説明

水中油型乳化化粧料

【課題】本発明は、特定の紫外線吸収剤を層間にインターカレーションしたハイドロタルサイト類を含有する水中油型乳化化粧料に関し、更に詳しくはリン脂質とキサンタンガムを用いて安定に配合したものであり、均一な伸び広がり、乳化安定性、および紫外線防御効果に優れる水中油型乳化化粧料に関するものである。
【解決手段】次の成分(A)〜(C);
(A)リン脂質
(B)キサンタンガム
(C)下記式(1)
[M2+3+1−x(OH)][An-x/n・mHO] ・・・ (1)
(但し、式中、M2+はMgおよび/またはZnなどの2価金属を示し、M3+はAlなどの3価金属を示し、An−は2−フェニルベンズイミダゾール−5スルホン酸を示し、xおよびmは次の範囲にある。0.6<x<0.85,0≦m<5)で表わされるハイドロタルサイト類を、含有することを特徴とする水中油型乳化化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の紫外線吸収剤を層間にインターカレーションしたハイドロタルサイト類を含有する水中油型乳化化粧料に関し、更に詳しくはリン脂質とキサンタンガムを用いて安定に配合したものであり、均一な伸び広がり、乳化安定性、および紫外線防御効果に優れる水中油型乳化化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイドロタルサイトは、一般式[M2+1−x3+(OH)][An−x/n・mHO]で表される化合物(M2+とM3+は、2価および3価の金属イオンを、An−x/nは層間陰イオンを表す)であり、陰イオン交換性を有することから水溶液中でのイオン交換によって、アニオン性物質をインターカレーションすることができる。この性質を利用した技術として各種化粧料への応用が試みられている(例えば、特許文献1参照)。
また、2−フェニルベンズイミダゾール−5スルホン酸をハイドロタルサイト類にインターカレーションする技術もある(例えば、特許文献2〜4参照)。
【0003】
ところで、2−フェニルベンズイミダゾール−5スルホン酸は、従来より水溶性紫外線吸収剤として化粧料への配合検討がなされている。しかしながら、水や油に対する溶解性が低いため、化粧料への配合する際には塩基性物質にて中和して用いることが必要とされている。そのため、製剤中における電解質濃度があがり、特に乳化製剤においては、乳化剤として用いる界面活性剤の電荷バランスにより乳化滴が形成されている近傍に電解質が配向する等、該界面活性剤の電荷バランスに影響を及ぼし、経時での乳化安定性を維持することが困難となるなど製剤化するにあたり制約されることがある。
これに対しては、特定の乳化剤を用いることによる製剤技術がある(例えば、特許文献5、6参照)。
【特許文献1】特開平3−190811号公報
【特許文献2】特開2009−120783号公報
【特許文献3】特開2008−1774号公報
【特許文献4】特開2008−214465号公報
【特許文献5】特開2008−120755号公報
【特許文献6】特開2002−284638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した、特許文献1〜4の技術は、ハイドロタルサイト類の層間に特定の物質をインターカレーションする技術であるが、この技術を用いれば、2−フェニルベンズイミダゾール−5スルホン酸などの有機系紫外線吸収剤によるべたつきなどの使用感の低下を改善することは可能である。しかしながらハイドロタルサイト自体が粉体表面に水酸基を持つ親水性の(微粒子)粘土鉱物であることから、2−フェニルベンズイミダゾール−5スルホン酸と同じく、電荷を有する成分でもあり、特に乳化製剤に対して問題となる場合があった。
さらに特許文献4や特許文献5の技術は、アシル化された乳化剤を特定の成分と組み合わせることで、2−フェニルベンズイミダゾール−5スルホン酸を安定配合することを可能にするものである。しかしながら、2−フェニルベンズイミダゾール−5スルホン酸をインターカレーションしたハイドロタルサイト類をこれらの乳化技術を用いて製剤化検討をした場合でも、経時安定性を得られない場合があった。これはハイドロタルサイト類が、表面電荷を有する粉体のため、乳化滴への配向や、粉体同士などの凝集が生じることが考えられる。本発明は、ハイドロタルサイト類を水中油型乳化化粧料へ安定に配合をできうる技術として開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる実情に鑑み、本発明者等は鋭意検討した結果、2−フェニルベンズイミダゾール−5スルホン酸をインターカレーションしたハイドロタルサイト類を水中油型乳化化粧料に安定配合するためには、強固な乳化層を形成することが必要であり、そのための乳化剤としてはリン脂質のみが可能であるとの知見を見出した。そして、さらにハイドロタルサイトの分散性と安定性保持を向上させるためには、このリン脂質とキサンタンガムを組合せた系としなければ実現できないことを見出した。さらにハイドロタルサイト類の水系で電荷を有する物質としての挙動を抑制すると考えられ、ハイドロタルサイト類を疎水化処理することにより、経時安定性を高めるために効果的であることを見出した。そしてさらにパラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルと併用することで相乗的な紫外線防御効果が得られることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、
