郭がくっきりとしすぎ、仕上がりが不自然になってしまうという欠点があった。また、それらの多くは油性化粧料であるため、油性の口紅やグロスと混ざり合い、口紅やグロスの本来の発色や質感を損ね、経時での化粧持ちが劣るという問題点もあった。
【0003】
水分を含有する唇用下地化粧料も提案され、特許文献3には、有機及び/又は無機粉体、油剤、乳化剤、色材及び水からなる水中油型乳化化粧料において、そのマンセル値を所定範囲内とした口紅用下地化粧料が開示され、口紅の発色のバラツキや唇の乾燥が抑制できると記載されている。しかし、このような下地化粧料はくすみ補正効果が十分でなく、口紅の色持ちに劣るものであった。
【0004】
特許文献4には、有機シリコーン樹脂、顔料、水膨潤性増粘剤、水性媒体を所定量含有する水中油型唇用下地化粧料が記載され、カバー力、速乾性、くすみ補正効果などに優れ、上塗りされる口紅やグロスと混じり合わず、化粧持ちに優れるとされている。しかしながら、有機シリコーン樹脂を配合した下地化粧料はごわつきを生じてしっとり感に欠けるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−178724号公報
【特許文献2】特開2003−183128号公報
【特許文献3】特開平2−306910号公報
【特許文献4】特開2007−284376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、速乾性、くすみ補正効果、化粧持ちなどの下地化粧料として好適な特性を有する水中油型乳化化粧料の利点を活かし、なおかつシリコーン系樹脂皮膜のようなつっぱり感やごわつき感を生ずることなく、快適な使用感触を持つ唇用下地化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者等は鋭意検討を重ねた結果、柔軟で密着力のある炭化水素系樹脂であるポリイソブチレンと揮発性炭化水素油とを組み合わせて配合し、当該ポリイソブチレンとして所定範囲の分子量を有するものを特に選択することにより、耐移り性に優れ、使用感触にも優れた下地化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、30,000〜100,000の相対質量(分子量)を有するポリイソブチレン、揮発性炭化水素油、顔料、水膨潤性増粘剤、及び水性媒体を含有することを特徴とする水中油型乳化下地化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の唇用下地化粧料は、水中油型乳化化粧料であるため、従来の油性下地化粧料とは異なってべたつきがなく、クレンジングオイル等を使用しなくても通常の石鹸で洗い落とすことができる。また、塗布後の速乾性に優れ、上塗りされる口紅やグロスと密着しやすく、色や質感を損なわずに化粧持ちを向上させることができる。
特に、本発明の唇用下地化粧料は、皮膜形成成分として炭化水素系樹脂であるポリイソブチレンを用いることにより、柔軟でしっとりした感触の皮膜形成が可能である。また、ポリイソブチレンと揮発性炭化水素油とを組み合わせて用いることにより、柔軟でありながら、密着力の高い皮膜形成が可能となり、色移り防止効果に優れている。さらに、3万〜10万という特定範囲の相対質量(分子量)を持つポリイソブチレンを用いることで糸引きを生じることなく良好な使用感が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の唇用下地化粧料は、30,000〜100,000の相対質量(分子量:Mv)を有するポリイソブチレン及び揮発性炭化水素油を必須成分として含有する。
本明細書における相対質量(分子量)はポリマーの粘度平均分子量を意味する。本発明で使用されるポリイソブチレンは、前記範囲の相対質量を有しているものであればよい。以下の説明においては、特に断らない限り、「ポリイソブチレン」は30,000〜100,000の相対質量を有するポリイソブチレンを意味するものとする。
【0011】
本発明の唇用下地化粧料におけるポリイソブチレンの配合量は、0.1〜8.0質量%、好ましくは3.0〜6.0質量%である。配合量が0.1質量%未満では色混じりが生じて口紅の色持ちが悪くなり、十分な耐移り性も得られ難くなる。また、8.0質量%を越えて配合すると、べたつきを生じる傾向がある。
【0012】
本発明の唇用下地化粧料においては、相対質量100,000を越えるポリイソブチレンを含まないのが好ましい。相対質量100,000を越えるポリイソブチレンを配合すると、乾き際に糸引き現象を生じるからである。
また、本発明の唇用下地化粧料は、シリコーン系樹脂を含まないのが好ましい。シリコーン系樹脂を含有すると形成される被膜が硬くなり、つっぱり感やごわつきを生じる傾向がある。
【0013】
本発明で用いられる揮発性炭化水素油としては、例えば、8〜16の炭素原子を有する揮発性油及びそれらの混合物を挙げることができる。特に、これらの揮発性炭化水素は、分枝状のC8−C16アルカン類、分枝状のC8−C16エステル類及びそれらの混合物から選択するのが好ましい。
具体的には、イソドデカン、イソデカン、ヘプタン、イソヘキサデカン等が挙げられ、特に好ましいのはイソドデカンである。
【0014】
本発明で使用する揮発性炭化水素油は市販品でもよく、具体例としては、丸善石油化学社製のマルカゾールR(イソドデカン)、エクソン社製のアイソパー(イソパラフィン)、PRESSPERS社製のパーメチル、出光石油化学社製のIPソルベント等を挙げることができる。
【0015】
