説明

水中油型乳化組成物

【課題】 溶解度の低い油溶性紫外線吸収剤を含有し、なおかつ安定性にも優れた水中油型乳化組成物を提供する。
【解決手段】 (a)油溶性紫外線吸収剤の水分散体、(b)非イオン性界面活性剤、及び脂肪酸石鹸から選ばれる1種または2種以上の化合物、(c)水膨潤性粘土鉱物、及び(d)高級脂肪酸を含有することを特徴とする水中油型乳化組成物。前記成分(a)は、油溶性紫外線吸収剤と有機ポリマーとの複合体粒子の水分散体であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化組成物に関し、より詳細には、油溶性紫外線吸収剤を外相(水相)に配合した安定で高い紫外線防御能を持つ水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
日焼け止め化粧料は、太陽光線中の紫外線をカットし、紫外線による悪影響から肌を守ることを目的とする。その基剤としては、乳化タイプ、ローションタイプ、オイルタイプ等が挙げられるが、中でも水中油型乳化タイプは、みずみずしい使用感触を持ち、低SPFから高SPF製品までの製剤化が可能であることから広く用いられている(非特許文献1)。
【0003】
一方、日焼け止め化粧料に配合される紫外線吸収剤には油溶性のものと水溶性のものがあり、UVA領域(波長320〜400nm)及びUVB領域(波長290〜320nm)における紫外線を吸収して高い防御能を得るためには、UVB吸収剤とUVA吸収剤をバランス良く配合する必要がある。
【0004】
しかしながら、油溶性紫外線吸収剤には難溶性のものが多く、それを溶解させるには多量の高極性油分の配合が必要になり水中油型乳化物に特有のみずみずしい使用感触が失われたり、油相中で低温において紫外線吸収剤が析出してしまうといった安定性の問題が生じることがあった。
【0005】
特許文献1には、難溶性の紫外線吸収剤をスチレン等からなる球状ポリマー粒子に内包させて球状粉末とすることにより油溶性を向上させ、油相中への高配合を可能にしたことが記載されているが、当該紫外線吸収剤が配合されているのは油中水型乳化粧料あるいは固形化粧料であり、水中油型乳化物の水相(外相)には配合されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−91307号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「新化粧品学 第2版」光井武夫編、南山堂、2001年、第497−504頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって本発明における課題は、溶解度の低い油溶性紫外線吸収剤を含有し、なおかつ安定性にも優れた水中油型乳化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため、本発明は、(a)油溶性紫外線吸収剤の水分散体、(b)非イオン性界面活性剤及び脂肪酸石鹸から選ばれる1種または2種以上の化合物、(c)水膨潤性粘土鉱物、及び(d)高級脂肪酸を含有することを特徴とする水中油型乳化組成物を提供する。
本発明において、前記成分(a)は、油溶性紫外線吸収体と有機ポリマーとの複合体粒子の水分散体であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水中油型乳化組成物は、油分に難溶性の紫外線吸収剤を水相(外相)に配合することにより系の安定性を向上させることができた。また、同じ紫外線吸収剤を油相(内相)に配合した場合に比較して紫外線防御能が向上するという有利な効果も奏する。従って、本発明の水中油型乳化組成物は、みずみずしい使用感触を持ち、なおかつ優れた紫外線防御能を有する日焼け止め化粧料として使用するのに特に適したものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1及び比較例1の組成物の紫外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の水中油型乳化組成物は、油溶性紫外線吸収剤の水分散体(成分a)を水相(外相)に含有していることを特徴とする。
油溶性紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、水に不溶性で油に難溶性の紫外線吸収剤から選択するのが好ましい。但し、メチレンビスベンゾトリアゾールテトラメチルブチルフェノール等の実質的に油不溶性のものは含まれない。油不溶性の紫外線吸収剤の水分散物を用いて水中油型乳化組成物を調製し、それを皮膚に適用した場合には、塗布した皮膚が不自然に白っぽくなることがある。
難溶性の紫外線吸収剤には、前記特許文献1に記載されたものが含まれ、具体的には、ベンゾフェノン誘導体、トリアジン誘導体等が挙げられるが、特にトリアジンン誘導体、中でも2、4−ビス−{[4−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシ]フェニル}−6−(4−メトキシフェニル)−(1、3、5)−トリアジン(以下、本明細書では「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」とする)が好ましい。このビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンは、BASF社からチノソーブSという商品名で市販されており、当該市販品を使用することができる。
【0013】
また、本発明における油溶性紫外線吸収剤の水分散体は、油溶性紫外線吸収剤と有機ポリマーとの複合体粒子の水分散体であるのが特に好ましい。複合体粒子とすることにより、水分散体を含む水相と油とが共存する場合に油溶性紫外線吸収剤が水相から油相に溶出してしまうことが抑制される。
