説明

水中油型乳化組成物

【課題】高温低温安定性、経時安定性が良好で、紫外線防御効果、使用感に優れた水中油型乳化組成物の提供。
【解決手段】下記成分を含有する水中油型乳化組成物。(A)ロドデンドロール又はその誘導体


(B)下記(i)及び(ii)の紫外線吸収剤(i)ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン及び4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンの1種又は2種以上(ii)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、2−エチルヘキシル2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル及びサリチル酸オクチルの1種又は2種以上(C)HLB値が12〜20であるポリオキシエチレン付加型非イオン性界面活性剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロドデンドロール又はその誘導体を含有する水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
しみ、そばかす等の皮膚の色素沈着を予防、改善させる成分として、ロドデンドロール及びその誘導体が知られている(特許文献1〜3参照)。これらロドデンドロール又はその誘導体は、水性基剤、油性基剤のいずれへも溶解性が低い両親媒性物質であることが指摘されている。
【0003】
一般に化粧品として処方される皮膚外用剤では、不溶成分の可溶化、乳化、分散のために各種界面活性剤が使用され、中でも皮膚への安全性の高さと、製剤の安定性確保の容易さなどの理由から、ポリオキシエチレン付加型非イオン性界面活性剤が広く用いられている。しかしながら、ロドデンドロール又はその誘導体を可溶化するためには、ポリオキシエチレン付加型非イオン性界面活性剤を比較的多く配合する必要があり、皮膚への刺激性を高める一因となっていた。
【0004】
かかる課題を解決するため、例えば、ロドデンドロール又はその誘導体と、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリル脂肪酸エステル及び両親媒性高分子とを併用することで、高温条件下、光照射条件下又はアルカリ性条件下において、沈殿や変色を生ずる問題を改善することが提案されている(特許文献4、5参照)。
【0005】
近年、UVA紫外線吸収能を有する紫外線吸収剤を配合した日焼け止め化粧料が多く開発されているが、そのUVA領域に紫外線吸収能を有する紫外線吸収剤は、各種の油剤に対する溶解性が低いことが知られており、その製剤中への配合に関しては種々の検討がなされている(特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3340928号公報
【特許文献2】特許第3340935号公報
【特許文献3】特許第3455406号公報
【特許文献4】特開2008−081491号公報
【特許文献5】国際公開第2009/081587号
【特許文献6】特開2008−162988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かかる状況下、ロドデンドロール又はその誘導体とUVA領域に紫外線吸収能を有する紫外線吸収剤とを併用した化粧料を製造したところ、ロドデンドロール又はその誘導体や紫外線吸収剤の析出が起きやすいという問題が生じることが判明した。
また、かかる化粧料において、ロドデンドロール又はその誘導体を含有する水中油型乳化組成物の安定性を保つためには、エタノール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等のアルコール類を高濃度併用する必要があることが分かり、皮膚刺激性が感じられ、感触調整が限定されてしまうという問題も生じることが判明した。
【0008】
従って、本発明の課題は、ロドデンドロール又はその誘導体とUVA領域に紫外線吸収能を有する紫外線吸収剤とを含有し、高温及び低温安定性、経時安定性が良好で、紫外線防御効果、使用感に優れた水中油型乳化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明者は、このような状況下に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、意外にもロドデンドロール又はその誘導体とUVA領域の紫外線吸収能を有する紫外線吸収剤に加えて、特定のUVB領域の紫外線吸収能を有する紫外線吸収剤と一定のHLB値を有するポリオキシエチレン付加型非イオン性界面活性剤を併用することで、高温及び低温安定性、経時安定性が良好であり、さらに紫外線防御効果、使用感の良い水中油型乳化組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明は、下記成分(A)〜(C)を含有することを特徴とする水中油型乳化組成物を提供するものである。
(A)下記一般式(1)で示されるロドデンドロール又はその誘導体
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、R1は、水素原子、炭素数2〜20のアシル基、又は単糖類若しくは二糖類の残基を示す。)
(B)下記(i)及び(ii)の紫外線吸収剤
(i)ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン及び4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンから選択される1種又は2種以上の紫外線吸収剤
