説明

水中移動装置

【課題】ケーブルが障害物などにからみ付いた場合でも装置本体を確実に回収し得るようにした水中移動装置を提供する。
【解決手段】外部の制御盤11にケーブル12を介して接続され水中を移動可能とされた装置本体5に雌コネクタ23を取付け、外部の制御盤11からのケーブル12に雌コネクタ23に対して挿脱自在な雄コネクタ21を取付け、装置本体5に雄コネクタ21をロック及びロック解除可能なロック装置27を取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所の取水や排水のための水路の清掃や、船舶のスクリューの清掃や、原子炉の圧力容器の内面検査や、その他の海洋構造物に対する各種水中作業に用いるための水中移動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、火力発電所などにおいては、冷却用海水を取水したり排水したりするために、海と発電プラントとの間に比較的長い水路が設けられているが、この水路の路面には、種々の貝藻類が付着する。そこで、これら海洋付着生物を除去すべく、水路の路面に沿って自在に走行する水中移動装置が必要となる。
【0003】
この種の水中移動装置としては、装置本体の背側にスラストファンを備え、該スラストファンを回転させて噴流を発生させることにより、装置本体の腹側の部分を水路の水平な路面へ押し付けさせ、この状態で装置本体の腹側に設けられた駆動輪を用いて水平な水路の路面上を走行させるようにしたものなどがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記水中移動装置では、地上の制御装置と水中の装置本体との間をケーブルで接続して遠隔操作を行うようにしてあるため、ケーブルが水中にある障害物などにからみ付いた場合に、装置本体を動かせなくなる可能性がある。
【0005】
本発明は、上述の実情に鑑み、ケーブルが障害物などにからみ付いた場合でも装置本体を確実に回収し得るようにした水中移動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、外部の制御盤にケーブルを介して接続され水中を移動可能とされた装置本体に雌コネクタを取付け、外部の制御盤からのケーブルに雌コネクタに対して挿脱自在な雄コネクタを取付け、装置本体に雄コネクタをロック及びロック解除可能なロック装置を取付けたことを特徴とする水中移動装置にかかるものである。
【0007】
この場合において、雌コネクタと雄コネクタとの間に、雄コネクタを外れる方向へ付勢する離脱機構を介装しても良い。
【0008】
又、装置本体のケーブル接続部分を囲むように、ケーブル孔を備えた水密室を設け、水密室にケーブルが外れた時に閉止機構によってケーブル孔を閉じる水密蓋を設けると共に、水密室にケーブルが外れた時に水密室に圧縮空気を送る水密化用空気供給路を接続しても良い。
【0009】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0010】
装置本体側の雌コネクタに、ケーブル側の雄コネクタを挿入して、ロック機構でロックすることにより、装置本体とケーブルを簡単に接続することができるようになると共に、ロック機構によるロックを解除することにより、簡単に装置本体からケーブルを外すことができるようになる。
【0011】
この場合において、雌コネクタと雄コネクタとの間に、離脱機構を介装することにより、簡単に雄コネクタを外させることができる。
【0012】
又、装置本体のケーブル接続部分を囲むよう設けた水密室では、ケーブルが外れた時に閉止機構によって水密蓋がケーブル孔を閉じるように作用する。又、ケーブルが外れた時に水密化用空気供給路を介して水密室に圧縮空気が送られる。これにより、ケーブル孔から装置本体内部へ水が侵入することが防止される。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の水中移動装置によれば、ケーブルが障害物などにからみ付いた場合でも装置本体を確実に回収し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図示例と共に説明する。
【0015】
図1〜図6は、本発明の実施の形態の一例である。
【0016】
本発明を適用する水中移動装置自体は、任意の機構・構造のもので良いが、例えば、図1・図2に示すように、腹側が開口した装置本体ケーシング1の内部に、背側へ向けて噴流を発生するスラスタ2と、腹側に突出する駆動輪3や従動輪4を備えた装置本体5を取付けたものとする。
【0017】
又、装置本体ケーシング1の外周には、水6中にある壁面7などに吸着可能なシールスカート8が取付けられることもある。
【0018】
更に、例えば、上記装置本体ケーシング1に、超音波探触子9などを取付けることにより、超音波探傷などを行い得るようにしても良い。
【0019】
尚、10は実験用の水槽、11は水槽10の外部に置かれた制御盤、12は制御盤11と装置本体5とを接続するケーブル、13は装置本体5に設けられた、内部に水6を溜めて装置本体5の浮力を調整させるようにしたバラストタンク、14はバラストタンク13に取付けられた注水弁、15はバラストタンク13に取付けられた排気弁である。
