説明

水中用案内装置

【課題】 ダイバーのダイビングポイントに向かう遊泳を補助する。
【解決手段】 緯度及び経度方向の移動量を計測する慣性航法装置3と、その移動量の計測開始地点の位置座標、及び、エントリーポイントの位置座標を入力する入力手段4と、方位計5と、深度計6と、目的地とするダイビングポイントの位置座標と深度の情報を記憶するデータ記憶部7と、これらに接続した演算処理装置2と、この演算処理装置2より出力される各種情報を表示する表示部8を、格納容器9に収納して水中用案内装置1を形成する。慣性航法装置3による移動量の計測開始地点の位置座標に慣性航法装置3で求めた移動量を加える演算により検出される現在位置と、データ記憶部7に記憶してある目的地とするダイビングポイントの位置座標との差分から、ダイビングポイントへ向かうための方向及び距離を演算し、その方向及び距離と、ダイビングポイントの深度を、表示部8に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイビングを行うダイバーが水中でダイビングポイント等の各種目的地点を把握できるようにするための水中用案内装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海や湖でダイバーがダイビングする場合は、通常、熟練したダイバーが先導しながら一般的にダイビングポイントと云われる各地点を回るようにするか、あるいは、各ダイバーが、磁気方位計を持ち、自らの進行方向及び進行距離を把握し、これらの進行方向、進行距離、及び、周囲の景色を記憶して、その記憶に基づいてダイビングポイントに向かうようにしている。
【0003】
ところで、パルス波の水中での音速と、該パルス波の到来する方向とを基に、ダイビングを行うダイバーが水中から目的とする船の方向と該船までの距離を把握できるようにするためのダイビングシステムが従来提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
又、人がつかまるためのグリップ(取っ手)を備えた船体内に、水流推進式の電動ポンプ等の水中で推進力を生じる動力源を備えて、水中での人の遊泳を補助するための遊泳補助装置は従来知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−153450号公報
【特許文献2】特開2001−301690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来のダイビングは、熟練したダイバーの先導、又は、各ダイバーの記憶に頼ってダイビングポイントに到達するようにしているため、或るダイビングポイントを目的地とするダイビングをダイバー自身で行う場合には、相当の訓練と経験が必要とされていた。そのため、或るダイビングポイントを目的地として初心者のダイバー、あるいは、そのダイビングポイントに不慣れなダイバーがダイビングを行う場合は、先導するダイバーを必要とするというのが実情である。
【0007】
なお、特許文献1に示されたダイビングシステムは、ダイバーが船の方向と距離を把握するためのものであるため、ダイビングポイントにダイバーを案内する機能は全く備えていない。
【0008】
又、特許文献2に示されたような遊泳補助装置は、水中での人の遊泳を補助して、長距離を進む労力を低減するためには有用であるが、その進行方向を人に対して示唆する機能は全く備えていない。
【0009】
そこで、本発明は、ダイバーに対してダイビングポイント等の目的地までの方向や距離等の情報を提示すると共に、ダイビングを終了するダイバーに対してエキジットするポイントまでの方向や距離等の情報を提示することができて、先導のダイバーがいない場合や、不慣れな目的地であっても、該目的地を回るための補助になる水中用案内装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、格納容器に、地球座標上における緯度方向と経度方向の移動量を計測できるようにしてある慣性航法装置と、上記慣性航法装置による移動量の計測を開始する地点の地球座標上における位置座標、及び、エントリーポイント又はエキジットポイントの地球座標上における位置座標を入力するための入力手段と、方位計と、深度計と、目的地の名称及び地球座標上における緯度と経度の位置座標と深度の情報を記憶するデータ記憶部と、上記慣性航法装置、上記入力手段、方位計、深度計、データ記憶部を接続した演算処理装置と、上記演算処理装置より出力される各種情報を表示するための表示部を収納してなり、上記表示部に、上記慣性航法装置による移動量の計測を開始する地点の地球座標上における位置座標に上記慣性航法装置により求められる緯度方向と経度方向の移動量を加える演算により検出される位置から、上記データ記憶部に記憶された目的地の位置座標へ向かうための方向及び距離と、該目的地の深度を表示できるようにした構成とする。