油溶性紫外線吸収体と有機ポリマーとの複合体粒子の水分散体は、例えば、WO2009/007264に記載されている方法に従って調製することができる。簡潔に言えば、紫外線吸収剤と有機モノマーの混合物を水中に分散させた状態で乳化重合させることにより紫外線吸収剤と有機ポリマーとの複合体粒子が分散した水性分散体として得ることができる。
有機モノマーとしては、エチレン性不飽和結合を有するモノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、スチレンモノマー、ナイロンモノマー等が好ましく使用される。
【0014】
このような複合粒子の水分散体としては、BASF社からチノソーブSアクアの商品名で市販されているものを使用できる。チノソーブSアクア(Tinosorb S aqua)は、水に分散されたビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(チノソーブS)とポリメタクリル酸メチル(PMMA)との複合粒子を含み、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンとPMMAの含有量は、各々20質量%と19質量%である。
【0015】
本発明の組成物における油溶性紫外線吸収剤の配合量は、乾燥質量として5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは0.01〜3質量%とする。配合量が0.01質量%未満であると十分な紫外線吸収能が得られず、5質量%を越えて配合するとべたつくといった使用性に問題を生ずる傾向がある。
なお、例えば20質量%の紫外線吸収剤を含有する水分散体(成分a)の配合量として換算すれば、当該分散体は25質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは0.05〜15質量%で配合することになる。
【0016】
本発明の組成物は、非イオン性界面活性剤及び脂肪酸石鹸から選ばれる1種または2種以上の化合物(成分b)を含有している。
【0017】
非イオン性界面活性剤としては、HLBが8以上のものが好ましく、例えば、POE(7)セチルエーテル、POE(10)セチルエーテル、POE(12)セチルエーテル、POE(15)セチルエーテル、POE(17)セチルエーテル、POE(20)セチルエーテル、POE(25)セチルエーテル、POE(30)セチルエーテル、POE(6)オレイルエーテル、POE(8)オレイルエーテル、POE(10)オレイルエーテル、POE(12)オレイルエーテル、POE(15)オレイルエーテル、POE(20)オレイルエーテル、POE(23)オレイルエーテル、POE(50)オレイルエーテル、POE(8)ステアリルエーテル、POE(11)ステアリルエーテル、POE(15)ステアリルエーテル、POE(20)ステアリルエーテル、POE(25)ステアリルエーテル、POE(30)ステアリルエーテル、POE(40)ステアリルエーテル、POE(5)ノニルフェニルエーテル、POE(10)ノニルフェニルエーテル、POE(11)ノニルフェニルエーテル、POE(12)ノニルフェニルエーテル、POE(13)ノニルフェニルエーテル、POE(15)ノニルフェニルエーテル、POE(20)ノニルフェニルエーテル、POE(25)ノニルフェニルエーテル、POE(30)ノニルフェニルエーテル、POE(5)オクチルフェニルエーテル、POE(8)オクチルフェニルエーテル、POE(10)オクチルフェニルエーテル、POE(15)オクチルフェニルエーテル、POE(20)オクチルフェニルエーテル、POE(25)オクチルフェニルエーテル、POE(30)オクチルフェニルエーテル、POE(40)オクチルフェニルエーテル、POE(50)オクチルフェニルエーテル、POE(5)ラウリルエーテル、POE(7)ラウリルエーテル、POE(9)ラウリルエーテル、POE(10)ラウリルエーテル、POE(12)ラウリルエーテル、POE(15)ラウリルエーテル、POE(20)ラウリルエーテル、POE(25)ラウリルエーテル、POE(30)ラウリルエーテル、POE(50)ラウリルエーテル、POE(10)ヘキシルデシルエーテル、POE(15)ヘキシルデシルエーテル、POE(20)ヘキシルデシルエーテル、POE(25)ヘキシルデシルエーテル、POE(10)イソステアリルエーテル、POE(15)イソステアリルエーテル、POE(20)イソステアリルエーテル、POE(25)イソステアリルエーテル、POE(10)オクチルドデシルエーテル、POE(16)オクチルドデシルエーテル、POE(20)オクチルドデシルエーテル、POE(25)オクチルドデシルエーテル、POE(10)デシルペンタデシルエーテル、POE(20)デシルペンタデシルエーテル、POE(30)デシルペンタデシルエーテル、POE(10)デシルテトラデシルエーテル、POE(15)デシルテトラデシルエーテル、POE(20)デシルテトラデシルエーテル、POE(25)デシルテトラデシルエーテル、POE(10)コレステリルエーテル、POE(15)コレステリルエーテル、POE(20)コレステリルエーテル、POE(24)コレステリルエーテル、POE(30)コレステリルエーテル、POE(10)ラウリルエーテルステアレート、POE(12)ジラウレート、POE(16)ジラウレート、POE(20)ジラウレート、POE(10)モノステアレート、POE(20)モノステアレート、POE(30)モノステアレート、POE(40)モノステアレート、POE(150)モノステアレート、POE(150)ジステアレート、POE(6)モノイソステアレート、POE(12)モノイソステアレート、POE(20)モノイソステアレート、POE(6)モノオレエート、POE(10)モノオレエート、POE(6)グリセリルモノイソステアレート、POE(8)グリセリルモノイソステアレート、POE(10)グリセリルモノイソステアレート、POE(15)グリセリルモノイソステアレート、POE(20)グリセリルモノイソステアレート、POE(25)グリセリルモノイソステアレート、POE(30)グリセリルモノイソステアレート、POE(40)グリセリルモノイソステアレート、POE(50)グリセリルモノイソステアレート、POE(60)グリセリルモノイソステアレート、POE(30)グリセリルトリイソステアレート、POE(40)グリセリルトリイソステアレート、POE(50)グリセリルトリイソステアレート、POE(60)グリセリルトリイソステアレート、POE(20)ソルビタンモノラウレート、POE(20)ソルビタンモノオレエート、POE(40)ソルビタンモノオレエート、POE(30)グリセリルトリオレエート、POE(40)グリセリルトリオレエート、POE(50)グリセリルトリオレエート、POE(60)グリセリルトリオレエート、POE(5)グリセリルモノステアレート、POE(10)グリセリルモノステアレート、POE(15)グリセリルモノステアレート、POE(20)グリセリルモノステアレート、POE(30)グリセリルモノステアレート、POE(40)グリセリルモノステアレート、POE(60)グリセリルモノステアレート、POE(20)トリメチロールプロパアントリミリステート、POE(25)トリメチロールプロパアントリミリステート、POE(30)トリメチロールプロパアントリミリステート、POE(25)トリメチロールプロパアントリイソステアレート、POE(30)トリメチロールプロパアントリイソステアレート、POE(40)トリメチロールプロパアントリイソステアレート、POE(50)トリメチロールプロパアントリイソステアレート、POE(20)硬化ヒマシ油、POE(30)硬化ヒマシ油、POE(40)硬化ヒマシ油、POE(50)硬化ヒマシ油、POE(60)硬化ヒマシ油、POE(80)硬化ヒマシ油、POE(100)硬化ヒマシ油、POE(20)ヒマシ油、POE(30)ヒマシ油、POE(40)ヒマシ油、POE(50)ヒマシ油、POE(20)硬化ヒマシ油モノラウレート、POE(30)硬化ヒマシ油モノラウレート、POE(40)硬化ヒマシ油モノラウレート、POE(50)硬化ヒマシ油モノラウレート、POE(60)硬化ヒマシ油モノラウレート、POE(30)硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE(40)硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE(50)硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE(60)硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE(40)硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE(50)硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE(60)硬化ヒマシ油トリイソステアレート、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ジグリセリル、硬化ヒマシ油ピログルタミン酸イソステアリン酸ジエステル、グリセリルピログルタミン酸イソステアリン酸ジエステル、イソステアリン酸PEGグリセリル、ステアリン酸PEGグリセリル等が挙げられる。
【0018】
脂肪酸石鹸としては、例えば、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、アラギジン酸カリウム、ベヘン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、アラギジン酸ナトリウム、ベヘン酸ナトリウム、ラウリン酸トリエタノールアミン、ミリスチン酸トリエタノールアミン、パルミチン酸トリエタノールアミン、ステアリン酸トリエタノールアミン、アラギジン酸トリエタノールアミン、ベヘン酸トリエタノールアミン、ラウリン酸アミノメチルプロパノール、ミリスチン酸アミノメチルプロパノール、パルミチン酸アミノメチルプロパノール、ステアリン酸アミノメチルプロパノール、アラギジン酸アミノメチルプロパノール、ベヘン酸アミノメチルプロパノール等が挙げられる。
【0019】
本発明の組成物における非イオン性界面活性剤及び脂肪酸石鹸から選ばれる1種または2種以上の化合物(成分b)の配合量は、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは0.01〜3質量%とする。配合量が0.01質量%未満であると安定な乳化物が得られにくく、10質量%を越えて配合するとべたつくといった使用性が悪くなる傾向がある。
【0020】
本発明の組成物は、水膨潤性粘土鉱物(成分c)を更に含有している。水膨潤性粘土鉱物(成分d)は、三層構造を有するコロイド含有ケイ酸アルミニウムの一種で、一般的に、下記式(1)で表されるものである。
(X,Y)2−3(Si,Al)10(OH)1/3・nHO (1)
前記式(1)において、Xは、Al、Fe(III)、Mn(III)、または、Cr(III)であり、Yは、Mg、Fe(II)、Ni、Zn、または、Liであり、Zは、K、Na、または、Caである。
【0021】
このような水膨潤性粘土鉱物の具体例としては、スメクタイト系のヘクトライト、ベントナイトやモンモリロナイト、パイデライト、ノントロナイト、サポナイト等が挙げられ、これらは、天然および合成品のいずれであってもよい。市販品では、クニピア(クニミネ工業社製)、スメクトン(クニミネ工業社製)、ビーガム(バンダービルト社製)、ラポナイト(ラポルテ社製)、フッ素四ケイ素雲母(トピー工業社製)等が挙げられる。
