説明

水中油型乳化組成物

【課題】 良好な使用感と優れた製剤安定性とを有する水中油型乳化組成物を提供する。
【解決手段】 水相中に、下記式(I)で示されるアクリロイルジメチルタウリン塩とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体を含み、
油相中に、粉体を含むことを特徴とする水中油型乳化組成物。
(化1)


(式(I)中、Xはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウムイオン、又は有機アミンであり、nは3〜90、mは10〜97である。)
Xはナトリウム原子であることが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中油型乳化組成物、特に油相中に粉体を含む水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料に各種粉体を配合することにより、肌や頭髪を彩色する、シミ・そばかす等を隠す、紫外線から肌を保護する、あるいは汗や皮脂を吸収させる等の機能を付与している。特に水中油型乳化系の化粧料は、良好な使用感を有することから好まれており、種々の化粧料、例えば乳化型ファンデーションや、乳液、クリーム等として利用されている。
粉体を配合した水中油型乳化系では、製品としての十分な安定性を得ることが大きな課題となっている。すなわち経時や温度変化等により、乳化粒子の合一や、粉体微粒子の凝集・沈降が生じることがあり、製剤安定性を向上する技術が求められている。特に粉体として酸化鉄や酸化アルミニウム等を配合した化粧料の場合、経時で溶出する金属イオンの影響により、粘度が変化することがある。
【0003】
水中油型乳化基剤の安定性を確保するためには、連続相である水相を増粘することが効果的であると考えられる。従来技術では、カルボキシビニルポリマーによる増粘方法(例えば特開平7−187950号公報、特開2002-3338号公報等)や、多糖類による増粘方法(例えば特開2003-230804号公報、特開2003−73226号公報等)等が検討されている。
【特許文献1】特開平7−187950号公報
【特許文献2】特開2002-3338号公報
【特許文献3】特開2003-230804号公報
【特許文献4】特開2003−73226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カルボキシビニルポリマー等の静電反発による増粘方法では、前述した金属イオンの溶出による影響が無視できず、減粘もしくはゲル化することがあった。また多糖類による増粘方法では、増粘効果が発揮される量に配合すると、使用感にべたつきが生じることがあった。
本発明は前記従来技術の課題に鑑み為されたものであり、その目的は良好な使用感と優れた製剤安定性とを有する水中油型乳化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために本発明者等が検討を行った結果、水相中にアクリロイルジメチルタウリン塩とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体を配合することにより、粘度が保持され、経時での乳化粒子の合一や、粉体の凝集・沈降を改善し得ると共に、良好な使用感が得られることを見出した。また特定のアクリルシリコーンを使用することにより粉体の分散安定性がさらに良くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の主題は、水相中に、下記式(I)で示されるアクリロイルジメチルタウリン塩とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体を含み、
油相中に、粉体を含むことを特徴とする水中油型乳化組成物である。
(化1)

(式(I)中、Xはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウムイオン、又は有機アミンであり、nは3〜90、mは10〜97である。)
【0006】
Xはナトリウム原子であることが好適である。
前記組成物において、さらに下記一般式(II)で示されるアクリルシリコーンから選ばれる1種又は2種以上を含むことが好適である。
(化2)

(一般式(II)中、Rは炭素数10〜20のアルキル基、a+b+c=1、a,b,c共に0.2以上、dは5〜100の整数である)
前記組成物において、油相中に、粉体として赤酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄、及び酸化アルミニウムから選ばれる1種又は2種以上を含むことが好適である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水中油型乳化組成物によれば、水相中にアクリロイルジメチルタウリン塩とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体を配合することにより、粘度が保持され、経時での乳化粒子の合一や、粉体の凝集・沈降を改善し得ると共に、良好な使用感が得られる。また、特定のアクリルシリコーンを油相中に配合することにより、粉体の分散安定性がさらに向上される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<アクリロイルジメチルタウリン塩/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体>
本発明の水中油型乳化組成物は、水相中に増粘剤として下記式(I)で示されるアクリロイルジメチルタウリン塩/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体の1種又は2種以上を含むものである。
(化3)

