説明

水処理プラントの運転支援システム

【課題】上下水道プラントに設けられている設備の運転中に、異常の発生を監視できる運転支援システムを提供することにある。
【解決手段】本実施形態によれば、水処理プラントに適用する運転支援システムは、水源からの水に対して浄水処理である水処理を実行し、複数の調節弁を含む調節弁設備と制御手段とを有する。前記制御手段は、前記各調節弁を同一条件で運転しているときに前記各調節弁の動作状態を比較し、当該比較結果に基づいて前記調節弁設備が正常であるか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、上下水道プラントなどの水処理プラントの運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上下水道プラントでは、貯水池から配管を通じて、水を配水池などに導水するための複数のポンプからなるポンプ設備や、通水の流量を調節するための複数の流量調節弁からなる弁設備が設けられている。
【0003】
このようなポンプ設備や弁設備は、同一定格の複数のポンプや複数の流量調節弁からなり、同一条件で運転されている。しかしながら、運転中に、各種の環境条件の変動などにより、ポンプ設備や弁設備に異常が発生すると、同一条件で運転は困難となる。
【0004】
従来では、電気製品の異常を監視し、異常が発生する当該異常情報を通知する機能を有する異常監視装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−362383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上下水道プラントでは、複数のポンプからなるポンプ設備や、複数の流量調節弁からなる弁設備が設けられている。これらの設備に異常が発生すると、同一条件での運転が困難となり、プラントの各種プロセスに障害が起きる可能性が高くなる。従来では、電気製品の異常を監視する異常監視装置が提案されているが、上下水道プラントには適用できない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上下水道プラントに設けられている設備の運転中に、異常の発生を監視できる運転支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態によれば、水処理プラントに適用する運転支援システムは、雨水や汚水の処理を実行し、雨水および汚水の滞水池用の複数の流入ゲートを含む流入ゲート設備を有する下水処理プラントに適用する運転支援システムにおいて、前記各流入ゲートを同一条件で運転しているときに前記各流入ゲート間の動作状態を比較し、当該比較結果に基づいて前記流入ゲート設備が正常であるか否かを判定する制御手段を具備した構成である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に関する上水道プラントの構成を示す図。
【図2】第1の実施形態に関する導水プロセスを示す図。
【図3】第1の実施形態に関する導水ポンプの回転数の変化と電動機の巻き線温度の変化の関係を示す図。
【図4】第1の実施形態に関する吐出弁のリミットスイッチの出力信号の変化を示す図。
【図5】第2の実施形態に関するろ過プロセスを示す図。
【図6】第2の実施形態に関する流量調節弁の弁開度と流量との関係を示す図。
【図7】第3の実施形態に関する表洗プロセスを示す図。
【図8】第4の実施形態に関する逆洗プロセスを示す図。
【図9】第5の実施形態に関する返流プロセスを示す図。
【図10】第6の実施形態に関する浄水の送配水プロセスを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面を参照して、実施形態を説明する。
【0011】
[第1の実施形態]
以下、図1から図4を参照して、第1の実施形態に関する水処理プラントの運転支援システムを説明する。
【0012】
(水処理プラントの構成)
本実施形態は、水処理プラントとして、上水道プラントを説明する。図1は、上水道プラントの浄水プロセスを説明するための図である。
【0013】
