説明

水供給システムおよび水供給方法

【課題】簡略化された配管構成で、異なるユースポイントに所定の水質を満たす水を供給し、各水質の水の使用料金を容易に求めることができる水供給システムを提供する。
【解決手段】水供給システム1は、複数の水処理ユニット20a〜20cと、これらの水処理ユニット20a〜20cを複数のユースポイント31、32、33にそれぞれ接続する複数の送り配管21a〜21cと、を備える。各送り配管21a〜21cには、送水量計測手段22a〜22cおよび水質計測手段23a〜23cが設けられ、これらの計測手段は、使用量算出手段、料金算出手段および補正手段が設けられた演算処理装置24に接続されている。演算処理装置24では、各送水量計測手段22a〜22cで計測された送水量情報に基づき、所定期間内の送水量が求められ、この送水量に基づき、各ユースポイント31、32、33での各処理水の使用料金が算出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の水処理機器を備える純水製造装置を利用した水供給システムおよび水供給方法に関し、特に半導体製造工場等で用いられる超純水製造装置を利用した水供給システムおよび水供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品、医薬品、または半導体製品等の製造その他の用途に用いられる超純水を製造する装置として、前処理システム、一次純水システムおよび二次純水システム(またはサブシステム)を備える超純水製造装置が知られている。
【0003】
前処理システムは、凝集沈殿装置等を備え、市水、地下水、および地表水等の原水を被処理水として、被処理水に含まれる不溶性の懸濁性物質(SS)等の不純物が除去された前処理水を得る。一次純水システムは、脱塩装置等を備え、前処理水を被処理水として処理することにより塩類、有機物および溶存酸素等を除去して比抵抗が1〜15MΩ・cm程度の高純度の一次純水を得る。二次純水システムは、非再生型のイオン交換装置や、限外濾過(UF)膜装置等を備え、一次純水を被処理水として導入して一次純水に僅かに含まれる有機物や微粒子等を除去して、理論純水に極めて近い純度の超純水を製造する。
【0004】
このような超純水製造装置は、原水の水質や純水の使用目的等に応じて各システムの詳細な構成が異なる。例えば、純水の全有機物(TOC)濃度を低下させるため、合成吸着剤が充填された合成吸着剤塔を一次純水システムに設けた超純水製造装置が提案されている(特許文献1)。また、シリカやホウ素等を高度に除去するため、一次純水システムに電気脱イオン装置と非再生型イオン交換装置とを設けた超純水製造装置も提案されている(特許文献2)。
【0005】
このように、純水製造装置は多種類の水処理機器から構成されることから、高度な運転管理が必要とされる。このため、近年では純水製造装置の製造者が純水製造装置を運転管理して超純水を製造し、製造された純水を純水利用者に販売する形態の純水提供方法が求められている。
【0006】
ところで、純水製造装置を設置する工場等には、純水が使用される半導体製品等の製造ライン以外にも、ボイラや冷却塔等の水の使用場所(ユースポイント)が存在している。しかし、これら複数のユースポイントで使用される水に対する要求水質は異なり、例えば冷却塔用水に求められる水はSSが除去された程度の水質(以下、この水質を「Cランク」と称する)のものでよい。一方、ボイラでは、機器内部でのスケールの発生防止の観点から、カルシウム等の塩類を実質的に含まない程度の純度の水(以下、この水質を「Bランク」と称する)が求められ、半導体製品の製造ライン等では理論純水に近似する極めて高純度の水(以下、この水質を「Aランク」と称する)が求められる。
【0007】
しかし、従来、純水製造装置はAランクの水質の純水を製造する装置として工場等に配置され、高度な運転管理が必要なことから、BランクやCランクの水質の水は純水製造装置から供給されるように構成されていない。このため、純水製造装置を設置する工場等には、Aランクの水の供給システムとBランクやCランクの水質の水を供給するシステムとが混在し、配管構成等が複雑化する問題があった。
【0008】