(ii)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、2−エチルヘキシル 2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル及びサリチル酸オクチルから選択される1種又は2種以上の紫外線吸収剤
(C)HLB値が12〜20であるポリオキシエチレン付加型非イオン性界面活性剤 1〜5質量%
【0013】
また本発明は、上記成分(B)(ii)及び成分(C)を含有させることを特徴とする、
上記成分(A)及び成分(B)(i)を含有する水中油型乳化組成物の安定性の改善方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水中油型乳化組成物は、ロドデンドロール又はその誘導体及びUVA領域に紫外線吸収能を有する紫外線吸収剤を十分に効果を奏する量含有しながらも、高温及び低温安定性、経時安定性に優れ、紫外線防御効果、使用感に優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳述する。
【0016】
本発明に用いられる(A)ロドデンドロール又はその誘導体は、下記一般式(1)で表されるものである。
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、R1は、水素原子、炭素数2〜20のアシル基、又は単糖類若しくは二糖類の糖残基を示す。)
【0019】
本発明に用いられる(A)成分において、R1が水素原子であるロドデンドロール[4−(p−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノール]は、公知の化合物であり、メグスリノキ(Acer nikoence Maxim.)等に含まれていることが知られている。ロドデンドロールは、従来公知の方法により合成されたものを用いてもよく、メグスリノキ抽出物を用いてもよい。
【0020】
本発明の(A)成分において、R1が炭素数2〜20のアシル基であるロドデンドロール誘導体(以下、アシル化ロドデンドロールとも記載する。)は、フェノール化合物をアシル化する既に公知の方法を用いて合成することができる。例えば、ピリジン中において4−(p−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノンと酸クロライドとを反応させ、その後、水素化ホウ素ナトリウムで、ケトン基を還元することにより容易に得ることができる。R1のアシル基は飽和であっても不飽和であってもよく、又はアミノ基等の官能基を有するものであってもよい。このうち、飽和又は不飽和の脂肪族アシル基が好ましく、アルカノイル基がより好ましい。具体的には、アセチル基、プロピオニル基、ブチロイル基、イソブチロイル基、バレリル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ラウロイル基、パルミトイル基、ステアロイル基等が挙げられる。このうち、炭素数2〜18のアルカノイル基が好ましく、炭素数2〜8のアルカノイル基がより好ましく、炭素数2〜4であるアセチル基、プロピオニル基、ブチロイル基、イソブチロイル基である場合には、水中油型乳化組成物への応用がしやすく特に好ましい。
【0021】
本発明の(A)成分における具体的なアシル化ロドデンドロールとしては、アセチルロドデンドロール、ヘキサノイルロドデンドロール、オクタノイルロドデンドロール、ドデカノイルロドデンドロール、テトラデカノイルロドデンドロール、ヘキサデカノイルロドデンドロール、オクタデカノイルロドデンドロール等を挙げることができる。
【0022】
本発明の(A)成分において、R1が単糖類又は二糖類の糖残基であるロドデンドロール誘導体(以下、ロドデンドロール配糖体とも記載する。)は、既に公知の方法(アメリカ特許第3201385号)を用いて得ることができる。例えば、トルエン等の有機溶媒中においてロドデンドロールとアセチル化糖を三フッ素化ホウ素やオキシ塩化リン等を触媒として縮合した後、アルカリ存在下にアセチル基を脱離することにより目的の配糖体を白色の粉末結晶として容易に得ることができる。また、ラズベリーケトングリコシドを還元することによっても得ることもできる。さらに、天然物から単離することも可能である。
【0023】
前記糖残基は、還元性の単糖類又は二糖類であり、具体的にはグルコース、ガラクトース、キシロース、マンノース、N−アセチルグルコサミン等の単糖類、マルトース、セロビオース、ゲンチビオース等の二糖類を挙げることができる。本発明の配糖体にはα結合及びβ結合を有する異性体が存在するが、単独またそれらの混合物を用いることもできる。
【0024】
本発明の(A)成分における具体的なロドデンドロール配糖体は、ロドデンドロール−D−グルコシド(α又はβ体)、ロドデンドロール−D−ガラクトシド(α又はβ体)、ロドデンドロール−D−キシロシド(α又はβ体)、ロドデンドロール−D−マルトシド(α又はβ体)等を挙げることができる。
【0025】
本発明の(A)成分には、光学異性体が存在するが、(+)体、(−)体単独でも、またそれらの混合物(±)を用いることもできる。
【0026】
