説明

水中油型乳化組成物

【課題】本発明の課題は、優れた保湿効果を有し、かつ経時安定性及び使用感の良好な水中油型乳化組成物を提供することにある。
【解決手段】下記(A)〜(C)を含有することを特徴とする水中油型乳化化粧料。
(A)(i)〜(iii)を含有する油剤 20質量%以上
(i)高級アルコール
(ii)シリコーン油
(iii)脂肪酸トリグリセリド
(B)炭素数2〜10の二価以上のアルコール及び/又は糖アルコール 10質量%以上
(C)水 50質量%以下

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は経時安定性が良好で、保湿効果に優れ、使用感の良い水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
油中水型乳化組成物は、連続相が油剤となるため、水中油型乳化組成物に比べて、保湿効果が高く、油溶性有効成分の経皮吸収性に優れるといった特性を有する。しかし、油っぽく、ベタツキ・ヌルツキ感がある、肌おさまりが悪いなど使用感触の点で欠点があった。
これに対し、水中油型乳化組成物は、外相が水相であるために使用感が軽く、感触的にも優れる傾向がある。そこで、油中水型乳化組成物のような保湿効果を得るため、多価アルコールと油剤を比較的多く含有する水中油型乳化組成物が開示されている。
【0003】
特許文献1には、多価アルコール、高級アルコール、脂肪酸、水溶性高分子をそれぞれ特定量含有する乳化組成物が開示されている。特許文献2には、多価アルコールと脂肪酸グリセリンエステルとを含有する皮膚外用剤が開示されている。特許文献3には、α−モノアルキルグリセリルエーテル、特定のワックス類、シリコーン油を含有する水中油型乳化組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−231619号公報
【特許文献2】特開平11−246329号公報
【特許文献3】特許第3664734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の乳化組成物は、保湿感をさらに高めるため、油剤や多価アルコール等の配合量を増やし、水の配合量を50質量%以下とした場合、安定性が悪く、べたつき感といった使用感も低下するという問題があった。また、特許文献2記載の皮膚外用剤は、使用感を改善するためにシリコーン油を配合した場合に、安定性が悪くなるという問題があった。また、特許文献3記載の水中油型乳化組成物は、低温時に固化しやすく使用勝手が非常に悪くなり、ポンプ式の容器から吐出できない等のトラブルが発生しやすい。更にグリセリン等の多価アルコールを高配合した際には上記現象が顕著に現れるという問題があった。
【0006】
従って、本発明の課題は、優れた保湿効果を有し、かつ経時安定性及び使用感の良好な水中油型乳化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者は、経時安定性に優れ、保湿感、ベタツキ・ヌルツキ感のなさ、肌おさまりの良さといった使用感が良好な水中油型乳化組成物を得るべく、油剤や多価アルコールなどの組み合わせを種々検討した結果、油剤として高級アルコール、シリコーン油、脂肪酸トリグリセリドを用い、それらを多価アルコールと特定量含有することで、経時安定性や前記使用感に優れた水中油型乳化組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は下記(A)〜(C)を含有することを特徴とする水中油型乳化化粧料を提供するものである。
(A)(i)〜(iii)を含有する油剤 20質量%以上
(i)高級アルコール
(ii)シリコーン油
(iii)脂肪酸トリグリセリド
(B)炭素数2〜10の二価以上のアルコール及び/又は糖アルコール 10質量%以上
(C)水 50質量%以下
【発明の効果】
【0009】
本発明の水中油型乳化組成物は、保存安定性が高く、かつ、油中水型乳化組成物のような保湿感や皮膜感を有しながら、べたつきやぬるつきがなく、肌おさまりが良い。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で用いる(A)油剤は、(i)高級アルコール、(ii)シリコーン油及び(iii)脂肪酸トリグリセリドを含有する。
【0011】
本発明に用いられる(i)高級アルコールは、式ROH(Rは炭素数12以上の直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル基)で表される炭素数12以上の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐のアルコールである。高級アルコールは、乳化製剤の安定性の向上、乳化製剤の外観、粘度ならびに塗布する際の延展性、肌おさまり、保湿効果の点から、炭素数12〜24の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐アルコールがより好ましく、炭素数14〜24の飽和直鎖アルコールがさらに好ましく、炭素数16〜22の飽和直鎖アルコールがさらに好ましい。具体的には、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナービルアルコール等が挙げられ、1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0012】