上水道プラントは、水源(以下貯水池と表記する場合がある)として、例えばダム1または河川30から原水を導水する。貯水池1からの原水は、配管6を経由して着水井5に導水される。配管6には、流量計2及び流量調節弁3が設けられている。流量調節弁3は、アクチュエータ4の動作により弁が開閉して、通水の流量を調節する。なお、図1において、「X」は流量計などの各種センサを意味し、「M」はアクチュエータ又はモータなどの駆動部を意味する。
【0014】
一方、河川30からの原水は、開閉弁31を有する沈砂池32に導水される。この沈砂池32にはスクリーン33が設けられて、導水された原水はろ過される。さらに、ポンプ井34から導水ポンプ35により、着水井5に導水される。ポンプ井34と着水井5を結合する配管には、流量調節弁36及び流量計37が設けられている。
【0015】
着水井5に導水された水は、沈殿池11に送水される。沈殿池11の前段には、混和池9及びフロック形成池10が配置されている。着水井5と混和池9とを結合する配管には、流量計7及び流量調節弁8が設けられている。
【0016】
一方、着水井5には、沈殿池11からの返流水が導水される。沈殿池11からの返流水は、流量調節弁38により通水を調節されて汚泥池39に送水される。さらに、返流水は、汚泥池39から汚水池40に送水されて、この汚水池40から返流ポンプ41により着水井5に返流される。汚泥池39では、汚泥は脱水されて処分される。着水井5と汚水池40とを結合する配管には、流量調節弁42及び流量計43が設けられている。
【0017】
次に、沈殿池11に導水された水は、ろ過池12でろ過された後に、浄水池13に送水される。ろ過池12と浄水池13とを結合する配管には、流量調節弁50,52及び流量計51が設けられている。浄水池13に導水された水の上面からは、表洗ポンプ46により、ろ過池12に返流されている。この表洗ポンプ46と、ろ過池12とを結合する配管には、流量調節弁47〜49が設けられている。
【0018】
さらに、浄水池13は、逆流ポンプ53により導水された水の一部が、ろ過池12に返流される。逆流ポンプ53と、ろ過池12とを結合する配管には、流量計54及び流量調節弁55,56が設けられている。ろ過池12は、流量調節弁44を経由して、導水された水の一部が汚水池40に返流される。また、逆流ポンプ53により、ろ過池12に返流された水の一部は、流量調節弁45を経由して汚水池40に返流される。
【0019】
浄水池13により浄水化された水は、送水ポンプ20により配管23を経由して、配水池16に送水される。配管23には、流量調節弁(または吐出弁)15,21及び流量計22が設けられている。配水池16は、水位を計測する水位計17や水質センサ18が設けられている。配水池16からの浄水は、流量調節弁19により制御されて配水される。一方、浄水池13により浄水化された水は、配水ポンプ24により配管27を経由して配水される。配管27には、流量調節弁(または吐出弁)25及び流量計26が設けられている。
【0020】
このような上水道プラントの運転支援システムとして、コンピュータを主要素とするコントローラ100が設けられている。コントローラ100は、各種センサ群から計測信号を入力して流量、水位、汚泥量、水質等を検知すると共に、流量調節弁やポンプを制御する。
【0021】
(運転支援システム)
図2は、前述の上水道プラントにおいて、水源(河川)である貯水池30からポンプ井34、さらに着水井5に導水される導水プロセスを示す図である。このプロセスを具体例として、本実施形態に関するプラントの運転支援システムの動作を説明する。
【0022】
図2に示すように、導水プロセスは、貯水池30には流量調節弁37dが接続されて、この流量調節弁37dを介してポンプ井34に導水する構造となっている。貯水池30は、ポンプ井34よりも土木構造的に高い位置関係にある。貯水池30からの水圧は、ポンプ井34の水圧よりも大きく、流量調節弁37dを開くことで、貯水池30からポンプ井34へ自然流下によって導水される構造である。
【0023】
ポンプ井34には、複数の導水ポンプ35a〜35cが接続されている。これらの各導水ポンプ35a〜35cにより、ポンプ井34から、土木構造的に高い位置にある着水井5へ送水される構造になっている。また、導水ポンプ35a〜35cには、それぞれ吐出弁36a〜36cが接続されており、着水井5からの逆流を防ぐ構造となっている。
