説明

水中洗滌装置

【課題】 海苔網等の水中の被洗滌物の表面を水中において高い洗滌力・清掃力・剥離力でもって洗滌でき、又、水中カメラで装置外周を撮影してもその領域の水を剥離物・泥等で汚濁することなく鮮明に映出して水中作業性に優れた水中洗滌装置を提供する。
【解決手段】 装置本体1に軸支した中空の回転軸3の下端に上円板4aと下円板4bとの重合した円盤4を取付け、上円板4aの下面に円盤中心を通る直接的溝を設け、重合した下円板4bとによって給水路10を形成し、下円板4bの下面周縁に環状溝13を形成し、前記給水路10の路端と環状溝との間に円周方向で且つ下向きな連通孔を設け、同連通孔でもって噴水ノズル11を形成し、回転軸3の上方にプロペラ6を取付け、又装置本体上方には水中カメラ14を設け、又タイヤ15によって走行できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海中又は河川中に設置された水中の海苔網・生簀網・定置網・船体・水中構造体の壁面等の被洗滌物の表面に付着した海藻類・ゴミ・汚れ・貝類等を、噴水流で洗滌・除去・剥離して清掃するための水中洗滌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、噴水ノズルを回転させて噴水ノズルの噴水流で被洗滌物の表面を清掃する水中洗滌装置として、特開2001−276754号公報で知られている。
しかしながら、この噴水ノズルは円周方向に向いていて、その噴水ノズルの内側上方には平板状の回転体があるが、噴水ノズルの噴水はその外側・内側いずれの側面及び外側上方も開放されている。
そのため、噴水は被清掃面に当たると外方又は内方向にあるいは外側上方へ逃げていく。そのため被清掃面に強い噴水圧力を表面に負荷させることができず、清掃力・除去力・剥離力が弱いという問題点がある。
更に、噴水の水流を表面広く放出させているので、その水流に剥離した海藻片・泥・汚れ・貝類等がともに外周に向かって拡散して、装置の周辺まで広く海水が汚濁して、水中カメラで被清掃物の表面を撮影しても表面状態が不鮮明となり、カメラを使用しても清掃の具合の画像が不鮮明であり、清掃表面の状態も分からずに正確な清掃作業が行えないという問題点がある。
【特許文献1】特開2001−276754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、高い洗滌力・清掃力・剥離力を有する水中洗滌装置を提供することにある。又第2の課題は、水中カメラによって噴水ノズルの外周の被洗滌物の表面が鮮明に撮影できて、操作性及び洗滌作業が正確に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 水中被洗滌物の表面に沿って走行できる装置本体の前記表面に対向する底部位置に、前記表面に略直角な回転軸を設け、同回転軸から半径方向に所定長さ離れた位置に噴水ノズルを配置するとともに同噴水ノズルを回転軸に連結し、同噴水ノズルに水を圧送する手段を設け、噴水ノズルを回転させながら噴水ノズルから水を噴射させて、その噴射水で前記表面を洗滌する水中洗滌装置に於いて、
噴水ノズルからの噴水流を噴水ノズルから半径方向の所定巾の環状の範囲に拘束し水流の上方及び側方からの放出を抑制し且つ下面を開放した水流封止体を取付け、噴水ノズルからの噴水流で被洗滌物の表面を環状に洗滌しながら、走行することで洗滌する表面部分を変えて表面を広く洗滌できるようにしたことを特徴とする、水中洗滌装置
2) 噴水ノズルの回転軸まわりの回転軌跡の半径より大きい領域を覆う円盤を回転軸に固着して回転できるようにし、同円盤中に噴水ノズルへの給水路を複数設け、同円盤の周縁下部に所定巾で下方が開口した環状溝を設け、給水路の路端と環状溝とを円周方向に延びた連通孔を形成し、同連通孔を噴水ノズルとし、同環状溝の溝壁でもって水流封止体が構成され、噴水ノズルのノズル口が環状溝の開口縁より下方に突出しないように且つ噴水ノズルが円周方向に向くように配置した、前記1)記載の水中洗滌装置
