説明

水処理システム

【課題】簡易なシステム構成により、電気式イオン交換装置の再生運転中においても、純水を安定して需要箇所に供給できる水処理システムを提供する。
【解決手段】供給水W1を透過水W2と濃縮水W3とに膜分離処理する膜分離装置4と、透過水W2を脱塩処理して第1処理水W4を製造する電気式イオン交換装置5と、透過水W2又は第1処理水W4を脱塩処理して第2処理水W6を製造する混床式イオン交換装置6と、透過水W2を、(i)電気式イオン交換装置5へ流通させると共に、第1処理水W4を混床式イオン交換装置6へ流通させる第1流路、(ii)電気式イオン交換装置5へ流通させずに、混床式イオン交換装置6へ流通させる第2流路に切り換え可能な流路部と、電気式イオン交換装置5の通常運転中は、前記流路部を前記第1流路に切り換え、電気式イオン交換装置5の再生運転中は、前記流路部を前記第2流路に切り換える制御部10と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜分離装置により製造された透過水を、電気式イオン交換装置により精製(脱塩)して純水を製造する水処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程や電子部品の洗浄、医療器具の洗浄等においては、不純物を含まない高純度の純水が使用される。この種の純水を製造する場合には、一般に、地下水や水道水等の供給水を、逆浸透膜を用いた膜分離装置(以下、「RO膜モジュール」ともいう)において膜分離処理することにより、溶存塩類の大部分を除去した透過水を製造する。その後、透過水を電気式イオン交換装置(電気脱イオン装置;以下、「EDI装置」ともいう)で精製することにより、更に純度を高めている。
【0003】
EDI装置は、陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜で区画された脱塩室及び濃縮室を備える。脱塩室には、イオン交換体(樹脂や繊維)が充填されている。脱塩室及び濃縮室に透過水を供給すると、透過水に含まれる残留塩類(イオン)は、脱塩室のイオン交換体で捕捉され、透過水は精製された処理水(脱塩水)となる。また、脱塩室のイオン交換体に捕捉された残留塩類は、電気エネルギーにより濃縮室に移動する。そして、濃縮室から濃縮水として排出される。このように、EDI装置では、イオン交換体に捕捉されたイオンが濃縮室に移動するため、常に再生状態に保つことができる。
【0004】
しかし、EDI装置に供給される透過水には、イオン交換体に対して選択性の高い多価イオンや、電気的に溶離しにくいシリカや炭酸等の弱電解質(以下、「イオン類」ともいう)が含まれる。これらイオン類は、イオン交換体に徐々に蓄積する。イオン交換体に蓄積したイオン類が処理水に溶出すると、処理水の水質が低下する。そのため、EDI装置では、数ヶ月毎に精製処理を停止し、イオン交換体に蓄積したイオン類を電気的に溶離させる再生運転を実施している(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−57420号公報
【特許文献2】特開2010−99594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の水処理システムにおいて、EDI装置の再生運転中は、透過水の精製処理が一時的に中断する。この間、純水を需要箇所に供給できなくなるので、需要箇所の稼動効率や生産性が低下することになる。このため、純水を連続且つ安定して需要箇所に供給することのできる水処理システムが望まれていた。
【0007】
従って、本発明は、簡易なシステム構成により、電気式イオン交換装置の再生運転中においても、純水を連続且つ安定して需要箇所に供給することができる水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、供給水を透過水と濃縮水とに膜分離処理する膜分離装置と、透過水を精製処理して第1処理水を製造する電気式イオン交換装置と、透過水又は第1処理水を脱塩処理して第2処理水を製造する混床式イオン交換装置と、透過水を、(i)前記電気式イオン交換装置へ流通させると共に、当該電気式イオン交換装置で製造された第1処理水を前記混床式イオン交換装置へ流通させる第1流路、(ii)前記電気式イオン交換装置へ流通させずに、前記混床式イオン交換装置へ流通させる第2流路に切り換え可能な流路部と、前記電気式イオン交換装置の通常運転中は、前記流路部を前記第1流路に切り換え、前記電気式イオン交換装置の再生運転中は、前記流路部を前記第2流路に切り換える制御部と、を備える水処理システムに関する。
【0009】
また、本発明は、供給水を透過水と濃縮水とに膜分離処理する膜分離装置と、透過水を脱塩処理して第1処理水を製造する電気式イオン交換装置と、透過水を脱塩処理して第2処理水を製造する混床式イオン交換装置と、透過水を、(i)前記混床式イオン交換装置へ流通させずに、前記電気式イオン交換装置へ流通させる第3流路、(ii)前記電気式イオン交換装置へ流通させずに、前記混床式イオン交換装置へ流通させる第4流路に切り換え可能な流路部と、前記電気式イオン交換装置の通常運転中は、前記流路部を前記第3流路に切り換え、前記電気式イオン交換装置の再生運転中は、前記流路部を前記第4流路に切り換える制御部と、を備える水処理システムに関する。
【0010】
また、前記膜分離装置により製造された透過水のシリカ濃度を検出するシリカ濃度検出手段を備え、前記制御部は、前記電気式イオン交換装置の通常運転中において、前記シリカ濃度検出手段の検出シリカ濃度が予め設定された基準シリカ濃度以上であれば、前記流路部を前記第2流路又は前記第4流路に切り換えることが好ましい。
【0011】
また、前記膜分離装置により製造された透過水の炭酸濃度を検出する炭酸濃度検出手段を備え、前記制御部は、前記電気式イオン交換装置の通常運転中において、前記炭酸濃度検出手段の検出炭酸濃度が予め設定された基準炭酸濃度以上であれば、前記流路部を前記第2流路又は前記第4流路に切り換えることが好ましい。
【0012】
また、前記膜分離装置により製造された透過水の流量を検出し、当該流量に応じた検出流量値を出力する流量検出手段と、供給水を前記膜分離装置に供給する供給水ラインと、入力された駆動周波数に応じた回転速度で駆動され、前記供給水ラインを流通する供給水を前記膜分離装置に向けて圧送する加圧ポンプと、入力された電流値信号に対応する駆動周波数を前記加圧ポンプに出力するインバータと、を備え、前記制御部は、少なくとも前記電気式イオン交換装置の通常運転中において、前記流量検出手段から出力された検出流量値が、予め設定された目標流量値となるように、速度形デジタルPIDアルゴリズムにより前記加圧ポンプの駆動周波数を演算し、当該駆動周波数の演算値に対応する電流値信号を前記インバータに出力することが好ましい。
【0013】
また、前記膜分離装置から排出される濃縮水の排出流量を調節可能な排水弁を備え、前記制御部は、前記電気式イオン交換装置の再生運転中において、濃縮水の排水流量が、前記電気式イオン交換装置の通常運転中に設定される排出流量よりも多くなるように前記排水弁を制御することが好ましい。
【0014】
また、第1処理水及び/又は第2処理水を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンクの水位を検出する水位検出手段と、を備え、前記制御部は、前記水位検出手段の検出水位が予め設定された基準貯留水位以上であれば、前記電気式イオン交換装置の再生運転中における透過水の目標流量値を、前記電気式イオン交換装置の通常運転中における透過水の目標流量値よりも低く設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡易なシステム構成により、電気式イオン交換装置の再生運転中においても、純水を連続且つ安定して需要箇所に供給することができる水処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係る水処理システム1の全体構成図である。
【図2】(A)は水処理システム1の第1流路を示す説明図である。(B)は水処理システム1の第1流路及び第2流路を示す説明図である。
【図3】制御部10において流路部を切り換える場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】制御部10においてRO膜モジュールの回収率を設定する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】制御部10において流量フィードバック水量制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】制御部10においてRO膜モジュールの回収率制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】第2実施形態に係る水処理システム1Aの全体構成図である。
【図8】制御部10において透過水W2の目標流量値及び回収率を設定する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】第3実施形態に係る水処理システム1Bの全体構成図である。
【図10】(A)は水処理システム1Bの第1流路を示す説明図である。(B)は水処理システム1Bの第2流路を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る水処理システム1について、図面を参照しながら説明する。第1実施形態に係る水処理システム1は、例えば、淡水から純水を製造する純水製造システムに適用される。
