説明

水再利用システム、水再利用方法

【課題】 被処理水の処理により得られた水を再利用する水再利用システムにおいて、処理後の水を非定常運転時に再利用先へと速やかに供給するのに有効な技術を提供する。
【解決手段】 本発明にかかる水再利用システムでは、再利用水槽101は、貯水室140と水再利用先であるトイレの洗浄水タンクとを繋ぐ第1吸水管144及び第2吸水管146を備え、第1吸水管144の流入口が貯水室140のうち第1の水位L1に対応して配設される一方、第2吸水管146の流入口が貯水室140のうち第2の水位L2に対応して配設されるとともに、切り替えバルブ148の切り替え操作によって、第1吸水管144側の移送経路と、第2吸水管146側の移送経路の切り替え使用が可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理技術に係り、詳しくは被処理水の処理により得られた水を再利用する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般家庭等から排出される排水のうち、浴室排水、洗面排水、洗濯排水等の比較的汚濁物質濃度の低い排水を浄化処理し、浄化処理した後の処理水を、再利用水として水洗トイレの洗浄水、洗車用の水、庭などへの散水用の水として再利用する水再利用システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−242238公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、災害時等における水洗トイレの使用を想定した場合には、電気や水道が停止したときであっても、その後、速やかに水洗トイレに洗浄水を供給することが可能な水再利用システムを構築する要請が高い。
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、被処理水の処理により得られた水を再利用する水再利用システムにおいて、処理後の水を非定常運転時に再利用先へと速やかに供給するのに有効な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために、本発明が構成される。なお、本発明は、一般家庭等から排出される生活排水をはじめ、雨水等の各種の被処理水を処理して再利用する技術に好適に用いられる。
【0005】
本発明にかかる水再利用システムは、被処理水の処理により得られた水を再利用するシステムであって、浄化処理部、貯留部及び移送部を少なくとも備える構成とされる。
【0006】
本発明の浄化処理部は、被処理水の浄化処理を行う機能を有する。ここでいう「浄化処理」には、固液分離処理、嫌気処理、好気処理、消毒処理など、各種の浄化処理が広く包含される。また、ここでいう「被処理水」には、一般家庭等から排出される生活排水をはじめ各種の設備から排出される排水、雨水などが広く包含される。また、再利用される水は、浄化処理等の所定の処理がなされた処理後の水の全部または一部を含んでもよいし、汚濁物質濃度や清澄度等の性状によっては処理前の被処理水そのものであってもよい。典型的には、被処理水の中でも、例えば浴室排水、洗面排水、洗濯排水等といった比較的汚濁物質濃度の低い生活排水や雨水を、浄化処理して再利用するのが好ましい。
【0007】
本発明の貯留部は、浄化処理部にて浄化処理された後の水を貯留する機能を有する。この貯留部に貯留された水は、当該水が再利用される再利用先へと、本発明の移送部によって移送される。特に、本発明の移送部は、貯留部と再利用先とを繋ぐ第1及び第2の移送経路と、これら第1の移送経路と第2の移送経路の切り替え使用を可能とする移送経路切り替え機構を有する構成とされる。この移送部は、配管部材、バルブ部材、ポンプ、コネクタ等を適宜組み合わせることによって構成され得る。また、この移送部において、第1の移送経路は、その流入口が貯留部のうち第1の水位に対応して配設される一方、第2の移送経路は、その流入口が貯留部のうち第1の水位よりも低所である第2の水位に対応して配設される。なお、第1の移送経路と第2の移送経路は、貯留部と再利用先との間で完全に独立した移送経路であってもよいし、移送経路を部分的に共有化した構成であってもよい。本発明では、第1の移送経路と第2の移送経路に加えて、更に別の移送経路が付加されてもよい。
【0008】
