説明

水処理のための新規なポリアニリンの製造および使用

本発明は、アニリンユニットと有機硫黄ユニットを含むポリアニリンであって、前記ポリアニリンがドープされており、且つ約5〜約50の数平均重合度を有することを特徴とするポリアニリンに関する。本発明の範囲には、ポリアニリンの製造方法も含まれ、この方法において、アニリンと少なくとも一つの有機硫黄ユニットは酸化的な酸触媒重合反応にて、ポリアニリン誘導体に変換される。本発明の対象はまた、本発明に係るポリアニリンでコーティングされた基質であり、また、基質をコーティングするための方法である。本発明の範囲には、さらに前記基質をコーティングするために好適なコーティング組成物も含まれる。本発明は、それゆえ、コーティング組成物の製造方法にも関する。本発明の対象は、ドープされ、ポリマー主鎖中に硫黄を有するポリアニリンの、水処理のため及び/又は空気の精製のための使用でもあり、精製方法を実施するための浄化反応器でもある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機硫黄ユニットを有するポリアニリン誘導体に関し、また、水質調整における、空気の精製のための、レドックスフロー(redox flow)電池の調製のための、あるいは電気分解におけるポリアニリン誘導体の使用にも関する。本発明はまた、新規なポリアニリン誘導体および当該ポリアニリン誘導体で被覆された基質を製造するためのプロセスにも関する。
【背景技術】
【0002】
水質調整において、酸化プロセスは有害な物質を減少させるため及び殺菌のために頻繁に使用されている。化学薬品の添加を伴う湿式化学プロセスは多くのケースにおいて水中の塩分の望まれない増加をもたらし、且つ、紫外線放射または電気化学的ステップによる活性化を必要とする。
【0003】
これらのいわゆる「促進酸化法(Advanced Oxidation Processes)」は不純物への酸化作用を有するOHラジカルを産生する。例えば、ポリアニリンは、水中に溶解している酸素から活性酸素種(例えばOHラジカル、スーパーオキシドラジカル・アニオンおよび同様のものが挙げられる)を産生し、且つ、電気化学的に再生されることができる。
【0004】
導電性の無機物質の添加なしで電流を伝導するポリマーは「本質的に導電性のポリマー(ICPs:intrinsically conductive polymers)」と呼ばれる。ICPsの特有の性質は、それらのポリアニオン性構造およびそれらの特異的形態にある。
【0005】
ポリアニリン(PAni)もICPsのグループに属する。ポリアニリンの合成は、ラジカルを通じて(Min-Jong Chang, Yun-Hsin Liao, Allan S. Myerson, T. K. Kwei, J. Appl. Pol. Sci., Vol. 62, 1427-1428)または酸性溶液からの電気化学重合(B. J. Hwang, R. Santhanam, C. R. Wu, and Y. W. Tsai. J. Solid State Electrochem., 5:280-286, 2001)を通じて起こる。
【0006】
今まで、ポリアニリンは主に腐食防止として、電子工学(フレキシブルPCBsおよびディスプレイ中の導電層)において、EMI遮蔽のため、または帯電防止成分として使用されてきた。
【0007】
文献において、ポリアニリンは水処理(例えば、欧州特許第0 782 970号参照)のためにも記述されている。ポリアニリンは、例えば、顆粒状物質として使用されることができ、水処理は充填層中で行われる。
【0008】
しかしながら、ほとんどの場合、効率的な水質調整には、精製される水の濾過(例えば膜を用いた限外濾過)も必要とされる。
【0009】
その中で、触媒活性が特定のバリア構造と直接結び付けられている膜(触媒メンブラン)は、プロセス強化において特に大きな関心を持たれている。これは、触媒を膜材料のボリューム中に埋め込む(包埋する)ことによって、または外側もしくは内側の膜表面での固定化によって達成可能である。後者の変形の例は、固定化Fe/Niナノ粒子を有する酢酸セルロースからなる多孔質膜を介した水流の触媒的解毒(塩化炭化水素の分解)である(Meyer D.E., Wood K., Bachas L.G., Bhattacharyya D., Environmental Progress 2004; 23:232-242)。
【0010】
最近、膜上のポリアニリン類は、水質調整における活用可能性についても議論されている。このような例として、特開2003-159596が挙げられ、そこには、活性酸素による微生物除去用の、ポリアニリンで被覆された膜が記載されている。
【0011】
水質調整の分野において膜の使用は急速に増加してきた。しかしながら、このようなテクノロジーを用いると、スケーリング、汚染および機械的荷重を伴う問題が発生する。その結果、膜濾過後にたびたび殺菌ステップも必要となる。スケーリングと汚染は、耐用年数の減少につながり、またクリーニングおよび予備部品のための相当なコストにもつながる(N. Engelhardt, H. Heidermann, K. Drensla, C. Brepols, A. Janot, Optimierung einer Belebungsanlage mit Membranfiltration, Erftverband, Bereich Abwassertechnik, Bergheim, October 2004)。
【0012】
さらなる問題が膜のコーティングで発生する。これらはしばしばコーティングの剥離や亀裂につながり得る不均質性を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許第0 782 970号公報
【特許文献2】特開2003-159596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、それゆえ、従来技術において知られている不都合を克服すること、すなわち容易に分散可能で、基質への良好な接着性を示し、水質調整のためにも好適であるポリアニリンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的は、アニリンユニットと有機硫黄ユニットを有するポリアニリンであって、前記ポリアニリンがドープされていること、および、約5〜約50の数平均重合度を有することを特徴とするポリアニリンによって達成される。