【0018】
図1は、第1実施形態に係る水処理システム1の全体構成図である。図2(A)、(B)は、水処理システム1の第1流路及び第2流路を示す説明図である。図3は、制御部10において流路部を切り換える場合の処理手順を示すフローチャートである。図4は、制御部10においてRO膜モジュールの回収率を設定する場合の処理手順を示すフローチャートである。図5は、制御部10において流量フィードバック水量制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。図6は、制御部10においてRO膜モジュールの回収率制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【0019】
図1に示すように、第1実施形態に係る水処理システム1は、加圧ポンプ2と、インバータ3と、膜分離装置としてのRO膜モジュール4と、EDI装置(電気式イオン交換装置)5と、混床式イオン交換装置としてのカートリッジポリッシャ装置(以下、「CP装置」ともいう)6と、を備える。また、水処理システム1は、流量検出手段としての流量センサ7と、シリカ濃度検出手段としてのシリカ濃度センサ8と、炭酸濃度検出手段としての炭酸濃度センサ9と、制御部10と、第1排水弁11と、第2排水弁12と、第3排水弁13と、第1切換弁14と、第2切換弁15と、を備える。
【0020】
また、水処理システム1は、供給水ラインとしての第1通水ラインL1と、第2通水ラインL2と、第3通水ラインL3と、第4通水ラインL4と、第5通水ラインL5と、第1濃縮水ラインL6と、第2濃縮水ラインL7と、第1濃縮水W3の排水ライン(第1排水ラインL11、第2排水ラインL12及び第3排水ラインL13)と、を備える。
【0021】
上述した第1切換弁14、第2切換弁15、及び第2通水ラインL2〜第5通水ラインL5は、本実施形態における流路部を構成する(以下、これらを総称して「流路部」ともいう)。なお、本明細書における「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0022】
第1通水ラインL1は、供給水W1を、RO膜モジュール4へ供給するラインである。第1通水ラインL1の上流側の端部は、供給水W1の供給源(不図示)に接続されている。また、第1通水ラインL1の下流側の端部は、RO膜モジュール4の一次側入口ポートに接続されている。
【0023】
加圧ポンプ2は、第1通水ラインL1を流通する供給水W1を吸入し、RO膜モジュール4に向けて吐出する装置である。加圧ポンプ2は、第1通水ラインL1において、RO膜モジュール4の上流側に設けられている。加圧ポンプ2は、インバータ3(後述)と電気的に接続されている。加圧ポンプ2には、インバータ3から周波数が変換された駆動電力が供給される。加圧ポンプ2は、供給された駆動電力の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう)に応じた回転速度で駆動される。
【0024】
インバータ3は、加圧ポンプ2に、周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路である。インバータ3は、制御部10と電気的に接続されている。インバータ3には、制御部10から電流値信号が入力される。インバータ3は、入力された電流値信号に対応する駆動周波数の駆動電力を加圧ポンプ2に出力する。
【0025】
RO膜モジュール4は、加圧ポンプ2から送出された供給水W1を、溶存塩類が除去された透過水W2と、溶存塩類が濃縮された第1濃縮水W3とに膜分離処理する設備である。RO膜モジュール4は、単一又は複数の逆浸透膜エレメント(不図示)を備える。RO膜モジュール4は、これら逆浸透膜エレメントにより供給水W1を膜分離処理し、透過水W2及び第1濃縮水W3を製造する。
【0026】
また、RO膜モジュール4の一次側出口ポートには、第1濃縮水ラインL6の上流側の端部が接続されている。第1濃縮水ラインL6は、第1濃縮水W3をRO膜モジュール4の外に送出するラインである。第1濃縮水ラインL6の下流側は、分岐部J7及びJ8において、第1排水ラインL11、第2排水ラインL12及び第3排水ラインL13に分岐している。
【0027】
第1排水ラインL11には、第1排水弁11が設けられている。第2排水ラインL12には、第2排水弁12が設けられている。第3排水ラインL13には、第3排水弁13が設けられている。
【0028】
第1排水弁11〜第3排水弁13は、第1濃縮水ラインL6から送出された第1濃縮水W3の排水流量を調節する弁である。第1排水弁11は、第1排水ラインL11を開閉することができる。第2排水弁12は、第2排水ラインL12を開閉することができる。第3排水弁13は、第3排水ラインL13を開閉することができる。
【0029】
第1排水弁11〜第3排水弁13は、それぞれ定流量弁機構(不図示)を備える。定流量弁機構は、第1排水弁11〜第3排水弁13において、それぞれ異なる流量値に設定されている。例えば、第1排水弁11は、開状態において、RO膜モジュール4の回収率が80%となるように排水流量が設定されている。第2排水弁12は、開状態において、RO膜モジュール4の回収率が75%となるように排水流量が設定されている。第3排水弁13は、開状態において、RO膜モジュール4の回収率が70%となるように排水流量が設定されている。
【0030】
なお、回収率とは、RO膜モジュール4へ供給される供給水W1の流量Qに対する透過水W2の流量Qの割合(すなわち、Q/Q×100)をいう。従って、EDI装置5の再生運転中に、通常運転中よりも回収率を下げた場合、RO膜モジュール4から排出される第1濃縮水W3の排水流量は、通常運転中の排出流量よりも多くなる。
【0031】
第1濃縮水ラインL6から排出される第1濃縮水W3の排水流量は、第1排水弁11〜第3排水弁13を選択的に開閉することにより、段階的に調節できる。例えば、第2排水弁12のみを開状態とし、第1排水弁11及び第3排水弁13を閉状態とする。この場合には、RO膜モジュール4の回収率を75%とすることができる。また、第1排水弁11及び第2排水弁12を開状態とし、第3排水弁13のみを閉状態とする。この場合には、RO膜モジュール4の回収率を70%とすることができる。従って、本実施形態において、第1濃縮水W3の排水流量は、第1排水弁11〜第3排水弁13を選択的に開閉することにより、RO膜モジュール4の回収率を50%〜80%までの間で、5%毎に段階的に調節することができる。
【0032】
本実施形態において、RO膜モジュール4の回収率は、通常運転中においては80%、再生運転中においては60%に設定される。すなわち、制御部10は、EDI装置5の通常運転中においては、回収率を80%に設定して、RO膜モジュール4から排出される第1濃縮水W3の実際排水流量が予め設定された目標排水流量と同じ排水流量となるように第1排水弁11〜第3排水弁13の開閉を制御する。
【0033】
また、制御部10は、EDI装置5の再生運転中においては、通常運転中よりも低い回収率を60%に設定して、RO膜モジュール4から排出される第1濃縮水W3の実際排水流量が予め設定された目標排水流量よりも多い排水流量となるように第1排水弁11〜第3排水弁13の開閉を制御する。
【0034】
なお、RO膜モジュール4の回収率は、通常運転中の回収率と、それよりも低い再生運転中の回収率とに設定できればよい。上述したように、本実施形態の構成において、第1濃縮水W3の排水流量は段階的に調節できる。このため、通常運転中の回収率及び再生運転中の回収率は、50%〜80%までの間で適宜に選択することができる。
【0035】
第1排水弁11〜第3排水弁13は、それぞれ制御部10と電気的に接続されている。第1排水弁11〜第3排水弁13における弁体の開閉は、制御部10からの駆動信号により制御される。
【0036】
第2通水ラインL2は、RO膜モジュール4で製造された透過水W2を、EDI装置5に供給するラインである。第2通水ラインL2の上流側の端部は、RO膜モジュール4の二次側ポートに接続されている。また、第2通水ラインL2の下流側の端部は、EDI装置5の一次側ポート(後述する脱塩室5a及び濃縮室5bの入口側)に接続されている。
【0037】
EDI装置5は、RO膜モジュール4で製造された透過水W2を脱塩処理して、純水としての第1処理水W4を製造する装置である。EDI装置5は、陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜で区画された複数の脱塩室及び複数の濃縮室を備える(図1では、図を簡略化して脱塩室5a及び濃縮室5bとして示す)。第2通水ラインL2を流通する透過水W2は、分岐部J5で分岐し、脱塩室5a及び濃縮室5bにそれぞれ供給される。透過水W2に含まれる残留塩類は、脱塩室5a内に充填されたイオン交換体(不図示)により捕捉され、第1処理水(脱塩水)W4となる。また、脱塩室5a内のイオン交換体に捕捉された残留塩類は、電気エネルギーにより濃縮室5bに移動する。そして、残留塩類を含む水は、濃縮室5bから第2濃縮水ラインL7を介して第2濃縮水W5として排出される。
【0038】
