説明

水中油型乳化化粧料

【課題】清涼感と視覚的潤い感を有し、使用感及び保存安定性に優れた水中油型乳化化粧料を提供する。
【解決手段】水相中に、バイオサーファクタント(特にMELが好ましい)を含みかつ平均粒径が1μm以下である油相が分散する系において、疎水性部分と親水性部分を有する非イオン性ポリマーを含有することを特徴とする水中油型乳化化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中油型乳化化粧料、更に詳しくは、清涼感と視覚的潤い感を有し、使用感及び
保存安定性に優れた、特に化粧料として有用な水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、肌にうるおいを与え、肌を柔軟にするには、角質層の水分が重要であることが知られている。そして、当該水分の保持は、角質層に含まれている水溶性成分、すなわち遊離アミノ酸、有機酸、尿素又は無機イオンによるものであるとされ、これらの物質は単独であるいは組み合わせて薬用水中油型乳化化粧料あるいは水中油型乳化化粧料に配合して、肌あれの改善又は予防の目的で使用されている。
【0003】
また、これとは別に水と親和性が高い多くの保湿性物質が開発され、同様の目的で使用されている。
【0004】
更に、近年では、角質細胞間に存在する脂質が高い保湿能を有することが見出され、当該角質細胞間脂質成分の類似構造物質で構成される人工細胞間脂質によって、肌にうるおいを与え、柔軟化させることが行われ、比較的高い効果が得られている。
【0005】
ところで、近年、様々な分野で両親媒性物質が利用されている。両親媒性物質とは親水性と親油性との二つの異なる性質を併せ持つ物質のことであって、このような性質を有する物質は界面活性物質と呼ばれている。例えば、糖脂質は、糖の性質に由来する親水性と脂質の性質に由来する親油性との二つの性質を併せ持ったものであり、界面活性物質の一例である。
【0006】
石油化学工業の発展によって合成界面活性剤が開発され、生体成分由来の界面活性物質に比べて合成界面活性剤の生産量は飛躍的に増加し、今や日常生活には無くてはならない物質となった。
【0007】
しかしながら、合成界面活性剤は生分解性が低いので、合成界面活性剤の使用量の拡大に伴って環境汚染が深刻な問題になりつつある。そこで、環境に対する負荷を低減するために、安全性が高いとともに生分解性が高いバイオサーファクタントが再び見直されており、様々な種類のバイオサーファクタントの開発が望まれるようになった。
【0008】
上記バイオサーファクタントとしては、糖脂質系、アシルペプタイド系、リン脂質系、脂肪酸系および高分子化合物系の5種類のバイオサーファクタントを挙げることができる。
【0009】
上記バイオサーファクタントのうち、リン脂質系バイオサーファクタントであるレシチンは、古くから乳化剤として用いられているばかりでなく、水に懸濁させると、当該リン脂質が会合して二重膜を形成し、水相を閉じこめたベシクルを形成することが知られている。このベシクルはリポソームとも呼ばれ、生体膜のモデルまたは化粧品や薬物の担体として利用されている。なお、リン脂質系以外のバイオサーファクタントにおいてベシクルを形成するものは、ほとんど知られていないのが現状である。
【0010】
一方、糖脂質系のバイオサーファクタントとしては、細菌または酵母によって生産される、多くの種類のバイオサーファクタントが報告されている。糖脂質系のバイオサーファクタントは、生分解性が高く、低毒性であって環境に優しいばかりでなく、優れた生理機能を有している。例えば、糖脂質系のバイオサーファクタントは、それ自体が保湿効果が高いことが知られており、化粧品等の成分として用いることが期待されている。
【0011】
代表的な糖脂質系バイオサーファクタントの一つにマンノシルエリスリトールリピッド(以下「MEL」と示すことがある)がある。MELは、Ustilago nuda(ウスチラゴ・ヌーダ)とShizonella melanogramma(シゾネラ・メラノグラマ)から発見された物質である(非特許文献1及び2参照)。その後、イタコン酸生産の変異株であるCandida属酵母(特許文献2及び非特許文献3参照)、Candida antarctica(キャンデダ・アンタークチカ)(現在はPseudozyma antarctica(シュードザイマ・アンタークチカ))(非特許文献4及び5参照)、Kurtzmanomyces(クルツマノマイセス)属(非特許文献6参照)等の酵母らによっても生産されることが報告されている。現在では、長時間の連続培養・生産を行うことで100g/L以上の生産が可能となっている。
【0012】
MELには糖骨格のエリスリトールの光学異性体として、以下の一般式(1)に示されるような4−O−β−D−マンノピラノシル−meso−エリスリトール構造と1−O−β−D−マンノピラノシル−meso−エリスリトール構造(下記一般式(2))が存在する。
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】

