説明

水中油型乳化化粧料

【課題】経時でのゲル化を抑制し、なめらかな使用感で、べたつきがなく肌なじみのよさに優れた使用感を得ることができる水中油型乳化化粧料の提供。
【解決手段】特定の高級アルコール変性シロキサン化合物と炭素数16〜22の高級アルコール、極性油、リン脂質を含有することを特徴とする水中油型乳化化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の高級アルコール変性シロキサン化合物、炭素数16〜22の高級アルコール、極性油、リン脂質を含有する水中油型乳化化粧料に関し、更に詳しくは、経時でのゲル化を抑制し、なめらかな使用感で、べたつきがなく肌なじみのよさに優れた水中油型乳化化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リン脂質は生体膜の構成成分として知られ、皮膚への親和性が良好な保湿効果の高い天然界面活性物質であり、水中油型乳化化粧料の乳化剤として用いられている。しかし一般に、リン脂質は乳化力が弱いことから、経時安定性を向上させる多くの検討が行われている。例えば、高級アルコールとグリセリンを併用して乳化安定性を向上させる技術がある。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
一方、乳化化粧料では、皮膚に対する有効成分として、またべたつきを抑え肌上での伸びを良好にする目的で極性油を含有する場合があるが、極性油は乳化物の安定性に影響をあたえることから、極性油の安定配合についても多くの検討が行われている。例えば、高級アルコールと極性油、長鎖アシルスルホン酸塩型陰イオン性界面活性剤を併用して乳化安定性を向上させる技術がある。(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−4912号公報
【特許文献2】特開2008−44866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように乳化剤としてリン脂質、乳化助剤として高級アルコール及びグリセリンを用い、極性油を乳化した化粧料は、経時で高級アルコールが析出してしまい化粧料がゲル化・増粘して使用性が著しく悪化する場合があった。また、特許文献2の技術は経時安定性が高いものであるが、皮膚への親和性や保湿効果に劣るものであった。
【0006】
このように、化粧料で汎用される界面活性剤に比べ、リン脂質は乳化力が弱いために極性油を乳化した場合には経時安定性が劣るものであり、また、乳化助剤として高級アルコールを組み合わせても、乳化界面から高級アルコールが水相中に析出することにより増粘し、さらに高級アルコールの一部がリン脂質とゲルを形成することにより増粘が進行する場合があるなど、化粧料の塗布時のなめらかな感触等の使用性に問題となる場合があった。本発明では乳化剤としてリン脂質を用い、高級アルコールと極性油を併用した水中油型乳化化粧料において、経時でのゲル化を抑制し、なめらかな感触に優れた水中油型乳化化粧料を開発することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる実情において、本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、リン脂質乳化系において高級アルコールの析出を抑制するために、高級アルコールとの親和性が高く、さらに、極性油との親和性が高い特定の高級アルコール変性シロキサン化合物を組み合わせることで、特定の高級アルコール変性シロキサン化合物が高級アルコールと極性油とのつなぎ役として機能し、高級アルコールの乳化滴からの析出を抑制して経時でのゲル化を抑制していることを見出した。また、特定の高級アルコール変性シロキサン化合物のシロキサン部分は高級アルコールに対して分岐していることで立体的な構造になっており、この立体的な構造によって特定の高級アルコール変性シロキサン化合物がリン脂質の乳化滴から出にくくなり、さらに特定の高級アルコール変性シロキサン化合物と親和性の高い高級アルコールの乳化滴からの析出を抑制している。この組み合せによってリン脂質乳化系においても高級アルコールの析出を抑制して経時でのゲル化を抑制し、なめらかな使用感をもちながら、べたつきがなく肌なじみのよさに優れた水中油型乳化化粧料を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
次の成分(A)〜(D)
(A)下記一般式(1)で表される高級アルコール変性シロキサン化合物
【化1】

(B)炭素数16〜22の高級アルコール
(C)極性油
(D)リン脂質
を含有する水中油型乳化化粧料に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、経時でのゲル化を抑制し、なめらかな使用感で、べたつきがなく肌なじみのよさに優れた使用感を得ることができる水中油型乳化化粧料に関するものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」とは、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本発明に使用される成分(A)高級アルコール変性シロキサン化合物は下記一般式(1)で表されるものであり、成分(A)の性状は好ましくは25℃において液状である。なお、高級アルコール部は珪素原子に結合した末端と異なる末端に1価の高級アルコール性水酸基を有するものであって、多価アルコールや糖のような複数の水酸基を有するものではない。すなわち−(CH2)n−OH(式中、nは10〜30)で表される構造体であり、好ましくはnが10〜18、特に好ましくは10〜15である。nが10より小さいとゲル化を抑制する効果が、30より大きいと伸び広がりの良い感触が十分に得られない場合がある。また、下記一般式(1)中のRがメチル基であると、感触の点において好ましい。
【0011】
【化1】

