説明

水処理システム

【課題】薬剤の供給装置に異常が発生した場合にも、膜分離装置における膜の透水能力を維持できる水処理システムを提供する。
【解決手段】膜分離装置4と、供給水ラインL1と、供給水W1を膜分離装置4に向けて流通させる供給水流通手段2と、薬剤を貯留する薬剤タンク14,17と、薬剤タンク14,17と供給水ラインL1との間を接続する薬剤供給ラインL8,L9と、薬剤を薬剤供給ラインL8,L9を介して供給水ラインL1に向けて供給する薬剤供給手段15,18と、薬剤供給ラインL8,L9における薬剤の流通を検出する薬剤流通検出手段16,19と、膜分離装置4から排出される濃縮水W3の排水流量を調節可能な排水弁11〜13と、薬剤流通検出手段16,19で薬剤の正常な流通が検出されない場合に、濃縮水W3の実際排水流量が目標排出流量よりも多い排水流量となるように排水弁11〜13を制御する制御部10と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給水を透過水と濃縮水とに膜分離処理する膜分離装置を備えた水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程や電子部品の洗浄、医療器具の洗浄等においては、不純物を含まない高純度の純水が使用される。この種の純水は、一般に、地下水や水道水等の供給水を膜分離装置(以下、「RO膜モジュール」ともいう)で処理することにより製造される。
【0003】
RO膜(逆浸透膜)に代表される半透膜は、膜の透水能力を維持するために、膜面へのスケールの析出を防止しながら運転する必要がある。従来、膜面におけるシリカ系のスケールの析出を防止するために、供給水にスケール抑制剤を添加すると共に、膜面における炭酸カルシウム系のスケールの析出を防止するために、供給水に酸性剤を添加する造水装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−206749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した造水装置では、供給水に対するスケール抑制剤や酸性剤の添加が正常に行われている場合には、膜面へのスケールの析出を効果的に防止することができる。しかし、薬剤の供給装置に異常が発生する等の理由により、供給水に正常に薬剤を添加できない場合には、膜面へのスケールの析出によりRO膜モジュールにおける膜の透水能力を維持することが困難になる。
【0006】
従って、本発明は、供給水に対し薬剤を正常に添加できない場合においても、膜分離装置における膜の透水能力を維持することができる水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、供給水を透過水と濃縮水とに分離する膜分離装置と、供給水を前記膜分離装置に供給する供給水ラインと、前記供給水ラインを介して供給水を前記膜分離装置に向けて流通させる供給水流通手段と、薬剤を貯留する薬剤タンクと、前記薬剤タンクと前記供給水ラインとの間を接続する薬剤供給ラインと、前記薬剤タンクに貯留された薬剤を前記薬剤供給ラインを介して前記供給水ラインに向けて供給する薬剤供給手段と、前記薬剤供給ラインにおける薬剤の流通を検出する薬剤流通検出手段と、前記膜分離装置から排出される濃縮水の排水流量を調節可能な排水弁と、前記薬剤流通検出手段において薬剤の正常な流通が検出されない場合に、濃縮水の実際排水流量が目標排出流量よりも多い排水流量となるように前記排水弁を制御する制御部と、を備える水処理システムに関する。
【0008】
また、前記膜分離装置から送出された透過水を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンクの水位を検出する水位検出手段と、を備え、前記制御部は、前記薬剤流通検出手段において薬剤の正常な流通が検出されない状態が予め設定された時間以上継続する場合に、前記水位検出手段の検出水位が予め設定された基準貯留水位以上であれば、前記膜分離装置への供給水の供給を停止するように前記供給水流通手段を制御した後、前記膜分離装置の一次側を洗浄するためのフラッシング運転を実行することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、供給水に対し薬剤を正常に添加できない場合においても、膜分離装置における膜の透水能力を維持することができる水処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る水処理システム1の全体構成図である。
【図2】制御部10において目標流量値及び回収率を設定する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】制御部10において流量フィードバック水量制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】制御部10においてRO膜モジュール4の回収率制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】制御部10においてフラッシング運転を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る水処理システム1について、図面を参照しながら説明する。水処理システム1は、例えば、淡水から純水を製造する純水製造システムに適用される。
【0012】