【0016】
本発明の範囲には、ポリアニリンの調製(製造)プロセスも含まれ、このプロセスにおいて、アニリンと少なくとも一つの有機硫黄ユニットは、酸化的な、酸触媒重合反応においてポリアニリン誘導体に変換される。
【0017】
本発明の対象は、また、本発明に係るポリアニリンでコーティングされた被覆基質であり、また、基質をコーティングするためのプロセスである。
【0018】
本発明の範囲には、さらに基質をコーティングするのに適しているコーティング組成物も含まれる。
【0019】
それ故、本発明は、コーティング組成物の調製プロセスにも関連し、前記プロセスは以下のステップを含む:
a)本発明に係る粉砕されたポリアニリンの準備
b)任意の、さらなるポリアニリンの粉砕
c)前記粉砕ポリアニリンおよび分散剤からの分散(系)の生成
d)任意の、エネルギー入力による(特に超音波を用いた)、前記分散系の処理、および
e)濾過
【0020】
本発明の対象は、また、ドープされ、ポリマー主鎖中に硫黄を含有するポリアニリンの使用であって、水処理(特に水の精製及び/又は水質調整)のため、及び/又は空気の精製のため、及び/又はレドックスフロー電池の調製のため及び/又は電気分解におけるポリアニリンの使用に関し、且つ、精製プロセスを実施するための浄化反応器(浄化リアクター)にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明にかかる実験装置の一例を示す。
【図2】図2は、100倍に拡大された、合成直後のポリアニリンDCTを示す。
【図3】図3は、ポリアニリン-DCTベースのIRスペクトルを示す。
【図4】図4は、OHラジカルを生成するための実験用反応器を示す。
【図5】図5は、ポリアニリン作用電極のパルス分極による分解テストにおけるRNO濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の対象は、アニリンユニットおよび有機硫黄ユニットを含むポリアニリンであって、前記ポリアニリンがドープされており(ドープ状態であり)、且つ、約5〜約50、好ましくは約8〜約35、特に好ましくは約8〜約30の数平均重合度を有することを特徴とする。
【0023】
ポリアニリンは、酸化および酸触媒作用によって連結させられたアニリンモノマーからなる共役ポリマーである。ポリアニリンはドープされることができる(エメラルジン塩;ES)。酸触媒重合の場合、ドープ剤(ドーピング剤、ドーパント)は酸性アニオンであり、塩基形(エメラルジン塩基、EB)は塩基性媒体中に存在する。ポリアニリンは酸化還元活性のある物質でもある:エメラルジン塩は、異なるメディアの影響もしくは電位のシフトの下で、変色可能であり、それに応じてその伝導率を変えることができる。ドープされていないポリアニリンは青色に見え、ドープされたポリアニリンは緑色に、そして還元型は黄色がかって見える。選択的な修正が、異なる化学的-物理的性質を有するアニオンを添加もしくは除去することによりドーピングによって達成できる。
【0024】
酸化の程度およびドーピングの程度、ドープ剤および周囲媒質のpHは、ポリアニリンの電気化学的および電気的性質(例えば、酸化還元系の状態および伝導率など)を実質的に決定する。
【0025】
酸化還元の図式(図式1)において、「酸化」と「還元」はポリマー鎖の炭素の酸化ステップに関連している。アニオンが、ポリカチオンが生じるように窒素に付着する場合、これはポリマーのドーピングと呼ばれる。これは酸塩基反応である。
【0026】
【数1】

【0027】
図式1:ポリアニリンの酸化還元サイクル
y=0: 各窒素原子は、二重結合によって炭素に結合している
y=0.5:窒素原子の50%が炭素に二重結合している
y=1: 完全還元
【0028】
ドーピングは任意の酸で起こりうる。好ましい酸は、スルホン酸類および嵩高い置換基を有する酸である。特に好ましくは、アルキルベンゼンスルホン酸であり、特にドデシルベンゼンスルホン酸(C12-アルキルベンゼンスルホン酸)が好ましい。水溶液中で、前記酸は5未満、特に好ましくは4未満のpKを有することが好ましい。
【0029】
本発明に係るポリアニリン類のドーピングの程度は、通常50%未満、好ましくは35%未満(特に好ましくは約25%)である。ドーピングの程度は、最新技術において既知の方法に従って、例えば滴定によって、決定することができる。これはDIN 53402(酸価の測定)に基づいて行うことが出来る。測定は計算によっても可能であり、その際、ドーピングの程度は、ドープ剤の使用された当量に対するポリアニリン主鎖中の窒素原子のモル比から明らかになる。
【0030】
本発明に係るポリアニリン類は、有機硫黄ユニットと結合される。好ましい有機硫黄ユニットはチオール類であり、一般に最新技術において知られている全てのチオール類が使用可能である。
【0031】
本発明に係るチオールポリアニリンは、式PAni-S-Rによって表される。
PAniはポリアニリンを表し、且つ
Rは、アルキル、アリール、アルキルアリール、アルキル(アリール)2、アルキル(アリール)3、アリールアルキル、アルキル-C(=O)-O-アルキル、アルキル-CO2H、アルキルフェロセニル、アリールフェロセニル、フェロセニル、アリル、アルキル-X-アルキル、アルキル-X-アリール、アリール-X-アリール、アリール-X-アルキルまたはC3-12シクロアルキルであり、
ここで、Xは-O-、-S-または-NH-であり、
ここで、上記の各アルキル基は、お互いに独立して、1〜20の炭素原子、好ましくは1〜15、特に好ましくは1〜12の炭素原子を有し、直鎖状であっても分岐していても良く、および任意に、-SO3H、-SO3-アルカリカチオン(特に-SO3-Na+)、-CO2H、-ハロゲン(特にF, ClまたはBr)、-ヒドロキシ、-アミノ、-アミノ-C1-20アルキル、-アミノ(C1-20アルキル)2、-CO2-C1-20-アルキル、-C1-20アルキル、-NH-CO-C1-20-アルキル、-Si(C1-3 アルキル)3によって一以上置換されていても良く、および、