(式(I)中、Xはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属、アンモニウムイオン、有機アミン塩であり、nは3〜90、mは10〜97である。)
【0009】
Xとしては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、マグネシウム等)、アンモニウム、有機アミン(例えば、モノエタノールアミン、ジエタンールアミン、トリエタノールアミン等)が挙げられるが、アルカリ金属であることが好ましく、特にナトリウムであることが好ましい。
アクリロイルジメチルタウリン塩/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体は、自動反転性反転ラテックスであり、市販品としては、SIMULGEL NSTM(SEPPIC社製)等に含有されている。これは、アクリロイルジメチルタウリンナトリウム/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体と、モノステアリンポリオキシエチレンソルビタン(20モル)、スクワランの混合物であり、アクリロイルジメチルタウリンナトリウム/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体を35〜40質量%含んでいる。
【0010】
本発明において、アクリロイルジメチルタウリン塩/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体の配合量としては、水中油型乳化組成物全量に対して0.1〜5.0質量%が好ましく、0.2〜4.0質量%が特に好ましい。0.1質量%未満であると上記効果が十分でなく、5.0質量%を超えるとよれが生じるなど使用感が悪くなることがある。
特に、粉体として酸化鉄や酸化アルミニウム等が配合されている場合、粉体から経時的に溶出する金属イオンが、水相中の増粘剤に作用するため、通常の増粘剤を用いたのでは粘度が低下もしくは上昇し、製剤安定性を保持することができない。
そこで本発明では、上記式(I)で示されるアクリロイルジメチルタウリン塩/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体を使用すると、溶出イオンによる影響を受けず、長期にわたり粘度が保持され、乳化粒子の合一や、粉体の凝集・沈降が防止できることを見出した。
【0011】
すなわち本発明の水中油型乳化組成物は、水相中に増粘剤として、アクリロイルジメチルタウリン塩/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体の1種又は2種以上を配合することで、製剤安定性が改善されたものであり、該組成物は使用感も良好である。
また本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲内の配合量において、アクリロイルジメチルタウリン塩/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体と共に、キサンタンガム、サクシノグリカン等の増粘剤を併用することもできる。アクリロイルジメチルタウリン塩/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体を用いることにより、キサンタンガムやサクシノグリカンに由来するべたつきを抑制することができる。
【0012】
<粉体>
本発明において用いられる粉体としては、特に限定されず、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、カオリン、亜鉛華、赤酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、チタンコーティッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、ベンガラ、水酸化クロム、雲母チタン、酸化クロム、酸化アルミニウムコバルト、紺青、カーボンブラック、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、マイカ、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、オルガノポリシロキサンエラストマー、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、メタクリル酸メチルポリマー、ポリスチレン、ポリスチレンポリアクリル酸共重合体、塩化ビニルポリマー、テトラフルオロエチレンポリマー、セルロースパウダー、キチンパウダー、キトサンパウダー、魚鱗箔等が挙げられる。
粉体の配合量は処方形態により異なり特に限定されないが、0.5〜50質量%であることが好ましい。
【0013】
本発明では、水相中に上記式(I)で示されるアクリロイルジメチルタウリン塩/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体を配合しているので、粉体として酸化鉄や酸化アルミニウム等が配合されている場合でも、溶出イオンによる影響を受けず、長期にわたり粘度が保持され、乳化粒子の合一や、粉体の凝集・沈降が防止できる。
そして、粉体の分散性に優れるため、酸化チタンや酸化亜鉛等の紫外線防御粉体を用いた場合には、高い紫外線遮蔽効果が得られ、着色剤を用いた場合には色むらがなく、きれいな仕上がりが得られる。
【0014】
本発明で用いられる粉体は、油相中に分散させる上では、未処理、表面撥水化処理、表面撥水撥油化処理のいずれでもよく、化粧持ちなどの機能を考慮すると表面撥水化処理、ないしは表面撥水撥油化処理を施すことが好ましい。これら処理の具体的方法としては、粉体表面に例えばメチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン類、デキストリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、金属石鹸、アルキルリン酸エーテル、フッ素化合物、またはスクワラン、パラフィン等の炭化水素類を、溶媒を使用する湿式法、気相法、メカノケミカル法等により撥水化ないしは撥水撥油化処理したものである。
【0015】
撥水ないしは撥水撥油化処理する粉体としては、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、雲母チタン、黒酸化鉄、黄酸化鉄、ベンガラ、群青、紺青、酸化クロム、水酸化クロム、シリカ等の無機系粉体が挙げられる。さらに、ナイロン粉末、ポリエチレン粉末、ポリメチルシルセスキオキサン粉末、シリコーンエラストマー粉末など有機系粉体等も挙げられるが、これら例示されるものに限られたことではない。
このような撥水ないしは撥水撥油化処理した粉体は、皮脂、汗等に対する耐久性が高く、化粧持ちが良いことから、これを水中油型乳化組成物中に分散することで、塗布時の良好な使用感と共に塗布後の特性にも優れた組成物が得られる。
【0016】
<油分>
本発明の水中油型乳化組成物に用いられる油分としては、通常皮膚外用剤に用いられる油分であれば特に限定されず、いずれも配合できる。例えば、シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサン、シクロテトラジメチルシロキサン、シクロペンタジメチルシロキサン等の直鎖状または環状のポリシロキサンが挙げられる。
また、極性油としては、例えば合成、天然のエステル油、特定の紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0017】
合成エステル油としては、例えばミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−へプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリスリトール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2−へプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチルが挙げられる。
【0018】
天然系のエステル油としては、例えばアボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリンが挙げられる。
極性油としての紫外線吸収剤としては、例えばオクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、オクチルメトキシシンナメート、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート等の桂皮酸系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0019】
また、油相には、シリコーン油や極性油以外の他の油相成分として、油脂、ロウ類、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール等から選ばれる任意の成分を配合することができ、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されない。
これら油分の配合量としては、組成物全量に対して0.1〜50質量%が好ましい。0.1質量%未満であると上記効果が十分でなく、50質量%を超えると塗布時の使用感触が悪化することがあり、好ましくない。
<分散剤>
本発明において、さらに粉体の分散安定性を向上して凝集を防ぐために、下記一般式(II)で示されるアクリルシリコーンを添加することが好ましい。
(化2)