図1は、本実施形態に係る水処理システム1の全体構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る水処理システム1は、供給水流通手段としての加圧ポンプ2と、インバータ3と、RO膜モジュール4と、透過水弁5と、貯留タンクとしての給水タンク6と、水位検出手段としての水位センサ7と、流量センサ8と、安全弁9を備える。また、水処理システム1は、制御部10と、第1排水弁11〜第3排水弁13と、第1薬剤タンク14と、薬剤供給手段としての第1薬注ポンプ15と、薬剤流通検出手段としての第1フローチェッカ16と、第2薬剤タンク17と、薬剤供給手段としての第2薬注ポンプ18と、薬剤流通検出手段としての第2フローチェッカ19と、濃縮水還流弁20と、を備える。図1では、電気的な接続の経路を破線で示す。
【0013】
また、水処理システム1は、供給水ラインL1と、透過水ラインL2と、濃縮水ラインL3と、濃縮水排出ラインL4と、濃縮水還流ラインL5と、透過水返送ラインL6と、給水ラインL7と、第1薬剤供給ラインL8と、第2薬剤供給ラインL9と、を備える。本明細書における「ライン」とは、流路、径路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0014】
供給水ラインL1の上流側の端部は、供給水W1の供給源(不図示)に接続されている。一方、供給水ラインL1の下流側の端部は、RO膜モジュール4の一次側入口ポートに接続されている。
【0015】
加圧ポンプ2は、供給水W1を吸入し、RO膜モジュール4に向けて吐出する装置である。加圧ポンプ2は、インバータ3(後述)と電気的に接続されている。加圧ポンプ2には、インバータ3から周波数が変換された駆動電力が供給される。加圧ポンプ2は、供給された駆動電力の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう)に応じた回転速度で駆動される。
【0016】
インバータ3は、加圧ポンプ2に、周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路である。インバータ3は、制御部10と電気的に接続されている。インバータ3には、制御部10から電流値信号が入力される。インバータ3は、入力された電流値信号に対応する駆動周波数の駆動電力を加圧ポンプ2に出力する。
【0017】
RO膜モジュール4は、加圧ポンプ2から送出された供給水W1を、溶存塩類が除去された透過水W2と、溶存塩類が濃縮された濃縮水W3とに膜分離処理する設備である。RO膜モジュール4は、単一又は複数のRO膜エレメント(不図示)を備える。RO膜モジュール4は、これらRO膜エレメントにより供給水W1を膜分離処理し、透過水W2及び濃縮水W3を製造する。
【0018】
透過水ラインL2は、RO膜モジュール4で製造された透過水W2を、給水タンク6へ送出するラインである。透過水ラインL2の下流側の端部は、給水タンク6(後述)に接続されている。
【0019】
透過水弁5は、透過水ラインL2を開閉する装置である。透過水弁5は、制御部10と電気的に接続されている。透過水弁5における弁体の開閉は、制御部10からの駆動信号により制御される。透過水弁5は、RO膜モジュール4を通常運転する場合には、開状態に制御される。また、透過水弁5は、RO膜モジュール4をフラッシング運転(後述)する場合には、閉状態に制御される。
【0020】
給水タンク6は、透過水W2を貯留するタンクである。給水タンク6には、透過水ラインL2の下流側の端部が接続されている。RO膜モジュール4の二次側ポートから送出された透過水W2は、透過水ラインL2を介して給水タンク6に送出される。また、給水タンク6は、給水ラインL7を介して需要箇所に接続されている。給水タンク6に貯留された透過水W2は、給水ラインL7を介して、純水W4として需要箇所に供給される。
【0021】
水位センサ7は、給水タンク6に貯留された透過水W2の水位を検出する機器である。水位センサ7は、検出ライン(符号略)を介して給水タンク6に接続されている。また、水位センサ7は、制御部10と電気的に接続されている。水位センサ7で検出された給水タンク6の水位(以下、「検出水位値」ともいう)は、制御部10へ検出信号として送信される。
【0022】
流量センサ8は、透過水ラインL2を流通する透過水W2の流量を検出する機器である。流量センサ8は、接続部J5において透過水ラインL2に接続されている。接続部J5は、RO膜モジュール4と透過水弁5との間(RO膜モジュール4と接続部J6との間)に配置されている。流量センサ8は、制御部10と電気的に接続されている。流量センサ8で検出された透過水W2の流量(以下、「検出流量値」ともいう)は、制御部10へ検出信号として送信される。
【0023】
透過水返送ラインL6は、RO膜モジュール4をフラッシング運転する場合において、透過水ラインL2に送出された透過水W2を、供給水ラインL1における加圧ポンプ2よりも上流側に返送させるラインである。透過水返送ラインL6の上流側の端部は、接続部J6において透過水ラインL2に接続されている。接続部J6は、RO膜モジュール4の二次側ポートと透過水弁5との間(接続部J5と透過水弁5との間)に配置されている。また、透過水返送ラインL6の下流側の端部は、接続部J2において供給水ラインL1に接続されている。接続部J2は、供給水W1の供給源と加圧ポンプ2との間(接続部J1と接続部J3との間)に配置されている。透過水返送ラインL6には、安全弁9が設けられている。
【0024】