【0011】
又、請求項2に対応して、水中を航走可能な水中遊泳補助装置に取り付けた格納容器に、地球座標上における緯度方向と経度方向の移動量を計測できるようにしてある慣性航法装置と、上記慣性航法装置による移動量の計測を開始する地点の地球座標上における位置座標、及び、エントリーポイント又はエキジットポイントの地球座標上における位置座標を入力するための入力手段と、方位計と、深度計と、目的地の名称及び地球座標上における緯度と経度の位置座標と深度の情報を記憶するデータ記憶部と、上記慣性航法装置、上記入力手段、方位計、深度計、データ記憶部を接続した演算処理装置と、上記演算処理装置より出力される各種情報を表示するための表示部を収納してなり、上記表示部に、上記慣性航法装置による移動量の計測を開始する地点の地球座標上における位置座標に上記慣性航法装置により求められる緯度方向と経度方向の移動量を加える演算により検出される位置から、上記データ記憶部に記憶された目的地の位置座標へ向かうための方向及び距離と、該目的地の深度を表示できるようにした構成とする。
【0012】
更に、上記構成において、演算処理装置に、水中遊泳補助装置の航走制御装置を接続して、慣性航法装置による移動量の計測を開始する地点の地球座標上における位置座標に上記慣性航法装置により求められる緯度方向と経度方向の移動量を加える演算により検出される位置から、上記データ記憶部に記憶された目的地の位置座標へ向かうための方向及び距離と、該目的地の深度に応じて、該目的地へ向かうように上記水中遊泳補助装置の航走を制御できるようにした構成とする。
【0013】
上述の各構成において、データ記憶部を、目的地の見所に関する情報を記憶させる機能を備えたものとし、慣性航法装置による移動量の計測を開始する地点の地球座標上における位置座標に上記慣性航法装置により求められる緯度方向と経度方向の移動量を加える演算により検出される位置が、上記データ記憶部に記憶された目的地の位置座標付近となると、表示部に、上記データ記憶部に記憶させてある上記目的地の見所に関する情報を表示できるようにした構成とする。
【0014】
更に、上記各構成において、格納容器に、演算処理装置に接続した音響通信装置を備えて、船に設けた音響通信装置に対して、慣性航法装置による移動量の計測を開始する地点の地球座標上における位置座標に上記慣性航法装置により求められる緯度方向と経度方向の移動量を加える演算により検出される位置の座標を送信できるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水中用案内装置によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)格納容器に、地球座標上における緯度方向と経度方向の移動量を計測できるようにしてある慣性航法装置と、上記慣性航法装置による移動量の計測を開始する地点の地球座標上における位置座標、及び、エントリーポイント又はエキジットポイントの地球座標上における位置座標を入力するための入力手段と、方位計と、深度計と、目的地の名称及び地球座標上における緯度と経度の位置座標と深度の情報を記憶するデータ記憶部と、上記慣性航法装置、上記入力手段、方位計、深度計、データ記憶部を接続した演算処理装置と、上記演算処理装置より出力される各種情報を表示するための表示部を収納してなり、上記表示部に、上記慣性航法装置による移動量の計測を開始する地点の地球座標上における位置座標に上記慣性航法装置により求められる緯度方向と経度方向の移動量を加える演算により検出される位置から、上記データ記憶部に記憶された目的地の位置座標へ向かうための方向及び距離と、該目的地の深度を表示できるようにした構成としてあるので、表示部に表示させる情報により、ダイバーに対し、目的地に向かう遊泳の案内を行うことができて、ダイバーが上記目的地により容易に到達するための補助をすることができる。
(2)目的地の観察を終えたダイバーに対しては、表示部にエントリーポイント又はエキジットポイントまでの方向と距離による情報を提供するようにすることにより、上記ダイバーに対し、エントリーポイント又はエキジットポイントに向かう遊泳を案内することができて、ダイバーが容易にエキジットするための補助をすることが可能になる。