【0024】
本実施形態の運転支援システム(コントローラ100)は、導水ポンプ35a〜35cを同一条件で運転する。なお、導水ポンプ35a〜35cは、それぞれ同一定格のポンプであり、同一の消費電力で同一の吐出圧を発生できるものとする。
【0025】
図3(A)は、コントローラ100による送水流量の指令値変化に伴って、導水ポンプ35a〜35cの回転数が時刻と共に変化したときに、それぞれの導水ポンプ35a〜35cの電動機の巻き線温度の変化を示した図である。同図(B)は、導水ポンプ35a〜35cの回転数が時刻と共に変化する様子を示す。
【0026】
図3(B)に示すように、時刻T1でポンプ回転数の目標値が上昇すると、それに伴って、ポンプ電動機の消費電力が上昇する。結果として、同図(A)に示すように、ポンプ電動機の巻き線温度も上昇する。巻き線温度は、ポンプ回転数が一定の場合、徐々に一定の値に漸近して行く。但し、図3(B)に示すように、時刻T2でポンプ回転数の目標値が下降した場合は、それに伴い、ポンプ電動機の消費電力が減少し、ポンプ電動機の巻き線温度も下降する。
【0027】
本実施形態のコントローラ100は、図2に示すように、3台の導水ポンプ35a〜35cの全てを稼動して送水している場合、各ポンプに含まれる電動機が同一定格の同一構造であれば、同一の回転数で各ポンプを運転する。この同一条件での運転時には、ポンプ電動機の種々のパラメータ(巻き線温度、巻き線抵抗、軸受け温度、排気温度、振動、騒音など)の値は、ほぼ同じ値を取る。
【0028】
一方、3台の導水ポンプ35a〜35cを含むポンプ設備において、何らかの不具合が発生した場合には、同一条件で運転しているにもかかわらず、種々のパラメータが同一の値ではなくなる。図3(A)は、同一条件で運転している導水ポンプ35a〜35cの電動機巻き線の温度変化特性300,310,320を示す図である。
【0029】
図3(A)に示すように、導水ポンプ35aの温度変化特性300と、導水ポンプ35bの温度変化特性310は、ほぼ同等の変化を示している。しかし、導水ポンプ35cの温度変化320は、温度変化300,310とは異なる傾向を示している。
【0030】
コントローラ100は、導水ポンプ35a〜35cの電動機巻き線の温度変化特性300,310,320に基づいて、異なる傾向を示す導水ポンプ35cに、何らかの異常が発生していると、導水ポンプ設備の正常性を判定する。
【0031】
なお、本実施形態のように、3台以上の同一仕様の導水ポンプ35a〜35cを使用する場合には、コントローラ100は、いわゆる多数決理論(2 out of 3)を利用して、導水ポンプ設備の正常性を判定する。同一仕様の導水ポンプが2台の場合には、それぞれの導水ポンプの過去の運転情報の中で、同一条件で運転した時の情報を読み出し、それを用いることによって、異常が発生している導水ポンプの同定が可能となる。
【0032】
図4は、吐出弁36a〜36cのリミットスイッチから出力される信号の変化を示す図である。図4(A)は、吐出弁の弁が閉じていることを検出する弁全閉リミットスイッチの出力信号の変化を示す図である。同図(B)は、吐出弁の弁が開いていることを検出する弁全開リミットスイッチの出力信号の変化を示す図である。
【0033】
弁全閉リミットスイッチは、弁が開き始めると出力がOFFとなる。一方、弁全開リミットスイッチは、弁が全開すると出力がONになる。よって、弁全閉リミットスイッチがOFFとなってから、弁全開リミットスイッチはONするまでの時間Tが、弁の動作に必要な時間となる。
【0034】
図2に示すように、同一定格の各ポンプ35a〜35cに設置された同一定格の吐出弁36a〜36cは、全閉から全開までの動作時間、および全開から全閉までの動作時間は基本的に同一である。従って、コントローラ100は、3つの吐出弁36a〜36cの動作時間を比較することで、異常が発生した吐出弁を同定する。
【0035】
以上のようにして、本実施形態の運転支援システムのコントローラ100は、導水ポンプ35a〜35cの電動機の各種パラメータの変化に基づいて各ポンプを比較監視することにより、導水ポンプ設備の正常性を判定することができる。また、3つの吐出弁36a〜36cの動作時間を比較監視することで、異常が発生した吐出弁を判定することができる。このような異常判定結果を利用して、導水ポンプ設備において障害が発生したポンプの交換などを指示する運転支援情報を提供することが可能となる。