(一般式(II)中、Rは炭素数10〜20のアルキル基、a+b+c=1、a,b,c共に0.2以上、dは5〜100の整数である)
Rとしては、炭素数が18であるイソステアリル基、あるいは炭素数が8である2−エチルヘキシル基が好ましく、イソステアリル基が特に好ましい。
【0020】
本発明において、上記一般式(II)で示されるアクリルシリコーンの配合量としては、組成物全量あたり0.01〜20質量%が好ましく、0.05〜10質量%が特に好ましい。
さらに、その他の分散剤として、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、アルキル変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、イソステアリン酸等を併用することもできる。
【0021】
本発明においては、油相中への溶解性が低く温度安定性がよいことから、さらに非イオン系界面活性剤を配合することが好ましい。特に総HLBで8以上である1種または2種以上から構成されるものが好適である。例えばグリセリン又はポリグリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、POEソルビタン脂肪酸エステル類、POEソルビット脂肪酸エステル類、POEグリセリン脂肪酸エステル類、POE脂肪酸エステル類、POEアルキルエーテル類、POEアルキルフェニルエーテル類、POE・POPアルキルエーテル類、POEヒマシ油又は硬化ヒマシ油誘導体、POE蜜ロウ・ラノリン誘導体、アルカノールアミド類、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル類、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド、POE変性シリコーン、POE・POP変性シリコーン等から選択される1種または2種以上を配合する。これらの中でも特にPOEヒマシ油又は硬化ヒマシ油誘導体が好ましい。親水性非イオン系界面活性剤の配合量としては、組成物全量あたり0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5.0質量%が特に好ましい。
【0022】
また、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ゼラチンから選択される1種または2種以上の乳化助剤を配合することで、乳化物の温度安定性、粉体の分散安定性がさらに改善される。配合量としては、組成物全量に対して0.1〜1.0質量%であることが好ましい。0.1質量%未満であると、上記効果が十分でないことがあり、1.0質量%を超えると使用感触が悪くなる傾向がある。
【0023】
本発明の水中油型乳化組成物の製造方法は、例えば以下の通りである。まず油相を構成する油分に粉体と、必要に応じて該粉体の分散剤をあらかじめ配合して粉体を分散し、粉体分散液を得る。得られた粉体分散液は、上記式(I)で示されるアクリロイルジメチルタウリン塩とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体等をあらかじめ配合した水相とホモミキサーで混合、乳化する。この際、生成する乳化粒子より大きい粒子径をもつ粉体粒子が存在すると、ホモミキサー処理により粉体の一部が油相から出て凝集物を形成してしまうので、粉体の平均粒子径は乳化粒子径より小さくすることが好ましいが、分散液を得る条件において、攪拌条件を過酷にする、あるいは長時間にするなどの方法で分散粉末の粒子径を十分小さくし、乳化粒子径よりも十分小さい破砕粉末を得ることができる。
【0024】
本発明の水中油型乳化組成物には、その効果を損なわない範囲において、通常皮膚外用剤に用いられる各種の成分、例えば保湿剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、中和剤、酸化防止剤、防腐剤、抗菌剤、薬剤、抽出液、香料、色素等を配合できる。
保湿剤としては、グリセリン、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、アミノ酸、核酸、コラーゲン、エラスチン等のタンパク質、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等のムコ多糖類等が挙げられる。
【0025】
紫外線吸収剤としては(極性油としての紫外線吸収剤は一部上述したが)、パラアミノ安息香酸等の安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸メチル等のアントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメチル等のサリチル酸系紫外線吸収剤、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、〔4−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル−3−メチルブチル〕−3,4,5,−トリメトキシケイ皮酸エステル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウム等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−tert−ブチル−4’−メトキシベンゾイルメタン、ビス(レゾルシニル)トリアジン、2,4−ビス[{4−(2−エチルヘキソロキシ)−2−ヒドロキシ}−フェニル]−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0026】
pH調整剤としては、乳酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、dl−リンゴ酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。
酸化防止剤としては、アスコルビン酸、α−トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
防腐剤、抗菌剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、安息香酸、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素等が挙げられる。
【0027】
本発明の水中油型乳化組成物の製品形態は任意であり、化粧水、乳液、クリーム等のフェーシャル化粧料;ファンデーション、口紅、アイシャドー、チーク、アイライナー、マスカラ、サンスクリーン等のメーキャップ化粧料;ボディー化粧料;芳香化粧料;メーク落とし、洗顔料、ボディーシャンプー等の皮膚洗浄料;ヘアーリンス、シャンプー等の毛髪化粧料;軟膏等、従来皮膚外用剤に用いるものであればいずれの形で適用することもできる。特に、乳化型ファンデーション、化粧下地、サンスクリーン等として用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。配合量については特に断りのない限り質量%を示す。
【実施例1】
【0028】
初めに本実施例で用いた評価試験方法及び評価基準について説明する。
<製剤安定性>
各試験例の組成物について、製造から1ヵ月経過後の粘度を評価した。
(評価基準)
○:粘度が低下あるいは上昇しなかった。
△:やや粘度が低下あるいは上昇した。
×:粘度が低下あるいは上昇した。
【0029】
<使用感>
化粧品専門パネル20名により各試験例の組成物を顔に塗布して、以下の基準による評点の平均により、べたつきのなさを評価した。
悪い:1点、 やや悪い:2点、 普通:3点、 やや良い:4点、 良い:5点
(評価基準)
◎:平均点が4.5以上
○:平均点が3.5以上4.5未満
△:平均点が2.5以上3.5未満
×:平均点が1.0以上2.5未満
【0030】
下記表1に記載した配合組成よりなる試料について、上記評価試験を行なった。結果を表1に示す。
(表1)