(3)以上により、先導のダイバーがいない場合や、不慣れな目的地であっても、該目的地を回るダイバーに対して、情報提供による補助を行うことができるため、該ダイバーが、上記目的地を回り易くなる効果が期待できる。
(4)水中を航走可能な水中遊泳補助装置に取り付けた格納容器に、地球座標上における緯度方向と経度方向の移動量を計測できるようにしてある慣性航法装置と、上記慣性航法装置による移動量の計測を開始する地点の地球座標上における位置座標、及び、エントリーポイント又はエキジットポイントの地球座標上における位置座標を入力するための入力手段と、方位計と、深度計と、目的地の名称及び地球座標上における緯度と経度の位置座標と深度の情報を記憶するデータ記憶部と、上記慣性航法装置、上記入力手段、方位計、深度計、データ記憶部を接続した演算処理装置と、上記演算処理装置より出力される各種情報を表示するための表示部を収納してなり、上記表示部に、上記慣性航法装置による移動量の計測を開始する地点の地球座標上における位置座標に上記慣性航法装置により求められる緯度方向と経度方向の移動量を加える演算により検出される位置から、上記データ記憶部に記憶された目的地の位置座標へ向かうための方向及び距離と、該目的地の深度を表示できるようにした構成とすることにより、上記(1)(2)(3)と同様の効果に加えて、水中遊泳補助装置の航走を活用して、ダイバーが目的地へ速やかに到達するための補助を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の水中用案内装置の実施の一形態のシステム構成の概要を示す図である。
【図2】図1の装置における表示部の表示の一例を示す概要図である。
【図3】本発明の実施の他の形態を示すもので、システム構成の概要を示す図である。
【図4】図3の装置による船との音響通信を行う状態の概略を示す図である。
【図5】本発明の実施の更に他の形態を示すもので、(イ)は概略平面図、(ロ)は概略側面図である。
【図6】本発明の実施の更に他の形態として、図5の実施の形態の応用例を示すシステム構成の概要図である。
【図7】本発明の実施の更に他の形態として、別の水中遊泳補助装置を採用した例を示すもので、(イ)は一部切断概略平面図、(ロ)は概略側面図である。
【図8】図7の装置におけるシステム構成の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0018】
図1及び図2は本発明の水中用案内装置の実施の一形態を示すもので、以下のようにしてある。
【0019】
すなわち、図1に示す本発明の水中用案内装置1は、図示しないジャイロと複数の軸方向の加速度計を備えて加速度の2階積分により地球座標上における緯度方向と経度方向の移動量を計測できるようにしてある慣性航法装置3と、上記慣性航法装置3による移動量の計測を開始する地点の地球座標上における位置座標の入力と、エントリーポイントが上記慣性航法装置3による移動量計測開始地点と異なる場合は、該エントリーポイントの地球座標上における位置座標の入力、更に、エキジットポイントが上記エントリーポイントと異なる場合は、該エキジットポイントの地球座標上における位置座標の入力を行うための入力手段4と、本発明の水中用案内装置1自体が向いている方位を計測するための方位計5と、作用する水圧を基に本発明の水中用案内装置1が位置している深度を計測するための深度計6と、目的地としてのダイビングポイントの名称、及び、該ダイビングポイントの地球座標上における緯度と経度の位置座標と深度、更には、必要に応じて上記ダイビングポイントの情報、たとえば、見所となる地形やダイビングポイントでよく観察される生物の情報等をデータとして記憶するためのデータ記憶部7と、上記慣性航法装置3、入力手段4、方位計5、深度計6、データ記憶部7を接続したマイクロコンピュータのような演算処理装置2と、上記演算処理装置2より出力される各種情報を表示するための表示部8を備え、更に、上記入力手段4を外部よりアクセス可能に、又、深度計6を外部の水圧を計測可能に、更に、上記表示部8を外部より目視可能にした状態で上記各構成要素2,3,4,5,6,7,8を水密の格納容器9に収納した構成とする。
【0020】
詳述すると、上記入力手段4は、たとえば、或るダイビングポイントにダイビングする際に、慣性航法装置3による移動量計測開始地点が、たとえば、その近辺のダイビングショップや、エントリーするビーチの所定個所等、地球座標上で移動しない地点である場合は、その緯度及び経度をキーボード等で手入力するか、又は、適切に防水を図ることが可能な端子や通信ポートを介してデータとして入力できるようにした構成とすればよい。又、上記慣性航法装置3による移動量計測開始地点が地球座標上で移動する場合は、GPSにより計測した該地点の緯度及び経度の座標値を、適切に防水を図ることが可能な端子や通信ポートを介してデータとして入力できるようにした構成とすればよい。
