説明

水中目視検査装置

【課題】被検査面の点検を行う際に、作業員によるセッティングの手間を省き、また、反射光による映り込みを抑える形で点検が可能な水中移動装置を提供すること。
【解決手段】被検査面を撮影するCCDカメラ11と、被検査面を照射する照明装置13と、CCDカメラ11と照明装置13を収納するケース16と、ケース16と被検査面側の一端において密着した透明の防水窓12と、を備える水中目視検査装置であって、照明装置13からの照射光が防水窓12に反射して、被検査面の映像と混同することを防ぐために、防水窓12のCCDカメラ11側に偏光フィルタ12aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に液体を保有する液体タンクの内面を点検するための水中目視検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既設の原子力発電所等に設置されている液体タンクにおいて、傷等の欠陥の有無を検査する目的で内面を定期的に点検作業が行われている。
【0003】
かかる場合において、点検対象である液体タンクの内部は、放射能で汚染されているため、防護服を着用している場合であっても、人間が直接タンク内部に入って点検作業を行うことは非常に危険である。
そのため、例えば、以下の特許文献に開示されているように、遠隔操縦によって操作可能な水中移動装置が既に使用されている。
【0004】
かかる水中移動装置は、検査対象に対して撮影を行い、撮影した映像を外部のモニター等の出力装置に出力し、作業員が欠陥の有無について点検を行うといったような手順を取る方法が一般的である。
また、欠陥の有無について装置自身である程度の判断を行い、欠陥である可能性の高い部分を検知した場合にアラームを発生する場合や、また、欠陥を検知した場合に、検知した欠陥が研削によって解消可能であるものであれば、その場で研削を行うといった機能を有する装置も存在している。
【0005】
【特許文献1】特許第3453884号、「水中移動台車」
【特許文献2】特許第3648804号、「水中移動装置」
【特許文献3】特許第3896674号、「水中作業装置」
【特許文献4】特許第4235523号、「水中移動装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液体タンク内部の欠陥等を検知するために、例えば、CCDカメラが使用されている。
かかる場合において、防水目的のためにCCDカメラの被写体側の端に透明の防水窓を設置する必要がある。
【0007】
ここで、このような防水窓を設置した場合に、図1のように防水窓2での照明3の反射光4がカメラレンズ1aに入射してしまうことがあり、CCDカメラ1によって撮影する映像に、防水窓2に反射した反射光4が映りこみ、撮影した被写体が見難くなるという問題があった。
【0008】
上記問題点に関して、従来では、傘状の遮光板5を図2のようにレンズ1aと防水窓2の中間部分に設置して、アクリル窓2からの反射光4が極力CCDカメラ1のレンズ1aに映りこまないようにする方法が取られていた。
しかし、かかる遮光板の設置は作業員によって作業の度に行う必要があり、また、大気中と水中では、光の屈折率が異なることから、ピント調整機能を有していないCCDカメラ等を使用した場合には、CCDカメラを水中に入れてから角度等の微調整を行う必要であるという問題点があった。
さらに、かかる水中移動装置は、放射能を含む水中において動作するため、作業員は被爆を防止するための防護服を着込んでいる状態で上記調整作業を行う必要があるため、非常に時間を要していた。
【0009】
また、上記遮光板を用いることによって、照明に対して遮光板による円筒形の影がCCDカメラで撮影した映像に映り込んでしまい、映像の一部が暗くなってしまうという問題点があった。
【0010】
本発明は上述した問題点に鑑みて創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、被検査面の点検を行う際に、作業員によるセッティングの手間を省き、また、反射光による映り込みを抑える形で点検が可能な水中移動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、被検査面を撮影するCCDカメラと、
前記被検査面を照射する照明装置と、
前記CCDカメラと照明装置を収納するケースと、
前記ケースと前記被検査面側の一端において密着した透明の防水窓と、を備える水中目視検査装置であって、
前記照明装置からの照射光が前記防水窓に反射して、被検査面の映像と混同することを防ぐために、前記防水窓の前記CCDカメラ側に偏光フィルタを有する、ことを特徴とする水中目視検査装置が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、中央部に空洞を有する円形形状である。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明の構成によって、偏光フィルタが防水窓からの反射光がレンズに映り込むことを防ぐため、作業員が防護服を着込んだ状態で遮光板の設置作業を行うことなく、点検を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来技術によるCCDカメラの断面図である。
【図2】従来技術による遮光板を設置したCCDカメラの断面図である。
【図3】本発明によるCCDカメラの断面図である。
【図4】本発明によるCCDカメラの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施例を図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0016】