上記各アリール基は、お互いに独立してフェニルまたはナフチルであってもよく、その両方が、-SO3H、-SO3-アルカリカチオン(特に-SO3-Na+)、-C1-20アルキル、特にメチルもしくはt-ブチル、ハロゲン(特にF, ClまたはBr)、-NO2、-OH、-NH2、-NHC1-20-アルキル、-N(C1-20アルキル)2、-CF3、-CO2H、-CO2-C1-20-アルキル、-NH-tert-ブトキシカルボニル、-C1-20アルキル-OH、-O-C1-20アルキル、-S-C1-20アルキル、-C1-20-アルキル-CO2Hまたは-NH-CO-C1-20-アルキルによって一以上置換されていても良い。
【0032】
アルカリカチオン(特にナトリウムカチオン)は、H+と置換できるので、スルホン酸塩-SO3-アルカリカチオン(特に-SO3-Na+)は、アルキルおよびアリール基の両方にとって好ましい置換基であり、本発明に係るチオールポリアニリン類は、それら自身の酸性基によってそれら自身をドープできる(下記も参照)。
【0033】
S-R基の例として、1〜16の炭素原子を有するアルキルチオール、またはチオベンゼンおよびチオナフタリンが挙げられる。ドデカンチオールが特に好ましい。
【0034】
前記有機硫黄ユニット、例えば上述のチオール類は、硫黄原子を通じて、ポリアニリン鎖の末端に(好ましくは芳香族末端に)結合されることが好ましい。
【0035】
未置換アニリンと置換されたアニリンの両方、もしくはその組合せがアニリンモノマーとして使用できる。アニリン誘導体は、例えば炭化水素基を含む置換基を有していてもよい(例えば2-メチル-アニリン、アニリン-2-スルホン酸、アニリン-3-スルホン酸または類似化合物が挙げられる)。これらの共重合体は、例えば、酸化還元および溶解性に関する挙動において、改変された特性を示す。
【0036】
驚いたことに、前記の新規なポリアニリン類は、小分子鎖長によって特徴付けられる。この理由は、新規ポリアニリン類の調製(製造)プロセスに見い出される。前記プロセスにおいて、アニリンと少なくとも一種の有機硫黄ユニットは、酸化的な酸触媒重合反応においてポリアニリン誘導体に変換される。この理論に拘束されることはないが、前記有機硫黄ユニットは、おそらく連鎖停止反応を通して分子量制御因子として作用する。比較的小さな重合度と、それに付随する短い分子鎖長のために、本発明にかかるポリアニリン類は、比較的容易に分散されることができ、コーティング組成物として非常に好適な微細で均一な分散形態を示す。そのようなコーティング組成物で被覆された基質は、粗粒成分(例えば凝集体)の比率がより小さい均一なコーティングを示し、その結果として、基質上のそのようなコーティングは結果的により長い期間に渡って安定である。それゆえ、コーティング部分全体のクラック形成および剥離は、有意な程度に抑制され、被覆基質(コーティングされた基質)の触媒機能が維持される。
【0037】
ポリアニリン類の重合度は、通常の測定法(ゲル浸透クロマトグラフィー;GPC)で測定できるが、正確な測定にはポリアニリン標準物質が必要である。重合度はそれゆえ好ましくはMALDI-TOFにより分子量を通じて測定される。これはいわゆる絶対法であり、比較的正確な結果をもたらす。
【0038】
重合度は、N/Sの原子比率によって容易に測定することもできる。前記ポリアニリンは、ポリアニリン主鎖において、好ましくは5:1〜50:1、より好ましくは8:1〜35:1、特に好ましくは8:1〜30:1のN/S原子比率を有する。N/S原子比率は、ポリアニリン主鎖(すなわち、ポリマーのバックボーン)内の窒素と硫黄原子にもっぱら関連し、原子比率が側鎖に位置し得る窒素及び/又は硫黄原子とみなされる場合は無視する。これに関連して、例えばスルホン酸基が、合成ルートに応じて、セルフ-ドーピングおよびポリアニリンの溶解性の調節の結果、側鎖内で見出されるものとして挙げられる。
【0039】
N/S原子比率は、最新技術において知られている方法によって、特にCHNS元素分析によって、測定されることができる。ポリアニリンの側鎖内に存在しうる窒素および硫黄原子(例えば、スルホン酸)はCHNS元素分析においても検出され、それゆえさらなるパラメーター−例えば使用される遊離体の比率、MALDI-TOF質量分析法からの測定値、および、FT-IR、ラマンもしくはNMRデータなどの関連する可能性のある解析データなど−を考慮に入れる場合、無視されなければならない。
【0040】
また、前記ポリアニリンが酸性基を含むことが、本発明の意義の範囲内で好ましい。前述したように、そのような酸性基は大抵側鎖内に存在し、それらは、上に述べたように例えばアニリンの芳香族に付着し、セルフ-ドーピングポリアニリン類が酸性基によって得られる。それゆえ、PAni合成において、アニリン-2-スルホン酸またはアニリン-3-スルホン酸が、アニリンに加えてコモノマー(comonomer)として好んで使用される。したがって、酸の添加はもはやドーピングのために要求されない。セルフ-ドーピングポリアニリン類は最新技術においてすでに知られており、例えばポリアニリンのスルホン化(J. Yue, A. J. Epstein, J. Am. Chem. Soc., 1990, 112, 2800 to 2801)によって、またはアニリンとアニリン-3-スルホン酸の共重合(Junhua Fan, Meixiang Wan, Daoben Zhu, Institute of Chemistry, Academia Sinica, Beijing 100080, China, 1997)によって調製できる。ドーピングの結果として、前記ポリアニリンは電気化学的に安定化され、酸化還元挙動は通例のポリアニリンと比べてpH依存性がはるかに小さい。しかしながら、ドープされたポリアニリン類の電気伝導率は、置換度が増加するにつれて減少することを心に留めておくべきである。
【0041】
特に好ましい一実施態様において、脂肪族チオールはポリアニリン主鎖の芳香族末端に付着され、ポリアニリンは約5〜約30の数平均重合度とアニリンユニット上のスルホン酸基を有する。
【0042】