本発明の唇用下地化粧料における揮発性炭化水素油の配合量は、1〜50質量%、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%である。配合量が1質量%未満であると、化粧料ののびが悪くなり、50質量%を越えて配合しても特性の更なる向上は得られない。
【0016】
本発明におけるポリイソブチレンは、前記揮発性炭化水素油等の油分に溶解した形態で配合することができる。本発明では、ポリイソブチレンを揮発性炭化水素油(イソブチレン)に溶解した形態で提供する市販品を使用することができ、例えば、BASF社製のOppanol B10SFN(分子量40,000)、Oppanol B11SFN(分子量49,000),Oppanol B12SFN(分子量55,000)、Oppanol B13SFN(分子量65,000)、OppanolB14SFN(分子量73,000)、Oppanol B15SFN(分子量85,000)、新日本石油社製のハイモール4H(分子量40,000)、ハイモール5H(分子量50,000)、ハイモール5.5H(分子量53,000)、ハイモール6H(分子量60,000)等を挙げることができる。
【0017】
本発明の唇用下地化粧料に配合される顔料としては、従来公知の顔料(体質顔料を含む)を用いることができる。例えば、タルク、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、黒雲母、金雲母、合成雲母、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム、焼セッコウ、リン酸カルシウム、フッ素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、の無機粉末;二酸化チタン、酸化亜鉛等の無機白色系顔料;酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等の無機赤色系顔料;γ−酸化鉄等の無機褐色系顔料;黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料;黒酸化鉄、カーボン、低次酸化チタン等の無機黒色系顔料;マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色系顔料;酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等の無機緑色系顔料;群青、紺青等の無機青色系顔料;酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、着色酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等のパール顔料;アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等の金属粉末顔料;赤色202号、赤色205号、赤色220号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、青色404号等の有機顔料;赤色3号、赤色104号、赤色227号、赤色401号、橙色205号、黄色4号、黄色202号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム、アルミニウムレーキ等の有機顔料;クロロフィル、β−カロチン等の天然色素が挙げられる。
【0018】
これらの顔料は、本発明の効果を妨げない範囲で、粉体の複合化や一般油剤、シリコーン油、フッ素化合物、界面活性剤等で表面処理したものを使用することもできる。例えば、フッ素化合物処理、シリコーン樹脂処理、ペンダント処理、シランカップリング剤処理、チタンカップリング剤処理、油剤処理、N−アシル化リジン処理、ポリアクリル酸処理、金属石鹸処理、アミノ酸処理、無機化合物処理、プラズマ処理、メカノケミカル処理などによって事前に表面処理された顔料を使用する頃ができ、必要に応じて1種、または2種以上の表面処理を併用することもできる。
【0019】
本発明の唇用下地化粧料における顔料の配合量は、1.0〜30.0質量%、好ましくは5.0〜15.0質量%である。顔料の配合量が1.0質量%未満では、くすみ補正効果に劣り、口紅の発色が悪くなる。また30.0質量%を越えて配合すると、塗布時の色ムラが生じるようになる。
【0020】
本発明の唇用下地化粧料に配合される水膨潤性増粘剤としては、従来公知の水膨潤性増粘剤を用いることができる。具体例としては、ベントナイト、モンモリロナイト、ザウコナイト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バーミキュライト、合成ヘクトライト等の、天然及び合成のモンモリロナイト群などの粘土鉱物(有機変性粘度鉱物も含む)。アラビアゴム、トラガント、カラギーナン等の植物系、キサンタンガム等の微生物系、ゼラチン、コンドロイチン硫酸ナトリウム等の動物系、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ニトロセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピセルロース等のセルロース系、コメデンプン、コムギデンプン等の澱粉系、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール等のアルギン酸系、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル等のビニル系、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル樹脂アルカノールアミン液、ポリメタクリル酸エチル、カルボキシビニルポリマー等のアクリル系等が挙げられる。これらの水膨潤性増粘剤の中で好ましいものは、ベントナイト、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース(セルロースガム)である。