EDI装置5は、通常運転中においては、RO膜モジュール4で製造された透過水W2を脱塩処理して、純水としての第1処理水W4を製造する。EDI装置5の通常運転中において、流路部は第1流路(後述)に切り換えられる。第1流路では、RO膜モジュール4で製造された透過水W2が第2通水ラインL2を介してEDI装置5へ流通すると共に、EDI装置5で製造された第1処理水W4が第3通水ラインL3を介してCP装置6へ流通する。
【0039】
一方、EDI装置5は、再生運転中においては、印加電圧を通常運転時よりも高めることで、イオン交換体に蓄積したイオン類を電気的に溶離させる処理が実施される。EDI装置5の再生運転中は、EDI装置5において、透過水W2の脱塩処理は行われない。このため、EDI装置5の再生運転中において、流路部は第2流路(後述)に切り換えられる。第2流路では、RO膜モジュール4で製造された透過水W2が、EDI装置5へ流通することなくCP装置6(後述)へ流通する。すなわち、EDI装置5の再生運転中は、EDI装置5の代わりに、CP装置6により脱塩処理が行われる。
【0040】
第3通水ラインL3は、EDI装置5で製造された第1処理水W4をCP装置6に流通させるラインである。第3通水ラインL3の上流側の端部は、EDI装置5の二次側ポート(脱塩室5aの出口側)に接続されている。また、第3通水ラインL3の下流側の端部は、CP装置6の一次側ポートに接続されている。
【0041】
第1切換弁14は、第3通水ラインL3に設けられている。第1切換弁14は、第3通水ラインL3において、接続部J6よりも上流側(EDI装置5側)のラインを開閉することができる。第1切換弁14は、EDI装置5で製造された第1処理水W4を、CP装置6へ流通させる第1流路、又はRO膜モジュール4で製造された透過水W2を、第5通水ラインL5を介してCP装置6へ流通させる第2流路に切り換え可能な弁の一つである。第1切換弁14は、例えば電動式や電磁式の二方弁により構成される。第1切換弁14は、制御部10と電気的に接続されている。第1切換弁14における弁の開閉は、制御部10から送信される弁開閉信号により制御される。
【0042】
第5通水ラインL5は、制御部10により流路部が第2流路(後述)へ切り換えられた場合に、第2通水ラインL2を流通する透過水W2を、第3通水ラインL3において、第1切換弁14よりも下流側に合流させるバイパスラインである。第5通水ラインL5の上流側の端部は、接続部J4において第2通水ラインL2に接続されている。接続部J4は、接続部J3と分岐部J5との間に配置されている。また、第5通水ラインL5の下流側の端部は、接続部J6において第3通水ラインL3に接続されている。接続部J6は、第1切換弁14とCP装置6(後述)との間に配置されている。
【0043】
第2切換弁15は、第5通水ラインL5に設けられている。第2切換弁15は、第5通水ラインL5を開閉することができる。第2切換弁15は、RO膜モジュール4で製造された透過水W2を、EDI装置5へ流通させる第1流路、又はRO膜モジュール4で製造された透過水W2を、EDI装置5へ流通させずにCP装置6へ流通させる第2流路に切り換え可能な弁の一つである。第2切換弁15は、例えば電動式や電磁式の二方弁により構成される。第2切換弁15は、制御部10と電気的に接続されている。第2切換弁15における弁の開閉は、制御部10から送信される弁開閉信号により制御される。
【0044】
CP装置6は、EDI装置で製造された第1処理水W4、又はRO膜モジュール4で製造された透過水W2を脱塩処理して、第2処理水W6を製造する装置である。CP装置6は、EDI装置5の通常運転中においては、EDI装置5で製造された第1処理水W4を更に脱塩処理して、第2処理水W6を製造する。また、EDI装置5の再生運転中においては、RO膜モジュール4で製造された透過水W2を脱塩処理して、第2処理水W6を製造する。
【0045】
CP装置6は、カチオン樹脂及びアニオン樹脂が充填された非再生型のカートリッジ塔を備えた混床式のイオン交換装置である。CP装置6は、第4通水ラインL4を介してEDI装置5の下流側に接続されている。また、CP装置6の二次側ポートには、第4通水ラインL4が接続されている。第4通水ラインL4は、CP装置6で製造された第2処理水W6を、下流側の需要箇所に送出するラインである。なお、CP装置6において、カートリッジ塔のイオン除去能力が飽和した場合、再生済みのカチオン樹脂及びアニオン樹脂が充填されたカートリッジ塔に交換される。
【0046】
流量センサ7は、第2通水ラインL2を流通する透過水W2の流量を検出する機器である。流量センサ7は、接続部J1において第2通水ラインL2に接続されている。接続部J1は、RO膜モジュール4と接続部J2との間に配置されている。流量センサ7は、制御部10と電気的に接続されている。流量センサ7で検出された透過水W2の単位時間当たりの流量(以下、「検出流量値」ともいう)は、制御部10へ検出信号として送信される。
【0047】
シリカ濃度センサ8は、第2通水ラインL2を流通する透過水W2のシリカ濃度を検出する機器である。シリカは、透過水W2に含まれ得る弱電解質の一種である。シリカ濃度センサ8は、接続部J2において第2通水ラインL2に接続されている。接続部J2は、接続部J1と接続部J3との間に配置されている。シリカ濃度センサ8は、制御部10と電気的に接続されている。シリカ濃度センサ8で検出された透過水W2のシリカ濃度(以下、「検出シリカ濃度値」ともいう)は、制御部10へ検出信号として送信される。
【0048】
炭酸濃度センサ9は、第2通水ラインL2を流通する透過水W2の炭酸濃度(溶存炭酸濃度)を検出する機器である。炭酸は、透過水W2に含まれ得る弱電解質の一種である。炭酸濃度センサ9は、接続部J3において第2通水ラインL2に接続されている。接続部J3は、接続部J2と接続部J4との間に配置されている。炭酸濃度センサ9は、制御部10と電気的に接続されている。炭酸濃度センサ9で検出された透過水W2の炭酸濃度(以下、「検出炭酸濃度値」ともいう)は、制御部10へ検出信号として送信される。
【0049】
制御部10は、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。マイクロプロセッサには、時間の計時等を管理するインテグレーテッドタイマユニット(以下、「ITU」ともいう)が組み込まれている。
【0050】
制御部10は、流量フィードバック水量制御として、流量センサ7の検出流量値が、予め設定された目標流量となるように、系内の物理量を用いて速度形デジタルPIDアルゴリズムにより、加圧ポンプ2を駆動するための駆動周波数を演算し、当該駆動周波数の演算値に対応する電流値信号をインバータ3に出力する。流量フィードバック水量制御については後述する。
【0051】
制御部10は、EDI装置5の通常運転中に、ITUによる計時が予め設定された再生待機周期(例えば、2ヶ月)に達した場合には、EDI装置5を再生運転するために、流路部を第1流路から第2流路に切り換える。この場合、制御部10は、システム管理者に対し、ユーザーインターフェース(不図示)を介して、EDI装置5を再生運転する旨のメッセージ等を通知する。また、制御部10は、EDI装置5の再生運転が終了した場合には、EDI装置5を通常運転するために、流路部を第2流路から第1流路に切り換える。
【0052】
第1流路は、EDI装置5を通常運転する場合の流路である。制御部10が流路部を第1流路に切り換えると、RO膜モジュール4で製造された透過水W2は、第2通水ラインL2を介してEDI装置5の脱塩室5aへ流通する。また、第2流路は、EDI装置5を再生運転する場合の流路である。制御部10が流路部を第2流路に切り換えると、RO膜モジュール4で製造された透過水W2は、EDI装置5の脱塩室5aを流通することなく、第5通水ラインL5を介してCP装置6へ流通する。なお、第1流路及び第2流路については後に詳述する。
【0053】
また、制御部10は、EDI装置5の通常運転中に、シリカ濃度センサ8の検出シリカ濃度値が予め設定された基準シリカ濃度値(例えば、0.5mgSiO/L)以上であれば、流路部を第1流路から第2流路に切り換える。このように、制御部10は、ITUによる計時が予め設定された再生待機周期に達していない場合でも、透過水W2の検出シリカ濃度値が基準シリカ濃度値以上であれば、流路部を第1流路から第2流路に切り換える。
【0054】
また、制御部10は、EDI装置5の通常運転中に、炭酸濃度センサ9の検出炭酸濃度値が予め設定された基準炭酸濃度値(例えば、1mgCO/L)以上であれば、流路部を第1流路から第2流路に切り換える。このように、制御部10は、ITUによる計時が予め設定された再生待機周期に達していない場合でも、透過水W2の検出炭酸濃度値が基準炭酸濃度値以上であれば、流路部を第1流路から第2流路に切り換える。
【0055】
また、制御部10は、RO膜モジュール4における第1濃縮水W3の排水流量制御として、EDI装置5の再生運転中に、第1濃縮水W3の排水流量がEDI装置5の通常運転中に設定される排出流量よりも多くなるようにRO膜モジュール4の回収率を設定して、第1排水弁11〜第3排水弁13を制御する。制御部10は、設定された目標流量値Q´及び回収率R(後述)に基づいて、第1濃縮水W3の排水流量Qを、下記の式(1)により演算する。
=Q´/R−Q´ (1)
なお、RO膜モジュール4の回収率制御については後述する。
【0056】
