説明

水再循環システムを処理するための殺生物組成物及び方法

本発明は、(1)殺生物有効量の、ビグアナイドを含む第1の非酸化性殺生物剤と(2)殺生物有効量の、ジブロモニトリロプロピオンアミド(DBNPA)を含む第2の非酸化性殺生物剤とを含む、水再循環システムを処理するための組成物であって、前記組成物が実質的に酸化剤を含まない組成物に関する。本発明は、また、上記の組成物を用いて水再循環システムを処理するステップを含む、水再循環システム中の微生物の増殖を抑制する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水処理に関し、さらに具体的には、バイオフィルムを含む水の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
水に曝された表面上に微生物が増殖すると高い頻度でバイオフィルムが形成される。バイオフィルムは、微生物が分泌するスライムによって取り囲まれた微生物の集合体であって、不活性の又は生体の表面上に付着している。バイオフィルムは、通常、何らかの水性溶液に浸され又は曝された固体基材の上に見出されるが、液体表面上にも浮遊するマットとして生成し得る。増殖のための十分な資源が与えられると、バイオフィルムは巨視的な大きさにすぐに増殖するであろう。水と接触している表面上にバイオフィルムが発生することによって様々な問題が起こる。
【0003】
バイオフィルムは、水泳プール及び温泉の水の中に十分な消毒剤濃度が維持されている場合でも、水泳プール及び温泉の再循環システム中に蓄積することが観察されてきた。このバイオフィルムの蓄積は、水泳プール及び温泉の水を衛生的に又は透明に保つために使用される消毒剤及び/又は酸化剤の大量消費につながり得る。また、フィルターを顕著に詰まらせ、その結果、循環量を減らし、ろ砂のチャネリングを起こし、カートリッジと珪藻土グリッドの故障を起こして水を濁らせ得る。バイオフィルムが限界レベルに達すると、シート状となって管壁からはがれ、水の透明さにも影響を与え得る。
【0004】
バイオフィルムの形成(汚染)は、工業用水設備、例えば、水再循環システム、熱交換器、冷却機、パルプと紙の加工工程などにおいても問題となる。バイオフィルムはパイプの内部に発生し、詰まり及び腐食を引き起こし得る。極端な場合には、バイオフィルムは、蓄積してスライムとして知られている大きな塊になり、弁、流量計及びその他の制御機器を妨げることがある。スライムの蓄積は、熱交換を減らし、又は熱交換表面の冷却効率を下げることがある。
【0005】
化学的及び物理的な処理を用いてバイオフィルムの増殖を抑制する試みが行われてきた。これまで、バイオフィルムの繁殖を除去し、防止し、又は減少させるために、抗菌剤(殺生物剤と総称される)が使用されてきた。この目的に使用される典型的な殺生物剤としては、四級アンモニウム化合物、ホルムアルデヒド、並びに陰イオン性及び非イオン性界面活性剤のような非酸化性の殺生物剤だけでなく、オゾン、二酸化塩素、塩素、よう素、及び過酸化水素のような酸化能力のある殺生物剤が含まれる。バイオフィルムに対する処理の例としては以下のようなものが含まれる。
【0006】
米国特許第4,297,224号には、再循環水中のバイオフィルムの形成の抑制のための処理として、1−ブロモ−3−クロロ−5,5−ジメチルヒダントインの使用が開示されている。
【0007】
米国特許第4,604,405号には、微生物の増殖を阻止するために、2−ブロモ−2−ブロモメチルグルタロニトリル及び2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドの相乗性のある組合せの使用が開示されている。
【0008】
米国特許第5,284,844号には、材料の保護及び水システムにおける殺生物剤として、3,5−ジハロゲノ−1,2,6−チアジアジン−4−オン類の使用が開示されている。
【0009】
米国特許第6,395,189号には、水システム中でのバイオフィルム被膜及び類似の有機沈積物を減少させるための方法、並びにさらに詳細には、冷却水システム中での生物用分散剤として有用な組成物を提供するために、任意選択で界面活性剤と混合してもよいアミン−ホルムアルデヒド縮合物が開示されている。
【0010】
米国特許第6,380,174号には、リン酸ポリヘキサメチレンビグアニジン及び2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオールを含むスライムを除去する組成物が開示されている。
【0011】
米国特許第7,008,545号には、酸化剤で活性化された含窒素化合物及び非酸化性の殺生物剤との相乗性のある殺生物剤混合物が開示されている。しかし、そのような組合せでは含窒素化合物を活性化させるのに酸化剤の使用が必要であり、一部の用途では酸化剤は望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
当業界においては、バイオフィルムの発生を減少させ、抑制し、又は除去するための改善された組成物の必要性がある。本発明はその必要性に対する解答となると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一実施形態では、本発明は、(1)殺生物有効量の、ビグアナイドを含む第1の非酸化性殺生物剤と、(2)殺生物有効量の、ジブロモニトリロプロピオンアミド(DBNPA)を含む第2の非酸化性殺生物剤とを含む、水再循環システムを処理するための組成物であって、実質的に酸化剤を含まない組成物を対象とする。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、(1)殺生物有効量の、ビグアナイドを含む第1の非酸化性殺生物剤と、(2)殺生物有効量の、ジブロモニトリロプロピオンアミド(DBNPA)を含む第2の非酸化性殺生物剤とを含む、水再循環システムを処理するための組成物であって、実質的に酸化剤を含まない組成物を用いて、水再循環システムを処理するステップを含む、水再循環システム中の微生物の増殖を抑制する方法を対象とする。
【0015】
これらの実施形態及び他の実施形態は、以下の図面と本発明の詳細な記述から理解されよう。
【0016】
本発明は、付随の図面と関連させて行う次の詳細な記述から一層完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】改善処理及び生存細菌量の対応する減少を示すグラフである。
【図2】改善処理及び生存細菌量の対応する減少を示す別のグラフである。
【図3】プールの改善処理の経時的な結果を示すグラフである。
【図4】プールの改善処理の経時的な結果を示す別のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
バイオフィルムは、これらに限定されるわけではないが、水泳プール、温泉、熱交換器、冷却システム、クーリングタワーなどを含む、水再循環システムの至る所に形成され、繁殖することが観察されてきた。バイオフィルムは、プールと温泉の水の中に十分な消毒剤の濃度が維持されている場合でも、水泳プールと温泉の再循環システム中に蓄積することが観察されてきた。このバイオフィルムの蓄積は、プールと温泉の水を衛生的に又は透明に保つために使われる消毒剤及び/又は酸化剤の大量消費につながり得る。また、フィルターを顕著に詰まらせ、その結果、循環量を減らし、ろ砂のチャネリングを起こし、カートリッジと珪藻土グリッドの故障を起こして水を濁らせ得る。バイオフィルムが限界レベルに達すると、シート状となって管壁からはがれ、水の透明さにも影響を与え得る。
【0019】
ビグアナイドを含む第1の非酸化性殺生物剤とジブロモニトリロプロピオンアミド(DBNPA)を含む第2の非酸化性殺生物剤との、酸化剤を含まない組合せが、水再循環システムにおいて、又は、可視的なバイオフィルムにおいて通常の細菌と真菌の定着を防止する際に、殺生物剤いずれか単独の使用では達成できないと思われる相乗効果を示すことが思いがけなく発見された。本発明の組成物を定期的に適用することにより、循環システムとろ過システムを損なうこと、又は水の透明度に対して負の影響を与えることがないように、バイオフィルムを改善し得ること、及びその増殖を顕著に減少させ得ることが示された。バイオフィルム問題が顕在してしまった場合においても、本発明の処理方法は、循環システムとろ過システムから顕著な量のバイオフィルムを除去することにより、配管、ろ過操作及び水の透明度を回復できる。
【0020】
上記に示したように、1つの実施形態では、本発明は、(1)殺生物有効量の、ビグアナイドを含む第1の非酸化性殺生物剤と、(2)殺生物有効量の、ジブロモニトリロプロピオンアミド(DBNPA)を含む第2の非酸化性殺生物剤とを含む、水再循環システムを処理するための組成物であって、実質的に酸化剤を含まない組成物である。これらの成分の各々について以下に詳述する。
【0021】
本発明の組成物の第1の成分は、ビグアナイド化合物を含む第1の非酸化性殺生物剤である。この第1の非酸化性殺生物剤には、ポリヘキサメチレンビグアナイド(PHMB)のような高分子ビグアナイドを含めて、任意のビグアナイド化合物(又はビグアナイド化合物の混合物)を含み得る。高分子ビグアナイドは、好ましくは、少なくとも1個のメチレン(CH)基を含む架橋基で連結された、式(1)の少なくとも2つのビグアナイド単位を含む。
【化1】


