説明

水中油型乳化化粧料

【課題】保存安定性、凹凸補正効果に優れた水中油型乳化化粧料を提供する。
【解決手段】(A)カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマー、(B)水及び油に不溶である樹脂粉体、(C)モノイソステアリン酸ソルビタン及び/又はジイソステアリン酸ソルビタン、(D)エタノールを含有する水中油型乳化化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキンケア化粧料、メイクアップ化粧料、日焼け止め化粧料として好適な水中油型乳化化粧料に関し、更に詳しくは、保存安定性に優れ、キメ、毛穴、しわ等を目立たせなくする凹凸補正効果にも優れた水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カルボキシビニルポリマーやアルキル変性カルボキシビニルポリマーをゲル化剤として用いる乳化組成物は、滑らかな感触を持っているために化粧料で多用されてきた。しかし、キメ、毛穴、しわ等を目立たせなくする凹凸補正効果を付与するために、樹脂粉体を配合すると、保存安定性が著しく劣ってしまった。これを克服しようとする特許(特許文献1、2、3参照)も開示されているが、未だ十分満足の得られる結果とはなっていない。
【0003】
【特許文献1】特開2000−302638号公報
【特許文献2】特開2002−226320号公報
【特許文献3】特開2004−175677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的とするところは、上記の問題を解決し、保存安定性に優れ、キメ、毛穴、しわ等を目立たせなくする凹凸補正効果を持つ水中油型乳化化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的は、(A)カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマー、(B)水及び油に不溶である樹脂粉体、(C)モノイソステアリン酸ソルビタン及び/又はジイソステアリン酸ソルビタン、(D)エタノールを含有する水中油型乳化化粧料により達成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の水中油型乳化化粧料は、保存安定性、キメ、毛穴、しわ等を目立たせなくする凹凸補正効果に特に優れているが、のびの良さ、べたつきのなさ、清涼感、化粧持ち、艶、保湿性、安全性といった利点も持っている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に用いられる(A)カルボキシビニルポリマーは主としてアクリル酸の重合体であり、例えば、B.F.Goodrich社製のCarbopol 980、Carbopol 981、Sigma社製のSynthalen K、Synthalen L等が挙げられる。アルキル変性カルボキシビニルポリマーはアクリル酸とメタクリル酸アルキル(C10〜C30)の共重合体であり、例えば、B.F.Goodrich社製のPEMULEN TR−1、PEMULEN TR−2、Carbopol 1382等が挙げられる。これらは単独又は組み合わせて使用することができる。
【0008】
本発明に用いられる(A)カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマーの配合量は、それを含有する水中油型乳化化粧料全体を100質量%として、好ましくは0.05〜1.0質量%であり、特に好ましくは0.1〜0.6質量%である。
【0009】
本発明に用いられる(B)水及び油に不溶である樹脂粉体としては、架橋型シリコーン末、メチルシロキサン網状重合体、架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体、ナイロン末、ポリアクリル酸アルキル等が挙げられる。これらは単独又は組み合わせて使用することができる。
【0010】
本発明に用いられる(B)水及び油に不溶である樹脂粉体の配合量は、好ましくは0.5〜50.0質量%であり、特に好ましいのは1.0〜30.0質量%である。
【0011】
本発明に用いられる(C)モノイソステアリン酸ソルビタン及び/又はジイソステアリン酸ソルビタンの配合量は、好ましくは0.1〜5.0質量%であり、特に好ましいのは0.3〜3.0質量%である。両者の混合物として、セスキイソステアリン酸ソルビタンを用いても良い。
【0012】
本発明に用いられる(D)エタノールの配合量は、好ましくは1.0〜25.0質量%であり、特に好ましいのは3.0〜20.0質量%である。
【0013】
本発明の水中油型乳化化粧料は、一般的に、中和剤等を用いてpHを調整するのが好ましい。中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物やトリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の有機塩基が挙げられる。
【0014】
また、本発明に用いられる中和剤の含有量は、最終生成物のpHが4〜9になるように調整するのが好ましく、更に好ましくはpH6〜8である。
【0015】
本発明の水中油型乳化化粧料には、上記の必須成分に加えて、必要に応じて油性成分、保湿剤、乳化剤、香料、紫外線吸収剤、防腐剤、植物エキス、顔料等を配合することが出来る。油剤の配合量としては、製剤の種類により異なるが、好ましくは0.5〜30質量%、さらに好ましくは1〜20質量%である。
【実施例】
【0016】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0017】
なお、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース等の水溶性高分子を用いる場合には、前もって精製水で2%水溶液を調製して使用した。
【0018】
実施例1(乳液)
(質量%)
1.2%カルボキシビニルポリマー水溶液 5.0
2.濃グリセリン 3.0
3.ハマメリス水 0.1
4.精製水 68.45
5.エタノール 20.0
6.モノイソステアリン酸ソルビタン 0.3
7.パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 2.0
8.ポリアクリル酸アルキル *1 1.0
9.トリエタノールアミン 0.1
10.カンゾウフラボノイド 0.05
*1;マイクロスフェアーS−102(松本油脂製薬(株)製)
【0019】
調製方法
成分1〜4を混合分散し、それに成分5〜10を混合分散したものを加え分散した。
【0020】
比較例1
実施例1の成分8に替えて、マイカを用いた他は実施例1と同様にして乳液を調製した。
【0021】
実施例2(クリーム)
(質量%)
1.流動パラフィン 10.0
2.ワセリン 1.0
3.ステアリン酸 1.0
4.自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 1.0
5.ジカプリル酸プロピレングリコール 3.0
6.セタノール 0.5
7.植物性スクワラン 0.5
8.2%カルボキシビニルポリマー水溶液 10.0
9.濃グリセリン 3.0
10.水酸化カリウム 0.1
11.セチル硫酸ナトリウム 0.1
12.パラオキシ安息香酸エステル 0.2
13.ニンジンエキス 0.5
14.オトギリソウエキス 0.5
15.精製水 64.1
16.エタノール 3.0
17.ジイソステアリン酸ソルビタン 0.5
18.メチルシロキサン網状重合体 *2 1.0
*2;トスパール145(GE東芝シリコーン(株)製)
【0022】
調製方法
成分1〜7を80℃にて混合分散し、それに成分8〜15を80℃にて混合分散したものを加え分散した。これを60℃まで冷却し、成分16〜18を混合分散したものを加え、分散し、25℃まで冷却した。
【0023】
比較例2
実施例2の成分16に替えて、プロピレングリコールを用いた他は実施例2と同様にしてファンデーションを調製した。
【0024】
実施例3(化粧下地)
(質量%)
1.2%カルボキシビニルポリマー水溶液 3.0
2.2%アルキル変性カルボキシビニルポリマー水溶液 3.0
3.ジプロピレングリコール 3.0
4.架橋型シリコーン末水分散物 *3 30.0
5.エデト酸ニナトリウム 0.05
6.チャ実エキス 0.1
7.アボカドエキス 0.1
8.精製水 15.1
9.エタノール 10.0
10.パラメトキシケイ皮酸2−エチルへキシル 7.0
11.メチルポリシロキサン 4.0
12.モノイソステアリン酸ソルビタン 1.0
13.2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール 0.15
14.メチルシロキサン網状重合体 *4 8.0
15.微粒子酸化チタン 0.5
16.2%キサンタンガム水溶液 15.0
*3;BY29−122(架橋型シリコーン末を約63質量%含有、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)
*4;トスパール145(GE東芝シリコーン(株)製)
【0025】
調製方法
成分1〜8を混合分散し、それに成分9〜15を混合分散したものを加え分散、さらに成分16を加え分散した。
【0026】
比較例3
実施例3の成分12に替えて、ポリオキシエチレン(6)モノイソステアリン酸ソルビタンを用いた他は実施例3と同様にして化粧下地を調製した。
【0027】
実施例4(ファンデーション)
(質量%)
1.2%カルボキシビニルポリマー水溶液 30.0
2.濃グリセリン 5.0
3.マルチトール液 2.0
4.架橋型シリコーン末水分散物 *5 5.0
5.エデト酸二ナトリウム 0.05
6.オリーブ葉エキス 0.1
7.シャクヤクエキス 0.1
8.精製水 10.35
9.エタノール 15.0
10.モノイソステアリン酸ソルビタン 1.5