【0012】
本発明に使用される成分(A)高級アルコール変性シロキサン化合物の製造方法は、特に限定されるものではないが、一例としてヒドロシリル化反応触媒の存在下において、下記一般式(2)で表される不飽和高級アルコールと、下記一般式(3)で表されるオルガノハイドロジェントリシロキサンを、オルガノハイドロジェントリシロキサン中の珪素結合水素原子に対して、1モル当量以上となる物質量で付加反応させることにより得ることができる。
【0013】
【化2】

【0014】
【化3】

ヒドロシリル化反応は、触媒の存在下で行うことが好ましく、触媒としては、白金、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、イリジウム、オスミウムなどの化合物を挙げることができ、その触媒活性が高いことから白金化合物が特に有効である。白金化合物の例としては、塩化白金酸、金属白金、白金−ビニルシロキサン錯体・白金−ホスフィン錯体・白金−ホスファイト錯体・白金アルコラート触媒などの白金錯体などを挙げることができる。用いる触媒の使用量は、白金触媒を使用する場合、金属白金として0.5〜1000ppm程度である。
【0015】
更に、本発明に使用される成分(A)高級アルコール変性シロキサン化合物は、反応後の不飽和化合物の残存による臭気改善を目的として、水素添加処理を行っても良い。水素添加による無臭化工程としては、水素ガスを加圧する方法と金属水素化物などの水素添加剤による方法があり、更に該水素化反応には均一反応と不均一反応がある。これらの処理は単独で行っても、組み合わせて行っても良い。ただし、使用した触媒が製品に残存しないという利点を考慮すると、固体触媒を用いた不均一接触水素添加反応がもっとも好ましい。また、当該無臭化処理の前工程または後工程として、減圧下にて窒素ガスを接触させて軽質物を留去するストリッピング工程を行うことが好ましい。
【0016】
成分(A)高級アルコール変性シロキサン化合物は、本発明の水中油型乳化化粧料において、経時での化粧料のゲル化を抑制し、なめらかな感触に優れた化粧料を得るために含有されるものである。シリコーンの軽い使用感とべたつきのない滑らかさと、高級アルコールの高極性に由来する極性油との相溶性の高さ、また乳化界面における油相寄りの配向性という特徴を有しており、極性油と共存した高級アルコールの水相への析出を抑え、経時でのゲル化を抑制した水中油型乳化化粧料を得ることができる。
【0017】
本発明に用いられる成分(A)の含有量は特に限定されないが、0.01〜5質量%(以下「質量%」は単に「%」と略す)が好ましい。この範囲であれば、経時でのゲル化の抑制に優れた水中油型乳化化粧料を得ることができる。
【0018】
本発明に用いられる成分(B)の炭素数16〜22の高級アルコールは、水中油型乳化化粧料の界面を安定にする乳化助剤として含有され、通常の化粧料に用いられる高級アルコールであれば特に限定されない。このような成分(B)は、25℃における性状は固形状である。炭素数が16より小さいと乳化助剤として充分に機能せず、また炭素数が22より大きいと使用時の感触上好ましくない。このような成分(B)としては、具体的には、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。これらの中でもベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコールの何れかを選択すると、なめらかな使用感に優れ、経時安定性が特に良好な水中油型乳化化粧料を得ることができる。
【0019】
本発明に用いられる成分(B)の含有量は特に限定されないが、0.1〜5%が好ましい。この範囲であれば、経時でのゲル化抑制に優れた水中油型乳化化粧料を得ることができる。
【0020】
また、成分(A)及び成分(B)の含有質量割合(B)/(A)=10〜1であることが好ましい。この範囲であれば、経時でのゲル化を抑制し、なめらかな使用感の水中油型乳化化粧料を得ることができる。
【0021】
本発明に用いられる成分(C)の極性油はエステル骨格をもつ油剤であり、本発明の水中油型乳化化粧料において、べたつきの無さと肌なじみの良さを付与するために含有され、通常の化粧料に用いられる極性油であれば特に限定されるものではない。例えば、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、(カプリル酸・カプリン酸・ヤシ油脂肪酸)グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、イソオクタン酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、イソステアリン酸イソプロピルイソパルミチン酸オクチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、イソノナン酸イソノニル、コハク酸ジエステル、ステアリン酸硬化ヒマシ油、ホホバ油、2−エチルヘキサン酸セチル、フィトステロール脂肪酸エステル、リンゴ酸ジイソステアリル等が挙げられ、これらを一種又は二種以上組み合わせて用いることができ、中でも25℃にて液状であるトリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、(カプリル酸・カプリン酸・ヤシ油脂肪酸)グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル等のトリグリセライドが好適例として挙げられる。
【0022】
本発明に用いられる成分(D)のリン脂質は、本発明の水中油型乳化化粧料において、乳化剤として含有されるものであり、通常化粧料に使用されるものであれば、特に制限されないが、具体的には、大豆由来リン脂質、大豆由来水素添加リン脂質、大豆由来リゾリン脂質、大豆由来水素添加リゾリン脂質、卵黄由来リン脂質、卵黄由来水素添加リン脂質、卵黄由来リゾリン脂質、卵黄由来水素添加リゾリン脂質等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
【0023】
本発明に用いられる成分(D)の含有量は特に限定されないが、0.005〜10%が好ましく、0.5〜5%がより好ましい。成分(D)の含有量がこの範囲であると、経時安定性に優れる水中油型乳化化粧料を得ることができる。
【0024】