架橋基は、好ましくは、ポリメチレン鎖を含み、任意選択で、酸素、硫黄、又は窒素のようなヘテロ原子の1個又は複数が組み込まれるか又はそれによって置換されている。架橋基は、また、1個又は複数の、飽和又は不飽和の環状部分を含んでもよい。好ましくは、架橋基は、式(1)の2つの隣接ビグアナイド単位の間に、少なくとも3個、特に少なくとも4個の炭素原子が直接介在しているようなものである。好ましくは、式(1)の隣接する2つのビグアナイド単位の間に、10個以下、特に8個以下の炭素原子が介在している。
【0022】
高分子ビグアナイドは、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルのような任意の好適な基、又はアミン基、又は次式のシアノグアニジン基を末端としてもよい。
【化2】

【0023】
末端基がヒドロカルビルである場合、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキルであることが好ましい。末端基が置換ヒドロカルビルである場合、置換基は、高分子ビグアナイドの微生物学的な特性に好ましくない副作用を示さない任意の置換基であり得る。好ましいアリール基には、フェニル基が含まれる。好適な置換基の例は、アリールオキシ、アルコキシ、アシル、アシロキシ、ハロゲン、及びニトリルである。
【0024】
高分子ビグアナイドが、式(1)の2個のビグアナイド基を含む場合、2個のビグアナイド基は、ポリメチレン基で、特別には、ヘキサメチレン基で連結されていることが好ましい。このようにして得られる構造はビスビグアナイドと名付け得る。
【0025】
そのようなビスビグアナイドにおける末端基は、好ましくは、直鎖状、分岐状いずれでもよいC1〜10アルキル基であり、任意選択で置換アリール基であり、特別には任意選択で置換フェニル基である。そうした末端基の例は、2−エチルヘキシル及び4−クロロフェニルである。そのようなビスビグアナイドの具体例は、式(2)と式(3)で表される遊離塩基形の化合物である。
【化3】


及び
【化4】

【0026】
高分子ビグアナイドは、好ましくは、式(1)のビグアナイド単位を3個以上含み、好ましくは、式(4)で表される高分子繰返し鎖又はその塩を有する、線状高分子ビグアナイドである。
【化5】


ここで、X及びYは、同じであっても異なっていてもよい架橋基を表し、Xによって連結されている窒素原子対の間に直接介在する炭素原子の個数と、Yによって連結されている窒素原子対の間に直接介在する炭素原子の個数との合計が、合わせて9を超え17未満である。
【0027】
架橋基X及びYは、好ましくは、ポリメチレン鎖からなり、任意選択で、例えば、酸素、硫黄、又は窒素のようなヘテロ原子で中断されていてもよい。X及びYはまた、飽和又は不飽和であってもよい環状部分を組み込んでいてもよい。この場合、X及びYによって連結されている窒素原子対の間に直接介在する炭素原子の個数は、1個又は複数の環状基の最短である当該セグメントを含むものとする。したがって、次式の基において、窒素原子の間に直接介在する炭素原子の個数は、4であり、8ではない。
【化6】

