説明

水中油型皮膚外用剤

【課題】高分子量ポリエチレングリコールを含有し、優れたコク感を有しながらも、低温から高温にわたる幅広い環境温度において経時的安定性に優れ、且つ、使用感の良好な水中油型皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】(a)高分子量ポリエチレングリコール、(b)高級アルコール、(c)2.0質量%未満のN−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム、および(d)非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする。高分子量ポリエチレングリコールがポリエチレングリコール20000であることが好ましく、(d)非イオン性界面活性剤は、水中油型皮膚外用剤の全体量に対して、1.0〜10.0質量%含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型皮膚外用剤に関し、さらに詳しくは、優れたコク感を有しながらも、低温から高温にわたる幅広い環境温度において優れた経時安定性を有する水中油型皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水中油型乳化組成物は、みずみずしくさっぱりした使用感を有することから、スキンケアクリーム等の皮膚化粧料において好適に適用されている。しかし、一般に、乳化組成物は本来混ざり合うことのない水相と油相とを乳化剤によって強制的に分散させたものであることから、配合する成分によっては著しく不安定になり、相の分離(離漿)を引き起こしてしまう。
【0003】
例えば、皮膚に対する保湿、収斂、角質溶解等の効果を付与する目的で有機酸塩や無機酸塩等の各種電解質を配合したり、保湿効果等を付与し、肌の上での伸びを良好にする目的で極性油分を配合したりすることが行われているが、これらは、水中油型乳化組成物の経時安定性を損なうことが知られている。
【0004】
そこで、これらの成分を水中油型皮膚外用剤に安定に配合するための方法が検討されており、代表的な例として、キサンタンガム等の水溶性高分子を配合して水相に構造粘性をもたせる方法が知られている。しかし、長期保管下での安定性を維持するには、この高分子成分を大量に配合する必要があり、それによって適用時のぬめりやのびの重さ、べたつきが生じ、使用感が著しく損なわれてしまう。
【0005】
このような事情を考慮して、キサンタンガム等の水溶性高分子に頼らずに経時安定性を改善すべく、所定値以上の粘度を持つゲル状組成物などにおいて長鎖アシルスルホン酸塩型陰イオン性界面活性剤を高級アルコールと共に配合する方法(特許文献1および2)、特定のポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタン、アニオン性界面活性剤及びIOB値1.6以上の非イオン性界面活性剤、特定構造の高級アルコールを特定比率で組み合わせて配合する方法(特許文献3)等が提案されている。
【0006】
一方、化粧料を肌に適用する際に濃厚な使用感触、いわゆる「コク感」を与えるために、高分子量ポリエチレングリコールを配合することがある。高分子量ポリエチレングリコールは、分子内のエチレンオキシドユニットの合計平均付加モル数が220から4500である高分子化合物であり、中でも、コク感の発現効果が顕著であることからポリエチレングリコール20000(PEG20000)が好適に用いられている。しかしながら、水中油型乳化組成物に高分子量ポリエチレングリコールを配合すると、コク感が向上する一方で、経時安定性が損なわれ、離漿を生じることがある。これまでに、高分子量ポリエチレングリコールを含有する水中油型乳化組成物を安定化するための手段は提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−132808号公報
【特許文献2】特開2008−44866号公報
【特許文献3】特開2008−88129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
即ち、高分子量ポリエチレングリコールを水中油型皮膚外用剤に安定に配合する新たな手段が依然として望まれている。
本発明は、コク感の向上をもたらす一方で製剤の安定性に影響を与える高分子量ポリエチレングリコールを含有し、幅広い環境温度において優れた経時的安定性を有し、且つ、使用感の良好な水中油型皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、高分子量ポリエチレングリコールを含有する水中油型皮膚外用剤を製造する際に、高級アルコールと、非イオン性界面活性剤と、N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウムとを配合することにより、十分なコク感を有すると共に、べたつきが無く使用感に優れ、かつ、経時安定性も良好な水中油型皮膚外用剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして、本発明は以下を要旨とする。
