説明

水処理システム、及び冷却系循環水の処理方法

【課題】藻類、スライム、及びレジオネラ菌の発生をより一層効果的に抑制する共に、配管系の腐食を招かないようにする。
【解決手段】大量の高濃度次亜塩素酸ナトリウム水溶液(以下、「次亜」という。)を循環水に注入する(S1)。次亜注入後所定時間tが経過した後、遊離残留塩素濃度Dが第1の所定値D1未満か否かを判断する(S2→33)。その答が肯定(Yes)のときは第1の所定期間N1(例えば、1日)経過後に次亜を循環水に注入し(S4)、S2に戻る。一方、その答が否定(No)のときは遊離残留塩素濃度Dが第2の所定値D2(>D1)未満か否かを判断する(S5)。その答が肯定(Yes)のときは第2の所定期間N2(>N1)経過後に次亜を循環水に注入し(S6)、S2に戻る。また、S5の答が否定(No)のときは第3の所定期間N3(>N2)経過後に次亜を注入し(S7)、S2に戻る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水処理システム、及び冷却系循環水の処理方法に関し、より詳しくは冷却塔を循環する循環水を塩素系水溶液で処理する水処理システムと冷却系循環水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、商業用ビルや各種工場などの空調設備では、冷却水を循環させて熱交換器等の被冷却装置を冷却する水処理システムが広く採用されている。
【0003】
この種の水処理システムに使用される冷却塔としては、開放式冷却塔と密閉式冷却塔がある。前者は循環水と外気とを直接接触させ、蒸発潜熱により水を冷却し、後者は被冷却装置に接続されたコイル状管に循環水を散布し、前記コイル状管内の水を冷却する。
【0004】
これらの冷却塔では、水分の蒸発によって循環水が濃縮され、循環水中には溶存塩類や栄養源が高濃度に含まれるようになる。そしてその結果、循環水の水質が悪化して藻類やスライムが発生し、通水性の悪化や冷却能力の低下を招くおそれがある。また、上記スライム等に起因してレジオネラ菌が繁殖し、繁殖したレジオネラ菌が蒸発水に同伴されて大気中に飛散されてしまうおそれがある。さらに、硬度成分やシリカの濃縮によってスケールが堆積して被冷却装置に付着し、熱効率の低下を招くおそれがある。
【0005】
そこで、このような問題点を解決する方策として、特許文献1では、開放循環冷却水系において、原水の一部を陽イオン交換樹脂で処理して得られる軟化水の一部を冷却水系に供給すると共に、軟化水の他の一部を用いて調製した食塩水を電解して次亜塩素酸ナトリウム(遊離残留塩素)を生成させ、この次亜塩素酸ナトリウム水溶液(遊離残留塩素含有水)を冷却水系に添加するようにした冷却水の処理方法が提案されている。
【0006】
この特許文献1では、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を冷却水系に連続的に注入して冷却水中の遊離残留塩素を0.1〜1mgCl/Lの範囲に維持すると共に、冷却水中のカルシウム硬度を特定範囲に保持し、これにより冷却水系のスライムやスケールの発生を防止し、かつ金属の腐食を抑制している。
【0007】
【特許文献1】特開2004−121969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、軟化水を冷却水系に供給すると共に、低濃度且つ一定量の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を連続的に冷却系に注入しているが、本発明者らの鋭意研究により、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を連続的に注入するよりも、高濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を大量に一度に注入した方が、微生物類の死滅に効果的であり、冷却水系のスライムや藻類の発生をより一層抑制できるということが分かった。
【0009】
しかしながら、冷却水系に対し高濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を大量に一度に注入すると、微生物類の死滅には効果的ではあるが、高濃度の遊離塩素が長期間に亙って冷却水系に残留することとなり、配管系の腐食を引き起こし易くなる。特に、注入間隔が短い場合、遊離塩素が高濃度で残留している上に更に高濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液が大量に注入されることとなり、配管系の腐食を助長するおそれがある。