本発明の水中油型乳化組成物に用いられる(A)成分の組成物中における含有量は、メラニン生成抑制剤として十分な効果を得る点及び低温安定性の点から、0.5〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%である。特に、R1が、水素原子又は炭素数2〜20のアシル基であるロドデンドロール又はその誘導体を用いる場合、メラニン生成抑制効果が高いことから、組成物中の含有量としては、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0027】
本発明に用いられる(B)成分は、紫外線吸収剤であり、UVA領域に紫外線吸収能を有する(i)ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル及び4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンからなる群から選択される1種又は2種以上の紫外線吸収剤と、UVB領域に紫外線吸収能を有する(ii)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、2−エチルヘキシル 2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル及びサリチル酸オクチルから選択される1種又は2種以上の紫外線吸収剤である。当該(B)成分を、(A)ロドデンドロール及び/又はその誘導体及び、(C)HLB値が12〜20であるポリオキシエチレン付加型非イオン性界面活性剤とともに用いることで、低温安定性、経時安定性、使用感に優れた水中油型乳化組成物が得られる。
【0028】
これらの紫外線吸収剤は一般に市販されており、パラソル1789(4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン;ロッシュ社製)、ソフトシェードDH(ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル;味の素社製)、チノソーブS(ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン;BASF社製)、ユビナールAplus(ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル;BASF社製)、ユビナールMC−80(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル;BASF社製)、ユビヌルN539(2−エチルヘキシル 2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート;BASF社製)、エスカロール507(パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル;ISP社製)、エスカロール587(サリチル酸エチルヘキシル;ISP社製)などを挙げることができる。
【0029】
(B)(i)成分のうち、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルから選ばれる1種又は2種以上を用いるのが、経時安定性、使用感の点からより好ましく、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンを用いるのがさらに好ましい。
また(B)(ii)成分のうちでは、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルを用いるのが、経時安定性、使用感の点からさらに好ましい。
【0030】
前記(i)の紫外線吸収剤と、前記(ii)の紫外線吸収剤の水中油型乳化組成物中における質量含有比[(i)/(ii)]は、高温及び低温安定性、使用感の点から、0.05〜1が好ましく、より好ましくは0.1〜0.8であり、さらに好ましくは0.1〜0.6である。
【0031】
また、成分(A)と成分(B)の水中油型乳化組成物中における質量含有比[(A)/(B)]は、皮膚刺激感、高温及び低温安定性の点から、0.05〜1が好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.55である。
【0032】
本発明で用いる(B)紫外線吸収剤の含有量は、水中油型乳化組成物の総量に対して、1〜20質量%が好ましく、2〜15質量%がより好ましく、3〜10質量%がさらに好ましい。当該範囲内であれば、優れた紫外線防御能が得られ、のび、つきといった使用感も良好である。
【0033】
本発明における(C)HLB値が12〜20であるポリオキシエチレン付加型非イオン性界面活性剤は、オキシエチレンを分子中に2個以上有する非イオン性界面活性剤であり、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、脂肪酸ポリオキシエチレングリセリル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。これらの非イオン性界面活性剤のアルキル基及び脂肪酸残基の炭素数は12〜22が好ましい。
【0034】