また、従来の純水製造装置の水供給システムでは、所定の水質を満たさない純水と、所定の水質を満たす純水とを選別することが困難なため、所定の水質を満たさない純水もそのままユースポイントに供給される。このため、純水製造装置の製造者が純水利用者に純水を販売する形態の純水提供方法では、所定の水質基準を満たす純水のみを商品として提供することは困難である。
【0009】
そこで本出願人は、先に、所定の水質基準を満たす純水のみを商品として提供できる純水供給システムを提案した(特願2004−106439号)。しかしこの純水供給システムでは、純水を使用するユースポイントでの純水の使用量に基づいて課金するように構成されているため、Aランクに満たない水質の水を使用するユースポイントに水が供給された場合でも純水の使用量として加算される。あるいは、Aランクの水質の水の供給システムとBランクやCランクの水質の水を供給するシステムとが別々に構築されて混在する場合には、BランクやCランクの水質の水の使用料金の算出を簡便にするため、Aランクの水質の水の単価にBランクやCランクの水質の水の使用分を契約で上乗せするという方法が取られる。このため、グレードの低い水を使用する場合でも高水質の水の使用料金が課され、あるいはBランクやCランクの水質の水をそれほど使用していない場合でも、過剰にAランクの水質の水の単価に上乗せされて課金されるという問題がある。
【特許文献1】特公平6−30794号公報
【特許文献2】特開2003−266097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、純水製造装置を設置する工場等の水供給システムを簡略化することを目的とする。本発明はまた、複数の異なる水質の水を必要とする複数のユースポイントのそれぞれに、確実に所定水質を満たす水を供給し、しかも水質を反映した水の使用料金の課金ができる水供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するため、以下を提供する。
【0012】
(1) 互いに直列に接続され、不純物を含む水を導入してこの水から不純物を除去して送り出す複数の水処理ユニットと、前記各水処理ユニットから送り出される処理水をユースポイントに送る複数の送り配管と、を備える水供給システム。
【0013】
「水処理ユニット」とは、互いに直列に接続された水処理機器や配管等の水処理機材の一群を意味し、ユニット内に導入された被処理水は、ユニット内で実質的に貯留されることなく連続的に処理され、処理水としてユニット外に取り出される。複数の水処理ユニットは互いに直列に接続され、各水処理ユニットの間には貯水槽を設けてもよい。貯水槽の後段には、貯水槽内の水を後段の水処理ユニットに送る送液ポンプを設けてもよい。
【0014】
水処理ユニットとしては、前処理ユニット、一次純水ユニットおよび二次純水ユニット等が挙げられる。純水製造装置のうち、一次純水を製造する一次純水製造装置には、水処理ユニットとして少なくとも前処理ユニットと一次純水ユニットとが含まれ、超純水を製造する超純水製造装置には、水処理ユニットとして、前処理ユニット、一次純水ユニットに加え、二次純水ユニットが含まれる。
【0015】
なお本明細書において、「純水」には比抵抗が1〜15MΩ・cm程度の「一次純水」および比抵抗が18MΩ・cm程度の「超純水」が含まれ、「純水製造装置」には一次純水を製造する「一次純水製造装置」および超純水を製造する「超純水製造装置」が含まれるものとする。
【0016】
本発明では、複数の水処理ユニットのそれぞれに送り配管を接続し、各水処理ユニットから送り出される処理水を異なるユースポイントにそれぞれ供給するようにする。このため、各水処理ユニットから送り出される「Aランク」「Bランク」「Cランク」といった異なる種類の水質の水を純水製造装置から直接、複数のユースポイントに供給でき、純水製造装置を設置する施設の水供給システムを簡略化できる。
【0017】
(2) 前記複数の水処理ユニットは、不純物を含む原水を導入して前処理水を送り出す前処理ユニット、前記前処理水を導入して一次純水を送り出す一次純水ユニット、および前記一次純水を導入して超純水を送り出す二次純水ユニットを含む(1)に記載の水供給システム。
【0018】