【0021】
又、エントリーポイントが上記慣性航法装置3による移動量計測開始地点と異なる場合は、上記入力手段4は、上記と同様に、エントリーポイントが或るビーチの所定個所等、地球座標上で移動しない地点である場合は、その緯度及び経度をキーボード等で手入力するか、又は、適切に防水を図ることが可能な端子や通信ポートを介してデータとして入力する構成とすればよい。又、上記エントリーポイントが地球座標上で移動する場合は、GPSにより計測した該地点の緯度及び経度の座標値を、適切に防水を図ることが可能な端子や通信ポートを介してデータとして入力できるようにした構成とすればよい。
【0022】
もしくは、上記慣性航法装置3により移動量の計測を開始した後に、ダイバーがエントリーポイントに達した時点で、上記入力手段4を操作して、その時点で本発明の水中用案内装置1が配置されている位置の座標、すなわち、上記慣性航法装置3による移動量計測開始地点で移動量の計測を開始してから、その時点までに該慣性航法装置3により計測されている緯度と経度の移動量を、上記移動量計測開始地点の位置座標に加える演算を、たとえば、上記演算処理装置2で行わせて求めた位置座標を、上記エントリーポイントの位置座標として演算処理装置2へ指示できるようにした構成としてもよい。
【0023】
なお、エキジットポイントが上記エントリーポイントと異なる場合は、入力手段4は、該エキジットポイントの地球座標上における緯度及び経度を、キーボード等で手入力するか、又は、適切に防水を図ることが可能な端子や通信ポートを介してデータとして入力できるようにしてあるものとする。
【0024】
更に又、上記入力手段4は、ダイバーが行きたい目的地としてのダイビングポイントを指定するための入力や、エントリーポイントと同一又は異なるエキジットポイントでのエキジットを望む場合の入力を行うことができるようにしてあるものとする。
【0025】
上記慣性航法装置3は、上記移動量計測開始地点での移動量の計測が開始されると、所要の時間間隔で、地球座標上における緯度方向と経度方向の加速度を基に、上記移動量計測開始地点からの地球座標上における緯度方向と経度方向の移動量を順次繰り返し計測して演算処理装置2へ出力するようにしてある。
【0026】
上記演算処理装置2は、上記入力手段4により上記慣性航法装置3による移動量計測開始地点の位置座標が入力された後、上記慣性航法装置3による移動量の計測が開始されると、上記慣性航法装置3より所要の時間間隔で入力される緯度と経度の移動量の計測値と、上記移動量計測開始地点の位置座標とを基に、本発明の水中用案内装置1自身の地球座標上における緯度と経度の位置座標を常時検出するようにしてある。
【0027】
更に、上記入力手段4によりダイバーが行きたい目的地としてのダイビングポイントが指定されると、上記演算処理装置2は、上記データ記憶部7に記憶してある上記目的地となるダイビングポイントの地球座標上における緯度及び経度を呼び出して、上述したように常時検出している本発明の水中用案内装置1自身の地球座標上における緯度及び経度との差分を求め、両者の差分に基づき、該本発明の水中用案内装置1が配置されている位置から、上記目的地となるダイビングポイントまでの距離と方位を求めるようにしてある。このうち、求めた方位については、上記方位計5より入力される本発明の水中用案内装置1の向いている方位との差分を更に演算し、その結果を上記表示部8へ出力することで、該表示部8に、図2に示すように、たとえば、上記目的地となるダイビングポイントの名称10と、図中に矢印11で示すような該ダイビングポイントの方向と、該ダイビングポイントまでの距離12を表示させ、更に、データ記憶部7より呼び出した目的地となるダイビングポイントの深度13を表示させることができるようにしてある。
【0028】
又、上記演算処理装置2は、上記深度計6より入力される本発明の水中用案内装置1自身が位置している深度を、上記表示部8に現在深度14として表示させるようにしてもよい。
【0029】