【0036】
[第2の実施形態]
図5は、第2の実施形態に関するろ過プロセスを示す図である。
【0037】
このろ過プロセスは、図5に示すように、処理水が、沈殿池11から送水路110を介して複数のろ過池12a〜12cに送水されるプロセスである。ろ過池12a〜12cでろ過処理された処理水は、流量調節弁50a〜50c及び流量計51a〜51cを通って、次の処理工程へと送られる。
【0038】
図6は、流量調節弁50a〜50cの弁開度と流量との関係を示す図である。
【0039】
通常では、流量調節弁の弁開度と流量との関係は、弁開度に対して流量は単調増加の関数となる。ここで、流量調節弁を挟む流路の圧力差が一定の場合には、同一定格の弁であれば同一の関数となる。従って、図5に示す3つの流量調節弁50a〜50cが、図6に示すような弁開度Oの場合、各弁の流入側と流出側の圧力差が同一であれば同一流量Qとなる。
【0040】
このような原理から、本実施形態のコントローラ100は、図5に示すろ過プロセスにおいて、流量調節弁50a〜50cの流量を比較し、この比較結果に基づいてろ過池12a〜12cを有する、ろ過プロセスの異常発生を同定することができる。具体的には、コントローラ100は、流量調節弁50a〜50cの弁開度値の異常発生、流量計51a〜51cの異常発生、あるいは配管の圧力損失などの異常発生を検出することができる。また、異常が生じたろ過工程と、他の工程との比較結果に基づいて、前記の異常発生を検出することも可能である。
【0041】
さらに、正常時の流量調節弁50a〜50cの弁開度と流量との関係を示す関数情報を予め保存しているデータベースを用意し、コントローラ100は、当該データベースを参照することで、流量調節弁50a〜50cなどの現在の動作状態との比較結果に基づいて、異常発生を検出することができる。
【0042】
[第3の実施形態]
図7は、第3の実施形態に関する表洗プロセスを示す図である。
【0043】
この表洗プロセスは、図7に示すように、ろ過池洗浄水槽(浄水池)13からの洗浄水を、洗浄水配管130を介して表洗ポンプ46a〜46cにより、ろ過池12a〜12cに送水するプロセスである。洗浄水は、表洗ノズル120a〜120cから、ろ過池12a〜12cの表面に散布されて、ろ過砂を洗浄する。洗浄後の洗浄水は、排水管400を介して排水池(汚水池)40に送られる。
【0044】
ここで、表洗ポンプ46a〜46cからなるポンプ設備は、ろ過池12a〜12cの規模がそれぞれ同等であれば、表洗ポンプ46a〜46cとして同定格の各ポンプを使用する。従って、本実施形態のコントローラ100は、3台の表洗ポンプ46a〜46cの全てを稼動して送水している場合、同一の回転数で各ポンプを運転する。
【0045】
ポンプ設備が正常であれば、この同一条件での運転時には、ポンプ電動機の種々のパラメータ(巻き線温度、巻き線抵抗、軸受け温度、排気温度、振動、騒音など)の値は、ほぼ同じ値を取る(図3を参照)。
【0046】
一方、ポンプ設備に何らかの不具合が発生した場合には、同一条件で運転しているにもかかわらず、種々のパラメータが同一の値ではなくなる。従って、コントローラ100は、同一条件で運転している各表洗ポンプ46a〜46cのパラメータを比較することにより、いずれのポンプに異常が発生したかを判定することができる。
【0047】
[第4の実施形態]
図8は、第4の実施形態に関する逆洗プロセスを示す図である。
【0048】
この逆洗プロセスは、図8に示すように、ろ過池洗浄水槽(浄水池)13からの洗浄水を、洗浄水配管131を介して逆洗ポンプ53a〜53cにより、ろ過池12a〜12cに送水するプロセスである。洗浄水は、ろ過池12a〜12cの処理水流出側から逆方向に供給されて、ろ過砂を洗浄する。洗浄後の洗浄水は、排水管400を介して排水池(汚水池)40に送られる。
【0049】
ここで、逆洗ポンプ53a〜53cからなるポンプ設備は、ろ過池12a〜12cの規模がそれぞれ同等であれば、逆洗ポンプ53a〜53cとして同定格の各ポンプを使用する。従って、本実施形態のコントローラ100は、3台の逆洗ポンプ53a〜53cの全てを稼動して送水している場合、同一の回転数で各ポンプを運転する。