前処理ユニットは、水処理機器として、凝集沈殿、加圧浮上、重力濾過器、活性炭濾過器、および精密(MF)膜やUF膜を備えた膜濾過装置等を備える。前処理ユニットには、被処理水として市水、地下水、地表水(河川水や湖沼水)等の原水が導入され、原水に含まれる疎水性有機物やコロイド物質等のSS成分等が除去された前処理水が処理水として取り出される。前処理ユニットは、送り配管により、「Cランク」の水質の水を要するユースポイント(以下、「ユースポイントC」と称する)と接続される。ユースポイントCの具体例としては、冷却塔等が挙げられ、前処理水は冷却塔用水等として利用される。
【0019】
一次純水ユニットは、水処理機器として少なくとも逆浸透(RO)膜装置、および再生型イオン交換装置を含むことが好ましく、さらに紫外線酸化装置、膜脱気装置等の脱ガス装置、MF膜装置、および電気式脱塩装置等を含んでもよい。一次純水ユニットは、前処理ユニットの後段に設けられ、配管により前処理ユニットと接続され、前処理ユニットから送り出された前処理水が被処理水として一次純水ユニットに導入される。一次純水ユニットに導入された前処理水からは、塩類や有機物、さらには溶存酸素等が除去され、比抵抗が1〜15MΩ・cm程度の一次純水が処理水として取り出される。
【0020】
一次純水ユニットは、送り配管により、「Bランク」の水質の水である脱塩水を要するユースポイント(以下、「ユースポイントB」と称する)と接続される。ユースポイントBの具体例としては、ボイラやスクラバ等が挙げられ、一次純水は、ボイラの補給水やスクラバの洗浄用水等として利用される。
【0021】
二次純水ユニットは、水処理機器として少なくともUF膜装置、非再生型イオン交換装置、および紫外線酸化装置を含むことが好ましい。二次純水ユニットは、一次純水ユニットの後段に設けられ、配管により一次純水ユニットと接続され、一次純水ユニットから送り出された一次純水が被処理水として導入される。二次純水ユニットに導入された一次純水からは、一次純水に極微量に残存する有機物や微粒子等が除去され、比抵抗が15〜18MΩ・cmまたはこれ以上の極めて純度の高い超純水が処理水として取り出される。
【0022】
二次純水ユニットは、送り配管により、「Aランク」の水質の水である超純水を要するユースポイント(以下、「ユースポイントA」と称する)と接続される。ユースポイントAの具体例としては、半導体製造工場の半導体製品洗浄ラインや液晶パネル製造工場の液晶パネル洗浄ライン等が挙げられ、超純水は、半導体製品洗浄用水や液晶パネル洗浄用水等として利用される。
【0023】
(3) 前記各送り配管に設けられ、前記各ユースポイントへ供給される処理水の送水量をそれぞれ計測する複数の送水量計測手段と、前記各送水量計測手段で計測された送水量に基づいて前記各ユースポイントの処理水の使用量をそれぞれ算出する使用量算出手段と、前記各ユースポイントに供給される処理水の単価と、前記使用量算出手段で算出された前記各ユースポイントでの処理水の使用量と、に基づいて前記各ユースポイントでの処理水の使用料金をそれぞれ算出する料金算出手段と、をさらに備える(1)または(2)に記載の水供給システム。
【0024】
送水量計測手段としては流量計等が挙げられ、使用量算出手段としては、使用量を算出させるプログラム、使用量データベースおよび中央演算処理装置(CPU)を備えるコンピュータ等が挙げられる。料金算出手段は、各水質の処理水の単価を記憶する単価データベース、使用量と単価に基づき使用料金を算出させるプログラム、およびCPUを備えるコンピュータ等が挙げられ、使用量算出手段と料金算出手段とは同一のコンピュータ等で構成されてもよい。
【0025】
本発明によれば、送水量計測手段により計測された各ユースポイントへの送水量が使用量算出手段の使用量データベースに記憶される。使用量算出手段は、料金算出手段の単価データベースに記憶された各処理水の単価と送水量とを乗じることにより、異なる水質の水の使用料金をそれぞれ算出するため、本発明によれば、異なる水質毎の使用料金を求めることができる。
【0026】
(4) 前記送り配管の少なくとも1つに設けられ、前記送り配管からユースポイントへ供給される処理水の水質を計測する水質計測手段と、前記水質計測手段で計測された処理水の水質に基づいて前記ユースポイントでの処理水の使用量を補正する補正手段と、をさらに備える(3)に記載の水供給システム。
【0027】