【0010】
また、冷却塔内での次亜塩素酸ナトリウム水溶液の消費速度は、循環水に含有される有機物のみならず、冷却塔に内有される充填材等の構成部材の汚れにも依存するため、循環水の遊離残留塩素濃度を監視しながら有機物の量や汚れの状態に見合った最適な量の次亜塩素酸ナトリウム水溶液の注入間隔を制御するシステムの構築が望まれる。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、藻類、スライム、及びレジオネラ菌の発生を効果的に抑制すると共に、配管系の腐食を抑制することができる水処理システム、及び冷却系循環水の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明に係る水処理システムは、補給水が供給されると共に該補給水を循環水として被冷却装置を冷却する冷却塔と、塩水を貯留する塩水タンクと、該塩水タンクから供給される前記塩水を電気分解して塩素系水溶液を生成する電解槽と、該電解槽で生成された塩素系水溶液を前記循環水に間欠的に注入する注入手段とを有し、かつ、前記循環水の遊離残留塩素濃度を検出する遊離残留塩素濃度検出手段と、該遊離残留塩素濃度検出手段の検出結果に応じ前記塩素系水溶液の前記循環水への注入間隔を制御する注入間隔制御手段とを備えていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の水処理システムは、前記注入間隔制御手段は、前記遊離残留塩素濃度検出手段の検出結果により前記遊離残留塩素濃度が所定値以上と判断したときは、前記遊離残留塩素濃度が前記所定値未満のときに比べ、前記注入間隔を長く設定することを特徴としている。
【0014】
また、本発明の水処理システムは、原水を軟水化して処理水を生成する少なくとも1台以上の軟水装置を備え、前記補給水は、前記軟水装置で生成される前記処理水であることを特徴としている。
【0015】
また、本発明の水処理システムは、前記遊離残留塩素濃度検出手段が、前記循環水の一部をサンプル水として収容する収容部と、呈色試薬を含む薬液を前記収容部に注入する薬注手段と、前記収容部における前記サンプル水の発色度合を光学的に検出する発色度合検出手段と、該発色度合検出手段の検出結果に基づき遊離残留塩素濃度を判定する判定手段とを備えていることを特徴としている。
【0016】
また、本発明に係る冷却系循環水の処理方法は、冷却塔に供給される補給水を循環水として使用し、被冷却装置を冷却する冷却系循環水の処理方法であって、塩水を電気分解して塩素系水溶液を生成する電気分解ステップと、前記循環水の遊離残留塩素濃度を検出する遊離残留塩素濃度検出ステップと、前記検出された遊離残留塩素濃度に応じた注入間隔を設定し、前記塩素系水溶液を前記注入間隔でもって間欠的に前記循環水に注入する注入ステップとを含むことを特徴としている。
【0017】
また、本発明の冷却系循環水の処理方法は、前記遊離残留塩素濃度が所定値以上のときは前記遊離残留塩素濃度が前記所定値未満のときに比べ、前記注入間隔を長く設定することを特徴としている。
【0018】
また、本発明の冷却系循環水の処理方法は、前記補給水は、原水を軟水化した処理水であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の水処理システム及び冷却系循環水の処理方法によれば、検出された遊離残留塩素濃度に応じて注入間隔を設定し、塩素系水溶液を前記注入間隔でもって間欠的に前記循環水に注入するので、循環水中の遊離塩素の濃度が低下した状態で再度塩素系水溶液を循環水に投入することが可能となり、配管系が腐食するのを回避することができる。また、高濃度の塩素系水溶液を循環水に間欠的に注入できることから、藻類、スライム、及びレジオネラ菌の発生をより一層効果的に抑制することができる。したがって、通水性が阻害されたり被冷却装置の熱効率が低下するのを抑制でき、かつ配管系の腐食を防止することのできる水処理システムを実現することができる。
【0020】
また、遊離残留塩素濃度が所定値以上のときは、遊離残留塩素濃度が前記所定値未満のときに比べ、注入間隔を長く設定するので、遊離残留塩素濃度が比較的小さいときは、注入間隔は比較的短く、遊離残留塩素濃度が比較的大きいときは、注入間隔は比較的長いことになり、上記作用効果を容易に奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づき詳説する。
【0022】