(ii)シリコーン油としては、シリコーン油の構造は特に制限されず、環状、直鎖状、分岐状のいずれでもあってもよい。シリコーン油として具体的には、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、エチルメチルポリシロキサン、エチルフェニルポリシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、下記の低粘度シリコーン油などが挙げられる。これらは単独でも2種以上の混合物であってもよい。
【0013】
これらのうち、低温安定性の向上、べたつき・ぬるつき感のない良好な感触が得られる点から、25℃における動粘度が1×10-52/s(10cSt)以下の低粘度シリコーン油を含有するのが好ましい。低粘度シリコーンとしては、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、メチルポリシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、トリス(トリメチルシロキシ)メチルシラン等が挙げられる。
【0014】
(iii)脂肪酸トリグリセリドとしては、水中油型乳化系を得て、皮膚に塗布したときの使用感、特に肌おさまり、ベタツキ・ぬるつき感のなさの点で炭素数10〜22の脂肪酸基を2以上有するものが好ましく、特に炭素数10〜22の脂肪酸基を3個有する脂肪酸トリグリセリドが好ましい。このような脂肪酸トリグリセリドとしては、例えばオリーブ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油、ヒマシ油、紅花油、ヒマワリ油、アボカド油、キャノーラ油、キョウニン油、米胚芽油、米糠油などの植物油;トリアセチルヒドロキシステアリン酸グリセリル、トリアセチルリシノール酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリド、トリイソステアリン酸グリセリル、トリウンデカン酸グリセリル、トリヒドロキシステアリン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン・イソステアリン・アジピン酸)グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリ(カプリル・カプリン・ミリスチン・ステアリン酸)グリセリル、トリ(カプリル・カプリン・ラウリン酸)グリセリル、トリ(カプリル・カプリン・リノール酸)グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリ牛脂脂肪酸グリセリル、トリ(牛脂脂肪酸・ミンク油脂肪酸・タラ肝油脂肪酸)グリセリル、トリミリスチン酸グリセリド、トリステアリン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリ2−ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリ(ミンク油脂肪酸・パルミチン酸)グリセリル、トリヤシ油脂肪酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリラノリン脂肪酸グリセリル、トリ(リシノレイン・カプロン・カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリリノール酸グリセリル等の合成グリセリドが挙げられる。本発明においては、これらを1種又は2種以上を選択して用いることができる。
【0015】
これらのうち、オリーブ油、メドフォーム油、マカデミアナッツ油、米糠油、トリ(カプリル・カプリン)酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリ2−ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリヤシ油脂肪酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル等が水中油型乳化系を形成し、良好な塗布時の使用感を得る上で好ましい。
【0016】
(A)成分中には前記(i)〜(iii)成分以外に、油剤として、オリーブスクワラン、米スクワラン、サメスクワランなどのスクワラン;パラフィン、流動パラフィン、ワセリン、オレフィンオリゴマー、スクワラン等の炭化水素類;ミツロウ、モクロウ、カルナバロウ、ホホバ油等のロウ類;ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチル、イソステアリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル油;コレステロール、フィトステロール、分岐脂肪酸コレステロールエステル、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリルエステル等のステロール類及びその誘導体;硬化油等のトリグリセリド以外の加工油類;ステアリン酸、ミリスチン酸、イソ型長鎖脂肪酸、アンテイソ型長鎖脂肪酸などの高級脂肪酸;ジカプリルエーテル等のエーテル;リモネン、水素添加ビサボロール等のテルペン類等を含有することができる。これらは1種又は2種以上含有することができる。
