説明

水処理システム及びその運転方法

【課題】 原水を精密ろ過膜(MF膜)又は限外ろ過膜(UF膜)を用いた膜分離装置で直接処理してもMF膜又はUF膜が目詰まりしにくく、高機動車に搭載できるほど小型であって、飲料水を長期間安定して製造しうる飲料水製造用水処理システム及びその運転方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 濁度計によって測定した原水の濁度と、膜分離装置の設定透過流量と膜面積とパラメータとに基づいて、設定回収率を式1から算出する設定工程と、
流量計によって測定した膜分離装置の原水流量又は濃縮水流量、及び膜透過流量に基づいて、実測回収率を式2から算出する実測工程と、
前記実測回収率が前記設定回収率と同じになるように、膜分離装置の膜透過流量、及び原水流量又は濃縮水流量を制御する制御工程とを有し、
原水濁度の変動に追従して膜分離装置の回収率を制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川水、湖沼水、海水等を原水として、精密ろ過膜(MF膜)又は限外ろ過膜(UF膜)を用いた膜分離装置を用いて膜分離処理を行い、飲料水を製造する水処理システム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MF膜及びUF膜は、微粒子等の除去性能が高いため、原水中に含まれる微細な固形物、懸濁物質、微生物等を分離する固液分離手段として使用される。また、このMF膜、UF膜を組み込んだMF膜分離装置、UF膜分離装置は、操作が簡便であることから、医薬、化学、半導体等の分野的で工業的に広く利用されている。
【0003】
また、逆浸透膜(RO膜)は、水中の塩類、有機物質(トリハロメタン、農薬等)、微細粒子(生菌、死菌、ウイルス等)を安定かつ効率的に除去できるため、超純水製造から海水淡水化まで広い範囲で利用されている。例えば、医薬品、半導体の分野において、注射用水、超純水等の製造に利用されている。
【0004】
中空糸型又はスパイラル型RO膜は、膜充填密度が高く、膜の原水通過スペースが非常に小さいため、原水(例えば、工業用水)を、まずMF膜分離装置又はUF膜分離装置を用いて前処理し、それらの処理水をRO膜分離装置で膜分離処理することが一般的である。
【0005】
一方、地震、津波等の災害時に飲料水を製造するため、被災地の原水を浄化する浄化装置として、長毛ろ過装置と珪藻土ろ過装置を用いる車載型の移動式浄水装置が、特許文献1に開示されている。
【0006】
また、RO膜を用いる海水淡水化装置と、UF膜を用いる汚濁淡水の浄化装置等を備える車両搭載型清水製造装置が、特許文献2に開示されている。
【0007】
また、回転するろ過筒を通じてろ過を行う第一ろ過器と、MF膜又はRO膜処理を行う第二ろ過器と、RO膜を用いて純水を得る第三ろ過器とを備える移動式浄水設備が、特許文献3に開示されている。
【特許文献1】実公昭62−9997号公報
【特許文献2】特開平9−141262号公報
【特許文献3】特開平8−71567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に開示される移動式浄水装置は、細菌、ウイルス、塩類、重金属類、農薬等の化学物質を除去することができず、原水の濁度が高い場合には、珪藻土ろ過器を頻繁に手動で逆流洗浄しなければならないという欠点があった。
【0009】
また、特許文献2及び特許文献3に開示される移動式浄水設備は、原水タンク、凝集剤を添加した原水を貯留するタンク、前処理用の長毛ろ過器を有するため、大型車両でなければ浄水設備を搭載することが困難である。
【0010】
その一方、災害地には大型車両を乗り入れることは困難な場合が多く、高機動車と呼ばれる小型車両に搭載できるような浄水設備が望まれているが、高機動車の荷台寸法は、縦2070mm×横2000mm×高さ1175mm程度であり、一般的な大型車両の荷台寸法である縦4500mm×横2990mm×高さ2080mmと比較すると、浄水設備のスペースが非常に限られることが大きな問題である。
【0011】
海水を淡水化し、または、原水中に含まれる細菌、ウイルス、化学物質等を除去するためにはRO膜分離装置を使用する必要があるが、上述したように、前処理としてMF膜分離装置又はUF膜分離装置で原水を処理しなければならない。ここで、設置スペースの大きい長毛ろ過器等をMF膜分離装置又はUF膜分離装置の前処理として使用せず、MF膜分離装置又はUF膜分離装置で原水を直接処理すれば、飲料水製造用水処理システムを小型化しうるが、原水濁度が高ければMF膜がつまりやすくなるため、RO膜分離装置により長期間安定した飲料水の製造が困難になる。
【0012】
本発明は、原水を直接MF膜又はUF膜分離装置で処理してもMF膜又はUF膜が目詰まりしにくく、高機動車に搭載できるほど小型であって、飲料水を長期間安定して製造しうる飲料水製造用水処理システム及びその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、原水濁度に追従してMF膜又はUF膜分離装置の回収率を制御することにより、濁度の高い原水を処理する場合であっても、MF膜又はUF膜が目詰まりしにくく、淡水又は海水を原水として飲料水を長期間安定して製造しうる飲料水製造用水処理システム及びその運転方法に関する。
【0014】