水質計測手段としては、pH計、電気伝導率計、TOC計、比抵抗計および溶存酸素計(DO計)が挙げられ、これらの計測器を単独または組み合わせて用いてもよい。水質計測手段は、必ずしも全ての送り配管に設ける必要はなく、少なくとも超純水が供給される送り配管に設けることが好ましい。各送り配管に水質計測手段を設ける場合は、各送り配管に設置する水質計測手段を、接続されるユースポイントで要求される水質に応じて選択することが好ましい。例えばユースポイントAに接続される送り配管には比抵抗計、TOC計、およびDO計等が、ユースポイントBに接続される送り配管には比抵抗計が、ユースポイントCに接続される送り配管には電気伝導率計が設けられる。
【0028】
本発明では、少なくとも超純水の水質を計測し、水質情報に応じて使用量の補正を行う。すなわち、超純水使用場所に供給された超純水が所定の水質を満たさない場合、使用水量を「ゼロ」とする等の補正を行なう。補正内容は、所定の水質を満たさない場合に、超純水製造者にペナルティ料金を課すものとしてもよい。
【0029】
本発明によれば、水質計測に基づく水使用量の補正により、結果として商品価値のない不良処理水(特に不良超純水)を除外して適正な水質の処理水(特に超純水)のみを選別して商品として、提供することができることになる。また、各水質計測手段により、水処理ユニットの稼動状況を把握でき、機材の交換時期やその他のメンテナンス時期を予測することもできる。
【0030】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の水供給システムを用いた水供給方法であって、前記水供給システムは、前記水供給システムから供給される水の利用者が使用していた前記水処理ユニットを用いて構成され、前記水供給システムの構築者が前記水供給システムを運転することにより前記水の利用者に水を供給する水供給方法。
【0031】
本発明の水供給システムは、純水などを利用する水の利用者が所有し使用してきたいわゆる既設の純水製造装置を、水供給システムを構築する水供給システムの構築者が買い取り、この純水製造装置に送水量計測手段、使用量算出手段、および料金算出手段、並びに必要に応じて水質計測手段と補正手段を設置して構成してもよい。この場合、水供給システムの構築者は水供給システムを運転管理し、水の利用者に各種水質の水を水質に応じた値段で販売することになる。このため、純水製造装置の製造技術を備える水供給システムの構築者が水供給システムを運転管理することにより、純水製造装置の高度な運転管理に対応できるようになる。さらに、水の利用者は既存の純水製造装置の導入コストを回収でき、また、純水製造装置の老朽化によるメンテナンスの高度化、高頻度化といった問題から開放される。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、超純水製造装置が設置される施設の水供給システムを簡略化し、また複数の水質レベルの水を異なる複数のユースポイントに供給し、これら水質の違いを反映した適正な使用料金を容易に求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次に、図面を用いて本発明について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る水供給システム1を示す模式図である。
【0034】
水供給システム1は、水処理ユニットとしての前処理ユニット20a、一次純水ユニット20b、および二次純水ユニット20cと、送り配管21a〜21cと、送水量計測手段22a〜22cと、水質計測手段23a〜23cと、使用量算出手段および料金算出手段を兼ねる演算処理装置24と、を含む。前処理ユニット20a、一次純水ユニット20b、および二次純水ユニット20cはこの順に配置され、隣接するユニット同士は互いに接続されている。
【0035】
前処理ユニット20aは、水処理機器としての重力濾過器、活性炭塔、および保安フィルタで構成され、これらの機器類は直列に配置されて配管を介して互いに接続されている。前処理ユニット20aには被処理水としての原水が導入される導入配管10が接続され、後方には第1配管11が接続されている。導入配管10から前処理ユニット20a内に導入された原水は、前処理ユニット20a内を流れるに従い、水処理機器により処理され、SS等の不純物が除去された前処理水が処理水として第1配管11から取り出される。
【0036】