図3は、本発明によるCCDカメラの断面図である。
また、図4は、本発明によるCCDカメラの正面図である。
この図において、11はCCDカメラ、11aはレンズ、12は防水窓、13は照明装置、16はケース、17はOリングである。
【0017】
CCDカメラ11はレンズ11aを有しており、被検査面の撮影を行い、図示しない防水ケーブル等を介して、モニター等の外部の出力装置に出力を行うことが可能である。外部の出力装置に出力した映像によって、作業員は、液体タンク内における傷等の欠陥について確認を行うことができる。
CCDカメラ11の種類によっては、自動でピントを焼成することが可能なものも存在するが、本発明においては、かかる機能を有さないCCDカメラを前提としている。
【0018】
また、CCDカメラ11に研削器具(図示しない)を接続させておき、その場で処置を行うことが可能な欠陥である場合には、研削によってかかる欠陥を取り除く作業を行うことも可能である。
【0019】
防水窓12は、この例では、割れ難く、かつ、透明性が高いというメリットを有するアクリル窓であることが望ましい。
防水機能を考えるとガラスによる透明窓でも機能的には満たすことができるが、ガラスの場合には割れる可能性があり、その場合にガラスの破片によって、液体タンク内に新たな傷を作る可能性があるため、本発明には適していないものと考えられる。
【0020】
偏光フィルタ12aは、粘着層を付加したフィルムであり、の照明装置13からの光が防水窓12に反射してレンズ11aに映り込むことを防ぐためのものである。
一般に、偏光フィルタは、紫外線や反射光線等を排除し、自然光のみを透過させるという特徴を有している。
そのため、本発明においては、照射装置13からの照射光及び、被検査面(図示しない)における映像のみを透過させるが、照射装置13からの照射光について、防水窓12によって乱反射する反射光を軽減するように設定することができる。
なお、CCDカメラ11と後述する偏光フィルタ12aを付与した防水窓12との間隔は、調整を行ってCCDカメラを最適の位置に設置することも可能である。
【0021】
この構成によって、遮光板をレンズ11aと防水窓12の中間部分に設置することなく、防水窓12からの反射光がCCDカメラ11のレンズ11aに映り込むことを防ぐことができる。
よって、上記遮光板を設置するために、作業員が放射能を含む水中において被爆防止のための防護服を着込んだ状態で作業する必要がなくなり、作業員の安全性の向上及び作業時間の短縮を図ることができるというメリットを有している。
さらに、上記遮光板を用いることによって、照明に対して遮光板による円筒形の影がCCDカメラで撮影した映像に映り込んでしまい、映像の一部が暗くなってしまうという問題点も解消することができる。
【0022】
照明装置13は、この例では、LEDを想定している。
この例において、被検査対象が照明装置13による照射によって影に入らないように中央部に空洞を有する円形形状であるものを採用している。
図4において、照明装置13は、レンズ11aを中心に放射状に複数個設置されている。照明装置13の設置個数及び配置は、用途に応じて変更することが可能である。
【0023】
ケース16は、防水機能を有しており、この例においては円形形状のものを採用している。
ケース16の形状は円形に限られず、また、CCDカメラ移動機構(図示しない)等と接続する形で使用する場合には、ケース16とCCDカメラ移動機構とで接続可能な部分を有するものであってもよい。
【0024】
Oリング17は、ケース16とCCDカメラ11との摩擦を抑えるための緩衝材としての役割を果たしている。
さらに、ケース16内において、CCDカメラ11の上部にスペースが開いている場合には緩衝材(図示しない)を設置することで、ケース16とCCDカメラ11との摩擦を抑える形にしてもよい。
【0025】
なお、被検査面(図示しない)は、CCDカメラ移動機構(図示しない)が移動可能な範囲で平面でも曲面であってもよい。また、被検査面(図示しない)は、渦流探傷が可能な金属面である限り、1〜2mm程度の溶接線や起伏(凸凹)があってもよい。
また、用途に応じて、CCDカメラ移動機構に複数のCCDカメラを設置、或いはETアレイ等、他のカメラやセンサーと組み合わせて設置する形式を採用することも可能である。
【0026】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0027】
11 CCDカメラ、11a レンズ、12 防水窓、12a 偏光フィルタ、
13 照明装置、16 ケース、17 Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査面を撮影するCCDカメラと、
前記被検査面を照射する照明装置と、
前記CCDカメラと照明装置を収納するケースと、
前記ケースと前記被検査面側の一端において密着した透明の防水窓と、を備える水中目視検査装置であって、
前記照明装置からの照射光が前記防水窓に反射して、被検査面の映像と混同することを防ぐために、前記防水窓の前記CCDカメラ側に偏光フィルタを有する、ことを特徴とする水中目視検査装置。
【請求項2】
前記照明装置は、中央部に空洞を有する円形形状である、ことを特徴とする請求項1に記載の水中目視検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−122824(P2012−122824A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273303(P2010−273303)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(000198318)株式会社IHI検査計測 (132)
【Fターム(参考)】