説明

水中試験用爆破装置

【課題】移送でき、且つ、遠隔から確実に爆発させることを可能にした水中試験用爆破装置を提供する。
【解決手段】発破器11と、発破器に接続されたアーミング装置13と、アーミング装置13の爆破により誘爆される補助伝爆薬16と、補助伝爆薬16の爆破により誘爆される火薬17と、発火信号を受信する無線式発火装置21と、無線式発火装置21に接続された電気雷管23と、電気雷管23に接続され爆発されると火薬17を誘爆する第1の補助起爆用爆薬25と、手動発火により点火する導火線32と、導火線32に接続された工業用雷管33と、工業用雷管33と接続され爆発されると火薬17を誘爆する第2の補助起爆用爆薬35とを備える。アーミング装置13、補助伝爆薬16、火薬17、第1の補助起爆用爆薬25及び第2の補助起爆用爆薬35は、1個の筐体53内に収納される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中試験用爆破装置に関し、特にその遠隔爆破に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遠隔制御を可能にした発火装置には、例えば「光源駆動装置に統合された発光素子群からなるアセンブリー光源、光変調手段、前記光源からの光の集光手段、投光手段および照準望遠鏡とからなる光点火発信装置部および受光部側として該点火発信装置に対向する前部に配設した受光素子筒、該受光素子筒の前面周辺に配置したコーナーリフレクターおよび前記受光素子に結合された点火制御回路手段(または発破起爆回路結合手段)等を含む受光制御装置との組み合わせてなることを特徴とする遠隔点火装置。」が提案されている(例えば特許文献1参照)。
また、「遠隔地から、特定の周波数の電波で送信したものに対し返信されたものを受信し、特定の状態を示す伝文として復調して確認できる指令装置と、この指令装置の指令を受けて作動する遠隔起爆装置本体部から構成する。遠隔起爆装置本体部には、起爆装置、発火装置、爆薬、爆薬パレット内蔵している。又、指令装置には、発火装置の待機状態や発火待機状態や回収状態等の作動状態を視覚で確認できる表示部を具備している。」というものが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−194100号公報(請求項1)
【特許文献2】特開平10−239000号公報(要約)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1及び特許文献2に記載されている点火装置は、何れも遠隔点火できるものである。しかし、海上(水上)の試験用などで使用される際には、波浪などによる外力により発火ケーブルの断線や、起爆装置の不良、爆薬の母線や索具など想定外の故障が生じる場合がある。特に、水中などでは、人的安全性の観点(爆発の危険性及び潜行深度)から容易に近づけず、遠隔から誘爆させることが困難であった。また、これらの爆薬は、大型設備を用いての設置には危険を伴うため、簡単な移送及び設置ができる構造が求められていた。また、その爆薬は、危険処理の関係からも確実な発火が求められていた。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、海上(水上)の試験用などで使用される際に安全に移送でき、且つ、遠隔から確実に爆発させることを可能にした水中試験用爆破装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る水中試験用爆破装置は、
発破器と、
発破器に接続されたアーミング装置と、
該アーミング装置の爆破により誘爆される補助伝爆薬と、
該補助伝爆薬の爆破により誘爆される火薬と、
発火信号を受信する無線式発火装置と
該無線式発火装置に接続された電気雷管と、
該電気雷管に接続され爆発されると前記火薬を誘爆する第1の補助起爆用爆薬と、
手動発火により点火する導火線と、
該導火線に接続された工業用雷管と、
該工業用雷管と接続され爆発されると前記火薬を誘爆する第2の補助起爆用爆薬と
を備え、