このような構成においては、第1の移送モード及び第2の移送モードが可能とされる。第1の移送モードは、移送経路切り替え機構によって第1の移送経路が使用され、これによって少なくとも第1の水位よりも低所における水の貯留を常時維持した状態で、貯留部に貯留された水を、第1の移送経路の流入口から吸入して再利用先へ移送する移送モードとされる。一方、第2の移送モードは、移送経路切り替え機構によって第2の移送経路が使用され、これによって貯留部に貯留された水を、第2の移送経路の流入口から吸入して再利用先へ移送する移送モードとされる。第1の移送モードは、通常運転時のような定常運転時に遂行され、第2の移送モードは、災害時等の非定常運転時に遂行される。
【0009】
本発明にかかる水再利用システムのこのような構成によれば、通常運転のような定常運転時に第1の移送モードを遂行することによって、システムの運転時や運転停止時に関わらず、貯留部において少なくとも第1の水位よりも低所に水を常時貯留して、災害時のような非定常運転時に備えることができるため合理的である。そして、非定常運転時に第2の移送モードを遂行して、既に貯留された準備状態の水を再利用先へと速やかに供給することが可能となる。また、定常運転時に貯留部において常時貯留される水は、貯留部に流入してくる水と混合されて常に入れ替わることとなり、貯留によって水質が低下するのを防止するのに有効とされる。
【0010】
本発明にかかる更なる形態の水再利用システムは、更に、貯留部と再利用先とは別の移送領域とを繋ぐとともに、その流入口が第2の水位に対応して配設される第3の移送経路を備える。ここでいう移送領域としては、典型的には下水道が用いられる。また、第3の移送経路は、第1の移送経路及び第2の移送経路とは完全に独立した移送経路であってもよいし、或いは第1の移送経路や第2の移送経路と部分的に移送経路を共有化した構成であってもよい。このような構成においては、前述の第1の移送モード及び第2の移送モードに加えて、更に第3の移送経路を使用することによって、貯留部に貯留された水を第3の移送経路の流入口から吸入して移送領域へ移送する第3の移送モードが可能とされる。このような構成によれば、浄化処理部の点検、整備、修理などのような定期的なメンテナンス時に第3の移送モードを遂行することによって、貯留部に貯留された水を、貯留部に堆積している堆積汚泥とともに移送領域へと排出して、浄化処理部のメンテナンス作業に備えることが可能となる。
【0011】
本発明にかかる更なる形態の水再利用システムでは、前記の第1及び第2の移送経路は、貯留部よりも下流の合流部において互いに合流する構成とされる。また、移送経路切り替え機構は、単一の切り替えバルブと、吐出ポンプを備える。単一の切り替えバルブは、合流部に配設されて第1及び第2の移送経路のうちのいずれか一方の移送経路を再利用先に接続する機能を有する。吐出ポンプは、合流部よりも下流の移送経路に配設されて再利用先へと水を吐出する機能を有する。この吐出ポンプは、典型的には電動式のポンプとして構成される。そして、吐出ポンプの運転時に切り替えバルブの切り替え操作がなされることによって、いずれか一方の移送経路で貯留部の水が再利用先へと移送される。このような構成によれば、合流部よりも下流の移送経路を兼用化するとともに、単一の切り替えバルブの操作によって、第1及び第2の移送経路のうちのいずれか一方の移送経路を使用することができるため、貯留部の水を再利用先へと移送する移送部の構造を簡素化することが可能となる。
【0012】
本発明にかかる水再利用方法では、被処理水の浄化処理を行う浄化処理部と、浄化処理部にて浄化処理された後の水を貯留する貯留部と、貯留部と再利用先とを繋ぐ第1及び第2の移送経路と、を備えるとともに、第1の移送経路の流入口が、貯留部のうち第1の水位に対応して配設される一方、第2の移送経路の流入口が、貯留部のうち第1の水位よりも低所である第2の水位に対応して配設された装置を用いる。
【0013】
この装置において、定常運転時に第1の移送ステップを遂行する一方、非定常運転時に第2の移送ステップを遂行することが可能となる。第1の移送ステップでは、第1の移送経路を使用し、これによって第1の水位よりも低所における水の貯留を常時維持した状態で、貯留部に貯留された水を、第1の移送経路の流入口から吸入して再利用先へ移送する。第2の移送ステップでは、第2の移送経路を使用し、これによって貯留部に貯留された水を、第2の移送経路の流入口から吸入して再利用先へ移送する。
【0014】
本発明にかかるこのような再利用方法によれば、定常運転時に第1の移送ステップを遂行することによって、システムの運転時や運転停止時に関わらず、貯留部において少なくとも第1の水位よりも低所に水を常時貯留して、非定常運転時に備えることができるため合理的である。そして、非定常運転時に第2の移送ステップを遂行して、処理後の水を再利用先へと速やかに供給することが可能となる。また、定常運転時に貯留部において常時貯留される水は、貯留部に流入してくる水と混合されて常に入れ替わることとなり、貯留によって水質が低下するのを防止するのに有効とされる。