【0021】
水膨潤性増粘剤の配合量は0.1〜10.0質量、好ましくは0.5〜5.0質量%である。水膨潤性増粘剤の配合量が0.1質量%未満では、塗布時の色ムラが生じてくすみ補正効果に劣り、10.0質量%を越えると、速乾性が悪くなり、塗布時の色ムラを生じる。
【0022】
本発明の唇用下地化粧料は水中油型乳化物であり、それを構成する水性媒体は、水を主成分として含む媒体であって低級アルコールを含んでいてもよい。水性媒体は、化粧料全体の40.0質量%以上、好ましくは50.0質量%以上を占める。水性媒体の配合量が40.0質量%未満では、速乾性に劣り、口紅の発色や色持ちが悪くなる。
【0023】
本発明においては、前記水性媒体中に保湿剤を含むことが好ましい。
保湿剤としては通常化粧料に用いられているものを適用できる。例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸、短鎖可溶性コラーゲン等が挙げられる。
【0024】
本発明の唇用下地化粧料においては、前記の揮発性炭化水素油分以外の油性成分が配合され得る。かかる油性成分としては、通常化粧料に使用される固形油、半固形油、液状油、揮発性油等から適宜選択できる。これらは、動物油、植物油、鉱物油、合成油を問わず、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、アルキルグリセリルエーテル類、エステル類、フッ素系油剤類、シリコーン油、親油性界面活性剤等を含む。
【0025】
具体的には、オリーブ油、ヤシ油、アボカド油、ヒマシ油、サフラワー油、硬化油、ミンク油、馬油等の油脂類;ラノリン、鯨ロウ、ミツロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、キャンデリラロウ等のロウ類;流動パラフィン、パラフィン、イソパラフィン、マイクロクリスタリンワックス、モクロウ、モンタンワックス、フィッシュトロプスワックス、ワセリン、セレシン、ポリエチレン、ポリブテン、スクワレン、スクワラン、12−ヒドロキシステアリン酸等の炭化水素類;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、ベヘン酸、オレイン酸、イソステアリン酸等の脂肪酸類;イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、ヘキシルドデカノール、コレステロール等の高級アルコール類;バチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール等のアルキルグリセリルエーテル類;オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸エチル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸ステアリル、イソステアリン酸イソセチル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシル、乳酸ミリスチル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル等のエステル類;パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、フッ素変性シリコーン等のフッ素系油剤類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、シクロポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン等のシリコーン油類;グリセリンモノステアレート、モノステアリン酸ソルビタン等の親油性界面活性剤が挙げられ、これらを必要に応じて一種または二種以上組み合わせて配合することができる。
【0026】
本発明の唇用下地化粧料においては、通常化粧料に配合されうる界面活性剤を用いることができる。具体的には、アニオン界面活性剤としては、セッケン用素地、ラウリン酸ナトリウム等の脂肪酸セッケン、ラウリル硫酸ナトリウム等の高級アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレン(以下、POEと略する)ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン酸、ヤシ油脂肪酸メチルタウリッドナトリウム等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、POEステアリルエーテルリン酸塩等のリン酸エステル塩、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、N−ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム等のN−アシルグルタミン酸塩、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等の高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩、ロート油等の硫酸化塩、POEアルキルエーテルカルボン酸塩、POEアルキルアリルエーテルカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、二級アルコール硫酸エステル塩、高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、ロウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム、N−パルミトイルアスパラギン酸ジトリエタノールアミン、カゼインナトリウム等が挙げられる。