前記アーミング装置、前記補助伝爆薬、前記火薬、前記第1の補助起爆用爆薬及び前記第2の補助起爆用爆薬は、1個の筐体内に収納されたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る水中試験用爆破装置は、上記のように3つの系統の発火回路を備えており、そして、第1の系統の発火回路にはアーミング装置が設けられており、このため、アーミング装置が水中に投入されるまではその発火が抑制され海上(水上)移送の途中で爆発するそれがなく、安全が確保される。また、3つの系統の発火回路の内、1つの系統の発火回路での爆発が失敗したとしても他の系統の発火回路により爆発させることが可能であり、水中での確実な爆破を可能にしている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態に係る試験用爆破装置の構造図。
【図2】図1の筐体の詳細を示した一部断面図。
【図3】火薬を爆破するための系統を示した説明図。
【図4】上記の爆破装置を設置する方法を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の一実施の形態に係る試験用爆破装置の構造図であり、試験用爆破装置が水中に敷設された状態が図示されている。
図1において、海上にはブイ51が浮いており、このブイ51には吊り下げ索52を介して水中の円柱状の筐体53が連結されている。筐体53には、アーミング装置13、火薬17、補助起爆用爆薬25、35等が収納又は充填されている。アーミング装置13には電線(発火ケーブル)12が接続されており、この電線(発火ケーブル)12は母船(図示せず)に導かれている。補助起爆用爆薬25には導爆線24の一端が接続されており、導爆線24の他端が電気雷管23に接続され、この電気雷管23は無線式発火装置21に接続されている。補助起爆用爆薬35についても導爆線34の一端が接続されており、導爆線34の他端は工業用雷管33に接続されている。工業用雷管33には導火線32の一端が接続されており、導火線32の他端(端末)はブイ55上に留置されている。なお、電気雷管23は無線式発火装置21とは別体に表示されているが、無線式発火装置21内に収納させるようにしてもよい。また、工業用雷管33についてもブイ55から離して表示されているが、ブイ55上に配置するようにしてもよい。
【0010】
図2は、筐体53内の詳細を示した一部断面図である。
図2において、筐体53の上部には敷設用の浮き輪(空気式フロート)54が取り付けられている(なお、図1においては図示が省略されている。)。筐体53の上部中央にはアーミング装置13と補助伝爆薬(例えばペントライト等)16とが収納されている。筐体53の側部には、練り状の補助起爆用爆薬25及び補助起爆用爆薬35が対向するようにして充填されており、それ以外の部分には火薬(例えばTNT)17が充填されている。
【0011】
図3は、図1及び図2の構成において、試験用爆破装置の火薬を爆破するための系統を示した説明図である。
図3において、火薬を爆破するための発火回路は、本実施の形態においては3つの系統の発火回路10、20、30が設けられている。
(A)第1の系統の発火回路10は、発破器(例えばスイッチ)11、電線(例えば2条)12、アーミング装置(電気雷管14、伝爆薬15)13、及び補助伝爆薬16から構成されている。電線(2条)12は、発破器11とアーミング装置13とを接続する。この第1の系統の発火回路10においては、発破器11が操作されることにより(例えば母船上で)、アーミング装置13の電気雷管14が作動して伝爆薬15を爆破する。伝爆薬15の爆破により補助伝爆薬16が誘爆し、補助伝爆薬16の爆破により火薬17が誘爆する。なお、アーミング装置13は、規定の深度に設置されると(水圧を加えると)自動的に発火回路が形成されて起爆可能な状態になるものであり、したがって、試験用爆破装置が移送されて水中に投入・設置されるまでの安全が確保されることになる。
【0012】
(B)第2の系統の発火回路20は、無線式発火装置21、電線22、電気雷管23、導爆線(2条)24及び補助起爆用爆薬25から構成されている。電線22は無線式発火装置21と電気雷管23とを接続し、導爆線(例えば2条)24は電気雷管23と補助起爆用爆薬25とを接続する。この第2の系統の発火回路20においては、無線式発火装置21が他の送信器から発火信号を受信すると電気雷管23を作動させて導爆線24に点火し補助起爆用爆薬25を爆破させる。この補助起爆用爆薬25の爆破により火薬17が誘爆する。
【0013】