3) 封止体の内側側面が下方に従って回転軸方向に延びるように傾斜させ、噴水が表面と直角の方向と、その内側へ流して外向きの水流を少なくした、前記1)又は2)記載の水中洗滌装置
4) 噴水ノズル・封止体及び回転軸の回動させる駆動力が噴水ノズルの噴水の反力である、前記1)〜3)何れか記載の水中洗滌装置
5) 回転軸の上端にプロペラを取付け、回転軸の回転で同プロペラが回動されて発生するプロペラの推力によって装置本体を水中被洗滌物表面に押し付け、更に水流封止体が直接水中被洗滌物の表面と接触しないように水流封止体の下端より下方に下端を有する下り防止板を装置本体に設けた、前記1)〜4)いずれか記載の水中洗滌装置
6) 装置本体に封止体の外周の表面状態を撮影できる水中カメラを取付けた、前記1)〜4)いずれかに記載の水中洗滌装置
にある。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、封止体によって噴水流を外側面・内側面及び上方へ流出するのを防ぎ、限られた狭い環状の範囲の前方に主に向けるため、噴水エネルギーの放散が少なく、高い清掃力・除去力・剥離力を有する。又外周への水流の放散を少なくすることでカメラによる撮影の画像が鮮明にでき、清掃作業・操作を容易且つ正確にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の封止体は、回転する噴水ノズル又は回転軸に固着して一緒に回転する構造とする場合と、封止体を装置本体側に固着し、噴水ノズルのみを封止体内に回転させるようにする場合があるが、封止体と噴水ノズルとを固着してともに回動させるようにする構造の方が構造的に容易に製作できるので好ましい。
本発明で、水流封止体の内側の装置底面の中央領域を覆う面板を設け、内側中央領域から上方へ汚濁した水の流れが生じないようにすることが好ましい。
本発明の噴水ノズルは、給水路に接続されたパイプを下向きで円周方向に向くように配置又は折曲配置する方法でもよいし、肉厚の封止体に円周方向で下向きの連通孔を形成し、同連通孔を給水路に連通させるようにして形成してもよい。
封止体の内側側面は下方に従って回転軸方向(内側中心方向)に傾斜させ、封止体の外側への噴水を少なくして内側方向に向けさせることが、封止体外周辺の水の汚濁を少なくできるので好ましい。又は傾斜させる別の方法として封止体内側側面に逃水口を設けて内側中央領域へ水流を誘導させることが外側への水の流れを少なくできる。特に中央領域に前記の如く中央領域を覆う面板があれば、内側中央に向かった水流を、網の如く表面が通過し易い被洗滌物の表面から通過させ、上方への汚濁した水の流れを発生させないようにすることが好ましい。
本発明で、走行用タイヤが圧縮変形して回転する封止体が被洗滌物の表面に直接接触しないように下り防止(円)板を設けることが好ましい。
本発明の回転軸の回転させる駆動力は、噴水ノズルの噴水の反力を用いてもよいし、又高圧水を用いた水圧モータ・水中電動モータでもよい。
水中洗滌の状況が分かるように及び走行操作を容易にするために、水中カメラを1基又は複数基設けることが好ましい。
【実施例1】
【0007】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。本実施例は、海苔網洗滌のための水中洗滌装置Aであり、回転軸3の下端に上円板4aと下円板4bとを重合した円盤4を取付け、上円板4aと下円板4bとの間に円盤中心を通る給水路10を形成し、同給水路は回転軸3の中空内部と連通させ、又下円板4bの下面外周に環状溝13を形成し、上記給水路端と環状溝13とを円周方向に延びて下向きの連通孔を設け、同連通孔で噴水ノズル11とし、又環状溝13の内側面は傾斜し、更に環状溝内側の中央領域は下円板4bで閉鎖されている。更に回転軸3の上端には押し付け力発生用プロペラ6を取付け、その回転軸3の中間にスィーベル9を介して水ポンプ7の高圧水が供給できる。円板4及び噴水ノズル11は、噴水ノズルからの高圧水の噴水の反力で回転軸3とともに回転し、プロペラ6も駆動されている。装置本体1はタイヤ15を取付け、モータで駆動され、又タイヤの駆動軸に下り防止板となる下り防止円板12を取付け、更に装置本体1の上部の前後にカメラ14を2台設置し、海上側からリモコンで走行及び噴水の制御がなされるようにしている。