図1は本発明に係る水処理システムのシステム構成図であって、該水処理システムは、熱交換器等の被冷却装置1を冷却する開放式の冷却塔2を備えた冷却系3と、原水を軟水化して処理水を生成する軟水器4と飽和食塩水を貯留する塩水タンク42と食塩水を電気分解して次亜塩素酸ナトリウム水溶液(塩素系水溶液)を生成する電解槽5とを備えた前処理系6とから構成されている。
【0023】
上記冷却系3は具体的には以下のように構成されている。
【0024】
すなわち、冷却塔2は、上部に開口部7が形成されると共に、該開口部7にはファン10が配設され、さらに側面には外気を導入する通気孔としてのルーバー8が傾斜状に設けられている。
【0025】
また、冷却塔2の下部には循環水を貯留する貯留部9が設けられると共に、該貯留部9には循環水の水位を管理するボールタップ式給水栓(以下、「給水栓」という。)11が配設されている。そして、この給水栓11は、第1の補給管12を介して軟水器4に接続され、貯留部9内の循環水の水位が低下すると、ボールタップが作動し、軟水器4からの処理水が冷却塔2に適宜補給されるように構成されている。
【0026】
また、冷却塔2の底部にはブロー管14が接続され、該ブロー管14にはブローバルブ13が介装されている。そして、貯留部9内の循環水は、必要に応じてブロー管14から外部に排水される。
【0027】
また、冷却塔2の底部には循環パイプ15が接続されると共に、該循環パイプ15の先端は冷却塔2の上部に位置するように配され、かつ前記先端には多数のノズル16が装着されている。
【0028】
さらに、循環パイプ15の管路中(管路に沿う近傍も含む。)には、循環水を冷却塔2の上部に還流させる循環ポンプ17と、循環水中の遊離残留塩素濃度を測定する遊離残留塩素濃度測定装置(遊離残留塩素濃度検出手段)18と、循環水の電気伝導度を測定する電気伝導度測定装置19と、循環水の温度を検出する温度検出装置20と、上述した熱交換器等の被冷却装置1とが、配設されている。
【0029】
電気伝導度測定装置19は、上述したように循環水の電気伝導度を測定し、循環水の濃縮率を管理する。具体的には、電気伝導度が所定値を超えると濃縮率が過度に大きくなったと判断し、希釈給水バルブ21を開弁し、第2の補給管22を介して軟水器4からの処理水を冷却塔2に供給し、循環水を希釈する。
【0030】
このように本実施の形態では、電気伝導度測定装置19で循環水の電気伝導度を監視し、これにより循環水の濃縮率を管理している。
【0031】
また、温度検出装置20は、循環水の温度を検出し、モータ23をインバータ制御する。具体的には、循環水の温度が高くなるとモータ23の回転数を高くしてファンから冷却塔2に供給される風量を増やし、冷却効果を増大させる。一方、循環水の温度が低い場合は、モータ23の回転数を低くしてファン10から冷却塔2に供給される風量を減らし冷却効果を低減させると共に、電力消費を抑制する。
【0032】
このように本実施の形態では、温度検出装置20の検出結果に応じてモータ23をインバータ制御し、これによりルーバー8から冷却塔2内に供給される吸引風量、すなわちファン10からの吐出風量を管理している。
【0033】
また、遊離残留塩素濃度測定装置18は、図2に示すように、前記循環水の一部をサンプル水として収容するサンプル収容部24と、呈色試薬を含む薬液を前記サンプル収容部24に注入する薬液供給部(薬注手段)25と、前記サンプル収容部24における前記サンプル水の発色度合を光学的に検出する発色度合検出部(発色度合検出手段)26と、該発色度合検出部26の検出結果に基づき遊離残留塩素濃度を判定する制御部27(判定手段)とを備えている。また、サンプル収容部24及び発色度合検出部26は装置キャビネット41内に収容されている。
【0034】
サンプル収容部24は、アクリル樹脂等の透明材料からなる筒状とされ、上部に開口部28が形成されると共に、下方側面にはサンプル水を導入する導入路29が形成され、かつ上方側面にはサンプル水を排水する排水路30が形成されている。尚、導入路29には下流側からフィルタ31、定流量弁32、及び給水バルブ33が順次設けられている。さらに、サンプル収容部24の下部には撹拌子34が配設されると共に、該サンプル収容部24の外部には前記撹拌子34を回転させるためのステータ35が周設されている。
【0035】
薬液供給部25は、先端にノズル36が装着されてサンプル収容部24の前記開口部28に着脱自在に装着されている。該薬液供給部25には、薬液貯蔵容器(不図示)が内蔵されており、サンプル水中の遊離残留塩素と反応して発色する呈色試薬やサンプル水を着色させるための色素を配合した薬液が貯蔵されている。