具体的に、本発明は、
精密ろ過膜又は限外ろ過膜を用いた膜分離装置を用いて原水を処理する飲料水製造用水処理システムの運転方法であって、
濁度計によって測定した原水の濁度と、膜分離装置の設定透過流量と膜面積とパラメータとに基づいて、設定回収率を式1から算出する設定工程と、
流量計によって測定した膜分離装置の原水流量又は濃縮水流量、及び膜透過流量に基づいて、実測回収率を式2から算出する実測工程と、
前記実測回収率が前記設定回収率と同じになるように、膜分離装置の膜透過流量、及び原水流量又は濃縮水流量を制御する制御工程とを有し、
原水濁度の変動に追従して膜分離装置の回収率を制御することを特徴とする方法に関する(請求項1)。
【0015】
【数1】

【0016】
【数2】

(ここで、Rec._setは設定回収率[%]、TURは濁度[度]、Xはパラメータ、FI-P_setは設定透過流量[m3/日]、Aは膜面積[m2]、Rec.は実測回収率[%]、FI-Pは膜透過流量[m3/日]、FI-Fは原水流量[m3/日]、FI-Cは濃縮水流量[m3/日]である。)
【0017】
前記制御工程は、前記実測回収率が前記設定回収率よりも高い場合には、膜分離装置からの濃縮水排水経路に設けられた流量調整弁の開度を上昇させ、濃縮水流量を増加させることによって実測回収率を低下させ、
前記実測回収率が前記設定回収率よりも低い場合には、前記流量調整弁の開度を低下させ、濃縮水流量を減少させることによって実測回収率を増加させる工程であることが好ましい(請求項2)。
【0018】
前記制御工程は、前記実測回収率が前記設定回収率よりも高い場合には、膜分離装置に原水を送水する原水ポンプの出力をインバータ制御によって増加させ、濃縮水流量を増加させることによって実測回収率を低下させ、
前記実測回収率が前記設定回収率よりも低い場合には、前記原水ポンプの出力をインバータ制御によって減少させ、濃縮水流量を減少させることによって実測回収率を増加させる工程であってもよい(請求項3)。
【0019】
前記制御工程は、実測回収率を制御した後、さらに膜透過流量が設定透過流量よりも低い場合には、前記流量調整弁の開度を低下させることによって膜分離装置の膜透過流量を増加させ、
膜透過流量が設定透過流量よりも高い場合には、膜分離装置からの濃縮水排水経路に設けられた流量調整弁の開度を上昇させることによって膜分離装置の膜透過流量を減少させてもよい(請求項4)
【0020】
前記制御工程は、実測回収率を制御した後、さらに膜透過流量が設定透過流量よりも低い場合には、膜分離装置に原水を送水する原水ポンプの出力をインバータ制御によって増加させることにより膜分離装置の膜透過流量を増加させ、
膜透過流量が設定透過流量よりも高い場合には、前記原水ポンプの出力をインバータ制御によって減少させることにより膜分離装置の膜透過流量を減少させてもよい(請求項5)。
【0021】
設定透過流量を膜分離装置の膜面積で除した値は、0.5m3/m2/日以上10m3/m2/日以下であることが好ましい(請求項6)。
【0022】
原水の濁度は、400度以下であることが好ましい(請求項7)。
【0023】
設定回収率は、30%以上100%以下であることが好ましい(請求項8)。
【0024】
また、本発明は、
精密ろ過膜又は限外ろ過膜を用いた膜分離装置を用いて原水を処理する飲料水製造用水処理システムであって、
濁度計によって測定した原水の濁度と、膜分離装置の設定透過流量から算出される設定透過流束及びパラメータとに基づいて、設定回収率を式1から算出する設定手段と、
流量計によって測定した膜分離装置の原水流量又は濃縮水流量、及び透過流速に基づいて、実測回収率を式2から算出する実測手段と、
前記実測回収率が前記設定回収率と同じになるように、膜分離装置の膜透過流量及び原水流量又は濃縮水量を制御する制御手段とを有し、
原水濁度の変動に追従して精密ろ過膜分離装置の回収率を制御することを特徴とするシステムに関する(請求項9)。
【0025】
【数3】

【0026】
【数4】

【0027】
(ここで、Rec._setは設定回収率[%]、TURは濁度[度]、Xはパラメータ、FI-P_setは設定透過流量[m3/日]、Aは膜面積[m2]、Rec.は実測回収率[%]、FI-Pは膜透過流量[m3/日]、FI-Fは原水流量[m3/日]、FI-Cは濃縮水流量[m3/日]である。)
【0028】
前記制御手段は、前記実測回収率が前記設定回収率よりも高い場合には、膜分離装置からの濃縮水排水経路に設けられた流量調整弁の開度を上昇させ、濃縮水流量を増加させることによって実測回収率を低下させ、
前記実測回収率が前記設定回収率よりも低い場合には、前記流量調整弁の開度を低下させ、濃縮水流量を減少させることによって実測回収率を増加させる手段であることが好ましい(請求項10)。
【0029】
前記制御手段は、前記実測回収率が前記設定回収率よりも高い場合には、膜分離装置に原水を送水する原水ポンプの出力をインバータ制御によって増加させ、濃縮水流量を増加させることによって実測回収率を低下させ、
前記実測回収率が前記設定回収率よりも低い場合には、前記原水ポンプの出力をインバータ制御によって減少させ、濃縮水流量を減少させることによって実測回収率を増加させる手段であることが好ましい(請求項11)。
【0030】