【0028】
式(4)の高分子繰返し単位を有する線状高分子ビグアナイドは、典型的には、それら高分子鎖が異なる長さである高分子の混合物として得られる。好ましくは、次式の個々のビグアナイド単位の数は、両者を合わせて、3から約80である。
【化7】

【0029】
好ましい線状高分子ビグアナイドは、XとYは同じであり、及び個々の高分子鎖が、末端基を除いて、式(5)又はその塩である高分子鎖の混合物である。
【化8】


ここで、nは4から40、及び特別には4から15である。nの平均値が約12であることが特別に好ましい。好ましくは、高分子の平均分子量は、遊離塩基形で、1100から3300である。
【0030】
線状高分子ビグアナイドは、次式を有するビスジシアンジアミドと
【化9】


ジアミンHN−Y−NH、(ここで、XとYは上記で規定した意味を有する)との反応か、又は、ジアミン塩若しくは次式を有するジシアンイミドとジアミンHN−Y−NH(ここで、XとYは上記で規定した意味を有する)との反応により調製できる。
【化10】


これらの調製方法は、英国特許第702,268号及び第1,152,243号にそれぞれ記載されており、同特許に記載されている高分子ビグアナイドのいずれをも使用することができる。これらの英国特許は、参照によりその全体を本明細書に組み込む。
【0031】
上述したように、線状高分子ビグアナイドの高分子鎖は、アミノ基又はシアノグアニジン基のどちらかを末端としてよい。
【化11】

