説明

水中油型乳化組成物

【課題】皮膚外用剤や化粧料として利用可能な、簡単な組成でありながら、広い酸性領域にわたり、低粘度で安定な状態を維持可能な水中油型乳化組成物を提供すること。
【解決手段】成分(A)〜(C);
(A)アルカリゲネス属微生物が産生する多糖類
(B)25℃にて液状またはペースト状の油剤
(C)非イオン系界面活性剤
を含有し、25℃におけるpHが2〜5.5であり、かつ粘度が2000mPa・s以下であることを特徴とする水中油型乳化組成物並びにこの水中油型乳化組成物を利用した皮膚外用剤および化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化組成物に関し、更に詳細には、液性が酸性でありかつ低粘度であっても安定な水中油型乳化組成物並びにこれを利用する皮膚外用剤および化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
乳液や乳化型ローションなどの水中油型乳化組成物では、皮膚などに対する影響から、液性が酸性であり、しかもさっぱりした使用感、すなわち粘性が低いものであることが好ましいとされている。
【0003】
従来、このような酸性で低粘度の水中油型乳化型化粧料に関しては、特定の非イオン性界面活性剤、高級アルコール、水、特定の多糖系水溶性高分子および水を含有したもの(特許文献1)や、N−長鎖アシル酸性アミノ酸モノ塩、両親媒性物質、水および油分を含有するもの(特許文献2)等が知られている。
【0004】
しかしながら、特許文献1のものは、使用後のべたつきという点に不満が残るものであり、また、特許文献2のものは、弱酸性領域ではともかく、それよりpHの低い領域では、安定性が劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−247866号公報
【特許文献2】特開平9−301847号公報
【特許文献3】特開2002−60314号公報
【特許文献4】特開2000−63245号公報
【特許文献5】特開2007−210979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、簡単な組成でありながら、広い酸性領域にわたり、低粘度で安定な状態を維持可能な水中油型乳化組成物の開発が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる実情に鑑み、本発明者らは鋭意検討した結果、アルカリゲネス属微生物が産生する多糖類を使用し、油分として25℃にて液状またはペースト状の油剤を利用することで、酸性領域において低粘度でありながら安定な水中油型乳化組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は、次の成分(A)〜(C);
(A)アルカリゲネス属微生物が産生する多糖類
(B)25℃にて液状またはペースト状の油剤
(C)非イオン系界面活性剤
を含有し、25℃におけるpHが2〜5.5であり、かつ粘度が2000mPa・s以下であることを特徴とする水中油型乳化組成物である。
【0009】
また本発明は、皮膚外用剤または化粧料である上記水中油型乳化組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水中油型乳化組成物は、pH2〜5.5という広い酸性領域において、2000mPa・s以下という低い粘度においても、長期間安定にエマルションを維持できるものである。
【0011】
従って、この水中油型乳化組成物は、酸性の液性と、低い粘度が要望される、頭皮用ローション、化粧水、美容液等の皮膚外用剤や化粧料として、広く利用しうるものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の水中油型乳化組成物において使用される成分のうち、成分(A)は、アルカリゲネス(Alcaligenes)属に属する微生物が産生する多糖類(以下、「アルカリゲネス産生多糖類」という)である。この成分(A)の具体的な例としては、アルカリゲネス・レータスB−16株(FERM BP−2015)が産生する多糖類が挙げられる。
【0013】
この成分(A)であるアルカリゲネス産生多糖類の化粧料への応用については、特許文献3、特許文献4、特許文献5等において既に報告されているが、いずれも酸性領域において低粘度でありながら乳化物を安定に保つ技術ではなく、また特許文献5は固形化粧料であって、低粘度の乳化物に関するものではない。
【0014】
本発明に用いられる成分(A)のアルカリゲネス産生多糖類は、これを産生する微生物が一般に2種以上の多糖類を産生することが多いが、本発明の効果を妨げるものでなければ、他種の多糖類が含まれていても差し支えない。例えば、アルカリゲネス レータスB−16株細菌の産出多糖類には少なくとも2種の多糖類が含まれていることが確かめられており、培養液から分離した多糖類の構成単糖比率はモル比でフコース:グルコース:グルクロン酸:ラムノース=1:(0.5〜4):(0.5〜2):(0.5〜2)であるが、2種の多糖類を分離すると、一つは、下記一般式(1)に示すようなグルコース、グルクロン酸、ラムノースからなる繰返し構造の主鎖中にある1つのグルコースに1つのフコースが分岐した構造を有する多糖類であり、他はフコースとマンノースを繰り返し単位とする多糖類である。前者は、本発明の多糖類であり、フコース:グルコース:グルクロン酸:ラムノースの単糖構成比は1:2:1:1であり、分子量は10〜10程度の高分子成分である〔1998年度日本農芸化学会大会要旨集、371頁参照〕。後者は、下記一般式(2)に示すようなフコースとマンノースが1:1の繰り返し構造の多糖類であり、分子量が10〜10の低分子成分である。
【0015】
【化1】