【0015】
本発明にかかる更なる水再利用方法では、前記の装置において、貯留部と再利用先とは別の移送領域とを繋ぐとともに、その流入口が第2の水位に対応して配設される第3の移送経路を設ける。ここでいう移送領域としては、典型的には下水道が用いられる。そして、浄化処理部の点検、整備、修理などのような定期的なメンテナンス時に第3の移送ステップを遂行することによって、第3の移送経路を使用し、これによって貯留部に貯留された水を第3の移送経路の流入口から吸入して移送領域へ移送する。これにより、貯留部に貯留された水を、貯留部に堆積している堆積汚泥とともに移送領域へと排出して、浄化処理部のメンテナンス作業に備えることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、被処理水の処理により得られた水を再利用する水再利用システムにおいて、特にこの水再利用システムの運転時や運転停止時に関わらず、貯留部に常時水を貯留可能な構成を採用することによって、処理後の水を非定常運転時に再利用先へと速やかに供給することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態は、一般家庭から排出される生活排水(洗面、洗濯、浴室における排水など)や雨水といった被処理水を処理するとともに、処理後の水を再利用水(「中水」或いは「リサイクル水」ともいう)として再利用先へと供給する水再利用システムについて説明するものである。
【0018】
本発明における「水再利用システム」の一実施の形態である水再利用システム100の概略構成が図1に示される。図1に示す水再利用システム100は、一般家庭から排出された生活排水を処理したのち、処理後の水を、本発明における「再利用先」としてのトイレの洗浄水タンクへ再利用水として供給する装置として構成される。この水再利用システム100に関連して、上水(上水道からの水)は、家庭の洗濯用、洗面用、トイレ用、台所用として各上水供給先へ供給されるとともに、上水補給管10を通じて後述する再利用水槽101へも供給(補給)が可能となっている。この上水補給管10には、電磁式の開閉制御弁10aが設けられており、この開閉制御弁10aの開閉動作によって再利用水槽101へ上水が補給される状態と補給されない状態が切り替る構成とされる。この開閉制御弁10aの開閉制御は、後述する再利用水槽101の貯水室140に設けられた水位センサ142による水位検出情報に基づいて制御部150によって行われる。
【0019】
本実施の形態の水再利用システム100は、槽状に成形された再利用水槽101を備え、この再利用水槽101の内部に、後述する各種の浄化処理機構を収容している。洗濯によって生じる洗濯排水と、洗面によって生じる洗面排水は、浴室から排出された浴室排水とともに再利用水槽101の流入管102に合流する。特に浴室排水や洗濯排水は、排出(放流)タイミングを使用者が任意に定めることが可能な、比較的まとまった量の排水である。この流入管102を通って再利用水槽101に流入する排水(以下「排水A」という)は、相対的に汚濁物質濃度の低い排水である。この排水Aは、通常各種洗浄排水に由来の泡沫成分を含む。再利用水槽101内の浄化処理機構によって浄化処理された処理水は、後述する貯水室140から再利用水として取水され、取水管104、給水ポンプ105、給水管106を通じて再利用先であるトイレの洗浄水タンクに供給される。このように、取水管104、給水ポンプ105、給水管106は、貯水室140に貯留された貯留水を再利用水として再利用先へ供給する手段を構成しており、本発明における「移送部」を構成する。
【0020】
一方、家庭のトイレから排出されたトイレ排水は、台所の流し台などから排出された台所排水とともに下水道へ放流される。この排水(以下「排水B」という)は、相対的に汚濁物質濃度の高い排水であり、処理後の水を一般的に再利用水として利用し難い排水である。一般に、排水Bは排水Aに比して濃度負荷が高く水量負荷が低い。通常、この排水Bには、トイレ排水に由来の屎尿が含まれる。
【0021】
上記再利用水槽101内における浄化処理機構の構成に関しては、図2が参照される。図2には、本実施の形態の再利用水槽101の内部構造が示される。この図2に示すように、この再利用水槽101は、その内部に浄化処理機構として、処理順序に対応して上流側(図2の左側)から、接触ばっ気室110、沈殿室120、消毒室130、貯水室140を備える。これらの接触ばっ気室110、沈殿室120、消毒室130、貯水室140によって、本発明における「浄化処理部」が構成される。
【0022】