次に、水処理システム1における第1流路及び第2流路について、図2を参照しながら説明する。なお、図2では、RO膜モジュール4、EDI装置5、CP装置6、第1通水ラインL1〜第5通水ラインL5、第2濃縮水ラインL7、第1切換弁14、第2切換弁15、接続部J4及びJ6についてのみ図示する。また、図2では、供給水W1等が流通するラインを実線で示し、流通しないラインを破線で示す。また、第1切換弁14及び第2切換弁15においては、開弁を白塗りで示し、閉弁を黒塗りで示す。
【0057】
図2(A)は、水処理システム1の第1流路を示す説明図である。第1流路は、EDI装置5を通常運転する場合の流路である。制御部10(不図示)は、EDI装置5を通常運転する場合には、図2(A)に示すように、第1切換弁14を開弁し、第2切換弁15を閉弁する。これにより、RO膜モジュール4で製造された透過水W2は、第2通水ラインL2を介してEDI装置5へ流通する。そして、EDI装置5で製造された第1処理水W4は、第3通水ラインL3を介してCP装置6へ流通する。更に、CP装置6で製造された第2処理水W6は、第4通水ラインL4を介して需要箇所へ送出される。
【0058】
図2(B)は、水処理システム1の第2流路を示す説明図である。第2流路は、EDI装置5を再生運転する場合の流路である。制御部10(不図示)は、EDI装置5を再生運転する場合には、図2(B)に示すように、第1切換弁14を閉弁し、第2切換弁15を開弁する。これにより、RO膜モジュール4で製造された透過水W2は、接続部J4において、第2通水ラインL2から第5通水ラインL5へ流通する。第5通水ラインL5を流通した透過水W2は、接続部J6において、第3通水ラインL3に合流する。このように、第2流路において、RO膜モジュール4で製造された透過水W2は、EDI装置5(脱塩室5a)へ流通することなく、第5通水ラインL5を介してCP装置6へ流通する。そして、CP装置6で製造された第2処理水W6は、第4通水ラインL4を介して需要箇所へ送出される。
【0059】
本実施形態に係る水処理システム1では、EDI装置5の通常運転中においては、流路部が第1流路に切り換えられる。第1流路において、RO膜モジュール4で製造された透過水W2は、EDI装置5へ流通する。これにより、透過水W2は、EDI装置5で脱塩処理され、第1処理水W4が製造される。第1処理水W4は、更にCP装置6において脱塩処理され、第2処理水W6が製造される。
【0060】
一方、EDI装置5の再生運転中においては、流路部が第2流路に切り換えられる。第2流路において、RO膜モジュール4で製造された透過水W2は、EDI装置5(脱塩室5a)へ流通することなく、CP装置6へ流通する。これにより、透過水W2は、CP装置6で脱塩処理され、第2処理水W6が製造される。このように、本実施形態に係る水処理システム1では、EDI装置5の再生運転中においても、CP装置6により脱塩処理が行われる。従って、本実施形態に係る水処理システム1によれば、EDI装置5の再生運転中であっても、純水(第2処理水W6)を需要箇所に連続して供給することができる。
【0061】
次に、制御部10において、流路部を切り換える場合の動作について、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、図3に示すフローチャートの処理は、水処理システム1の運転中において、繰り返し実行される。
【0062】
図3に示すステップST101において、制御部10は、ITUによる計時tが再生待機周期Δtに達したか否かを判定する。このステップST101において、制御部10により、ITUによる計時tが再生待機周期Δtに達した(YES)と判定された場合に、処理はステップST102へ移行する。また、ステップST101において、制御部10により、ITUによる計時tが再生待機周期Δtに達していない(NO)と判定された場合に、処理はステップST106へ移行する。
【0063】
ステップST102(ステップST101:YES判定)において、制御部10は、流路部を第2流路(図2(B)参照)に切り換えるように第1切換弁14及び第2切換弁15を制御する。制御部10は、ITUによる計時tが再生待機周期Δtに達した場合には、EDI装置5の再生運転を実施するため、流路部を第2流路へ切り換えて、透過水W2をCP装置6へ流通させる。なお、すでに流路部が第2流路へ切り換えられている場合には、流路部の切り換えを行うことなく、処理はステップST104へ移行する。
【0064】
ステップST103において、制御部10は、EDI装置5の再生運転を実行する。本実施形態の再生運転では、透過水W2の脱塩室5aへの流通を停止させると共に、透過水W2の一部を濃縮室5bへ流通させる。そして、印加電圧を通常運転時よりも高めて通電することで、イオン交換体に蓄積したイオン類を電気的に溶離させ、濃縮室5b側から系外へ排出する。EDI装置5の再生運転が終了すると、処理はステップST104へ移行する。
【0065】
ステップST104において、制御部10は、流路部を第1流路(図2(A)参照)に切り換えるように第1切換弁14及び第2切換弁15を制御する。制御部10は、EDI装置5の再生運転が終了した場合は、EDI装置5の通常運転を実施するため、流路部を第1流路に切り換える。
【0066】
ステップST105において、制御部10は、ITUによる計時tをスタートさせる。これにより、本フローチャートの処理は終了する(ステップST101へリターンする)。
【0067】
一方、ステップST106(ステップST101:NO判定)において、制御部10は、シリカ濃度センサ8で検出された透過水W2の検出シリカ濃度値Sを取得する。
【0068】
ステップST107において、制御部10は、検出シリカ濃度値Sが予め設定された基準シリカ濃度値S以上か否かを判定する。このステップST107において、制御部10により、検出シリカ濃度値S≧基準シリカ濃度値Sである(YES)と判定された場合に、処理はステップST108へ移行する。また、ステップST105において、制御部10により、検出シリカ濃度値S<基準シリカ濃度値Sである(NO)と判定された場合に、処理はステップST109へ移行する。
【0069】
ステップST108(ステップST107:YES判定)において、制御部10は、流路部を第2流路(図2(B)参照)に切り換えるように第1切換弁14及び第2切換弁15を制御する。制御部10は、透過水W2の検出シリカ濃度値Sが基準シリカ濃度値S以上となった場合には、EDI装置5のイオン交換体にシリカが蓄積するのを抑制するため、流路部を第2流路へ切り換えて、透過水W2をCP装置6へ流通させる。
【0070】
また、ステップST109(ステップST107:NO判定)において、制御部10は、炭酸濃度センサ9で検出された検出炭酸濃度値Cを取得する。
【0071】
ステップST110において、制御部10は、検出炭酸濃度値Cが予め設定された基準炭酸濃度値C以上か否かを判定する。このステップST110において、制御部10により、検出炭酸濃度値C≧基準炭酸濃度値Cである(YES)と判定された場合に、処理はステップST108へ移行する。このように、検出炭酸濃度値Cが基準炭酸濃度値C以上の場合においても、EDI装置5のイオン交換体に炭酸が蓄積するのを抑制するため、流路部を第2流路へ切り換えて、透過水W2をCP装置6へ流通させる。
【0072】
また、ステップST110において、制御部10により、検出炭酸濃度値C<基準炭酸濃度値Cである(NO)と判定された場合に、本フローチャートの処理は終了する(ステップST101へリターンする)。
【0073】
次に、制御部10において、RO膜モジュール4の回収率を設定する場合の動作について、図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、図4に示すフローチャートの処理は、水処理システム1の運転中において、繰り返し実行される。
【0074】
図4に示すステップST201において、制御部10は、水処理システム1の通常運転中か否かを判定する。このステップST201において、制御部10により、通常運転中である(YES)と判定された場合に、処理はステップST202へ移行する。また、ステップST201において、制御部10により、通常運転中でない(NO)、すなわち再生運転中であると判定された場合に、処理はステップST203へ移行する。
【0075】
ステップST202(ステップST201:YES判定)において、制御部10は、RO膜モジュール4の回収率を80%に設定する。これにより本フローチャートの処理は終了する(ステップST201へリターンする)。このように、制御部10は、通常運転中であれば、RO膜モジュール4の回収率を通常の回収率(80%)に設定する。
【0076】
一方、ステップST203(ステップST201:NO判定)において、制御部10は、RO膜モジュール4の回収率を60%に設定する。これにより本フローチャートの処理は終了する(ステップST201へリターンする)。
【0077】
このように、制御部10は、再生運転中であれば、RO膜モジュール4の回収率を通常よりも低い回収率(60%)に設定する。これにより、再生運転中において、RO膜モジュール4から排出される第1濃縮水W3の排出水量は、通常運転中に設定される排出流量よりも多くなる。再生運転中において、RO膜モジュール4の回収率を下げることにより、透過水W2中にリークするシリカや炭酸等のイオン類の量を減らし、透過水W2の純度を上げることができる。これにより、CP装置6の除去能力の低下を抑制しつつ、高純度の純水を製造することができる。
【0078】