【0016】
【化2】

【0017】
上記多糖類は、アルカリゲネス・レータスB−16株を通常の微生物の培養法を用いて培養することにより得ることができる。この培養においては、例えば、炭素源にフラクトース、グルコース、シュークロースなどの単糖類、ヘミセルロース、デンプン、コーンスターチなどの天然高分子、オリーブ油脂などの油類、窒素源に尿素、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウムなどの無機体窒素源、トリプトン、酵母エキス、肉エキス、ペプトン、麦芽エキスなどの有機体窒素源を用い、その他リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウムなどの無機塩類を加えた培地を用い、初発pHが4〜10、温度15〜40℃で通気攪拌液体培養を1〜10日間行なえば良い。
【0018】
この培養液に約2倍量以上のアセトン、エタノール、イソプロピルアルコールなどの有機溶媒を加えることにより、不溶性の凝集物として、上記成分(A)のアルカリゲネス属産生多糖類を得ることができる。
【0019】
また、この成分(A)のアルカリゲネス産生多糖類として「アルカシーラン」(伯東(株)社製)として市販されているアルカリゲネス・レータスB−16株の培養産物を用いることもできる。
【0020】
本発明の水中油型乳化組成物における上記成分(A)の含有量は、使用性、使用感、経時安定性を考慮して適宜決定されるもので一律に決定できないが、通常は0.003〜0.5質量%(以下、単に「%」で示す)であり、好ましくは0.01〜0.05%である。
【0021】
本発明の水中油型乳化組成物において成分(B)として使用される常温(25℃)にて液状またはペースト状の油剤の例としては、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリスリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル類;オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類;流動パラフィン等の炭化水素類;パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を利用することができ、特に経時での安定性の観点から、エステル類が特に好ましい。
【0022】
本発明の水中油型乳化組成物における成分(B)の含有量は、一律に決定できないが、通常、0.01〜3%であり、好ましくは0.1〜1.5%である。
【0023】
更に、成分(C)として使用される非イオン系界面活性剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物等が挙げられ、その1種または2種以上を利用することができる。この成分(C)としては、そのHLB値が9以上のものが好ましく、特に、経時安定性の点から20ないし40モルのエチレンオキサイドが付加したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましい。
【0024】
本発明の水中油型乳化組成物における成分(C)の含有量は、界面活性剤の種類、油剤の量及び質により変動するが、概ね0.01〜20%が好ましい。
【0025】
本発明の水中油型乳化組成物には、上記の3成分の他に、成分(D)として高級アルコールを含有することができる。この成分(D)は、油剤として乳化されるものではなく、活性助剤として機能するものであり、その好ましい例としては、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。
【0026】
この成分(D)である高級アルコールは、配合する場合には、0.01〜0.1%を含有させることが好ましい。
【0027】
本発明の水中油型乳化組成物は、上記成分(A)ないし(C)および必要により成分(D)を、水や低級アルコール等の水性成分に加え、常法により処理し、乳化物とすることにより製造される。より具体的に例を挙げれば、成分(B)、成分(C)(および必要により成分(D))を所定量の水性成分に加え、ホモジナイザーと称される通常の乳化装置を用いて乳化させた後、常温まで冷却を行い、乳化物を得る。乳化は必要に応じて加熱することが出来、乳化時間は便宜調整することができる。乳化して得たれた乳化物を、成分(A)を溶解ないし分散した水性成分中に加え、均一に混合することにより目的の水中油型乳化組成物が得られる。均一混合は、乳化物が壊れないようにパドルにて撹拌することが望ましい。さらにpHを2〜5.5に調整し、本発明水中油型乳化組成物が完成する。pHを調整するために、必要に応じて酸性成分や緩衝液等の調整剤等を配合することができる。
【0028】
上記水中油型乳化組成物の製造に当たっては、本発明の効果を損なわない範囲で他の任意成分を加えても良い。
【0029】
添加される任意成分の例としては、非イオン系界面活性剤以外の界面活性剤、多価アルコールおよびグリセロール類、粉体成分、紫外線吸収剤、保湿剤、皮膜形成剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料などが挙げられる。
【0030】
このうち、非イオン系界面活性剤以外の界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
【0031】
具体的な、陰イオン性界面活性剤の例としては、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸とナトリウム、カリウム、トリエタノールアミン等のアルカリ物質により形成される脂肪酸石鹸類、アシルグルタミン酸塩類、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレン付加アルキルリン酸塩等が挙げられる。また、陽イオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、アルキル四級アンモニウム塩等が、両性界面活性剤としては、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシルメチルアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸、N,N,N−トリアルキル−N−スルフォアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビス(ポリオキシエチレン硫酸)アンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチル−1−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、レシチン、リン脂質等が挙げられる。