【0015】
この1−O−β−D−マンノピラノシル−meso−エリスリトール構造を有するMELの1種を合成し、これとの比較によって従来のMELの糖骨格が上記一般式(1)の構造であることが証明されている(非特許文献7)。ごく最近、従来の4−O−β−D−マンノピラノシル−meso−エリスリトール構造を有するMELに対して、その光学異性体である上記一般式(2)の1−O−β−D−マンノピラノシル−meso−エリスリトール構造を有するMELをシュードザイマ・ツクバエンシス(Pseudozyma tsukubaensis)等の微生物を用いて生産することによって、量産できることが判明した(特許文献3)。
【0016】
従来の4−O−β−D−マンノピラノシル−meso−エリスリトール構造を有するMELについては、抗菌性、抗腫瘍性、糖タンパク結合能をはじめ、様々な生理活性を有することが報告されている(非特許文献8)。また、この従来のMELは極めて特異な自己集合特性を示し、分子構造の僅かな違いが自己集合体の形成に多大な影響を与えるばかりでなく、それを活用したベシクル形成について、希薄溶液(6.3×10−2wt%以下)においてのみ報告されている(非特許文献9)。さらに、従来のMELの両連続スポンジ構造を用いた液晶乳化技術(特許文献4)についても報告している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特許3095420号明細書
【特許文献2】特公昭57−145896号公報
【特許文献3】WO2008/018448
【特許文献4】特開2007−181789号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】アール.エイチ.ハスキンス(R. H. Haskins),ジェイ.エー.トーン(J. A. Thorn),B. Boothroyd,「カナデアン ジャーナル オブ ケミストリー(Can. J. Microbiol.)」,1巻,p749−756(1955).
【非特許文献2】ジー.デム(G. Deml),ティ.アンケ(T. Anke),エフ.オーバーウインカー(F. Oberwinkler),ビー.エム.ジアネッティー(B. M. Giannetti),ダブリュ.ステグリッチ(W. Steglich),「フィトケミストリー(Phytochemistry)」,19巻,p83−87(1980).
【非特許文献3】ティ.ナカハラ(T. Nakahara),エイチ.カワサキ(H. Kawasaki),ティ.スギサワ(T. Sugisawa),ワイ.タカモリ(Y. Takamori),ティ.タブチ(T. Tabuchi),「ジャーナル オブ ファーメンテーション テクノロジー(J. Ferment.Technol.)」,(日本),日本発酵工学会,61巻,p19−23(1983).
【非特許文献4】ディ.キタモト(D. Kitamoto),エス.アキバ(S. Akiba),シー.ヒオキ(C. Hioki),ティ.タブチ(T. Tabuchi)「アグリカリチュラル アンド バイオロジカル ケミストリー(Agric. Biol. Chem.)」,(日本),日本農芸化学会,54巻.p31−36(1990).
【非特許文献5】エイチ.エス.キム(H.-S. Kim),ビー.ディ.ユーン(B.-D. Yoon),ディ.エイチ.チョン(D.-H. Choung),エイチ.エム.オー(H.-M. Oh),ティ.カツラギ(T. Katsuragi),ワイ.タニ(Y. Tani)「アプライド マイクロバイオロジー アンド バイオテクノロジー(Appl. Microbiol. Biotechnol.)」,(ドイツ),スプリンガー−バーラグ(Springer-Verlag),52巻,p713−721(1999).
【非特許文献6】角川(K. kakukawa),玉井(M. Tamai),今村(K. Imamura),宮本(K. Miyamoto),三好(S. Miyoshi),森永(Y. Morinaga),鈴木(O. Suzuki),宮川(T. Miyakawa)「バイオサイエンス,バイオテクノロジー アンド バイオケミストリー(Biosci. Biotechnol. Biochem.)」,(日本),日本農芸化学会,66巻,p188−191(2002).
【非特許文献7】ディ.クリッチ(D. Crich),エム.エー.モーラ(M. A. Mora),アール.クルツ(R. Cruz)「テトラヘドロン(Tetrahedron)」,(オランダ),エルゼビア(Elsevier),58巻,p35−44(2002).
【非特許文献8】北本 大「オレオサイエンス」,(日本),日本油化学会,3巻,p663−672(2003).
【非特許文献9】ティ.イムラ(T. Imura),エヌ.オオタ(N. Ohta),ケー.イノウエ(K. Inoue),エヌ.ヤギ(N. Yagi),エイチ.ネギシ(H. Negishi),エイチ.ヤナギシタ(H. Yanagishita),ディ.キタモト(D. Kitamoto)「ケミストリー ア ヨーロピアン ジャーナル(Chem. Eur. J)」,(米国),ワイリー(Wiley),12巻,p2434−2440(2006).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、清涼感と視覚的潤い感を有し、使用感及び保存安定性に優れた水中油型乳化化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
かかる実情において、本発明者らは上記問題点を解決すべく鋭意研究を行ったところ、バイオサーファクタント、例えば上述のMELを用いて、油性成分が微粒子化した状態で存在する系に、特定の非イオン性ポリマーを配合することにより、清涼感と視覚的潤い感を有し、使用感及び保存安定性に優れた水中油型乳化化粧料が得られ、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0021】
すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
(1)水相中に、バイオサーファクタントを含みかつ平均粒径が1μm以下である油相が分散する系において、疎水性部分と親水性部分を有する非イオン性ポリマーを含有することを特徴とする水中油型乳化化粧料。
(2)バイオサーファクタントが、マンノース骨格を有することを特徴とする(1)の水中油型乳化化粧料。
(3)バイオサーファクタントが、マンノース骨格の1位の水酸基に糖アルコールがグリコシド結合していることを特徴とする(2)の水中油型乳化化粧料。
(4)マンノース骨格を有するバイオサーファクタントがマンノシルエリスリトールリピッド(MEL)、マンノシルマンニトールリピッド(MML)、マンノシルソルビトールリピッド(MSL)、マンノシルアラビトールリピッド(MAraL)及びマンノシルリビトールリピッド(MRL)からなる群より選ばれた1種以上の化合物であることを特徴とする(2)または(3)の水中油型乳化化粧料。
(5)MELが、マンノシルエリスリトールリピッドA(MEL−A)、マンノシルエリスリトールリピッドB(MEL−B)、マンノシルエリスリトールリピッドC(MEL−C)、マンノシルエリスリトールリピッドD(MEL−D)、MEL−Aのトリアシル体、MEL−Bのトリアシル体、MEL−Cのトリアシル体及びMEL−Dのトリアシル体からなる群より選ばれた1種以上の化合物であることを特徴とする(4)の水中油型乳化化粧料。
(6)バイオサーファクタントが、飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸を含有していることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかの水中油型乳化化粧料。
(7)バイオサーファクタントに対するバイオサーファクタントの油性成分の比率が1以下であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかの水中油型乳化化粧料。
(8)界面活性剤の含有量が0〜1.0質量%であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかの水中油型乳化化粧料。
(9)波長550nmでの光透過率が0.1〜92%であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかの水中油型乳化化粧料。
【発明の効果】
【0022】
本発明の水中油型乳化化粧料は、バイオサーファクタントを含有するため、清涼感と視覚的潤い感を有し、しかも使用感及び保存安定性に優れたものである、特に化粧料として有用である水中油型乳化化粧料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の水中油型乳化化粧料は、バイオサーファクタント、特にMELを含むものである。それ故、本発明の水中油型乳化化粧料は、優れた特性を示すという効果を奏する。
【0024】
(バイオサーファクタント)
本発明の化粧料に固形脂の一部として使用される(A)バイオサーファクタントとは、生物によって生み出される界面活性能力や乳化能力を有する物質の総称であり、優れた界面活性や、高い生分解性を示すばかりでなく、様々な生理作用を有していることから合成界面活性剤とは異なる挙動・機能を発現する可能性がある。
【0025】
上記バイオサーファクタントとしては、マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)、MEL以外のマンノシルアルジトールリピッド(MAL)としては、マンノシルマンニトールリピッド(MML)、マンノシルソルビトールリピッド(MSL)、マンノシルアラビトールリピッド(MAraL)、マンノシルリビトールリピッド(MRL)などが挙げられ、なかでも、ラメラ構造又は/及びベシクルを形成するバイオサーファクタントを利用するのが好ましく、MELが特に好ましい。
【0026】
(MEL)
MELの構造を一般式(3)に示す。一般式(3)中、置換基R1は、同一でも異なっていてもよい炭素数4〜24の脂肪族アシル基である。MELは、マンノースの4位及び6位のアセチル基の有無に基づいて、MEL−A、MEL−B、MEL−C及びMEL−Dの4種類に分類される。
【0027】
【化3】