前記制御手段は、実測回収率を制御した後、さらに膜透過流量が設定透過流量よりも低い場合には、膜分離装置に原水を送水する原水ポンプの出力をインバータ制御によって増加させることにより膜分離装置の膜透過流量を増加させ、
膜透過流量が設定透過流量よりも高い場合には、前記原水ポンプの出力をインバータ制御によって減少させることにより膜分離装置の膜透過流量を減少させる手段であってもよい(請求項12)。
【0031】
前記制御手段は、実測回収率を制御した後、さらに膜透過流量が設定透過流量よりも低い場合には、前記流量調整弁の開度を低下させることにより膜分離装置の膜透過流量を増加させ、
膜透過流量が設定透過流量よりも高い場合には、膜分離装置からの濃縮水排水経路に設けられた流量調整弁の開度を上昇させることにより膜分離装置の膜透過流量を減少させる手段であってもよい(請求項13)。
【発明の効果】
【0032】
本発明の飲料水用水処理システム及びその運転方法を使用すれば、MF膜分離装置又はUF膜膜分離装置の上流に長毛ろ過装置等の粗ろ過装置を設置しなくとも、MF膜分離装置又はUF膜分離装置の膜の目詰まりを防止することが可能である。このため、海水又は淡水のいずれを原水とする場合であっても、原水タンク、凝集沈殿タンク、長毛ろ過器等が不要となり、高機動車に搭載しうる程度に水処理装置全体を小型化することができる。その結果、道路状況が劣悪な被災地へも飲料水用水処理システムを搬送し、濁度が高い原水しか入手できない状況であっても、長期間安定して飲料水を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0034】
はじめに、従来の車載型水処理システム全体の概略構成図を、図1に示す。河川水、湖沼水等の原水は、揚水ポンプによって一旦タンクに貯水され、凝集剤を添加される。その後、長毛ろ過器へと供給され、前処理が行われる。
【0035】
次に、長毛ろ過器で前処理された処理水は、ろ過ポンプによってMF膜分離装置又はUF膜分離装置に供給される。
【0036】
次に、MF膜分離装置又はUF膜分離装置の処理水(透過水)は、高圧ポンプによってRO膜分離装置に供給される。RO膜分離装置の処理水(透過水)は、さらに活性炭吸着塔へと供給された後、飲料水として利用される。
【0037】
ここで、従来の車載型水処理システムでは、MF膜又はUF膜の目詰まりを防止するため、長毛ろ過器を使用するが、長毛ろ過器は設置スペースが大きく、さらに原水を凝集沈殿処理するためのタンクも必要であるため、大型車両でないと搭載できないという問題があった。
【0038】
本発明の水処理システム及びその運転方法は、高機動車の荷台に搭載できるように、設置スペースの大きな長毛ろ過器及び凝集沈殿タンクを省略し、かつ、MF膜又はUF膜の目詰まりを防止することを特徴とする。さらに、省電力化を図ることにより、発電機を小型化しうることも特徴とする。
【0039】
以下、本発明の水処理システム及びその運転方法について、詳細に説明する。
【0040】
(実施の形態1)
MF膜分離装置を中心とした、本実施の形態における水処理システムの一部配管図を、図2に示す。この水処理システムでは、原水ポンプ1が淡水又は海水を原水として採水する。原水ポンプ1で加圧された原水は、原水送水経路4を通じて複数のMF膜モジュール7へと送水される。これら複数のMF膜モジュール7と、配管、バルブ等からMF膜分離装置が形成されている。
【0041】
なお、飲料水の製造量が少量で足りる場合には、MF膜モジュール7は、単数であってもよい。また、MF膜に代えてUF膜も使用可能であるが、高濁度(200度以上)でも長期に渡って安定した運転を継続して行うためには、MF膜を使用することが好ましい。
【0042】
原水送水経路4には、濁度計2及び流量計3が設置されており、それぞれ原水濁度及び原水流量を測定する。そして、濁度計2及び流量計3の測定結果は、経路17及び経路18を通じてシーケンサ12へと送られる。なお、原水ポンプ1と濁度計2の間には、計器類の保護やMF膜モジュールの流路の閉塞を防止するために、フィルターユニット等の除濁装置を設置することが好ましい。
【0043】
MF膜モジュール7の処理水(透過水)は、処理水送水経路8を経てMF膜処理水タンク又はRO膜モジュール(いずれも図示せず)へと送水される。
【0044】
処理水送水経路8には、流量計9が設置されており、MF膜モジュール7の処理水の流量(膜透過流量)を測定する。膜透過流量は、経路19を通じてシーケンサ12へと送られる。
【0045】
膜モジュール7には濃縮水を排出する濃縮水排水経路5が接続されており、濃縮水排水経路5には流量調整弁14が設置されている。この流量調整弁14を閉じると濃縮水排水経路5を流れる濃縮水流量が減少し、開くと濃縮水流量が増加するため、流量調整弁14の開閉により膜モジュール7の実測回収率及び膜透過流量を制御することが可能である。また、シーケンサ12からの制御信号は、経路16を通じて流量調整弁14へと送られる。
【0046】
MF膜モジュール7は、MF膜の目詰まりを防止するため、定期的に洗浄する必要がある。図2の水処理システムでは、洗浄時には原水ポンプ1を停止すると共に、MF膜モジュール7の原水供給系路4に設置されている原水弁20を閉じる。また、処理水送水経路8に設置された処理水弁22と、濃縮水排水経路5に設置されている排水弁23を閉じる。
【0047】