更に、上記演算処理装置2は、上述したように常時検出している本発明の水中用案内装置1自身の地球座標上における緯度及び経度と、上記目的地として指定されたダイビングポイントの地球座標上における緯度及び経度との差分とにより求まる距離が、たとえば、数m以内とほぼ一致し、更に、深度計6より入力される上記本発明の水中用案内装置1が位置している深度が、上記ダイビングポイントの深度13が数m以内とほぼ一致すると、上記データ記憶部7より目的地として到達したダイビングポイントについて呼び出した見所となる地形やよく観察される生物の情報を表示できるようにしてある。これにより、本発明の水中用案内装置1を保持してエントリーしたダイバーに対し、該本発明の水中用案内装置1の表示部8に表示される目的とするダイビングポイントの方向(矢印11)、ダイビングポイントまでの距離12、ダイビングポイントの深度13を示唆して、ダイバーの遊泳を案内することができるようにしてあり、更に、該ダイビングポイント付近に到達したダイバーに対しては、上記表示部8の表示により、見所となる地形やよく観察される生物の情報を提供できるようにしてある。
【0030】
なお、上記演算処理装置2は、上記入力手段4より入力されたエントリーポイント又はエキジットポイントについての緯度及び経度と、上述したように常時検出している本発明の水中用案内装置1自身の地球座標上における緯度及び経度との差分から、上記エントリーポイント又はエキジットポイントまでの距離と方位を常時求め、更に、方位については、上記方位計5より入力される本発明の水中用案内装置1の向いている方位との差分を更に演算して、上記エントリーポイント又はエキジットポイントまでの距離と方向について、表示部8に常時表示するか、あるいは、入力手段4の操作によりいつでも表示できるように待機してあるものとする。これにより、上記ダイビングポイントの観察をした後のダイバーがエキジットを望む場合や、ダイバーが体調不良等の不測の事態が生じたことに起因してエキジットを望む場合は、ダイバーに対し、上記表示部8に常時表示、あるいは、入力手段4の操作により即表示させるようにしてある上記エントリーポイント又はエキジットポイントまでの距離と方向にしたがって遊泳を案内することができるようにしてある。
【0031】
なお、図示してないが、上記格納容器9内には、二次電池又は燃料電池のような電源を備えて、該格納容器9に設ける上記各構成要素2,3,4,5,6,7,8に電力を供給できるようにしてあるものとする。
【0032】
このように、本発明の水中用案内装置1によれば、ダイバーに対し、表示部8に表示される目的地とするダイビングポイントの方向11、ダイビングポイントまでの距離12、ダイビングポイントの深度13による情報を提供することができるため、ダイバーが、上記ダイビングポイントに向かう遊泳を案内することができて、ダイバーが上記目的地とするダイビングポイントにより容易に到達するための補助をすることができる。
【0033】
又、上記ダイビングポイントでは、ダイバーに対し、見所についての情報を、表示部8の表示により提供することができるため、該ダイビングポイントでの見所の観察の補助をすることができる。
【0034】
上記のようにして目的地としたダイビングポイントの観察を終えたダイバーに対しては、本発明の水中用案内装置1の表示部8に表示されるエントリーポイント又は予め別に設定したエキジットポイントまでの方向と距離による情報を提供することで、上記エントリーポイント又は別のエキジットポイントに向かう遊泳を案内することができて、ダイバーが容易にエキジットするための補助をすることが可能になる。
【0035】
よって、先導のダイバーがいない場合や、不慣れなダイビングポイントであっても、該ダイビングポイントを回るダイバーに対し、情報提供による補助を行うことができるため、該ダイバーが、上記ダイビングポイントを回り易くなる効果が期待できる。
【0036】
なお、上記においては、目的地として1つのダイビングポイントについての案内を行う場合について示したが、複数のダイビングポイントを、その回る順序と共に入力手段4より入力して演算処理装置2に予め目的地として設定するか、あるいは、或るダイビングポイントに到達したダイバーが、入力手段を操作することで表示部8に、データ記憶部7に記憶してあるその周辺の別のダイビングポイントまでの距離や方向等の概略を呼び出すことができるようにすると共に、一つのダイビングポイントを次の目的地として選択できるようにして、一度のダイビングで、複数の目的地としてのダイビングポイントを順次回るための案内を行うことができるようにしてもよい。
【0037】
次に、図3及び図4は本発明の実施の他の形態を示すもので、図1及び図2に示したと同様の構成において、格納容器9に音響通信装置15を設けると共に、該音響通信装置15を、演算処理装置2に接続してなる構成として水中用案内装置1aとしたものである。