一次純水ユニット20bは、水処理機器としてのRO膜装置、脱気装置、再生型イオン交換塔、およびMF膜濾過装置で構成され、これらの機器類は直列に配置されて配管を介して互いに接続されている。一次純水ユニット20bには前段側に第1配管11および後段側に第2配管12が接続され、一次純水ユニット20bは第1配管11を介して前段側で前処理ユニット20aと接続され、後段側で二次純水ユニット20cと接続されている。第1配管11から一次純水ユニット20b内に導入された被処理水としての前処理水は、一次純水ユニット20b内を流れるに従い、水処理機器により処理され、塩類や有機物が除去された一次純水が処理水として第2配管12から取り出される。
【0037】
二次純水ユニット20cは、水処理機器としての紫外線照射装置、脱気膜を備える膜脱気装置、非再生型のイオン交換塔、およびUF膜装置で構成され、これらの機器類は直列に配置されて配管を介して互いに接続されている。二次純水ユニット20cには第2配管12が接続され、この第2配管12を介して前段側の一次純水ユニット20bと接続されている。第2配管12から二次純水ユニット20c内に導入された被処理水としての一次純水は、二次純水ユニット20c内を流れるに従い、水処理機器により処理され、一次純水に含まれる微量の有機物や微粒子等が除去された超純水が処理水として取り出される。
【0038】
第1配管11には第1送り配管21aの一端が接続され、第1送り配管21aの他端はCランクの水質の水が求められるユースポイントC31に接続されている。ユースポイントC31は具体的には、冷却塔である。第1送り配管21aの途中には、流量計で構成された第1送水量計測手段22aと、電気伝導率計で構成された第1水質計測手段23aとが設けられている。
【0039】
第2配管12には第2送り配管21bの一端が接続され、第2送り配管21bの他端は、Bランクの水質の水が求められるユースポイントB32に接続されている。ユースポイントB32は具体的には、ボイラである。第2送り配管21bの途中には、流量計で構成された第2送水量計測手段22bと、比抵抗計で構成された第2水質計測手段23bとが設けられている。
【0040】
二次純水ユニット20cには超純水を取り出す第3送り配管21cの一端が接続され、第3送り配管21cの他端はAランクの水質の水が求められるユースポイントA33に接続されている。ユースポイントA33は具体的には、半導体製造ラインの洗浄装置である。第3送り配管21cの途中には、流量計で構成された第3送水量計測手段22cと、比抵抗計で構成された第3水質計測手段23cとが設けられている。
【0041】
上記の水供給システム1では、前処理ユニット20aから取り出された前処理水が第1送り配管21aからユースポイントC31に送られ、一次純水ユニット20bから取り出された一次純水は、第2送り配管21bからユースポイントB32に送られる。また、二次純水ユニット20cから取り出された超純水は、第3送り配管21cからユースポイントA33に送られる。
【0042】
なお、ユースポイントへの送水量を安定化するためには、第1配管11および第2配管12の途中に貯水槽(図示せず)を設けることが好ましい。貯水槽を設けた場合、第1送り配管21aおよび第2送り配管21bは、第1配管11および第2配管12に接続する代わりに、これらの貯水槽に接続し、貯水槽に一時的に貯留された前処理水および一次純水を、これらの貯水槽を介して、ユースポイントC31およびユースポイントB32にそれぞれ供給する。
【0043】
第3送り配管21bとユースポイントA33との間では、超純水を滞留させないことが好ましい。このため、ユースポイントA33に循環配管(図示せず)を接続し、ユースポイントA33での超純水の使用状況とは無関係に、ユースポイントA33に超純水を供給して、未使用の超純水を循環配管から第1配管11または第2配管12に設けた貯水槽等に循環させるとよい。循環配管には、ユースポイントA33で使用されずに返送された未使用超純水の流量を計測する流量計を設けてもよい。
【0044】
送水量計測手段22a〜22cおよび水質計測手段23a〜23cは、いずれも電気通信回線により演算処理装置24に接続され、各計測手段で計測された送水量および水質の測定値が所定時間ごとに演算処理装置24にそれぞれ送信される。演算処理装置24には、CPU、使用量を算出させる使用量算出プログラム、使用料金を算出させる料金算出プログラム、使用量データベース(使用量DB)、料金データベース(料金DB)、水質データベース(水質DB)、水単価データベース(単価DB)および補正プログラムが設けられている。