次に、逆洗排水経路6に設置された逆洗排水弁24と、逆洗経路11に設置されている逆洗弁21とを開き、逆洗経路11により逆洗水10をMF膜モジュール7の二次側(透過水側)から供給する。同時に、エア管27のエア弁26を開き、ブロワ28によって気泡を膜モジュール7に送ってエアスクラビングを行う。そして、逆洗排水は、逆洗排水経路6を通じてシステム外へと排水される。
【0048】
洗浄終了後、逆洗排水弁24と逆洗弁21及びエア弁26を閉じる。次に、原水ポンプ1を運転すると共に、原水弁20、処理水弁22及び排水弁23を開き、原水の処理を再開する。
【0049】
MF膜モジュール7の洗浄は、所定時間毎に、又はMF膜モジュール7の膜間差圧を測定して膜間差圧の測定値が一定以上となったときに行うようにすることが好ましい。また、RO膜分離装置を連続的に運転するためには、MF膜処理水も連続して確保する必要があるため、弁操作のみによってMF膜モジュール7を順番に洗浄することが好ましい。
【0050】
処理水送水経路8に設置されている定流量弁15は、弁の前後の差圧によって弁のダイアフラムの開度調整を自動で制御して、弁を流れる流量を自動で一定に調整する。この定流量弁9を処理水送水経路8に設置しておけば、設定流量以上の流量で水が流れないので、ろ過流量過多によるMF膜モジュール7のMF膜の閉塞を防止することができる。
【0051】
一方、シーケンサ12は、インバータ13に接続されており、さらにインバータ13は、経路25を通じて原水ポンプ1に接続されており、後述するように、シーケンサ12によって原水ポンプ1の出力をインバータ制御できるようになっている。
【0052】
また、シーケンサ12は、経路16を通じて流量調整弁14にも接続されており、流量調整弁14の開閉を制御できるようになっている。
【0053】
以上、図2を参照しつつ、本実施の形態における水処理システムの構成及び各構成の動作について説明した。
【0054】
次に、本実施の形態における水処理システムの運転方法を、図3に示す制御フローチャートを参照しながら説明する。
【0055】
まず、濁度計2によって原水濁度を測定する(ステップS1)。
【0056】
次に、(1) 設定透過流量及び膜分離装置の膜面積、(2) ステップS1で測定した原水濁度、及び(3) パラメータに基づいて、設定回収率(単位%)を式1から算出する(ステップS2:設定工程)。
【0057】
【数5】

【0058】
式1において、Rec._setは設定回収率[%]、TURは濁度[度]、Xはパラメータ、Aは膜面積[m2]、FI-P_setは設定透過流量[m3/日]である。
【0059】
設定透過流量とは、飲料水供給設備としての設計飲料水供給流量を確保するためにRO膜分離装置に供給しなければならない流量であり、設計飲料水供給水量/RO膜分離装置の回収率、という式によって決定され、設定透過流束(m3/ m2/日)に膜面積(m2)を乗じることにより算出される。RO膜分離装置の回収率は、淡水を処理する場合には70%、海水を処理する場合には30%とするのが一般的である。
る。
【0060】
ここで、設定回収率は、30%以上100%以下とすることが好ましい。回収率が低下するとポンプ及び発電機を大型化する必要があるが、30%未満では特にポンプ出力を大きくする必要があるために、特に大型のポンプ及び発電機を選択せざるを得ない。そうなると、飲料水製造システムとして高機動車に搭載しようとすると、後段のRO膜分離装置及び活性炭吸着塔を設置するスペース的余裕がなくなってしまう。従って、式1から30%未満の設定回収率が算出された場合には、設定回収率を30%とする。
【0061】
設定回収率を設定する技術的意義は、膜の目詰まりを軽減して、MF膜モジュール7の膜透過流量を一定に保つことにある。後述する実測回収率を設定回収率と同じになるように制御することにより、設定透過流量をMF膜の膜面積で除した値(設定透過流束)と、安定的に運転したい期間に対して最適なMF膜モジュール内の濁度を一定に保つことが可能となる。
【0062】
ここで、パラメータXは、膜分離装置を安定的に運転するための上限となる膜モジュール内の被処理水の濁度を、透過流束(透過流量/膜面積)が1m3/m2/日であるときの値に換算した値である。よって、このパラメータXを透過流束で除すことで、その透過流束時の上限膜モジュール内濁度となる。なお、パラメータXの値は、原水性状及び必要安定運転日数により実験的に算出される数値であり、X=250〜1000という数値は、災害時等の飲料水製造のために移動式(車載型)浄水装置に求められる原水性状、必要安定運転日数により決定されたものである。
【0063】
次に、流量計3及び流量計9によってそれぞれ測定した原水流量及びMF膜モジュール7の膜透過流量に基づいて、実測回収率を式2から算出する(ステップS3:実測工程)。
【0064】
【数6】

【0065】
式2において、Rec.は実測回収率[%]、FI-Pは膜透過流量[m3/日]、FI-Fは原水流量[m3/日]、FI-Cは濃縮水流量[m3/日]である。
【0066】
次に、実測回収率と設定回収率とを比較して(ステップS4)、実測回収率が設定回収率よりも低い(Rec._set>Rec.)と判断すればステップS5に進み、実測回収率が設定回収率よりも低くなければステップS7に進む。
【0067】
ステップS5では、シーケンサ12が流量調整弁14に弁を閉じる信号を送り、流量調整弁14の開度を小さくする。すると、濃縮水排水経路5を流れる濃縮水量が減少するため、式2より膜透過流量(FI-P)が一定であれば実測回収率(Rec.)は増加する。