11.ジイソステアリン酸ソルビタン 1.0
12.ヒドロキシステアリン酸2−エチルヘキシル 5.0
13.ジカプリル酸プロピレングリコール 3.0
14.2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール 0.5
15.10%無水ケイ酸被覆酸化チタン 10.0
16.10%無水ケイ酸被覆ベンガラ 0.3
17.10%無水ケイ酸被覆黄酸化鉄 1.0
18.10%無水ケイ酸被覆黒酸化鉄 0.1
19.2%キサンタンガム水溶液 10.0
*5;BY29−119(架橋型シリコーン末を約63質量%含有、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)
【0028】
調製方法
成分15〜18を混合粉砕し、成分9〜14を混合分散したものに加え分散してエタノール相とした。成分1〜8を混合分散し、エタノール相を加え分散した後成分19を加え分散した。
【0029】
比較例4
実施例4の成分4に替えて、精製水を用いた他は実施例4と同様にしてファンデーショ
ンを調製した。
【0030】
実施例5(サンスクリーン)
(質量%)
1.2%アルキル変性カルボキシビニルポリマー水溶液 30.0
2.1,3−ブチレングリコール 3.0
3.エデト酸ニナトリウム 0.05
4.シルク抽出液 0.1
5.精製水 12.35
6.エタノール 20.0
7.モノイソステアリン酸ソルビタン 1.0
8.ジイソステアリン酸ソルビタン 2.0
9.パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 8.0
10.メチルポリシロキサン 5.0
11.架橋型シリコーン末油分散物 *6 5.0
12.ナイロン末 *7 5.0
13.2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール 0.5
14.微粒子酸化チタン 3.0
15.2%キサンタンガム水溶液 5.0
*6;特開平9−71509号公報で開示されている粉砕溶液(架橋型シリコーン末を約20質量%、5量体環状シリコーンを約80質量%含有)
*7;SP−500(東レ(株)製)
【0031】
調製方法
成分1〜5を混合分散し、それに成分6〜14を混合分散したものを加え分散した。最後に成分15を加え分散した。
【0032】
比較例5
実施例5の成分1に替えて、2%ヒドロキシエチルセルロース水溶液を用いた他は実施例5と同様にしてサンスクリーンを調製した。
【0033】
本発明で使用した(1)保存安定性試験、(2)凹凸補正効果評価試験の各試験方法は下記の通りである。
【0034】
(1)保存安定性試験
試料を0℃、25℃、45℃の恒温槽内で3ヶ月間保存し、水相成分と油相成分の分離が起こるかどうかを調べた。
どの温度で保存しても分離しない:◎
25℃以下の保存では分離せず、45℃保存では分離する:○
25℃以下での保存でも分離する:×
【0035】
(2)凹凸補正効果評価試験
女性パネルメンバー20名に、実施例、比較例の各試料を塗布してもらい、「キメ、毛穴、しわ等が目立たない」と回答した人数に従って凹凸補正効果を評価した。
【0036】
実施例1〜5、比較例1〜5の各試料に上記試験を行った結果を以下に示す。
実施例 比較例
1 2 3 4 5 1 2 3 4 5
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
保存安定性試験 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ × ◎ ×
凹凸補正効果 16 16 19 17 18 3 10 13 3 13
評価試験
【0037】
本発明の実施例1〜5の試料は保存安定性、凹凸補正効果のどちらにおいても優れており、一方比較例1〜5は劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の水中油型乳化化粧料は、保存安定性、凹凸補正効果に特に優れているが、のびの良さ、べたつきのなさ、清涼感、化粧持ち、艶、保湿性、安全性といった長所も備えている。そのため整肌および美容の為に用いる医薬品、医薬部外品または化粧品の分野での応用が可能であり、産業上極めて有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマー、(B)水及び油に不溶である樹脂粉体、(C)モノイソステアリン酸ソルビタン及び/又はジイソステアリン酸ソルビタン、(D)エタノールを含有する水中油型乳化化粧料。

【公開番号】特開2006−111542(P2006−111542A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−298318(P2004−298318)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(504180206)株式会社カネボウ化粧品 (125)
【Fターム(参考)】