【0045】
以下、演算処理装置24での情報処理について図2を参照して詳説する。図2は演算処理装置24で行なわれる情報処理のデータの流れおよび処理の構成を示す。
【0046】
使用量算出手段は、演算処理装置24のCPU、使用量算出プログラムおよび使用量DBで構成されている。各送水量計測手段22a〜22cで計測された前処理水、一次純水、および超純水の各ユースポイント31、32、33への送水量の測定値は、送水量生データとして使用量DBに入力される。次に、使用量算出プログラムおよびCPUにより、使用量DBに記憶された送水量生データに基づいて、所定期間(例えば1時間、1日、1ヶ月等)内の送水量の積算値が算出される使用量算出処理が行なわれる。算出された積算値は、各ユースポイントのそれぞれについての所定期間内の使用量として、使用量DBに記憶される。
【0047】
料金算出手段は、CPU、料金算出プログラムおよび料金DBで構成されている。CPUおよび料金算出プログラムは料金算出処理部を構成し、使用量DBおよび単価DBに記憶された各ユースポイントでの水の使用量とその水の単価とを読み出し、単位測定時間毎の使用料金を算出し、これを加算処理して所定期間内の使用料金を算出する。算出された各ユースポイントについての使用料金は、料金DBに記憶される。
【0048】
料金算出処理部には、補正プログラムが組み込まれ、水質DBに記憶された水質情報に基づき、使用量が補正される。水質DBには、各水質計測手段23a〜23cで計測された水質情報と、各ユースポイント31、32、33で使用される水に求められる基準水質が記憶されている。使用量の補正は、この水質DBに記憶された所定期間内の水質情報と基準水質とを照合し、各ユースポイント31、32、33に送られた水が基準水質を満たさない場合は、料金DBに基準水質外の使用水量の料金が加算されないように減算処理を行なう。減算処理により算出された補正料金は、料金DBに記憶される。
【0049】
本発明では、このような減算処理を行なうことにより、従来は困難であった適正水質の水のみを商品として提供することが可能となる。
【0050】
上記加算処理また減算処理により算出される使用料金は、例えば以下の式を用いて算出できる。
【0051】
使用料金=基準水質値範囲内の水使用量×水単価−基準水質値範囲外の水使用量×水単価
【0052】
補正手段はまた、基準水質値範囲外の水がユースポイント31、32、33のいずれかに送られた場合に、水供給システム1の管理者にペナルティを課すようなペナルティ付加プログラムを備えてもよい。この場合、使用料金は例えば以下の式を用いて算出される。
【0053】
使用料金=基準水質範囲内の水使用量×水単価−基準水質値範囲外の水使用量×(水単価+ペナルティ単価)
【0054】
補正プログラムは、循環配管に設けられた流量計により計測された返送水量に基づいて送水量と返送水量の差から超純水の実使用水量を求めるように構成されてもよい。このように実使用水量を求めるように構成することにより、超純水の滞留による水質劣化を防止しかつ、実際に使用された超純水の量に応じた使用料金の算出ができる。
【0055】
また、水供給システム1は、各ユースポイント31、32、33で使用された水を回収して再利用する回収系(図示せず)を含んでもよい。回収系により回収された水は、前処理ユニット20a等で処理されて再利用されるため、回収系に入る廃水が所定の水質基準を超えて汚染されている場合は、前処理ユニット20a等にかかる負荷が過大となり、水処理機器の寿命を低下させる。
【0056】
このため、水供給システム1が回収系を含む場合、廃水の質や量に応じて使用料金の料金加算を行なう装置負荷補正手段を設けてもよい。このような装置負荷補正手段を設けることにより、回収系からの負荷による機器寿命の低下を使用料金に反映させることができる。
【0057】
装置負荷補正手段としては、廃水が入る回収系の配管に水質計測手段および廃水量計測手段を設けるとともに、回収される廃水の量や質に応じて使用料金に加算処理を行なうプログラムを演算処理装置24に組み込むものが挙げられる。このプログラムは、例えば、排出される廃水が所定の基準値より汚染されている場合に、基準値を超える廃水量と基準値を超える廃水の汚染濃度とを乗じた値を過負荷料金として使用料金に加算する処理を行なうように構成したものが挙げられる。