【0020】
そして、本発明では、装置本体5の内部に圧縮空気タンク16を設け、該圧縮空気タンク16とバラストタンク13との間を、電磁弁などの浮上用空気供給弁17を備えた圧縮空気供給路18を介して接続する。更に、バラストタンク13に、内部へ水6が侵入するのを阻止する逆止弁19を備えた排水流路20を取付ける。
【0021】
次に、前記外部に置かれた制御盤11からのケーブル12の先端に雄コネクタ21を取付け、装置本体5に、雄コネクタ21が挿脱可能で、且つ、雄コネクタ21を離脱させる方向へ付勢するスプリングなどの離脱機構22を備えた雌コネクタ23を取付ける。
【0022】
更に、雄コネクタ21の側面に係合穴24を形成し、装置本体5の雌コネクタ23に、前記係合穴24と合致する貫通孔25を形成し、装置本体5に貫通孔25を通してロッド26を前記係合穴24へ挿脱自在なエアシリンダなどのロック装置27を取付け、ロック装置27のヘッド側のポート28と圧縮空気タンク16との間に、常時開放されて開閉信号29により閉止動作するようにした空気遮断用弁30を備えた開放用空気供給路31を接続する。
【0023】
又、装置本体5に対するケーブル12の差込み部分に、水密室32を設け、水密室32のケーブル孔33に、ケーブル孔33から雌コネクタ23にかけて雄コネクタ21の挿入を案内するコネクタガイド34を取付けると共に、水密室32に、スプリングなどの閉止機構35によってケーブル孔33を閉止する方向へ付勢される水密蓋36を開閉自在に取付け、水密室32と圧縮空気タンク16との間に、常時閉止されて開閉信号37により開放動作するようにした空気供給用弁38を備えた水密化用空気供給路39を接続する。
【0024】
そして、装置本体5に張力センサ40を取付けると共に、張力センサ40と雄コネクタ21との間に、過度の張力が付与された時に切断可能な切込み41を形成されたワイヤなどの張力検出索42を張設する。
【0025】
又、外部に置かれた制御盤11に、張力センサ40からの張力検出信号43を入力して、上下限値を設定可能な設定器44に設定した上限張力値45及び下限張力値46と張力検出信号43の値とを比較し、張力検出信号43の値が上限張力値45を越えた場合に張力過大警報装置47に警報発令信号48を送ると共に、装置本体5の電源スイッチ49を即座にOFFにするための停止信号50を送り、張力検出信号43の値が下限張力値46を下回った場合に張力警報装置51に警報発令信号52を送り、これらの各警報が出た場合に、確認ボタン53の入力を促す確認信号54を入出力し、且つ、切離しスイッチ55が押された場合に、切離し信号56に応じて前記浮上用空気供給弁17や空気遮断用弁30や空気供給用弁38に開閉信号57,29,37を送る演算制御装置58を設ける。
【0026】
尚、59は演算制御装置58に接続された表示装置、60は圧縮空気タンク16に取付けた圧力計である。
【0027】
次に、作動について説明する。
【0028】
予め地上で、排気弁15を開けると共に、注水弁14を介してバラストタンク13へ所要量の水を注水し、排気弁15と注水弁14を閉じることにより、装置本体5の浮力を作業を行わせようとする水6の深度に合うように調節しておく。
【0029】
そして、ケーブル12を送りながら、装置本体5を徐々に水6中へ沈めて行く。
【0030】
ケーブル12が所要の長さまで送られたら、制御盤11を操作して、ケーブル12を介し、装置本体5へ信号を送ったり給電したりすることにより、スラスタ2を駆動して、装置本体5の背側へ噴流を発生させ、装置本体5を水6中で移動させる。
【0031】
例えば、図1では、装置本体5にスラスタ2が左右に取付けられているため、両方のスラスタ2を同時に駆動することにより、装置本体5を腹側へ並進させることができる。又、どちらか一方のスラスタ2のみを駆動させることにより、装置本体5を右又は左に旋回させることができる。尚、スラスタ2は、必ずしも装置本体5の左右に取付けられているとは限らない。
【0032】
そして、上記操作を行い、装置本体5が壁面7に取付いたら、駆動輪3を用いて、装置本体5を壁面7に沿って走行させる。
【0033】
この際、シールスカート8が無いと、スラスタ2を連続的に駆動し続けない限り、装置本体5を、壁面7に取付いた状態に保たせることができないが、シールスカート8を設けることにより、装置本体5が壁面7に取付いた時に、シールスカート8が装置本体5と壁面7との間をシールすることとなるので、出力の小さいスラスタ2を間欠的に駆動させる程度で、装置本体5とシールスカート8と壁面7で囲まれた部分の内部が負圧或いは真空状態となり、装置本体5を壁面7に確実に吸着させることができるようになる。
【0034】
このようにして、壁面7に沿って装置本体5を走行させつつ、装置本体5に取付けられた超音波探触子9などにより、超音波探傷を行わせるなど、各種の作業に使用する。
【0035】
ところで、装置本体5と外部に置かれた制御盤11との間を結ぶケーブル12などが、水6中の障害物などにからみ付いたり引っ掛かったりした場合、装置本体5を動かすことができなくなり、又、回収も困難となる。
【0036】
そこで、本発明では、装置本体5に張力センサ40を取付け、張力センサ40によって、ワイヤなどの張力検出索42を介し雄コネクタ21に作用する張力を常時検出させるようにしている。