次の成分(A)〜(C);
(A)リン脂質
(B)キサンタンガム
(C)下記式(1)
[M2+3+1−x(OH)2][An-x/n・mHO] ・・・ (1)
(但し、式中、M2+はMgおよび/またはZnなどの2価金属を示し、M3+はAlなどの3価金属を示し、An−は2−フェニルベンズイミダゾール−5スルホン酸を示し、xおよびmは次の範囲にある。0.6<x<0.85,0≦m<5)で表わされるハイドロタルサイト類を、含有することを特徴とする水中油型乳化化粧料に関する。
【0007】
また、本発明は、成分(C)が疎水化処理されていることを特徴とする水中油型乳化化粧料に関する。
【0008】
また、本発明は、成分(B)の含有量が、0.05〜0.3質量%であることを特徴とする水中油型乳化化粧料に関する。
【0009】
また、本発明は、成分(B)と成分(C)の含有質量比が、(C)/(B)=13.3〜80であることを特徴とする水中油型乳化化粧料に関する。
【0010】
また、発明は、成分(D)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルを含有することを特徴とする水中油型乳化化粧料に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水中乳化化粧料は、2−フェニルベンズイミダゾール−5スルホン酸をインターカレーションしたハイロドタルサイト類を系中に安定に配合でき、均一な伸び広がり、乳化安定性、および紫外線防御効果に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「〜」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
本発明の成分(A)のリン脂質は、水中型乳化化粧料の乳化剤として含有されるものであり、乳化安定性を向上させる効果がある。このようなリン脂質は、通常の化粧料に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、大豆由来リン脂質、大豆由来水素添加リン脂質、大豆由来リゾリン脂質、大豆由来水素添加リゾリン脂質、卵黄由来リン脂質、卵黄由来水素添加リン脂質、卵黄由来リゾリン脂質、卵黄由来水素添加リゾリン脂質、が挙げられ、これらのリン脂質は必要に応じて一種、又は二種以上用いることができ、より好ましくは、大豆由来水素添加リン脂質、大豆由来水素添加リゾリン脂質、卵黄由来水素添加リン脂質、卵黄由来水素添加リゾリン脂質が挙げられる。さらにより好ましくは、大豆由来水素添加リゾリン脂質、卵黄由来水素添加リゾリン脂質等のリゾ化したリン脂質である。これらのリン脂質は必要に応じて一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
本発明の水中油型乳化化粧料における成分(A)のリン脂質含有量は、特に限定されないが、0.1〜4質量%(以下、「%」と略記する)が好ましく、この範囲であると後述する成分(C)のハイドロタルサイト類を、系中に凝集させることなく安定に配合することが可能であり、均一な伸び広がり、乳化安定性および紫外線防御効果に優れる水中油型乳化化粧料が得られる。
【0014】
本発明の成分(B)のキサンタンガムは、ブドウ糖など炭水化物をキサントマナス属菌により発酵させて得られる微生物由来の天然ガム質であり、乳化安定性や後述する成分(C)の粉体分散剤として寄与するものである。このようなキサンタンガムは、通常の化粧料に使用されているものであれば特に限定されず、市販品としては、GLINSTED
XANTHAN CLEAR 80(DANISCO社製)、エコーガム(五協産業社製)、ケルトロール(香栄興業社製)等が挙げられる。
【0015】
本発明の水中油型乳化化粧料における成分(B)のキサンタンガムの含有量は、0.05〜0.3%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.25%である。この範囲であると成分(C)のハイドロタルサイト類を、系中に凝集させることなく安定に配合することが可能であり、均一な伸び広がり、乳化安定性、および紫外線防御効果に優れる水中油型乳化化粧料が得られる。