【0008】
図1は、実施例の斜視図である。
図2は、実施例の縦断面図である。
図3は、図2のX−X断面図である。
図4は、実施例の封止体を形成する環状溝の断面図である。
【0009】
図中、Aは実施例の水中洗滌装置、1は装置本体、2はケース、3は内部が中空で上方で閉鎖された回転軸、4は同回転軸の下端に軸着された上円板4aと下円板4bとからなる二層構造の円盤、5は回転軸の軸受、6は回転軸の上端に取付け、装置本体1を海苔網の方へ押し付けるプロペラ、7は水ポンプ、8は水ポンプの吐出口に接続したホース、9は回転軸3の途中に設けられ、同ホースを回転軸内に水を送るスィーベル、10は上円板4aの下面に設けられた円盤中心を通る溝で形成される給水路、11は同給水路と下円板4bの環状溝13との連通孔で円周方向で且つ下向きに穿孔され噴水ノズルとなる。12はタイヤ15の車軸に取付けた下り防止板となる下り防止円板、13は同下円板4bに設けた環状溝で封止体を形成する。13aは同環状溝の内側側面の傾斜面、14は装置本体1の上方に取付けた洗滌監視用水中カメラ、15は水中モータで駆動される走行用タイヤ、16はプロペラ6の水を上方に放出するダクト、Bは海苔網である。
【0010】
この実施例では、水ポンプ7で加圧された海水は、ホース8、スィーベル9、回転軸3内部、給水路10を介して同給水路の路端の連通孔の一対の噴水ノズル2に送られる。噴水ノズル11は下円板4bの下面の環状溝13内にあって、環状溝13より下方に突き出さないように且つ円周方向に傾くように配置されている。
噴水ノズル11に高圧水が送られると噴水ノズル11から高圧水を噴射するが、その噴水及びこれに伴う水流は、環状溝13の溝壁面により左右側面及び上面が拘束されているため、噴水及び水流は主に環状溝13の開口面に向けて流れ出す。これによって噴水のエネルギーを被洗滌物の表面である海苔網Bの環状の溝巾部分に集中でき、よってその洗滌力・剥離力は高いものとなる。又水流は環状溝13の溝壁面に拘束され、円盤の外周の放出することが少なくなるので外周を剥離した海苔片・ゴミ・貝類等で汚濁することが少ない。海苔網の場合は網目を噴水流の水圧で貫通してこれらの海苔片を押し出していく。
【0011】
よって水中カメラ14の海苔網表面の映像は鮮明なものにできる。
本実施例では、環状溝13の内側側面13aは傾斜しているので、水流はやや円盤4の中央部へ移動しがちとなり、円盤4の外周への放散を少なくできるものとしている。
そして、噴水ノズル11によって環状に海苔網を洗滌させながら、装置本体1をタイヤ15で走行させれば洗滌される環状部分が移動して海苔網全体を隅なくよく洗滌できる。
回転軸3は噴水ノズル11の噴水の反力によって回転させられ、噴水ノズル11は円周方向に位置を変えて均一に円周の環状領域を洗滌する。
回転軸3の回転により、プロペラ6が回転し、そのプロペラ6の推力によって装置本体1は海苔網へ押し付けられ、押付環体12は海苔網Bに密着して、洗滌力を良好の状態とする。押し付け力でタイヤ15が圧縮変形しても下方円板4bは下り防止円板12によって海苔網Bに直接接触することが防がれている。
【0012】