【0050】
ポンプ設備が正常であれば、この同一条件での運転時には、ポンプ電動機の種々のパラメータ(巻き線温度、巻き線抵抗、軸受け温度、排気温度、振動、騒音など)の値は、ほぼ同じ値を取る(図3を参照)。
【0051】
一方、ポンプ設備に何らかの不具合が発生した場合には、同一条件で運転しているにもかかわらず、種々のパラメータが同一の値ではなくなる。従って、コントローラ100は、同一条件で運転している各逆洗ポンプ53a〜53cのパラメータを比較し、この比較結果に基づいて、いずれのポンプに異常が発生したかを判定することができる。
【0052】
[第5の実施形態]
図9は、第5の実施形態に関する返流プロセスを示す図である。
【0053】
この返流プロセスは、図9に示すように、表洗プロセスや逆洗プロセスによって発生した排水の一部を、着水井5に返流水として返流するプロセスである。ろ過池12a〜12cなどの洗浄により生じた排水は、通常では複数の排水池40a,40bに蓄えられる。排水池40a,40bに蓄えられた排水は、返流ポンプ41a,41bによって加圧されて、返流水弁(流量調節弁)42a,42bを介して着水井5に返流される。
【0054】
ここで、排水池40a,40bの規模がそれぞれ同等であれば、返流ポンプ41a,41bからなるポンプ設備、及び返流水弁42a,42bからなる弁設備は、それぞれ同定格のポンプや弁を使用する。従って、本実施形態のコントローラ100は、例えば、各返流ポンプ41a,41bの全てを稼動している場合、同一の回転数で各ポンプを運転する。
【0055】
ポンプ設備が正常であれば、この同一条件での運転時には、ポンプ電動機の種々のパラメータ(巻き線温度、巻き線抵抗、軸受け温度、排気温度、振動、騒音など)の値は、ほぼ同じ値を取る(図3を参照)。また、弁設備が正常であれば、返流水弁42a,42bの動作時間もほぼ同じ値となる。
【0056】
一方、ポンプ設備に何らかの不具合が発生した場合には、同一条件で運転しているにもかかわらず、種々のパラメータが同一の値ではなくなる。従って、コントローラ100は、同一条件で運転している各返流ポンプ41a,41bのパラメータを比較し、この比較結果に基づいて、いずれのポンプに異常が発生したかを判定することができる。また、コントローラ100は、同一条件で運転している各返流水弁42a,42bの動作時間を計測して比較し、この比較結果に基づいて、いずれの弁に異常が発生したかを判定することができる。
【0057】
[第6の実施形態]
図10は、第6の実施形態に関する浄水(上水)の送配水プロセスを示す図。
【0058】
浄水池13には、浄水処理された上水が蓄えられている。この送配水プロセスは、送水ポンプ20a,20bにより浄水池13からの上水を、吐出弁21a,21bを介して配水池16に送水する送水プロセスと、配水池16から送水された上水を需要家へ配水する配水プロセスとを含む。また、配水プロセスとしては、配水ポンプ24a,24bにより、浄水池13からの上水を加圧して、吐出弁25a,25bを介して需要家へ配水するプロセスがある。配水ポンプ24a,24bは、配水に必要な水圧に調整する機能を有する。
【0059】
ここで、送水ポンプ20a,20b及び配水ポンプ24a,24bは、上水の需要家の多様な水需要に対応するため、必要とする水量を同時運転するポンプの台数で制御することが多い。このため、送水ポンプ設備及び配水ポンプ設備はそれぞれ、同定格の複数のポンプを有する。本実施形態のコントローラ100は、送水ポンプ設備及び配水ポンプ設備の各ポンプを同一の回転数などの同一条件で運転している。
【0060】
送水ポンプ設備及び配水ポンプ設備が正常であれば、この同一条件での運転時には、各ポンプ電動機の種々のパラメータ(巻き線温度、巻き線抵抗、軸受け温度、排気温度、振動、騒音など)の値は、ほぼ同じ値を取る(図3を参照)。また、弁設備が正常であれば、吐出弁21a,21b及び25a,25bの動作時間もほぼ同じ値となる。
【0061】