【0028】
具体的には、MEL−Aは、一般式(3)中、置換基R2およびR3がともにアセチル基である。MEL−Bは、一般式(3)中、置換基R2はアセチル基であり、置換基R3は水素である。MEL−Cは、一般式(3)中、置換基R2が水素であり、置換基R3はアセチル基である。MEL−Dは、一般式(3)中、置換基R2及びR3がともに水素である。
【0029】
上記MEL−A〜MEL−Dにおける置換基R1の炭素数は、MEL生産培地に含有させる油脂類であるトリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数、および、使用するMEL生産菌の脂肪酸の資化の程度によって変化する。また、上記、トリグリセリドが不飽和脂肪酸残基を有する場合、MEL生産菌が上記不飽和脂肪酸の二重結合部分まで資化しなければ、置換基R1として不飽和脂肪酸残基を含ませることも可能である。以上の説明から明らかなように、得られるMELは、通常、置換基R1の脂肪酸残基部分が異なる化合物の混合物の形態である。
【0030】
本発明の組成物には一般式(4)または一般式(5)に示されている構造を有するマンノシルエリスリトールリピッドが含まれている。尚、一般式(4)中、置換基R1は同一でも異なっていてもよい炭素数4〜24の脂肪族アシル基であり、置換基R2は同一でも異なっていてもよい水素またはアセチル基であり、置換基R3は水素または炭素数2〜24の脂肪族アシル基である。また、一般式(5)中、置換基R1は同一でも異なっていてもよい炭素数4〜24の脂肪族アシル基であり、置換基R2は同一でも異なっていてもよい水素またはアセチル基であり、置換基R3は水素または炭素数2〜24の脂肪族アシル基である。
【0031】
一般式(4)及び一般式(5)における置換基R1は、同一でも異なっていてもよい炭素数4〜24の脂肪族アシル基である。置換基R1の炭素数は上記範囲内であれば特に限定されないが、8個〜14個であることがさらに好ましい。
【0032】
また、上記一般式(4)及び一般式(5)中の置換基R1は、飽和脂肪族アシル基であっても不飽和脂肪族アシル基であってもよく、特に限定されるものではない。不飽和結合を有している場合、例えば、複数の二重結合を有していても良い。炭素鎖は直鎖であっても分岐鎖状であってもよい。また、酸素原子含有炭化水素基の場合、含まれる酸素原子の数及び位置は特に限定されない。
【0033】
【化4】

【0034】
【化5】

【0035】
MEL以外のMAL(マンノシルアルジトールリピッド)の構造は一般式(6)に示す(式中、置換基R2は同一でも異なっていてもよい水素またはアセチル基である)。エリスリトール以外の糖アルコール(アルジトール)としては、マンニトール、アラビトール、リビトール、ソルビトールが付加している(n=4:マンニトール、ソルビトール、n=2:アラビトール、リビトール)。一般式(6)に対応させれば、MALはマンノースの2位、3位に炭素数2〜20、好ましくは炭素数4〜18、より好ましくは炭素数6〜14の飽和又は不飽和の直鎖又は分枝を有するアルカノイル基を有する(式中、置換基R2は同一でも異なっていてもよい水素またはアセチル基である)
【0036】
【化6】

【0037】
(式中、置換基R1は同一でも異なっていてもよい炭素数2〜20、好ましくは炭素数4〜18、より好ましくは炭素数6〜14の飽和又は不飽和の直鎖又は分枝を有するアルカノイル基を有し、式中、置換基R2は同一でも異なっていてもよい水素またはアセチル基である。好ましくは、式中、置換基R2のどちらもアセチル基である化合物である。)
【0038】
(トリアシル体)
本発明に用いられるバイオサーファクタントは、MELのトリアシル体及びMEL以外のMALのトリアシル体でもよい。トリアシル体のバイオサーファクタントは、MELやMEL以外のMALよりもさらに高い疎水性を有するバイオサーファクタントである。例えば、MEL生産菌の培養液にも存在するし、大量に得る時は、酵素を用いてMELを種々の植物油と反応することによって製造することもできる。
【0039】
MELのトリアシル体、すなわちトリアシルマンノシルエリスリトールリピッド(トリアシルMELと称することがある)は、一般式(4)または一般式(5)中、置換基R1およびR3がいずれも脂肪族アシル基であればトリアシルMELとなり、置換基R2は同一でも異なっていてもよい水素またはアセチル基である。トリアシルMELもMELと同様、マンノースの4位及び6位のアセチル基の有無に基づいて、トリアシルMEL−A、トリアシルMEL−B、トリアシルMEL−C及びトリアシルMEL−Dの4種類に分類される。
【0040】
【化7】

【0041】
【化8】

【0042】
トリアシルMELは、ジアシルMELとは異なった性質を示す。具体的には、高い疎水性を有することからエモリエント剤として従来のMELと比べても種々のオイル成分と馴染みやすい点で優れている。
【0043】
本発明に好ましく用いられるバイオサーファクタントは、一般式(7)または一般式(8)にて示される構造を有するMEL−Bである。
【0044】
【化9】