【0022】
水膨潤性粘土鉱物(成分c)の配合量は、4質量%以下、好ましくは2質量%以下、より好ましくは0.01〜1質量%とする。配合量が0.01質量%未満であると安定性が劣化し、4質量%を越えて配合するとのびが悪くなる傾向がある。
【0023】
本発明の組成物は、高級脂肪酸(成分d)を更に含有している。
高級脂肪酸としては、特に限定されないが、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。
【0024】
高級脂肪酸(成分d)の配合量は、10質量%以下、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.5〜2質量%とする。配合量が0.1質量%未満であると安定性が劣化し、10質量%を越えて配合するとのびが重くなる傾向がある。
【0025】
さらに本発明の組成物は、水溶性高分子を配合することでより安定性を向上することが可能である。
水溶性高分子しては、例えば、植物系高分子、微生物系高分子、合成/半合成高分子などがあり、植物系高分子としては、例えば、キサンタンガム、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン酸等、微生物系高分子としては、例えば、デキストラン、サクシノグルカン、ブルラン等が挙げられる。
【0026】
半合成の水溶性高分子としては、例えば、デンプン系高分子(例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等);セルロース系高分子(メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末等);アルギン酸系高分子(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等)等が挙げられる。
【0027】
合成の水溶性高分子としては、例えば、ビニル系高分子(例えば、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン等);ポリオキシエチレン系高分子(例えば、ポリエチレングリコール20,000、40,000、60,000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体等);アクリル系高分子(例えば、ポリアクリル酸、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等);ポリエチレンイミン;カチオンポリマー等が挙げられる。
【0028】
これらの水溶性高分子の配合量は、3質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.01〜0.3質量%とする。配合量が0.01質量%未満であると安定性が劣化し、3質量%を越えて配合するとべたつくといった使用性が悪くなる傾向がある。
【0029】
本発明の水中油型乳化組成物を構成し得る高級脂肪酸以外の油分は、特に限定されず、例えば、液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等が挙げられる。
【0030】
固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
ロウ類としては、例えば、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
【0031】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0032】
高級アルコールとしては、例えば、直鎖アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等);分枝鎖アルコール(例えば、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2−デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等)等が挙げられる。
【0033】
合成エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0034】
シリコーン油としては、例えば、鎖状ポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等);環状ポリシロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴム、各種変性ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)等が挙げられる。
【0035】
なお、本発明の組成物においては、IOBが0.05以上の極性油を配合していてもよいが、それらの極性油の配合量を50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下とするのが好適である。50質量%を越えて配合すると、べたつくといった使用性の問題を生じる場合がある。
IOBが0.05以上の極性油には、例えば、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸2−エチルヘキシル、ジピバリン酸トリプロピレングリコール、オクタン酸セチル、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタンエリスリット、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、ナフタリンジカルボン酸ジエチルヘキシル、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、コハク酸ジ2−エチルヘキシル等が含まれる。