【0032】
また、多価アルコールやグリセロールの例としては、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類およびグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類が挙げられる。
【0033】
更に、粉体成分としては、無機粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体等を挙げることができる。
【0034】
具体的には、タルク、カオリン、セリサイト、マイカ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、無水ケイ酸等の体質顔料;酸化チタン、微粒子酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の無機白色顔料;ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、グンジョウ、コンジョウ、カーボンブラック等の無機着色粉体;タール系色素、天然色素等の有機着色顔料;、雲母チタン、酸化鉄雲母チタン、オキシ塩化ビスマス等の光沢付与剤;ナイロンパウダー、シリコーン樹脂パウダー、シルクパウダー、ポリスチレン、ポリエチレンパウダー、結晶セルロース、N−アシルリジン等の有機粉体等がそれぞれ使用される。また、これら粉体として、その表面をフッ素化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、ロウ、油脂、炭化水素等を用いて表面処理を施した、処理粉体を用いてもよい。
【0035】
また更に、本発明の水中油型乳化組成物あるいはこれを皮膚外用剤、化粧料として用いたものには、紫外線吸収剤を含有せしめることができる。このような紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウム、2,2’−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウム、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリアニリノ−パラ−(カルボ−2'−エチルヘキシル−1'−オキシ)−1,3,5−トリアジン等のベンゾフェノン系、サリチル酸−2−エチルヘキシル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル等のサリチル酸系、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル−2−エチルヘキシル、パラジヒドロキシプロピル安息香酸エチル等のPABA系、p−メトキシ桂皮酸−2−エチルヘキシル、4−メトキシ桂皮酸−2−エトキシエチル等のシンナメート系、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−tert−4'−メトキシジベンゾイルメタン等のジベンゾイルメタン系、オキシベンゾン系、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリシンプロピオン酸−2−エチルヘキシル等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
【0036】
また、本発明の水中油型乳化組成物を25℃にてpH2〜5.5にするために酸性物質を含有することができる。この酸性物質の例としては、特に限定されないが、塩酸、リン酸二水素ナトリウムなどの無機酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、フタル酸、アスコルビン酸、酒石酸、dl−ピロリドンカルボン酸、安息香酸などの有機酸及びそれらの塩類等が挙げられこれらを一種又は二種以上用いることができる。
【0037】
以上のようにして得られる本発明の水中油型乳化組成物は、25℃にてpH2〜5.5という広い酸性領域において、2000mPa・s以下という低い粘度においても、後記実施例に示すように、長期間安定にエマルションを維持できるものである。ここでいう粘度は、25℃恒温槽に24時間放置したものを単一円筒回転式粘度計(芝浦システム社製)を用いて、3号ローターで1分間に6回転の速さで1分間回転させた際に測定した値を意味する。
【0038】
また、この水中油型乳化組成物の外観は、不透明ないし半透明のものである。具体的には、分光光度計UV−2500PC(島津製作所社製)を用いて、1cm角セルで測定波長500nmにおいて測定した透過率が0〜50%のものである。
【0039】
以上のようにして得られた本発明の水中油型乳化組成物は、これを皮膚外用剤あるいは化粧料として使用することができる。このような皮膚外用剤の例としては、頭皮用ローション等が挙げられ、また化粧料の例としては、化粧水、美容液等が挙げられる。
【実施例】
【0040】
次に実施例によって、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0041】
実 施 例 1
化 粧 水:
表1に示す組成及び下記製造方法により、化粧水を得た(発明品1〜9)。得られた化粧水について、そのpHおよび粘度を測定した。また、この化粧水を使用した際のべたつきの有無を下記方法により官能的に調べた。更に、その安定性を下記加速試験により調べた。この結果を表2に示す。
【0042】
[ 処 方 ]
【表1】