【0032】
このシアノグアニジン基は、線状高分子ビグアナイドの調製中に加水分解され末端グアニジン基を与え得る。個々の高分子鎖において末端基は同じか又は異なり得る。
【0033】
上述した高分子ビグアナイドの調製において、ジアミンHN−Y−NHと共に、低率の一級アミンR−NH(ここで、Rは1個から18個の炭素原子を含むアルキル基を表す)を含んでいてもよい。一級アミンは連鎖停止剤として働き、したがって高分子ビグアナイドの高分子鎖の一方又は両方の末端は−NHR基で終わり得る。−NHRで連鎖停止されたこうした高分子ビグアナイドもまた使用し得る。
【0034】
高分子ビグアナイドは、無機及び有機の酸と容易に塩を形成する。好ましい高分子ビグアナイドの塩は水溶性である。高分子ビグアナイドが遊離塩基形である式(2)の化合物で表される場合、好ましい水溶性の塩は、ジグルコネートである。高分子ビグアナイドが遊離塩基形である式(3)の化合物で表される場合、好ましい水溶性の塩は、ジアセテートである。高分子ビグアナイドが遊離塩基形である式(5)で表される線状高分子の混合物である場合、好ましい塩は、塩酸塩である。
【0035】
高分子ビグアナイドが、その個々の高分子鎖が、末端基を除いて、塩酸塩の形で式(5)によって表される線状高分子の混合物であることが特に好ましい。この化合物は、Arch Chemicals,Inc.(Norwalk、CT)から、BAQUACILの商標名で商業的に入手できる。
【0036】
高分子ビグアナイドは、好ましくは1から200ppm、より好ましくは3から150ppm、特別には4から75ppm、さらに特別には6から20ppmのその水中濃度を与えるように、水再循環システムに加える。
【0037】
本発明の組成物中のビグアナイドの量は、水再循環システムに加えた場合に殺生物の効果が起こるような任意の量である。さらに具体的な実施形態では、組成物中のビグアナイドの量は、液体として、重量で0.1%から40%の範囲であるか、又は固体(顆粒又は圧縮形)として、重量で1%から99%の範囲である。好ましくは、液体として、重量で3%から30%の範囲であるか、又は固体として、重量で10%から75%の範囲であり、より好ましくは、液体として、重量で5%から25%の範囲であるか、又は固体として、重量で15%から60%の範囲であり、最も好ましくは液体として、重量で10%から20%の範囲であり、固体として、重量で25%から50%の範囲である。重量パーセントはすべて、組成物の全重量に基づいている。
【0038】
殺生物効果をもたらすために、組成物中のビグアナイドの殺生物有効量は、好ましくは、約0.1と約500ppmの間、より好ましくは約0.5と100ppmの間の、最も好ましくは約1と20ppmの間の、ビグアナイドの水中の最終殺生物剤濃度になる。
【0039】
本発明の組成物の第2の成分は、ジブロモニトリロプロピオンアミド(DBNPA)を含む第2の非酸化性殺生物剤である。本発明の組成物中のDBNPAの量は、水再循環システムに加えた場合に殺生物効果が起こるような任意の量である。さらに具体的な実施形態では、組成物中のDBNPAの量は、液体として、重量で0.1%から40%の範囲であるか、又は固体(顆粒又は圧縮形)として、重量で1%から99%の範囲である。好ましくは、液体として、重量で3%から30%の範囲であるか、又は固体として、重量で10%から75%の範囲であり、より好ましくは、液体として、重量で5%から25%の範囲であるか、又は固体として、重量で15%から60%の範囲であり、最も好ましくは液体として、重量で10%から20%の範囲であり、固体として、重量で25%から50%の範囲である。重量パーセントはすべて、組成物の全重量に基づいている。
【0040】
殺生物効果をもたらすために、組成物中のDBNPAの殺生物有効量は、好ましくは、約0.05と約100ppmの間、より好ましくは、約0.1と50ppmの間、最も好ましくは、約0.25と25ppmの間の、ビグアナイドの水中の最終殺生物剤濃度になる。
【0041】
さらに、PHMB:DBNPAの最も好ましい濃度比(処理水中のPPMで測定する場合)は、バイオフィルムの蓄積を防止するには、3:0.25から20:6であり、すでに存在するバイオフィルムを抑制するには1:1から1:3である。
【0042】
本発明の組成物は、塩素、アルカリとアルカリ土類の次亜塩素酸塩、次亜塩素酸、塩素化イソシアヌル酸塩、臭素、アルカリとアルカリ土類の次亜臭素酸塩、次亜臭素酸、塩化臭素、ハロゲン化ヒダントイン、オゾンのような酸化剤及び酸化性の試薬、並びにアルカリとアルカリ土類の過ホウ酸塩、アルカリとアルカリ土類の過炭酸塩、アルカリとアルカリ土類の過硫酸塩、過酸化水素、過カルボン酸、及び過酢酸のような過酸化化合物を実質的に含んでいない。本明細書で用いる場合、「実質的に含んでいない」というのは、重量で0.1%未満である。
【0043】
本発明の組成物は、界面活性剤、生物学的分散剤、生物学的浸透剤、ソルビタンモノステアレート、スルファミン酸、タロープロピルアミンジアミン、ココプロピルアミンジアミン、オレイルピロピルアミンジアミン、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、DTEA II、及びこれらの組合せからなる群から選択される1種又は複数のアジュバントをも含んでもよい。
【0044】
本発明の組成物に含み得るアジュバントの量は、液体として、重量で1%から75%の範囲であるか、又は固体(顆粒又は圧縮形)として、重量で5%から75%の範囲である。好ましくは、液体として、重量で5%から70%の範囲であるか、又は固体として、重量で10%から70%の範囲であり、より好ましくは、液体として、重量で10%から60%の範囲であるか、又は固体として、重量で15%から60%の範囲であり、最も好ましくは液体として、重量で20%から50%の範囲であり、固体として、重量で25%から50%の範囲である。さらに、PHMB:DBNPA:アジュバントの最も好ましい濃度比(処理水中のPPMで測定する場合)は、10:0.5:10から20:3:50である。