【0045】
【化10】

【0046】
(一般式(7)及び一般式(8)中、置換基R1は同一でも異なっていてもよい炭素数4〜24の脂肪族アシル基である)
【0047】
なお、上記バイオサーファクタントは、単独で使用してもよいが、2種以上のバイオサーファクタントを併用することもできる。
【0048】
(バイオサーファクタントの製造方法)
バイオサーファクタントの製造方法は特に制限されるものはないが、微生物を用いた発酵方法を任意に選択して行えば良い。例えばMEL (MEL−A、MEL−B、MEL−C)の培養生産は常法に従って、Pseudozyma antarctica(NBRC 1073)により生産することができ、微生物としてはPseudozyma antarctica、Pseudozyma sp.等を用いることができる。いずれの微生物でも容易にMEL混合物が得られることは周知の事実である。MEL混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、MEL−A、MEL−B及びMEL−Cを単離することが出来る。また、MEL−Bを生産する菌としては、Pseudozyma antarctica 、及びPseudozyma tsukubaensisが知られており、その菌を用いてもよい。MEL−Cを生産する菌としては、Pseudozyma hubeiensis、Pseudozyma graminicola等が知られており、その菌を用いてもよい。MELを生産する能力を有する微生物としては特に限定するものではなく、目的に応じて適宜使用することができる。
【0049】
バイオサーファクタントを生産するときの発酵培地は、酵母エキス、ペプトン等のN源、グルコース、グリセロール、フルクトース等のC源、及び硝酸ナトリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸マグネシウム7水塩等の無機塩類からなる一般的な組成の培地を用いることができ、これにオリーブ油、ダイズ油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、キャノーラ油、ココナッツ油等の油脂類、並びに、流動パラフィン、テトラデカン等の炭化水素等の非水溶性基質の単独或いは2種以上を添加したものを使用することができる。
【0050】
pHや温度等の発酵条件や培養時間等は任意に設定でき、発酵後の培養液をそのまま本発明のバイオサーファクタントとして使用することが可能である。また、発酵後の培養液を必要に応じて濾過、遠心分離、抽出、精製、滅菌等の任意の操作を適宜加えることも可能であり、得られたエキスを希釈、濃縮、乾燥することもできる。
【0051】
原料とする油脂類としては植物油脂が好ましい。植物油脂は特に限定されず、目的に応じて適宜選定することができる。例えば、大豆油、菜種油、コーン油、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、パーム油などが挙げられ、これらの中でも、大豆油、オリーブ油がバイオサーファクタント(特にMEL)の生産効率(生産量、生産速度、及び収率)を向上させることができる点で特に好ましい。これらは、1種を単独で、または2種以上を併用しても構わない。
【0052】
無機窒素源としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、硝酸アンモニウム、尿素、硝酸ナトリウム、塩化アンモニウム、硫安等が挙げられる。
【0053】
バイオサーファクタントの回収、精製方法には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、培養液を遠心分離して油分を回収し、酢酸エチル等の有機溶媒で抽出濃縮することにより回収することができる。
【0054】
抽出溶媒としては、水、アルコール類(例えば、メタノール、無水エタノール、エタノールなどの低級アルコール、またはプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコール)、アセトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチルなどのエステル類、キシレン、ベンゼン、クロロホルムなどの有機溶媒を、単独であるいは2種類以上の混液を任意に組み合わせて使用することができ、また、各々の溶媒抽出物が組み合わされたものでも使用することができる。
【0055】
抽出方法は特に制限されるものはないが、通常、常温から常圧下での溶媒の沸点の範囲であればよく、抽出後は濾過またはイオン交換樹脂を用い、吸着・脱色・精製して溶液状、ペースト状、ゲル状、粉末状とすればよい。多くの場合は、そのままの状態で利用できるが、必要であれば、その効力に影響のない範囲でさらに脱臭、脱色などの精製処理を加えてもよい。脱臭・脱色等の精製処理手段としては、活性炭カラムなどを用いればよく、抽出物質により一般的に適用される通常の手段を任意に選択して行えばよい。必要に応じて、シリカゲルカラムを用いて精製することにより、純度の高いバイオサーファクタントを得ることができる。
【0056】
(トリアシル体製造方法)
バイオサーファクタントのトリアシル体を得る方法を、MELのトリアシル体を製造する方法を例として説明するが、本発明に用いられるバイオサーファクタントのトリアシル体はトリアシルMELに限定されない。
【0057】
例えば、トリアシルMELを得るためには、上記のようにして微生物を発酵して製造した培養液からトリアシルMEL画分を精製して得ることができる。また、大量に得るためには、MELを有機溶媒に溶かし、植物油などの脂肪酸誘導体を添加、加水分解酵素の存在下でエステル化反応またはエステル交換反応を行う。
【0058】
MELのエリスリトール部に導入される脂肪酸は長鎖炭化水素の1価のカルボン酸であればよい。また、飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよい。不飽和脂肪酸の場合、複数の二重結合を有していてもよい。炭素鎖は直鎖状であってもよく分岐鎖状であってもよい。さらに、脂肪酸の誘導体である脂肪酸誘導体を本発明に使用してもよいし、脂肪酸と脂肪酸誘導体の混合物を本発明に使用してもよい。MELのエリスリトール部に導入される脂肪酸または脂肪酸誘導体は、油類、高級脂肪酸、合成エステル由来であることが好ましい。
【0059】
「油類」としては、植物油、動物油、鉱物油及びその硬化油であればよい。具体的には、アボカド油、オリーブ油、ゴマ油、ツバキ油、月見草油、タートル油、マカデミアンナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、卵黄油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、キリ油、ホホバ油、カカオ脂、ヤシ油、馬油、パーム油、パーム核油、牛脂、羊脂、豚脂、ラノリン、鯨ロウ、ミツロウ、カルナウバロウ、モクロウ、キャンデリラロウ、スクワラン等の動植物油及びその硬化油。流動パラフィン、ワセリン等の鉱物油、トリパルミチン酸グリセリン等の合成トリグリセリンが挙げられる。好ましくはアボカド油、オリーブ油、ゴマ油、ツバキ油、月見草油、タートル油、マカデミアンナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、卵黄油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、より好ましくはオリーブ油、大豆油である。
【0060】
「高級脂肪酸」としては、例えばカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、ウンデシン酸、トール酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などが挙げられる。好ましくはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸、ウンデシレン酸、より好ましくはオレイン酸、リノール酸、ウンデシレン酸である。
【0061】
「合成エステル」としては、例えば、カプロン酸メチル、カプリル酸メチル、カプリン酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、オレイン酸メチル、リノール酸メチル、リノレン酸メチル、ステアリン酸メチル、ウンデシン酸メチル、カプロン酸エチル、カプリル酸エチル、カプリン酸エチル、ラウリン酸エチル、ミリスチン酸エチル、パルミチン酸エチル、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、リノレン酸エチル、ステアリン酸エチル、ウンデシン酸エチル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、オレイン酸ビニル、リノール酸ビニル、リノレン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ウンデシン酸ビニル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、オレンイ酸デシル、ジメチルオクタン酸、乳酸セチル、乳酸ミリスチル等が挙げられる。好ましくはラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、オレイン酸メチル、リノール酸メチル、リノレン酸メチル、ステアリン酸メチル、ウンデシレン酸メチル、より好ましくはオレイン酸メチル、リノール酸メチル、ウンデシレン酸メチルである。
【0062】
トリアシルMELは、上述のようにMELを有機溶媒に溶解して反応させることにより生産することができる。有機溶媒としては、MELを可溶化できるものであれば限定されない。全部を可溶化できなくても一部を可溶化できるものであればよい。また、有機溶媒は複数の有機溶媒の混合物でもよい。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、プロパノン、ブタノン、ペンタン−2−オン、1,2−エタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジオキサン、アセトニトリル、2−メチル−ブタン−2−オール、第3級ブタノール、2−メチルプロパノール、4−ヒドロキシ−2−メチルペンタノン、テトラヒドロフラン、ヘキサン、DMF、DMSO、ピリジン、メチルエチルケトンなどを挙げることができる。好ましくはアセトン、テトラヒドロフラン、第3級ブタノール、アセトニトリル、ジオキサン、より好ましくはアセトンである。
【0063】
加水分解酵素としては、リパーゼ、プロテアーゼ、エステラーゼが挙げられる。これらの中から選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、複数の加水分解酵素を用いてもよい。好ましくはリパーゼ、エステラーゼ、より好ましくはリパーゼである。
【0064】
具体的には、例えば、MEL生産微生物の培養液から精製したMELを有機溶媒(例えば、アセトン)に溶解し、これに市販のリパーゼ(例えば、ノボザイム435(ノボザイムズ社製)など)及び植物油脂を添加する。
【0065】
この製造方法の場合、反応温度は10〜100℃、好ましくは20〜50℃、より好ましくは25〜40℃で、1日〜7日間攪拌すればよい。また、反応液にモレキュラーシーブスを添加してもよい。この製造方法により、材料として添加したMELがほぼ定量的にトリアシル体となる。
【0066】
トリアシルMELの精製は、上述のMELの精製に準じて行うことができる。
【0067】
(飽和脂肪酸側鎖有するMELの製造方法)
飽和側鎖有するMELの製造は、上述のバイオサーファクタントの製造方法に準じて行うことができる。その際、原料とする油脂類としては、オリーブ油、飽和脂肪酸あるいはそのエステル体、流動パラフィン、テトラデカン等の炭化水素等の非水溶性基質の単独あるいは2種以上を添加することにより行う。飽和側鎖有するMELの精製は、上述のMELの精製に準じて行うことができる。
【0068】
(MML等のMALの製造方法)
MML等のエリスリトール以外のアルジトールを有するMALの製造は、上述のバイオサーファクタントの製造方法に準じて行うことができる。その際、原料としては、マンニトール、アラビトール、リビトール、ソルビトール等のアルジトールの単独あるいは2種以上を添加することにより行う。MML等のエリスリトール以外のアルジトールを有するMALの精製は、上述のMELの精製に準じて行うことができる。
【0069】
本発明の水中油型乳化化粧料は、水相中に分散している油相の油滴平均粒径が1μm以下のマイクロエマルションの形態(剤型)を有するものであり、油滴が微粒子化されて均一に分散しているために良好な使用感を有する。特にさっぱりした使用感の点より、好ましくは0.3μm以下の平均粒径を有するものである。ここで、平均粒径は動的光散乱式粒径分布測定装置(例えば、堀場製作所、HORIBA LB-500)又はレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所、HORIBA LA-920)で測定される。このような水中油型(O/W)のマイクロエマルションに、懸濁剤として疎水性部分と親水性部分を有する非イオン性ポリマーを含有させることにより、エマルションの透明性を制御して視覚的な潤い感を与え、かつ保存安定性に優れ、更に塗布後に皮膚がすべすべとした感触を有する化粧料が得られるものである。
【0070】
本発明において、懸濁剤として用いられる非イオン性ポリマーは、疎水性部分と親水性部分、すなわち親水性モノマーと疎水性モノマーで構成される共重合体であり、好ましくは球状の構造をとるものである。このような共重合体は、水分散系において界面に親水性部分からなる水和相を形成し、安定な状態を保つと考えられる。さらに、連続相が水相である化粧料中で、ポリマーが球状を維持することができ、外観上の濁り度が一定に保たれ、かつすべすべした滑らかな感触を維持することができると考えられる。ポリマーの平均粒径は0.001〜5μm、特に0.01〜1μmであるのが、外観安定性及び使用感の面から好ましい。
また、非イオン性であるため、化粧料中の他の成分、塩や極性の物質若しくはそれらのエマルション等と反応し、凝集または沈殿等を起こし難いものである。さらに、皮膚表面と電荷的な相互作用がないため、皮膚に塗布した際に皮膚表面に吸着し難く皮膚に広がって滑らかな感触を呈すると推定される。
【0071】
親水性モノマーとしてはビニルピロリドン、ビニルアルコール、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸エステル等が挙げられる。
【0072】
疎水性モノマーとしては、炭素数12〜30のアルキル基を有するアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等が含まれる。また、上記親水性モノマーと疎水性モノマーの重合方法としては、公知の乳化重合法、乳化剤を用いない無乳化剤重合法等を用いればよい。
【0073】
本発明において非イオン性ポリマーは、非イオン性ポリマーエマルションであるのが好ましい。非イオン性ポリマーエマルションとしては、アクリル酸エチル・メタクリル酸エチル共重合体エマルジョン、アクリル酸エチル・メタクリ酸共重合体エマルジョン、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体エマルジョン、アクリル酸オクチル・スチレン共重合体エマルジョン、アクリル酸ブチル・酢酸ビニル共重合体エマルジョン、メタクリル酸メチル・アクリル酸ブチル・アクリル酸オクチル共重合、酢酸ビニル・スチレン共重合体エマルジョン、ビニルピロリドン・スチレン共重合体エマルジョン、ポリアクリル酸ブチルエマルジョン、ポリスチレンアクリル酸樹脂エマルジョン等が挙げられる。
【0074】
特に、疎水性モノマーとしてスチレンを用いた共重合体が好ましい。更にはアクリル酸アルキル・スチレン共重合体とビニルピロリドン・スチレン共重合体が好ましい。また、市販品としては、ヨドゾールGH840、ヨドゾールGH34(以上、日本エヌエスシー社)、アンタラ430(アイエスピー・ジャパン社)、ダイトゾール5000AD(大東化成)などを用いることができる。
【0075】
非イオン性ポリマーは1種以上を用いることができ、本発明の化粧料中に0.001〜10質量%、特に0.01〜1質量%含有されるのが、外観、保存安定性及び感触の面で好ましい。
【0076】
本発明の水中油型乳化化粧料において、油相を形成する油性成分としては、通常化粧料に使用される、25℃で固体、半固体又は液状の、合成及び天然由来の油性成分を含むことができ、化粧料中に0.0001〜10質量%、特に0.0001〜6質量%、更に0.0001〜2質量%含有されるのが好ましい。
【0077】
液状油としては、例えばホホバ油、オリーブ油等の植物油;液状ラノリン等の動物油;流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素油;リンゴ酸ジイソステアリル、乳酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル等の脂肪酸エステル;ジカプリン酸ネオペンチルグリコール等の脂肪酸とアルコールとからなるエステル油;グリセリン誘導体、アミノ酸誘導体等のエステル油;ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン油;フルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルエーテルシリコーン等のフッ素油等が挙げられる。
【0078】
固体又は半固体の油性成分としては、例えば、下記一般式(9)で表わされるスフィンゴシン及びその誘導体、コレステロール及びその誘導体;ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸;ステアリルアルコール、セチルアルコール等の高級アルコール;ホホバワックス等の植物油;グリセリンモノステアリルエーテル、グリセリンモノセチルエーテル等のアルキルグリセリルエーテル;ワセリン、ラノリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバロウ、キャンデリラロウ等のワックスに分類されるものなどが挙げられる。
【0079】
【化11】