接触ばっ気室110は、接触材充填部116を有し、この接触材充填部116には有機汚濁物質を好気処理(酸化)する好気性微生物が付着する所定量の接触材C1が充填されている。被処理水がこの接触材充填部116を繰り返し通過する際に、被処理水中の有機汚濁物質が分解されBODが除去される。また、この接触ばっ気室110には、泡沫分離装置112が設けられている。この泡沫分離装置112において、ブロワ(図1中の111から供給されたばっ気・泡沫分離用エアが散気管114を通じて室内に散気されることによって、被処理水がバブリング処理され、これよって被処理水に含まれる泡沫成分が泡沫となる。この泡沫は、オーバーフロー水とともにオーバーフロー管103を通じて下水道へと放流される。このとき、被処理水に含まれるSS(浮遊物質)の一部も合わせて除去される。なお、この接触ばっ気室110にかえて、別の構成のばっ気室や担体流動室など、好気処理を行うことが可能な他の処理室を適宜採用することもできる。
【0023】
沈殿室120は、その底部が傾斜した傾斜部122を備え、この傾斜部122は接触ばっ気室110側の方が低く(水深が深く)なるような傾斜面をなす構成とされる。この傾斜部122は、接触ばっ気室110において発生し、移流開口を通じて沈殿室120へ移流したSS(浮遊物質)を、接触ばっ気室110の底部へと誘導することによって沈殿分離する機能を有する。沈殿室120の水は、例えばフロート式の流量調整装置124を介して流量調整がなされたのち、消毒室130へと移流する。
【0024】
消毒室130は、消毒剤注入装置132を備えている。沈殿室120から流入する水は、この消毒剤注入装置132から注入された消毒剤によって消毒処理がなされ、消毒処理後の水は貯水室140へと移流する。
【0025】
貯水室140は、再利用先へ供給する前の水を一旦貯留する領域であり、本発明における「貯留部」に対応している。この貯水室140に一旦貯留された水は、給水ポンプ(図1中の給水ポンプ105)によって吸入され、再利用水として再利用先(図1では水洗トイレの洗浄水タンク)へと吐出される。この貯水室140の水位は、水位センサ142によって検出されて制御部150に伝送され、この検出情報に基づいて、制御部150は、開閉制御弁10aに対し制御信号を出力する構成とされる。具体的には、制御部150は、水位センサ142により検出された貯水室140の水位が基準水位を下回る場合に開閉制御弁10aを開状態に制御する一方、水位センサ142により検出された貯水室140の水位が基準水位に達した場合に開閉制御弁10aを閉状態に制御する。これにより、貯水室140における水位の維持が可能とされる。なお、水位センサ142を貯水室140の水位に応じて動作するフロート式の水位検出構造としたうえで、開閉制御弁10aにかえて、フロートに対し機械的に連動して、上水補給管10の開閉動作を行う開閉弁を用いることもできる。
【0026】
本実施の形態では、上記構成の取水管104のうち、貯水室140側の構造に特徴を有する。図2に示すように、貯水室140には、貯留された水を吸水可能な二本の吸水管(第1吸水管144及び第2吸水管146)が設けられている。これら第1吸水管144及び第2吸水管146は、貯水室140よりも下流の合流部140aにおいて互いに合流する構成とされる。第1吸水管144の流入口は、貯水室140の第1の水位L1に対応して配設される一方、第2吸水管146の流入口は、第1の水位L1よりも低所である第2の水位L2に対応して配設されている。ここでいう第1の水位L1が、本発明における「第1の水位」に相当し、また第2の水位L2が、本発明における「第2の水位」に相当する。
【0027】
合流部140aには、これら第1吸水管144及び第2吸水管146のうちのいずれか一方の移送経路を再利用先に接続する単一の切り替えバルブ148が設けられている。この切り替えバルブ148として、典型的には三方バルブを用いることができる。この切り替えバルブ148の切り替え操作においては、三方バルブの一操作によって、第1吸水管144を使用する状態と、第2吸水管146を使用する状態のいずれか一方に切り替えることが可能とされる。この切り替えバルブ148は、作業者によって手動操作される構成であってもよいし、或いは制御部150によって自動操作される構成であってもよい。この切り替えバルブ148に対し、定常運転状態に設定されているか、或いは非定常運転状態に設定されているかを表示する表示手段(例えばラベルなど)を設けるのが好ましい。ここでいう切り替えバルブ148が、本発明における「切り替えバルブ」に相当し、また本発明における「移送経路切り替え機構」を構成する。
【0028】
このような構成によれば、切り替えバルブ148の切り替えによって、第1の移送モード(「第1の移送ステップ」ともいう)及び第2の移送モード(「第2の移送ステップ」ともいう)が形成される。これらの移送モードに関しては、図3及び図4が参照される。