一方、送水ポンプ設備及び配水ポンプ設備に何らかの不具合が発生した場合には、同一条件で運転しているにもかかわらず、種々のパラメータが同一の値ではなくなる。従って、コントローラ100は、同一条件で運転している送水ポンプ20a,20b及び配水ポンプ24a,24bのパラメータを比較することにより、この比較結果に基づいて、いずれのポンプに異常が発生したかを判定することができる。
【0062】
また、コントローラ100は、同一条件で運転している各吐出弁21a,21b及び25a,25bの動作時間を計測して比較し、この比較結果に基づいて、いずれの弁に異常が発生したかを判定することができる。
【0063】
以上のようにして本実施形態によれば、送水ポンプ設備、配水ポンプ設備及び弁設備の各ポンプや各弁の動作状態又は動作時間を比較監視することにより、設備の劣化や異常の発生を検出することが可能となる。従って、これらの比較情報結果や異常判定結果を、プラントのオペレータや保守員に提示することで、上水道プラントの運転制御のみではなく運転支援を行うことができるシステムを提供することが可能となる。
【0064】
[変形例]
前述の各実施形態では、図1に示す上水道プラントに適用する運転支援システムについて説明したが、当該運転支援システムは下水道プラントにも適用できる。
【0065】
即ち、具体的には、本変形例の運転支援システムは、下水道プラントの雨水および汚水滞水池に設けられた複数の流入ゲート設備において、各流入ゲート設備の電動機が同一定格の場合に、同一条件で運転する。この場合、運転支援システムは、各電動機の種々のパラメータ(巻き線温度、巻き線抵抗、軸受け温度、排気温度、振動、騒音など)の値を比較し、この比較結果に基づいて、いずれの電動機に異常が発生したかを判定する。
【0066】
同様にして、本変形例の運転支援システムは、下水道プラントの雨水および汚水滞水池を含む雨水滞水池用の返送水ポンプ設備において、同一条件で運転している各ポンプ電動機の種々のパラメータ(巻き線温度、巻き線抵抗、軸受け温度、排気温度、振動、騒音など)の値を比較し、この比較結果に基づいて、いずれのポンプ電動機に異常が発生したかを判定する。
【0067】
同様にして、本変形例の運転支援システムは、下水道プラントの雨水および汚水沈砂池に設けられた複数の流入ゲート設備において、同一条件で運転している各流入ゲート設備の電動機の種々のパラメータ(巻き線温度、巻き線抵抗、軸受け温度、排気温度、振動、騒音など)の値を比較し、この比較結果に基づいて、いずれの電動機に異常が発生したかを判定する。
【0068】
同様にして、本変形例の運転支援システムは、下水道プラントの雨水および汚水沈砂池に設けられた複数の沈砂かき揚げ機において、同一条件で運転している各沈砂かき揚げ機の電動機の種々のパラメータ(巻き線温度、巻き線抵抗、軸受け温度、排気温度、振動、騒音など)の値を比較し、この比較結果に基づいて、いずれの電動機に異常が発生したかを判定する。
【0069】
同様にして、本変形例の運転支援システムは、下水道プラントの雨水および汚水沈砂池に設けられた複数の除塵機において、同一条件で運転している各除塵機の電動機の種々のパラメータ(巻き線温度、巻き線抵抗、軸受け温度、排気温度、振動、騒音など)の値を比較し、この比較結果に基づいて、いずれの電動機に異常が発生したかを判定する。
【0070】
同様にして、本変形例の運転支援システムは、下水道プラントの雨水ポンプ井の雨水ポンプおよび汚水ポンプ井の汚水ポンプの各設備において、同一条件で運転している各ポンプの種々のパラメータ(巻き線温度、巻き線抵抗、軸受け温度、排気温度、振動、騒音など)の値を比較し、この比較結果に基づいて、いずれのポンプ電動機に異常が発生したかを判定する。
【0071】
同様にして、本変形例の運転支援システムは、下水道プラントの雨水および汚水の最初沈殿池において、同一条件で運転している最初沈殿池の各ポンプ電動機の種々のパラメータ(巻き線温度、巻き線抵抗、軸受け温度、排気温度、振動、騒音など)の値を比較し、この比較結果に基づいて、いずれのポンプ電動機に異常が発生したかを判定する。
【0072】
同様にして、本変形例の運転支援システムは、下水道プラントの雨水および汚水のばっ気槽において、同一条件で運転しているばっ気槽への給気を行う各ブロア電動機の種々のパラメータ(巻き線温度、巻き線抵抗、軸受け温度、排気温度、振動、騒音など)の値を比較し、この比較結果に基づいて、いずれのブロア電動機に異常が発生したかを判定する。