【0016】
本発明の成分(C)は、下記式(1)、
[M2+3+1−x(OH)2][An-x/n・mHO] ・・・ (1)
(但し、式中、M2+はMgおよび/またはZnなどの2価金属を示し、M3+はAlなどの3価金属を示し、An−は2−フェニルベンズイミダゾール−5スルホン酸を示し、xおよびmは次の範囲にある。0.6<x<0.85,0≦m<5)で表わされるハイドロタルサイト類で示されるハイドロタルサイト類は、水中油型乳化化粧料に紫外線防御剤として配合されるものである。
また成分(C)の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.3〜2.0μmの範囲を有するものである。この場合の平均粒子径は、コールターカウンター(ベックマン・コールター株式会社製:サブミクロン粒子アナライザーN5により測定できる。
【0017】
本発明の水中油型乳化化粧料における成分(C)のハイドロタルサイト類の含有量は、特に限定されないが、1〜6%が好ましく、この範囲であると、成分(C)のハイドロタルサイト類を、系中に凝集させることなく安定に配合することが可能であり、均一な伸び広がり、乳化安定性、および紫外線防御効果に優れる水中油型乳化化粧料が得られる。
【0018】
本発明における疎水化処理とは、粉体表面に化学的もしくは物理的に吸着させ、粉体表面を疎水性にする処理することで、水系で電荷を有する物質としての挙動を低減させることに寄与するものである。このような処理剤は、通常、化粧品に汎用されるものであれば特に限定されることなく使用することができる。本発明において、処理剤の疎水化のレベルは接触角によって定義され、接触角測定装置(Dropmaster DM500 協和界面科学株式会社製)、液滴法(θ/2法)を用いて、精製水2.0μLを処理剤の塗膜をひいたサンプル面に滴下した後、1.0秒後の接触角を測定することができる。本発明においては、接触角が65°以上であり、好ましくは70°以上を示す処理剤がよい。具体的には、脂肪酸、N−ラウロイル−L−リジン、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、(ジメチコン/メチコン)コポリマー、反応性のシリコーン、反応性シラン、反応性アルキルチタン、高粘度シリコーン、架橋型シリコーン、アクリル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、シリコーン樹脂等のシリコーン化合物、金属石鹸、ポリイソブチレン、ワックス、油脂等の油剤、パーフルオロアルキルリン酸(塩)、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロポリエーテルアルキルリン酸等のフッ素化合物、PVP−ヘキサデセンのコポリマー等のPVP変性ポリマー等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。特に好ましくは、脂肪酸、N−ラウロイル−L−リジン、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、(ジメチコン/メチコン)コポリマー、トリエトキシカプリリルシラン、トリイソステアリン酸イソプロピルチタン、パーフルオロアルキルリン酸(塩)、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロポリエーテルアルキルリン酸等のフッ素化合物といった処理剤があげられる。本発明において疎水化するための処理量は粉体に対して0.5〜30%が好ましく、より好ましくは1〜20%の範囲である。
【0019】
また、成分(B)のキサンタンガムは、成分(C)のハイロドタルサイト類の粉体分散効果を有し、本発明における水中油型乳化化粧料の乳化安定性も付与させるものであるが、成分(B)、(C)を特定の含有比率にすることによりその効果をさらに高めることが可能である。すなわち含有質量比が、(C)/(B)=13.3〜80の範囲にすることが好ましく、より好ましくは、15〜50の範囲である。これはキサンタンガムが、強いシュードプラスチック粘性を持つ高分子で、静置状態ではキサンタンガム分子同士によるゲル構造に似た三次元的な網目構造を形成することで粘性を持ち、加えて、キサンタンガムは、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩などの電解質成分を含んでいることから、これらがハイドロタルサイト類の表面の電荷相互作用することによりハイドロタルサイト類の分散性に寄与するものと考えられるためである。一方、攪拌などの力を加えることにより網目構造が徐々に破壊され、粘度は低下するが、再び静置状態に戻すことで、網目構造が再構築され高い粘度を示すようになる。このような性質が、ハイロドタルサイトの配合時と経時での安定した分散性に寄与していると考えられる。