【0045】
使用される場合、本発明の組成物中の好ましいアジュバント量は、好ましくは、約5と約150ppmの間、より好ましくは、約15と100ppmの間、最も好ましくは、約20と50ppmの間のアジュバントの最終水中濃度を生じる。
【0046】
本発明の組成物は、水処理業界で公知の添加剤も含んでもよい。このような添加剤としては、顔料、染料、溶解速度調整剤、結合剤、潤滑剤、含色塩などが含まれるがこれらに限定されるわけではない。このような添加剤は、混合物に加えられるどれかの殺生物成分に予備的に混合してもよい。さらに、水又はライムのような不活性の副生成物が組成物中に存在してもよい。
【0047】
本発明の組成物の作成は、数種の異なる方法によって達成できる。例えば、本発明の組成物を混合するのに、タンブラ混合機、V型混合機、リボン型混合機などをバッチ方式で使用できる。さらに、組成物を混合するのに、スクリューオーガー(augur)、コンベアなどを連続方式で使うこともできる。そのような装置と技法は当業界で一般に公知である。代替として、組成物は層状又は均一混合の固体成形品に成形することもできる。本発明の組成物は、様々な固体成形品に成形してもよい。このような成形品としては、錠剤、ブリック、ブリケット、ペレット、顆粒などがあるが、これらに限定されるわけではない。本発明の組成物の成分は、融解し、共に混合し、次いで金型の中に注入し、融解物を室温に冷やしてもよい。この製造法によれば、組成物を1層又は異なる複数層に作製することもできる。PHMBとDBNPAを製剤化する別の方法は、該固体の一方又は複数を融解し、それらを共に混合し、金型の中に注入し、融解物を室温に冷却することであろう。この場合も、異なる2層として達成することができる。
【0048】
本発明の組成物と方法は、バイオフィルムが蓄積する任意の水再循環システム、例えば水泳プール、温泉、装飾用の池にだけでなく、製紙工場、クーリングタワー、熱交換器、廃水処理装置、木材防腐用途などの工業的な用途においても使用し得る。意義深いことに、本発明の組成物は、それぞれの活性成分を個別に検討したときは当業者に予測されないと思われる、活性成分2種間の相乗効果を発揮する。
【0049】
水泳プール用の処理として使用する場合、本発明の組成物は、上述した濃度範囲になるように、水泳プールの水再循環システムに加えられ、2つの殺生物剤の間の相乗効果を発揮する。ポリヘキサメチレンビグアナイド(1〜20ppm)と毎日添加されるジブロモニトリロプロピオンアミド(0.1〜6ppm)と任意選択で用いるアジュバントとの組合せは、日常的に適用(予防的に適用)することにより、水中又は可視的なバイオフィルム中での通常の水泳プール内細菌及び真菌の定着を防止する際に、殺生物剤いずれか単独の使用では達成できないと思われる相乗効果を示した。アジュバントを用い又は用いずに、ポリヘキサメチレンビグアナイド(1〜20ppm)及びジブロモニトリロプロピオンアミド(3〜24ppm)の添加の組合せを含む改善処理もまた、水中での並びに配管及びフィルター中での、通常の水泳プール内細菌及び真菌の定着集団を改善する際に、それぞれの殺生物剤の単独使用では達成できないと思われる相乗効果を示す。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
改善策
ペシロマイセス・リラシヌス(Paecilomyces lilacinus)、トリコデルマ種(Trichoderma spp.)などの水泳プールに見出される通常真菌の真菌分離株、及び水泳プールにやはり一般的な細菌分離株、即ちアルカリゲネス(Alcaligenes)種、スフィンゴモナス(Sphingomonas)種を用いてバイオフィルムを作製し、それを次の方法を用いて殺生物剤で処理した。
【0051】
真菌胞子の懸濁液の混合物を10%R2Aブロス中に3.65×10個/mlの濃度で調製した。列12を除いて96ウェルプレートの各ウェルに胞子懸濁液の一定分量を加えた。プレートを18時間、28℃でインキュベートした。また、細菌懸濁液の混合物を20%R2Aブロス中に2.34×10個/mlの濃度で調製した。真菌胞子を入れた96ウェルプレートの各ウェルに、細菌懸濁液の一定分量を加えた。プレートを24時間、28℃でインキュベートした。
【0052】
新しい96ウェルプレートに、列1と12を除いて、各ウェルに6ppmのPHMB溶液を加えた。殺生物剤又はアジュバントの100ppm溶液を、6ppmのPHMB溶液に加えた。この薬品溶液の一定分量を、列1と2の各ウェルに加えた。列2の各ウェル中で溶液を混合し、溶液の一定分量を列2の各ウェルから列3の各ウェルへ移液した。希釈を列11まで繰り返し、希釈後の列11の各ウェルからの溶液は捨てた。
【0053】
インキュベートしたプレートの各ウェルから培養ブロスを除いた。0.8%塩化ナトリウム溶液の一定分量を、列12を除いて各ウェルに加えた。次いで、塩化ナトリウム溶液を各ウェルから除いた。調製した薬品溶液をバイオフィルムプレートの対応するウェルへ移した。プレートを24時間、28℃でインキュベートした。
【0054】
プレートから薬品溶液を除き、レサズリン溶液の一定分量を列12も含めて各ウェルに加えた。プレートを実験台上で24〜48時間維持した。プレートを540nm及び620nmで読み取った。この2波長間の吸光度の差が殺生物剤の性能を示した。表1は試験した殺生物剤の効力を示す。
表1 PHMB 6ppmと共に試験した殺生物剤の有効濃度
【表1】