次に、制御部10において、流量フィードバック水量制御を実行する場合の動作を、図5を参照して説明する。図5に示すフローチャートの処理は、水処理システム1の運転中に繰り返し実行される。
【0079】
図5に示すステップST301において、制御部10は、透過水W2の目標流量値Q´を取得する。この目標流量値Q´は、例えば、システム管理者がユーザーインターフェース(不図示)を介して制御部10のメモリに入力した設定値である。
【0080】
なお、第2実施形態(後述)の流量フィードバック水量制御において、制御部10Aが取得する目標流量値Q´は、図8(後述)に示すフローチャートのステップST502、ステップST506又はステップST508において設定された目標流量値となる。
【0081】
ステップST302において、制御部10は、ITUによる計時tが制御周期Δt(100ms)に達したか否かを判定する。このステップST302において、制御部10により、ITUによる計時がΔtに達した(YES)と判定された場合に、処理はステップST303へ移行する。また、ステップST302において、制御部10により、ITUによる計時がΔtに達していない(NO)と判定された場合に、処理はステップST302へ戻る。
【0082】
ステップST303(ステップST302:YES判定)において、制御部10は、流量センサ7で検出された透過水W2の検出流量値Qをフィードバック値として取得する。
【0083】
ステップST304において、制御部10は、ステップST303で取得した検出流量値(フィードバック値)Qと、ステップST301で取得した目標流量値Q´との偏差がゼロとなるように、速度形デジタルPIDアルゴリズムにより操作量Uを演算する。速度形デジタルPIDアルゴリズムでは、制御周期Δt(100ms)毎に操作量の変化分ΔUを演算し、これを前回の制御周期時点の操作量Un−1に加算することで現時点の操作量Uを決定する。
【0084】
速度形デジタルPIDアルゴリズムに用いられる演算式は、下記の式(2a)及び式(2b)により表される。
ΔU=K{(e−en−1)+(Δt/T)×e+(T/Δt)×(e−2en−1+en−2)} (2a)
=Un−1+ΔU (2b)
【0085】
式(2a)及び式(2b)において、Δt:制御周期、U:現時点の操作量、Un−1:前回の制御周期時点の操作量、ΔU:前回から今回までの操作量の変化分、e:現時点の偏差の大きさ、en−1:前回の制御周期時点の偏差の大きさ、en−2:前々回の制御周期時点の偏差の大きさ、K:比例ゲイン、T:積分時間、T:微分時間である。なお、現時点の偏差の大きさeは、下記の式(3)により求められる。
=Q´−Q (3)
【0086】
ステップST305において、制御部10は、現時点の操作量U、及び加圧ポンプ2の最大駆動周波数F´(50Hz又は60Hzの設定値)を使用して、下記の式(4)により、加圧ポンプ2の駆動周波数F[Hz]を演算する。
F=U/2×F´ (4)
【0087】
ステップST306において、制御部10は、駆動周波数Fの演算値を、対応する電流値信号(4〜20mA)に変換する。電流値信号の出力値I[mA]は、例えば、下記の式(5)により演算され、駆動周波数Fがゼロの場合にI=4mA、駆動周波数Fが最大駆動周波数F´の場合にI=20mAとなる。
I=F/F´×16+4 (5)
【0088】
ステップST307において、制御部10は、変換した電流値信号をインバータ3へ出力する。これにより本フローチャートの処理は終了する(ステップST101へリターンする)。
【0089】
なお、ステップST307において、制御部10が電流値信号をインバータ3へ出力すると、インバータ3は、入力された電流値信号で指定された周波数に変換された駆動電力を加圧ポンプ2に供給する。その結果、加圧ポンプ2は、インバータ3から入力された駆動周波数に応じた回転速度で駆動される。なお、上述した流量フィードバック水量制御は、少なくともEDI装置5の通常運転中に実行されればよい。
【0090】
次に、制御部10において、RO膜モジュール4の回収率制御を実行する場合の動作について、図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。図6に示すフローチャートの処理は、水処理システム1の運転中に繰り返し実行される。
【0091】
図6に示すステップST401において、制御部10は、透過水W2の目標流量値Q´を取得する。この目標流量値Q´は、図5に示すフローチャートのステップST301において取得される設定値と同じである。
【0092】
なお、第2実施形態(後述)の流量フィードバック水量制御において、制御部10Aが取得する目標流量値Q´は、図8に示すフローチャートのステップST502、ステップST506又はステップST508において設定された目標流量値となる。
【0093】
ステップST402において、制御部10は、RO膜モジュール4の回収率Rを取得する。この回収率Rは、図4に示すフローチャートのステップST202又はステップST203において設定された回収率である。
【0094】
なお、第2実施形態(後述)の回収率制御において、制御部10Aが取得する回収率Rは、図8(後述)に示すフローチャートのステップST503又はステップST507において設定された回収率となる。
【0095】
ステップST403において、制御部10は、ステップST401で取得した目標流量値Q´及びステップST402で取得した回収率Rに基づいて、第1濃縮水W3の排水流量Qを、上述した式(1)により演算する。
【0096】
ステップST404において、制御部10は、第1濃縮水W3の実際排水流量QがステップST403で演算した排水流量Qとなるように第1排水弁11〜第3排水弁13を制御する。これにより、本フローチャートの処理は終了する(ステップST401へリターンする)。
【0097】
上述した第1実施形態に係る水処理システム1によれば、例えば、以下のような効果が得られる。
【0098】
第1実施形態に係る水処理システム1において、制御部10は、EDI装置5の通常運転中は流路部を第1流路に切り換え、EDI装置5の再生運転中は流路部を第2流路に切り換える。
【0099】
これによれば、EDI装置5の通常運転中は、EDI装置5により純水としての第1処理水W4が製造される。また、EDI装置5の再生運転中は、CP装置6により純水としての第2処理水W6が製造される。そのため、EDI装置5の再生運転中であっても、透過水W2の精製処理を中断することがなく、継続して純水を製造することができる。従って、第1実施形態に係る水処理システム1によれば、簡易なシステム構成により、EDI装置5の再生運転中においても、純水を連続且つ安定して需要箇所に供給することができる。
【0100】
また、制御部10は、EDI装置5の通常運転中において、シリカ濃度センサ8の検出シリカ濃度値が予め設定された基準シリカ濃度値以上となった場合には、流路部を第1流路から第2流路に切り換えて、CP装置6により純水としての第2処理水W6を製造する。このように、制御部10は、通常運転中(再生運転待機中)であっても、透過水W2にシリカがリークして水質が悪化した場合には、流路部を第2流路へ切り換えて、透過水W2をCP装置6へ流通させる。そのため、シリカがリークして水質の悪化した透過水W2によりEDI装置5のイオン交換体に弱電解質であるシリカが蓄積するのを抑制することができる。
【0101】
また、制御部10は、EDI装置5の通常運転中において、炭酸濃度センサ9の検出炭酸濃度値が予め設定された基準炭酸濃度値以上となった場合には、流路部を第1流路から第2流路に切り換える。このように、制御部10は、通常運転中(再生運転待機中)であっても、透過水W2に炭酸がリークして水質が悪化した場合には、流路部を第2流路へ切り換えて、透過水W2をCP装置6へ流通させる。そのため、炭酸がリークして水質の悪化した透過水W2によりEDI装置5のイオン交換体に弱電解質である炭酸が蓄積するのを抑制することができる。
【0102】
また、制御部10は、EDI装置5の運転中(通常運転中及び再生運転中)において、流量フィードバック水量制御を実行する。このため、EDI装置5の運転中に、安定した流量の透過水W2を製造することができる。また、後述するように、EDI装置5の再生運転中に、RO膜モジュール4の回収率を下げた場合においても、通常運転中と同じ流量の透過水W2を製造することができる。
【0103】
また、制御部10は、EDI装置5の再生運転中においては、RO膜モジュール4の回収率を通常運転中よりも下げて、第1濃縮水W3の実際排水流量がEDI装置5の通常運転中に設定される目標排出流量よりも多くなるように第1排水弁11〜第3排水弁13を制御する。
【0104】
このように、EDI装置5の再生運転中において、RO膜モジュール4の回収率を下げて、第1濃縮水W3の実際排水流量を多くすることにより、透過水W2中にリークするシリカや炭酸等のイオン類の量を減らし、透過水W2の純度を上げることができる。これにより、CP装置6の除去能力の低下を抑制しつつ、高純度の純水を製造することができる。
【0105】
また、第1実施形態に係る水処理システム1では、通常運転中において、EDI装置5とCP装置6とが直列に接続される。このため、通常運転中において、EDI装置5で製造された第1処理水W4は、後段のCP装置6において更に脱塩処理され、イオン類のリークが抑制された純度の高い純水となる。従って、第1実施形態の構成によれば、より純度の高い純水を製造することができる。