また、本発明の水中油型乳化化粧料の粘度は特に限定されないが、15℃における粘度が5,000〜100,000mPa・sであると、従来のリン脂質乳化系において、高級アルコールと極性油が共存した場合に顕著であったゲル化の抑制効果がより発揮されるため好ましい。粘度測定は芝浦システム株式会社製のB型粘時計、Model:VDA2を用い、4号ローターを使用し6回転/60秒の条件で、化粧品原料基準一般試験法に準じて測定する。
【0025】
本発明の水中油型乳化化粧料は、上記の成分(A)〜(D)の他に、通常化粧料に使用される成分、炭化水素油、シリコーン油、油溶性樹脂、無機顔料、有機顔料及び色素等の粉体及びそれらのシリコーン処理物やフッ素化合物処理物、界面活性剤、繊維、多価アルコール、水溶性高分子、水溶性皮膜形成性樹脂、保湿剤等の水性成分、糖類、紫外線吸収剤、褪色防止剤、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料等を本発明の効果を妨げない範囲で含有することができる。
【0026】
油性成分としては、化粧料に一般に使用される動物油、植物油、合成油等の起源の固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、脂肪酸類、シリコーン油類、フッ素系油類類等が挙げられる。その他の油性成分としては、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリブテン等の炭化水素類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、高重合度メチルフェニルポリシロキサン、架橋型ポリエーテル変性メチルポリシロキサン、オレイル変性オルガノポリシロキサン、ベヘニル変性オルガノポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、アルコキシ変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0027】
粉体成分としては、化粧料に一般に使用される粉体として用いられる粉体であれば、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的に例示すれば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、チタン・酸化チタン焼結物、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト、無水ケイ酸、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等の白色体質粉体、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等の光輝性粉体、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン等の有機低分子性粉体、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等や、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体あるいは更にアルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、セルロース等の繊維等が挙げられる。これらはフッ素化合物、シリコ−ン油、粉体、油剤、ゲル化剤、エマルションポリマー、界面活性剤等で表面処理されていてもよい。これらの粉体は、1種又は2種以上を用いることができ、更に複合化したものを用いても良い。
【0028】
界面活性剤としては、化粧料一般に用いられている界面活性剤であればいずれのものも使用でき、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0029】
水性成分としては、水に可溶な成分であれば何れでもよく、水の他に、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ水等の植物抽出液等が挙げられる。
【0030】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、パラアミノ安息香酸系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられる。
【0031】
酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては例えばビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、1,2−ペンタジオール等が挙げられる。
【0032】
本発明の水中油型乳化化粧料は、常法により製造される。例えば、水性成分から成る水相と、油性成分から成る油相をそれぞれ加熱混合後、乳化し、適宜、高分子、香料等を添加し製造される。
【0033】
本発明の水中油型乳化化粧料は、化粧水、乳液、クリーム、美容液、マッサージ料、パック料、ハンドクリーム、ボディクリーム等のスキンケア化粧料、化粧用下地化粧料を例示することができ、その形状としては、液状、ゲル状、乳液状、クリーム状、固形状等種々の形態をも選択することができる。またその使用方法としては、通常の手に適量取って使用する方法、不織布等に含浸させて使用する方法等が挙げられる。
【0034】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0035】
合成例1及び2、比較合成例
[合成例1:高級アルコール変性シロキサン化合物(C11)]
攪拌装置、温度計、還流管、滴下漏斗を取り付けた反応器にウンデセニルアルコール89.0gを仕込み、窒素流通下で攪拌しながら70℃まで加熱した。白金触媒27mgを加えた後、下記一般式(4)のオルガノハイドロジェントリシロキサン127.8gを滴下漏斗から徐々に加え、反応を開始した。滴下終了後、1時間エージングを行い、ガスクロマトグラフィーにより反応が完結したことを確認した。減圧下、70℃で未反応のシロキサンを除いた後、150℃まで加温して内部転移した、もしくは過剰量のウンデセニルアルコールを除くことにより、高級アルコール変性シロキサン化合物(C11)を得た。この化合物は25℃において、液状であった。
【0036】
【化4】