(C)第3の系統の発火回路30は、手動発火(例えばライターによる発火)、導火線32、工業用雷管33、導爆線(例えば2条)34及び補助起爆用爆薬35から構成されている。導火線32の一方の端部はブイ55上に留置され、他方の端部は工業用雷管33に接続される。導爆線34は工業用雷管33と補助起爆用爆薬35とを接続する。この第3の系統の発火回路30においては、導火線32の端末がブイ55にあり、ブイ55上で手動発火により導火線32に火が付けられると、導火線32の火が工業用雷管33を作動させて導爆線34に点火し補助起爆用爆薬35を爆破させる。この補助起爆用爆薬35の爆破により火薬17が誘爆する。
【0014】
図4は、上記の水中試験用爆破装置の設置方法を示した説明図である。
図4において、筐体53には浮き輪54が取り付けられており、筐体53は浮いた状態になっている。筐体53に対する各部の連結状態は図1と同じであり、母船から降下されたボート56によりその状態で所望の位置までえい航される(図4(a))。筐体53が所望の位置まで来た段階で浮き輪54に例えば鋭利な刃物で穴を空ける(図4(b))。浮き輪54に穴を空けたことにより筐体53が水中に降下し、図1に示された状態になる(図4(c))。
【0015】
(a)試験用爆破装置が図1に示された状態において、まず、第1系統の発火回路10を操作したときに何らかの原因で火薬が爆発しなかった場合、例えばアーミング装置13の電気雷管14の不良、電線(発火ケーブル)12の断線などがあった場合には火薬17が爆発しない可能性がある。
(b)そのような場合には、第2系統の発火回路20の無線式発火装置21に制御信号を送信し、電気雷管23を作動させて補助起爆用爆薬25を爆発させる。その爆発により火薬17を誘爆させる。
(c)仮に、第2系統の発火回路20を使用してもまだ未発火の場合には、第3の系統の発火回路30において、ブイ55に留置されている導火線32の端末を手動により発火させることにより工業用雷管33を作成させて補助起爆用爆薬35を爆発させる。その爆発により火薬17を誘爆させる。
【0016】
以上のように、本実施の形態においては、上記の3系統の発火回路10、20、30を設けたことにより、海上移送・設置時の安全が確保されるとともに、水中での確実な発火が可能になっている。
【符号の説明】
【0017】
10 第1の系統の発火回路、11 発破器、13 アーミング装置、14 電気雷管、15 伝爆薬、16 補助伝爆薬、17 火薬、20 第2の系統の発火回路、21 無線式発火装置、22 電線、23 電気雷管、24 導爆線、25 補助起爆用爆薬、30 第3の系統の発火回路、32 導火線、33 工業用雷管、34 導爆線、 35 補助起爆用爆薬、51 ブイ、 52 吊り下げ索、53 筐体、54 浮き輪、55 ブイ、56 ボート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発破器と、
発破器に接続されたアーミング装置と、
該アーミング装置の爆破により誘爆される補助伝爆薬と、
該補助伝爆薬の爆破により誘爆される火薬と、
発火信号を受信する無線式発火装置と
該無線式発火装置に接続された電気雷管と、
該電気雷管に接続され爆発されると前記火薬を誘爆する第1の補助起爆用爆薬と、
手動発火により点火する導火線と、
該導火線に接続された工業用雷管と、
該工業用雷管と接続され爆発されると前記火薬を誘爆する第2の補助起爆用爆薬と
を備え、
前記アーミング装置、前記補助伝爆薬、前記火薬、前記第1の補助起爆用爆薬及び前記第2の補助起爆用爆薬は、1個の筐体内に収納されたことを特徴とする水中試験用爆破装置。
【請求項2】
前記筐体に取り付けられた浮き輪
を備えたことを特徴とする請求項1記載の水中試験用爆破装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−122757(P2011−122757A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279620(P2009−279620)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(502116922)ユニバーサル造船株式会社 (172)
【出願人】(391038659)中国化薬株式会社 (9)