【0036】
また、本発明の組成物は、水相に配合する前記油溶性紫外線吸収剤の水分散体(成分a)に加えて、さらに他の紫外線吸収剤を含有してもよい。
他の紫外線吸収剤は、油溶性であって油相(内相)に溶解するものが好ましく、水相に存在する前記紫外線吸収剤(成分A)と相乗的に紫外線を吸収するものが好ましい。
そのような紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、メトキシケイ皮酸誘導体、ジフェニルアクリル酸誘導体、サリチル酸誘導体、パラアミノ安息香酸誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンザルマロナート誘導体、アントラニル誘導体、イミダゾリン誘導体、4 , 4 − ジアリールブタジエン誘導体、及びフェニルベンズイミダゾール誘導体系が挙げられる。具体的には、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、ホモサレート、オクチルサリシレート、オキシベンゾン、4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オクチルトリアゾン、ビスエチルヘキシルフェノールメトキシフェニルトリアジン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸−2’−エチルヘキシルエステル、ポリシリコーン−15、ドロメトリゾールポリシロキサン等が挙げられる。
【0037】
本発明の組成物には、上述した成分の他に、通常、化粧料等の外用組成物に用いられている他の成分を、本発明の所期の効果を実質的に妨げない限度内において含有させることができる。
【0038】
本発明の組成物は、例えば、油相を構成する成分と水相を構成する成分とを別々に混合し、水相に油相を加えて乳化することにより調製することができる。
【0039】
本発明の組成物は、水中油型乳化物が元来有するみずみずしい使用感触を持ち、低温及び高温での安定性に優れ、なおかつ優れた紫外線防御能を発揮するため、水中油型乳化タイプの日焼け止め化粧料としての用途に特に適したものである。
【実施例】
【0040】
以下に具体例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例等における配合量は特に断らない限り質量%を示す。
【0041】
(実施例及び比較例)
下記表1に掲げた組成を有する水中油型乳化組成物を調製した。具体的には、水相成分及び油相成分を各々70℃に加熱して完全に溶解させ、次いで水相に油相を添加して乳化機で乳化することにより各例の組成物を得た。
実施例1及び比較例1の各組成物のサンプル18.87μLをPMMA製の膜(5cm×5cm)の表面に0.75mg/cmの割合で均一に塗布した。15分放置した後、分光光度計(U−4100:日立製作所製)を用いて各サンプルの吸光度を測定した。それらの結果を図1に示す。
【0042】
上記とは別に、実施例1の液状油分(オレフィンオリゴマー、2−エチルヘキサン酸グリセリル、オクトクリレン)を表1に記載した比率で混合した実施例1に対応する油性混合物と、それにビスエチルへキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを更に加え、70℃に加熱して完全に溶解させた比較例1に対応する油性混合物とを作製し、各々を50mLスクリュー管に封入した。これらを25℃に冷却し、少量のビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを固体の状態で加え、0℃で1週間保存した後の各混合物を顕微鏡観察することにより油相の安定性を評価した。それらの結果を、添加した以上の量の結晶が観察された場合を×、添加した以上の量の結晶が見られなかった場合を○として、表1に併せて示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1から明らかなように、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを油相中に配合した比較例1では安定性が劣り、低温(0℃)で結晶が形成された。また、図1に示した結果から、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを水分散体の形態で水相中に配合した組成物(実施例1)では、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを油相中に配合した比較例1よりも優れた紫外線吸収能を示すことが明らかになった。
【0045】
下記表2に掲げた組成を有する水中油型乳化組成物を調製した。具体的には、水相成分及び油相成分を各々70℃に加熱して完全に溶解させ、次いで水相に油相を添加して乳化機で乳化することにより各例の組成物を得た。得られた組成物を50mlスクリュー管に封入し、60℃で1週間保存した後の外観により乳化安定性を評価した。それらの結果を、一相状態を保持していた場合を○、分離した場合を×として、表2に併せて示す。
【0046】
【表2】

【0047】
表2に示した結果から、水溶性高分子であるキサンタンガム、カルボマーのみを配合した比較例2では分離が生じたのに対し、水膨潤性粘土鉱物(ベントナイト)を添加した実施例2〜4では良好な安定性を有する組成物が得られることがわかった。
【0048】
以下に示す処方で水中油型乳化組成物からなる化粧料を調製した。
処方例1 サンスクリーンエマルジョン
ジプロピレングリコール 5
キサンタンガム 0.1
ベントナイト 1
ステアリン酸 0.5
パルミチン酸 0.5
イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 1
モノステアリン酸グリセリン 1
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 1
ポリビニルピロリドン/エイコセンコポリマー 1
ジネオペンタン酸トリプロピレングリコール 5
スクワラン 3
デカメチルシクロヘキサペンタシロキサン 4
ジメチルポリシロキサン 2
パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 7
2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン 2
メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール 1
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
水分散体 15
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.1
トリエタノールアミン 適量
防腐剤 適量
精製水 残余
香料 適量
【0049】
処方例2 サンスクリーンエマルジョン
グリセリン 5
カルボマー 0.3
サポナイト(クニミネ工業社製) 0.5
ステアリン酸 0.5
イソステアリン酸 0.5
ステアリルアルコール 2
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 1
トリメチルシロキシケイ酸 1
カプリリルメチコン 3
エチルヘキサン酸セチル 10
パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 5
2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸−2’−
エチルヘキシルエステル 5
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
水分散体 10
オクチルトリアゾン 2
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2
フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 1
アスコルビン酸2−グルコシド 2
EDTA-3Na 0.1
水酸化カリウム 適量
防腐剤 適量
精製水 残余
香料 適量
【0050】
処方例3 サンスクリーンエマルジョン
アルコール 5
ジプロピレングリコール 5
キサンタンガム 0.1
ベントナイト 0.5
グリセリルモノステアレート 1
ポリオキシエチレングリセリルイソステアレート 1
ベヘニン酸 1
ベヘニルアルコール 2
トリメチルシロキシケイ酸 1
シクロメチコン 3
ジメチコン 2
イソプロピルミリステート 5
パルミチン酸オクチル 5
コハク酸ジエチルヘキシル 1
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール 1
2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸−2’−
エチルヘキシルエステル 5
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
水分散体 10
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2
4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン 2
メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール 2
EDTA−3Na 0.1
トリエタノールアミン 適量
防腐剤 適量
精製水 残余
香料 適量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)油溶性紫外線吸収剤の水分散体、
(b)非イオン性界面活性剤、及び脂肪酸石鹸から選ばれる1種または2種以上の化合物、
(c)水膨潤性粘土鉱物、及び
(d)高級脂肪酸
を含有することを特徴とする水中油型乳化組成物。
【請求項2】
水溶性高分子を3質量%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記成分(a)が、油溶性紫外線吸収剤と有機ポリマーとの複合体粒子の水分散体であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記油溶性紫外線吸収剤がトリアジン誘導体であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記油溶性紫外線吸収剤が、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記油溶性紫外線吸収剤の配合量が5質量%以下であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記(c)水膨潤性粘土鉱物の配合量が0.01〜4質量%であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
日焼け止め化粧料であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−236200(P2011−236200A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86011(P2011−86011)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】