【0068】
ステップS5の後、実測回収率が増加して設定回収率と等しく(Rec._set=Rec.)なったか判断し(ステップS6)、等しいと判断すればステップS10に進む。等しくないと判断すれば、ステップS6からステップS4に戻る。
【0069】
一方、実測回収率が設定回収率よりも低くなければ、実測回収率が設定回収率よりも高い(Rec._set<Rec.)か判断する(ステップS7)。実測回収率が設定回収率よりも高いと判断すれば、ステップS8に進む。
【0070】
ステップS8では、シーケンサ12が流量調整弁14に弁を開く信号を送り、流量調整弁14の開度を大きくする。すると、濃縮水排水経路5を流れる濃縮水量が増加するため、式2より膜透過流量(FI-P)が一定であれば実測回収率(Rec.)は減少する。
【0071】
ステップS8の後、実測回収率が減少して設定回収率と等しく(Rec._set=Rec.)なったか判断し(ステップS9)、等しいと判断すればステップS10に進む。等しくないと判断すれば、ステップS9からステップS4に戻る。
【0072】
ここで、ステップS7において、実測回収率が設定回収率よりも高くないと判断する場合、実測回収率と設定回収率は等しいことになる(Rec._set=Rec.)。この場合、シーケンサ12によって流量調整弁14の開度を変化させる必要がないため、ステップS7からステップS10に進む。
【0073】
ステップS10では、水処理システムの運転を停止するか判断し、停止するのであればエンドに進み、制御フローが終了する。さらに運転を続けるのであればステップS1に戻り、原水濁度を継続して測定することにより、MF膜モジュールの回収率を原水濁度に追従して制御する。
【0074】
原水濁度が高い場合、MF膜モジュールが目詰まりしやすく、頻繁にMF膜モジュールを上述したように逆洗浄する必要がある。しかし、本実施の形態では、原水濁度が高くなれば流量調整弁14を開き、膜モジュール7の負荷を減らすことが可能である。しかも、原水濁度が低くなれば、流量調整弁14を閉じ、実測回収率を増加させることができるため、高出力ポンプや大型発電機を必要とせず、水処理システムの小型化を図ることが可能である。
【0075】
高機動車のような小型車両に淡水及び海水に対応した水処理システムを搭載して災害地に派遣する場合、水処理装置の小型化と共に、メインテナンスの頻度が低いことも重要であるが、本実施の形態は、水処理システムの運転方法として、この両方について有用である。
【0076】
なお、濃縮水排水経路5に流量計(図示せず)を設置して濃縮水の排水流量(濃縮水量:FI-C、単位m3/日)を測定し、式2においてFI-Fの代わりに(FI-C+FI-P)を用い、実測回収率を算出することも可能である。
【0077】
また、図3の制御フローチャートにおいて、ステップS4とステップS7の順序を入れ替えてもよい。この場合、ステップS7において、実測回収率が設定回収率よりも大きくないと判断した場合はステップS4に進む。ステップS4で実測回収率が設定回収率よりも小さくない、すなわちRec._set=Rec.であると判断すれば、ステップS10へと進む。それ以外の制御フローは、図3と同様である。
【0078】
本実施の形態は、流量調整弁14の開度を制御するだけであるため、水処理システムの運転制御が容易であるという特徴を有する。
【0079】
(実施の形態2)
次に、本実施の形態における水処理システムの運転方法を、図4に示す制御フローチャートを参照しながら説明する。なお、水処理システムの配管図は、図2と同じであるが、流量調整弁14及び経路16は使用しない。
【0080】
図4に示す制御フローチャートは、図3に示す制御フローチャートのステップS5及びステップS8が、ステップS21及びステップS22に置き換わった点でのみ異なる。以下、この相違点についてのみ説明する。
【0081】
ステップS21では、シーケンサ12がインバータ13を通じて原水ポンプ1の出力を低下させる。このため、原水送水経路4の原水流量(FI-F)が減少する。式2から明らかなように、FI-Pが一定であればFI-Fが減少することにより実測回収率は増加する。その結果、原水濁度が低下した場合にはポンプ出力を低下させて、発電機の負担を軽減することが可能である。
【0082】
一方、ステップS22では、シーケンサ12がインバータ13を通じて原水ポンプ1の出力を上昇させる。このため、原水送水経路4の原水流量(FI-F)が増加する。そして、FI-Pが一定であるため、FI-Fが増加することにより実測回収率は減少する。その結果、原水濁度が増加した場合には、MF膜モジュールの負担を軽減することができるため、原水を長時間安定して処理し、飲料水を製造することが可能となる。
【0083】
なお、本実施の形態においても、濃縮水排水経路5に流量計(図示せず)を設置して濃縮水の排水流量(濃縮水量:FI-C、単位m3/日)を測定し、式2においてFI-Fの代わりに(FI-C+FI-P)を用い、実測回収率を算出することが可能である。
【0084】
また、図4の制御フローチャートにおいて、ステップS4とステップS7の順序を入れ替えてもよい。
【0085】
本実施の形態は、原水ポンプ1の出力を制御するだけであるため、水処理システムの運転制御が容易であるという特徴を有する。
【0086】
(実施の形態3)
