説明

水中油型毛髪処理剤

【課題】 リンゴ酸ジイソステアリルを含む油相の平均粒子径が小さい水中油型毛髪処理剤を提供する。
【解決手段】 下記原料(A)、(B)、及び(C)が配合された水中油型毛髪処理剤。
原料(A):リンゴ酸ジイソステアリル
原料(B):ソルビトール及び/又はジプロピレングリコール
原料(C):ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンゴ酸ジイソステアリルが配合された水中油型毛髪処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
シャンプー、トリートメント、整髪剤などの公知の毛髪処理剤には、油性原料が配合されることがある。その配合される油性原料の種類によって、毛髪の艶、まとまり、ボリューム、しっとり感、柔らかさなどの毛髪特性が向上することがある。
【0003】
リンゴ酸ジイソステアリルは、コンディショニング効果を奏する油中水型の毛髪処理剤の油相を構成する成分として用いることが好ましい旨が特許文献1において開示されている(特許文献1の段落番号0027等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−1415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されている通り、リンゴ酸ジイソステアリルは毛髪処理剤に配合される原料として用いることができるが、水中油型毛髪処理剤の油相を構成する成分として用いることについては、検討されていない。
【0006】
リンゴ酸ジイソステアリルが配合された水中油型毛髪処理剤において、油相の分散性を高め、平均粒子径を微細化することができれば、毛髪の表面に油を均一に付着させることで感触の均一化を期待でき、毛髪内への油の浸透も期待できる。
【0007】
特に、リンゴ酸ジイソステアリルを含む油相を、平均粒子径が小さい状態で水相中に分散させるためには、リンゴ酸ジイソステアリルと相性良く併用される成分の検討が必要になるが、従来、リンゴ酸ジイソステアリルに着目した検討は全く行われていなかった。
【0008】
なお、毛髪処理剤において多価アルコールを配合させることで、微細エマルションの分散安定性が向上する場合があるが、仮に分散安定性を向上させることができたとしても、油相の平均粒子径を小さくすることができるとは限らない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、リンゴ酸ジイソステアリルを含む油相の分散性が良く、その油相の平均粒子径が小さい水中油型毛髪処理剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等が、リンゴ酸ジイソステアリルを含む油相の分散性向上と平均粒子径を小さくするべく鋭意検討を行った結果、ソルビトール及び/又はジプロピレングリコール、並びに、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合すれば、その分散性及び平均粒子径に有意なことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明に係る水中油型毛髪処理剤は、下記原料(A)、(B)、及び(C)が配合されたものである。
【0012】
原料(A):リンゴ酸ジイソステアリル
原料(B):ソルビトール及び/又はジプロピレングリコール
原料(C):ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
本発明に係る水中油型毛髪処理剤において、前記原料(C)は、下記式(1)で表されるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であると良い。
【0013】
【化1】

【0014】
[上記式(1)において、平均付加モル数l、m、n、o、p、及びqの総和は10以上100以下である。]
また、本発明の水中油型毛髪処理剤には、原料(D)として、HLB値が9.0以上12.0以下である下記式(2)で表される高級アルコールとポリエチレングリコールとのエーテルが更に配合されるのが好適である。当該原料(D)が配合されれば、原料(A)の分散性がより高まる。
【0015】
【化2】