具体的には、PEG−40水添ヒマシ油(HLB:12.5)、PEG−50水添ヒマシ油(HLB:13.5)、PEG−60水添ヒマシ油(HLB:14)、PEG―80水添ヒマシ油(HLB:15)、PEG−100水添ヒマシ油(HLB:16.5)、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(HLB:16.7)、ステアリン酸PEG−15グリセリル(HLB:13.5)、オレイン酸PEG−15グリセリル(HLB:14.5)、PEG−20ソルビタンココエート(HLB:16.9)、ポリソルベート20(HLB:16.7)、ポリソルベート40(HLB:15.6)、ポリソルベート60(HLB14.9)、イソステアリン酸PEG−20ソルビタン(HLB:15)、ポリソルベート80(HLB:15)、ラウリン酸ソルベス−6(HLB:15.5)、テトラステアリン酸ソルベス−60(HLB:13)、テトラオレイン酸ソルベス−60(HLB:14)、ラウレス−9(HLB:14.5)、ラウレス−21(HLB:19)、ラウレス−25(HLB:19.5)、セテス−10(HLB13.5)、セテス−15(HLB:15.5)、セテス−20(HLB:17)、セテス−23(HLB:18)、セテス−25(HLB:18.5)、セテス−30(HLB:19.5)、セテス−40(HLB:20)、ステアレス−20(HLB:18)、オレス−10(HLB:14.5)、オレス−15(HLB:16)、オレス−20(HLB:17)、オレス−50(HLB:18)、ベヘネス−20(ベヘネス:16.5)、ベヘネス−30(HLB:18)、(C12−14)パレス−9(HLB:13.5)、(C12−14)パレス−12(HLB:14.5)、ステアリン酸PEG−25(HLB:15)、ステアリン酸PEG−40(HLB:17.5)、ステアリン酸PEG−45(HLB:18)、ステアリン酸PEG−55(HLB:18)などが挙げられる。
【0035】
これらの、ポリオキシエチレン付加型非イオン性界面活性剤の中でも、高温及び低温安定性、経時安定性、使用感の点からポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、炭素数12〜22の直鎖状又は分岐鎖状の、飽和又は不飽和の脂肪酸の脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンがより好ましい。
【0036】
これらの(C)HLB値が12〜20であるポリオキシエチレン付加型非イオン性界面活性剤のうち、より好ましくはHLB値が13〜18のものであり、さらに好ましくはHLB値が13.5〜17.5のものである。
【0037】
具体的には、PEG−40水添ヒマシ油(HLB:12.5)、PEG−50水添ヒマシ油(HLB:13.5)、PEG−60水添ヒマシ油(HLB:14)、PEG―80水添ヒマシ油(HLB:15)、PEG−100水添ヒマシ油(HLB:16.5)、ポリソルベート20(HLB:16.7)、ポリソルベート40(HLB:15.6)、ポリソルベート60(HLB14.9)、イソステアリン酸PEG−20ソルビタン(HLB:15)、ポリソルベート80(HLB:15)が好適に挙げられる。
【0038】
ここで、HLB(親水性−親油性バランス;Hydrophile-Lypophile Balance)値は、一般に界面活性剤の水及び油への親和性を示す値であり、グリフィン法により容易に求めることができる。
【0039】
本発明の水中油型乳化組成物に用いられる(C)成分の組成物中の含有量としては、経時安定性、皮膚刺激性の点から、1〜5質量%必要であり、より好ましくは1〜4質量%であり、さらに好ましくは1〜3質量%である。
【0040】
また、成分(A)と成分(C)の水中油型乳化組成物中における質量含有比[(A)/(C)]は、皮膚刺激感、高温安定性、使用感の点から、0.2〜5が好ましく、さらに好ましくは0.5〜2.7である。
【0041】
本発明では、(A)成分の水中油型乳化組成物中における溶解性を高めるために、さらに(D)1価〜3価アルコールを含有することができる。(D)成分の好ましい例としては、1価のアルコールとして、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール等の炭素数1〜4の1価アルコールが挙げられ、2価のアルコールとしてはプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等の炭素数2〜6の2価アルコールが挙げられ、また3価のアルコールとしてはグリセリン、イソプレングリコール等の炭素数3〜6の3価アルコールが挙げられる。また、本発明では、これら1価〜3価のアルコールから選択される1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0042】
これらのうち、エタノール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール及びグリセリンからなる群から選択される1種又は2種以上を好ましく用いることができる。
【0043】
特許文献4、5に記載の皮膚外用剤においては、水中油型乳化組成物では(D)成分を10質量%程度含有させておかないと、低温安定性を保つことが困難であったが、本発明においては、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を併用することで、同等以上の経時安定性を保持することが可能となっている。そのため、本発明の(D)成分の組成物中の含有量を、10質量%以下とすることが可能であり、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜8質量%、さらに好ましくは0.5〜6質量%とすることが可能である。
【0044】
本発明の水中油型乳化組成物には、刺激性及び使用感の点において、アニオン性界面活性剤を実質的に含有しないことが好ましい。
【0045】
さらに本発明の水中油型乳化組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記必須成分の他、通常、医薬品、医薬部外品、化粧品等に配合される他の成分、例えば油剤、保湿剤、増粘剤、防腐剤、pH調整剤、水、薬剤、紫外線散乱剤、色素、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0046】