【0020】
本発明の水中油型乳化化粧料における成分(D)のパラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルは、水中油型化粧料に紫外線防御剤として配合されるものである。
また、成分(C)の合成ハイロドタルサイトの層間にインターカレーションされた2−フェニルベンズイミダゾール−5スルホン酸と共に含有されるとさらに、優れた紫外線防御効果を発揮する。
【0021】
本発明の水中油型乳化化粧料における成分(D)のパラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルの含有量は、特に限定されないが、0.1〜10%が好ましく、より好ましくは、0.5〜5%である。この範囲であると、均一な伸び広がり、乳化安定性、および紫外線防御効果に優れる水中油型乳化化粧料が得られる。
【0022】
本発明の乳化化粧料は、上記必須成分の他に水を含有するが、化粧料に一般に用いられるものであれば、特に制限されない。水の他にも精製水、温泉水、深層水、或いは植物の水蒸気蒸留水でもよく、必要に応じて1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。また含有量は、特に限定されず、適宜、他の成分量に応じて含有することができるが、概ね50〜90%の範囲で用いることができる。
【0023】
本発明の水中油型乳化化粧料の製造方法としては、水相や油相の粘度に応じて分散乳化、転相乳化など種々の方法を使用することができるが、その一つの例としては、次の転相乳化による方法が挙げられる。すなわち、成分(A)、成分(D)およびその他の適宜配合された油性成分を、70℃以上の温度で均一に分散させ、ついでこの分散液へ70℃以上に加温した水を徐々に添加撹拌して、徐々に室温まで冷却した後、成分(B)および成分(C)を添加して混合して得られる。
【0024】
また、本発明の水中油型乳化化粧料には、上記必須成分の他に一般に化粧料に使用される成分、例えば、水可溶性成分、保湿剤、粉体、色素、本発明成分以外の紫外線吸収剤、被膜形成性剤、pH調整剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料等、通常の化粧料に用いられる成分を本発明の効果を損なわない量的質的範囲において適宜配合することができる。
【0025】
本発明の水中油型乳化化粧料の用途は、化粧水、乳液、クリーム、日中用美容液、などのスキンケア化粧料、化粧用下地化粧料などが挙げられ、その使用法は、手又はコットンで使用する方法、不織布等に含浸させて使用するなどが挙げられる。
【実施例1】
【0026】
以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0027】
まずはじめに本発明成分(C)の製造実施例を以下に示す。
(製造実施例1)
具体的な成分(C)の製造の一例として、特許文献2に示されたように、市販の水酸化マグネシウム(協和化学工業(株)製、キスマ5Q)40gを約200mLの水に分散させる。硫酸アルミニウム(Al=1.0mol/L)137mLを1,000mLのビーカーに入れ、攪拌下、炭酸ナトリウム水溶液(1.0mol/L)の137mLを加え反応させた。この反応物に、攪拌下、キスマ5Qのスラリーを添加反応(約30℃)させた後、容量1リットルのオートクレーブに移し、150℃で8時間水熱処理を行った。水熱処理物のスラリーを減圧下にろ過し、続いて0.5mol/Lの炭酸ナトリウム2Lでイオン交換し、CO型合成ハイドロタルサイトにし、その後、2Lの水で水洗し、乾燥(120℃)、粉砕した。得られた粉末50gを約20℃の温水500mLに分散後、2−フェニルベンズイミダゾール−5スルホン酸の酸型水溶液(1.0mol/L、70℃)100mLを攪拌下に加え、30分間70℃で攪拌し、イオン交換させた。この後、減圧ろ過、水洗、乾燥(120℃)、粉砕した。得られた粉体を塩酸に加熱溶解後、金属はキレート滴定、アニオン量については吸光光度法で測定し、結晶水はTG−DTAを測定して、化学組成を調べた結果、2−フェニルベンズイミダゾール−5スルホン酸が51.2%インターカレーションされたMg0.68Al0.32(OH)(2−フェニルベンズイミダゾール−5スルホン酸)0.30(CO0.01・0.9HOのハイドロタルサイト類が得られた。SEMで測定した結果、結晶外形は六角板状で平均粒径1.7μmであった。
【0028】
(製造実施例2)