【0036】
ここで、前記呈色試薬としては、例えば、N,N′−ビス(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,3′−ジメチルベンジジン二ナトリウム塩等のジアルキルベンジジン化合物やN,N′−ビス(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,3′,5,5′−テトラメチルベンジジン二ナトリウム塩等のテトラアルキルベンジジン化合物が使用される。また、前記色素としては、前記呈色試薬が発色した場合の特定の吸収波長とは異なる波長領域で吸収を示す着色物質が選択され、例えば、ニューコクシン(食用赤色102号)やアシッドレッド(食用赤色106号)などの合成色素が使用される。
【0037】
発色度合検出部26は、発光波長の異なるLED(発光ダイオード)からなる第1及び第2の発光素子37、38と、前記サンプル収容部24を挟んで対向状に配設されたフォトトランジスタからなる第1及び第2の受光素子39、40とを備えている。尚、本実施の形態では、第1の発光素子37は青色光で発光するLED(例えば、発光波長470nm)で形成され、第2の発光素子38は赤色光で発光するLED(例えば、発光波長655nm)で形成されている。
【0038】
また、制御部27は、発色度合検出部26の測定結果が入力されると共に、所定の制御信号を後述するシステム制御部に出力する入出力部と、遊離残留塩素濃度と透過率との関係を示す検量線マップが格納されたROMと、演算結果を記憶したりワークエリアとして使用されるRAMと、測定装置全体の制御を司るCPUとを備えている。
【0039】
このように構成された遊離残留塩素濃度測定装置18では、所定の洗浄処理及び洗浄確認処理を行った後、給水バルブ33を操作して濃度測定用のサンプル水をサンプル収容部24に供給する。そして、サンプル水が、図中、A位置に到達した時点で給水バルブ33を閉弁する。次いで、第1の発光素子37を点灯させてサンプル収容部24を透過する青色光を第1の受光素子39で受光し、透過光強度を測定する。そして、その測定結果を第1のブランク値として制御部27に内蔵されたRAMに記憶する。次いで、第1の発光素子37を消灯させて第2の発光素子38を点灯させ、サンプル収容部24を透過する赤色光を第2の受光素子40で受光し、透過光強度を測定する。そして、その測定結果を第2のブランク値として前記RAMに記憶する。次いで、ステータ35に通電して撹拌子34を回転駆動させると共に、薬液供給部25のノズル36から一定量の薬液を断続的にサンプル収容部24に供給する。尚、サンプル水は薬液中の色素により赤色に変色し、呈色試薬が遊離残留塩素により酸化されると青緑色に発色する。
【0040】
次に、薬液がサンプル収容部24に正常に供給されたか否かを確認する。すなわち、ステータ35への通電を停止して第2の発光素子38を消灯させると共に、第1の発光素子37を点灯させて透過光強度を測定する。次いで、この透過光強度と前記第1のブランク値との比、すなわち第1の透過率を求め、ROMに予め格納されている基準値と比較する。そしてその結果、前記第1の透過率が基準値未満のときは色素が赤色に変色したと判断し、薬液が正常に供給されていることを確認する。次いで、第1の発光素子37を消灯させると共に、第2の発光素子38を点灯させて透過光強度を測定し、この透過光強度と前記第2のブランク値との比、すなわち第2の透過率を求める。そして、ROMに予め格納されている検量線マップを検索し、第2の透過率に対応した遊離残留塩素濃度を求め、当該遊離残留塩素濃度と判定する。
【0041】
このように本実施の形態では、前記循環水の一部をサンプル水としてサンプル収容部24に収容する一方、呈色試薬及び色素を前記サンプル収容部24に注入し、第1及び第2の発光素子37、38、第1及び第2の受光素子39、40を介してサンプル水の発色度合を光学的に検出して透過率を求め、前記検量線マップを検索して遊離残留塩素濃度を検出している。
【0042】
尚、本実施の形態では、透過率に基づいて遊離残留塩素濃度を検出しているが、吸光度と遊離残留塩素濃度との関係を示す検量線マップを予めROMに格納しておき、透過率に代えて吸光度に基づき遊離残留塩素濃度を検出するようにしてもよい。
【0043】
次に、上記前処理系6について詳述する。
【0044】
前処理系6は、上述したように軟水器4と、塩水タンク42と、電解槽5とを備えている。
【0045】