安全弁9は、フラッシング運転において、透過水ラインL2の管内圧力が予め設定された圧力以上となった場合に開弁して、透過水W2を透過水返送ラインL6に流通させる弁である。すなわち、安全弁9は、予め設定された圧力以上の透過水W2を、透過水返送ラインL6を介して供給水ラインL1に戻すことにより、RO膜モジュール4の二次側に過剰な背圧が発生するのを防止する。
【0025】
なお、RO膜モジュール4を通常運転する場合には、透過水弁5が開状態に制御されるため、透過水ラインL2の管内圧力は、予め設定された圧力未満となる。そのため、RO膜モジュール4を通常運転する場合は、安全弁9が閉弁した状態で、透過水W2が給水タンク6へ送出される。
【0026】
また、RO膜モジュール4の一次側出口ポートには、濃縮水ラインL3の上流側の端部が接続されている。濃縮水ラインL3は、濃縮水W3をRO膜モジュール4の外に送出するラインである。濃縮水ラインL3の下流側は、分岐部J7において、濃縮水排出ラインL4及び濃縮水還流ラインL5に分岐している。
【0027】
濃縮水排出ラインL4は、濃縮水ラインL3を流通する濃縮水W3の一部を装置外へ排出するラインである。濃縮水排出ラインL4の下流側は、分岐部J8及びJ9において、第1排水ラインL11、第2排水ラインL12及び第3排水ラインL13に分岐している。
【0028】
第1排水ラインL11には、第1排水弁11が設けられている。第2排水ラインL12には、第2排水弁12が設けられている。第3排水ラインL13には、第3排水弁13が設けられている。
【0029】
第1排水弁11〜第3排水弁13は、濃縮水ラインL3から送出された濃縮水W3の排水流量を調節する弁である。第1排水弁11は、第1排水ラインL11を開閉することができる。第2排水弁12は、第2排水ラインL12を開閉することができる。第3排水弁13は、第3排水ラインL13を開閉することができる。
【0030】
第1排水弁11〜第3排水弁13は、それぞれ定流量弁機構(不図示)を備える。定流量弁機構は、第1排水弁11〜第3排水弁13において、それぞれ異なる流量値に設定されている。例えば、第1排水弁11は、開状態において、RO膜モジュール4の回収率が80%となるように排水流量が設定されている。第2排水弁12は、開状態において、RO膜モジュール4の回収率が75%となるように排水流量が設定されている。第3排水弁13は、開状態において、RO膜モジュール4の回収率が70%となるように排水流量が設定されている。
【0031】
濃縮水ラインL3から排出される濃縮水W3の排水流量は、第1排水弁11〜第3排水弁13を選択的に開閉することにより、段階的に調節できる。例えば、第2排水弁12のみを開状態とし、第1排水弁11及び第3排水弁13を閉状態とする。この場合には、RO膜モジュール4の回収率を75%とすることができる。また、第1排水弁11及び第2排水弁12を開状態とし、第3排水弁13のみを閉状態とする。この場合には、RO膜モジュール4の回収率を70%とすることができる。従って、本実施形態において、濃縮水W3の排水流量は、第1排水弁11〜第3排水弁13を選択的に開閉することにより、RO膜モジュール4の回収率を50%〜80%までの間で、5%毎に段階的に調節することができる。
【0032】
なお、本実施形態において、RO膜モジュール4の回収率は、80%又は60%のいずれかに設定される。しかしながら、RO膜モジュール4の回収率は、通常運転時の回収率と、それよりも低い回収率のいずれかに設定できればよい。上述したように、濃縮水W3の排水流量は段階的に調節できるため、回収率は50%〜80%までの間で適宜に選択することができる。従って、RO膜モジュール4の回収率を、例えば、75%又は55%のいずれかに設定する構成としてもよい。
【0033】
第1排水弁11〜第3排水弁13は、それぞれ制御部10と電気的に接続されている。第1排水弁11〜第3排水弁13における弁体の開閉は、制御部10からの駆動信号により制御される。
【0034】
濃縮水還流ラインL5は、濃縮水ラインL3を流通する濃縮水W3の残部を、供給水ラインL1における加圧ポンプ2よりも上流側に還流させるラインである。濃縮水還流ラインL5の上流側の端部は、分岐部J7において濃縮水ラインL3に接続されている。分岐部J7は、RO膜モジュール4の一次側出口ポートと分岐部J8との間に配置されている。また、濃縮水還流ラインL5の下流側の端部は、接続部J1において、供給水ラインL1に接続されている。接続部J1は、供給水W1の供給源と加圧ポンプ2との間(供給水W1の供給源と接続部J2との間)に配置されている。
【0035】
濃縮水還流弁20は、濃縮水還流ラインL5の流通量を調節する装置である。濃縮水還流弁20は、制御部10と電気的に接続されている。濃縮水還流弁20における弁体の開度は、制御部10からの駆動信号により制御される。濃縮水還流弁20の弁体は、RO膜モジュール4を通常運転する場合には、所定の開度に制御される。また、濃縮水還流弁20の弁体は、RO膜モジュール4をフラッシング運転する場合は、閉状態(開度0%)に制御される。
【0036】
第1薬剤タンク14は、薬剤としての酸性剤を貯留するタンクである。酸性剤は、主にRO膜モジュール4の膜面への炭酸カルシウム系のスケールの析出を防止するために用いられる薬品である。ここで利用可能な酸性剤としては、例えば、塩酸、硫酸又は硝酸等の無機酸が挙げられる。また、酸性剤は、主に水溶液として用いられる。
【0037】
