説明

水中油型毛髪処理剤

【課題】コハク酸ポリプロピレングリコールオリゴエステルの分散性が高い水中油型毛髪処理剤の提供。
【解決手段】コハク酸ポリプロピレングリコールオリゴエステルと共に、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル及びベヘニルトリメチルアンモニウム塩を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コハク酸ポリプロピレングリコールオリゴエステルが配合された水中油型毛髪処理剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シャンプー、トリートメント、整髪剤などの公知の毛髪処理剤には、油性原料が配合されることがある。その配合される油性原料の種類によって、毛髪の艶、まとまり、ボリューム、しっとり感、柔らかさなどの毛髪特性が向上する場合がある。
【0003】
コハク酸ポリプロピレングリコールオリゴエステルは、毛髪処理剤に配合する油性原料として公知のものとなっている。例えば、特許文献1には、トリートメントに配合したことが開示され、特許文献2には、整髪剤に配合したことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−213738号公報
【特許文献2】特開2002−167314号公報
【0005】
上記特許文献1〜2に開示されている通り、コハク酸ポリプロピレングリコールオリゴエステルは毛髪処理剤の配合原料となるが、水中油型毛髪処理剤においては、油相原料となるコハク酸ポリプロピレングリコールオリゴエステルの分散性を高めることが望まれる。その分散性を高めることで、水中油型毛髪処理剤の製造の容易化につながり、毛髪の感触の均一化なども期待される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、コハク酸ポリプロピレングリコールオリゴエステルの分散性が高い水中油型毛髪処理剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が、コハク酸ポリプロピレングリコールオリゴエステルの分散性を高めるべく鋭意検討を行った結果、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル及びベヘニルトリメチルアンモニウム塩を配合すれば、その分散性が高まることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明に係る水中油型毛髪処理剤は、下記(A)、(B)、及び(C)が配合されたものである。
(A):コハク酸ポリプロピレングリコールオリゴエステル
(B):ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル
(C):ベヘニルトリメチルアンモニウム塩
【0009】
本発明に係る水中油型毛髪処理剤において、前記(B)は、下記式(I)で表されるポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテルであると良い。
【化1】

[上記式(I)において、平均付加モル数aとcの総和は100以上であり、平均付加モル数bは25以上70以下である。]
【0010】
本発明に係る水中油型毛髪処理剤は、例えば、ヘアケア剤として用いられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る水中油型毛髪処理剤は、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル及びベヘニルトリメチルアンモニウム塩の配合により、コハク酸ポリプロピレングリコールオリゴエステルの分散性が高いものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態の毛髪処理剤に基づき、本発明を以下に説明する。
本実施形態の毛髪処理剤は、下記(A)、(B)、及び(C)が配合された水中油型毛髪処理剤である(本実施形態の毛髪処理剤における水の配合量は、例えば70質量%以上)。また、本実施形態の毛髪処理剤には、毛髪処理剤原料として公知のものが任意に配合される。
(A):コハク酸ポリプロピレングリコールオリゴエステル
(B):ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル
(C):ベヘニルトリメチルアンモニウム塩
【0013】
((A):コハク酸ポリプロピレングリコールオリゴエステル)
原料(A)であるコハク酸ポリプロピレングリコールオリゴエステルは、ポリプロピレングリコールとコハク酸のオリゴエステルであり、一種又は二種以上のコハク酸ポリプロピレングリコールオリゴエステルが本実施形態の水中油型毛髪処理剤に配合される。原料(A)自体は、公知の油性原料の中でも毛髪のねじり剛性を特に低くできるものであるが、原料(B)及び(C)と共に配合して原料(A)を分散させれば、毛髪のねじり剛性を更に低くできる。
【0014】
毛髪のねじり剛性率を低下させるのに適している原料(A)の例としては、ポリプロピレングリコールの平均付加モル数が5以上9以下のものである。市販品としては、日清オイリオグループ社製「コスモール102」が挙げられ、当該市販品は、平均付加モル数が7のポリプロピレングリコールとコハク酸のオリゴエステル(表示名称:(PPG−7/コハク酸)コポリマー)である。
【0015】
本実施形態の水中油型毛髪処理剤における原料(A)の配合量は、例えば0.05質量%以上15質量%以下であり、0.5質量%以上10質量%以下であると良い。0.05質量%未満であると、原料(A)による毛髪特性への影響が小さくなりすぎ、15質量%を超えると、毛髪処理剤を安価にすることが困難である。
【0016】
((B):ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル)
ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテルから選ばれた一種又は二種以上が、本実施形態の水中油型毛髪処理剤に原料(B)として配合される。
【0017】
下記式(I)で表されるポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテルを、原料(B)として本実施形態の水中油型毛髪処理剤に配合すると良い。
【化2】