次に、本実施の形態における水処理システムの運転方法を、図5に示す制御フローチャートを参照しながら説明する。なお、水処理システムの配管図は、図2と同じである。
【0087】
図5に示す制御フローチャートは、図3に示す制御フローチャートのステップS9とステップS10の間に、ステップS31及びステップS32が加わった点でのみ異なる。以下、この相違点についてのみ説明する。
【0088】
ステップS9で実測回収率が設定回収率と等しいと判断した場合、ステップS31において、さらに膜透過流量が設定透過流量と等しい(FI-P_set.=FI-P)か判断する。
【0089】
実測膜透過流量が設定透過流量と等しくないと判断すれば、ステップS32へ進み、原水ポンプ1の出力を増加させる。そして、ステップS9に戻る。一方、実測透過流量が設定透過流量と等しいと判断すれば、ステップS10へ進む。
【0090】
ステップS8では、流量調整弁14の開度を大きくして濃縮水流量を増加することによって、実測回収率を減少させるように制御するが、流量調整弁14を開くことにより差圧が変化して膜透過流量も変化する。ステップS32では、この膜透過流量の変化を、原水ポンプ1の出力を増加させる制御をすることによって調整する。そして、ステップS9→ステップS31→ステップS32→ステップS9を繰り返すことにより、膜透過流量と回収率の両者を調整することが可能となる。
【0091】
ここで、流量調整弁14を閉じることによって膜間差圧が変化し、膜透過流量が増加しても、定流量弁15によって膜透過流量が設定値以上に増加しない構成となっているため、回収率を増加させる場合には原水ポンプ1の出力を減少させるように制御する必要はない。
【0092】
なお、本実施の形態においても、濃縮水排水経路5に流量計(図示せず)を設置して濃縮水の排水流量(濃縮水量:FI-C、単位m3/日)を測定し、式2においてFI-Fの代わりに(FI-C+FI-P)を用い、実測回収率を算出することが可能である。
【0093】
また、図5の制御フローチャートにおいて、ステップS4とステップS7の順序を入れ替えてもよい。
【0094】
本実施の形態は、原水ポンプ1の動力が小さく、実測回収率を減少させる際の制御が容易であるという特徴を有する。
【0095】
(実施の形態4)
次に、本実施の形態における水処理システムの運転方法を、図6に示す制御フローチャートを参照しながら説明する。なお、水処理システムの配管図は、定流量弁15がない点でのみ、図2の配管図と異なる(図示せず)。
【0096】
図6に示す制御フローチャートは、図5に示す制御フローチャートのステップS6とステップS10の間に、ステップS41及びステップS42が加わった点でのみ異なる。以下、この相違点についてのみ説明する。
【0097】
ステップS6で実測回収率が設定回収率と等しいと判断した場合、ステップS41において、さらに膜透過流速が設定透過流速と等しい(FI-P_set.=FI-P)か判断する。
【0098】
実測透過流量が設定透過流量と等しくないと判断すれば、ステップS42へ進み、原水ポンプ1の出力を減少させる。そして、ステップS6に戻る。一方、実測膜透過流量が設定透過流量と等しいと判断すれば、ステップS10へ進む。
【0099】
ステップS5では、流量調整弁14の開度を小さくして濃縮水量を減少させることによって、実測回収率を増加させるように制御するが、流量調整弁14を閉じることにより差圧が変化して膜透過流量も変化する。ステップS42では、この膜透過流量の変化を、原水ポンプ1の出力を減少させるように制御することによって調整する。そして、ステップS6→ステップS41→ステップS42→ステップS6を繰り返すことにより、膜透過流量と回収率の両者を調整することが可能となる。
【0100】
ここで、本実施の形態の水処理システムにおいては、処理水送水経路8に定流量弁15が設置されていないため、ステップS6において流量調整弁14の開度を小さくすることにより、膜透過流量が大きくなりすぎる場合もあるため、原水ポンプ1の出力を減少させることにより、膜透過流量を設定透過流量と等しくなるように制御することが好ましい。
【0101】
なお、本実施の形態においても、濃縮水排水経路5に流量計(図示せず)を設置して濃縮水の排水流量(濃縮水量:FI-C、単位m3/日)を測定し、式2においてFI-Fの代わりに(FI-C+FI-P)を用い、実測回収率を算出することが可能である。
【0102】
また、図6の制御フローチャートにおいて、ステップS4とステップS7の順序を入れ替えてもよい。
【0103】
本実施の形態は、原水ポンプ1の動力が最も小さくて済み、省エネルギーであるという特徴を有する。
【0104】
[実施例]
次に、本発明の実施例として、濁質としてカオリン、有機物としてフミン酸を添加した淡水を原水として、本発明の水処理システムの運転方法(実施の形態4)によってMF膜モジュールを連続運転し、膜圧の変化を経時的に測定した。
【0105】
[比較例]
また、比較例として、実施例と同じMF膜モジュールと原水を用いて、MF膜モジュールの回収率を50%に固定して連続運転し、膜圧の変化を経時的に測定した。
【0106】
実施例及び比較例で使用したMF膜モジュールは、旭化成ケミカルズ株式会社製であり、MF膜の材質はポリフッ化ビニリデン(PVDF)、平均孔径0.1μm、膜面積12 m2である。また、設定透過流束は、1.0 m3/m2/日(設定透過流量は、12m3/日)であり、式1のパラメータは、600とした。