第1薬注ポンプ15は、第1薬剤タンク14に貯留された酸性剤を、第1薬剤供給ラインL8を介して供給水ラインL1に供給する装置である。第1薬注ポンプ15は、第1薬剤タンク14に併設されている。第1薬注ポンプ15は、例えば、ダイヤフラムを電磁駆動力により往復運動させるダイヤフラムポンプにより構成することができる。第1薬注ポンプ15は、制御部10と電気的に接続されている。第1薬注ポンプ15におけるダイヤフラムポンプの作動は、制御部10からの駆動信号により制御される。すなわち、第1薬剤タンク14から供給水ラインL1へ酸性剤を供給するタイミング及び供給量は、制御部100から送信される駆動信号により制御される。
【0038】
第1薬剤供給ラインL8は、第1薬剤タンク14と供給水ラインL1との間を接続するラインである。第1薬剤供給ラインL8の上流側の端部は、第1薬注ポンプ15に接続されている。第1薬剤供給ラインL8の下流側の端部は、接続部J3において供給水ラインL1に接続されている。接続部J3は、接続部J2と加圧ポンプ2との間に接続されている。なお、接続部J3は、後述する接続部J4の下流側に配置されていてもよい。
【0039】
第1フローチェッカ16は、第1薬剤供給ラインL8における酸性剤の流通を検出する装置である。第1フローチェッカ16は、第1薬剤タンク14と接続部J3との間に配置されている。第1フローチェッカ16は、制御部10と電気的に接続されている。第1フローチェッカ16は、第1薬剤供給ラインL8における酸性剤の流通を検出した場合には、制御部10に第1検出信号を送信する。
【0040】
第2薬剤タンク17は、薬剤としてのスケール抑制剤を貯留するタンクである。スケール抑制剤は、主にRO膜モジュール4の膜面へのシリカ系のスケールの析出を抑制するために用いられる薬品である。ここで利用可能なスケール抑制剤としては、例えば、アクリル酸系ポリマー、メタクリル酸系ポリマー及びマレイン酸系ポリマー等のポリカルボン酸、ポリスルホン酸、ホスホン酸等が挙げられる。これらのスケール抑制剤は、単一で使用してもよいし、二種以上を併用することもできる。また、スケール抑制剤は、主に水溶液として用いられる。
【0041】
第2薬注ポンプ18は、第2薬剤タンク17に貯留されたスケール抑制剤を、第2薬剤供給ラインL9を介して供給水ラインL1に供給する装置である。第2薬注ポンプ18は、第2薬剤タンク17に併設されている。第2薬注ポンプ18は、例えば、ダイヤフラムを電磁駆動力により往復運動させるダイヤフラムポンプにより構成することができる。第2薬注ポンプ18は、制御部10と電気的に接続されている。第2薬注ポンプ18におけるダイヤフラムポンプの作動は、制御部10からの駆動信号により制御される。すなわち、第2薬剤タンク17から供給水ラインL1へスケール抑制剤を供給するタイミング及び供給量は、制御部100から送信される駆動信号により制御される。
【0042】
第2薬剤供給ラインL9は、第2薬剤タンク17と供給水ラインL1との間を接続するラインである。第2薬剤供給ラインL9の上流側の端部は、第2薬注ポンプ18に接続されている。第2薬剤供給ラインL9の下流側の端部は、接続部J4において供給水ラインL1に接続されている。接続部J4は、接続部J2と加圧ポンプ2との間に接続されている。なお、接続部J4は、上述した接続部J3の上流側に配置されていてもよい。
【0043】
第2フローチェッカ19は、第2薬剤供給ラインL9におけるスケール抑制剤の流通を検出する装置である。第2フローチェッカ19は、第2薬剤タンク17と接続部J4との間に配置されている。第2フローチェッカ19は、制御部10と電気的に接続されている。第2フローチェッカ19は、第2薬剤供給ラインL9におけるスケール抑制剤の流通を検出した場合には、制御部10に第2検出信号を送信する。
【0044】
制御部10は、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。制御部10は、流量フィードバック水量制御として、流量センサ8の検出流量値が、予め設定された第1目標流量又は第2目標流量値となるように、系内の物理量を用いて速度形デジタルPIDアルゴリズムにより、加圧ポンプ2を駆動するための駆動周波数を演算し、当該駆動周波数の演算値に対応する電流値信号をインバータ3に出力する。制御部10による流量フィードバック水量制御については後述する。
【0045】
制御部10は、第1フローチェッカ16及び/又は第2フローチェッカ19において、薬剤の正常な流通が検出されない場合に、RO膜モジュール4で製造される透過水W2の流量を第2目標流量値に設定する。第2目標流量値は、後述する第1目標流量値の50%流量である。制御部10は、第1フローチェッカ16から第1検出信号を受信しない場合及び/又は第2フローチェッカ19から第2検出信号を受信しない場合に、薬剤の正常な流通が検出されないと判定する。
【0046】
また、制御部10は、薬剤の正常な流通が検出されない場合において、RO膜モジュール4の回収率を下げて、濃縮水W3の実際排水流量が目標排水流量よりも多い排水流量となるように第1排水弁11〜第3排水弁13を制御する。本実施形態では、薬剤の正常な流通が検出されない場合に、回収率を通常運転時よりも低い60%に設定する。なお、通常運転時の回収率は80%である。
【0047】
なお、制御部10は、設定された回収率R及び目標流量値Q´(第1目標流量値又は第2目標流量値)に基づいて、濃縮水W3の排水流量Qを、下記の式(1)により演算する。
=Q´/R−Q´ (1)
【0048】