【0016】
[上記式(2)において、R2は高級アルコール残基を表し、平均付加モル数yは4以上10以下である。]
また、本発明の水中油型毛髪処理剤に原料(D)が配合されている場合には、原料(C)に対する原料(D)の質量比率(D)/(C)が、0より大きく、0.07以下であることが好ましい。当該質量比率の範囲内では、原料(A)を含む油相の平均粒子径をより小さくすることが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る水中油型毛髪処理剤は、ソルビトール及び/又はジプロピレングリコール、並びに、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の配合により、リンゴ酸ジイソステアリルを含む油相の分散性が良く、当該油相の平均粒子径が小さなものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態の毛髪処理剤に基づき、本発明を以下に説明する。
【0019】
本実施形態の毛髪処理剤は、下記原料(A)、(B)、及び(C)が配合された水中油型毛髪処理剤である(本実施形態の毛髪処理剤における水の配合量は、例えば70質量%以上)。また、本実施形態の毛髪処理剤には、毛髪処理剤原料として公知のものが任意に配合される。
【0020】
原料(A):リンゴ酸ジイソステアリル
原料(B):ソルビトール及び/又はジプロピレングリコール
原料(C):ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
(1)原料(A):リンゴ酸ジイソステアリル
原料(A)であるリンゴ酸ジイソステアリルは、リンゴ酸とイソステアリルアルコールとのジエステルである。原料(A)自体は、毛髪のねじり剛性を低くできるものであるが、原料(B)及び(C)と共に配合して原料(A)を分散させれば、毛髪のねじり剛性を更に低くできる。
【0021】
本実施形態の水中油型毛髪処理剤における原料(A)の配合量の下限値は、特に限定されないが、0.05質量%が良く、0.5質量%であることが好ましい。同原料(A)の配合量の上限値は、特に限定されないが、15質量%が良く、10質量%であることが好ましい。0.05質量%未満であると、原料(A)による毛髪特性への影響が小さくなりすぎ、15質量%を超えると、毛髪処理剤を安価にすることが困難である。
【0022】
(2)原料(B):ソルビトール及び/又はジプロピレングリコール
ソルビトール及び/又はジプロピレングリコールが、本実施形態の水中油型毛髪処理剤に原料(B)として配合される。なお、毛髪処理剤における多価アルコールの配合量が同じ場合には、グリセリンや1,3−ブチレングリコールを配合する場合と比べて、ソルビトール及び/又はジプロピレングリコールを配合する場合の方が、平均粒子径を小さくすることができる。また、毛髪処理剤にソルビトールが配合されている場合には、ジプロピレングリコールが配合されている場合よりも、水相中における原料(A)を含む油相の平均粒子径を小さくすることができる。
【0023】
本実施形態の毛髪処理剤における原料(B)の配合量の下限値は、特に限定されないが、0.1質量%が良く、0.5質量%が好ましく、1.8質量%がより好ましい。同原料(B)の配合量の上限値は、特に限定されないが、15質量%が良く、10質量%が好ましく、5.0質量%がより好ましく、3.5質量%がより更に好ましい。0.1質量%以上にすることで、油相の分散性がより十分となり、15質量%以下にすることで、毛髪処理剤を安価にできる。
【0024】
(3)原料(C):ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が、本実施形態の水中油型毛髪処理剤に原料(C)として配合される。なお、毛髪処理剤における非イオン界面活性剤の配合量が同じ場合には、ポリオキシエチレンセチルエーテルを配合する場合と比べて、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合する場合の方が、微細なエマルションが得られやすい。
【0025】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合する場合、例えば、下記式(1)で表されるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれた一種又は二種以上を配合すると良い。
【0026】
【化3】

【0027】
上記式(1)において、平均付加モル数l、m、n、o、p、及びqの総和は、10以上100以下であり、当該総和の下限値は、20が好ましい。また、当該総和の上限値は、80が良く、60が好ましく、40がより好ましい。
【0028】
本実施形態の毛髪処理剤における原料(C)の配合量の下限は、特に限定されないが、1.0質量%が良く、1.5質量%であることが好ましい。また、同原料(C)の配合量の上限は、特に限定されないが、8.0質量%が良い。
【0029】
(4)任意原料
本実施形態の毛髪処理剤には、上記原料(A)、(B)、及び(C)以外に、原料(A)の分散性を確保できる限度において、公知の毛髪処理剤原料を任意原料として配合しても良い。当該任意原料は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、高級アルコール、低級アルコール、多価アルコール、糖類、油脂、エステル油、脂肪酸、炭化水素、ロウ、高分子化合物、シリコーン、蛋白、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤などである。
【0030】
以下の原料(D)を本実施形態の毛髪処理剤に配合した場合、水相中における原料(A)を含む油相の平均粒子径をさらに小さくすることができる。
【0031】
原料(D):高級アルコールとポリエチレングリコールとのエーテル
原料(D)は、HLB値が所定値の下記式(2)で表される高級アルコールとポリエチレングリコールとのエーテルである。
【0032】
【化4】