【0037】
[合成例2:高級アルコール変性シロキサン化合物(C15)]
攪拌装置、温度計、還流管、滴下漏斗を取り付けた反応器にペンタデセニルアルコール93.2gを仕込み、窒素流通下で攪拌しながら70℃まで加熱した。白金触媒27mgを加えた後、上記一般式(4)のオルガノハイドロジェントリシロキサン127.8gを滴下漏斗から徐々に加え、反応を開始した。滴下終了後、1時間エージングを行い、ガスクロマトグラフィーにより反応が完結したことを確認した。減圧下、70℃で未反応のシロキサンを除いた後、150℃まで加温して内部転移した、もしくは過剰量のペンタデセニルアルコールを除くことにより、高級アルコール変性シロキサン化合物(C15)を得た。この化合物は25℃において、液状であった。
【0038】
[比較合成例:高級アルコール変性ジメチルポリシロキサン化合物(C11)]
攪拌装置、温度計、還流管、滴下漏斗を取り付けた反応器に下記一般式(5)のメチルハイドロジェンポリシロキサン50.0gを仕込み、窒素流通下で攪拌しながら70℃まで加熱した。ウンデセニルアルコール28.4gと白金触媒19.6mgを滴下漏斗から徐々に加え、反応を開始した。滴下終了後、100℃にてエージングを行い、IRスペクトルによりSi−Hの消失を確認することで反応が完結したことを確認した。減圧下、150℃まで加温して、内部転移したもしくは過剰量のウンデセニルアルコールを除くことにより、ジメチルポリシロキサン変性高級アルコール(C11)を得た。この化合物は25℃において、液状であった。
【0039】
【化5】

【0040】
実施例1〜14及び比較例1〜8:水中油型乳液
表1及び表2に示す処方、下記製造方法にて水中油型乳液を製造し、下記評価方法により、(a)経時でのゲル化抑制、(b)なめらかな感触、(c)べたつきの無さ、(d)肌なじみのよさについて評価を行った。この結果も併せて表1及び表2に示した。なお、実施例1〜14の15℃における粘度は10,000〜100,000mPa・sの範囲内であった。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