一方、制御部10は、第1フローチェッカ16及び第2フローチェッカ19において、薬剤の正常な流通が検出された場合には、RO膜モジュール4で製造される透過水W2の流量を第1目標流量値に設定する。第1目標流量値は、通常運転時の目標流量値である。すなわち、第1目標流量値は、予め設定された目標流量値の100%流量である。制御部10は、第1フローチェッカ16から第1検出信号を受信し、且つ第2フローチェッカ19から第2検出信号を受信した場合に、薬剤の正常な流通が検出されたと判定する。
【0049】
更に、制御部10は、薬剤の正常な流通が検出された場合において、RO膜モジュール4の回収率を通常運転時の回収率(80%)に戻して、濃縮水W3の実際排水流量が第1目標排水流量となるように第1排水弁11〜第3排水弁13を制御する。
【0050】
また、制御部10は、第1フローチェッカ16及び/又は第2フローチェッカ19において、薬剤の正常な流通が検出されない状態が時間T以上継続した場合に、水位センサ7の検出水位値が給水タンク6の水位H(図1参)以上であれば、RO膜モジュール4への供給水W1の供給を停止するように加圧ポンプ2を制御した後、RO膜モジュール4の一次側を洗浄するためのフラッシング運転を実行する。なお、水位Hは、給水タンク6の基準貯留水位(満水水位)である。
【0051】
次に、制御部10による目標流量値及び回収率の設定について説明する。図2は、制御部10において目標流量値及び回収率を設定する場合の処理手順を示すフローチャートである。図2に示すフローチャートの処理は、水処理システム1の運転中において、繰り返し実行される。
【0052】
図2に示すステップST101において、制御部10は、第1フローチェッカ16から第1検出信号を受信したか否かを判定する。このステップST101において、制御部10により、第1検出信号を受信した(YES)と判定された場合に、処理はステップST102へ移行する。また、ステップST101において、制御部10により、第1検出信号を受信していない(NO)と判定された場合に、処理はステップST106へ移行する。
【0053】
ステップST102(ステップST101:YES判定)において、制御部10は、第2フローチェッカ19から第2検出信号を受信したか否かを判定する。このステップST102において、制御部10により、第2検出信号を受信した(YES)と判定された場合に、処理はステップST103へ移行する。また、ステップST102において、制御部10により、第2検出信号を受信していない(NO)と判定された場合に、処理はステップST106へ移行する。
【0054】
ステップST103(ステップST102:YES判定)において、制御部10は、内部タイマ(不図示)による計時Tのカウントがスタートしている場合には、計時Tをリセットする。薬剤(スケール抑制剤及び酸性剤)の正常な流通が検出された場合には、計時Tをカウントする必要がないからである。
【0055】
ステップST104において、制御部10は、RO膜モジュール4で製造される透過水W2の流量を、通常運転時の第1目標流量値に設定する。
ステップST105において、制御部10は、RO膜モジュール4の回収率を通常運転時の80%に設定する。
【0056】
このように、薬剤(スケール抑制剤及び酸性剤)の正常な流通が検出された場合には、RO膜モジュール4においてスケールの析出が抑制されるため、透過水W2の目標流量値及び回収率を通常運転時の値に設定する。ステップST105の後、本フローチャートの処理は終了する(ステップST101へリターンする)。
【0057】
ステップST106(ステップST101又はステップST102:NO判定)において、制御部10は、内部タイマによる計時Tのカウントがスタートしていなければ、計時Tのカウントをスタートさせる。
【0058】
ステップST107において、制御部10は、RO膜モジュール4で製造される透過水W2の流量を、通常運転時の第1目標流量値よりも低い第2目標流量値に設定する。
ステップST108において、制御部10は、RO膜モジュール4の回収率を通常運転時よりも低い60%に設定する。
【0059】
このように、薬剤(スケール抑制剤及び/又は酸性剤)の正常な流通が検出されない場合には、RO膜モジュール4の膜面へのスケールの析出が進行するため、透過水W2の目標流量値及び回収率を下げて運転する。これにより、RO膜モジュール4で製造される透過水W2の量は少なくなるが、RO膜モジュール4における膜の透水能力を維持することができる。
【0060】
ステップST109において、制御部10は、内部タイマのカウントする計時Tが予め設定された時間T以上か否かを判定する。このステップST109において、制御部10により、計時T≧時間Tである(YES)と判定された場合に、処理はステップST110へ移行する。また、ステップST109において、制御部10により、計時T<時間Tである(NO)と判定された場合に、本フローチャートの処理は終了する(ステップST101へリターンする)。
【0061】
ステップST110(ステップST109:YES判定)において、制御部10は、水位センサ7の検出水位値Wが水位H以上か否かを判定する。このステップST110において、制御部10により、検出水位値W≧水位Hである(YES)と判定された場合に、処理はステップST111へ移行する。また、ステップST110において、制御部10により、検出水位値W<水位Hである(NO)と判定された場合に、本フローチャートの処理は終了する(ステップST101へリターンする)。