本発明にかかるポリアニリン類は、アニリンと少なくとも一つの有機硫黄ユニットが、酸化的な酸触媒重合反応においてポリアニリン誘導体に変換されるプロセスによって調製される。前記重合プロセスは特に好ましくは沈殿重合である。本発明にかかるプロセスの場合は、すでに上述したように、有機硫黄ユニットが使用されることが好ましい。それゆえ重合は好ましくはチオールH-S-Rの存在下で実施され、この際RはPAni-S-Rのために上記したように定義される。ドデカンチオール(DCT)が特に好ましい。原則として、いかなる酸も酸触媒変換のための酸として使用されることができる。酸は好ましくはpKs<5、特に好ましくはpKs<4を有する。酸化的な酸触媒重合反応プロセスはさらに酸化剤を必要とし、この際、最新技術において既知の酸化剤を使用できる。例として、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸カリウム(過硫酸カリウム)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過マンガン酸カリウムおよび同様のものが挙げられる。電気化学重合も酸化剤を使用する代わりに実施できる。
【0043】
本発明にかかるポリアニリンで被覆されることができる基質は、例えば電極、充填層、メンブラン(膜)、フリース及び/又は不織布、織物、インターレースファブリック(interlaced fabric)、編物、ガーゼ、平膜、中空繊維膜、キャピラリー、中空カプセルまたは前述したものの組合せであり、全てのこれらの基質は導電性であっても非導電性であってもよい。好ましい基質はグラファイトもしくは炭素繊維の織物および高純度のスチールである。さらに好ましくは、例えばカソードとしてのメンブラン(例えばカソードとしての中空繊維膜)の組合せである。好ましい支持剤(supporting agents)は有機ポリマー、ポリマー組成物、無機物質または複合材料である。本発明にかかるポリアニリン類の利点は、当該技術の現状とは異なり、それらが導電性および非導電性の基質に適用できることである。
【0044】
メンブランを用いた分離はますます水質調整における主要技術となってきている。メンブランの分離機能および分離容量は、バリア層の構造によって決まる:多孔質の分離層を有するメンブランが、限外濾過または精密濾過による巨大分子もしくはコロイド物質の分離のために使用される一方、逆浸透またはナノ濾過による水の脱塩もしくは低分子物質の分離は、ポア-フリー(pore-free)のバリア層を有するメンブランに基づいている。典型的な精密濾過膜は、0.1〜1μmの範囲内に分離効果を持つ孔を有する;通常のフィルター材と比べると、これらの孔はより小さくその内表面ははるかに大きい。
【0045】
本発明に従って使用されることができるメンブランは以下のように分類できる:
・メンブランの材料:有機ポリマー、無機材料(酸化物、セラミック、金属)、異なる材料からなる複合材料
・メンブランの横断面:等方性の(「対称性の」)、完全異方性の(「非対称性の」)、二層もしくは多層の、薄層の又は「混合マトリックス」複合材
・調製プロセス:ポリマーの相分離(「位相反転」)、ゾル・ゲル法、熱分解、界面反応、ストレッチング、押出成形、核トラック(nuclear track)技術、マイクロ加工;
・メンブランの形態:平膜、中空の繊維もしくはキャピラリー、中空カプセル。
【0046】
圧倒的に多く市販されている精密濾過膜は、例えば、非導電ポリスルホンまたは非導電ポリプロピレンなどの有機ポリマーから成る。膜横断面の孔径分布は等方性かわずかに異方性である。調製プロセスの間の、ポリマー溶液の相分離の変形は、明瞭に支配し、好ましくは沈殿剤によって誘発され(「非溶媒誘起相分離」NIPS)、または不安定エリアにおける冷却によって誘発される(「温度誘起相分離」TIPS)。全てのポリマーが全てのプロセスで処理できるとは限らない:ポリスルホンは典型的にNIPSによって多孔質膜に成形され、ポリプロピレンは典型的にTIPSによる。MF適用にとって、平膜(らせん巻きモジュールまたはプレート・モジュール内)およびキャピラリーメンブランの両方が通例である。
【0047】
前置きの部分においてすでに述べた通り、水質調整用のコーティングされた基質に関する問題は、例えばメンブランの場合は、それらがいわゆるスケーリングおよび汚染の影響を受けやすいことである。これらは大抵、沈着物がコーティングの表面に定着するという事実と関係がある。
【0048】
例えばOHラジカル又は他のラジカルなどの活性酸素種を産生するポリアニリンの能力を通じて、ドープされ且つポリアニリン鎖内に硫黄を有するポリアニリンは、水質調整用及び/又は空気精製用に好適であり、それ故これらの目的のために使用できる。上述したポリアニリンは水質調整及び/又は空気精製のために好適に使用できる。水質調整及び/又は空気の精製は、有機および無機の汚染物質、バクテリア、ウイルス、微生物及び/又は寄生虫の除去、すなわち水もしくは空気の精製と、ある程度の滅菌/殺菌の両方を含む。これは、すでに上述したように、例えばバクテリア、ウイルス、微生物及び/又は寄生虫に対し不活性化効果を有するOHラジカルのような活性酸素種の産生を通じて起こる。有機または無機の汚染物質は、例えばOHラジカルによって酸化され、このようにして無害化される。
【0049】
本発明に係るアニリン類はレドックスフロー電池において及び電気分解システムにおいてもまた有利に使用できることが、さらに確証される。
【0050】
結果的に、コーティング組成物もまた、被覆基質の調製のために必要であり、その理由のために、コーティング組成物の調製のためのプロセスは同様に本発明の範囲に属し、ここで、当該プロセスは以下の工程を含む:
a)好ましくは粉砕され、それゆえ均一な粒径の意義の範囲内で、できる限り均一なポリアニリンの提供
b)ポリアニリンの任意の均質化
c)任意に均質化されたポリアニリンと分散剤からの分散系(ディスパーション)の製作
d)エネルギー入力(インプット)による、特に超音波を用いた、前記分散系の任意の処理
e)濾過
【0051】
全てのICPsと同じように、ポリアニリンは通常可溶性ではなく、且つ融点またはその他の軟化挙動を有していない。この理由のため、ポリアニリンを通例の熱可塑性のポリマー類のように処理することはできない。それゆえ処理は溶媒もしくは分散剤中での超微細分散を経て実施される。ポリアニリンの分散はそれゆえ多くの適用の出発点である。
【0052】
ポリアニリンを処理するためには、ポリアニリンは粉末の状態で溶媒中に分散される。さらなる処理の出発点は、このようにして調製されたポリアニリンの分散系である。コーティングはそのような分散系から調製できる。粒子が小さいほど、及び分散剤中のポリアニリンの分散が均一なほど、基質への層の接着が良好であることが明らかにされている。層の質は、粒径および溶媒/分散剤のタイプまたは溶媒/分散剤-混合物の組成によって決まる。
【0053】