【0080】
(式中、R1はヒドロキシル基、カルボニル基又はアミノ基が置換していてもよい、炭素数4〜30の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;Yはメチレン基、メチン基又は酸素原子を示し;X1、X2、及びX3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し、X4は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Yがメチン基のとき、X1とX2のいずれか一方が水素原子であり、他方は存在しない。X4がオキソ基を形成するとき、X3は存在しない。);R2及びR3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;a個のRは各々独立して水素原子又はアミジノ基であるか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;aは2又は3の数を示し;破線部は不飽和結合であってもよいことを示す)
【0081】
一般式(9)で表わされるスフィンゴシン類としては、天然又は天然型スフィンゴシン及びその誘導体(以下、天然型スフィンゴシンと記載する。)又はスフィンゴシン構造を有する擬似型(以下、擬似型スフィンゴシンと記載する。)に大別される。天然型スフィンゴシンとしては、具体的には、天然のスフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、スフィンガジエニン、デヒドロスフィンゴシン、デヒドロフィトスフィンゴシン、及びこれらのN−アルキル体(例えばN−メチル体)等が挙げられる。
【0082】
これらのスフィンゴシンは天然型(D(+)体)の光学活性体を用いても、非天然型(L(−)体)の光学活性体を用いても、更に天然型と非天然型の混合物を用いてもよい。上記化合物の相対立体配置は、天然型の立体配置のものでも、それ以外の非天然型の立体配置のものでも良く、また、これらの混合物によるものでもよい。特に、PHYTOSPHINGOSINE(INCI名;8th Edition)及び次式で表わされるものが好ましい。
【0083】
【化12】