【0062】
薬剤の正常な流通が検出されない状態が長時間継続すると、RO膜モジュール4の膜面へのスケールの析出が更に進行し、膜の透水能力が維持できなくなる。このため、内部タイマがカウントする計時Tが時間T以上となり、且つ給水タンク6が水位H以上であれば、フラッシング運転を実行する。フラッシング運転中は、RO膜モジュール4の運転、すなわち純水W4の製造が停止する。しかし、給水タンク6が水位H以上であれば、RO膜モジュール4の運転を停止しても、需要箇所への純水W4の供給に支障が少ないと考えられる。一方、内部タイマがカウントする計時Tが時間T以上となっても、給水タンク6が水位H未満であれば、需要箇所への純水W4の供給に支障が生じるおそれがあるため、フラッシング運転は実行しない。
【0063】
ステップST111(ステップST110:YES判定)において、制御部10は、内部タイマによる計時Tをリセットする。
【0064】
ステップST112において、制御部10は、フラッシング運転を実行する。フラッシング運転については後述する。これにより、本フローチャートの処理は終了する(ステップST101へリターンする)。
【0065】
次に、制御部10による流量フィードバック水量制御について説明する。図3は、制御部10において流量フィードバック水量制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。図3に示すフローチャートの処理は、水処理システム1の運転中において、繰り返し実行される。
【0066】
図3に示すステップST201において、制御部10は、透過水W2の目標流量値Q´を取得する。この目標流量値Q´は、図2に示すフローチャートのステップST104又はステップST107において設定された目標流量値である。
【0067】
ステップST202において、制御部10は、内部タイマ(不図示)による計時Tが制御周期である100ms以上か否かを判定する。このステップST202において、制御部10により、タイマによる計時Tが100ms以上(YES)と判定された場合に、処理はステップST203へ移行する。また、ステップST202において、制御部10により、内部タイマによる計時Tが100ms未満(NO)と判定された場合に、処理はステップST202へ戻る。
【0068】
ステップST203(ステップST202:YES判定)において、制御部10は、流量センサ8で検出された透過水W2の検出流量値Qを取得する。
【0069】
ステップST204において、制御部10は、ステップST203で取得した検出流量値(フィードバック値)QとステップST201で取得した目標流量値Q´との偏差がゼロとなるように、速度形デジタルPIDアルゴリズムにより操作量Uを演算する。なお、速度形デジタルPIDアルゴリズムでは、制御周期(100ms)毎に操作量の変化分を演算し、これを前回の操作量に加算することで今回の操作量を決定する。
【0070】
ステップST205において、制御部10は、操作量U、目標流量値Q´及び加圧ポンプ2の最大駆動周波数(50Hz又は60Hzの設定値)に基づいて、加圧ポンプ2の駆動周波数Fを演算する。
【0071】
ステップST206において、制御部10は、駆動周波数Fの演算値を、対応する電流値信号(4〜20mA)に変換する。
ステップST207において、制御部10は、変換した電流値信号をインバータ3に出力する。これにより本フローチャートの処理は終了する(ステップST201へリターンする)。
【0072】
次に、制御部10によるRO膜モジュール4の回収率制御について説明する。図4は、制御部10においてRO膜モジュール4の回収率制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。図4に示すフローチャートの処理は、水処理システム1の運転中において、繰り返し実行される。
【0073】
図4に示すステップST301において、制御部10は、透過水W2の目標流量値Q´を設定する。この目標流量値Q´は、図2に示すフローチャートのステップST104又はステップST107において設定された目標流量値である。
【0074】
ステップST302において、制御部10は、RO膜モジュール4の回収率Rを設定する。この回収率Rは、図2に示すフローチャートのステップST105又はステップST108において設定された回収率である。
【0075】
ステップST303において、制御部10は、ステップST301で設定した目標流量値Q´及びステップST302で設定した回収率Rに基づいて、濃縮水W3の排水流量Qを、上述した式(1)により演算する。
【0076】
ステップST304において、制御部10は、濃縮水W3の実際排水流量QがステップST303で演算した排水流量Qとなるように第1排水弁11〜第3排水弁13を制御する。これにより、本フローチャートの処理は終了する(ステップST301へリターンする)。
【0077】
次に、制御部10によるフラッシング運転について説明する。図5は、制御部10においてフラッシング運転を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。図5に示すフローチャートの処理は、図1に示すフローチャート(ステップST112)のサブルーチンとして実行される。
【0078】
図5に示すステップST401において、制御部10は、透過水弁5を閉状態に制御する。
ステップST402において、制御部10は、濃縮水還流弁20を閉状態に制御する。
【0079】