【0058】
なお、演算処理装置24は、水供給システム1が設置される工場等に設けられてもよく、工場等の外部に設けられてもよい。演算処理装置24は、水供給システム1の製造者の管理センタに設置し、複数箇所に設置された水供給システム1の水使用量等を一括処理するように構成してもよい。複数箇所に設置された水供給システム1の演算処理装置24を一箇所にまとめて設置および管理することにより、各水処理システム1の運転管理を遠隔監視できるとともに、使用料金の徴収作業に伴う請求書等の発行作業を効率化できる。
【0059】
演算処理装置24から得られる情報は、適宜、作成時間認証スタンプ等により改変不能にして保存し、水供給システム1の製造管理者と使用者とで共有するようにすれば、算出された使用料金の信頼度の向上に寄与する。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、LSIやウェハなどの半導体製品の製造や、医薬品製造などに用いられる超純水製造装置からの水供給システムに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に係る水供給システムの模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る情報処理におけるデータの流れと情報処理の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0062】
1 水供給システム
20a 前処理ユニット(水処理ユニット)
20b 一次純水ユニット(水処理ユニット)
20c 二次純水ユニット(水処理ユニット)
21a〜21c 送り配管
22a〜22c 送水量計測手段
23a〜23c 水質計測手段
24 演算処理装置(使用量算出手段、料金算出手段、補正手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直列に接続され、不純物を含む水を導入してこの水から不純物を除去して送り出す複数の水処理ユニットと、
前記各水処理ユニットから送り出される処理水をユースポイントに送る複数の送り配管と、を備える水供給システム。
【請求項2】
前記複数の水処理ユニットは、不純物を含む原水を導入して前処理水を送り出す前処理ユニット、前記前処理水を導入して一次純水を送り出す一次純水ユニット、および前記一次純水を導入して超純水を送り出す二次純水ユニットを含む請求項1に記載の水供給システム。
【請求項3】
前記各送り配管に設けられ、前記各ユースポイントへ供給される処理水の送水量をそれぞれ計測する複数の送水量計測手段と、
前記各送水量計測手段で計測された送水量に基づいて前記各ユースポイントの処理水の使用量をそれぞれ算出する使用量算出手段と、
前記各ユースポイントに供給される処理水の単価と、前記使用量算出手段で算出された前記各ユースポイントでの処理水の使用量と、に基づいて前記各ユースポイントでの処理水の使用料金をそれぞれ算出する料金算出手段と、をさらに備える請求項1または2に記載の水供給システム。
【請求項4】
前記送り配管の少なくとも1つに設けられ、前記送り配管からユースポイントへ供給される処理水の水質を計測する水質計測手段と、
前記水質計測手段で計測された処理水の水質に基づいて前記ユースポイントでの処理水の使用量を補正する補正手段と、をさらに備える請求項3に記載の水供給システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の水供給システムを用いた水供給方法であって、
前記水供給システムは、前記水供給システムから供給される水の利用者が使用していた前記水処理ユニットを用いて構成され、前記水供給システムの構築者が前記水供給システムを運転することにより前記水の利用者に水を供給する水供給方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−51477(P2006−51477A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236813(P2004−236813)
【出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)