【0029】
図3には、図2中の再利用水槽101において第1の移送モードが示される。この図3に示すように、通常運転時のような定常運転時においては、切り替えバルブ148を第1の移送モードに切り替えることによって、第1吸水管144が使用される。この第1の移送モードでは、貯水室140の少なくとも第1の水位L1よりも低所における水の貯留を常時維持した状態で、貯水室140に貯留された水が第1吸水管144にて吸水され、取水管104、給水ポンプ105及び給水管106を通じて再利用先であるトイレの洗浄水タンクに移送される。このとき、貯水室140の第1の水位L1よりも高所ないし低所に貯留された水が適宜混合された状態で、第1吸水管144にて吸水され得る。なお、本実施の形態では、貯水室140内の上側と下側とを仕切る部材等が無いため、この定常運転時に貯水室140において常時貯留される水は、上流側から貯水室140に流入してくる水と混合されて常に入れ替わることとなる。ここでいう第1吸水管144から洗浄水タンクへと至る経路が、本発明における「第1の移送経路」に相当する。
【0030】
一方、図4には、図2中の再利用水槽101において第2の移送モードが示される。この図4に示すように、災害時や非常時のような非定常運転時においては、切り替えバルブ148を第2の移送モードに切り替えることによって、第2吸水管146が使用される。この第2の移送モードでは、貯水室140に貯留された水が第2吸水管146にて吸水され、取水管104、給水ポンプ105及び給水管106を通じて再利用先であるトイレの洗浄水タンクに移送される。このとき、貯水室140の第2の水位L2よりも高所ないし低所に貯留された水が適宜混合された状態で、第2吸水管146にて吸水され得る。ここでいう第2吸水管146から洗浄水タンクへと至る経路が、本発明における「第2の移送経路」に相当する。
【0031】
なお、災害時などにおいては、通常、水道やガスに比べて電気の復旧が最も早いため、電気さえ復旧すれば、第2の移送モードにて給水ポンプ105を運転することで、断水状態であっても水洗トイレの使用が可能となる。また、災害時などに一旦断水した上水が復旧した後は、再び第1の移送モードに切り替えるべく、速やかに切り替えバルブ148を第1吸水管144側に切り替えて、定常運転に移行するのが好ましい。
【0032】
以上のように、本実施の形態の水再利用システム100、或いはこの水再利用システム100を用いた水再利用方法によれば、定常運転時に第1の移送モード(第1の移送ステップ)を遂行することによって、システムの運転時や運転停止時に関わらず、貯水室140において少なくとも第1の水位L1よりも低所に水を常時貯留して、非定常運転時に備えることができるため合理的である。そして、非定常運転時に第2の移送モード(第2の移送ステップ)を遂行して、処理後の水を再利用先へと速やかに供給することが可能となる。また、定常運転時に貯水室140において常時貯留される水は、上流側から貯水室140に流入してくる水と混合されて常に入れ替わることとなり、貯留によって水質が低下するのを防止するのに有効とされる。
【0033】
また、本実施の形態の水再利用システム100によれば、第1吸水管144及び第2吸水管146の合流部140aよりも下流の移送経路を兼用化するとともに、単一の切り替えバルブ148の操作によって、第1吸水管144及び第2吸水管146のうちのいずれか一方の移送経路を使用することができるため、貯水室140の水を再利用先へと移送する移送構造を簡素化することが可能となる。また、切り替えバルブ148を三方バルブとすることで、三方バルブの一操作によって、第1吸水管144を使用する状態と、第2吸水管146を使用する状態のいずれか一方に切り替えることができ、全ての移送経路を閉止するような誤操作を防止するのに有効とされる。災害は予期しないときに起こるが、このような簡便な切り替え方式を採用することによって、定常時は装置を気にすることなく運転を継続し、実際に災害などが発生した後に初めて行動すればよいという効果を奏する。
【0034】
〔他の実施の形態〕
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0035】
上記実施の形態では、第1吸水管144及び第2吸水管146の合流部140aよりも下流の移送経路を兼用化するとともに、合流部140aに配設した単一の切り替えバルブ148を用いて移送経路を切り替える場合について記載したが、各々の移送経路に切り替えバルブを設け、2つの切り替えバルブを操作することによって移送経路を切り替えるようにしてもよい。また、本発明では、各々の移送経路を完全に独立した移送経路とし、各移送経路にポンプを設け、一方の移送経路のポンプを運転し他方の移送経路のポンプを停止するようにして、移送経路を切り替えるようにしてもよい。また、本発明では、第1吸水管144及び第2吸水管146に加えて、更に別の吸水管が付加されてもよい。