[上記式(I)において、平均付加モル数aとcの総和は、100以上であり、100以上、200以下が良く、平均付加モル数bは、25以上70以下であり、25以上40以下が良い。]
【0018】
原料(B)の具体例を表示名称をもって示すと、PEG/PPG−150/35コポリマー(上記式(I)におけるaとcの総和が150、bが35であるもの。)、PEG/PPG−160/30コポリマー(上記式(I)におけるaとcの総和が160、bが30であるもの。)、PEG/PPG−190/60コポリマー(上記式(I)におけるaとcの総和が190、bが60であるもの。)、PEG/PPG−200/40コポリマー(上記式(I)におけるaとcの総和が200、bが40であるもの。)、PEG/PPG−200/70コポリマー(上記式(I)におけるaとcの総和が200、bが70であるもの。)、PEG/PPG−240/60コポリマー(上記式(I)におけるaとcの総和が240、bが60であるもの。)、PEG/PPG−300/55コポリマー(上記式(I)におけるaとcの総和が300、bが55であるもの。)が挙げられる。
【0019】
本実施形態の毛髪処理剤における原料(B)の配合量は、例えば1.0質量%以上8.0質量%以下であり、1.5質量%以上8.0質量%以下が良い。
【0020】
((C):ベヘニルトリメチルアンモニウム塩)
ベヘニルトリメチルアンモニウム塩が、本実施形態の水中油型毛髪処理剤に原料(C)として配合される。この原料(C)は、ステアリルトリメチルアンモニウム塩などの原料(C)以外の4級アンモニウム塩と異なり、原料(A)の分散性を高める。
【0021】
本実施形態の毛髪処理剤における原料(C)の配合量は、特に限定されないが、例えば0.01質量%以上10質量%以下であり、0.1質量%以上5.0質量%以下が良い。なお、原料(C)の配合量を少なくすると、毛髪処理剤における油相の平均粒子径が大きくなる傾向がある。
【0022】
(任意原料)
本実施形態の毛髪処理剤には、上記原料(A)、(B)、及び(C)以外に、原料(A)の分散性を確保できる限度において、公知の毛髪処理剤原料を任意原料として配合しても良い。当該任意原料は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、高級アルコール、低級アルコール、多価アルコール、糖類、油脂、エステル油、脂肪酸、炭化水素、ロウ、高分子化合物、シリコーン、蛋白、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤などである。
【0023】
(剤型)
本実施形態の毛髪処理剤を使用する際の剤型は、特に限定されず、例えば液状、乳液状、ローション状、クリーム状、フォーム状(泡状)、霧状が挙げられる。いずれの剤型においても、原料(A)を含む油相が分散しており、その油相の平均粒子径は、例えば100nm以上500nm以下である。
【0024】
(用途)
本実施形態に係る毛髪処理剤を、ヘアケア剤、パーマ剤、カラーリング剤、ブリーチ剤、スタイリング剤等として使用すると良い。その使用の際には、その使用の目的に応じて、公知のヘアケア剤、パーマ剤、カラーリング剤、ブリーチ剤、スタイリング剤等の公知の毛髪処理剤と同様の使用方法を採用すると良い。
【0025】
なお、「ヘアケア剤」とは、毛髪の手入れ、手当て等を行うために用いられる毛髪処理剤である。ヘアケア剤としては、例えば、シャンプー、リンス、コンディショナー、トリートメント(例えば、洗い流さないトリートメント、洗い流すトリートメント、整髪兼用トリートメント、多剤式トリートメントの一構成剤、パーマの前処理のためのトリートメント、パーマの後処理のためのトリートメント、カラーリングの前処理のためのトリートメント、カラーリングの後処理のためのトリートメント、ブリーチの前処理のためのトリートメント、ブリーチの後処理のためのトリートメント)が挙げられる。「パーマ剤」とは、還元反応、酸化反応等の化学反応を利用して毛髪形状を変化させるために用いられる毛髪処理剤である。パーマ剤としては、例えば、毛髪をウェーブ状に形成するためのウェーブ剤、ウェーブ状等の毛髪を直毛に近づけるためのストレート剤が挙げられ、1剤式パーマ剤、2剤式パーマ剤の還元剤が配合された第1剤及び2剤式パーマ剤の酸化剤が配合された第2剤のいずれも本実施形態に係る毛髪処理剤に該当する。「カラーリング剤」とは、毛髪を着色するために用いられる毛髪処理剤である。カラーリング剤としては、例えば直接染料が配合された染毛料、毛髪の染毛時に反応が必要になる反応型染料が配合された染毛剤、毛髪への着色を一時的に施す毛髪着色料が挙げられる。「ブリーチ剤」とは、毛髪の色素を脱色させるために用いられる毛髪処理剤である。「スタイリング剤」とは、髪型を一時的に保持するために用いられる毛髪処理剤である。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱することがない限り、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0027】
実施例及び比較例の毛髪処理剤を調製し、原料(A)であるコハク酸ポリプロピレングリコールオリゴエステルの分散性を確認した。また、一部の毛髪処理剤を用いて毛髪を処理し、その処理した毛髪のねじり剛性率を測定した。詳細は以下の通りである。
【0028】
(毛髪処理剤)
80℃以上に加熱した下記油相に、ディスパ攪拌羽根で攪拌(回転数3000〜4000rpm)しつつ、80℃以上の水を徐々に添加した。水の添加が完全に終了した後、攪拌を継続しながら、常温になるまで水冷して実施例及び比較例の各毛髪処理剤を調製した。但し、比較例2bのみは、原料(A)であるコハク酸ポリプロピレングリコールオリゴエステルを、そのまま毛髪処理剤とした。
【0029】
実施例及び比較例の毛髪処理剤の調製で用いた油相は、下記表1〜2に記載の原料を80℃以上の温度で混合したものであり、原料の配合質量比は、同表に記載の数値比とした(表中の数値は、毛髪処理剤における配合濃度である。)。表1〜2に記載の、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムの配合についてはClariant社製「GENAMIN KDM−P」を用い、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムの配合については東邦化学工業社製「カチナール STC−25W」を用いた。
【0030】
(分散性の評価)
「分散状態」と「平均粒子径」のいずれかにより、毛髪処理剤における原料(A)の分散性を評価した。評価基準等は以下の通りとした。
【0031】
分散状態(製造後)
○:製造してから間も無く、目視により、2つの相及びクリーミングが確認されなかった(分散が十分であった。)。
△:製造してから間も無く、目視により、クリーミングが確認された。
×:製造してから間も無く、目視により、2つの相が確認された。
【0032】
平均粒子径
製造してから間も無くの各毛髪処理剤における油相の体積平均粒子径を、日機装社製「Microtrac MT3000」を用いて測定し、この測定値を平均粒子径とした。
【0033】
(毛髪処理)
一般女性から採取した毛髪を、過酸化水素5.8質量%、アンモニア1.3質量%の水溶液に15分間浸漬し、洗浄後、温風乾燥させた。これら浸漬から乾燥までを20回繰り返した毛髪を、毛髪処理における対象毛髪とした。対象毛髪を、毛髪処理剤中に5分間又は3時間浸漬した後、毛髪表面の毛髪処理剤を拭き取ることで毛髪処理とした。
【0034】
(ねじり剛性率)
毛髪10本のねじり剛性率を測定し、平均値を算出した。ここでのねじり剛性率は、カトーテック社製ねじり試験機「KES−YN1」を用いて測定した。測定条件は、温度25℃、湿度50%の恒温恒湿室内に毛髪を24時間以上放置し、この毛髪の長径と短径を測定した後、ねじり試験機にセットし、120度/secの速度で左右に3回転ねじった。
【0035】
下記表1〜2に毛髪処理剤に配合した原料、分散状態、平均粒子径、ねじり剛性率を示す。
【0036】
【表1】