【0084】
これらは、天然からの抽出物及び合成物のいずれでもよく、市販のものを用いることができる。天然型スフィンゴシンの市販のものとしては、例えば、D-Sphingosine(4-Sphingenine) (SIGMA-ALDRICH社)、DS-phytosphingosine (DOOSAN社)、phytosphingosine(コスモファーム社)が挙げられる。また、擬似型スフィンゴシンの具体例としては、次の擬似型スフィンゴシン(i)〜(iv)が挙げられる。
【0085】
【化13】

【0086】
本発明においては、保存安定性、塗布時(使用時)の潤い感、及び皮膚改善効果の点から、油相中に両親媒性脂質を1種以上含むことが好ましい。ここで、両親媒性脂質とは界面活性を有するが、それ自体は疎水性が強く一般の界面活性剤ほど界面活性を有さないものである。具体的には、上記油性成分のなかで、高級脂肪酸、高級脂肪族アルコール、アルキルグリセリルエーテル、スフィンゴシン及びその誘導体、セラミド及びその誘導体、コレステロール及びその誘導体等が含まれる。特にセラミド及びその誘導体、並びにスフィンゴシン及びその誘導体から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。また、乳化組成物としての使用感、特に保湿性の点と、皮膚改善効果から、両親媒性脂質に対する両親媒性脂質以外の油性成分の比率が1以下、特に0.0〜0.9となるように含有させるのが好ましい。
【0087】
本発明において、両親媒性脂質の含有量は、油性成分全体の50質量%以上、特に70質量%以上、更に90質量%以上であるのが好ましい。
【0088】
本発明の水中油型乳化化粧料において、水相の主成分は水であるか、又は水と炭素数1〜4の低級アルコール及び水溶性多価アルコールから選ばれる1種以上のアルコール類の混合物として構成されるものである。炭素数1〜4の低級アルコールとしては、エタノール、プロパノール等が挙げられ、水溶性の多価アルコールとしては、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3ブチレングリコール、ジグリセリン、ポリオキシエチレンメチルグルコシド等が挙げられる。ポリエチレングリコールの平均分子量は、400〜300,000、特に400〜10,000であることが好ましい。アルコール類としては、エタノール、グリセリン、ポリエチレングリコール、及び1,3ブチレングリコールが、乳化安定性、使用感、及び清涼感と潤い感の点から好ましい。
【0089】
本発明において、水は化粧料中に70〜99.99質量%、特に75〜99.9質量%、更に78〜99.9質量%であるのが好ましい。また、水相が水とアルコール類の混合物の場合、水以外のアルコール類の含有量は、0.01〜30質量%、特に0.01〜20質量%、更に0.5〜15質量%であるのが好ましい。
【0090】
油性成分と水相の乳化方法としては、界面活性剤を乳化剤として使用する方法、界面活性剤以外の乳化剤、例えばスフィンゴシン又はその誘導体と、無機酸及び炭素数5以下の有機酸から選ばれる酸性化合物との組合せによる乳化方法、乳化能を有するポリマーを用いるポリマー乳化法、高圧ホモジナイザー等の高せん断力を用いた高圧乳化法等が含まれる。
【0091】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤;高級脂肪酸塩、スルホン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル等のアニオン界面活性剤;4級アンモニウム塩等のカチオン界面活性剤;アミドアミン型、アルキルベタイン型等の両性界面活剤など、通常の化粧料に用いられる界面活性剤が挙げられる。
【0092】
界面活性剤以外の乳化剤のうち、スフィンゴシン又はその誘導体と、無機酸及び炭素数5以下の有機酸から選ばれる酸性化合物との組合せによる乳化方法は、例えば、前記一般式(1)で表わされるスフィンゴシン類と無機酸及び炭素数5以下の有機酸から選ばれる酸性化合物が塩を形成することにより、油性成分が乳化されるものである。ここでは、スフィンゴシン類が酸性化合物によりカチオン化されて活性剤的な働きをすることにより乳化物が得られると考えられる。
【0093】
無機酸及び炭素数5以下の有機酸から選ばれる酸性化合物は、25℃における0.1mol/L水溶液のpHが1以上7未満、特にpH1〜6.5であるものが好ましい。無機酸としては、リン酸、塩酸、硝酸、硫酸、過塩素酸、炭酸等が挙げられ、特にリン酸、塩酸が好ましい。
【0094】
有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸等のモノカルボン酸;コハク酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸等のジカルボン酸;グリコール酸、クエン酸、乳酸、ピルビン酸、リンゴ酸、酒石酸等のオキシカルボン酸;グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸等が挙げられる。これらのうち、リン酸、塩酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等が好ましく、特に乳酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等が好ましい。
【0095】
酸性化合物は、スフィンゴシン類をカチオン化するために、スフィンゴシン類1モルに対して0.3モル以上、特に0.3〜5モル、更に0.5〜3モル含有するのが好ましい。例えば、スフィンゴシンと等モル混合した水溶液のpHが、25℃で2〜6になるのが好ましい(フタル酸塩標準液で補正後、HORIBA pH METER F-22で測定)。
【0096】
また、酸性化合物は2種以上を併用してもよく、化粧料中に0.001〜10質量%、特に0.01〜6質量%、更に0.01〜2質量%含有するのが好ましい。
【0097】
本発明の化粧料は、べたつきのない使用感の点から、油性成分を乳化するための乳化剤として界面活性剤を実質的に含まないのが好ましく、界面活性剤の含有量は0〜1.0質量%であるのが好ましい。
【0098】
本発明の水中油型乳化化粧料には、上記成分以外に、通常の化粧料に使用される成分、例えばキサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルグアガム等の水溶性増粘剤;グリシンベタイン、トレハロース、尿素、アミノ酸等の保湿剤;アラントイン、酢酸トコフェロール等の薬効剤;セルロースパウダー、ナイロンパウダー、架橋型シリコーン末、架橋型メチルポリシロキサン、多孔質セルロースパウダー、多孔質ナイロンパウダー等の有機粉体;無水シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機粉体;メントール、カンファー等の清涼剤;pH緩衝剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、香料、殺菌剤、色素などを含有させることができる。
【0099】
本発明の水中油型乳化化粧料は、油性成分及び水(少量の水)でマイクロエマルション相を形成させ、さらに水を添加して希釈した後、非イオン性ポリマーを添加することによりにより製造することができる。
【0100】
本発明の水中油型乳化化粧料は、視覚的な潤い感を呈する半透明の乳化物であり、波長550nmでの光透過率(セル長1cm)が0.1〜92%、特に0.1〜60%、更には0.1〜30%であるのが好ましい。ここで、光透過率の測定は、可視分光光度計(例えば、島津製作所、紫外可視分光光度計UV-160)により専用セル(SARSTEDT社、Cuvettes、No./REF 67.738)により測定することにより行なう。
【0101】
この方法を用いて、透明な外観、すなわち視覚的潤い感の低い可溶化系化粧水を測定するとその値は98%以上と高い値を示す。一方、白濁不透明な乳液では完全に550nm光を遮光し、透過率は値を示さず0となる。本発明の化粧料では、そのような透明可溶化化粧水と白濁不透明乳液の中間の透過性を有し、透過率が0.1〜92%となる半透明化粧料である。
【0102】
また、本発明の水中油型乳化化粧料は、使用時の清涼感を有するため、25℃における粘度が5000mPa・s以下、特に1〜3000mPa・s、更に1〜500mPa・sであることが好ましい。ここで、粘度の測定は、回転型粘度計(例えば、東京計器社、B8L型粘度計)により測定される。
【0103】
本発明の水中油型乳化化粧料は、例えば、化粧水、乳液、保湿液、美白美容液、保湿乳液等として使用するのが好ましい。
【0104】
以下、本発明を実施例に基づき、より詳細に説明する。なお、本発明は、特に実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0105】
(MEL−A及びトリアシルMEL−Aの製造)