【0106】
なお、第1実施形態の構成では、EDI装置5の再生運転中だけでなく、通常運転中においてもCP装置6により脱塩処理が行われる。従って、CP装置6の除去能力の低下が懸念される。しかし、CP装置6に供給される第1処理水W4は、EDI装置5において脱塩処理された純度の高い純水である。このため、CP装置6の除去能力の低下は、実使用上、無視できる程度である。
【0107】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る水処理システム1Aについて、図7及び図8を参照しながら説明する。図7は、第2実施形態に係る水処理システム1Aの全体構成図である。なお、第2実施形態では、主に第1実施形態との相違点について説明する。そのため、第1実施形態と同一(又は同等)の構成については同じ符号を付し、その説明を適宜に省略する。第2実施形態において説明しない構成等については、第1実施形態の説明が援用される。
【0108】
図7に示すように、第2実施形態に係る水処理システム1Aは、加圧ポンプ2と、インバータ3と、RO膜モジュール4と、EDI装置5と、CP装置6と、貯留タンクとしての給水タンク16と、を備える。また、水処理システム1Aは、流量センサ7と、シリカ濃度センサ8と、炭酸濃度センサ9と、水位検出手段としての水位センサ17と、制御部10Aと、第1排水弁11〜第3排水弁13と、第1切換弁14と、第2切換弁15と、を備える。
【0109】
また、水処理システム1Aは、第1通水ラインL1〜第5通水ラインL5と、第1濃縮水ラインL6と、第2濃縮水ラインL7と、給水ラインL8と、第1排水ラインL11〜第3排水ラインL13と、を備える。
【0110】
図7に示すように、第2実施形態に係る水処理システム1Aは、第1実施形態に係る水処理システム1の構成において、CP装置6の下流側に給水タンク16を備える。その他の基本的なシステム構成は第1実施形態(図1参照)と同じである。
【0111】
給水タンク16は、CP装置6で製造された第2処理水W6を、純水W7として貯留するタンクである。給水タンク16には、第4通水ラインL4の下流側の端部が接続されている。CP装置6で製造された第2処理水W6は、第4通水ラインL4を介して給水タンク16に送出される。また、給水タンク16は、給水ラインL8を介して需要箇所に接続されている。給水タンク16に貯留された純水W7は、給水ラインL8を介して需要箇所に送出される。
【0112】
なお、給水タンク16には、貯留されている純水W7に炭酸ガスが溶存しないように、窒素ガスで遮蔽する等の対策を施すことが好ましい。
【0113】
水位センサ17は、給水タンク16に貯留された純水W7(第2処理水W6)の水位を検出する機器である。水位センサ17は、検出ライン(符号略)を介して給水タンク16に接続されている。水位センサ17は、制御部10Aと電気的に接続されている。水位センサ17で検出された給水タンク16の水位(以下、「検出水位値」ともいう)は、制御部10Aへ検出信号として送信される。
【0114】
制御部10Aは、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。制御部10Aは、流量フィードバック水量制御において、水位センサ17の検出水位値Wが予め設定された基準貯留水位値H以上であれば、EDI装置5の再生運転中における透過水W2の目標流量値を、EDI装置5の通常運転中における透過水W2の目標流量値よりも低く設定する。
【0115】
また、制御部10Aは、EDI装置5の通常運転中においては、RO膜モジュール4の回収率を通常の回収率(80%)に設定する。また、制御部10Aは、再生運転中においては、RO膜モジュール4の回収率を通常よりも低い回収率(60%)に設定する。制御部10AによるRO膜モジュール4の回収率制御は、第1実施形態(図4参照)と同じである。
【0116】
制御部10Aのその他の機能は、第1実施形態の制御部10と同じであるため説明を省略する。例えば、制御部10Aは、EDI装置5の通常運転中に、検出シリカ濃度値が基準シリカ濃度値以上となった場合、及び検出炭酸濃度値が基準炭酸濃度値以上となった場合には、第1実施形態の制御部10と同様に、流路部を第1流路から第2流路に切り換える。
【0117】
次に、制御部10Aにおいて、目標流量値及び回収率を設定する場合の動作について図8を参照しながら説明する。図8は、制御部10において透過水W2の目標流量値及び回収率を設定する場合の処理手順を示すフローチャートである。なお、図8に示すフローチャートの処理は、水処理システム1の運転中において、繰り返し実行される。
【0118】
図8に示すステップST501において、制御部10Aは、水処理システム1の通常運転中か否かを判定する。このステップST501において、制御部10Aにより、通常運転中である(YES)と判定された場合に、処理はステップST502へ移行する。また、ステップST501において、制御部10Aにより、通常運転中でない(NO)、すなわち再生運転中であると判定された場合に、処理はステップST504へ移行する。
【0119】
ステップST502(ステップST501:YES判定)において、制御部10Aは、RO膜モジュール4で製造される透過水W2の流量を、通常運転時の第1目標流量値に設定する。
【0120】
ステップST503において、制御部10Aは、RO膜モジュール4の回収率を通常運転時の80%に設定する。これにより本フローチャートの処理は終了する(ステップST501へリターンする)。このように、制御部10Aは、通常運転中であれば、透過水W2の目標流量値及び回収率を通常運転時の値に設定する。
【0121】
一方、ステップST504(ステップST501:NO判定)において、制御部10Aは、水位センサ17の検出水位値Wを取得する。
【0122】
ステップST505において、制御部10Aは、検出水位値Wが予め設定された基準貯留水位値H以上か否かを判定する。このステップST505において、制御部10Aにより、検出水位値W≧基準貯留水位値Hである(YES)と判定された場合に、処理はステップST506へ移行する。また、ステップST505において、制御部10Aにより、検出水位値W<基準貯留水位値Hである(NO)と判定された場合に、処理はステップST508へ移行する。
【0123】
ステップST506(ステップST505:YES判定)において、制御部10Aは、RO膜モジュール4で製造される透過水W2の流量を、再生運転時の第2目標流量値に設定する。第2目標流量値は、通常運転時の第1目標流量値よりも低い流量値であり、例えば第1目標流量値の25〜75%の範囲から選択される。
【0124】
ステップST507において、制御部10Aは、RO膜モジュール4の回収率を通常運転時よりも低い60%に設定する。これにより本フローチャートの処理は終了する(ステップST501へリターンする)。このように、再生運転中において、給水タンク16の貯水量が十分にある(基準貯留水位値H以上)場合には、通常運転時よりも目標流量値を下げることにより、CP装置6の除去能力の低下を抑制することができる。
【0125】
一方、ステップST508(ステップST505:NO判定)において、制御部10Aは、RO膜モジュール4で製造される透過水W2の流量を、通常運転時の第1目標流量値に設定する。このように、再生運転中であっても、給水タンク16の貯水量が少ない(基準貯留水位値H未満)場合には、通常運転時の目標流量値とする。これにより、需要箇所への純水W7の供給を極力維持することができる。制御部10AがステップST508の処理を実行した後、処理はステップST507へ移行する。
【0126】
なお、第2実施形態において、制御部10Aによる流路部の切り換え、流量フィードバック水量制御及び回収率制御は、第1実施形態(図3、図5及び図6参照)と同じであるため説明を省略する。
【0127】
上述した第2実施形態に係る水処理システム1Aによれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。特に、第2実施形態に係る水処理システム1Aでは、例えば、以下のような特有な効果が得られる。
【0128】
第2実施形態に係る水処理システム1Aにおいて、制御部10Aは、EDI装置5の通常運転中は流路部を第1流路に切り換え、EDI装置5の再生運転中は流路部を第2流路に切り換える。
【0129】
これによれば、EDI装置5の通常運転中は、EDI装置5により純水としての第1処理水W4が製造される。また、EDI装置5の再生運転中は、CP装置6により純水としての第2処理水W6が製造される。そのため、EDI装置5の再生運転中であっても、透過水W2の脱塩処理を中断することがなく、継続して純水を製造することができる。従って、第2実施形態に係る水処理システム1Aによれば、EDI装置5の再生運転中においても、純水を連続且つ安定して需要箇所に供給することができる。
【0130】
また、水処理システム1Aは、CP装置6の下流側に給水タンク16を備える。このため、RO膜モジュール4で製造される透過水W2の水量に変動が生じても、貯水量の範囲内において、需要箇所に安定した流量の純水W7を供給することができる。
【0131】
また、制御部10Aは、EDI装置5の再生運転中において、給水タンク16の検出水位値Wが基準貯留水位値H以上の場合には、通常運転時よりも目標流量値を下げて流量フィードバック水量制御を行う。このように、給水タンク16の貯水量が十分にある(基準貯留水位値H以上)場合には、通常運転時よりも目標流量値を下げることにより、CP装置6の除去能力の低下を抑制することができる。