以下の工程は、未加工の重合体(raw polymerisate)から前記分散系を得るために示される有利な順序である。
1.合成(原料ポリマー)
2.洗浄
3.イオン交換
4.乾燥
5.分散
6.濾過
7.ドーピング
【0054】
ポリアニリンを合成する際の目標は、できる限り問題が無く、分散性が最良のさらなる処理を保証する品質にて重合体を調製することである。
【0055】
好ましくない処理条件下では、マイクロメーターサイズの凝集体が形成される。これは、好ましくない重合条件が原因であるか、溶媒もしくは分散剤の選択、または分散方法に起因すると考えられる。
【0056】
原則として、目標は、粒径1μm未満のできる限り均一な分散を調製することである。前記粒径は、標準方法である「動的レーザー光散乱」によって測定できる。そのような分散(系)の調製および処理における利点は、以下の通りである
−良好な濾過性(短い濾過時間、少ない濾過工程数)
−少ない濾過残渣
−担体への良好な接着
さらに前記分散系が、コーティングされる基質を確実に濡らさなければならない。
【0057】
ポリアニリンの粉砕、すなわち均質化は、好ましくはアルコール、特に好ましくはプロパノール中で行われる。N-メチルピロリドン(NMP)が、特に好ましい分散剤であることが判明している。しかしながら、当該技術分野において既知の他の分散剤も適している。
【0058】
すでに上述したとおり、ポリアニリンはドープされる。本発明にかかるプロセスのステップe)である濾過の後、ポリアニリンをアルキルベンゼンスルホン酸で再ドープした場合、特に有利であることが判明している。ドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)が特に好ましい。コーティング組成物を、ドーピングの後、さらなるエネルギー入力、好ましくはさらなる超音波処理に供することが有利となり得る。ドーピング中に形成され得る凝集体は再び再分散させることができる。ドーピングの程度は、再ドーピングによって正確に調製することが可能である。そうしないと、これは、合成直後のドーピングの場合では、ただ困難を伴うだけの可能性がある。ドーピングの程度の正確な調整の結果として、ポリアニリンの伝導率は必要条件にも適応しうる。
【0059】
本発明に係るコーティング組成物による基質のコーティングは、通常の場合、当該技術分野において既知の方法によって基質にコーティング組成物を適用し、その後コーティングを乾燥することによって実施される。実施可能な適用方法は、例えば、ディッピング、ドクターナイフを用いたコーティング、スプレー、グラビア印刷、コーティングと剥離(peeling off)、リバース-ロール・コーティングおよびスピン・コーティング、ローラなどを用いた延展(spreading)またはブラッシングが挙げられる。
【0060】
そのようにしてコーティングされた基質は、例えば、コーティングされたメンブランであり、水の調子を整える及び/又は空気を浄化するための浄化反応器内で使用されることができる。それゆえ、本発明の範囲には、浄化反応器も含まれ、ここで当該反応器は、精製される媒体用の入口と出口を有する反応チャンバー、少なくとも一つの、具体的には、1,2,3またはそれ以上の本発明に係るコーティングされた基質(被覆基質)、少なくとも一つの、具体的には1,2,3またはそれ以上の対極、および任意に少なくとも一つの、具体的には、1,2,3またはそれ以上の、前記被覆基質とアノードの間のセパレーターを含む。本発明にかかる実験装置は、例えば図1に示される。ここで、参照電極は実験装置のためだけに必要である。
【0061】
対極のために、高純度(high-grade)のスチールなどの低コスト材料が、支持材(support material)および電流コレクタとして使用できる。電極は、平板、多孔板、ワイヤー、充填層もしくは延伸金属として設計されることができる。カーボン・フリースも使用できる。
【0062】
作用電極上の電気化学的に活性な物質は前記ポリアニリン誘導体である。モノマーから成る電極上の直接合成は、工業的に魅力的である。さらに、プロセスの進行中に、電極上に、すでに合成されたポリマーからなるコーティングを堆積させることが保証される。確立した厚膜コーティング法がこのために既知であり、その際、ポリアニリンフィルムは(任意に、導電性の接着促進剤からなる一以上の中間層を有する)金属箔上に直接注がれる。コーティングされた箔は、その後、作用電極として、プレート、延伸された、もしくはフィラメントの形態として作動できる。ポリアニリンと中空繊維膜のコンビネーションが特に好ましい。ポリアニリンは、層としてまたはポリマー上もしくは内のドーピングとして存在し得る。
【0063】
短絡を避けるために必要なアノードとカソード間の距離は、セパレーター、ダイヤフラム、またはスペーサーによって作ることができる。親水性の不織フリースや織物、例えばPPSからなるものなど、が好ましい。それらは逆浸透における支持メンブランとして工業的に使用されている。組立電極に再沈殿によりセパレーター・メンブランを備えることも可能である。
【0064】
三電極配置を有するポテンショスタット的操業(potentiostatic operation)は、プロセス開発のために実験室規模で使用されている。電気化学的パラメータは、サイクリック・ボルタンメトリーによって決定できる。飽和カロメル電極のポテンシャルは、参照として使用される。この参照電極は、ダイヤフラムによって、処理される水(または空気)から分離される。工業規模での実情では、ダイヤフラムは結晶化あるいは微生物のシーディング(seeding)によって詰まる傾向がある。それゆえ、工業規模での実践において、ポテンショスタット(定電位)操業からガルバノスタット(定電流)操業への切り替えが考えられる。制御回路はそれによって単純化されるが、反応器の設計では、電場の均一な分布がより重要視されるべきである。
【0065】
図1は、実験装置の原理の概要を説明する。その中心は交換可能な電極を有する電気化学セルである。これらは、異なるコーティングと支持材を使用することを可能にする。
【0066】
前記電極は、当該電極の対応分極を実施するポテンショスタットによって制御される。結果として、最適作用電位の測定などの、基本的な電気化学的試験が可能となる。処理される水は、リザーバーを経てポンプによって再循環される。サンプルはこの中で採取されることができる。装置は、再循環と通過モードの両方を操作することを可能にする。
【0067】