種菌培養はPseudozyma antarctica NBRC 10736のコロニーを種培地(20ml/500ml坂口フラスコ)に1 loop植菌して実施した。30℃にて一晩培養した。得られた培養液を種菌とした。種培地組成は4% Glucose、0.3% NaNO、0.02% MgSO・7HO、0.02% KHPO、0.1% yeast extractであった。培養は上記種菌75mlを生産培地1.5L(5L−jar)に植菌し、30℃、300rpm(攪拌回転)、0.5L/min(Air)の条件で5L−jarを用いて培養した。生産培地組成は、3% ダイズ油、0.02% MgSO・7HO、0.02% KHPO、0.1% yeast extractであった。培養液250mlを遠心(6500rpm、30min)し、上清を取り除き、沈殿(菌体)を回収した。沈殿に、50mlの酢酸エチルを加え、十分攪拌後、遠心(8500rpm、30min)し、沈殿と上清に分け、上清をエバポーレーターで濃縮した。シリカゲルを用いて、クロロホルム:アセトン=1:0、クロロホルム:アセトン=9:1、クロロホルム:アセトン1:1、クロロホルム:アセトン=3:7、クロロホルム:アセトン=0:1で溶出しMEL−A及びトリアシルMEL−A画分を得た。
【実施例2】
【0106】
(MEL−B及びトリアシルMEL−Bの製造)
0.2mlのPseudozyma tsukubaensisフローズンストックを20mlのYM培地/500ml容坂口フラスコに植菌し、26℃、180rpm、1晩培養させ、種種菌とした。0.2mlの種種菌を再度、20mlのYM種培地/500ml容坂口フラスコに植菌し、26℃、180rpm、1晩培養させ、種菌とした。20mlの種菌を2LのYM培地/5L Jarに植菌し、26℃ 300rpm(1/4VVM、0.5L air/min)で8日間培養した。培養液を7,900rpm 60min 4℃で遠心し、菌体(MEL−Bを含む)と上清に分離した。菌体画分にそれぞれ80mlの酢酸エチルを加え、菌体が十分懸濁するように上下に攪拌した後、7,900rpm 30min 4℃で遠心した。得られた上清に等量の飽和食塩水を加え攪拌し酢酸エチル層を得た。酢酸エチル層に無水硫酸Naを適量加え、30分間精置させた後、エバポレートしMEL−B粗精製品を得た。得られたMEL−B粗精製品を、シリカゲルカラムを用いて、ヘキサン:アセトン=5:1、ヘキサン:アセトン=1:1で溶出しMEL−B及びトリアシルMEL−B画分精製品を得た。
【実施例3】
【0107】
(MEL−C及びトリアシルMEL−Cの製造)
0.2mlのPseudozyma hubeiensisフローズンストックを20mlのYM種培地/500ml容坂口フラスコに植菌し、26℃、180rpm、1晩培養させ、種種菌とした。0.2mlの種種菌を再度、20mlのYM種培地/500ml容坂口フラスコに植菌し、26℃、180rpm、1晩培養させ、種菌とした。20mlの種菌を2LのYM培地/5L Jarに植菌し、26℃ 300rpm(1/4VVM、0.5L air /min)で8日間培養した。培養液を7,900rpm 60min 4℃で遠心し、菌体(MEL−Cを含む)と上清に分離した。菌体画分にそれぞれ80mlの酢酸エチルを加え、菌体が十分懸濁するように上下に攪拌した後、7,900rpm 30min 4℃で遠心した。得られた上清に等量の飽和食塩水を加え攪拌し酢酸エチル層を得た。酢酸エチル層に無水硫酸Naを適量加え、30分間精置させた後、エバポレートしMEL−B粗精製品を得た。得られたMEL−C粗精製品を、シリカゲルカラムを用いて、ヘプタン:酢酸エチル=1:1、ヘプタン:酢酸エチル=1:2、ヘプタン:酢酸エチル=1:3で溶出しMEL−C及びトリアシルMEL−C画分精製品を得た。
【実施例4】
【0108】
(オリーブ油を用いたMELの製造)
実施例1におけるMELの製造では、生産原料にダイズ油を用いたが、その代わりにオリーブ油を用いて実施例1と同様の方法で培養しMEL−A、MEL−B、MEL−Cを単離精製する。この時得られるMEL画分を、実施例1のMELと区別するためMEL−A(OL)、MEL−B(OL)、MEL−C(OL)と呼ぶ。
【実施例5】
【0109】
(マンノシルマンニトールリピッド(MML)の製造)
シュードザイマ・パラアンタクティカ(Pseudozyma parantarctica)JCM 11752株の培養を行った。すなわち、保存培地(麦芽エキス3g/L、酵母エキス3g/L、ペプトン5g/L、グルコース10g/L、寒天30g/L)に保存しておいたシュードザイマ・パラアンタクティカ(Pseudozyma parantarctica)JCM 11752株を、グルコース20g/L、酵母エキス1g/L、硝酸ナトリウム3g/L、リン酸2水素カリウム 0.3g/L、及び硫酸マグネシウム0.3g/Lの組成の液体培地2mLが入った試験管に1白金耳接種し、30℃で1日間振とう培養を行った。続いて、得られた菌体培養液を、植物油脂としてオリーブ油50g/L、糖アルコールとしてマンニトール100g/L、酵母エキス1g/L、硝酸ナトリウム3 g/L、リン酸2水素カリウム0.3g/L、及び硫酸マグネシウム0.3g/Lの組成の液体培地30mLの入った坂口フラスコに接種して、34℃で7日間培養を行った。上記の培養液を採取し、培養液中のマンノシルアルジトールリピッドを酢酸エチルで抽出し、シリカゲルクロマトで精製後、13C−NMRとH−NMRで生産物の構造解析を行い、構造を確認した。
【実施例6】
【0110】
(マンノシルアラビトールリピッド(MAraL)の製造)
実施例5の培養を糖アルコールとしてアラビトール100g/Lを含む培地で行う以外は、実施例5と同様に培養しMAraLを製造した。
【実施例7】
【0111】
(マンノシルソルビトールリピッド(MSL)の製造)
実施例5の培養を糖アルコールとしてソルビトール100g/Lを含む培地で行う以外は、実施例5と同様に培養しMSLを製造した。
【実施例8】
【0112】
(マンノシルリビトールリピッド(MRL)の製造)
実施例5の培養を糖アルコールとしてリビトール100g/Lを含む培地で行う以外は、実施例5と同様に培養しMRLを製造した。
【実施例9】
【0113】
(水中油型乳化化粧料の調製)
表1に示す組成の水中油型乳化化粧料を下記方法により製造した。得られた化粧料について、油滴の平均粒径及び光透過率を測定し、見た目の潤い感、保存安定性、使用感及び肌改善効果を評価した。結果を表1に併せて示す。
【0114】
(製造方法)
成分(1)〜(9)及び(12)を80〜90℃に加熱撹拌(300r/min)して溶解させ、これに成分(10)及び(11)と水の一部(10質量%)を80〜90℃で加熱溶解したものを添加し、マイクロエマルション相を得た。別途、80〜90℃で水の一部(10質量%)に成分(13)〜(15)を加え、加熱溶解し、パラベン相を得た。室温下にある残りの水にマイクロエマルション相を添加し、更にパラベン溶解相を添加した。最後に成分(17)、(18)を加えて、水中油型乳化化粧料を得た。
【0115】
(評価方法)
(1)油滴の平均粒径:
装置:堀場製作所、動的光散乱式粒径分布測定装置、
セル:SARSTEDT社製、Cuvettes、No./REF 67.738、
測定方法:セルに各化粧料(懸濁剤を添加する前)を入れて油滴の平均粒径を計測、
測定条件:粒子径基準;散乱光強度、
データ取りこみ回数;50、
反復回数;50
【0116】
(2)光透過率:
装置:島津製作所、紫外可視分光光度計UV−160、
セル:SARSTEDT社製、Cuvettes、No./REF 67.738、
測定方法:対照セルに水を入れ、試料セルに各化粧料を入れて測定、
測定波長:550nm光
【0117】
(3)見た目の潤い感:
10名の専門パネラーにより、各化粧料を見たときの、見た目の潤い感を官能評価し、次の基準により判定した。
◎:8名以上が白濁乳液のように潤いを感じると評価した。
○:4〜7名が潤いを感じると評価した。
×:3名以下が潤いを感じると評価した。
【0118】
(4)保存安定性:
各化粧料を50℃に1ヶ月静置した後の外観を、肉眼で判定した。
◎:分離、結晶析出は認められなかった。
○:分離又は結晶析出を僅かに認めた。
×:分離又は結晶析出を認めた。
【0119】
(5)使用感:
10名の専門パネラーにより、各化粧料を使用したときの使用感(塗布時のべたつきのなさと塗布後の肌の滑らかさ)を官能評価し、次の基準により判定した。
◎:8名以上が良好(良い)と評価した。
○:6〜7名が良好(良い)と評価した。
△:4〜5名が良好(良い)と評価した。
×:3名以下が良好(良い)と評価した。
【0120】
(6)肌改善効果:
試験方法:アセトン(50%)/エーテル(50%)溶液で皮膚を擬似的に荒れさせ、その後各化粧料を1週間塗布(朝・晩2回づつ)して皮膚の改善程度を比較する。
評価方法:皮膚水分量の程度を示す物性値として皮膚コンダクタンス値を測定。測定にはスキンコンダクター(IBS社、SKICON−200)を用いる。健常状態(皮膚を擬似的に荒れさせる直前)の皮膚コンダクタンスと、試料塗布後の皮膚コンダクタンス値を測定する。
被試験者:10名のパネラー
解析方法:各被試験者において、試料塗布後の皮膚コンダクタンス値を、健常状態の皮膚コンダクタンス値を100%として示す。全被試験者でその値を平均し、下記の基準で判定した。
◎:80%以上。
○:40〜79%。
×:40%未満。
【0121】
【表1】