【0027】
カチオン界面活性剤としては、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等のジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化セチルピリジウム等のアルキルピリジニウム塩、アルキル四級アンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモリホニウム塩、POEアルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0028】
両性界面活性剤としては、2−ウンデシル−N,N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム等のイミダゾリン系両性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のベタイン系両性界面活性剤等が挙げられる。
【0029】
親油性非イオン系界面活性剤としては、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンセスキオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル、モノステアリン酸グリセリン等のグリセリンポリグリセリン脂肪酸類、モノステアリン酸プロピレングリコール等のプロピレングリコール脂肪酸エステル、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル等が挙げられる。
【0030】
親水性非イオン系界面活性剤としては、POEソルビタンモノステアレート等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類、POEソルビットモノオレエート等のPOEソルビット脂肪酸エステル、POEグリセリンモノイソステアレート等のPOEグリセリン脂肪酸エステル類、POEステアリルエーテル、POEコレスタノールエーテル等のPOEアルキルエーテル、POEノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル、プルロニック等のプルアロニック型類、POE・ポリオキシプロピレン(以下、POPと略する)セチルエーテル等のPOE・POPアルキルエーテル、テトロニック等のテトラPOE・テトラPOPエチレンジアミン縮合体、POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等のPOEヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体、POEミツロウ・ラノリン誘導体、アルカノールアミド、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド、ショ糖脂肪酸エステル、POEノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物、アルキルエトキシジメチルアミンオキシド、トリオレイルリン酸等が挙げられる。
これら界面活性剤は、1種あるいは2種以上を任意に選択して配合することができる。
【0031】
また、本発明においては、上記以外にも、通常の油性化粧料に用いられる各種成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜配合してもよい。具体例を挙げれば、前記顔料以外の粉体(色素、樹脂等)、フッ素化合物、樹脂、粘剤、フェノキシエタノール,エチルパラベンなどの防腐剤、香料、紫外線吸収剤(有機系、無機系を含む。UV−A、Bのいずれに対応していても構わない)、生理活性成分、塩類、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤等が含まれる。
【0032】
紫外線吸収剤の具体例としては、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−硫酸、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、p−メトキシハイドロケイ皮酸ジエタノールアミン塩、パラアミノ安息香酸(以後、PABAと略す)、エチルジヒドロキシプロピルPABA、グリセリルPABA、サリチル酸ホモメンチル、メチル−O−アミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、オクチルジメチルPABA、メトキシケイ皮酸オクチル、サリチル酸オクチル、2−フェニル−ベンズイミダゾール−5−硫酸、サリチル酸トリエタノールアミン、3−(4−メチルベンジリデン)カンフル、2,4−ジヒドロキシベンゾフェニン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−N−オクトキシベンゾフェノン、4−イソプロピル ジベンゾイルメタン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、オクチルトリアゾン、4−(3,4−ジメトキシフェニルメチレン)−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリジンプロピオン酸 2−エチルヘキシルや、これらの高分子誘導体、シラン誘導体等が挙げられる。これらの有機系紫外線吸収剤の中で、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンが特に好ましく用いられる。