結晶外形は六角板状であり、平均粒径が約0.5μmの、水酸化マグネシウム、硫酸アルミニウムと炭酸ナトリウムを用いて共沈法で合成されたCO型合成ハイドロタルサイトの一つであるDHT−4(協和化学工業社製)の粉末50gを、約20℃の温水500mLに分散後、2−フェニルベンズイミダゾール−5スルホン酸の酸型水溶液(1.0mol/L、70℃)100mLを攪拌下に加え、30分間70℃で攪拌し、イオン交換により、2−フェニルベンズイミダゾール−5スルホン酸をインターカレーションさせた。この後、減圧ろ過、水洗、乾燥(120℃)、粉砕した。得られた粉体を塩酸に加熱溶解後、金属はキレート滴定、アニオン量については吸光光度法で測定し、結晶水はTG−DTAを測定して、化学組成を調べた結果、2−フェニルベンズイミダゾール−5スルホン酸が50.5%インターカレーションされたMg0.69Al0.31(OH)(2−フェニルベンズイミダゾール−5スルホン酸)0.29(CO0.01・0.88HOのハイドロタルサイト類が得られた。
【0029】
(製造実施例3)
70℃に加温した精製水1000mLに、3gのステアリン酸と0.5gの水酸化ナトリウムを混合して水溶液とし、製造実施例2で得られたハイドロタルサイト類100gとを混合した後、0.1mol/L希塩酸120mLを用いて中性領域にpHシフトさせることで、粉体の表面にステアリン酸を析出させ、洗浄、乾燥(120℃)、粉砕の後、2−フェニルベンズイミダゾール−5スルホン酸が50.5%インターカレーション、ステアリン酸で表面が3%処理されたハイドロタルサイト類を得た。
【0030】
(製造実施例4)
70℃に加温した精製水1000mLに、1gのステアリン酸、3gのN−ラウロイル−L−リジンと0.6gの水酸化ナトリウムを混合して水溶液とし、製造実施例2で得られたハイドロタルサイト類100gとを混合した後、0.1mol/L希塩酸150mLを用いて中性領域にpHシフトさせることで、粉体の表面にステアリン酸およびN−ラウロイル−L−リジンを析出させ、洗浄、乾燥(120℃)、粉砕の後、2−フェニルベンズイミダゾール−5スルホン酸が50.5%インターカレーション、ステアリン酸で1%、N−ラウロイル−L−リジンで3%処理されたハイドロタルサイト類を得た。
【0031】
本発明品1〜10および比較品1〜18:水中油型乳化化粧料
表1〜表3に示す水中油型乳化化粧料を下記の製法により調製した。得られた水中油型乳化化粧料の「乳化安定性」、「粉体凝集の度合い」、「均一な伸び広がり」について下記の方法により評価し、結果と併せて表1〜表3に示した。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
【表3】

【0035】
(表記載の原料)
*1 レシノールS−10(日光ケミカルズ社製)
*2 GLINSTED XANTHAN CLEAR 80(DANISCO社製)
*3 セピゲル305(SEPPIC社製)
*4 ANTARON V−220(ISP社製)
*5 LUVISKOL K90(バディッシュ社製)
*6 ナトロゾール250HHR(ハークレス社製)
*7 メトローズ60SH−10000(信越化学工業社製)
*8 ケルコゲルLT100(大日本住友製薬社製)
*9 CARBOPOL940(LUBIZOL ADVANCED MATERIALS社製)
*10 CARBOPOL1342(LUBIZOL ADVANCED MATERIALS社製)
*11 アロンビスS(日本純薬社製)
*12 カチナールHC−100(東邦化学工業社製)
*13 クニピアG−4(クニミネ工業社製)
*14 DHT−4(協和化学社製)
【0036】
(製造方法)
A:成分(1)〜(13)を75℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分(14)および成分(15)を75℃に加熱し、均一に混合する。
C:AにBを徐々に添加し、デスパミキサーにて乳化する。
D:成分(16)〜(26)の各水溶性高分子および成分(27)の粘土鉱物は、乳化物に均一に配合するために、予め各濃度で水に分散させ、デスパミキサーにて均一に混合しておく。
E:成分(28)〜(35)は、乳化物に配合しやすいように予めデスパミキサーにて均一に混合しておく。
F:成分(36)〜(38)は、乳化物に配合しやすいように予め均一に混合溶解しておく。
G:Cを室温まで冷却後、D、E、Fをデスパミキサーにて均一に混合し、水中油型乳化化
粧料を得た。
【0037】
(評価方法:乳化安定性)
製造直後、および50℃の恒温槽に1ヶ月間保管した各試料における乳化滴の平均粒子径の測定ならびに標準偏差を算出し、製造直後および50℃1ヶ月の経時での合一や凝集による乳化滴の大きさの分布を乳化安定性の指標とし、測定された乳化滴の粒径の分布の割合を以下の4段階判定基準に従って乳化状態を評価した。なお、平均粒子径は、コールターカウンター(ベックマン・コールター株式会社製:サブミクロン粒子アナライザーN5)による測定でおこない、外観観察は目視による評価でおこなった。
【0038】
4段階評価判断基準
(測定された粒径が、平均粒子径から標準偏差まで含まれる大きさのものの分布の割合を評価軸とした)
(評価) (判定基準)
75%以上 :◎