ステップST403において、制御部10は、第1排水弁11〜第3排水弁13のうち、所定の弁を開状態に制御する。開状態に制御する排水弁の数は、効果的なフラッシングを行うのに必要な供給水W1の流量に基づいて、予め決定される。
【0080】
ステップST404において、制御部10は、フラッシング運転における駆動周波数Fを取得する。この駆動周波数Fは、例えば、予めメモリに記憶された設定値である。
ステップST405において、制御部10は、駆動周波数Fの値を、対応する電流値信号(4〜20mA)に変換する。
【0081】
ステップST406において、制御部10は、変換した電流値信号をインバータ3に出力する。これにより、本フローチャートの処理は終了する。なお、インバータ3は、入力された電流値信号に対応する周波数に変換された駆動電力を加圧ポンプ2に供給する。その結果、加圧ポンプ2は、インバータ3から入力された駆動周波数に応じた回転速度で駆動される。
【0082】
上述した透過水弁5、濃縮水還流弁20、第1排水弁11〜第3排水弁13及び加圧ポンプ2の制御により、RO膜モジュール4の一次側に供給された供給水W1は、RO膜の表面を流れ、フラッシング洗浄排水として濃縮水排出ラインL4から排出される。また、RO膜モジュール4の二次側ポートから送出された透過水W2は、安全弁9の開弁動作により透過水返送ラインL6を流通して供給水ラインL1に返送される。
【0083】
なお、フラッシング運転は、濃縮水排出ラインL4から排出される洗浄排水の電気伝導率又はシリカ濃度が、透過水W2の1.1倍以下となるまで継続する。
【0084】
上述した実施形態に係る水処理システム1によれば、例えば、以下のような効果が得られる。
【0085】
本実施形態に係る水処理システム1において、制御部10は、薬剤の正常な流通が検出されない場合に、RO膜モジュール4の回収率を下げて、濃縮水W3の実際排水流量が目標排水流量よりも多い排水流量となるように第1排水弁11〜第3排水弁13を制御する。これにより、RO膜モジュール4で製造される透過水W2の量は少なくなるが、RO膜モジュール4の膜面へのスケールの析出を極力少なくすることができる。従って、本実施形態に係る水処理システム1によれば、薬注ポンプに異常が発生したり、薬剤タンクの薬剤が不足したりする等の理由により、供給水W1に正常に薬剤を供給できない場合においても、RO膜モジュール4における膜の透水能力を維持することができる。
【0086】
また、制御部10は、薬剤の正常な流通が検出された場合には、RO膜モジュール4の回収率を通常運転時の回収率に戻して、濃縮水W3の実際排水流量が第1目標排水流量となるように第1排水弁11〜第3排水弁13を制御する。これによれば、薬注ポンプの異常が解消された場合や、薬剤タンクの薬剤が補充された場合において、透過水W2の流量を速やかに通常運転時のレベルに戻すことができる。
【0087】
また、制御部10は、RO膜モジュール4の運転中において、流量フィードバック水量制御を実行する。このため、回収率を下げた状態でも、安定した流量の透過水W2を給水タンク6へ補給することができる。
【0088】
また、制御部10は、薬剤の正常な流通が検出されない状態が時間T以上継続した場合に、水位センサ7の検出水位値が給水タンク6の水位H(基準貯留水位)以上であれば、RO膜モジュール4への供給水W1の供給を停止した後、RO膜モジュール4の一次側を洗浄するためのフラッシング運転を実行する。フラッシング運転では、RO膜モジュール4内における濃縮水W3が供給水W1で置換されながら、膜表面が洗浄される。従って、需要箇所への純水W4の供給を維持しつつ、RO膜モジュール4の膜表面を清浄な状態に復帰させることができる。
【0089】
また、制御部10は、薬剤の正常な流通が検出されない状態が時間T以上継続した場合であっても、水位センサ7の検出水位値が給水タンク6の水位H未満であれば、RO膜モジュール4への供給水W1の供給を継続し、フラッシング運転を実行しない。このため、需要箇所への純水W4の供給を極力維持することができる。
【0090】
また、本実施形態に係る水処理システム1において、透過水返送ラインL6には、安全弁9が設けられている。このため、フラッシング運転において、透過水返送ラインL6の管内圧力が設定された圧力以上となった場合に、安全弁9を介して高圧の透過水W2を低圧側(加圧ポンプ2の一次側)に逃がすことができる。従って、過剰な背圧によるRO膜の破損を防止することができる。
【0091】
また、本実施形態に係る水処理システム1において、制御部10は、フラッシング運転を実行する際に、濃縮水還流ラインL5を濃縮水W3が流通しないように濃縮水還流弁20を閉状態に制御し、且つ透過水ラインL2を透過水W2が流通しないように透過水弁5を閉状態に制御する。このため、供給水W1の濃縮を抑制しながら、供給水W1を洗浄水として有効利用することができる。
【0092】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0093】
例えば、本実施形態では、RO膜モジュール4の運転中に、流量フィードバック水量制御を実行する例について説明した。これに限らず、純水W4の使用量が少ない場合や、透過水W2の流量を一定に保つ必要がない場合等においては、流量フィードバック水量制御を実行しなくてもよい。例えば、予め設定された駆動周波数に固定して、加圧ポンプ2を駆動するようにしてもよい。
【0094】