【0073】
また同様にして、本変形例の運転支援システムは、下水道プラントの雨水ポンプ井の雨水ポンプおよび汚水ポンプ井の汚水ポンプの各吐出弁において、同一条件で運転している各吐出弁が全開から全閉に至るまでの時間、全閉から全開に至るまでの時間、各弁開度に対する流量などを比較し、この比較結果に基づいて、いずれの吐出弁に異常が発生したかを判定する。
【0074】
同様にして、本変形例の運転支援システムは、下水道プラントのばっ気槽への給気を行うブロアに設置されて、同一条件で運転している同一定格の流量調節弁、吸気弁、排気弁、の弁が全開から全閉に至るまでの時間、全閉から全開に至るまでの時間、各弁開度に対する流量などを比較し、この比較結果に基づいて、いずれの弁に異常が発生したかを判定する。
【0075】
以上のようにして本変形例によれば、上水道プラントだけでなく下水道プラントに適用可能であり、下水道プラントに設けられているポンプ設備などの運転中に、比較監視方法により、異常の発生を監視できる運転支援システムを提供することができる。
【0076】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…貯水池(ダム)、2,…流量計、3,15…流量調節弁、4,14…アクチュエータ
5…着水井、6,23,27…配管、9…混和池、10…フロック形成池、
11…沈殿池、12,12a〜12c…ろ過池、13…浄水池(ろ過池洗浄水槽)、
16…配水池、17…水位計、20a,20b…送水ポンプ、
21a,21b…吐出弁、24a,24b…配水ポンプ、30…貯水池(河川)、
32…沈砂池、34…ポンプ井、35a〜35c…導水ポンプ、
36a〜36c…吐出弁、36d…流量調節弁、39…汚泥池、
40,40a,40b…排水池(汚水池)、41a,41b…返流ポンプ、
42a,42b…返流水弁、46a〜46c…表洗ポンプ、
50a〜50c…流量調節弁、51a〜51c…流量計、
53a〜53c…逆洗ポンプ、100…コントローラ、110…送水路、
120a〜120c…表洗ノズル、130…洗浄水配管、131…洗浄水配管、
400…排水管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水や汚水の処理を実行し、雨水および汚水の滞水池用の複数の流入ゲートを含む流入ゲート設備を有する下水処理プラントに適用する運転支援システムにおいて、
前記各流入ゲートを同一条件で運転しているときに前記各流入ゲート間の動作状態を比較し、当該比較結果に基づいて前記流入ゲート設備が正常であるか否かを判定する制御手段を具備したことを特徴とする運転支援システム。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記各流入ゲートの動作状態として、前記各流入ゲートに含まれる電動機の巻き線抵抗、巻き線温度、軸受け温度、排気温度、振動、騒音の測定値を前記各流入ゲート間で比較し、当該比較結果に基づいて前記流入ゲート設備が正常であるか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の運転支援システム。
【請求項3】
雨水や汚水の処理を実行し、雨水および汚水の沈砂池用の複数の流入ゲートを含む流入ゲート設備を有する下水処理プラントに適用する運転支援システムにおいて、
前記各流入ゲートを同一条件で運転しているときに前記各流入ゲート間に含まれる電動機の動作状態と比較し、当該比較結果に基づいて前記流入ゲート設備が正常であるか否かを判定する制御手段を具備したことを特徴とする運転支援システム。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記各流入ゲートの動作状態として、前記各流入ゲートに含まれる電動機の巻き線抵抗、巻き線温度、軸受け温度、排気温度、振動、騒音の測定値を前記各流入ゲート間で比較し、当該比較結果に基づいて前記流入ゲート設備が正常であるか否かを判定することを特徴とする請求項3に記載の運転支援システム。
【請求項5】
雨水や汚水の処理を実行し、雨水および汚水の沈砂池用の複数の沈砂かき揚げ機を含む沈砂かき揚げ機設備を有する下水処理プラントに適用する運転支援システムにおいて、