【0031】
(製法)油相成分をホモミキサーで混合分散した後、水相にホモミキサーをかけながら添加する。
(注1)SIMULGEL
NSTM (Seppic社製):アクリロイルジメチルタウリンナトリウム/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体と、モノステアリンポリオキシエチレンソルビタン(20モル)、スクワランとの混合物;
(注2)SIMULGEL
EGTM (Seppic社製):アクリル酸ナトリウム/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体と、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20モル)、イソヘキサデカンとの混合物
(注3) SIMULGEL
TM (Seppic社製):ポリアクリル酸アンモニウムと、ポリオキシエチレンヒマシ油(40モル)、揮発性イソパラフィンとの混合物
(注4)カーボポール 981TM (BFGoodrich社製)
(注5)R=イソステアリル基
【0032】
表1より明らかなように、従来頻繁に使用されているカルボキシビニルポリマーで増粘した場合、粘度が維持できず、また使用感にべたつきがあった(試験例5)。これは、油相に配合された酸化鉄から経時的に徐々に溶出する金属イオンの影響であると考えられる。
また、キサンタンガムやサクシノグリカンで増粘した場合、製剤安定性はある程度得られたものの、使用感にべたつきが起こってしまった(試験例6,7)。
これに対し、本発明の増粘剤であるアクリロイルジメチルタウリン塩/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体を用いた場合、経時での製剤安定性が改善され、且つべたつきが起こることもなかった(試験例1)。さらに、本発明の増粘剤であるアクリロイルジメチルタウリン塩/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体を用いた場合は、サクシノグリカンを併用しても、べたつきは起こらなかった(試験例2)。また、試験例1,2では、製造から1ヵ月経過後において、粉末凝集物や乳化粒子の沈降は観察されなかった。
【0033】
この粘度保持効果は、他のアクリル系増粘剤では発揮されず(試験例3,4)、唯一アクリロイルジメチルタウリン塩/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体のみで発揮されたものであった。
以上のことから、アクリル系増粘剤のうちでも、唯一アクリロイルジメチルタウリン塩/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体のみが、溶出塩による影響を受けずに、長期にわたり乳化粒子の沈降を防ぎ、経時での製剤安定性を改良することができ、得られる水中油型乳化組成物は、使用感も良好であることが確認された。
さらに、本発明者らが検討したところ、アクリロイルジメチルタウリン塩/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体の添加効果は、0.1質量%特に0.2質量%から発揮され、配合量としては、水中油型乳化組成物全量に対して0.1〜5.0質量%が好ましく、0.2〜4.0質量%が特に好ましいことが確認された。
【実施例2】
【0034】
本実施例で用いた評価試験方法及び評価基準について説明する。
<粉体の分散性>
各試験例の組成物について、製造から1ヶ月経過後までの外観状態を評価した。
(評価基準)
○:外観上、色ムラ・色縞などがなく均一な分散性を維持している。
△:外観上、許容出来る程度の色ムラ・色縞などが見られる。
×:外観上、許容出来ない程度の色ムラ・色縞などが見られる。
【0035】
下記表2に記載した配合組成よりなる試料について、上記評価試験を行なった。結果を表2に示す。
(表2)