【0033】
上記式(2)において、R2はラウリル基などの高級アルコール残基を表し、平均付加モル数yは4以上10以下であることが好ましい。
【0034】
原料(D)のHLB(Hydrophile−Lipophile Balance)値の下限は9.0であることが好ましく、下限は12.0であることが好ましい。ここで、当該HLB値は、次式から算出される値を採用する。
【0035】
HLB値=E/5
E:原料(D)における平均付加モル数yから算出される酸化エチレンの質量%
原料(D)としては、例えば、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(HLB値9.7)、ポリオキシエチレン(4.2)ラウリルエーテル(HLB値10.0)、ポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテル(HLB値10.8)、ポリオキシエチレン(6)ラウリルエーテル(HLB値11.7)、ポリオキシエチレン(5)セチルエーテル(HLB値9.5)、ポリオキシエチレン(5.5)セチルエーテル(HLB値10.0)、ポリオキシエチレン(6)セチルエーテル(HLB値10.4)、ポリオキシエチレン(7)セチルエーテル(HLB値11.2)、ポリオキシエチレン(8)セチルエーテル(HLB値11.9)、ポリオキシエチレン(6)ステアリルエーテル(HLB値9.9)、ポリオキシエチレン(7)ステアリルエーテル(HLB値10.7)、ポリオキシエチレン(8)ステアリルエーテル(HLB値11.3)、ポリオキシエチレン(7)オレイルエーテル(HLB値10.7)、ポリオキシエチレン(8)オレイルエーテル(HLB値11.4)、ポリオキシエチレン(9)オレイルエーテル(HLB値11.9)、ポリオキシエチレン(10)ベヘニルエーテル(HLB値11.5)が挙げられる。原料(D)を配合する場合には、一種又は二種以上の原料(D)を配合すると良い。
【0036】
本発明の水中油型毛髪処理剤に原料(D)を配合する場合には、原料(A)を含む油相の平均粒子径をより小さくできる観点から、(原料(D)の質量/原料(C)の質量)で算出される質量比率(D)/(C)が、0より大きく、0.07以下であることが好ましい。なお、質量比率(D)/(C)の下限値は、0.02であることがより好ましい。また、質量比率(D)/(C)の上限値は、0.05であることがより好ましい。
【0037】
(5)剤型
本実施形態の毛髪処理剤を使用する際の剤型は、特に限定されず、例えば液状、乳液状、ローション状、クリーム状、フォーム状(泡状)、霧状が挙げられる。いずれの剤型においても、原料(A)を含む油相が水相中に分散しており、その油相の、レーザー回折・散乱法により測定される体積平均粒子径は、例えば30nm以上1000nm以下である。
【0038】
(6)用途
本実施形態に係る毛髪処理剤を、ヘアケア剤、パーマ剤、カラーリング剤、ブリーチ剤、スタイリング剤等として使用すると良い。その使用の際には、その使用の目的に応じて、公知のアケア剤、パーマ剤、カラーリング剤、ブリーチ剤、スタイリング剤等の公知の毛髪処理剤と同様の使用方法を採用すると良い。
【0039】
なお、「ヘアケア剤」とは、毛髪の手入れ、手当て等を行うために用いられる毛髪処理剤である。ヘアケア剤としては、例えば、シャンプー、リンス、コンディショナー、トリートメント(例えば、洗い流さないトリートメント、洗い流すトリートメント、整髪兼用トリートメント、多剤式トリートメントの一構成剤、パーマの前処理のためのトリートメント、パーマの後処理のためのトリートメント、カラーリングの前処理のためのトリートメント、カラーリングの後処理のためのトリートメント、ブリーチの前処理のためのトリートメント、ブリーチの後処理のためのトリートメント)が挙げられる。「パーマ剤」とは、還元反応、酸化反応等の化学反応を利用して毛髪形状を変化させるために用いられる毛髪処理剤である。パーマ剤としては、例えば、毛髪をウェーブ状に形成するためのウェーブ剤、ウェーブ状等の毛髪を直毛に近づけるためのストレート剤が挙げられ、1剤式パーマ剤、2剤式パーマ剤の還元剤が配合された第1剤及び2剤式パーマ剤の酸化剤が配合された第2剤のいずれも本実施形態に係る毛髪処理剤に該当する。「カラーリング剤」とは、毛髪を着色するために用いられる毛髪処理剤である。カラーリング剤としては、例えば直接染料が配合された染毛料、毛髪の染毛時に反応が必要になる反応型染料が配合された染毛剤、毛髪への着色を一時的に施す毛髪着色料が挙げられる。「ブリーチ剤」とは、毛髪の色素を脱色させるために用いられる毛髪処理剤である。「スタイリング剤」とは、髪型を一時的に保持するために用いられる毛髪処理剤である。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱することがない限り、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
実施例及び比較例の毛髪処理剤を調製し、原料(A)であるリンゴ酸ジイソステアリルを含む油相の分散性を目視確認し、平均粒子径の大きさも確認した。また、一部の毛髪処理剤を用いて毛髪を処理し、その処理した毛髪のねじり剛性率を測定した。詳細は以下の通りである。
(毛髪処理剤)
――製造例1――
実施例1−14、比較例1−6は、以下の「第1工程」〜「第3工程」に従った製造例1によって各毛髪処理剤を調製した。
【0042】