【0036】
また、上記実施の形態の再利用水槽101とは別の実施形態の再利用水槽を採用することもできる。ここで、別の実施形態の再利用水槽201の内部構造が図5に示される。
図5に示す再利用水槽201は、再利用水槽101と同様の構成に加え、更に第1吸水管144及び第2吸水管146が合流部140aにて合流した合流管が、合流部140aよりも下流の分岐部140bにおいて、再利用先(トイレの洗浄水タンク)と下水道とに分岐する構成を有する。分岐部140bには、合流部140aの下流を再利用先と下水道のうちのいずれか一方の移送経路に接続する単一の切り替えバルブ149が設けられている。この切り替えバルブ149として、典型的には三方バルブを用いることができる。この切り替えバルブ149の切り替え操作は、第2吸水管146を使用する状態に切り替えバルブ148を切り替えた上で行なわれる。この切り替えバルブ149の切り替え操作においては、三方バルブの一操作によって、第2吸水管146から吸入した水を再利用先へと移送する状態と、第2吸水管146から吸入した水を下水道へと移送する状態のいずれか一方に切り替えることが可能とされる。この切り替えバルブ149は、作業者によって手動操作される構成であってもよいし、或いは制御部150によって自動操作される構成であってもよい。この切り替えバルブ149に対し、再利用先へと移送する状態に設定されているか、或いは下水道へと移送する状態に設定されているかを表示する表示手段(例えばラベルなど)を設けるのが好ましい。
【0037】
このような構成によれば、切り替えバルブ148,149の切り替えによって、前述の第1の移送モード(第1の移送ステップ)及び第2の移送モード(第2の移送ステップ)に加え、更に第3の移送モード(「第3の移送ステップ」ともいう)が形成される。図6には、図5中の再利用水槽201において第3の移送モードが示される。この図6に示すように、再利用水槽201内の点検、整備、修理などのような定期的なメンテナンス時には、切り替えバルブ148を第2吸水管146側に切り替えるとともに、切り替えバルブ148を下水道側に切り替えた第3の移送モードが使用される。この第3の移送モードでは、貯水室140に貯留された水が、貯水室140に堆積している堆積汚泥とともに第2吸水管146にて吸水されて下水道へと排出され、メンテナンス作業に備えることが可能となる。このとき、貯水室140の第2の水位L2よりも高所ないし低所に貯留された水が適宜混合された状態で、第2吸水管146にて吸水され得る。ここでいう第2吸水管146から下水道へと至る経路が、本発明における「第3の移送経路」に相当する。なお、この場合の吸水は、給水ポンプ105のポンプ作用を用いて行なわれる構成であってもよいし、或いは給水ポンプ105とは別のポンプのポンプ作用を用いて行なわれる構成であってもよい。また、ここでいう第3の移送経路は、第1吸水管144から再利用先へと向かう第1の移送経路、第2吸水管146から再利用先へと向かう第2の移送経路とは完全に独立した移送経路であってもよいし、或いは第1の移送経路や第2の移送経路と部分的に移送経路を共有化した構成であってもよい。
【0038】
また、本発明は、一般家庭等から排出される生活排水をはじめ、雨水等の各種の水を再利用する水処理技術に適用され得る。また、本発明では、生活排水や雨水を水洗トイレの洗浄水として再利用するのみならず、例えば洗車用の水や、庭などへの散水用の水として再利用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明における「水再利用システム」の一実施の形態である水再利用システム100の概略構成を示す図である。
【図2】本実施の形態の再利用水槽101の内部構造を示す図である。
【図3】図2中の再利用水槽101において第1の移送モードを示す図である。
【図4】図2中の再利用水槽101において第2の移送モードを示す図である。
【図5】別の実施形態の再利用水槽201の内部構造を示す図である。
【図6】図5中の再利用水槽201において第3の移送モードを示す図である。
【符号の説明】
【0040】
10…上水補給管
10a…開閉制御弁
100…水再利用システム
101,201…再利用水槽
102…流入管
103…オーバーフロー管
104…取水管
105…給水ポンプ
106…給水管
110…接触ばっ気室
112…泡沫分離装置