【0038】
更に、上記演算処理装置2は、入力手段4により入力される慣性航法装置3による移動量計測開始地点の位置座標と、上記慣性航法装置3より所要の時間間隔で入力される緯度と経度の移動量の計測値を基に常時検出するようにしてある本実施の形態の水中用案内装置1aの自身の地球座標上における緯度と経度の位置座標を、上記音響通信装置15へ出力できるようにしてある。
【0039】
なお、上記音響通信装置15は、図4に示すように、船16に装備した音響通信装置17との間で音響通信を行うことができるようにしてあるものとする。18は本実施の形態の水中用案内装置1aを保持したダイバーを示す。
【0040】
その他の構成は図1及び図2に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0041】
以上の構成としてある本実施の形態の水中用案内装置1aによれば、図1及び図2の実施の形態と同様の効果に加えて、上記音響通信装置15と17を介した音響通信により、上記船16に対して本実施の形態の水中用案内装置1aの現在地を常に送信することができるため、該船16側で、本実施の形態の水中用案内装置1aを保持したダイバー18の現在地を容易に把握することができるようになるため、ボートエントリーするダイバー18に対し案内を行う場合により好適なものとすることができる。
【0042】
更に、上記図3及び図4の実施の形態において、水中用案内装置1aを保持したダイバー18と、船16上の人(図示せず)との間で、音響通信装置15と17を介した音響通信により、上記該ダイバーの位置している現在地より潜水許容時間内で回ることが可能なダイビングポイントの示唆のリクエストと、その返答の送受信を行わせるようにしたり、ダイバー18が保持している水中用案内装置1aの表示部に、上記船16側より音響通信装置17と15を介した音響通信により、予めデータ記憶部7に記憶させてあるエキジットを促すメッセージを表示させるための指令を発するようにする等、上記本実施の形態の水中用案内装置1aの現在地を伝える以外の情報伝達を行うことができるようにしてもよい。
【0043】
次いで、図5(イ)(ロ)は本発明の実施の更に他の形態を示すもので、図1及び図2に示した水中用案内装置1と同様の構成における格納容器9を、ダイバーがつかまるための取っ手21を備えた船体20に推進用のスラスタ22と左右旋回用のスラスタ23を備えてなる水中遊泳補助装置19における上記船体20の取っ手21付近に取り付けて、上記水中遊泳補助装置19一体型の水中用案内装置1bとしたものである。
【0044】
なお、上記格納容器9は、該格納容器9に収納した表示部8が、上記水中遊泳補助装置19の取っ手21につかまるダイバー(図示せず)が見易いように配置した状態で、該水中遊泳補助装置19の船体20に取り付けてあるものとする。その他、上記格納容器9に収納された機器構成は図1及び図2に示したものと同様としてあるものとする。
【0045】
本実施の形態によれば、ダイバーが、上記水中遊泳補助装置19の取っ手21につかまった状態で、上記表示部8に表示される目的地としてのダイビングポイントの方向11と、ダイビングポイントまでの距離12と、ダイビングポイントの深度13(図2参照)の情報を基に、上記水中遊泳補助装置19の航走方向を操作するようにさせれば、上記ダイビングポイントへ速やかに到達するための補助を行うことができるようになる。
【0046】
更に、図6は、本発明の実施の更に他の形態を示すもので、図5(イ)(ロ)に示したと同様の水中遊泳補助装置19一体型の水中用案内装置1bにおいて、水中遊泳補助装置19の推進用及び左右旋回用の各スラスタ22,23を制御するための航走制御装置24を、上記格納容器9内に収納してある演算処理装置2に接続して、該演算処理装置2で演算して上記表示部8に出力するようにしてある目的地としてのダイビングポイントの方向11と、ダイビングポイントまでの距離12と、ダイビングポイントの深度13(図2参照)の情報を、上記航走制御装置24へも出力できるようにした構成としたものである。
【0047】
上記航走制御装置24は、上記水中遊泳補助装置19の推進用及び左右旋回用の各スラスタ22,23を、上記演算処理装置2より入力される目的地となるダイビングポイントの方向11と、ダイビングポイントまでの距離12と、ダイビングポイントの深度13(図2参照)の情報を基に自動制御することができる機能を有する構成としてあるものとする。
【0048】