【0017】
低温安定性を改善するため、25℃において固形の油剤として、(i)高級アルコール以外の固形油剤(カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、ホホバ油等のロウ類;ワセリン、固形パラフィン、マイクロクリスタリンワックス等の固形炭化水素等)を実質的に含有しないことが好ましい。本発明において、実質的に含有しないとは、組成物総量に対して、5質量%以下であり、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0018】
(A)成分の含有量(油剤の合計含有量)は、安定な水中油型乳化系を得る点、肌おさまりの良さ、ベタツキ・ヌツルキ感のなさの点から、水中油型乳化組成物総量に対して、20質量%以上必要であり、好ましくは20〜60質量%が好ましく、より好ましくは30〜55質量%、さらに好ましくは35〜50質量%である。
【0019】
(A)成分の総量における(i)成分の含有質量は、低温経時安定性、肌おさまりの良さ、ベタツキ・ヌツルキ感のなさの点からから、10質量%未満であることが好ましく、1質量%以上10質量%未満がより好ましく、2〜8質量%がさらに好ましい。
【0020】
(A)成分の総量における(ii)成分の含有質量は、経時安定性及び使用感触の点から、20〜70質量%であることが好ましく、40〜60質量%がより好ましい。
【0021】
(A)成分の総量における(iii)成分の含有質量は、経時安定性及び使用感触の点から、10〜40質量%であることが好ましく、15〜35質量%がより好ましい。
【0022】
本発明で用いる(B)炭素数2〜10の二価以上のアルコールとしては、炭素数2〜10の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐の二価以上のアルコールである(以下、多価アルコールともいう)。これらのアルコールとして、具体的には、グリコール類、グリセリン類などが挙げられる。グリコール類の具体例としては、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。グリセリン類の具体例としては、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等が挙げられる。これらを、単独又は複数種の混合物の形態で用いることができる。
【0023】
これらの多価アルコールのうち、その1分子中における水酸基の数が、3個以上であるものを用いるのが好ましい。特に、グリセリンを用いると、保湿効果が向上するため、好ましい。また炭素数が10を超える二価以上のアルコールを用いると、十分な低温安定性が確保できない、長期保存において乳化製剤の外観、指取れ及び塗布した際の感触が調製当初の感触と大きく異なる場合がある。
【0024】
また、(B)糖アルコールは、単糖類〜六糖類のアルドース又はケトースのカルボニル基が還元されたものである。構成糖の数は、1〜6であるが、好ましくは1〜3である。これらはD体、L体のいずれであってもよく、またその混合物であっても良く、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0025】
これらの糖アルコールとして、具体的にはエリスリトール、キシリトール、リビトール、アラビトール、ガラクチトール、ソルビトール、イノシトール、マンニトール、パラチニット、マルチトール、ラクチトール、イソマルトース、マルトトリイトール、マルトテトライトール、マルトペンタイトール、マルトヘキサトリイトール等が挙げられる。
【0026】
好ましい糖アルコールとしては、キシリトール、ソルビトール、マルチトールであり、より好ましくはソルビトール、マルチトールである。
【0027】
また、前記糖アルコールは、水酸基が少なくとも1つを除いて、アシル化、エーテル化、アルキレンオキサイド付加、アセタノール化糖の適当な有機残基による修飾がなされたものであっても良い。
【0028】
(B)成分の含有量は、べたつき・ぬるつき感を抑え、保存安定性を良好にする点から、水中油型乳化組成物全量に対して、10質量%以上であることが必要であり、好ましくは10〜40質量%であり、さらに好ましくは15〜35質量%である。
【0029】
肌収まり、べたつき・ぬるつき感の抑制の点から、多価アルコール及び糖アルコールを併用することが好ましく、この場合、多価アルコールと糖アルコールの含有質量比は、1:1〜10:1が好ましく、より好ましくは3:2〜8:1であり、さらに好ましくは2:1〜6:1である。
【0030】