このように、本実施例では、噴水ノズル2の噴水エネルギーを狭い環状領域に絞り込むため、高い洗滌力・剥離力を保有できる。又、剥離した海苔片・ゴミ等の円盤外周への放出をなくして、海苔網を通過するようにするため、円盤外周の海水汚濁が少なく、水中カメラ14で水中の状態を鮮明に映し出しながら、正確な操作と洗滌状態の把握を可能とした。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、実施例の水中の海苔網の洗滌の他に、生簀網・定置網・船体・水中構造物の表面の付着・海藻・貝類・ゴミの付着の除去にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例の斜視図である。
【図2】実施例の縦断面図である。
【図3】実施例の図2のX−X断面図である。
【図4】実施例の封止体を形成する環状溝の断面図である。
【符号の説明】
【0015】
A 水中洗滌装置
B 海苔網
1 装置本体
2 ケース
3 回転軸
4 円盤
4a 上円板
4b 下円板
5 軸受
6 プロペラ
7 水ポンプ
8 ホース
9 スィーベル
10 給水路
11 噴水ノズル(連通孔)
12 下り防止円板
13 環状溝
13a 傾斜面
14 水中カメラ
15 タイヤ
16 ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中被洗滌物の表面に沿って走行できる装置本体の前記表面に対向する底部位置に、前記表面に略直角な回転軸を設け、同回転軸から半径方向に所定長さ離れた位置に噴水ノズルを配置するとともに同噴水ノズルを回転軸に連結し、同噴水ノズルに水を圧送する手段を設け、噴水ノズルを回転させながら噴水ノズルから水を噴射させて、その噴射水で前記表面を洗滌する水中洗滌装置に於いて、
噴水ノズルからの噴水流を噴水ノズルから半径方向の所定巾の環状の範囲に拘束し水流の上方及び側方からの放出を抑制し且つ下面を開放した水流封止体を取付け、噴水ノズルからの噴水流で被洗滌物の表面を環状に洗滌しながら、走行することで洗滌する表面部分を変えて表面を広く洗滌できるようにしたことを特徴とする、水中洗滌装置。
【請求項2】
噴水ノズルの回転軸まわりの回転軌跡の半径より大きい領域を覆う円盤を回転軸に固着して回転できるようにし、同円盤中に噴水ノズルへの給水路を複数設け、同円盤の周縁下部に所定巾で下方が開口した環状溝を設け、給水路の路端と環状溝とを円周方向に延びた連通孔を形成し、同連通孔を噴水ノズルとし、同環状溝の溝壁でもって水流封止体が構成され、噴水ノズルのノズル口が環状溝の開口縁より下方に突出しないように且つ噴水ノズルが円周方向に向くように配置した、請求項1記載の水中洗滌装置。
【請求項3】
封止体の内側側面が下方に従って回転軸方向に延びるように傾斜させ、噴水が表面と直角の方向と、その内側へ流して外向きの水流を少なくした、請求項1又は2記載の水中洗滌装置。
【請求項4】
噴水ノズル・封止体及び回転軸の回動させる駆動力が噴水ノズルの噴水の反力である、請求項1〜3何れか記載の水中洗滌装置。
【請求項5】
回転軸の上端にプロペラを取付け、回転軸の回転で同プロペラが回動されて発生するプロペラの推力によって装置本体を水中被洗滌物表面に押し付け、更に水流封止体が直接水中被洗滌物の表面と接触しないように水流封止体の下端より下方に下端を有する下り防止板を装置本体に設けた、請求項1〜4いずれか記載の水中洗滌装置。
【請求項6】
装置本体に封止体の外周の表面状態を撮影できる水中カメラを取付けた、請求項1〜4いずれかに記載の水中洗滌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−312155(P2006−312155A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−136722(P2005−136722)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(596106744)株式会社サンコー・テクノ (4)
【Fターム(参考)】