(1)(a)高分子量ポリエチレングリコール、(b)高級アルコール、(c)2.0質量%未満のN−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム、および(d)非イオン性界面活性剤を含む水中油型皮膚外用剤。
(2)(a)高分子量ポリエチレングリコールがポリエチレングリコール20000である(1)の水中油型皮膚外用剤。
(3)(d)非イオン性界面活性剤を、水中油型皮膚外用剤の全体量に対して、1.0〜10.0質量%含有する(1)または(2)の水中油型皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水中油型皮膚外用剤は、高分子量ポリエチレングリコールを含む水中油型皮膚外用剤を製造する際に、高級アルコール、N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム、および非イオン性界面活性剤を配合することにより、格段に優れた経時安定性を有し、離漿の発生を抑制することができる。また、キサンタンガムのような水溶性高分子を大量に配合する必要がないため、べたつきの発生等による使用感触の悪化もない。
さらに、十分な量の高分子量ポリエチレングリコールを安定に配合できるため、コク感に優れ、リッチな使用感触を得ることができる。
【0012】
例えば、前記特許文献1及び2には、N−アシルメチルタウリン塩と非イオン界面活性剤とを併用すると、高温での安定性が十分ではなくなることが記載されている(段落0005)。しかし、高分子量ポリエチレングリコールを配合した場合にあっては、高級アルコールに加えて、N−アシルメチルタウリン塩、特にN−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウムと非イオン性界面活性剤とを併用することにより、コク感や使用感触を損なうことなく、経時安定性を改善できることを見出したのは、従来技術の教示に反する驚くべき知見である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の水中油型皮膚外用剤は、(a)高分子量ポリエチレングリコール、(b)高級アルコール、(c)2質量%未満のN−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム、および(d)非イオン性界面活性剤を含有することを特徴とする。以下、本発明について詳述する。
【0014】
<(a)高分子量ポリエチレングリコール>
高分子量ポリエチレングリコールは、平均分子量が10000〜25000、より好ましくは15000〜25000の常温で半固形状のポリエチレングリコールを指す。当該平均分子量が10000未満であると、水中油型皮膚外用剤に十分なコク感を出すことが難しくなり、25000を超えると、乳化が困難となり、製剤が不安定化する傾向が認められる。高分子量ポリエチレングリコールは、化粧品に許容され得るものであれば特に限定されず、例えば、三洋化成工業株式会社より、商品名「PEG−20000」の名称で販売されている製品などが好ましく例示される。
【0015】
高分子量ポリエチレングリコールは、水中油型皮膚外用剤の全体量に対して、5.0質量%以下、好ましくは0.5〜3.0質量%、さらに好ましくは1.0〜3.0質量%で配合される。当該配合量が水中油型皮膚外用剤の0.5質量%未満であると水中油型皮膚外用剤に十分なコク感を出すことが難しくなり、5.0質量%を超えると水中油型皮膚外用剤の経時安定性が低下する傾向が顕著になる。
【0016】
<(b)高級アルコール>
高級アルコールとしては、化粧品、医薬品、医薬部外品等の分野において用いられ得るものであれば特に限定されるものでない、例えば、飽和直鎖一価アルコール、不飽和一価アルコールなどが挙げられる。飽和直鎖一価アルコールとしては、ドデカノール(=ラウリルアルコール)、トリデカノール、テトラデカノール(=ミリスチルアルコール)、ペンタデカノール、ヘキサデカノール(=セチルアルコール)、ヘプタデカノール、オクタデカノール(=ステアリルアルコール)、ノナデカノール、イコサノール(=アラキルアルコール)、ヘンイコサノール、ドコサノール(=ベヘニルアルコール)、トリコサノール、テトラコサノール(=カルナービルアルコール)、ペンタコサノール、ヘキサコサノール(=セリルアルコール)等が挙げられる。不飽和一価アルコールとしてはエライジルアルコール等が挙げられる。本発明では安定性等の点から飽和直鎖一価アルコールが好ましい。これらは必要に応じて1種または2種以上を用いることができる。