本発明で用いる(C)水は、経時安定性に優れた水中油型乳化組成物を形成する点から、水中油型乳化組成物全量に対して、50質量%以下であることが必要であり、好ましくは10〜50質量%であり、より好ましくは20〜45質量%である。
【0031】
本発明の水中油型乳化組成物には経時安定性を高め、肌おさまりを向上させる点から、さらに(D)アクリルアミド化合物を含有することが好ましい。ポリアクリルアミド化合物としては、ポリアクリルアミド、アクリルアミドコポリマーが含まれ、アクリルアミドコポリマーとしては、アクリルアミド及び/又はアクリロイルジメチルタウリンを構成単位として含むコポリマーが挙げられる。
【0032】
アクリルアミド及び/又はアクリロイルジメチルタウリンを構成単位として含むコポリマーとしては、アクリル酸ヒドロキシエチルとアクロイルジメチルタウリン塩との共重合体、アクリル酸塩とアクリロイルジメチルタウリン塩との共重合体、アクリルアミドとアクリル酸塩との共重合体、アクリル酸とアクリル酸アミドとアクリル酸塩とアクリロイルジメチルタウリン塩の共重合体等を挙げることができる。
【0033】
これらの成分は市販されており、ポリアクリルアミドとしては、SEPIGEL 305(ポリアクリルアミド、水添ポリイソブテン(または(C13,14)イソパラフィン)、ラウレス-7、水);アクリル酸ヒドロキシエチルとアクロイルジメチルタウリン塩との共重合体としては、SEPINOV EMT 10((アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー)、SIMULGEL NS((アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、スクワラン、ポリソルベート 60、水)、SIMULGEL FL((アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、イソヘキサデカン、ポリソルベート60、水)、SEPIPLUS S((アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、ポリイソブテン、PEG-7トリメチロールプロパンヤシ油アルキルエーテル、水);アクリル酸塩とアクリロイルジメチルタウリン塩との共重合体としては、SIMULGEL EG((アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、イソヘキサデカン、ポリソルベート 80、水);アクリルアミドとアクリル酸塩との共重合体としては、SEPIPLUS 265((アクリルアミド/アクリル酸アンモニウム)コポリマー、ポリイソブテン、ポリソルベート20、水);、アクリル酸とアクリル酸アミドとアクリル酸塩とアクリロイルジメチルタウリン塩の共重合体としては、SEPIPLUS 400(ポリアクリレート−13、ポリイソブテン、ポリソルベート20、水)が挙げられる。
【0034】
これらのうち好ましくは、アクリル酸塩とアクリロイルジメチルタウリン塩との共重合体が挙げられ、特に好ましくは、アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーが挙げられる。
【0035】
(D)成分の含有量は、本発明の水中油型乳化組成物総量に対して、経時安定性の点で、0.1〜2質量%であるのが好ましく、0.2〜1.5質量%であるのがより好ましい。
【0036】
また、本発明の水中油型乳化組成物には、上記成分の他に、目的に応じて本発明の効果を損なわない範囲内で、界面活性剤、低級アルコール、水溶性高分子、植物エキス、ビタミン類、酸化防止剤、防菌防腐剤、消炎剤、昆虫忌避剤、生理活性成分、塩類、キレート剤、中和剤、pH調整剤、香料等を配合することができる。
【0037】
本発明の水中油型乳化組成物の用途としては、化粧料、医薬部外品、医薬品等に特に制限なく用いることができるが、使用感の良さから化粧料、医薬部外品として好適に用いることが出来る。具体的にはシャンプー、リンス、コンディショナーなどの毛髪化粧料、洗顔料、クレンジング化粧料、ローション、乳液、クリーム、美容液、日焼け止め化粧料、パック、マッサージ化粧料などの皮膚化粧料として好適に利用できる。これらのうち、特に乳液、クリーム、美容液等のスキンケア化粧料として適用するのが好ましい。
【実施例】
【0038】
実施例1〜7、及び比較例1〜6
表1に示した処方に従い、水中油型乳化組成物を調製した。これらを用いて、下記の(1)官能性試験、(2)経時安定性試験を実施し、それぞれ評価した。結果は表1に併せて示した。
【0039】
(1)官能性試験
10名の評価パネラーに各試料を使用してもらい、塗布後の「肌おさまり」、「べたつき・ヌルツキ」について下記評価基準に基づき、それぞれ評価した。
ここで、肌おさまりとは、肌上に塗布した製剤をのばす際、肌なじみが良く、肌上に均一な化粧膜が完成し、短時間で塗布が完了するものとする。例えば、均一な化粧膜が形成されないと、油を塗っているようないつまでも肌上に上滑り感を生じてしまう。
また、べたつき・ヌツルキとは、肌に製剤を塗布した後、一定時間経過し、肌状態が落ち着いた後の肌のべたつき又はヌルツキ感を評価するものとする。