75%未満50%以上 :○
50%未満であり、外観観察で僅かな離しょう :△
50%未満であり、乳化不良もしくは著しく離しょう :×
【0039】
(評価方法:粉体凝集の度合い)
製造直後、および50℃の恒温槽に1ヶ月間保管した各試料の外観性状を、0.5gの各試料を滴下した5cm×5cmの石英ガラス板にて目視観察し、1mm以上の粉体由来の白色凝集物をカウントし、以下の4段階基準に従って粉体凝集の無さを評価した。
【0040】
4段階評価判断基準
(評価) (判定基準)
目視での凝集物が観察されない :◎
凝集物が5個未満観察される :○
凝集物が5個以上10個未満観察される :△
凝集物が10個以上観察される :×
【0041】
(評価方法:均一な伸び広がり)
製造直後の各試料を、専門パネル20名による使用テストを行い、前腕内側部に適量塗擦して行った。
なお伸び広がりは、粉体凝集の有無によっても大きく影響を及ぼす。粉体凝集がない場合は、均一な伸び広がりとなるが、粉体凝集物が多くなることにより、使用感にも影響する場合があることがあり、各人が下記絶対評価にて4段階に評価し評点を付けた。
さらに試料毎にパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
【0042】
4段階絶対評価
(評点) (評価)
4点 : 非常に滑らかで均一な伸び広がりである
3点 : 滑らかで均一な伸び広がりである
2点 : やや不均一な伸び広がりである
1点 : 不均一な伸び広がりである
【0043】
4段階判定基準
(判定)(評点の平均点)
◎ : 3.5点を越える :非常に良好
○ : 3点を超える3.5点以下 :良好
△ : 2点を超える3点以下 :やや不良
× : 2点以下 :不良
【0044】
表1〜表3の結果からも明らかなように、本発明に係わる本発明品1〜10は、成分(C)を系中に凝集させることなく安定に配合することが可能であり、均一な伸び広がりを有し、乳化安定性に優れる水中油型乳化化粧料であった。比較品1〜4は、本発明のリン脂質とは異なる乳化剤、比較品5は、本発明の水溶性高分子であるキサンタンガムを抜いたもの、比較品6〜10は、キサンタンガムの代わりにノニオン性の水溶性高分子、比較品12〜14は、アニオン性の水溶性高分子、比較品15は、カチオン性の各水溶性高分子、比較品16は粘土鉱物を用いた場合であるが、何れも均一な水中油型乳化化粧料の製造ができなかったり、経時での乳化安定性を保持することができなかったり、均一な伸び広がりを有する水中油型乳化化粧料の製造ができなかった。特に、キサンタンガムの代わりにノニオン性の水溶性高分子であっても経時での本発明におけるハイドロタルサイト類の凝集を防止することはできなかった。
【0045】
(評価:SPF値)
先に示した表1〜表3記載の本発明品3〜5、7、8および比較品5、17、18についてSPF値を測定し、紫外線防御効果について評価した。結果については、表4に示す。
〔測定方法〕
面積40cmの黒枠にトランスポアテープ(3M社製)を貼付し、このテープ部位に1mg/cmになるように均一に各サンプルを塗布する。SPFアナライザー(UV TRANSMITTANCE Labsphere社製)により、サンプルが塗付されたテープ部位を15点測定したものを平均し、SPF値とした。
【0046】
【表4】

【0047】
表4の結果からも明らかなように、本発明に係わる本発明品3〜5、7、8は、紫外線防御効果優れる水中油型乳化化粧料であった。比較品5は、本発明の水溶性高分子であるキサンタンガムを抜いたもので、何れの本発明品よりも、低いSPF値であった。このことからキサンタンガムは、成分(C)を良好に分散させる粉体分散剤として働き、SPF値を向上させる効果が確認された。
比較品17は、紫外線防御剤としてパラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルのみを含有するものである。比較品18は、成分(C)の代わりに2−フェニルベンズイミダゾール−5スルホン酸を水相に配合させたものである。この比較品17、18のSPF値、および本発明品のSPF値の結果から、2−フェニルベンズイミダゾール−5スルホン酸としてそのまま配合するよりも、ハイドロタルサイト類にインターカレーションさせた何れの実施例において、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルと相乗してSPF値を向上させる効果が確認された。
【0048】
実施例2:化粧水
(成分) (%)
(1)水素添加大豆リゾリン脂質*15 0.1
(2)POE(60)硬化ヒマシ油 0.3
(3)オリーブ油 1
(4)精製水 10
(5)1,3−ブチレングリコール 20
(6)POE(60)硬化ヒマシ油 0.05
(7)製造実施例1のハイドロタルサイト類 1
(8)防腐剤 適量
(9)キサンタンガム*16 1%水溶液 5