【0017】
高級アルコールの配合量は、水中油型皮膚外用剤の全体量に対して、10.0質量%以下であり、好ましくは1.0〜7.0質量%、さらに好ましくは2.0〜6.0質量%である。1.0質量%未満であると、十分な経時安定性が得られない傾向がある。10.0質量%を超えて配合すると、肌に塗布する際に伸びが重くなったり、べたつき感が生じる傾向がみられ好ましくない。
【0018】
<(c)N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム>
本願発明は、他の必須成分との組み合わせにおいて、N−アシルメチルタウリン塩の中でも、下記式(I)で表されるN−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウムを特に選択して配合する点に特徴を有する。
CO−N(CH)−(CHSONa (I)
式(I)中、アシル基部分(RCO−)は炭素原子数18の脂肪酸残基であるステアロイル基を表す。
【0019】
N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウムは、前記特許文献1〜3に記載されたものを含む化粧品等に従来から配合されている界面活性剤であり、例えば、日光ケミカルズ株式会社より「NIKKOL SMT」の名称で販売されている製品などが好ましく例示される。
【0020】
N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウムは、水中油型皮膚外用剤の全体量に対して2.0質量%未満、好ましくは0.1〜1.0質量%、さらに好ましくは0.1〜0.5質量%である。当該配合量が水中油型皮膚外用剤の全体量に対して、0.1質量%未満であると水中油型皮膚外用剤の経時安定性を十分に確保できない場合がある。また、2.0質量%以上配合すると、N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム自体によるべたつき感が顕著となり、水中油型皮膚外用剤の使用感触が低下する傾向がある。
【0021】
<(d)非イオン性界面活性剤>
非イオン性界面活性剤は、通常化粧品に使用されるものであり、親油性であっても親水性であってもよく、必要に応じて1種または2種以上を用いることができる。
親油性非イオン界面活性剤は、特に限定されないが、例えば、POE(3)オレイルエーテル、POE(3)ラウリルエーテル、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ジグリセリル、ペンタステアリン酸デカグリセリル、トリステアリン酸ヘキサグリセリル、POE(2)ノニルフェニルエーテル、パルミチン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、ステアリン酸プロピレングリコール、PEG(5〜7)水添ヒマシ油、トリイソステアリン酸PEG(5〜20)グリセリル、イソステアリン酸PEG(3〜8)グリセリル、トリステアリン酸PEG(3〜15)グリセリル、トリオレイン酸PEG(5〜10)グリセリル、トリイソステアリン酸PEG(10−40)水添ヒマシ油、イソステアリン酸PEG(5〜30)水添ヒマシ油、POEソルビトールステアレート、POEソルビトールイソステアレート、POEソルビトールオレエート、等を挙げることができる。
【0022】
また、親水性非イオン界面活性剤は、特に限定されないが、例えば、POE(10〜40)グリセリルモノイソステアレート、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、POE(40〜60)ヒマシ油、POE(30〜100)硬化ヒマシ油、トリイソステアリン酸PEG(40〜60)グリセリル、イソステアリン酸PEG(10〜60)グリセリル、トリオレイン酸PEG(40〜60)グリセリルイソステアリン酸PEG(40〜60)水添ヒマシ油、トリイソステアリン酸PEG−60水添ヒマシ油、ラウリン酸PEG(40〜60)水添ヒマシ油、POE(7〜20)セチルエーテル、POE(10〜50)オレイルエーテル、等を挙げることができる。
【0023】
非イオン性界面活性剤の配合量は、水中油型皮膚外用剤の全体量に対して、10.0質量%以下であり、好ましくは1.0〜7.0質量%、さらに好ましくは2.0〜6.0質量%である。1.0質量%未満であると、十分な経時安定性を得ることができず、10.0質量%を超えて配合すると、非イオン性界面活性剤自体のべたつき感が生じるため、使用感触上好ましくない。
【0024】
<上記以外の配合成分>
本発明に係る水中油型皮膚外用剤は、水中油型の乳化組成物であり、水および油分の配合は必須である。