「第1工程」では、ウォーターバスを用いて、ビーカーに入れた水相(水のみ)を80℃に加温し、同様にビーカーに入れた油相(水以外)を80℃に加温して均一に溶解させた。次に、「第2工程」では、80℃に維持している油相中に、攪拌を行いながら、80℃に加温された水相を少しずつ添加した。その後、「第3工程」では、攪拌を継続しながら、水相が添加されたビーカーを氷水に漬けることで急冷させ、所望の質量比率となるまで1〜5質量%程度の水の添加を続けて終了した。なお、ここでの攪拌は、いずれの工程においても、緩やかな手攪拌により行った。
――製造例2――
実施例15−17は、以下の「a工程」〜「d工程」に従った製造例2によって各毛髪処理剤を調製した。
【0043】
「a工程」では、ウォーターバスを用いて、ビーカーに入れた水相(水のみ)を80℃に加温し、同様にビーカーに入れた油相(水以外であって、所望量の原料(C)の一部を含む)を80℃に加温して均一に溶解させた。次に、「b工程」では、製造例1の第2工程と同じように、80℃に維持している油相(水以外であって、所望量の原料(C)の一部を含む)中に、攪拌を行いながら、80℃に加温された水相(水相の全量)を少しずつ添加した。その後、「c工程」では、攪拌を継続しながら、水相が添加されたビーカーに対して、原料(C)を、所望量となるまで少しずつ添加した。ここで、最終的に得られる毛髪処理剤に配合される原料(C)の質量%は、実施例15−17のいずれについても4.8質量%として共通化させた。そして、実施例15の「a工程」では、最終的に得られる毛髪処理剤の3.8質量%の原料(C)を配合させ、「c工程」では、最終的に得られる毛髪処理剤の1.0質量%の原料(C)を添加させた。実施例16の「a工程」では、最終的に得られる毛髪処理剤の2.8質量%の原料(C)を配合させ、「c工程」では、最終的に得られる毛髪処理剤の2.0質量%の原料(C)を添加させた。実施例17の「a工程」では、最終的に得られる毛髪処理剤の1.8質量%の原料(C)を配合させ、「c工程」では、最終的に得られる毛髪処理剤の3.0質量%の原料(C)を添加させた。実施例15−17のいずれにおいても、最後の「d工程」では、攪拌を継続しながら、水相及び原料(C)が添加されたビーカーを氷水に漬けることで急冷させて終了した。なお、ここでの攪拌は、いずれの工程においても、緩やかな手攪拌により行った。
【0044】
なお、比較例7、8は、原料(A)であるリンゴ酸ジイソステアリルを、そのまま毛髪処理剤とした。
【0045】
表1−5では、原料の配合質量比を、毛髪処理剤における質量%濃度として示している。なお、表1−5において、水中油型毛髪処理剤に配合されている精製水の質量%は、全量が100質量%となる量であり、記載を省略して示している。
【0046】
表1−5において、リンゴ酸ジイソステアリルの配合については日光ケミカルズ株式会社製「NIKKOL DISM」を用い、ジプロピレングリコールの配合については株式会社ADEKA製「DPG−RF」を用い、ソルビトールの配合については花王株式会社製「ソルビトール花王(ソルビトール70質量%水溶液)」を用い、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.)の配合については日光ケミカルズ株式会社製「NIKKOL HCO−20」を用い、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(30E.O.)の配合については日光ケミカルズ株式会社製「NIKKOL HCO−30」を用い、ポリオキシエチレン(4.2)ラウリルエーテルの配合については日光ケミカルズ株式会社製「NIKKOL BL−4.2」を用いた。なお、表1−5におけるソルビトールの配合量は、「ソルビトール花王(ソルビトール70質量%水溶液)」の配合量に0.7を乗じて得られる値を示している。
【0047】
毛髪処理剤の「外観」を確認することにより、リンゴ酸ジイソステアリルの分散性を評価した。また、「平均粒子径」についても評価した。評価基準等は以下の通りとした。
――外観――
○:製造してから間も無く、目視では、クリーミングを確認できなかった(油相の分散が十分であった)。
【0048】
×:製造してから間も無く、目視により、クリーミングを確認できた。
――平均粒子径――
製造してから間も無くの各毛髪処理剤における油相の体積平均粒子径を、日機装社製「Microtrac MT3000」を用いて、レーザー回折・散乱法により測定することで求めた。
【0049】
(毛髪処理)
一般女性から採取した毛髪を、過酸化水素5.8質量%、アンモニア1.3質量%の水溶液に15分間浸漬し、洗浄後、温風乾燥させた。これら浸漬から乾燥までを20回繰り返した毛髪を、毛髪処理における対象毛髪とした。対象毛髪を、毛髪処理剤中に5分間又は3時間浸漬した後、毛髪表面の毛髪処理剤を拭き取ることで毛髪処理とした。
【0050】
(ねじり剛性率)
毛髪10本のねじり剛性率を測定し、平均値を算出することで評価を行った。ここでのねじり剛性率は、カトーテック社製ねじり試験機「KES−YN1」を用いて測定した。測定条件は、毛髪処理が行われた毛髪を温度25℃、湿度50%の恒温恒湿室内に24時間以上放置し、この毛髪の長径と短径を測定した後、ねじり試験機にセットし、120度/secの速度で左右に3回転ねじった。なお、サンプルとして用いた毛髪は、毛髪処理を行わない場合のねじり剛性率の平均値が3.93×109Paであった。
【0051】
【表1】