本発明の水中油型乳化組成物の用途は任意であるが、化粧料、医薬品、医薬部外品等に好適に用いることができる。具体的には、ローション、乳液、美容クリーム、下地化粧料、日焼け止め化粧料、パック、マッサージ化粧料などの皮膚化粧料;各種薬剤を含有するクリーム等の外用医薬品として好適に利用できる。より好ましくは本発明の水中油型乳化組成物は、べたつき感、きしみ感がなく、さっぱりとした感触を有するため、皮膚外用剤、特に日焼け止め用皮膚外用剤として好適に利用できる。
【0047】
本発明の水中油型乳化組成物の剤形は任意であり、液状、エマルション、ジェル状、スプレー状、ムース状等のものとして調製される。
【実施例】
【0048】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。尚、以下に示す配合量は質量%である。実施例に先立ち、実施例において行った評価方法について説明する。
【0049】
(安定性評価)
室温(20±5℃)及び0℃、又は60℃で1ヶ月間保存した試料について、目視にて、試料中の結晶の析出有無、又は分離の有無を確認した。下記判定基準に準じて評価を行った。
【0050】
結晶析出判定基準
×:明らかな結晶の析出がある
△:僅かに結晶の析出がある
○:結晶の析出が見られない
【0051】
分離判定基準
◎:1ヶ月後も分離が観察されない
○:1ヶ月後に僅かに分離が観察された
△:1週間後に僅かに分離が観察された
×:1週間後に明らかな分離が観察された
【0052】
(紫外線防御評価)
SPFアナライザー(Optometices社)を用いてSPF値を測定し、以下の基準で示した。
〔UVB防御効果評価基準〕
◎:SPF値が40以上
○:SPF値が30以上40未満
△:SPF値が20以上30未満
×:SPF値が20未満
〔UVA防御効果評価基準〕
○:T(UVA)が20%未満
△:T(UVA)が20%以上25%未満
×:T(UVA)が25%以上
【0053】
ここで、T(UVA)は次式により定義されるものである。
【0054】
【数1】

【0055】
(経時安定性評価)
各試料を40℃の恒温槽に6ヶ月間保管し、6ヶ月後の状態を観察し、以下の判定基準を用いて判定した。
〔保存安定性判定基準〕
○:分離が観察されない
△:僅かに分離が観察された
×:明らかな分離が確認された
【0056】
(官能評価)
低温安定性評価により、析出が見られなかった0℃で1ヶ月保存した試料を、専門評価パネラー10名により、試料を使用してもらい「べたつきのなさ」、「きしみ感のなさ」の各評価項目に関して、下記判定基準により官能評価を実施した。評価は、判定結果の合計点数から、下記評価基準により評価を行った。尚、女性パネルには、1回にひとつの試料を評価し、2日間の休止期間を設けた後、同様にして次の試料を評価した。
【0057】
判定基準
5点:非常に良い。
4点:良い。
3点:普通。
2点:やや悪い。
1点:悪い。
評価基準
○:35点以上
△:25点以上、35点未満
×:25点未満
【0058】
実施例1〜18、比較例1〜6
表1〜3に記載の処方により水中油型乳化組成物を作製し、前記評価試験を実施した。結果を表1〜3に併せて示す。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
(製造方法)
A:成分1〜15を混合して80℃に加熱し、攪拌混合する。
B:成分16、17、19〜21を混合して80℃に加熱し、攪拌混合する。
C:AにBを徐々に添加し、均一に攪拌混合する。
D:冷却後、Cに成分18を添加し、均一に攪拌混合する。
【0063】
表1〜3より明らかなように、成分(B)(ii)を含有しない比較例1、成分(C)を含有しない比較例2では、明らかな析出が見られた。同様に、成分(C)の代わりにポリオキシエチレン付加型非イオン性界面活性剤でないラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタンを用いた比較例3、4でも析出が確認された。また、成分(C)の含有量が1〜5質量%の範囲外である比較例5、6では、析出あるいは分離確認がされ、使用感も良好ではなかった。
一方、(A)〜(C)成分を含有する実施例においては、低温安定性、経時安定性に優れ、高いUVB、UVA紫外線防御能を有し、かつ、べたつき、きしみ感のない使用性の良好な水中油型乳化組成物が得られた。なお、高温保存(60℃)の分離安定性については、実施例1〜9、15及び16が特に良好であり、実施例10、13及び17が次いで良好であり、実施例11、12、14及び18はやや分離が認められた。また、使用感においては実施例1〜16及び18が良好であった。
【0064】
次に、本発明の水中油型乳化組成物の処方例を示す。いずれも高温及び低温安定性、経時安定性に優れ、紫外線防御効果・使用感に優れたものであることが期待される。
【0065】
処方例1(ファンデーション)
(成分) (質量%)
シリコーン処理微粒子酸化亜鉛 15.0
シリコーン処理酸化チタン 10.0
シリコーン処理タルク 3.0
シリコーン処理黄酸化鉄 0.8
シリコーン処理黒酸化鉄 0.16
イソヘキサデカン 5.0
メチルトリメチコン 5.0
ロドデンドロール 2.0
4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン 1.0
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 0.5