【0025】
油分としては、一般に化粧品に用いられているものの中から安定性を損なわない範囲で選ぶことができる。望ましい油分としては、炭化水素油、シリコーン油、液体油脂、エステル油等を挙げることができる。
【0026】
炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、パラフィン、イソパラフィン、セレシン、ワセリン、水添ポリデセン等が使用できる。
【0027】
シリコーン油としては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状シリコーン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン;3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴムなどが例示される。
【0028】
液体油脂としては、パーム油、パーム核油、アマニ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、アボガド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヒマワリ油、アルモンド油、ナタネ油、ゴマ油、大豆油、落花生油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等がある。
【0029】
エステル油としては、オクタン酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソパルミチン酸オクチル、オレイン酸イソデシル、エチルヘキサン酸セチル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、コハク酸2−エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル等がある。
【0030】
また、本発明に係る水中油型皮膚外用剤には、上記の必須成分に加えて、化粧料等の皮膚外用組成物において用いられる一般的な成分を、本発明の効果を本質的に損なわない、質的または量的範囲内において配合することができる。当該一般的成分としては、例えば、上記以外の界面活性剤、増粘剤、保湿剤、粉体、アルコール類、水溶性高分子、油溶性高分子、皮膜形成剤、樹脂、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、香料、塩類、酸化防止剤、PH調整剤、キレート剤、清涼剤、抗炎症剤、美肌用成分(美白剤、細胞賦活剤、肌あれ改善剤、血行促進剤、皮膚収斂剤、抗脂漏剤等)、ビタミン類、アミノ酸類、核酸、ホルモン、包接化合物等を例示することができる。
【0031】
本発明に係る水中油型皮膚外用剤は、特に限定されないが、油相成分の配合量を約20質量%以下とするのが好ましい。ここで、油相成分とは、水中油型皮膚外用剤を製造する場合に、油相として混合して水相中に分散乳化される成分を意味するものであり、具体的には、前記油分のほか、油溶性防腐剤、油溶性紫外線吸収剤、油溶性薬剤、油性酸化防止剤、油性香料等を含む。油相成分が20質量%より多いと、使用感の面で油っぽくなり、べたつきも生じ、好ましくない。
【0032】
<水中油型皮膚外用剤の製造方法>
本発明に係る水中油型皮膚外用剤は、通常用いられる乳化組成物の製造方法によって製造することが可能である。具体的には、水相成分及び油相成分を別個に同温で混合し、攪拌しながら水相に油相を添加して分散乳化させ、適宜冷却することにより製造できる。
【0033】
<水中油型皮膚外用剤の処方形態>
本発明に係る水中油型皮膚外用剤は、保湿クリーム、エッセンス等のスキンケア化粧料、サンスクリーン、ボディクリーム等のボデイケア化粧料等、可能なすべての皮膚化粧料に利用することができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、配合量は全て、水中油型皮膚外用剤の全重量に対する質量%で表す。
【0035】
実施例に先立ち、各実施例で採用した評価方法について説明する。
【0036】
[使用性評価(コク感)]
各実施例、比較例の水中油型皮膚外用剤を手のひらに0.5gとり、顔にのばしたときの官能評価を、下記の基準に基づいて行った。
○: 非常にコク感を感じる
△: コク感はあるが、もの足りなさを感じる
×: コクが感じられず、のばし始めが軽い
【0037】
[経時安定性評価]
実施例、比較例で得た試料を、0℃、室温(25℃)、37℃の各温度にて2週間保管し、離漿が発生していないか肉眼で調べ、下記の評価基準に基づいて評価した。
(評価)
○: 試験した全ての試料で離漿が全く見られない
△: 試験した一部の試料に離漿が見られる
×: 試験した全ての試料に離漿が見られる