【0052】
表1の実施例1−2と比較例1及び5とを比較すると、外観の評価は「×」であったのは比較例1及び5であり、原料(C)又は原料(B)を欠くことにより油相の分散性が悪化したことが分かる。
【0053】
表1の実施例2と比較例2〜5を比較すると、毛髪処理剤にソルビトールが配合される場合には、その配合量が、毛髪処理剤におけるグリセリンや1,3−ブチレングリコールの配合量よりも少ない場合であっても、油相の平均粒子径が小さくなったことを確認できる。原料(B)としてソルビトールを用いた場合には、同程度の配合量のグリセリンや1,3−ブチレングリコールを用いた場合と比較して、油相の平均粒子径が50%以下となった。
【0054】
なお、表1の実施例1と比較例2および比較例4を比較すると、毛髪処理剤における多価アルコールの配合量が同程度である場合には、グリセリンや1,3−ブチレングリコールが配合されている場合よりも、ジプロピレングリコールが配合されている場合の方が、油相の平均粒子径が小さくなったことを確認できる。
【0055】
ここで、表1の実施例1と実施例2を比較すると、ソルビトールが配合されている場合の方が、ジプロピレングリコールが配合されている場合よりも、水相中における原料(A)を含む油相の平均粒子径が小さくなったことを確認できる。
【0056】
【表2】