【0036】
(製法)油相成分をホモミキサーで混合分散した後、水相にホモミキサーをかけながら添加する。
(注6)ABIL WAX 9801TM
(Goldschmidt社製)
(注7)ABIL WAX 9840TM(Goldschmidt社製)
表2より明らかなように、分散剤として、一般式(II)のアクリルシリコーンを用いた場合、粉体の分散性は良好であった(試験例8,9)。しかしながら、その他の分散剤を用いた場合や分散剤を用いない場合には、色ムラ・色縞が見られた(試験例10〜13)。以上のことから、分散剤としては、一般式(II)のアクリルシリコーンを用いることにより、粉体の分散性がより改善されることが確認された。
【0037】
さらに、本発明者らが検討したところ、一般式(II)のアクリルシリコーンの添加効果は、0.01質量%特に0.05質量%から発揮され、配合量としては、水中油型乳化組成物全量に対して0.01〜20質量%が好ましく、0.05〜10質量%が特に好ましいことが確認された。
以下、本発明の水中油型乳化組成物の好ましい処方を示すが、これに限定されない。以下の各実施例の水中油型乳化組成物はいずれも、製剤安定性に優れ、べたつかず良好な使用感触を有するものであった。
【実施例3】
【0038】
水中油型乳液ファンデーション
(質量%)
(1)メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆酸化チタン 10.0
(2)メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆超微粒子酸化チタン(40nm)
3.0
(3)メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆酸化鉄(赤) 0.5
(4)メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆酸化鉄(黄) 1.5
(5)メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆酸化鉄(黒) 0.2
(6)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン 0.5
(7)デカメチルペンタシクロシロキサン 5.0
(8)パラメトキシ桂皮酸オクチル 5.0
(9)上記一般式(II)のアクリルシリコーン(R=エチルヘキシル基)
4.0
(10)PEG−100水添ヒマシ油 2.0
(11)ダイナマイトグリセリン 6.0
(12)キサンタンガム 0.2
(13)カルボキシメチルセルロース 0.3
(14)アクリロイルジメチルタウリンナトリウム/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体
(SIMULGEL NSTM:Seppic社製)(含有量:35〜40質量%) 1.5
(15)エタノール 5.0
(16)イオン交換水
残余
(製法)
(1)〜(9)をホモミキサーで混合分散した後、(10)〜(16)を溶解した水相に対して、ホモミキサーをかけながら添加する。
【実施例4】
【0039】
水中油型乳液ファンデーション
(質量%)
(1)酸化チタン 9.0
(2)超微粒子酸化チタン(40nm) 5.0
(3)アルキル変性シリコーン樹脂被覆酸化鉄(赤) 0.5
(4)酸化鉄(黄) 1.5
(5)酸化鉄(黒) 0.2
(6)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン 0.5
(7)デカメチルペンタシクロシロキサン 5.0
(8)パラメトキシ桂皮酸オクチル 5.0
(9)上記一般式(II)のアクリルシリコーン(R=エチルヘキシル基)
4.0
(11)ダイナマイトグリセリン 6.0
(12)キサンタンガム 0.1
(13)カルボキシメチルセルロース 0.3
(14)アクリロイルジメチルタウリンナトリウム/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体
(SIMULGEL NSTM:Seppic社製) (含有量:35〜40質量%) 1.5
(15)エタノール 5.0
(16)イオン交換水
残余
(製法)
(1)〜(9)をホモミキサーで混合分散した後、(10)〜(16)を溶解した水相に対して、ホモミキサーをかけながら添加する。
【実施例5】
【0040】
水中油型化粧下地
(質量%)
(1)パルミチン酸デキストリン被覆超微粒子酸化チタン(30nm) 5.0
(2)ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン 1.0
(3)デカメチルペンタシクロシロキサン 10.0
(4)パラメトキシ桂皮酸オクチル 5.0
(5)PEG−100水添ヒマシ油 2.0