(10)精製水 残量
*15 HP70H(日本精化社製)
*16 ケルトロール(香栄興業社製)
【0049】
下記の製法により、化粧水を調製した
(製造方法)
A:成分(1)〜(3)を75℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分(4)を75℃に加熱し、均一に混合する。
C:AにBを徐々に添加し、デスパミキサーにて乳化する。
D:成分(5)〜(7)をデスパミキサーにて均一に分散する。
E:成分(9)は、予め所定の濃度になるようデスパミキサーにて調製する。
F:Cを室温まで冷却し、これに成分(8)、(10)、D、Eを均一に混合し、化粧水を得た。
【0050】
実施例2の化粧水は、成分(C)を、系中に凝集させることなく安定に配合することが可能であり、均一な伸び広がりを有し、乳化安定性、および紫外線防御効果に優れる水中油型乳化化粧料であった。
【0051】
実施例3:乳液
(成分) (%)
(1)水素添加大豆リン脂質*17 2
(2)セタノール 0.5
(3)コノール 0.5
(4)POE(20)硬化ヒマシ油 2
(5)ラウリン酸ポリグリセリル−10 2
(6)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 10
(7)ホホバ油 5
(8)防腐剤 適量
(9)グリセリン 5
(10)精製水 残量
(11)1,3−ブチレングリコール 7
(12)POE(20)硬化ヒマシ油 0.05
(13)ラウリン酸ポリグリセリル−10 0.05
(14)製造実施例2のハイドロタルサイト 3
(15)キサンタンガム*18 1%水溶液 15
(16)エタノール 3
(17)香料 適量
*17 ニッコールS−10EZ(日光ケミカルズ社製)
*18 エコーガム(五協産業社製)
【0052】
下記の製法により、乳液を調製した
(製造方法)
A:成分(1)〜(8)を75℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分(9)、(10)を75℃に加熱し、均一に混合する。
C:BにAを徐々に添加し、デスパミキサーにて乳化する。
D:成分(11)〜(14)をデスパミキサーにて均一に分散する。
E:成分(15)は、予め所定の濃度になるようデスパミキサーにて調製する。
F:Cを室温まで冷却し、これに成分(16)、(17)、D、Eを均一に混合し、乳液を得た。
【0053】
実施例3の乳液は、成分(C)を、系中に凝集させることなく安定に配合することが可能であり、均一な伸び広がりを有し、乳化安定性、および紫外線防御効果に優れる水中油型乳化化粧料であった。
【0054】
実施例4:クリーム
(成分) (%)
(1)水素添加レシチン*19 3
(2)コノール 1.5
(3)POE(20)硬化ヒマシ油 3
(4)テトラオレイン酸ポリオキシエチレン(30)ソルビット 2
(5)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 10
(6)スクワラン 5
(6)ワセリン 2
(7)シア脂 3
(8)防腐剤 適量
(9)精製水 残量
(10)グリセリン 5
(11)1,3−ブチレングリコール 5
(12)POE(20)硬化ヒマシ油 0.1
(13)テトラオレイン酸ポリオキシエチレン(30)ソルビット 0.1
(14)製造実施例4のハイロドタルサイト類 6
(15)キサンタンガム*2 2%水溶液 15
(16)香料 適量
*19 卵黄レシチンPL−100P(キューピー社製)
【0055】
下記の製法により、クリームを調製した
(製造方法)
A:成分(1)〜(8)を75℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分(9)、(10)を75℃に加熱し、均一に混合する。
C:BにAを徐々に添加し、デスパミキサーにて乳化する。
D:成分(11)〜(14)をデスパミキサーにて均一に分散する。
E:成分(15)は、予め所定の濃度になるようデスパミキサーにて調製する。
F:Cを室温まで冷却し、これに成分(16)、D、Eを均一に混合し、クリームを得た。
【0056】
実施例4のクリームは、成分(C)を、系中に凝集させることなく安定に配合することが可能であり、均一な伸び広がりを有し、乳化安定性、および紫外線防御効果に優れる水中油型乳化化粧料であった。
【0057】
実施例5:日中用美容液
(成分) (%)
(1)水素添加大豆リン脂質*1 1
(2)セタノール 0.5
(3)ジイソステアリン酸ポリグリセリル−10 1
(4)オレイン酸ポリグリセリル−10 1
(5)ホホバ油 10
(6)防腐剤 適量
(7)グリセリン 5
(8)1,3−ブチレングリコール 15
(9)精製水 残量
(10)エタノール 2
(11)精製水 2
(12)製造実施例2のハイドロタルサイト類 2