【0122】
本発明品1〜20の水中油型乳化化粧料はいずれも、視覚的な清涼感と潤い感を呈するのに適した光透過率、油滴の平均粒径を有するものであり、見た目の潤い感、保存安定性、使用感及び肌改善効果は良好であった。これに対し、比較品1〜3では、特に見た目の潤い感が悪く、保存安定性、使用感に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の水中油型乳化化粧料は、清涼感と視覚的潤い感を有し、しかも使用感及び保存安定性に優れたものであることから、特に医薬品や化粧品に関する産業界において、大きく寄与することが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相中に、バイオサーファクタントを含みかつ平均粒径が1μm以下である油相が分散する系において、疎水性部分と親水性部分を有する非イオン性ポリマーを含有することを特徴とする水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
バイオサーファクタントが、マンノース骨格を有することを特徴とする請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
バイオサーファクタントが、マンノース骨格の1位の水酸基に糖アルコールがグリコシド結合していることを特徴とする請求項2に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
マンノース骨格を有するバイオサーファクタントがマンノシルエリスリトールリピッド(MEL)、マンノシルマンニトールリピッド(MML)、マンノシルソルビトールリピッド(MSL)、マンノシルアラビトールリピッド(MAraL)及びマンノシルリビトールリピッド(MRL)からなる群より選ばれた1種以上の化合物であることを特徴とする請求項2または3に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項5】
MELが、マンノシルエリスリトールリピッドA(MEL−A)、マンノシルエリスリトールリピッドB(MEL−B)、マンノシルエリスリトールリピッドC(MEL−C)、マンノシルエリスリトールリピッドD(MEL−D)、MEL−Aのトリアシル体、MEL−Bのトリアシル体、MEL−Cのトリアシル体及びMEL−Dのトリアシル体からなる群より選ばれた1種以上の化合物であることを特徴とする請求項4に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項6】
バイオサーファクタントが、飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸を含有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項7】
バイオサーファクタントに対するバイオサーファクタントの油性成分の比率が1以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項8】
界面活性剤の含有量が0〜1.0質量%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項9】
波長550nmでの光透過率が0.1〜92%であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料。

【公開番号】特開2011−173843(P2011−173843A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40236(P2010−40236)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】