【0055】
表1で示したように、6ppmのPHMBの存在下、およそ3ppmのDBNPAは、バイオフィルムマトリックス内の全生物を抑制できたが、他方、表1の他の候補品は無効であることが示された。
【0056】
表2は、同じバイオフィルムマトリックス内の全生物に対するDBNPAの効力に及ぼす、様々なアジュバントの効果を示す。
表2.PHMB及びアジュバントの存在下でのDBNPAの有効濃度
【表2】

【0057】
表2は、バイオフィルム中の全生物を抑制するのに必要なDBNPA濃度の低下に対して、スルファミン酸が最も有意な効果を示したこと、及びワーム(特許品の酵素ブレンド)、SADA及びDSPOが、DBNPA濃度を低下させたことを示している。他のアジュバントはどれも、より低い濃度でバイオフィルム中の生物を抑制するDBNPAの能力に正の効果を与えなかった。
【0058】
(実施例2)
予防―二次スクリーン
二次スクリーン法は水泳プールの実験規模のモデルに基づいている。ある容量(800ml)の水泳プール合成水(塩化カルシウム二水和物と炭酸水素ナトリウムの溶液)を蠕動ポンプによって水泳プール用ろ砂塊中を圧送する。各システムの水温は80〜90°Fの範囲に保つ。この実験の目的は、微生物が水中及び砂ろ媒体中でコロニーを定着させるのを防止し、それによってシステム中でのバイオフィルムの形成を防止する殺生物剤の強健性又は能力を、単独で又は組合せで評価することである。殺生物剤候補品の性能は、水の透明度が1.0NTU未満に保たれた日数、並びにこの濁度の読取値を超えたときの細菌及び真菌のカウント数により決定した。濁度が1.0NTUを超えるときには、水と砂の両方の中に細菌及び真菌の有意な集団が存在することが示された。また、濁度が1.0NTUを超えるときには、砂と配管の中に可視的なバイオフィルムが観察された。
【0059】
この水に、必要に応じて化学薬品を加えてもよい。典型的には、ポリヘキサメチレンビグアナイド(PHMB)の濃度は、殺生物剤の毎日又は毎週用量の添加により、活性成分が0〜10ppmの範囲に保たれる。実験の開始時に、過酸化水素が0〜27.5ppmの濃度で加えられ、各システムにおける過酸化水素の損失分を比色分析法でモニターした。2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)を0〜6ppmの間の濃度範囲で毎日又は毎週のどちらかで加える。
【0060】
二次モデルシステムで、水泳プールの水中で典型的に見出される8種の細菌種及び4種の真菌種を毎日の頻度で投入する。これらの微生物には、ペシロマイセス属及びトリコデルマ属の真菌種、並びにアルカリゲネス属、クリセオバクテリウム(Chryseobacterium)属及びスフィンゴモナス属の細菌種を含む。各播種は、モデル装置当たり0.8×10個の微生物を全体で加えたことに相当する。
【0061】
システム中に存在する微生物の栄養源として、ある量(5ml)の合成水泳者負荷液をシステムに毎日の頻度で加える。水泳者負荷液は、尿素、アルブミン、クレアチニン、乳酸、尿酸、グルクロン酸、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化アンモニウム、重炭酸ナトリウム、リン酸カリウム、硫酸カリウムのような、炭素、窒素及び主要/微量栄養源からなる。
【0062】
各二次モデルシステム中に存在する生存細菌及び真菌の総数を寒天プレートカウント法で毎週測定する。各装置から水試料を取り、この試料を用いて一連の希釈液(各段10−1で元の試料の10−5にまで)を調製する。次いで、希釈液の一定分量を、乾燥したシスチンラクトース電解質欠乏寒天プレート(細菌の計数用)、及びサブロー(Sabaroud)ブドウ糖乾燥寒天プレート(真菌の計数用)の上に広げる。細菌と真菌のプレートは、生存生物数の計数に先立ち、30℃でそれぞれ3日と5日インキュベートする。
【0063】
モデル水濁度を、Hach 2100P濁度計を用いて、試料水の比濁分析濁度単位(NTU)の測定によって毎日の頻度で測定した。NTUの測定は装置製造者の使用説明書に従って行った。PHMB濃度の測定は、0.024%(W/V)のエオシンY及び10%(W/V)の酢酸ナトリウム三水和物の溶液との反応により、並びにその結果生成する540nmの発色の測定により、比色分析法で毎日行った。始めに、既知濃度のPHMB溶液を用いて、PHMBに対するBeer則プロットを作成する。次いで、得られたプロットを二次モデル試料水中のPHMB濃度の決定に用いる。過酸化水素の濃度は、装置製造者の使用説明書に従って操作したLovibond PC22光度計と連動して、Lovibond過酸化水素低濃度域テスト錠剤を用いることにより追跡した。
【0064】
殺生物剤候補品の性能は、水の透明度が1.0NTU未満に保たれている日数によって決定される。濁度が1.0NTUを超えるときには、水と砂の両方の中に細菌及び真菌の有意な集団が存在することが示された。可視的なバイオフィルムも、砂と配管の中に観察されよう。
【0065】
下記の表3と表4に示したデータは、水が濁るのを防止すること及びシステムに加えられた細菌及び真菌を抑制することにおける、PHMBとDBNPA(後者を毎日添加したとき)の間の相乗的な性能を示している。実験1(表3)のデータは、PHMB単独で操作したシステムに比較して、PHMBとDBNPA(後者を毎日1ppmの割合で添加して)の組合せの増大した性能を明らかにしている。PHMBと共にDBNPAを毎週添加することは、PHMB単独の処理と同程度に良好には働かず、このことは、増大した性能を生むにはDBNPAを定期的に添加する必要性があることを明らかにした。
【0066】
PHMBとDBNPAの殺生物活性の間の相乗作用は、実験2(表4)で得られたデータで明確に示されている。この実験では、PHMB(1ppmの割合で毎日添加)の存在しない場合は、DBNPAの添加はシステムの不良化をもたらし、濁り水が発現するのは、PHMB単独又はPHMBとDBNPAの組合せを投与したシステムに比べて有意に早い。
【0067】
表3と表4に示したデータは、また、0.5ppm(毎日の添加)又はそれ以上の濃度でDBNPAを添加しないと、水中に過酸化水素残渣が存在しない場合には水の透明度は維持できないことを明らかにしている。これと反対に、PHMBとDBNPAの組合せ(後者を毎日0.5及び1ppmの濃度で添加して)は、システムから過酸化水素が完全に消失した後も、水の透明度を19日及び69日間保持した。このデータは、酸化剤がまったく存在しない場合に、PHMBとDBNPAの組合せが増大した殺生物効果を有することを明確に示している。
表3:細菌と真菌の増殖の抑制に対するPHMB、DBNPA及び組合せの性能についての例1
【表3】