以上の構成としてある本実施の形態の水中用案内装置1bによれば、上記水中遊泳補助装置19を、目的地とするダイビングポイントまで自動的に航走させることが可能になるため、水中遊泳補助装置19の取り扱いに慣れていないダイバーに対しても、上記目的地とするダイビングポイントへ速やかに且つより少ない労力で到達するための補助を行うことができるようになる。
【0049】
なお、上記図6の実施の形態では、図5(イ)(ロ)に示したと同様の水中遊泳補助装置19、すなわち、船体20に推進用スラスタ22と左右旋回用スラスタ23を備えてなる構成の水中遊泳補助装置19を採用して、水中用案内装置1bに備えた航走制御装置24により、該水中遊泳補助装置19の上記推進用スラスタ22及び左右旋回用スラスタ23を自動制御するものとして示したが、水中遊泳補助装置として、図7(イ)(ロ)に示す如く、船体20の所要個所、たとえば、推進用スラスタ22の出口部分と、船体20の後部下側に、エレベータ(昇降舵)25と、ラダー(縦舵)26をそれぞれ装備してなる構成の水中遊泳補助装置19aを用いる場合は、図8に示すように、水中用案内装置1bの航走制御装置24により、上記水中遊泳補助装置19aにおけるエレベータ25とラダー26を制御対象として、演算処理装置2より入力される目的地としてのダイビングポイントの方向11と、ダイビングポイントまでの距離12と、ダイビングポイントの深度13(図2参照)の情報を基に自動制御させるようにして、該水中遊泳補助装置19aを、上記目的地となるダイビングポイントへ向けて航走させるようにすればよい。図7(イ)(ロ)及び図8において、図5(イ)(ロ)及び図6に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0050】
更には、図5(イ)(ロ)の実施の形態、図6の実施の形態、図7(イ)(ロ)及び図8の実施の形態において、水中遊泳補助装置19,19aとしては、ダイバーが取っ手21につかまった状態で水中を航走させることができ、且つ様々な方向へ向かう運動性を備えていれば、たとえば、推進用スラスタ22を船体20の側部に設けた構成としたり、スラスタ以外の推進装置を採用したり、上下方向に操舵するための別のスラスタを備えるようにしたり、船体20の所要個所に上下左右方向に操舵するための図7(イ)(ロ)に示した以外の形式の舵を備えた構成としたり、推進用スラスタ22の出口部分に設けたノズルや推進用スラスタ22自体の向きを変えることで操舵を行うようにする等、図示した以外のいかなる推進形式、操舵形式の水中遊泳補助装置を採用してもよい。
【0051】
したがって、上記水中遊泳補助装置を目的地としてのダイビングポイントまで自動的に航走させるために演算処理装置2より入力される目的地となるダイビングポイントの方向11と、ダイビングポイントまでの距離12と、ダイビングポイントの深度13(図2参照)の情報を基に、ダイバー案内装置1bの航走制御装置24で制御する対象は、上記水中遊泳補助装置の推進形式、操舵形式に応じて適宜変更してよい。
【0052】
又、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、格納容器9内にGPS(図示せず)を備えて、該GPSにより検出される地球座標上における本発明の水中用案内装置1,1a,1bの緯度及び経度を基に、慣性航法装置3による移動量計測開始地点や、エントリーポイントについての位置情報を得るようにしてもよい。
【0053】
本発明の水中用案内装置1,1a,1bは、ファンダイビング以外の商業潜水に用いるようにしてもよい。この場合は、本発明の水中用案内装置1,1a,1bが慣性航法装置3により検出される移動量を基に目的地としてのダイビングポイント付近に到達した時点で、ダイビングポイントにおける見所の情報に代えて、データ記憶部7に予め記憶してある該ダイビングポイントで行う作業内容や作業対象等についての情報を表示させるようにしてもよい。
【0054】
図2に示した表示部8における情報表示は一例であり、各種情報の配置やサイズは適宜変更してもよい。又、通常、ダイバーはダイビング用の機材の1つとして、深度計を身に付けるようにしてあることに鑑みて、表示部8における現在深度14の表示を省略してもよい。
【0055】
更には、目的地としてのダイビングポイントへ至る過程においても、本発明の水中用案内装置1,1a,1bが自身で検出している緯度及び経度を基に、上記目的地とするダイビングポイントに効率よく到達するための経路を示唆するための情報を表示させる等、表示する情報は適宜増加させてもよい。
【0056】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