塩水タンク42は、食塩と食塩水とを仕切る仕切板(不図示)と該塩水タンク42内の水位を調整するフロート弁(不図示)とを有し、軟水器4からの処理水が第1の処理水供給管43を介して塩水タンク42に供給され、食塩が処理水中で撹拌されて溶解し、これにより飽和食塩水が生成される。尚、飽和食塩水の生成に必要とされる食塩は、人力により所定期間(例えば、3〜4日)毎に塩水タンク42に投入される。
【0046】
また、塩水タンク42は、第1の塩水供給管44を介して軟水器4に接続されると共に、第2の塩水供給管45を介して電解槽5に接続され、軟水器4及び電解槽5に飽和食塩水が供給可能となるように構成されている。
【0047】
さらに、軟水器4は、原水供給管46に接続されると共に、該原水供給管46の管路中には送水ポンプ47、送水バルブ48、及び流量計49が介装されている。さらに、軟水器4には第1の補給管12が接続されており、上述したように軟水器4からは冷却塔2に処理水が補給される。
【0048】
また、軟水器4と電解槽5とは第2の処理水供給管50により接続されている。さらに、軟水器4には排水管52が接続されると共に、該排水管52には排水バルブ53が介装されている。
【0049】
そして、軟水器4にはナトリウム型の陽イオン交換樹脂(不図示)が内有されており、原水が原水供給管46を介して供給されると、原水に含まれるカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの硬度成分が、飽和食塩水に含有されるナトリウムイオンとイオン交換されて除去され、これにより原水は軟水化されて処理水となる。また、陽イオン交換樹脂の交換能力が飽和状態になると、塩水タンク42に貯留された飽和食塩水が第1の塩水供給管44を介して供給され、陽イオン交換樹脂の再生が行われる。尚、再生に使用された食塩水は排水管52から排出される。
【0050】
電解槽5は、具体的には図3に示すように、筒状に形成された電解槽本体54の上方側面及び下方側面には第1及び第2の水位センサ55a、55bが配設されると共に、前記電解槽本体54内の下部には電極ユニット56が配設され、さらに、該電極ユニット56は電源装置57と電気的に接続されている。
【0051】
電解槽本体54は、第1のバルブ58aを介して前記第2の塩水供給管45に接続されると共に、第2のバルブ58bを介して第2の処理水供給管50に接続され、塩水タンク42からの飽和食塩水及び軟水器4からの処理水が供給可能とされている。
【0052】
さらに、電解槽本体54の下部には第3のバルブ58cが介装された排水管59が接続され、電解槽本体54に貯留された次亜塩素酸ナトリウム水溶液の排水を可能にしている。
【0053】
また、電解槽本体54の上部には次亜塩素酸ナトリウム水溶液を循環水に注入するための次亜注入管60が接続されている。この次亜注入管60には第4のバルブ58dが介装されると共に、その先端は循環パイプ15に接続され、後述するように所定の注入間隔で次亜塩素酸ナトリウム水溶液が循環水に注入される。
【0054】
さらに、電解槽本体54の上部には通気管61が接続されると共に、該通気管61には第5のバルブ58eが介装され、該第5のバルブ58eを操作することにより外気との通気が可能となるように構成されている。
【0055】
電極ユニット56は、図4に示すように、チタン等で形成された一対の陰極62a、62bが白金等で形成された陽極63を挟んで対向状となるように並設されている。そして、陽極63は両面が有効電極面を形成し、一対の陰極62a、62bは、前記陽極63との対向面62a、62bが有効電極面を形成している。
【0056】
図5は上記水処理システムの制御系を示すブロック構成図である。
【0057】
すなわち、システム制御部64は、制御対象となる構成要素との間でインターフェース動作を司る入出力部65と、所定の演算プログラム等が格納されたROM66と、演算結果を記憶したりワークエリアとして使用されるRAM67と、システム全体の制御を司るCPU68とを備えている。
【0058】
そして、入出力部65には、電気伝導度測定装置19、温度検出装置20、残留塩素濃度測定装置18、第1及び第2の水位センサ55a、55b、及び流量計49が接続され、これら各装置からの電気信号が入力される。また、この入出力部65には、モータ23の回転数をインバータ制御するインバータ装置69、ブローバルブ13、希釈給水バルブ21、循環ポンプ17が接続され、さらに電極ユニット56に接続された電源装置57、電解槽5のバルブ群58(第1〜第5のバルブ58a〜58e)、送水ポンプ47、軟水器4のバルブ類48、53が電気的に接続され、これら各構成部材はCPU68により制御される。