光度測定法は、通常、解析法として使用される。電極と反応器の効率を数量化するために、RNO色素(p-ニトロソジメチルアニリン)を漂白する選別法が使用される。この色素は、「Kraljic, C. N. Trumbore, p-nitrosodimethylanilin as a Radical Scavenger in Radiation Chemistry, Journal of the American Chemical Society, 87:12 (1965), 2547-2550」において、選択的OHラジカル・スカベンジャーとして記載されており、それゆえ、発生したOHラジカルの指示薬としての役割を果たすことができる。
【0068】
本発明に係る浄化反応器において、ポリアニリンはコーティングまたは以下のものの構成要素として使用されることができる。
・平坦電極
・3-D金属格子構造
・メンブラン構造
・平膜
・中空繊維膜、あるいは
・固定層パッキング
【0069】
以下、図面を参照しながら、本発明をいくつかの非限定的実施例を使用してより詳細に説明する。
【実施例】
【0070】
[実施例1−ポリアニリン・ドデカンチオールの合成]
(ポリ(p-フェニレン-アミン-イミン)-p-ドデカンチオール)
ポリアニリンのチオール誘導体は、水溶液中で、酸化的な、酸触媒沈殿重合において調製される。アニリンはドデカンチオール(DCT)と共に重合される。重合連鎖反応は、したがって、チオール・ラジカルのポリアニリン・ラジカルへの付着で中断される。
【0071】
【数2】


図式2:アニリンとDCTの酸化的重合の反応スキーム;nは反応条件の選択に応じて、n=5〜50
【0072】
合成に必要な化学薬品を以下の表1に挙げる。
【表1】

【0073】
合成の説明
1)3ml(33mmol)のアニリンと0.35ml(1.5mmol)のドデカンチオールを相次いでガラスビーカー内に入れる。混合物を完全に混ぜる。
2)34g(179mmol)のp-トルエンスルホン酸(p-TSA)を0.3Lのビーカーに入れ、水で0.2Lにする。この溶液を0℃に冷却する。
3)アニリン/ドデカンチオール-混合物を、2)で調製したp-TSA溶液に20分以内に撹拌しながら添加する。
4)酸化剤溶液を以下のように調製する:11g(48mmol)のペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)を秤量し、その後、脱イオン水で30mlにする。この溶液を滴下漏斗に移す。
5)3)で調製したモノマー混合物を三つ口フラスコに移し、勢いよく撹拌する。反応混合物を冷浴中で0℃に冷却する。
6)アニリン、ドデカンチオールおよびp-TSAを含む反応器内のエマルションに酸化混合物をゆっくり添加(1ml/分)することによって、重合を開始させる。
7)全ての酸化剤を添加した後、反応混合物は約5時間反応し続ける。
8)その後、ポリマーを以下のように洗浄する。
第1ステップ:濾過、0.3Lの脱イオン水を注入
第2ステップ:1Lの1MのNH4OH中に濾過ケーキを再分散
第3ステップ:濾過
第4ステップ:再分散(例えばメタノール中で)
第5ステップ:濾過
第6ステップ:1Lの脱イオン水によるすすぎ
【0074】
前記濾過ケーキは洗浄後にビーカー内に移され、真空オーブン内で一定重量まで乾燥される。
収率;収率は使用したアニリンの量に対して約90〜95%
解析/光学顕微鏡(粒径)
図2は、100倍に拡大された、合成直後のポリアニリンDCTを示す。重合生成物は、緩く凝集した粒子として存在する;大きい凝集体(1〜10μm)は容易に認識でき、これは顕微鏡スライドを機械的に動かすと、微細な粒子(<1μm)に分解する。
解析/FT-IRによる同定
図3は、ポリアニリン-DCTベースのIRスペクトルを示す。ラベルされたエリアは、ポリアニリン内のDCT成分を同定する。
解析/元素分析(CHNS)による同定
(前処理:NH4OHを用いたイオン交換、続いて2-プロパノール、メタノールおよびキシレンを用いた複数回の洗浄)
【表2】


表2:塩基形(ベースフォーム)を分析した。元素分析は約22:1のN/S比を与えた。
【0075】
[実施例2−ポリアニリンの分散]
分散用の出発物質は、ポリアニリンの非導電塩基形(EB)の粉末である。
1)2.5%(w/v)PAni-EB-NMP 原分散(stock dispersion)の調製
2.8gの粉末状の塩基形のポリアニリン(EB)は、約5分の間乳鉢によって粉砕される。5mlの2-プロパノールをこの粉末に加える。混合物は約5分間、乳鉢を用いてスラリーにされる。スラリーはその後、100mlのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)が中に入っているビーカ内に移される。混合物はその後ホモジナイザーを用いて10000rpmで分散される。分散系はその後50℃に加熱され、マグネチックスターラー上で数時間撹拌される。このように処理された分散系は、存在する凝集体を除くためにセルロース製フィルターを通して濾過される。
ステップ1で調製された分散(系)は、以下、PAni-EB-NMP 2.5%(w/v)原分散と呼ばれる。
【0076】
2)2%(w/v)PAni-ES(DBS)-NMP原分散の調製
1)で調製された分散はドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)で再ドープされる。1〜6gのDBSは40mlのEB-NMP原分散に添加される。
この混合物は超音波浴中で50℃にて少なくとも30分間ホモジナイズされ、調製中に形成された可能性のある凝集体を除くために、セルロース製フィルターを通じて濾過される。
この分散はPAni-ES-DBS-NMP 2%(w/v)原分散と呼ばれる。
【0077】
2)で調製された分散は、濃度、流動特性あるいは湿潤特性を調節するために、必要に応じて、さらなる溶媒もしくは溶媒混合物を用いて希釈されてもよく、その後コーティングのため、又は他の物質への組込のために準備される。
【0078】
[実施例3−調製例、シート状スチールのコーティング]
原料:
ES分散1% (w/v)
スチール箔
ドクター・コーター
ドクター・ナイフ
【0079】