【0057】
表2における、実施例1、5、及び6の平均粒子径対比、実施例7、及び3の平均粒子径対比、並びに、実施例8、及び4の平均粒子径対比によれば、原料(C)の配合量を増加させれば平均粒子径を小さくなった。また、表2の実施例7と実施例8とを比較すると、(C)成分を毛髪処理剤の3.0質量%程度配合した場合には、酸化エチレンの平均付加モル数の違いの影響が生じ、原料(C)の平均付加モル数が大きい方が、油相の平均粒子径を小さくすることができている。
【0058】
【表3】

【0059】
なお、表3の実施例9−12に示すように、原料(C)と原料(D)との合計量を一定にしつつ、原料(C)の一部を、ポリオキシエチレン型の非イオン界面活性剤であるポリオキシエチレン(4.2)ラウリルエーテルに換えた場合は、質量比率(D)/(C)に好適な範囲が存在することを確認できた。また、実施例10と実施例13とを比較すると、原料(C)と原料(D)とを併用している場合には、原料(B)の配合量を増やすことにより、さらに油相の平均粒子径を小さくできることが確認された。
【0060】
【表4】

【0061】
上記表4の実施例14、比較例6及び比較例7に示すように、原料(A)のみの毛髪処理剤よりも、原料(B)、(C)及び(D)のみが配合された毛髪処理剤よりも、原料(A)、(B)、(C)及び(D)が配合された毛髪処理剤によって毛髪処理された毛髪の方が、毛髪処理剤への浸漬時間が5分間である場合と3時間である場合のいずれにおいても、ねじれ剛性率が低く抑えられたことが確認できる。
【0062】
【表5】

【0063】
上記表5の実施例14−17及び比較例8に示すように、最終的な原料(C)の配合量を一定に保ちつつ、製造過程における配合タイミングを変化させた場合には(表5では、“先”と、“後”とで分けて示している。)、水相の添加がほぼ終了した後の原料(C)の添加比率を増やす方が、ねじり剛性率をより低い値にできるが、平均粒子径は大きくなることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記原料(A)、(B)、及び(C)が配合された水中油型毛髪処理剤。
原料(A):リンゴ酸ジイソステアリル
原料(B):ソルビトール及び/又はジプロピレングリコール
原料(C):ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
【請求項2】
前記原料(C)が、下記式(1)で表されるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である請求項1に記載の水中油型毛髪処理剤。
【化1】

[上記式(1)において、平均付加モル数l、m、n、o、p、及びqの総和は10以上100以下である。]
【請求項3】
原料(D)として、HLB値が9.0以上12.0以下である下記式(2)で表される高級アルコールとポリエチレングリコールとのエーテルが配合された請求項1または2に記載の水中油型毛髪処理剤。
【化2】

[上記式(2)において、R2は高級アルコール残基を表し、平均付加モル数yは4以上10以下である。]
【請求項4】
前記原料(C)に対する前記原料(D)の質量比率(D)/(C)が、0より大きく、0.07以下である請求項3に記載の水中油型毛髪処理剤。

【公開番号】特開2013−71923(P2013−71923A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213410(P2011−213410)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(592255176)株式会社ミルボン (138)
【Fターム(参考)】