説明

水中運動用サポーター及びそれに使用する生地

【課題】滑り止めシートを設定した水中運動用サポーターにおいて、サポーター本体を構成する合成繊維編み立て生地の強度を高める。
【解決手段】表糸として、ナイロン110d/2×1本、ポリエステル150d/1×2本、裏糸として、ポリウレタン伸縮弾性糸210d×1本を使用して編み立ててなることを特徴とする生地を使用して水中運動用サポーターを製造する。「ナイロン糸 110d/2」は、ウーリー加工、双糸である。「ポリエステル糸 150d/1」は、ウーリー加工、単糸である。ポリウレタン伸縮弾性糸は、裸糸(ベアヤーン)であり、耐塩素機能を持たせている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プールでの水中ウォーキング、エクササイズ、アクアビクスで使用する水中運動用サポーター及びそれに使用する生地に関する。
【背景技術】
【0002】
健康の管理・増進のために多くの人がプールで水中ウォーキング、エクササイズ、アクアビクス等の運動を行っている。そのとき、裸足のままであれば、水の浮力のためにプールの底に足裏が確実に着地できずに転倒するようなことがあった。また、濡れたプールサイドですべって転倒するような事故もあった。
【0003】
このような問題に対して、従来、例えば、特開2000−166608、特開2008−104593に記載されているような水中・プールサイド歩行用シューズが提案されている。また、特開平11−244416号、特開2004−65752に記載されているような水中歩行用の装着具も提案されている。
【0004】
本願出願人も、特願2008−294046(現在未公開)において、「合成繊維の編み立て生地によって本体を構成し、爪先部に足指を分別して露出させる指穴を設け、爪先側裏面に滑り止めシートを設定したことを特徴とする裸足歩行用靴下」を提案した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記先願の特願2008−294046では、「合成繊維の編み立て生地」として、ナイロン、ポリエステル、スパンデックス(ポリウレタン弾性繊維)が例示されている。また、「滑り止めシート」として、ABS系弾性樹脂やゴムに滑り止め構造を設定したものが提案されている。
【0006】
この先願の上記製品は、「合成繊維の編み立て生地」と「滑り止めシート」の間で強度に大きな違いがあって、そのため「合成繊維の編み立て生地」に異常な負荷がかかり、両者の境界付近で破損する場合があることが判明した。
【0007】
本発明では、「合成繊維の編み立て生地」の素材をさらに改良し、強度をあげることにより、「滑り止めシート」との強度の違いを少なくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、表糸として、ナイロン110d/2×1本、ポリエステル150d/1×2本、裏糸として、ポリウレタン伸縮弾性糸210d×1本を使用して編み立ててなることを特徴とする水中運動用サポーター生地である。
【発明の効果】
【0009】
後記する比較実験において、本願発明の水中運動用サポーター生地はNo. 24, 27〜30であるが、他の試作品や市販品に比べ破裂試験及び摩耗試験において、優れた成績を収めた。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例及び比較例における破裂試験結果を示すグラフである。
【図2】実施例及び比較例における摩耗試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で使用する糸条は次のとおり市販されている。
(1)「ナイロン糸 110d/2」:ウーリー加工糸。双糸。三山株式会社製造「ホシカブト(品名)」
(2)「ポリエステル糸 150d/1」:ウーリー加工。単糸。三山株式会社製造。
(3)「ポリウレタン伸縮弾性糸210d 」:別名スパンデックス、「ライクラ」(デュポン社の商標)。裸糸(ベアヤーン)。オペロンテックス株式会社製造。耐塩素機能を持たせることが好ましい。
【0012】
編み生地は平編み(天竺編み)生地が普通であり、またそれで十分である。編み立ては、通常の手袋編機や靴下編機で可能である。
【0013】
最終製品である水中運動用サポーターはどのような形状のものでもよく、例えば、前掲の特開平11−244416号、特開2004−65752の水中歩行用装着具にも使用可能である。生地の使用箇所は、少なくとも着地部分を含む底部であるが、上部も含め全面的に使用することが好ましい。その際、本発明の開発のきっかけとなった「滑り止めシート」と共用するのがもっとも好ましい。
【実施例1】
【0014】
以下のとおり多数の試作品を調製し、本発明の実施例と比較した。「ナイロン糸 110d/2」は、ウーリー加工、双糸であり、三山株式会社(品名:ホシカブト)から入手した。「ポリエステル糸 150d/1」は、ウーリー加工、単糸であり、三山株式会社から入手した。「ポリウレタン(ライクラ176B-235t)210d」は、ポリウレタン伸縮弾性糸(別名:スパンテックス)、裸糸(ベアヤーン)であり、耐塩素機能を持たせている。オペロンテックス株式会社から入手可能である。編み立てに使用した編機は靴下専用横編機(株式会社島精機製作所製 製品名:SPF13G)であり、編地は平編み(天竺編み)生地である。
【0015】
【表1−1】

【表1−2】

【0016】
これらの素材について、破裂試験[JIS1018 8.17.1 A法(ミューレン形法)]及び摩耗試験[JIS1018 8.18.1 A法(ユニホーム形法)]を行った。結果は、下表2のとおりである。表2をグラフとしたのが図1及び図2である。
【0017】
【表2】

【0018】
破裂試験及び摩耗試験に関する限り、本発明の実施例であるNo. 24, 27, 28, 29, 30が優れている。履き心地に関してはNo. 29が一番優れていた。
【0019】
試作品No.28(実施例3)とNo.29(実施例4)について、実履き比較によるヒアリング調査を行った。被験者は女性5名。足のサイズ(21.5〜24.5cm)。
【0020】
【表3】

【0021】
No.29(実施例4)は、フィット感が最もちょうど良く、生地の固さもちょうどよいため、履きにくさ、締め付けによる痛みについても改善されている。したがって、現時点では、No.29(実施例4)が、表糸と裏糸のバランスが最もよい組み合わせと判断した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2000−166608
【特許文献2】特開2008−104593
【特許文献3】特開平11−244416号
【特許文献4】特開2004−65752

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表糸として、ナイロン110d/2×1本、ポリエステル150d/1×2本、裏糸として、ポリウレタン伸縮弾性糸210d×1本を使用して編み立ててなることを特徴とする水中運動用サポーター生地。
【請求項2】
少なくとも着地部分を含む底部に請求項1の生地を使用して製造したことを特徴とする水中運動用サポーター。
【請求項3】
前記着地部分に滑り止めシートを取り付けた請求項2記載の水中運動用サポーター。

【図1】
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【図2】
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