表4:細菌と真菌の増殖の抑制に対するPHMB、DBNPA及び組合せの性能についての例2
【表4】

【0068】
(実施例3)
改善−二次スクリーン
二次スクリーン法は水泳プールの実験規模モデルに基づいている。ある容量(800ml)の水泳プール合成水(塩化カルシウム二水和物と炭酸水素ナトリウムの溶液)を蠕動ポンプによって水泳プールろ砂塊中を圧送する。各システムの水温は80〜90°Fの範囲に保つ。システムを不良化するに任せると、濁り水と細菌と真菌の増殖が著しい結果となる。これは、不適正に維持されて問題がある水泳プールに類似させるためのものである。この試験の目的は、水とろ砂の両方の中に存在する生物の抑制に対してアジュバントと共に殺生物剤単独又は殺生物剤の組合せの能力を評価することである。濁度は重要な尺度ではない、なぜならば、懸濁固体は、細かすぎてろ過できず、そのためフロキュレーションのような別の化学処理で取り除く必要があると思われるからである。
【0069】
この水に、必要に応じて化学薬品を加えてもよい。典型的には、ポリヘキサメチレンビグアナイド(PHMBA)の濃度は、殺生物剤の毎日又は毎週用量の添加により、活性成分が0〜10ppmの範囲に保たれる。実験の開始時に、過酸化水素を0〜27.5ppmの濃度で加える。
【0070】
二次モデルシステムで、水泳プールの水中で典型的に見出される8種の細菌種及び4種の真菌種を毎日の頻度で投入する。これらの微生物には、ペシロマイセス属及びトリコデルマ属の真菌種、並びにアルカリゲネス属、クリセオバクテリウム属及びスフィンゴモナス属の細菌種を含む。各播種は、モデル装置当たり0.8×10個の微生物を全体で加えたことに相当する。
【0071】
システム中に存在する微生物の栄養源として、ある量(5ml)の合成水泳者負荷液をシステムに毎日の頻度で加える。水泳者負荷液は、尿素、アルブミン、クレアチニン、乳酸、尿酸、グルクロン酸、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化アンモニウム、重炭酸ナトリウム、リン酸カリウム、硫酸カリウムのような、炭素、窒素及び主要/微量栄養源からなる。
【0072】
システムを不良化するに任せると、濁り水(>1.0NTU)と細菌と真菌の増殖が著しいという結果となる。殺生物処理剤を加え、生存している微生物の減少を測定する。殺生物処理剤の2度目を加えてもよい。生存している細菌と真菌の両方の集団を有意に減少させる殺生物剤又は組合せの能力によって性能を測定する。図1及び2は、DBNPAが酸化剤や界面活性剤よりも有意に良好に機能する状況を示している。
【0073】
図1及び2は、細菌及び真菌の有意な数を有し、同時に配管や砂にバイオフィルムが定着しているプールの水及び砂に対して、酸化性及び非酸化性の改善処理用化学薬品の有効性を示している。さらにそれらは、DBNPAが、二酸化塩素及びオキソン(モノ過硫酸カリウム)と同様の生存細菌の対数減少、並びに水中における、DDAC及びn−タローアルキルトリメチレンジアミンの非酸化性界面活性剤より改善された機能を与えたことを示している。定着したバイオフィルムのために処理がより困難な媒体である砂中の生存細菌の対数減少において、DBNPAの性能は、酸化性、非酸化性の両候補品より優れていると判断した。
【0074】
(実施例4)
試験プールにおける予防
試験プールを、システム中の細菌と真菌の蓄積に対する消毒剤の効果を評価するために、予防モードで運転した。プールのポンプは1日当たり最低でも8時間運転した。各プールに、週に2回、水泳プールの水中で典型的に見出される8種の細菌及び4種の真菌を投入した。これらの微生物は、ペシロマイセス属及びトリコデルマ属の真菌種、並びにアルカリゲネス属、クリセオバクテリウム属及びスフィンゴモナス属の細菌種を含む。各播種は、試験プール当たり0.8×10個の微生物を全体で添加したことに相当する。
【0075】
システム中に存在する細菌の栄養源として、合成水泳者負荷液をシステムに毎週の頻度で加える。水泳者負荷液は、尿素、アルブミン、クレアチニン、乳酸、尿酸、グルクロン酸、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化アンモニウム、重炭酸ナトリウム、リン酸カリウム、硫酸カリウムのような、炭素、窒素及び主要/微量栄養源からなる。
【0076】
各試験プール中に存在する生存細菌及び真菌の総数を毎週、寒天プレートカウント法を実施して測定した。各試験プールから水試料を取り、この試料を用いて一連の希釈操作(各段10−1で元の試料の10−5にまで)を調製する。次いで、希釈液の一定分量を、乾燥したシスチンラクトース電解質欠乏寒天プレート(細菌の計数用)、及びサブローブドウ糖乾燥寒天プレート(真菌の計数用)の上に広げる。細菌と真菌のプレートは、生存生物数の計数に先立ち、30℃でそれぞれ3日と5日インキュベートする。
【0077】
対照プールに、試験の開始時に、過酸化水素27.5ppm及び活性PHMB 3ppm(消毒剤製品として15ppm)の単回用量を加えた。PHMBのみを、毎週、単回用量の添加で2〜4ppmの活性(消毒剤として10〜15ppm)に保った。
【0078】
最初の135日の試験期間の間、試験プールに、活性PHMBの初回用量3ppm、及び0.5、1.0、及び2.0ppmの活性DBNPAの毎日用量を加えた。PHMBは、毎週、単回用量を加えることで2〜4ppm(消毒剤として10〜15ppm)の活性に保たれた。土曜日と日曜日には、化学薬品の投与を行わなかった。
【0079】
136日目に、試験プールのすべてにおいて10ppmの活性PHMB(消毒剤として50ppm)にPHMBの補充を行い、毎週、単回用量を加えることで6〜10ppmの活性PHMBを保った。
【0080】
また、プール6は、日量で約0.3ppmの活性DBNPAを送達する2週毎の錠剤添加と、過酸化水素の初期用量27.5ppm並びに毎週用量約7ppmに切り換えた。
【0081】
対照及び試験プールに対する、水中微生物の平均カウント数及びカウント百分率のデータを下の表5に挙げる。
表5.水中微生物の平均カウント数及びカウント百分率のデータ
【表5】