【0132】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る水処理システム1Bについて、図9及び図10を参照しながら説明する。
【0133】
図9は、第3実施形態に係る水処理システム1Bの全体構成図である。図10(A)、(B)は、水処理システム1Bの第1流路及び第2流路を示す説明図である。なお、第3実施形態では、主に第1実施形態との相違点について説明する。そのため、第1実施形態と同一(又は同等)の構成については同じ符号を付し、その説明を適宜に省略する。第3実施形態で説明しない構成等については、第1実施形態の説明が援用される。
【0134】
図9に示すように、第3実施形態に係る水処理システム1Bは、加圧ポンプ2と、インバータ3と、RO膜モジュール4と、EDI装置5と、CP装置6と、を備える。また、水処理システム1Aは、流量センサ7と、シリカ濃度センサ8と、炭酸濃度センサ9と、制御部10Bと、第1排水弁11〜第3排水弁13と、第3切換弁18と、第4切換弁19と、を備える。
【0135】
また、水処理システム1Bは、第1通水ラインL1〜第3通水ラインL3と、第1濃縮水ラインL6と、第2濃縮水ラインL7と、第6通水ラインL9と、第1排水ラインL11〜第3排水ラインL13と、を備える。
【0136】
上述した第3切換弁18、第4切換弁19、第2通水ラインL2、第3通水ラインL3、第6通水ラインL9は、本実施形態における流路部を構成する。
【0137】
図9に示すように、第3実施形態に係る水処理システム1Bは、第6通水ラインL9を備える。第6通水ラインL9は、制御部10Bにより流路部が第4流路(後述)へ切り換えられた場合に、第2通水ラインL2を流通する透過水W2を、EDI装置5を流通させずに、CP装置6に流通させるバイパスラインである。CP装置6で製造された第2処理水W6は、第6通水ラインL9を介して、第3通水ラインL3に合流する。
【0138】
第6通水ラインL9の上流側の端部は、接続部J9において、第2通水ラインL2に接続されている。第3切換弁18は、接続部J9とCP装置6との間に設けられている。また、第6通水ラインL9の下流側の端部は、第4切換弁19を介して第3通水ラインL3に接続されている。第4切換弁19は、第3通水ラインL3において、EDI装置5の下流側に設けられている。
【0139】
第3切換弁18は、RO膜モジュール4で製造された透過水W2を、第2通水ラインL2を介してEDI装置5へ流通させる流路、又はRO膜モジュール4で製造された透過水W2を、第6通水ラインL9を介してCP装置6へ流通させる流路に切り換え可能な弁である。第3切換弁18は、例えば電動式や電磁式の二方弁により構成される。第3切換弁18は、制御部10Bと電気的に接続されている。第3切換弁18における弁の開閉は、制御部10Bからの弁開閉信号により制御される。
【0140】
第4切換弁19は、EDI装置5で製造された第1処理水W4を、第3通水ラインL3を介して需要箇所に送出する流路、又はCP装置6で製造された第2処理水W6を、第3通水ラインL3を介して需要箇所に送出する流路に切り換え可能な弁である。第4切換弁19は、例えば電動式や電磁式の三方弁により構成される。第4切換弁19は、制御部10Bと電気的に接続されている。第4切換弁19における弁の開閉は、制御部10Bからの弁開閉信号により制御される。
【0141】
EDI装置5の通常運転中において、流路部は第3流路(後述)に切り換えられる。第3流路では、RO膜モジュール4で製造された透過水W2が第2通水ラインL2を介してEDI装置5へ流通する。
【0142】
一方、EDI装置5の再生運転中において、流路部は第4流路(後述)に切り換えられる。第2流路では、RO膜モジュール4で製造された透過水W2がEDI装置5へ流通せずに、CP装置6へ流通する。すなわち、EDI装置5の再生運転中は、EDI装置5の代わりに、CP装置6により脱塩処理が行われる。
【0143】
次に、水処理システム1Bにおける第3流路及び第4流路について、図10を参照しながら説明する。なお、図10では、RO膜モジュール4、EDI装置5、CP装置6、第1通水ラインL1〜第3通水ラインL3、第6通水ラインL9、第2濃縮水ラインL7、第3切換弁18及び第4切換弁19についてのみ図示する。また、図10では、供給水W1等が流通するラインを実線で示し、流通しないラインを破線で示す。また、第3切換弁18においては、開弁を白塗りで示し、閉弁を黒塗りで示す。更に、第4切換弁19については、開弁している部分を白塗りで示し、閉弁している部分を黒塗りで示す。
【0144】
図10(A)は、水処理システム1Bの第3流路を示す説明図である。第3流路は、EDI装置5を通常運転する場合の流路である。制御部10B(不図示)は、EDI装置5の通常運転中は、第3切換弁18及び第4切換弁19を下記のように制御する。
【0145】
制御部10Bは、第3切換弁18を閉弁すると共に、第4切換弁19において、第3通水ラインL3に接続する2つのポートを開放し、第6通水ラインL9に接続するポートを閉鎖する。これにより、RO膜モジュール4で製造された透過水W2は、第6通水ラインL9を流通することなく、第2通水ラインL2を介してEDI装置5へ流通する。そして、EDI装置5で製造された第1処理水W4は、第3通水ラインL3を介して需要箇所へ送出される。
【0146】
上述したように、流路部が第3流路に切り換えられた場合に、RO膜モジュール4で製造された透過水W2は、第2通水ラインL2を介してEDI装置5に流通し、EDI装置5において第1処理水W4が製造される。そして、EDI装置5で製造された第1処理水W4は、第3通水ラインL3を介して下流側の需要箇所へ送出される。
【0147】
図10(B)は、水処理システム1Bの第4流路を示す説明図である。第4流路は、EDI装置5を再生運転する場合の流路である。制御部10B(不図示)は、EDI装置5の再生運転中は、第3切換弁18及び第4切換弁19を下記のように制御する。
【0148】
制御部10Bは、第3切換弁18を開弁すると共に、第4切換弁19において、第3通水ラインL3の下流側(需要箇所側)に接続するポート及び第6通水ラインL9に接続するポートを開放し、第3通水ラインL3の上流側(EDI装置5側)に接続するポートを閉鎖する。これにより、RO膜モジュール4で製造された透過水W2は、第2通水ラインL2から第3切換弁18を経て第6通水ラインL9へ流通する。そして、CP装置6で製造された第2処理水W6は、第6通水ラインL9から第4切換弁19を経て第3通水ラインL3に流通する。この後、第2処理水W6は、第3通水ラインL3を介して需要箇所へ送出される。
【0149】
上述したように、流路部が第4流路に切り換えられた場合に、RO膜モジュール4で製造された透過水W2は、第2通水ラインL2から第3切換弁18を経て第6通水ラインL9へ流通し、CP装置6において第2処理水W6が製造される。そして、CP装置6で製造された第2処理水W6は、第6通水ラインL9から第4切換弁19を経て第3通水ラインL3に流通し、更に下流側の需要箇所へ送出される。
【0150】
なお、第3実施形態において、制御部10Bによる流路部の切り換え、回収率の設定、流量フィードバック水量制御及び回収率制御は、第1実施形態(図3〜図6参照)と同じであるため説明を省略する。
【0151】
上述した第3実施形態に係る水処理システム1Bによれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。特に、第3実施形態に係る水処理システム1Bでは、例えば、以下のような特有な効果が得られる。
【0152】
第3実施形態に係る水処理システム1Bおいて、制御部10Bは、EDI装置5の通常運転中は流路部を第3流路に切り換え、EDI装置5の再生運転中は流路部を第4流路に切り換える。
【0153】
これによれば、EDI装置5の通常運転中は、EDI装置5により純水としての第1処理水W4が製造される。また、EDI装置5の再生運転中は、CP装置6により純水としての第2処理水W6が製造される。そのため、EDI装置5の再生運転中であっても、透過水W2の脱塩処理を中断することがなく、継続して純水を製造することができる。従って、第3実施形態に係る水処理システム1Bによれば、簡易なシステム構成により、EDI装置5の再生運転中においても、純水を連続且つ安定して需要箇所に供給することができる。
【0154】
また、第3実施形態に係る水処理システム1Bでは、EDI装置5に対してCP装置6が並列に接続される。このため、通常運転中において、RO膜モジュール4で製造された透過水W2はEDI装置5で脱塩処理され、CP装置6が使用されることがない。このため、通常運転中におけるCP装置6の除去能力の低下を最小限に抑制することができる。
【0155】
なお、第3実施形態において、第3通水ラインL3の下流側に、更に給水タンク16(図7参照)を設けた構成としてもよい。第3実施形態においても、給水タンク16を設けることにより、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0156】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0157】