精製および脱脂された箔切片は、平らな軸受け表面(ドクター・ブレードが引かれる)上に配置される。ドクター・ナイフは73mmの幅(内側)を有する;この幅は、シート状スチール上のコーティングの幅を決定する。基質とドクター・ナイフの間の間隙幅は50μmである。ドクター・ナイフはスライダーの後方の基質上に置かれる。1mlの1%(w/v)分散がドクター・ブレードの内側に置かれる。ドクター・ナイフはその後、20mm/sの一定の引き速度(移動速度)で、スチール箔上を引かれ、コーティング分散液の薄膜が基質上に残る。溶媒は、熱風ドライヤーを用いて200℃(ドライヤー上の設定)で蒸発させられる。溶媒の蒸発後、残った溶媒残留物は、真空乾燥棚内で120℃で蒸発される。約200〜1000nmの厚みを有する緑色のほのかに光るポリアニリン層が得られる。
【0080】
[実施例4−メンブランの調製]
以下の機能が互いに組み合わさった触媒活性メンブランを調製する2つの異なる方法が、以下に例示される。
i)中程度の接触面(具体的には、10〜25m2/gの内表面)を有する透過性の細孔構造
ii)触媒活性材の電気的結合/制御に十分な伝導率
iii)触媒活性材(PAni)の層またはドーピング
【0081】
[実施例4.1−市販のMFメンブランのメタル化とその後のPAniによるコーティング]
0.4μmの公称細孔径(分離限界)を有し、且つ比表面積25m2/gのポリプロピレン(平膜 2EHF、Membrana GmbH製)の精密濾過膜がテフロン(登録商標)・フィルター・ホルダー(直径47mm)内に組み込まれ、ホースポンプを用いて、下記の溶液を通して洗浄される(各1ml/分):
−クロモ-硫酸(50℃) 5分間
−超純水(25℃) 15分間
−10vol%のPDI 11アクチベーター濃縮製剤の溶液(Schloetter Galvanotechnik GmbH &
Co KG製、ガイスリンゲン)と超純水(25℃)中の0.1vol%のSLOTOSIT N 16湿潤剤
(Schloetter製) 3分間
−超純水(25℃) 15分間、
−4.5mlのSLOTONIP 61(Schloetter製)、3.5mlのSNIサプリメント溶液(Schloetter製)、
25μlのSLOTONIP 63湿潤剤(Schloetter製)、25μlのSLOTONIP 64安定剤
(Schloetter製)、および1.5mlのSLOTONIP 66還元剤(Schloetter製)に25mlの水(25℃)
を加えて作製した溶液 20分間
−超純水(25℃) 15分間、
−SLOTOGOLD 10 ゴールドディッピングバス(Schloetter製;80℃) 5分間
−超純水(25℃) 15分間
【0082】
メンブランはその後真空乾燥棚にて45℃で乾燥される。性質決定は、REM、窒素吸着(BET)、パームポロメトリーおよび水透過性の測定によって実施される。
実施例2に係る3mlのPAni分散液はその後、3分以内にポンプを用いてフィルター・ホルダー内のメンブランを通して吸引され、その後空気がさらに5分間メンブランを通して吸引される。次に、真空乾燥棚内にて45℃での乾燥が続く。性質決定は、REM、窒素吸着(BET)、パームポロメトリーおよび水透過性の測定によって実施される。
【0083】
[実施例4.2−沈殿剤誘導相分離による、カーボン・ブラックとPAniでドープされた多孔質膜の調製]
NMPとトリエチレン・グリコールの混合物(比率2:1,v/v)中の12wt%のポリエーテルスルホンの溶液を調製する(45℃で約3時間撹拌)。その後、6wt%のカーボンブラックと10wt%の2% PAni分散(それぞれ、溶液全体に対して)が、それに加えられる。超音波浴中での10分間の分散後、溶液は45℃にてさらに1時間撹拌される。ポリマー溶液の250μmの厚膜がその後、ドクター・ナイフを用いて研磨ガラスプレート上に作製される。25℃・約40%の空気湿度での30秒の滞留時間後、25vol%のNMPを含有する超純水のバス内で沈殿が生じる。沈殿バス内での1時間の滞留時間後、メンブランは、そのつど4時間未満または16時間未満ごとの間隔で2回以上変えられる超純水の洗浄バス内に移される。このようにして製造されたメンブランはその後、溶媒交換(水→エタノール)によって処理され、その後乾燥される。メンブランの層の厚みは約200μmである。性質決定は、REM、窒素吸着(BET)、パームポロメトリーおよび水透過性の測定によって実施される。
【0084】
[実施例5−OHラジカル生成、RNO分解]
PAniは、市販のグラファイトファイバーのフリースにディッピング法によって適用される。電極はギャップ・リアクター内に取り付けられ、ポテンショスタットを用いて作動された。
図4は、OHラジカルを生成するための実験用反応器を示す。
開始溶液 :10-5mol/lのRNO溶液
0.5g/lのNa2SO4
H2O
作用電極(WE) :HICOTEC NE 0300 GDL グラファイト フリース、Frenzelit製、スタン
プッド(stamped)、H2O中、次にアセトン中で洗浄、110℃で15分間
乾燥
:PAni分散:ドープ剤 DBS、精製フリース、ディップされる
:サンプルは110℃にて一晩乾燥される
:作用電極の投射表面=5×8cm
【表3】


対極(CE) :高純度スチール電極 1.4301(作用電極のような表面)
参照電極 :飽和カロメル電極
距離 WE/CE :2mm、マルチメーターによる短絡のためのテスト
測定法
光度計 :438nmと540nmでの吸光度のRNO 10-5モルの示差測定法
ポンプ流量 :38ml/分
【0085】
再現性のある効果を実証するために、本実験では、各ケースにおいて作用電極を2分間(120秒)分極させる(飽和カロメル電極に対して-700mV)およびRNO濃度はインライン光度計によって追跡される。電気触媒チャンバーと光度計プローブ間の滞留時間作用のため、RNOシグナルは約1分までシフトされる。
【0086】
図5は、ポリアニリン作用電極のパルス分極による分解テストにおけるRNO濃度を示す。438nmでの吸収シグナルは、平行にパルスを発し、適用された分極で再現性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニリンユニットおよび有機硫黄ユニットを含むポリアニリンであって、前記ポリアニリンがドープされていること、および約5〜約50の数平均重合度を有することを特徴とする、ポリアニリン。
【請求項2】
前記有機硫黄ユニットがチオール類であり、前記ポリアニリンがポリアニリン主鎖において約5:1〜約50:1のN/S原子比率を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリアニリン。