本実施形態では、供給水W1に、薬剤としてスケール抑制剤及び酸性剤を添加する例について説明した。これに限らず、供給水W1に、薬剤としてスケール抑制剤又は酸性剤のいずれかを添加する構成としてもよいし、更に他の薬剤を添加する構成としてもよい。
【0095】
本実施形態に係る水処理システム1において、RO膜モジュール4の前段に、スケール抑制剤及び酸性剤の添加に替えて、前処理装置として硬水軟化装置を設けた構成としてもよい。その場合、硬水軟化装置により前処理された供給水(軟水)W1に、薬剤としてアルカリ剤(NaOH,KOH等)を添加して、供給水W1をpH8以上とする。これにより、供給水W1に含まれる遊離炭酸がイオン化し、炭酸水素イオンや炭酸イオンに変化する。このため、後段のRO膜モジュール4において、イオン化した遊離炭酸(炭酸水素イオンや炭酸イオン)を除去することができる。従って、更に純度の高い純水W4を製造することができる。
【0096】
また、RO膜モジュール4の前段に硬水軟化装置を設けた構成において、アルカリ剤の供給装置に異常が発生すると、供給水W1に遊離炭酸がリークして、水質が悪化することが考えられる。このため、水質の悪化を検知した場合に、RO膜モジュール4の回収率を下げることにより、供給水W1中にリークした遊離炭酸の量を減らすことができる。
【0097】
また、供給水W1に含まれるシリカの溶解度を高めるために、供給水W1にアルカリ剤を添加することがある。この場合、アルカリ剤の供給装置に異常が発生すると、シリカの溶解度が下がるため、RO膜モジュール4の膜面におけるシリカ系のスケールの析出が懸念される。この場合においても、RO膜モジュール4の回収率を下げることにより、供給水W1中にリークしたシリカの量を減らすことができる。
【0098】
また、本実施形態に係る水処理システム1では、回収率制御において、第1排水弁11〜第3排水弁13を選択的に開閉することにより、濃縮水W3の排水流量を段階的に調節する例について説明した。これに限らず、濃縮水排出ラインL4を分岐させずに、当該濃縮水排出ラインL4に比例制御弁を設けた構成としてもよい。この場合、制御部10から電流値信号(例えば、4〜20mA)を比例制御弁に送信して弁開度を制御することにより、濃縮水W3の排水流量を調節することができる。
【0099】
また、比例制御弁を設けた構成において、濃縮水排出ラインL4に流量センサを設けた構成としてもよい。この場合は、流量センサで検出された流量値を、制御部10にフィードバック値として入力する。これにより、濃縮水W3の実際排水流量をより正確に制御することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 水処理システム
2 加圧ポンプ(供給水流通手段)
3 インバータ
4 RO膜モジュール(膜分離装置)
6 給水タンク(貯留タンク)
7 水位センサ(水位検出手段)
8 流量センサ
9 安全弁
10 制御部
11 第1排水弁(排水弁)
12 第2排水弁(排水弁)
13 第3排水弁(排水弁)
14 第1薬剤タンク
15 第1薬注ポンプ(薬剤供給手段)
16 第1フローチェッカ(薬剤流通検出手段)
17 第2薬剤タンク
18 第2薬注ポンプ(薬剤供給手段)
19 第2フローチェッカ(薬剤流通検出手段)
20 濃縮水還流弁
L1 供給水ライン
L2 透過水ライン
L3 濃縮水ライン
L4 濃縮水排出ライン
L5 濃縮水還流ライン
L6 透過水返送ライン
L7 給水ライン
L8 第1薬剤供給ライン
L9 第2薬剤供給ライン
W1 供給水
W2 透過水
W3 濃縮水
W4 純水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給水を透過水と濃縮水とに分離する膜分離装置と、
供給水を前記膜分離装置に供給する供給水ラインと、
前記供給水ラインを介して供給水を前記膜分離装置に向けて流通させる供給水流通手段と、
薬剤を貯留する薬剤タンクと、
前記薬剤タンクと前記供給水ラインとの間を接続する薬剤供給ラインと、
前記薬剤タンクに貯留された薬剤を前記薬剤供給ラインを介して前記供給水ラインに向けて供給する薬剤供給手段と、
前記薬剤供給ラインにおける薬剤の流通を検出する薬剤流通検出手段と、
前記膜分離装置から排出される濃縮水の排水流量を調節可能な排水弁と、
前記薬剤流通検出手段において薬剤の正常な流通が検出されない場合に、濃縮水の実際排水流量が目標排出流量よりも多い排水流量となるように前記排水弁を制御する制御部と、
を備える水処理システム。
【請求項2】
前記膜分離装置から送出された透過水を貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンクの水位を検出する水位検出手段と、を備え、
前記制御部は、前記薬剤流通検出手段において薬剤の正常な流通が検出されない状態が予め設定された時間以上継続する場合に、前記水位検出手段の検出水位が予め設定された基準貯留水位以上であれば、前記膜分離装置への供給水の供給を停止するように前記供給水流通手段を制御した後、前記膜分離装置の一次側を洗浄するためのフラッシング運転を実行する、
請求項1に記載の水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−86041(P2013−86041A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230317(P2011−230317)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】