【0107】
原水として、水道水にフミン酸15 mg/Lを溶解させ、さらにカオリンを添加して濁度をつけた淡水を使用した。また、膜モジュールの運転中は、30分に1回、設定透過流量(12 m3/日)の1.5倍の流量でMF膜モジュールを逆洗すると共に、エアスクラビング(MF膜モジュール1本当たり7 Nm3/時)を1分間行い、さらに設定透過流量の3倍(36 m3/日)の流量で30秒フラッシングした。
【0108】
原水濁度は、濁度計を用いて測定し、膜間差圧(ΔP)は、MF膜モジュールの入口(P1)、出口(P2)及び透過水出口(P3)の圧力を、隔膜式圧力センサーを用いて測定し、ΔP={(P1+P2)/2}-P3という式により算出した。実施例及び比較例の原水濁度、膜間差圧等の変化を、図7に示す。
【0109】
原水濁度は、120度〜380度の範囲内で変動していた。実施例では、原水濁度に追従して実測回収率を流量調整弁及びポンプ出力のインバータ制御により制御するため、実測回収率は35%〜80%の範囲内で変動した。
【0110】
膜間差圧が上昇することは、MF膜が目詰まりして、交換しなければならない状態になったことを意味する。比較例では、運転日数60日前後で膜間差圧が0.1MPaを超えたが、
実施例では、膜間差圧が0.1MPaを超えるのが運転日数120日以上であった。従って、実施例の運転方法は、同じ原水を、同じMF膜モジュールを用いて処理しても、比較例と比べてMF膜の寿命が2倍以上となった。
【0111】
また、膜間差圧が低いことにより、水処理システム全体の動力も低く維持することができた。
【0112】
このように、本発明の水処理システム及びその運転方法は、MF膜モジュールを使用した水処理システムにおいて、MF膜の目詰まりを防止して寿命を2倍以上にすると共に、原水濁度が減少すればMF膜モジュールの回収率を増加させ、水処理システムの動力低減により発電機の負担を軽減することが可能である。
【0113】
また、高濁度(例えば、濁度200度以上)の原水であっても、長毛ろ過器や凝集タンク等が不要で、ポンプ及び発電機も小型化しうるため、従来の車載型水処理システムでは不可能であった高機動車への搭載が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の水処理システムの運転方法は、水処理装置の小型化及び省メインテナンス性が求められる、小型車両搭載型の水処理システムの運転方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】従来の車載型水処理システム全体の概略構成図である。
【図2】実施の形態1における水処理システムの一部配管図である。
【図3】実施の形態1における水処理システムの運転方法を示す制御フローチャートである。
【図4】実施の形態2における水処理システムの運転方法を示す制御フローチャートである。
【図5】実施の形態3における水処理システムの運転方法を示す制御フローチャートである。
【図6】実施の形態4における水処理システムの運転方法を示す制御フローチャートである。
【図7】実施例と比較例の連続運転処理の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0116】
1:原水ポンプ
2:濁度計
3:流量計
4:原水送水経路
5:濃縮水排水経路
6:逆洗排水経路
7:MF膜モジュール
8:処理水送水経路
9:定流量弁
10:逆洗水
11:逆洗経路
12:シーケンサ
13:インバータ
14:流量調整弁
15:定流量弁
16,17,18,19,25:経路
20:原水弁
21:逆洗弁
22:処理水弁
23:排水弁
24:逆洗排水弁
26:エア弁
27:エア経路
28:ブロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精密ろ過膜又は限外濾過膜を用いた膜分離装置を用いて原水を処理する飲料水製造用水処理システムの運転方法であって、
濁度計によって測定した原水の濁度と、膜分離装置の設定透過流量と膜面積とパラメータとに基づいて、設定回収率を式1から算出する設定工程と、
流量計によって測定した膜分離装置の原水流量又は濃縮水流量、及び膜透過流量に基づいて、実測回収率を式2から算出する実測工程と、
前記実測回収率が前記設定回収率と同じになるように、膜分離装置の膜透過流量、及び原水流量又は濃縮水流量を制御する制御工程とを有し、
原水濁度の変動に追従して膜分離装置の回収率を制御することを特徴とする方法。
【数1】

【数2】

(ここで、Rec._setは設定回収率[%]、TURは濁度[度]、Xはパラメータ、FI-P_setは設定透過流量[m3/日]、Aは膜面積[m2]、Rec.は実測回収率[%]、FI-Pは膜透過流量[m3/日]、FI-Fは原水流量[m3/日]、FI-Cは濃縮水流量[m3/日]である。)
【請求項2】
前記制御工程は、前記実測回収率が前記設定回収率よりも高い場合には、膜分離装置からの濃縮水排水経路に設けられた流量調整弁の開度を上昇させ、濃縮水流量を増加させることによって実測回収率を低下させ、
前記実測回収率が前記設定回収率よりも低い場合には、前記流量調整弁の開度を低下させ、濃縮水流量を減少させることによって実測回収率を増加させる工程である請求項1に記載の運転方法。