【0043】
[ 製造方法 ]
A:成分1〜6を70℃以上に加熱する。
B:70℃に加熱した成分7に上記Aを加え、パドルミキサーで撹拌して乳化する。
C:上記Bを40℃まで冷却する。
D:上記Cに、予め成分10に成分11を分散させた成分8〜14を加え、パドルミキ
サーで均一となるまで混合する。
【0044】
[ 評価方法および評価基準 ]
(1)粘度:
測定機器として、単一円筒回転式粘度計(芝浦システム社製)を用い、25℃にお
ける粘度を測定した。
(2)べたつきの有無:
製造された各化粧水を、化粧品評価専門パネルに使用してもらい、下記の基準で評
価した。
( 評 価 ) ( 判 定 )
◎ :全くべたつきを感じない
○ :ほとんどべたつきを感じない
△ :ややべたつきを感じる
× :かなりべたつきを感じる
(3)加速試験:
製造された各化粧水を、50℃の高温槽に入れ、2週間後のエマルションの分散状
態を目視観察して製造直後のものと対比し、下記の基準で評価した。
( 評 価 ) ( 状 態 )
◎ :均一に分散している
○ :ほぼ均一に分散している
△ :クリーミング層が少しみられる
× :凝集して完全にクリーミングしている
(4)サイクル試験:
製造された各化粧水を、−10℃から10℃に24時間で1回変動するサイクル恒
温槽に入れ、1週間後の状態を目視観察し、下記の基準で評価した。
( 評 価 ) ( 状 態 )
◎ :全く分離が見られない
○ :ほとんど分離が見られない
△ :下層に透明層がみられやや不均一である
× :下層に透明層がみられ分離している
【0045】
[ 結 果 ]
【表2】

【0046】
表2の結果から明らかなように、発明品1〜9の化粧水は、何れも酸性(pH4)で、その粘度も、5から300mPa・sの範囲でありながら、べたつきも少なく、加速試験や、サイクル試験に対しても変化が少ない、安定なものであった。
【0047】
比 較 例 1
実施例1に準じて、表3の組成および下記製法により、化粧水を調製した。また得られた化粧水についても、実施例と同様にして使用した際のべたつきの有無を調べ、加速試験およびサイクル試験を行った。この結果を表4に示す。
【0048】
[ 組 成 ]
【表3】

【0049】
[ 製造方法 ]
A:成分1〜4を70℃以上に加熱する。
B:上記Aを成分5に加え、パドルミキサーで撹拌して乳化する。
C:上記Bを40℃まで冷却する。
D:上記Cに、成分6〜17を加え、パドルミキサーで均一となるまで混合する。
【0050】
【表4】