【0040】
(肌おさまり評価基準)
4:良好である
3:少し肌おさまりが悪い
2:肌おさまりが悪い
1:肌おさまりが悪く不快である
【0041】
(ベタツキ・ヌルツキ評価基準)
4:ベタツキ・ヌルツキを感じない
3:僅かにベタツキ・ヌルツキを感じる
2:ベタツキ・ヌルツキを感じる
1:ベタツキ・ヌルツキを強く感じる
【0042】
(評価)
○:評価パネラーの平均点が3.5以上
△:評価パネラーの平均点が2.5〜3.5未満
×:評価パネラーの平均点が2.5未満
【0043】
(2)経時安定性試験
表1に示した水中油型乳化組成物をガラス瓶に入れ、45℃、−10℃の恒温槽にそれぞれ3ヶ月間保管した。調製直後の状態を基準として、3ヶ月後の外観の変化を目視により下記基準に基づいて判定した。
【0044】
(評価基準)
○:問題なし
△:極めて軽微な分離又は軽微な過剰固化が見られる
×:分離、離油又は過剰固化が見られる
【0045】
【表1】

【0046】
本発明の水中油型乳化組成物は、(A)成分及び(B)成分を多量に含有することから保湿効果に優れ、かつ経時安定性が良好であるとともに、使用感が極めて良好である。これに対し、(A)成分が(i)〜(iii)を含有しない組成物、(A)成分の含有量が少
ない組成物、(B)成分の含有量が少ない組成物、(C)成分の含有が多い組成物は、経時安定性や感触面で劣るものであった。特に(A)成分中の(i)、(ii)及び(iii)の含有量が一定の範囲内にある水中油型乳化組成物の経時安定性と感触の両立は顕著であった。
【0047】
次に、以下の処方に従い、常法にて水中油乳化組成物を調製した。いずれも官能効果に優れ、良好な経時安定性が期待されるものでる。
【0048】
処方例1(クリーム)
配合成分 質量%
〔油相〕
ベヘニルアルコール 1
セトステアリルアルコール 1
米糠油 10
αオレフィンオリゴマー 10
トリメチルシロキシケイ酸 10
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 3
流動パラフィン 5
ステアリン酸グリセリル 0.6
ステアリン酸PEG−40 0.3
セテアレス−20 0.1
フェノキシエタノール 0.5
ポリアクリルアミド 0.4
水添ポリイソブテン 0.24
香料 0.1
〔水相〕
グリセリン 20
ジプロピレングリコール 1
マルチトール液(70水溶液) 5
キサンタンガム 0.2
エデト酸2ナトリウム 0.1
クロルフェネシン 0.2
アシタバエキス 0.3
茶の実抽出物 0.1
ヒマラヤンラズベリー 0.1
オオバナサルスベリエキス 0.1
メバロノラクトン 0.3
サクラ葉エキス 0.1
シャクヤクエキス 0.4
精製水 残 量
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の水中油型乳化組成物は、保存安定性が高く、優れた保湿効果を有しながら、べたつきやぬるつきがなく、肌おさまりが良い。従って、本発明の水中油型乳化組成物は、スキンケア化粧料として特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(C)を含有することを特徴とする水中油型乳化化粧料。
(A)(i)〜(iii)を含有する油剤 20質量%以上
(i)高級アルコール
(ii)シリコーン油
(iii)脂肪酸トリグリセリド
(B)炭素数2〜10の二価以上のアルコール及び/又は糖アルコール 10質量%以上
(C)水 50質量%以下
【請求項2】
(A)(i)高級アルコールの(A)成分の総量における含有質量が、10質量%未満である請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
(A)(ii)シリコーン油の(A)成分の総量における含有質量が、20〜70質量%である請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項4】
(A)(iii)脂肪酸トリグリセリドの(A)成分の総量における含有質量が、10〜40質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項5】
(B)成分中の多価アルコールと糖アルコールの含有質量比が、1:1〜10:1である請求項1〜4のいずれか1項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項6】
さらに(D)アクリルアミド化合物を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項7】
(A)成分を20〜60質量%、(B)成分を10〜40質量%、(C)成分を10〜50質量%含有する請求項1〜6のいずれか1項記載の水中油型乳化組成物。

【公開番号】特開2013−103898(P2013−103898A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248081(P2011−248081)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】