【請求項3】
前記制御工程は、前記実測回収率が前記設定回収率よりも高い場合には、膜分離装置に原水を送水する原水ポンプの出力をインバータ制御によって増加させ、濃縮水流量を増加させることによって実測回収率を低下させ、
前記実測回収率が前記設定回収率よりも低い場合には、前記原水ポンプの出力をインバータ制御によって減少させ、濃縮水流量を減少させることによって実測回収率を増加させる工程である請求項1に記載の運転方法。
【請求項4】
前記制御工程は、実測回収率を制御した後、さらに膜透過流量が設定透過流量よりも低い場合には、前記流量調整弁の開度を低下させることによって膜分離装置の膜透過流量を増加させ、
膜透過流量が設定透過流量よりも高い場合には、膜分離装置からの濃縮水排水経路に設けられた流量調整弁の開度を上昇させることによって膜分離装置の膜透過流量を減少させる請求項2に記載の運転方法。
【請求項5】
前記制御工程は、実測回収率を制御した後、さらに膜透過流量が設定透過流量よりも低い場合には、膜分離装置に原水を送水する原水ポンプの出力をインバータ制御によって増加させることにより膜分離装置の膜透過流量を増加させ、
膜透過流量が設定透過流量よりも高い場合には、前記原水ポンプの出力をインバータ制御によって減少させることにより膜分離装置の膜透過流量を減少させる請求項2に記載の運転方法。
【請求項6】
設定透過流量を膜分離装置の膜面積で除した値が、0.5m3/m2/日以上10m3/m2/日以下である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の運転方法。
【請求項7】
原水の濁度が、400度以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の運転方法。
【請求項8】
設定回収率が、30%以上100%以下である請求項1乃至7のいずれか1項に記載の運転方法。
【請求項9】
精密ろ過膜又は限外濾過膜を用いた膜分離装置を用いて原水を処理する飲料水製造用水処理システムであって、
濁度計によって測定した原水の濁度と、膜分離装置の設定透過流量と膜面積とパラメータとに基づいて、設定回収率を式1から算出する設定手段と、
流量計によって測定した膜分離装置の原水流量又は濃縮水流量、及び膜透過流量に基づいて、実測回収率を式2から算出する実測手段と、
前記実測回収率が前記設定回収率と同じになるように、膜分離装置の膜透過流量及び原水流量又は濃縮水流量を制御する制御手段とを有し、
原水濁度の変動に追従して膜分離装置の回収率を制御することを特徴とするシステム。
【数3】

【数4】

(ここで、Rec._setは設定回収率[%]、TURは濁度[度]、Xはパラメータ、FI-P_setは設定透過流量[m3/日]、Aは膜面積[m2]、Rec.は実測回収率[%]、FI-Pは膜透過流量[m3/日]、FI-Fは原水流量[m3/日]、FI-Cは濃縮水流量[m3/日]である。)
【請求項10】
前記制御手段は、前記実測回収率が前記設定回収率よりも高い場合には、膜分離装置からの濃縮水排水経路に設けられた流量調整弁の開度を上昇させ、濃縮水流量を増加させることによって実測回収率を低下させ、
前記実測回収率が前記設定回収率よりも低い場合には、前記流量調整弁の開度を低下させ、濃縮水流量を減少させることによって実測回収率を増加させる手段である請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記制御手段は、前記実測回収率が前記設定回収率よりも高い場合には、膜分離装置に原水を送水する原水ポンプの出力をインバータ制御によって増加させ、濃縮水流量を増加させることによって実測回収率を低下させ、
前記実測回収率が前記設定回収率よりも低い場合には、前記原水ポンプの出力をインバータ制御によって減少させ、濃縮水流量を減少させることによって実測回収率を増加させる手段である請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記制御手段は、実測回収率を制御した後、さらに膜透過流量が設定透過流量よりも低い場合には、膜分離装置に原水を送水する原水ポンプの出力をインバータ制御によって増加させることにより膜分離装置の膜透過流量を増加させ、
膜透過流量が設定透過流量よりも高い場合には、前記原水ポンプの出力をインバータ制御によって減少させることにより膜分離装置の膜透過流量を減少させる手段である請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記制御手段は、実測回収率を制御した後、さらに膜透過流量が設定透過流量よりも低い場合には、前記流量調整弁の開度を低下させることによって膜分離装置の膜透過流量を増加させ、
膜透過流量が設定透過流量よりも高い場合には、膜分離装置からの濃縮水排水経路に設けられた流量調整弁の開度を上昇させることによって膜分離装置の膜透過流量を減少させる手段である請求項10に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−152271(P2007−152271A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353265(P2005−353265)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】