【0051】
表4に示されるように、比較品にもpHが4程度であり、粘度が2000mPa以下のものが得られたが、いずれも加速試験や、サイクル試験では、安定性が悪いものであった。特に、多糖類であるキサンタンガムやジェランガムを用いたもの(比較品1〜3)は、アルカリゲネス属多糖類を用いたもの(発明品1〜9)に比べ、安定性およびべたつきにおいて大きく劣るものであった。比較品7はアルキル変性カルボキシビニルポリマーが凝集し析出したものであった。
【0052】
実 施 例 2
含浸マスク:
下記成分および製造方法により、含浸マスクを調製した。
(成 分) (%)
1. ポリオキシエチレン(40モル)硬化ヒマシ油 0.3
2. トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.1
3. エタノール 10.0
4. 香料 適量
5. テアニン 0.5
6. アルカリゲネス産生多糖類*1 0.01
7. 1,3−ブチレングリコール 15.0
8. コウジ酸 0.5
9. 防腐剤 0.1
10. 精製水 残量
*1「アルカシーラン」(伯東(株)社製)
【0053】
(製造方法)
A:成分(1)〜(4)を室温で溶解混合する。
B:成分(5)〜(10)を室温で溶解混合する。
C:BをAに添加し混合し、不織布(目、鼻、口部分に穴や切り込みのある略顔形)に不織布質量の10倍程度含浸させて含浸マスクを調製した。
【0054】
実施例2の含浸マスクは、べたつきが少なく、経時安定性に優れた含浸マスクであった。
【0055】
実 施 例 3
クレンジングシート:
下記成分および製造方法により、クレンジングシートを調製した。
1. 水素添加大豆リン脂質 1.0
2. フィトステロール 0.1
3. グリセリン 5.0
4. ジプロピレングリコール 5.0
5. 軽質流動パラフィン 3.0
6. ポリオキシエチレン(20モル)硬化ヒマシ油 10.0
7. 防腐剤 0.1
8. エタノール 20.0
9. アルカリゲネス産生多糖類*1 0.02
10. 1,3−ブチレングリコール 10.0
11. クエン酸 0.1
12. 精製水 残量
*1前記と同じ
【0056】
(製造方法)
A:成分(1)〜(5)を70℃で溶解混合する。
B:成分(6)〜(8)を50℃で溶解混合する。
C:成分(9)〜(12)を70℃で溶解混合する。
D:CをAに添加し混合し、乳化する。
E:Dを30℃に冷却し、Bを添加混合し、乳化組成物を得た。
この乳化組成物を不織布に不織布質量の10倍程度含浸させてクレンジングシートを調製した。
【0057】
実施例3のクレンジングシートは、べたつきが少なく、経時安定性に優れたクレンジングシートであった。
【0058】
実 施 例 4
頭皮用ローション:
1. エチルヘキサン酸セチル 2.0
2. ステアリン酸グリセリル 1.0
3. 流動パラフィン 1.0
4. ポリエーテル変性シリコーン 1.0
5. ステアリン酸カリウム 0.4
6. べへニルアルコール 0.4
7. スクワラン 2.0
8. フコイダン 1.0
9. 1,3−ブチレングリコール 10.0
10. グリセリン 5.0
11. アルカリゲネス産生多糖類*1 0.02
12. エタノール 5.0
13. メチルパラベン 0.2
14. クエン酸 0.1
15. 精製水 残量
*1前記と同じ
【0059】
(製造方法)
A:成分(1)〜(7)を70℃で溶解混合する。
B:成分(8)〜(15)を70℃で溶解混合する。
C:AをBに添加し混合し、乳化する。
D:Cを30℃に冷却し、頭皮用ローションを得た。
【0060】
実施例4の頭皮用ローションは、べたつきが少なく、経時安定性に優れた頭皮用ローションであった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の水中油型乳化組成物は、上記したように、酸性の液性を有し、しかも低粘度でありながら、優れたエマルションの安定を有するものである。
【0062】
従って、このものを利用した皮膚外用剤や化粧料は、べたつきが少なく、良好な使用感を有し、かつ、安定性が高いものとなり、有利に利用できるものである。

以 上


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(C);
(A)アルカリゲネス属微生物が産生する多糖類
(B)25℃にて液状またはペースト状の油剤
(C)非イオン系界面活性剤
を含有し、25℃におけるpHが2〜5.5であり、かつ粘度が2000mPa・s以下であることを特徴とする水中油型乳化組成物。
【請求項2】
成分(B)の含有量が0.01〜3質量%である請求項1記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
波長500nmにおける透過率が0〜50%である請求項1または2記載の水中油型乳化組成物。
【請求項4】
成分(C)が、HLB9以上の非イオン系界面活性剤である請求項1ないし3の何れかの項記載の水中油型乳化組成物。
【請求項5】
成分(C)がポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である請求項1ないし4の何れかの項記載の水中油型乳化組成物。
【請求項6】
更に、成分(D)として高級アルコールを含有する請求項1ないし5の何れかの項記載の水中油型乳化組成物。
【請求項7】
皮膚外用剤である請求項1ないし6の何れかの項記載の水中油型乳化組成物。
【請求項8】
化粧料である請求項1ないし6の何れかの項記載の水中油型乳化組成物。


【公開番号】特開2012−148992(P2012−148992A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7480(P2011−7480)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【出願人】(000234166)伯東株式会社 (135)
【Fターム(参考)】