例えば、第1及び第2実施形態では、第1流路と第2流路とを切り換えるための構成として、二方弁(第1切換弁14及び第2切換弁15)を用いた例について説明した。これに限らず、第3実施形態に示すような電動式や電磁式の三方弁(第3切換弁18及び第4切換弁19)を用いることもできる。この場合には、図1に示す接続部J4及び接続部J6の位置にそれぞれ三方弁を設ける。
【0158】
また、第3実施形態では、第3流路と第4流路とを切り換えるための構成として、三方弁(第3切換弁18及び第4切換弁19)を用いた例について説明した。これに限らず、第1及び第2実施形態に示すような電動式や電磁式の二方弁(第1切換弁14及び第2切換弁15)を用いることもできる。
【0159】
この場合には、図9に示す第3切換弁18の位置において、第2通水ラインL2と第6通水ラインL9の上流側の端部とを接続する。また、第4切換弁19の位置において、第3通水ラインL3と第6通水ラインL9の下流側の端部とを接続する。そして、第6通水ラインL9の上流側の端部近傍及び下流側の端部近傍にそれぞれ二方弁を設ける。
【0160】
また、第1実施形態〜第3実施形態において、第1濃縮水ラインL6を流通する第1濃縮水W3の一部を、加圧ポンプ2よりも上流側の第1通水ラインL1に還流させる濃縮水還流ラインを設けた構成としてもよい。濃縮水還流ラインを設けることにより、膜表面での流速を高めることができるため、RO膜モジュール4におけるファウリングの発生を抑制することができる。
【0161】
第1実施形態〜第3実施形態では、EDI装置5の濃縮室5bから排出された第2濃縮水W5をすべて排出する例について説明した。しかし、第2濃縮水W5は、供給水W1よりも純度が高い。そのため、第2濃縮水W5の一部又は全部を、第1通水ラインL1において、RO膜モジュール4よりも上流側に戻す濃縮水返送ラインを設けた構成としてもよい。濃縮水返送ラインを設けることにより、造水コストを抑制することができる。
【0162】
また、第1実施形態〜第3実施形態では、第1排水弁11〜第3排水弁13を選択的に開閉することにより、第1濃縮水W3の排水流量を段階的に調節する例について説明した。これに限らず、排水ラインを分岐せずに1本とし、このラインに比例制御弁を設けた構成としてもよい。その場合には、制御部10(10A、10B)からそれぞれのRO膜モジュール4に、電流値信号(例えば、4〜20mA)を比例制御弁に送信して弁開度を制御することにより、第1濃縮水W3の排水流量を調節することができる。
【0163】
また、比例制御弁を設けた構成において、それぞれのRO膜モジュール4の排水ラインに流量センサを設けた構成としてもよい。流量センサで検出された流量値を、制御部10(10A、10B)にフィードバック値として入力する。これにより、第1濃縮水W3の実際排水流量をより正確に制御することができる。
【0164】
また、第1実施形態〜第3実施形態では、流量フィードバック水量制御を実行する例について説明した。しかし、純水W7の使用量が少ない場合や透過水W2の流量を目標流量値に保つ必要がない場合等においては、必ずしも流量フィードバック水量制御を実行しなくてもよい。同様に、第1〜第3実施形態においては、回収率制御を実行する例について説明した。しかし、供給水W1の水質が高い場合や純水W7の使用量が少ない場合等においては、必ずしも回収率制御を実行しなくてもよい。
【0165】
また、第1実施形態〜第3実施形態では、主にEDI装置5の再生運転中に流路部を第2流路又は第4流路に切り換える例について説明した。これに限らず、EDI装置5の薬品洗浄中又は交換中に流路部を第2流路又は第4流路に切り換えてもよい。
また、EDI装置5に代えて、再生型の混床式イオン交換装置を配置した構成としてもよい。
【符号の説明】
【0166】
1,1A,1B 水処理システム
2 加圧ポンプ
3 インバータ
4 RO膜モジュール(膜分離装置)
5 EDI装置(電気式イオン交換装置)
6 CP装置(混床式イオン交換装置)
7 流量センサ(流量検出手段)
8 シリカ濃度センサ(シリカ濃度検出手段)
9 炭酸濃度センサ(炭酸濃度検出手段)
10,10A,10B 制御部
11 第1排水弁(排水弁)
12 第2排水弁(排水弁)
13 第3排水弁(排水弁)
14 第1切換弁
15 第2切換弁
16 給水タンク(貯留タンク)
17 水位センサ(水位検出手段)
18 第3切換弁
19 第4切換弁
L1 第1通水ライン(供給水ライン)
L2 第2通水ライン
L3 第3通水ライン
L4 第4通水ライン
L5 第5通水ライン
L6 第1濃縮水ライン
L7 第2濃縮水ライン
L8 給水ライン
L9 第6通水ライン
W1 供給水
W2 透過水
W3 第1濃縮水
W4 第1処理水
W5 第2濃縮水
W6 第2処理水
W7 純水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給水を透過水と濃縮水とに膜分離処理する膜分離装置と、
透過水を脱塩処理して第1処理水を製造する電気式イオン交換装置と、
透過水又は第1処理水を脱塩処理して第2処理水を製造する混床式イオン交換装置と、
透過水を、(i)前記電気式イオン交換装置へ流通させると共に、当該電気式イオン交換装置で製造された第1処理水を前記混床式イオン交換装置へ流通させる第1流路、(ii)前記電気式イオン交換装置へ流通させずに、前記混床式イオン交換装置へ流通させる第2流路に切り換え可能な流路部と、
前記電気式イオン交換装置の通常運転中は、前記流路部を前記第1流路に切り換え、前記電気式イオン交換装置の再生運転中は、前記流路部を前記第2流路に切り換える制御部と、
を備える水処理システム。
【請求項2】
供給水を透過水と濃縮水とに膜分離処理する膜分離装置と、
透過水を脱塩処理して第1処理水を製造する電気式イオン交換装置と、
透過水を脱塩処理して第2処理水を製造する混床式イオン交換装置と、
透過水を、(i)前記混床式イオン交換装置へ流通させずに、前記電気式イオン交換装置へ流通させる第3流路、(ii)前記電気式イオン交換装置へ流通させずに、前記混床式イオン交換装置へ流通させる第4流路に切り換え可能な流路部と、
前記電気式イオン交換装置の通常運転中は、前記流路部を前記第3流路に切り換え、前記電気式イオン交換装置の再生運転中は、前記流路部を前記第4流路に切り換える制御部と、
を備える水処理システム。
【請求項3】
前記膜分離装置により製造された透過水のシリカ濃度を検出するシリカ濃度検出手段を備え、
前記制御部は、前記電気式イオン交換装置の通常運転中において、前記シリカ濃度検出手段の検出シリカ濃度が予め設定された基準シリカ濃度以上であれば、前記流路部を前記第2流路又は前記第4流路に切り換える、
請求項1又は2に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記膜分離装置により製造された透過水の炭酸濃度を検出する炭酸濃度検出手段を備え、
前記制御部は、前記電気式イオン交換装置の通常運転中において、前記炭酸濃度検出手段の検出炭酸濃度が予め設定された基準炭酸濃度以上であれば、前記流路部を前記第2流路又は前記第4流路に切り換える、
請求項1又は2に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記膜分離装置により製造された透過水の流量を検出し、当該流量に応じた検出流量値を出力する流量検出手段と、
供給水を前記膜分離装置に供給する供給水ラインと、
入力された駆動周波数に応じた回転速度で駆動され、前記供給水ラインを流通する供給水を前記膜分離装置に向けて圧送する加圧ポンプと、
入力された電流値信号に対応する駆動周波数を前記加圧ポンプに出力するインバータと、を備え、
前記制御部は、少なくとも前記電気式イオン交換装置の通常運転中において、前記流量検出手段から出力された検出流量値が、予め設定された目標流量値となるように、速度形デジタルPIDアルゴリズムにより前記加圧ポンプの駆動周波数を演算し、当該駆動周波数の演算値に対応する電流値信号を前記インバータに出力する、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の水処理システム。
【請求項6】
前記膜分離装置から排出される濃縮水の排出流量を調節可能な排水弁を備え、
前記制御部は、前記電気式イオン交換装置の再生運転中において、濃縮水の排水流量が、前記電気式イオン交換装置の通常運転中に設定される排出流量よりも多くなるように前記排水弁を制御する、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の水処理システム。
【請求項7】
第1処理水及び/又は第2処理水を貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンクの水位を検出する水位検出手段と、を備え、
前記制御部は、前記水位検出手段の検出水位が予め設定された基準貯留水位以上であれば、前記電気式イオン交換装置の再生運転中における透過水の目標流量値を、前記電気式イオン交換装置の通常運転中における透過水の目標流量値よりも低く設定する、
請求項5又は6に記載の水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−103194(P2013−103194A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249798(P2011−249798)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】