【0059】
このように構成された水処理システムは、以下のように運転駆動される。
【0060】
まず、インバータ69を介してモータ23を駆動させ、ファン10を回転させる。そしてこれにより、矢印B方向からルーバー8を介して冷却塔2内部に外気が流入し、また、この外気は冷却塔2の内部を循環して矢印Cに示すように、外部に排出される。
【0061】
一方、送水ポンプ47を駆動させ、送水バルブ48を開弁させると、水道水や工業用水等の原水が流量計49を通過し、軟水器4に供給される。そして、該軟水器4では、原水中の硬度成分が除去され、軟水化した処理水が生成される。
【0062】
軟水器4で生成された処理水は第1の補給管12を介して冷却塔2の貯留部9に補給され、給水栓11の閉栓により給水が停止するまで処理水が貯留部9に補給される。そして、貯留部9に貯留された処理水は、循環ポンプ17の駆動により、循環水として循環パイプ15を循環する。循環水は熱交換器等の被冷却装置1を冷却すると共に、冷却塔2の上部に送水されてノズル16から吐水され、下方に落下する。その際、循環水に含まれる水分の一部は蒸発するが、残部の循環水は溶存塩類が残留した状態で濃縮されて貯留部9に貯留される。そして、濃縮率の指標となる電気伝導度を電気伝導度検出装置19で監視し、電気伝導度が基準値を超えると、希釈給水バルブ21を開弁し、第2の補給管22を介して軟水器4から一定量の処理水を冷却塔2に補給し、循環水を希釈する。
【0063】
ここで、循環水が濃縮される際、冷却塔2には軟水化された処理水が補給されているため、循環水中の硬度成分は所定濃度以下に維持されることとなる。その結果、本発明の水処理システムでは、熱交換器等の被冷却装置1や冷却塔2内でのスケールの発生が抑制される。
【0064】
また、温度検出装置20で温度を検出し、その検出結果に応じてモータ23の回転数をインバータ制御し、これによりファン10からの吐出風量を管理する。
【0065】
一方、軟水器4で生成された処理水の一部は第1の塩水供給管43を介して塩水タンク42に供給され、該塩水タンク42で飽和食塩水を生成する。
【0066】
次いで、第5のバルブ58eを開弁状態とした後、第1のバルブ58aを開弁し、塩水タンク42から電解槽5内に飽和食塩水を供給し、電解槽本体54に貯留する。そして、飽和食塩水の水位が第2の水位センサ55bの位置に到達すると第1のバルブ58aを閉弁し、第2のバルブ58bを開弁して第2の処理水供給管50から軟水器4内の処理水を電解槽5に供給する。そして、その水位が第1の水位センサ55aの位置に到達すると、第2のバルブ58bを閉弁する。これにより飽和食塩水を処理水で希釈した希釈食塩水が電解槽本体54に貯留されることになる。
【0067】
尚、希釈食塩水の濃度は、第1及び第2の水位センサ55a、55bの取付位置を調整することにより制御される。具体的には、希釈食塩水の濃度が、好ましくは1〜3重量%となるように、第1及び第2の水位センサ55a、55bの取付位置が調整される。
【0068】
次いで、電源装置57が駆動し、例えば、電圧密度が0.2〜0.5mV/mmで電流密度が0.5〜1.0mA/mmの電力を電極ユニット56に供給する。すると、化学反応式(1)〜(3)に示す反応が生じ、食塩水(NaCl)は電気分解され、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を生成する。
【0069】
陽極側反応: 2Cl→Cl+2e … (1)
陰極側反応: 2Na+2HO+2e→2NaOH+H … (2)
全反応: Cl+NaOH→NaClO+NaCl+HO … (3)
このようにして生成された次亜塩素酸ナトリウムは、水中で溶解状態にあるが、希釈食塩水よりも比重が軽いため、電解槽本体54の上方に移動する。したがって、電極ユニット56の近傍では食塩水濃度が1〜3重量%の希釈食塩水が存在して電気分解が安定的に進行する。その結果、電気分解の開始から3〜6時間程度で遊離残留塩素濃度が6000mgCl/L程度の高濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液が生成される。
【0070】
そして、本発明の水処理システムは、注入間隔制御手段を有しており、遊離残留塩素濃度測定装置18で定期的に遊離残留塩素濃度を検出し、その検出結果に応じた注入間隔で大量の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を循環水に注入し、これにより藻類、スライム、及びレジオネラ菌等の発生を抑制する一方で、循環パイプ15が腐食するのを防止している。