(13)キサンタンガム*2 1%水溶液 15
(14)ヘキシジルカルバミン酸コレステリルプルラン 0.5
(15)香料 適量
【0058】
下記の製法により、日中用美容液を調製した
(製造方法)
A:成分(1)〜(6)を75℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分(7)〜(9)を75℃に加熱し、均一に混合する。
C:AにBを徐々に添加し、デスパミキサーにて乳化する。
D:成分(10)〜(12)をデスパミキサーにて均一に分散する。
E:成分(13)は、予め所定の濃度になるようデスパミキサーにて調製する。
F:Cを室温まで冷却し、これに成分(14)、(15)、D、Eを均一に混合し、美容液を得た。
【0059】
実施例5の日中用美容液は、成分(C)を、系中に凝集させることなく安定に配合することが可能であり、均一な伸び広がりを有し、乳化安定性、および紫外線防御効果に優れる水中油型乳化化粧料であった。
【0060】
実施例6:化粧用下地化粧料
(成分) (%)
(1)水素添加大豆リン脂質*20 3
(2)セタノール 0.5
(3)ベヘニルアルコール 1.5
(4)POE(40)硬化ヒマシ油 1
(5)POE(60)硬化ヒマシ油 2
(6)パラフィンワックス 1
(7)ポリブデン 4
(8)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 10
(9)精製水 残量
(10)ポリエチレングリコール400 2
(11)エタノール 5
(12)防腐剤 適量
(13)POE(40)硬化ヒマシ油 0.05
(14)POE(60)硬化ヒマシ油 1
(15)製造実施例3のハイドロタルサイト類 3
(16)合成金雲母 1
(17)メタクリル酸メチルクロスポリマー 0.5
(18)酸化亜鉛 0.1
(19)シリカ 0.05
(20)酸化鉄 0.05
(21)タルク 0.5
(22)キサンタンガム*2 1%水溶液 25
*19 レシノールS−PIE(日光ケミカルズ社製)
【0061】
下記の製法により、化粧用下地化粧料を調製した
(製造方法)
A:成分(1)〜(8)を75℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分(9)を75℃に加熱し、均一に混合する。
C:AにBを徐々に添加し、デスパミキサーにて乳化する。
D:成分(10)〜(21)をデスパミキサーにて均一に分散する。
E:成分(22)は、予め所定の濃度になるようデスパミキサーにて調製する。
F:Cを室温まで冷却し、これにD、Eを均一に混合し、化粧用下地化粧料を得た。
【0062】
実施例6の化粧用下地化粧料は、成分(C)を、系中に凝集させることなく安定に配合することが可能であり、均一な伸び広がりを有し、乳化安定性、および紫外線防御効果に優れる水中油型乳化化粧料であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(C);
(A)リン脂質
(B)キサンタンガム
(C)下記式(1)
[M2+3+1−x(OH)][An-x/n・mHO] ・・・ (1)
(但し、式中、M2+はMgおよび/またはZnなどの2価金属を示し、M3+はAlなどの3価金属を示し、An−は2−フェニルベンズイミダゾール−5スルホン酸を示し、xおよびmは次の範囲にある。0.6<x<0.85,0≦m<5)で表わされるハイドロタルサイト類を、含有することを特徴とする水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
前記成分(C)が、疎水化処理されていることを特徴とする請求項1記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
前記成分(B)の含有量が、0.05〜0.3質量%であることを特徴とする請求項1または2記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
前記成分(B)と成分(C)の含有質量比が、(C)/(B)=13.3〜80であることを特徴とする請求項1〜3の何れかの項記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項5】
さらに成分(D)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルを含有することを特徴とする請求項1〜4の何れかの項記載の水中油型乳化化粧料。


【公開番号】特開2012−214449(P2012−214449A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−66713(P2012−66713)
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】