【0038】
(実施例1〜2および比較例1〜7)
下記表1に示す組成を有する水中油型皮膚外用剤を調製し、これを試料として、上記評価基準に従って、使用性および経時安定性の評価を行った。結果を併せて表1に示す。
(製法)
油相部((7)〜(18))と水相部((1)〜(6)および(19)〜(21))を、それぞれ70℃にて完全溶解し、油相部を水相部に添加して70℃で攪拌・乳化し、その後、65℃にてホモミキサーを用いて乳化粒子径の調整を行い、室温まで冷却して、クリームを得た。
【0039】
【表1】

【0040】
表1に示す結果から明らかなように、高分子量ポリエチレングリコール、高級アルコール、N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム、および非イオン性界面活性剤を全て含む水中油型皮膚外用剤(実施例1)は、コク感においても、低温から高温にわたる幅広い環境温度での経時安定性においても優れた結果を示した。この結果は、増粘安定剤であるキサンタンガムを全く配合しない場合であっても同様であった(実施例2)。
一方、実施例1と比べて、N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウムを含まない場合(比較例1)、N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウムを含まない代わりに非イオン性界面活性剤を変更した場合(比較例2〜4)、並びに、N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウムを含むが非イオン性界面活性剤を含まない場合(比較例5)は、コク感は十分であるが、経時安定性に劣ることが確認された。
また、水中油型皮膚外用剤にポリエチレングリコール20000を配合しないと十分なコク感が得られないこと(比較例6)、並びに、ポリエチレングリコール20000を配合しても増粘安定剤であるキサンタンガムの配合量が多すぎるとべたつきが顕著となり、却って使用性が損なわれることが改めて確認された(比較例7)。
【0041】
(実施例3および比較例8〜10)
下記表2に示す組成を有する水中油型皮膚外用剤を上記と同じ方法で調製し、これを試料として、上記評価基準に従って、使用性および経時安定性の評価を行った。結果を併せて表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
表2に示す結果から明らかなように、N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウムに代えて、これと類似する構造を有するパルミトイルメチルタウリンナトリウム(比較例8)、ココイルメチルタウリンナトリウム(比較例9)、ラウリン酸メチルタウリンナトリウム(比較例10)を同量配合しても、十分な経時安定性が得られないことが確認された。
【0044】
(実施例4〜5および比較例11)
下記表3に示す組成を有する水中油型皮膚外用剤を上記と同じ方法で調製し、これを試料として、上記評価基準に従って、使用性および経時安定性の評価を行った。結果を併せて表3に示す。
【0045】
【表3】

【0046】
表3に示す結果から明らかなように、N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウムの配合量が多すぎると、N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウムのべたつきが発生し、使用性が損なわれることが確認された。
【0047】
(実施例6: スキンケアクリーム)
配合成分 質量%
(1)イオン交換水 残余
(2)グリセリン 6.0
(3)ジプロピレングリコール 5.0
(4)1,3−ブチレングリコール 8.0
(5)ポリエチレングリコール20000 2.0
(6)キサンタンガム 0.01
(7)イソステアリン酸PEG−60グリセリル 2.0
(8)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0
(9)N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム 0.3
(10)ステアリルアルコール 1.5
(11)ベヘニルアルコール 2.2
(12)ワセリン 1.0
(13)硬化油(水添パーム油、パーム核油) 2.5
(14)エチルヘキサン酸セチル 3.0
(15)水添ポリブテン 3.0
(16)フェノキシエタノール 適量
(17)クエン酸 適量
(18)クエン酸Na 適量
(19)エデト酸・2Na 適量
【0048】
製造方法:
油相部((7)〜(16))と水相部((1)〜(6)および(17)〜(19))を、それぞれ70℃にて完全溶解し、油相部を水相部に添加して70℃で攪拌・乳化し、その後、65℃にてホモミキサーを用いて乳化粒子径の調整を行い、室温まで冷却して、クリームを得た。
このクリームについて上記と同様の方法により評価を行ったところ、肌への塗布時に十分なコク感があり、しかも経時安定性においても優れていることが確認された。
【0049】
(実施例7: 寒天マイクロカプセル配合クリーム)
配合成分 質量%
(1)イオン交換水 残余
(2)グリセリン 6.0
(3)ジプロピレングリコール 5.0
(4)1,3−ブチレングリコール 8.0
(5)ポリエチレングリコール20000 2.0
(6)キサンタンガム 0.01
(7)寒天 0.05
(8)イソステアリン酸PEG−60グリセリル 2.0
(9)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0
(10)ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 0.02
(11)N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム 0.3
(12)ステアリルアルコール 1.5
(13)ベヘニルアルコール 2.2
(14)ワセリン 1.0
(15)硬化油(水添パーム油、パーム核油) 2.5
(16)エチルヘキサン酸セチル 3.0
(17)水添ポリブテン 3.0
(18)メチルポリシロキサン 1.0
(19)ローヤルゼリーエキス 0.01
(20)フェノキシエタノール 適量
(21)クエン酸 適量
(22)クエン酸Na 適量
(23)エデト酸・2Na 適量
【0050】
製造方法:
油相部((8)〜(20))と水相部((1)〜(6)および(21)〜(23))を、それぞれ70℃にて完全溶解し、油相部を水相部に添加して70℃で攪拌・乳化し、これに別途調製した寒天マイクロカプセルパーツ(7)を添加して70℃で乳化し、その後、65℃にてホモミキサーを用いて乳化粒子径の調整を行い、室温まで冷却して、クリームを得た。
このクリームについて上記と同様の方法により評価を行ったところ、肌への塗布時に十分なコク感があり、しかも経時安定性においても優れていることが確認された。
【0051】
(実施例8: 増粘剤を用いないスキンケアクリーム)
配合成分 質量%
(1)イオン交換水 残余
(2)グリセリン 6.0
(3)ジプロピレングリコール 5.0
(4)1,3−ブチレングリコール 8.0
(5)ポリエチレングリコール20000 2.0
(6)イソステアリン酸PEG−60グリセリル 2.0
(7)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0
(8)N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム 0.3
(9)ステアリルアルコール 1.5
(10)ベヘニルアルコール 2.2
(11)ワセリン 1.0
(12)硬化油(水添パーム油、パーム核油) 2.5
(13)エチルヘキサン酸セチル 3.0
(14)水添ポリブテン 3.0
(15)フェノキシエタノール 適量
(16)クエン酸 適量
(17)クエン酸Na 適量
(18)エデト酸・2Na 適量
【0052】
製造方法:
油相部((6)〜(15))と水相部((1)〜(5)および(16)〜(18))を、それぞれ70℃にて完全溶解し、油相部を水相部に添加して70℃で攪拌・乳化し、その後、65℃にてホモミキサーを用いて乳化粒子径の調整を行い、室温まで冷却して、クリームを得た。
このクリームについて上記と同様の方法により評価を行ったところ、肌への塗布時に十分なコク感があり、しかも経時安定性においても優れていることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)高分子量ポリエチレングリコール、(b)高級アルコール、(c)2.0質量%未満のN−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム、および(d)非イオン性界面活性剤を含む水中油型皮膚外用剤。
【請求項2】
(a)高分子量ポリエチレングリコールがポリエチレングリコール20000である、請求項1に記載の水中油型皮膚外用剤。
【請求項3】
(d)非イオン性界面活性剤を、水中油型皮膚外用剤の全体量に対して、1.0〜10.0質量%含有する、請求項1または2に記載の水中油型皮膚外用剤。

【公開番号】特開2013−18724(P2013−18724A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151625(P2011−151625)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】