114…散気管
116…接触材充填部
120…沈殿室
122…傾斜部
124…流量調整装置
130…消毒室
132…消毒剤注入装置
140…貯水室
140a…合流部
140b…分岐部
142…水位センサ
144…第1吸水管
146…第2吸水管
148,149…切り替えバルブ
150…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水の処理により得られた水を再利用する水再利用システムであって、
被処理水の浄化処理を行う浄化処理部と、
前記浄化処理部にて浄化処理された後の水を貯留する貯留部と、
前記貯留部に貯留された水を、当該水が再利用される再利用先へ移送する移送部と、
を備え、
前記移送部は、前記貯留部と前記再利用先とを繋ぐ第1及び第2の移送経路と、これら第1の移送経路と第2の移送経路の切り替え使用を可能とする移送経路切り替え機構を有し、前記第1の移送経路は、その流入口が前記貯留部のうち第1の水位に対応して配設される一方、前記第2の移送経路は、その流入口が前記貯留部のうち前記第1の水位よりも低所である第2の水位に対応して配設される構成であり、
前記移送経路切り替え機構によって前記第1の移送経路が使用され、これによって少なくとも前記第1の水位よりも低所における水の貯留を常時維持した状態で、前記貯留部に貯留された水を前記再利用先へ移送する第1の移送モードと、
前記移送経路切り替え機構によって前記第2の移送経路が使用され、これによって前記貯留部に貯留された水を前記再利用先へ移送する第2の移送モードを有する構成であることを特徴とする水再利用システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水再利用システムであって、
更に、前記貯留部と前記再利用先とは別の移送領域とを繋ぐとともに、その流入口が前記第2の水位に対応して配設される第3の移送経路を備え、この第3の移送経路が使用されることによって前記貯留部に貯留された水を前記移送領域へ移送する第3の移送モードを有する構成であることを特徴とする水再利用システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水再利用システムであって、
前記第1及び第2の移送経路は、前記貯留部よりも下流の合流部において互いに合流する構成であり、
前記移送経路切り替え機構は、前記合流部に配設されて前記第1及び第2の移送経路のうちのいずれか一方の移送経路を前記再利用先に接続する単一の切り替えバルブと、前記合流部よりも下流の移送経路に配設されて前記再利用先へと水を吐出する吐出ポンプを備え、前記吐出ポンプの運転時に前記単一の切り替えバルブの切り替え操作がなされることによって、前記いずれか一方の移送経路で前記貯留部の水が前記再利用先へと移送される構成であることを特徴とする水再利用システム。
【請求項4】
被処理水の処理により得られた水を再利用する水再利用方法であって、
被処理水の浄化処理を行う浄化処理部と、前記浄化処理部にて浄化処理された後の水を貯留する貯留部と、前記貯留部と前記再利用先とを繋ぐ第1及び第2の移送経路と、を備えるとともに、前記第1の移送経路の流入口が、前記貯留部のうち第1の水位に対応して配設される一方、前記第2の移送経路の流入口が、前記貯留部のうち前記第1の水位よりも低所である第2の水位に対応して配設された装置において、
定常運転時に、前記第1の移送経路を使用し、これによって前記第1の水位よりも低所における水の貯留を常時維持した状態で、前記貯留部に貯留された水を前記再利用先へ移送する第1の移送ステップと、
非定常運転時に、前記第2の移送経路を使用し、これによって前記貯留部に貯留された水を前記再利用先へ移送する第2の移送ステップを有することを特徴とする水再利用方法。
【請求項5】
請求項4に記載の水再利用方法であって、
更に、前記貯留部と前記再利用先とは別の移送領域とを繋ぐとともに、その流入口が前記第2の水位に対応して配設される第3の移送経路を設け、
メンテナンス時に、前記第3の移送経路を使用し、これによって前記貯留部に貯留された水を前記移送領域へ移送する第3の移送ステップを有することを特徴とする水再利用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−163616(P2008−163616A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353183(P2006−353183)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(390021348)フジクリーン工業株式会社 (71)
【Fターム(参考)】