【0037】
張力センサ40で検出した張力検出信号43は、外部に置かれた制御盤11へ入れられ、制御盤11に設けられた演算制御装置58により、設定器44に設定された上限張力値45及び下限張力値46と比較される。
【0038】
その結果、張力検出信号43の値が上限張力値45を越えた場合には、張力過大警報装置47に警報発令信号48を送って警報を発令させると共に、装置本体5の電源スイッチ49に停止信号50を送り、装置本体5の電源スイッチ49を即座にOFFにさせ、装置本体5を停止させるようにする。
【0039】
或いは、張力検出信号43の値が設定した下限張力値46を下回っている場合には、張力警報装置51に警報発令信号52を送って警報のみを発令させる。
【0040】
そして、これらの各警報が出た場合に、演算制御装置58は、先ず、確認信号54を出力し、確認ボタン53の入力を促す。
【0041】
演算制御装置58は確認ボタン53の入力が行われた場合、更に切離しスイッチ55が押されると、装置本体5に設けられた浮上用空気供給弁17や空気遮断用弁30や空気供給用弁38に開閉信号57,29,37を送る。
【0042】
すると、先ず、浮上用空気供給弁17では、開閉信号57により、浮上用空気供給弁17が開き、圧縮空気タンク16内の圧縮空気が圧縮空気供給路18を介してバラストタンク13へ送られ、バラストタンク13内部の水6が逆止弁19を備えた排水流路20から排出され、装置本体5に大きな浮力が発生される。
【0043】
これと同時に、開閉信号29により空気遮断用弁30が閉じ、圧縮空気タンク16内の圧縮空気の、エアシリンダなどのロック装置27におけるヘッド側のポートへの供給が停止され、ロック装置27のロッド26が収縮動されて、雄コネクタ21のロック状態が解除される。
【0044】
すると、装置本体5に発生した浮力により、或いは更に、雌コネクタ23に備えたスプリングなどの離脱機構22の力により、雄コネクタ21が雌コネクタ23から離脱される。
【0045】
この際、ワイヤなどの張力検出索42には、切込み41が形成されているので、過度の張力が付与されることにより張力検出索42は切込み41から簡単に切断され、雄コネクタ21は確実に離脱される。
【0046】
又、開閉信号37により、空気供給用弁38が開き、圧縮空気タンク16内の圧縮空気が水密化用空気供給路39を介して水密室32へ送られ、水密室32内の水6を外部へ排出すると共に、水密室32内へ送られた圧縮空気が背圧となって、スプリングなどの閉止機構35による付勢力と共に、雄コネクタ21による係止状態が解除された水密蓋36によるケーブル孔33の閉止動作を助成し、雄コネクタ21離脱後に、ケーブル孔33から水6が装置本体5へ侵入するのを防止する。
【0047】
こうして装置本体5は、遠隔操作によってケーブル12から離脱され、浮力によって水面に浮き上がり、回収される。
【0048】
尚、本発明は、上述の実施の形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態の一例の概略透視正面図である。
【図2】図1の水中移動装置の概略側方断面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】図1の水中移動装置のケーブル接続部分の概略拡大断面図である。
【図5】図1の張力検出索の概略拡大図である。
【図6】図1の制御系統図である。
【符号の説明】
【0050】
5 装置本体
11 制御盤
12 ケーブル
21 雄コネクタ
22 離脱機構
23 雌コネクタ
27 ロック装置
32 水密室
33 ケーブル孔
35 閉止機構
36 水密蓋
39 水密化用空気供給路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の制御盤にケーブルを介して接続され水中を移動可能とされた装置本体に雌コネクタを取付け、外部の制御盤からのケーブルに雌コネクタに対して挿脱自在な雄コネクタを取付け、装置本体に雄コネクタをロック及びロック解除可能なロック装置を取付けたことを特徴とする水中移動装置。
【請求項2】
雌コネクタと雄コネクタとの間に、雄コネクタを外れる方向へ付勢する離脱機構を介装した請求項1記載の水中移動装置。
【請求項3】
装置本体のケーブル接続部分を囲むように、ケーブル孔を備えた水密室を設け、水密室にケーブルが外れた時に閉止機構によってケーブル孔を閉じる水密蓋を設けると共に、水密室にケーブルが外れた時に水密室に圧縮空気を送る水密化用空気供給路を接続した請求項1又は2記載の水中移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−21201(P2006−21201A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281661(P2005−281661)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【分割の表示】特願平8−166188の分割
【原出願日】平成8年6月26日(1996.6.26)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】