【0071】
図6は注入間隔制御手段の制御手順を示すフローチャートである。
【0072】
まず、ステップS1では次亜塩素酸ナトリウム水溶液を循環水に注入する。すなわち、第5のバルブ58eを閉弁した後、第2のバルブ58b及び第4のバルブ58dを開弁し、電解槽本体54内に処理水を供給する。そしてその供給圧によって電解槽本体54内で生成した次亜塩素酸ナトリウム水溶液は次亜注入管60に押し出され、これにより、循環パイプ15内の循環水に所定量の次亜塩素酸ナトリウム水溶液が注入される。そしてその後、第2のバルブ58b及び第4のバルブ58dを閉弁し、注入処理を終了する。
【0073】
ここで、前記所定量(注入量)は、貯留部9に貯留される保有水量に対し、例えば遊離残留濃度が5mgCl/Lになるような量に設定される。したがって、冷却塔の処理能力により決定される保有水量が1500L、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の遊離残留塩素濃度が6000mgCl/Lの場合、1.25L(=5×1500/6000)に設定される。
【0074】
次いで、ステップS2では、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の注入後所定時間t(例えば、1時間)が経過したか否かを判断する。そして、その答が否定(No)のときは前記所定時間tが経過するのを待機し、その答が肯定(Yes)、すなわち所定時間tが経過したときはステップS3に進む。
【0075】
次いで、ステップS3では遊離残留塩素濃度測定装置18を使用して遊離残留塩素濃度Dを測定し、その測定値が第1の所定値D1(例えば、0.5ppm)未満か否かを判断する。そして、その答が肯定(Yes)のとき、すなわち、遊離残留塩素濃度Dが前記第1の所定値D1未満のときは、遊離残留塩素濃度Dは十分に小さく配管腐食のおそれは少ないと判断してステップS4に進み、第1の所定期間N1(例えば、1日)経過後に上記所定量の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を循環水に注入し、その後、ステップS2に戻る。
【0076】
一方、ステップS3の答が否定(No)のときは、ステップS5に進み、遊離残留塩素濃度測定装置18における遊離残留塩素濃度Dの測定結果が第2の所定値D2(>D1)(例えば、1.0ppm)未満か否かを判断する。そして、その答が肯定(Yes)のとき、すなわち、遊離残留塩素濃度Dが前記第2の所定値D2未満のときは、遊離残留塩素濃度DはD1≦D<D2であることから、ステップS6に進み、第1の所定期間N1よりも長い第2の所定期間N2(例えば、3日)が経過した後に上記所定量の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を循環水に注入し、その後、ステップS2に戻る。
【0077】
また、ステップS5の答が否定(No)のとき、すなわち、遊離残留塩素濃度Dが前記第2の所定値D2以上のときは、冷却水系の遊離残留塩素濃度は高いと判断してステップS7に進み、第3の所定期間N3(>N2)(例えば、7日)経過後に上記所定量の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を注入し、その後、ステップS2に戻る。
【0078】
このように本実施の形態では、大量の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を間欠的に循環水に注入することにより、藻類、スライム、及びレジオネラ菌の発生がより効果的に抑制されて循環水の円滑な循環が可能になる一方、遊離残留塩素濃度が大きい場合は次亜塩素酸ナトリウム水溶液の注入間隔が長くなるように、循環水の遊離残留塩素濃度に応じて注入間隔を変更しているので、循環パイプ等の腐食を防止することが可能となる、すなわち、冷却水系の腐食を招くこともなく、藻類やスライム、及びレジオネラ菌の発生を抑制することができる。
【0079】
尚、上記フローチャートでは省略したが、次亜塩素酸ナトリウムの注入処理が終了する毎に、電解槽本体54内部の洗浄処理が行われる。すなわち、第2のバルブ58b及び第4のバルブ58dを閉弁し、注入処理を終了した後、第3のバルブ58cを開弁し、電解槽本体54内に残存している次亜塩素酸ナトリウム水溶液及び処理水を排水し、その後、第3のバルブ58cを閉弁する。そして、第2のバルブ58bを開弁し、軟水器4からの処理水を電解槽5に導入して電解槽本体54内を洗浄する。次いで、第2のバルブ58bを閉弁すると共に第3のバルブ58cを開弁して排水し、これにより洗浄処理が終了する。