【0033】
生理活性成分としては、抗炎症剤、老化防止剤、ひきしめ剤、抗酸化剤、保湿剤、血行促進剤、抗菌剤、殺菌剤、乾燥剤、冷感剤、温感剤、ビタミン類、アミノ酸、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、酵素成分等が挙げられる。その中でも、天然系の植物抽出成分、海藻抽出成分、生薬成分等を特に好ましい。これらの成分の具体例としては、アシタバエキス、アボガドエキス、アマチャエキス、アルテアエキス、アルニカエキス、アロエエキス、アンズエキス、アンズ核エキス、イチョウエキス、ウイキョウエキス、ウコンエキス、ウーロン茶エキス、エイジツエキス、エチナシ葉エキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オウレンエキス、オオムギエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、オランダカラシエキス、オレンジエキス、海水乾燥物、海藻エキス、加水分解エラスチン、加水分解コムギ末、加水分解シルク、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、甘草エキス、カルカデエキス、カキョクエキス、キウイエキス、キナエキス、キューカンバーエキス、グアノシン、クチナシエキス、クマザサエキス、クララエキス、クルミエキス、グレープフルーツエキス、クレマティスエキス、クロレラエキス、クワエキス、ゲンチアナエキス、紅茶エキス、酵母エキス、ゴボウエキス、コメヌカ発酵エキス、コンフリーエキス、コラーゲン、コケモモエキス、サイシンエキス、サイコエキス、サイタイ抽出液、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンザシエキス、サンショウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シソエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、シャクヤクエキス、ショウブ根エキス、シラカバエキス、スギナエキス、セイヨウキズタエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、セージエキス、ゼニアオイエキス、センキュウエキス、センブリエキス、ダイズエキス、タイソウエキス、タイムエキス、茶エキス、チョウジエキス、チガヤエキス、チンピエキス、トウキエキス、トウキンセンカエキス、トウニンエキス、トウヒエキス、ドクダミエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ニンニクエキス、ノバラエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、ハスエキス、パセリエキス、蜂蜜、ハマメリスエキス、パリエタリアエキス、ヒキオコシエキス、ビサボロール、ビワエキス、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、プロポリス、ヘチマエキス、ベニバナエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、ボタンエキス、ホップエキス、マツエキス、マロニエエキス、ミズバショウエキス、ムクロジエキス、メリッサエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、ユキノシタエキス、ユズエキス、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、リンゴエキス、レタスエキス、レモンエキス、レンゲソウエキス、ローズエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキス等を挙げることができる。
【0034】
また、デオキシリボ核酸、ムコ多糖類、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コラーゲン、エラスチン、キチン、キトサン、加水分解卵殻膜等の生体高分子、グリシン、ヴァリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、シスチン、システイン、メチオニン、トリプトファン等のアミノ酸、エストラジオール、エテニルエストラジオールなどのホルモン、アミノ酸、乳酸ナトリウム、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ベタイン、ホエイ等の保湿成分、ε−アミノカプロン酸、グリチルリチン酸、β−グリチルレチン酸、塩化リゾチーム、グアイアズレン、ヒドロコルチゾン、アラントイン、トラネキサム酸、アズレン等の抗炎症剤、ビタミンA,B2,B6,C,D,E,パントテン酸カルシウム、ビオチン、ニコチン酸アミド、ビタミンCエステル等のビタミン類、アラントイン、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸等の活性成分、トコフェロール、カロチノイド、フラボノイド、タンニン、リグナン、サポニン、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、フィチン酸等の抗酸化剤、α−ヒドロキシ酸、β−ヒドロキシ酸等の細胞賦活剤、γ−オリザノール、ビタミンE誘導体等の血行促進剤、レチノール、レチノール誘導体等の創傷治癒剤、セファランチン、トウガラシチンキ、ヒノキチオール、ヨウ化ニンニクエキス、塩酸ピリドキシン、dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸、ニコチン酸誘導体、パントテン酸カルシウム、D−パントテニルアルコール、アセチルパントテニルエチルエーテル、ビオチン、アラントイン、イソプロピルメチルフェノール、エストラジオール、エチニルエステラジオール、塩化カプロニウム、塩化ベンザルコニウム、塩酸ジフェンヒドラミン、タカナール、カンフル、サリチル酸、ノニル酸バニリルアミド、ノナン酸バニリルアミド、ピロクトンオラミン、ペンタデカン酸グリセリル、l−メントール、カンフル等の清涼剤等が挙げられる。