【請求項3】
前記有機硫黄ユニットが、その硫黄原子を経てポリアニリン鎖の末端に結合されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリアニリン。
【請求項4】
前記ポリアニリンが酸性基を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアニリン。
【請求項5】
アニリンと少なくとも一つの有機硫黄ユニットが、酸化的酸触媒重合反応にてポリアニリン誘導体に変換されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアニリンの製造方法。
【請求項6】
コーティング組成物の製造方法であって、当該方法が、下記ステップ
a)請求項1〜4のいずれか1項にかかるポリアニリンの準備、
b)前記ポリアニリンの任意の均質化、
c)任意にホモジナイズされたポリアニリンと分散剤からの分散系の製造、
d)エネルギー入力による前記分散系の任意の処理、および
e)濾過
を含む方法。
【請求項7】
前記ポリアニリンの均質化が、前記分散剤と同一ではなく、好ましくはアルコール、好ましくはプロパノールである溶媒中で実施されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記分散剤がNMPであることを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
ステップe)の後、前記ポリアニリンが酸、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸、特にC1-20アルキルベンゼンスルホン酸でドープされることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ステップe)における前記酸がC12アルキルベンゼンスルホン酸であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか1項に記載の方法によって得られるコーティング組成物。
【請求項12】
コーティングされた基質であって、前記基質が請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアニリンを含むコーティング組成物及び/又は請求項11に記載のコーティング組成物によってコーティングされていることを特徴とする、コーティングされた基質。
【請求項13】
前記基質が電極、充填層、メンブラン、フリース及び/又は不織布、織物、インターレースファブリック、編物、ガーゼ、平膜、中空繊維膜、キャピラリー、中空カプセル、またはそれらの組合せであることを特徴とする、請求項12に記載のコーティングされた基質。
【請求項14】
前記基質が有機ポリマー、ポリマー組成物、無機物質または複合材料であり、導電性または非導電性であり得ることを特徴とする、請求項12または13に記載のコーティングされた基質。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか1項に記載のコーティングされた基質の製造方法であって、請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法によって得られるコーティング組成物が基質に適用され、任意で乾燥されることを特徴とする、方法。
【請求項16】
水処理及び/又は空気の精製のためのポリアニリンの使用であって、前記ポリアニリンがドープされており、且つ、ポリアニリン主鎖中に硫黄を含む、ポリアニリンの使用。
【請求項17】
水処理及び/又は空気の精製のための、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアニリン、または請求項12〜14のいずれか1項に記載のコーティングされた基質の使用。
【請求項18】
前記水処理が、有機および無機の汚染物質、バクテリア、ウイルス、微生物及び/又は寄生虫の除去を含むことを特徴とする、請求項16または17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
レドックスフロー電池の製造のため及び/又は電気分解におけるポリアニリンの使用であって、前記ポリアニリンがドープされており、且つポリアニリン主鎖中に硫黄を含む、ポリアニリンの使用。
【請求項20】
レドックスフロー電池の製造のため及び/又は電気分解における、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアニリン、または請求項12〜14のいずれか1項に記載のコーティングされた基質の使用。
【請求項21】
前記ポリアニリンが基質上のコーティングとして存在することを特徴とする、請求項16または19に記載の使用。
【請求項22】
浄化反応器であって、前記反応器が
・精製される媒体のための入口と出口を有する反応チャンバー、
・作用電極としての、請求項12〜14のいずれか1項に記載の少なくとも一つのコーティングされた基質であって、ポリアニリンはドープされており、且つポリアニリン主鎖中に硫黄を含むか、または請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアニリンである
・少なくとも一つの対極、および
・任意で、前記少なくとも一つのコーティングされた基質と少なくとも一つの対極の間の少なくとも一つのセパレーター
を含むことを特徴とする、浄化反応器。
【請求項23】
水処理のため及び/又は空気の精製のための、請求項22に記載の反応器の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−505441(P2011−505441A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534472(P2010−534472)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065909
【国際公開番号】WO2009/065892
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(506271120)ズュート‐ヒェミー アクチェンゲゼルシャフト (5)
【Fターム(参考)】