【0082】
かびと細菌の平均カウント数並びに0(<10cfu/ml)及び>999cfu/ml(良好な抑制を維持していない処理を示す)のカウント頻度に関する、試験プールに対する対照プールの比較により、下記のことが示される。
A.DBNPAで処理されたプールはすべて、対照に対して2〜4logの有意な改善機能を示した。
B.低PHMBであったプール2では他のDBNPAのプールに比較してかびの抑制が困難であった。これはプール2の場所の問題による可能性がある。なぜなら、豪雨の後で大量の土が観察されたからであり、このようなことは他のプールでは見られなかった。かびが土と共に入った可能性があり、このため投入量が増加した。
C.PHMBを推奨範囲に増加した場合、DBNPA処理のすべてのプールにおいて、かびと細菌の平均カウント数は有意に減少し、PHMBとDBNPAの間の相乗作用が示された。より高いPHMBにDBNPAを加えた処理におけるかびの平均カウント数はすべて、対照プールに対して3logから1桁、より低い濃度のPHMBにDBNPAを加えた処理のプールに対して、1〜2log低下している。
【0083】
(実施例5)
対照プールにおける改善
循環システムとろ過システム中に、細菌、真菌及びおそらくは混合バイオフィルムの蓄積を促進するように、対照プールを消毒剤の適正濃度未満で運転した。プールのポンプは1日当たり最低でも8時間運転した。各プールに、週に2回、水泳プールの水中で典型的に見出される8種の細菌及び4種の真菌を投入した。これらの微生物は、ペシロマイセス属及びトリコデルマ属の真菌種、並びにアルカリゲネス属、クリセオバクテリウム属及びスフィンゴモナス属の細菌種を含む。各播種は、試験プール当たり0.8×10個の微生物を全体で加えたことに相当する。
【0084】
システム中に存在する細菌の栄養源として、合成水泳者負荷液をシステムに毎週の頻度で加える。水泳者負荷液は、尿素、アルブミン、クレアチニン、乳酸、尿酸、グルクロン酸、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化アンモニウム、重炭酸ナトリウム、リン酸カリウム、硫酸カリウムのような、炭素、窒素及び、主要/微量栄養源からなる。
【0085】
各試験プール中に存在する生存細菌及び真菌の総数を毎週、寒天プレートカウント法を実施して測定した。各試験プールから水試料を取り、この試料を用いて一連の希釈操作(各段10−1で元の試料の10−5にまで)を調製する。次いで、希釈液の一定分量を、乾燥したシスチンラクトース電解質欠乏寒天プレート(細菌の計数用)、及びサブローブドウ糖乾燥寒天プレート(真菌の計数用)の上に広げる。細菌と真菌のプレートは、生存生物数の計数に先立ち、30℃でそれぞれ3日と5日インキュベートする。
【0086】
対照プールに、試験の開始時に、過酸化水素27.5ppmと3ppmの活性PHMB(消毒剤製品として15ppm)の単回用量を加えた。PHMBのみを、毎週、単回用量を加えることで2〜4ppmの活性(消毒剤として10〜15ppm)に保った。
【0087】
対照プールは、濁度が1.0NTUを超え、バイオフィルムがスキマー及び/又はプール表面に見えたときに、下記に列挙した改善処理を用いて改善した。
1.バイオフィルムのある表面をブラシで掃き、
2.6ppmの活性DBNPA並びに0.5ppm及び約2ppmの塩化ポリアルミニウムを添加し、
3.水を循環し、ポンプを止めて濁りを鎮め、
4.フロックが落ち着いた後、プールを排水した。
2つの処理についての抗微生物性と水質に関する結果を図3と4に例示してある。
【0088】
図3と4は、両プールにおける改善処理が、水中の細菌カウント数の直後の4log減少、及び真菌カウント数の3log減少を起こしたことを示している。水の透過度はその後まもなく回復した。このデータは、PHMBのみの使用では抑制が困難な厄介な生物を抑制できることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)殺生物有効量の、ビグアナイドを含む第1の非酸化性殺生物剤と、
(2)殺生物有効量の、ジブロモニトリロプロピオンアミド(DBNPA)を含む第2の非酸化性殺生物剤と
を含む、水再循環システムを処理するための組成物であって、前記組成物が実質的に酸化剤を含まない組成物。
【請求項2】
前記ビグアナイドがポリヘキサメチレンビグアナイド(PHMB)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物中の前記ビグアナイドの量が、前記組成物の全重量を基にして、約0.1から約99重量%の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物中の前記ビグアナイドの量が、前記組成物の全重量を基にして、約5から約60重量%の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物中の前記ビグアナイドの量が、前記組成物の全重量を基にして、約10から約50重量%の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物中の前記ビグアナイドの量が、約0.1と約500ppmの間のビグアナイドの水中最終濃度を生じる、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物中の前記ビグアナイドの量が、約0.5と約100ppmの間のビグアナイドの水中最終濃度を生じる、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物中の前記ビグアナイドの量が、約1と約20ppmの間のビグアナイドの水中最終濃度を生じる、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物中の前記DBNPAの量が、前記組成物の全重量を基にして、約0.1から約99重量%の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物中の前記ビグアナイドの量が、前記組成物の全重量を基にして、約5から約60重量%の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物中の前記ビグアナイドの量が、前記組成物の全重量を基にして、約10から約60重量%の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物中の前記DBNPAの量が、約0.05と約100ppmの間のDBNPAの水中最終濃度を生じる、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物中の前記DBNPAの量が、約0.1と約50ppmの間のDBNPAの水中最終濃度を生じる、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物中の前記DBNPAの量が、約0.25と約25ppmの間のDBNPAの水中最終濃度を生じる、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
界面活性剤、生物学的分散剤、生物学的浸透剤、ソルビタンモノステアレート、スルファミン酸、タロープロピルアミンジアミン、ココプロピルアミンジアミン、オレイルピロピルアミンジアミン、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、DTEA II、及びこれらの組合せからなる群から選択される1種又は複数のアジュバントをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物中の前記アジュバントの量が、前記組成物の全重量を基にして、約1から約75重量%の範囲である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物中の前記アジュバントの量が、約5と150ppmの間の前記アジュバントの水中最終濃度を生じる、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
組成物を用いて水再循環システムを処理するステップを含む、前記水再循環システム中の微生物の増殖を抑制する方法であって、
前記組成物が、
(1)殺生物有効量の、ビグアナイドを含む第1の非酸化性殺生物剤であって、ビグアナイドの前記水再循環システム中の最終濃度が約0.1と約500ppmの間である第1の非酸化性殺生物剤、
(2)殺生物有効量の、ジブロモニトリロプロピオンアミド(DBNPA)を含む第2の非酸化性殺生物剤であって、DBNPAの前記水再循環システム中の最終濃度が約0.05と約100ppmの間である第2の非酸化性殺生物剤、及び
(3)任意選択で、界面活性剤、生物学的分散剤、生物学的浸透剤、ソルビタンモノステアレート、スルファミン酸、タロープロピルアミンジアミン、ココプロピルアミンジアミン、オレイルピロピルアミンジアミン、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、DTEA II、及びこれらの組合せからなる群から選択される1種又は複数のアジュバントであって、アジュバントの前記水再循環システム中の最終濃度が約5と150ppmの間であるアジュバントを含み、
前記組成物が実質的に酸化剤を含まない方法。
【請求項19】
ビグアナイドの前記水再循環システム中の最終濃度が約0.5と約100ppmの間である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ビグアナイドの前記水再循環システム中の最終濃度が約1と約20ppmの間である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
DBNPAの前記水再循環システム中の最終濃度が約0.1と約50ppmの間である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
DBNPAの前記水再循環システム中の最終濃度が約0.25と約25ppmの間である、請求項18に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2010−513275(P2010−513275A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541346(P2009−541346)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/025304
【国際公開番号】WO2008/076251
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(500000175)アーチ ケミカルズ,インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】