【0080】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態では、開放式冷却塔について説明したが、密閉式冷却塔についても同様に適用できるのはいうまでもない。
【0081】
また、上記実施の形態では1個の軟水器を使用した場合について説明したが、複数の軟水器を接続し、適宜軟水化処理を切替えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に係る水処理システムの一実施の形態を示すシステム構成図である。
【図2】遊離残留塩素濃度測定装置の一実施の形態を示す概略断面図である。
【図3】電解槽の詳細を示す断面図である。
【図4】図3のX−X断面図である。
【図5】上記水処理システムの制御系を示すブロック構成図である。
【図6】本発明の注入間隔制御手段の一実施の形態を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0083】
1 被冷却装置
2 冷却塔
4 軟水器
5 電解槽
18 遊離残留塩素濃度測定装置(塩素濃度検出手段)
24 サンプル収容部(収容部)
25 薬液供給部(薬注手段)
26 発色度合検出部(発色度合検出手段)
27 制御部(判定手段)
42 塩水タンク
60 次亜注入管(注入手段)
64 システム制御部(注入間隔制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補給水が供給されると共に該補給水を循環水として被冷却装置を冷却する冷却塔と、塩水を貯留する塩水タンクと、該塩水タンクから供給される前記塩水を電気分解して塩素系水溶液を生成する電解槽と、該電解槽で生成された塩素系水溶液を前記循環水に間欠的に注入する注入手段とを有し、
かつ、前記循環水の遊離残留塩素濃度を検出する遊離残留塩素濃度検出手段と、該遊離残留塩素濃度検出手段の検出結果に応じ前記塩素系水溶液の前記循環水への注入間隔を制御する注入間隔制御手段とを備えていることを特徴とする水処理システム。
【請求項2】
前記注入間隔制御手段は、前記遊離残留塩素濃度検出手段の検出結果により前記遊離残留塩素濃度が所定値以上と判断したときは、前記遊離残留塩素濃度が前記所定値未満のときに比べ、前記注入間隔を長く設定することを特徴とする請求項1記載の水処理システム。
【請求項3】
原水を軟水化して処理水を生成する少なくとも1台以上の軟水装置を備え、
前記補給水は、前記軟水装置で生成される前記処理水であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の水処理システム。
【請求項4】
前記遊離残留塩素濃度検出手段は、前記循環水の一部をサンプル水として収容する収容部と、呈色試薬を含む薬液を前記収容部に注入する薬注手段と、前記収容部における前記サンプル水の発色度合を光学的に検出する発色度合検出手段と、該発色度合検出手段の検出結果に基づき遊離残留塩素濃度を判定する判定手段とを備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の水処理システム。
【請求項5】
冷却塔に供給される補給水を循環水として使用し、被冷却装置を冷却する冷却系循環水の処理方法であって、
塩水を電気分解して塩素系水溶液を生成する電気分解ステップと、前記循環水の遊離残留塩素濃度を検出する遊離残留塩素濃度検出ステップと、前記検出された遊離残留塩素濃度に応じた注入間隔を設定し、前記塩素系水溶液を前記注入間隔でもって間欠的に前記循環水に注入する注入ステップとを含むことを特徴とする冷却系循環水の処理方法。
【請求項6】
前記遊離残留塩素濃度が所定値以上のときは前記遊離残留塩素濃度が前記所定値未満のときに比べ、前記注入間隔を長く設定することを特徴とする請求項5記載の冷却系循環水の処理方法。
【請求項7】
前記補給水は、原水を軟水化した処理水であることを特徴とする請求項6記載の冷却系循環水の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−24895(P2009−24895A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185916(P2007−185916)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】