(6)ダイナマイトグリセリン 6.0
(7)アクリロイルジメチルタウリンナトリウム/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体
(SIMULGEL NSTM:Seppic社製)(含有量:35〜40質量%) 2.0
(8)アクリロイルジメチルタウリンナトリウム/ジメチルアクリルアミド共重合体
1.0
(9)球状シリカ 5.0
(10)カルボキシメチルセルロース 0.3
(11)エタノール 5.0
(12)イオン交換水
残余
(製法)
(1)〜(4)をホモミキサーで混合分散した後、(5)〜(12)を溶解した水相に対して、ホモミキサーをかけながら添加する。
【実施例6】
【0041】
水中油型サンスクリーン
(質量%)
(1)アルキル変性シリコーン樹脂被覆超微粒子酸化チタン(30nm) 8.0
(2)イソステアリン酸 1.0
(3)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン 1.0
(4)上記一般式(II)のアクリルシリコーン(R=イソステアリル基)
3.0
(5)デカメチルペンタシクロシロキサン 8.0
(6)パラメトキシ桂皮酸オクチル 5.0
(7)PEG−60水添ヒマシ油 2.0
(8)ダイナマイトグリセリン 6.0
(9)アクリロイルジメチルタウリンナトリウム/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体
(SIMULGEL NSTM:Seppic社製)(含有量:35〜40質量%) 2.0
(10)カルボキシメチルセルロース 0.3
(11)エタノール 5.0
(12)イオン交換水
残余
(製法)
(1)〜(6)をホモミキサーで混合分散した後、(7)〜(12)を溶解した水相に対して、ホモミキサーをかけながら添加する。
【実施例7】
【0042】
紫外線防御美白美容液
(質量%)
(1)超微粒子酸化チタン(40nm) 5.0
(2)アルキル変性オルガノポリシロキサン 2.0
(3)デカメチルペンタシクロシロキサン 10.0
(4)パラメトキシ桂皮酸オクチル 5.0
(5)PEG−60水添ヒマシ油 2.0
(6)ダイナマイトグリセリン 6.0
(7)アクリロイルジメチルタウリンナトリウム/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体
(SIMULGEL NSTM:Seppic社製)(含有量:35〜40質量%) 2.5
(8)カルボキシメチルセルロース 0.3
(9)エタノール 6.0
(10)クエン酸 適量
(11)クエン酸ナトリウム 適量
(12)アスコルビン酸グリコシド 2.0
(13)苛性カリ 適量
(14)イオン交換水 残余
(製法)
(1)〜(4)をホモミキサーで混合分散した後、(5)〜(14)を溶解した水相に対して、ホモミキサーをかけながら添加する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相中に、下記式(I)で示されるアクリロイルジメチルタウリン塩とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体を含み、
油相中に、粉体を含むことを特徴とする水中油型乳化組成物。
(化1)

(式(I)中、Xはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウムイオン、又は有機アミンであり、nは3〜90、mは10〜97である。)
【請求項2】
請求項1に記載の水中油型乳化組成物において、Xがナトリウム原子であることを特徴とする水中油型乳化組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物において、さらに下記一般式(II)で示されるアクリルシリコーンから選ばれる1種又は2種以上を含むことを特徴とする水中油型乳化組成物。
(化2)

(一般式(II)中、Rは炭素数10〜20のアルキル基、a+b+c=1、a,b,c共に0.2以上、dは5〜100の整数である)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の水中油型乳化組成物において、油相中に、粉体として赤酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄、及び酸化アルミニウムから選ばれる1種又は2種以上を含むことを特徴とする水中油型乳化組成物。

【公開番号】特開2006−8796(P2006−8796A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186310(P2004−186310)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】