1,1a,1b 水中用案内装置
2 演算処理装置
3 慣性航法装置
4 入力手段
5 方位計
6 深度計
7 データ記憶部
8 表示部
9 格納容器
11 ダイビングポイントの方向(目的地の位置座標へ向かうための方向)
12 ダイビングポイントまでの距離(目的地の位置座標へ向かうための距離)
13 ダイビングポイントの深度(目的地の深度)
16 船
15 音響通信装置
17 音響通信装置
19,19a 水中遊泳補助装置
24 航走制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
格納容器に、地球座標上における緯度方向と経度方向の移動量を計測できるようにしてある慣性航法装置と、上記慣性航法装置による移動量の計測を開始する地点の地球座標上における位置座標、及び、エントリーポイント又はエキジットポイントの地球座標上における位置座標を入力するための入力手段と、方位計と、深度計と、目的地の名称及び地球座標上における緯度と経度の位置座標と深度の情報を記憶するデータ記憶部と、上記慣性航法装置、上記入力手段、方位計、深度計、データ記憶部を接続した演算処理装置と、上記演算処理装置より出力される各種情報を表示するための表示部を収納してなり、上記表示部に、上記慣性航法装置による移動量の計測を開始する地点の地球座標上における位置座標に上記慣性航法装置により求められる緯度方向と経度方向の移動量を加える演算により検出される位置から、上記データ記憶部に記憶された目的地の位置座標へ向かうための方向及び距離と、該目的地の深度を表示できるようにした構成を有することを特徴とする水中用案内装置。
【請求項2】
水中を航走可能な水中遊泳補助装置に取り付けた格納容器に、地球座標上における緯度方向と経度方向の移動量を計測できるようにしてある慣性航法装置と、上記慣性航法装置による移動量の計測を開始する地点の地球座標上における位置座標、及び、エントリーポイント又はエキジットポイントの地球座標上における位置座標を入力するための入力手段と、方位計と、深度計と、目的地の名称及び地球座標上における緯度と経度の位置座標と深度の情報を記憶するデータ記憶部と、上記慣性航法装置、上記入力手段、方位計、深度計、データ記憶部を接続した演算処理装置と、上記演算処理装置より出力される各種情報を表示するための表示部を収納してなり、上記表示部に、上記慣性航法装置による移動量の計測を開始する地点の地球座標上における位置座標に上記慣性航法装置により求められる緯度方向と経度方向の移動量を加える演算により検出される位置から、上記データ記憶部に記憶された目的地の位置座標へ向かうための方向及び距離と、該目的地の深度を表示できるようにした構成を有することを特徴とする水中用案内装置。
【請求項3】
演算処理装置に、水中遊泳補助装置の航走制御装置を接続して、慣性航法装置による移動量の計測を開始する地点の地球座標上における位置座標に上記慣性航法装置により求められる緯度方向と経度方向の移動量を加える演算により検出される位置から、上記データ記憶部に記憶された目的地の位置座標へ向かうための方向及び距離と、該目的地の深度に応じて、該目的地へ向かうように上記水中遊泳補助装置の航走を制御できるようにした請求項2記載の水中用案内装置。
【請求項4】
データ記憶部を、目的地の見所に関する情報を記憶させる機能を備えたものとし、慣性航法装置による移動量の計測を開始する地点の地球座標上における位置座標に上記慣性航法装置により求められる緯度方向と経度方向の移動量を加える演算により検出される位置が、上記データ記憶部に記憶された目的地の位置座標付近となると、表示部に、上記データ記憶部に記憶させてある上記目的地の見所に関する情報を表示できるようにした請求項1、2又は3記載の水中用案内装置。
【請求項5】
格納容器に、演算処理装置に接続した音響通信装置を備えて、船に設けた音響通信装置に対して、慣性航法装置による移動量の計測を開始する地点の地球座標上における位置座標に上記慣性航法装置により求められる緯度方向と経度方向の移動量を加える演算により検出される位置の座標を送信できるようにした請求項1、2、3又は4記載の水中用案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−220739(P2011−220739A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87935(P2010−87935)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】