※1:ニッコール レシノールS−10(日光ケミカルズ社製)
※2:セトステアリルアルコール(高級アルコール工業社製)
※3:合成例1の高級アルコール変性シロキサン化合物(C11)
※4:合成例2の高級アルコール変性シロキサン化合物(C15)
※5:比較合成例の高級アルコール変性ジメチルポリシロキサン化合物(C11)
※6:KLEAROL(SONNEBORN社製)
※7:シリコンKF−96(100CS)(信越化学工業社製)
※8:CARBOPOL980(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製)
【0043】
(製造方法)
A:成分(1)〜(5)を加熱、70℃にて均一に溶解した。
B:成分(6)〜(20)を加熱、70℃にて均一に溶解した。
C:AにBを混合、乳化した。(アジディスパーにて3500rpm、5分間)
D:Cに70℃に加熱した成分(21)を添加、混合した。
E:Dに成分(22)、(23)を添加、混合し50℃まで冷却した。
F:Eに成分(24)、(25)を添加混合し、脱泡後、容器に充填して水中油型乳液を得た。
【0044】
(評価方法)
<評価項目>
(a)経時でのゲル化抑制
各サンプルを製造後15℃で24時間静置した際の粘度を翌日粘度値として測定した(粘度測定値A:測定温度15℃)。一方、−20℃と15℃を24時間ごとのサイクルを3回(計6日間)繰り返し、15℃で24時間静置した際の粘度を経時後の粘度値として測定した(粘度測定値B:測定温度15℃)。この粘度測定値Aから粘度測定値Bの増加率(%)を下記の基準に基づき評価した。なお粘度測定は芝浦システム株式会社製のB型粘時計、Model:VDA2を用い、4号ローターを使用し6回転/60秒の条件で、化粧品原料基準一般試験法に準じて測定した。
粘度の増加率(%)=(B/A)×100
◎:110%未満
○:110%以上130%未満
△:130%以上150%未満
×:150%以上
【0045】
<評価項目>
(b)なめらかな感触
(c)べたつきの無さ
(d)肌なじみのよさ
20名の化粧品評価専門パネルにより、各サンプルを使用試験し、各々のサンプルに対して、「なめらかな感触」、「べたつきの無さ」「肌なじみのよさ」の各項目について、下記の評価基準に基づき7段階評価した。更に、その評点の全パネルの平均点より、下記判定基準により判定した。
<7段階絶対評価>
(評点):(評価)
6:非常に良好
5:良好
4:やや良好
3:普通
2:やや不良
1:不良
0:非常に不良
<4段階判定基準>
◎:5.5点以上
○:4.5点以上で5.5点未満
△:2.5点以上で4.5点未満
×:2.5点未満
【0046】
表1及び表2から明らかなように、本発明の実施例1〜14は、いずれも経時でのゲル化抑制、なめらかな感触、べたつきの無さ、肌なじみのよさ、のすべての点で満足のいくものであった。これに対し、成分(A)を含有しない比較例1は経時でのゲル化を抑制できず、なめらかな感触に劣るものであった。また、成分(A)の代わりに比較合成例の高級アルコール変性ジメチルポリシロキサン化合物を含有した比較例2は高級アルコールとの親和性が低く、高級アルコールの析出を抑制できないため経時でゲル化してしまい、なめらかな感触に劣るものであった。また、成分(A)の代わりに成分(A)と分子量が近い他の油剤を含有した比較例3〜5も経時でのゲル化を抑制できず、なめらかな感触に劣るものであった。また、成分(B)の代わりに炭素数14の高級アルコールであるミリスチルアルコールを含有した比較例6は乳化助剤としての効果が弱く、経時でゲル化や分離が見られた。成分(B)の代わりに炭素数24の高級アルコールであるリグノセリルアルコールを含有した比較例7は、肌なじみが悪く、経時でのゲル化抑制に劣るものであった。さらに、成分(C)の極性油の代わりに非極性油である流動パラフィンを含有した比較例8は、経時安定性はよいものの、べたつきの無さや肌なじみのよさに劣るものであった。
【0047】
実施例15:水中油型化粧水
(成分) (%)
1.水素添加大豆リン脂質 ※1 0.65
2.コレステロール 0.15
3.グリセリン 4
4.1,3−ブチレングルコール 5
5.セスキオレイン酸ソルビタン 0.1
6.ポリオキシエチレン(10モル)コレステリルエーテル ※9 0.04
7.トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.02
8.セトステアリルアルコール ※2 0.02
9.高級アルコール変性シロキサン化合物 ※3 0.01
10.香料 0.03
11.精製水 15
12.乳酸ナトリウム50%水溶液 0.2
13.ポリエチレングリコール20000 0.3
14.精製水 残 量
15.1,3−ブチレングルコール 6
16.ジプロピレングリコール 5
17.エデト酸2ナトリウム 0.05
18.グリセリン 2
19.メチルパラベン 0.15
20.エタノール 3
※9:EMALEX CS−10(日本エマルジョン社製)
【0048】
(製造方法)
A:成分1〜3を70℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分4〜10を70℃に加熱し、均一に混合する。
C:AにBを添加して、70℃にてゲルを調合する。
D:Cに70℃に加熱した11を添加して乳化する。
E:Dを35℃まで冷却し、マイクロフルイダイザーにて処理する。
F:均一に溶解した成分12〜20にEを加え、均一に混合して水中油型化粧水を得た。
【0049】
実施例15の水中油型化粧水は、経時でのゲル化抑制、なめらかな感触、べたつきの無さ、肌なじみのよさに優れた水中油型化粧水であった。また、15℃における粘度は500mPa・sであった。
【0050】
実施例16:水中油型クリーム
(成分) (%)
1.水素添加卵黄リン脂質 ※10 5
2.ステアリン酸 1