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 6.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 2.0
1,3−ブチレングリコール 6.0
SEPIGEL 501 3.0
(ポリアクリルアミド20質量%含有:SEPPIC社製)
サクシノグリカン 0.2
カルボキシメチルセルロース 0.3
エタノール 5.0
精製水 残 量
【0066】
処方例2(日焼け止め化粧料)
(成分) (質量%)
シリコーン処理亜鉛チタン 10.0
シリコーン処理酸化亜鉛 10.0
ロドデンドロール 1.0
4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン 1.0
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 0.5
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 6.0
ポリメチルシルセスキオキサン 3.0
ジメチルポリシロキサン 5.0
ミリスチン酸オクチルドデシル 5.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 1.0
モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O) 0.5
グリセリン 3.0
トリメチルシロキシケイ酸 0.5
エタノール 0.5
フェノキシエタノール 0.5
エデト酸三ナトリウム 0.01
キサンタンガム 0.1
ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
精製水 残 量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜(C)を含有することを特徴とする水中油型乳化組成物。
(A)下記一般式(1)で示されるロドデンドロール又はその誘導体
【化1】

(式中、R1は、水素原子、炭素数2〜20のアシル基、又は単糖類若しくは二糖類の残基を示す。)
(B)下記(i)及び(ii)の紫外線吸収剤
(i)ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン及び4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンから選択される1種又は2種以上の紫外線吸収剤
(ii)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、2−エチルヘキシル 2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル及びサリチル酸オクチルから選択される1種又は2種以上の紫外線吸収剤
(C)HLB値が12〜20であるポリオキシエチレン付加型非イオン性界面活性剤 1〜5質量%
【請求項2】
前記(B)成分中の(i)成分と(ii)成分との含有質量比(i/ii)が、0.05〜1である請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
前記(A)成分と(B)成分の水中油型乳化組成物中の含有質量比(A/B)が、0.05〜1である請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項4】
前記(A)成分と(C)成分の水中油型乳化組成物中の含有質量比(A/C)が、0.2〜5である請求項1〜3のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項5】
さらに、(D)1価〜3価アルコールを含有し、その含有量が水中油型乳化組成物全量に対し、10質量%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物
【請求項6】
成分(B)(ii)及び成分(C)を含有させることを特徴とする、下記成分(A)及び
(B)(i)を含有する水中油型乳化組成物の安定性の改善方法。
(A)下記一般式(1)で示されるロドデンドロール又はその誘導体
【化2】

(式中、R1は、水素原子、炭素数2〜20のアシル基、又は単糖類若しくは二糖類の残基を示す。)
(B)下記(i)及び(ii)の紫外線吸収剤
(i)ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン及び4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンから選択される1種又は2種以上の紫外線吸収剤
(ii)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、2−エチルヘキシル 2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル及びサリチル酸オクチルから選択される1種又は2種以上の紫外線吸収剤
(C)HLB値が12〜20であるポリオキシエチレン付加型非イオン性界面活性剤 1〜5質量%

【公開番号】特開2012−229193(P2012−229193A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−273380(P2011−273380)
【出願日】平成23年12月14日(2011.12.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】