【0035】
本発明の唇用下地化粧料は、水中油型乳化化粧料の通常使用されている方法に従って製造することができる。具体的には、例えば、水膨潤性増粘剤、水性媒体、防腐剤等の水相成分を所定の温度、例えば60〜70℃で攪拌溶解した後、顔料を添加し、例えば70〜80℃で攪拌混合し水相部とし、石鹸成分、油分、ポリイソブチレン、揮発性炭化水素油、酸化防止剤等の油相成分を、例えば70〜80℃に溶解して油相部とし、水相部に油相部を加えて乳化させることにより得ることができる。
【0036】
本発明の唇用下地化粧料は、唇に直接塗布し、その上に口紅やリップグロス、あるいはリップクリーム等を適用するように使用されるものである。
本発明の唇用下地化粧料は水中油型乳化化粧料であり、油性下地化粧料のようなべたつきが無く、石鹸で容易に洗い落とすことができる。また、塗布後の速乾性に優れ、上塗りされる口紅やグロスと密着しやすく、色や質感を損なわずに化粧持ちを向上させることができる。さらに、ポリイソブチレンと揮発性炭化水素油とを組み合わせて用いているので、柔軟でありながら、密着力の高いしっとりした感触の皮膜形成が可能となり、色移り防止効果にも優れている。
【実施例】
【0037】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、配合量は特記しない限り質量%を意味する。
下記の表1に示す処方で水中油型の唇用下地化粧料を調製し、それらの特性を下記の評価方法、評価基準に従って評価した。それらの結果を表1に併せて示す。
【0038】
(評価方法)
実施例及び比較例の各サンプルを、パネリスト(10名)に筆で唇に塗布してもらい、化粧料の速乾性、塗布後のべたつき、くすみ補正効果、塗布時の色ムラ、しっとりさを評価し、更にその上から、油性口紅を塗布してもらい、口紅の発色、口紅の色持ち(色混ざり)について評価した。具体的には5段階官能評価して、その平均値により下記評価基準で判定した。 なお、耐移り性は陶器のコーヒーカップに唇を直接つけて評価してもらった。
(スコア)
5:非常に優れている
4:優れている
3:普通
2:劣る
1:非常に劣る
(評価基準)
◎:評価値(平均値)4.0以上5.0点以下
○:評価値(平均値)3.0以上4.0点未満
△:評価値(平均値)2.0以上3.0点未満
×:評価値(平均値)1.0以上2.0点未満
【0039】
【表1】

【0040】
特許文献4に記載されているような有機シリコーン樹脂を配合した比較例1は、全ての評価項目において或る程度の優れた結果が得られたが、皮膜のごわつき、ぱさつきがあり、しっとりした感触がやや劣っていた。それに対して所定範囲内の相対質量を持つポリイソブチレンと揮発性炭化水素油とを配合した実施例1〜3では、塗布したときにごわつかず、しっとりした感触が得られた。
【0041】
【表2】

【0042】
ポリイソブチレンと同じ炭化水素系樹脂であるポリイソプレンを同量配合した比較例2は、ポリイソプレンの不快な原料臭を発し、化粧料としては不適切であった。相対質量が30,000に満たないポリイソブチレンを配合した比較例3は十分な耐移り性が得られず、べたついた感触があり、相対質量が100,000を越えるポリイソブチレンを配合した比較例4は、上記評価項目においては或る程度良好な結果が得られたが、糸引きを生じてしまい使用性に劣るものであった。
また、本発明所定範囲の相対質量(例えば55,000)を有するポリイソブチレンを用いた処方であっても、その配合量を0.1質量%未満(例えば0.05質量%)とすると、くすみ補正効果やしっとりさ並びに発色性などにおいて劣り、8質量%を越える配合量(例えば10.0質量%)とすると、速乾性が不十分でべたつきを感じるものとなる場合があることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
30,000〜100,000の相対質量を有するポリイソブチレン、揮発性炭化水素油、顔料、水膨潤性増粘剤、及び水性媒体を含有することを特徴とする水中油型乳化下地化粧料。
【請求項2】
相対質量100,000を越えるポリイソブチレンを含まない、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記ポリイソブチレンの配合量が0.1〜8.0質量%であり、前記揮発性炭化水素油の配合量が1〜50質量%である、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】
前記水性媒体の配合量が40質量%以上である、請求項1から3の何れか一項に記載の化粧料。

【公開番号】特開2013−35767(P2013−35767A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171838(P2011−171838)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】