3.ベヘニルアルコール 3
4.ワセリン 1.5
5.トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 10
6.流動パラフィン ※6 5
7.ジメチルポリシロキサン ※11 2
8.フィトステロール 1.5
9.高級アルコール変性シロキサン化合物(※3) 5
10.1,3−ブチレングリコール 10
11.グリセリン 10
12.乳酸ナトリウム 2
13.キサンタンガム 0.4
14.トリエタノールアミン 0.5
15.メチルパラベン 0.15
16.香料 0.05
17.精製水 残 量
※10:卵黄レシチンPL−100P(キューピー社製)
※11:シリコンKF−96(10CS)(信越化学工業社製)
【0051】
(製造方法)
A:成分1〜9を70℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分10〜15及び17を70℃に加熱し、均一に混合する。
C:AにBを添加して、70℃にて乳化混合する。
D:Cを室温まで冷却し、成分16を添加混合して水中油型クリームを得た。
【0052】
実施例16の水中油型クリームは、経時でのゲル化抑制、なめらかな感触、べたつきの無さ、肌なじみのよさに優れた水中油型クリームであった。また、15℃における粘度は50,000〜100,000mPa・sの範囲内であった。
【0053】
実施例17:シート状水中油型化粧料
実施例1の水中油型乳液20gを不織布シート(三昭紙業社製 コットン(100%)、密度が50g/m、縦20cm×横20cm)に含浸させ、PET製フィルムでできた包装体に密封包装することでシート状水中油型化粧料を得た。
実施例17のシート状水中油型化粧料は、なめらかな感触とべたつきの無さ、肌なじみのよさに優れたものであった。
【0054】
実施例18:水中油型化粧下地
(成分) (%)
1.水素添加大豆リン脂質・コレステロール混合物 ※12 1.5
2.水素添加大豆リゾリン脂質 ※13 0.2
3.ポリオキシエチレン(10モル)コレステリルエーテル ※9 0.2
4.ヒドロキシステアリン酸コレステリル 1
5.セチルアルコール 0.1
6.ベヘニルアルコール 0.4
7.メチルパラベン 0.15
8.グリセリン 5
9.1,3−ブチレングリコール 10
10.微粒子酸化チタン分散ペースト(※14) 5
11.トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 5
12.高級アルコール変性シロキサン化合物(※3) 0.5
13.パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 5
14.水酸化ナトリウム 0.03
15.精製水 残 量
16.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 ※15 0.1
17.キサンタンガム 0.1
18.精製水 14.8
19.エタノール 3
20.香料 0.1
21.カラメル 0.01
※12:ベイシスCL−20(日清オイリオ社製)
※13:LP70H(日本精化社製)
※14:コスメサーブWP−UF(V)(岩瀬コスファ社製)
※15:CARBOPOL1382(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製)
【0055】
(製造方法)
A:成分10、11に成分12、13を添加して均一に混合し70℃に加熱する。
B:均一に混合し70℃に加熱した成分1〜9に、Aを添加しゲルを調整する。
C:Bに成分14、15を添加し70℃にて乳化する。
D:Cを60℃まで冷却し成分16〜18を加え、均一に混合する。
E:Dを室温まで冷却し、成分19〜21を添加混合して水中油型化粧下地を得た。
【0056】
実施例18の水中油型化粧下地は、経時でのゲル化抑制、なめらかな感触、べたつきの無さ、肌なじみのよさに優れた水中油型化粧下地であった。また、15℃における粘度は15,000mPa・sであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(D);
(A)下記一般式(1)で表される高級アルコール変性シロキサン化合物
【化1】

(B)炭素数16〜22の高級アルコール
(C)極性油
(D)リン脂質
を含有することを特徴とする水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
前記一般式(1)におけるR2の炭素原子数が10〜18であることを特徴とする請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
前記成分(C)が25℃で液状のトリグリセライドであることを特徴とする請求項1または2に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
前記成分(B)の含有量が0.1〜5質量%であることを特徴とする請求項1〜3に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項5】
前記成分(A)及び成分(B)の含有質量割合(B)/(A)=10〜1であることを特徴とする請求項1〜4に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項6】
15℃における粘度が5,000〜100,000mPa・sであることを特徴とする請求項1〜5に記載の水中油型乳化化粧料。

【公開番号】特開2013−95711(P2013−95711A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240869(P2011−240869)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】