【0037】
上記1は、原料(B)及び(C)の一方又は全てが配合されなかった比較例1a〜1hでは、製造後の分散状態が「×(2つの相が確認された。)」又は「△(クリーミングが確認された。)」であったことから、原料(A)の分散性が不十分であったことを示す。一方、上記表1は、原料(B)及び(C)が共に配合された実施例1a〜1cでは、製造後の分散状態が「○(分散が十分。)」であったことから、原料(B)及び(C)の双方を配合することで原料(A)の分散性が高まることを示す。
【0038】
【表2】

上記表2における実施例2のねじり剛性率は、比較例2a及び2bのいずれよりも低い値であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)、(B)、及び(C)が配合された水中油型毛髪処理剤。
(A):コハク酸ポリプロピレングリコールオリゴエステル
(B):ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル
(C):ベヘニルトリメチルアンモニウム塩
【請求項2】
前記(B)が、下記式(I)で表されるポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテルである請求項1に記載の水中油型毛髪処理剤。
【化1】

[上記式(I)において、平均付加モル数aとcの総和は100以上であり、平均付加モル数bは25以上70以下である。]
【請求項3】
ヘアケア剤として用いられる請求項1又は2に記載の水中油型毛髪処理剤。

【公開番号】特開2013−53074(P2013−53074A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190245(P2011−190245)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(592255176)株式会社ミルボン (138)
【Fターム(参考)】