前記各沈砂かき揚げ機を同一条件で運転しているときに前記各沈砂かき揚げ機間の動作状態を比較し、当該比較結果に基づいて前記沈砂かき揚げ機設備が正常であるか否かを判定する制御手段を具備したことを特徴とする運転支援システム。
【請求項6】
前記制御手段は、
前記各沈砂かき揚げ機の動作状態として、前記各沈砂かき揚げ機に含まれる電動機の巻き線抵抗、巻き線温度、軸受け温度、排気温度、振動、騒音の測定値を前記各沈砂かき揚げ機間で比較し、当該比較結果に基づいて前記沈砂かき揚げ機設備が正常であるか否かを判定することを特徴とする請求項5に記載の運転支援システム。
【請求項7】
雨水や汚水の処理を実行し、雨水および汚水の沈砂池用の複数の除塵機を含む除塵機設備を有する下水処理プラントに適用する運転支援システムにおいて、
前記各除塵機を同一条件で運転しているときに前記各除塵機間の動作状態を比較し、当該比較結果に基づいて前記除塵機設備が正常であるか否かを判定する制御手段を具備したことを特徴とする運転支援システム。
【請求項8】
前記制御手段は、
前記各除塵機の動作状態として、前記各除塵機に含まれる電動機の巻き線抵抗、巻き線温度、軸受け温度、排気温度、振動、騒音の測定値を前記各除塵機間で比較し、当該比較結果に基づいて前記除塵機設備が正常であるか否かを判定することを特徴とする請求項7に記載の運転支援システム。
【請求項9】
雨水や汚水の処理を実行し、複数の調節弁を含む調節弁設備を有する下水処理プラントに適用する運転支援システムにおいて、
前記各調節弁を同一条件で運転しているときに前記各調節弁間の動作状態を比較し、当該比較結果に基づいて前記調節弁設備が正常であるか否かを判定する制御手段を具備したことを特徴とする運転支援システム。
【請求項10】
前記制御手段は、
前記各調節弁の動作状態として、前記各調節弁の全開から全閉に至るまでの時間、全閉から全開に至るまでの時間、各弁開度に対する流量の測定値を前記各調節弁間で比較し、当該比較結果に基づいて前記調節弁設備が正常であるか否かを判定することを特徴とする請求項9に記載の運転支援システム。
【請求項11】
雨水や汚水の処理を実行し、雨水および汚水のばっ気槽への給気を行なう複数のブロア電動機を含むばっ気槽設備を有する下水処理プラントに適用する運転支援システムにおいて、
前記各ブロア電動機を同一条件で運転しているときに前記各ブロア電動機間の動作状態を比較し、当該比較結果に基づいて前記ばっ気槽設備が正常であるか否かを判定する制御手段を具備したことを特徴とする運転支援システム。
【請求項12】
前記制御手段は、
前記各ブロア電動機の動作状態として、前記各ブロア電動機の巻き線抵抗、巻き線温度、軸受け温度、排気温度、振動、騒音の測定値を前記各ブロア電動機間で比較し、当該比較結果に基づいて前記ばっ気槽設備が正常であるか否かを判定することを特徴とする請求項11に記載の運転支援システム。
【請求項13】
雨水や汚水の処理を実行し、雨水および汚水のばっ気槽への給気を行なうブロアに設置されており、給気量の調整を行うための流量調節弁、吸気弁、排気弁の各ばっ気槽弁を含むばっ気槽設備を有する下水処理プラントに適用する運転支援システムにおいて、
前記各ばっ気槽弁を同一条件で運転しているときに前記各ばっ気槽弁間の動作状態を比較し、当該比較結果に基づいて前記調節弁設備が正常であるか否かを判定する制御手段を具備したことを特徴とする運転支援システム。
【請求項14】
前記制御手段は、
前記各ばっ気槽弁の動作状態として、前記各ばっ気槽弁の全開から全閉に至るまでの時間、全閉から全開に至るまでの時間、各弁開度に対する流量の測定値を前記各調節弁間で比較し、当該比較結果に基づいて前記調節弁設備が正常であるか否かを判定することを特徴とする請求項13に記載の運転支援システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−99743(P2013−99743A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−281480(P2012−281480)
【出願日】平成24年12月25日(2012.12.25)
【分割の表示】特願2011−168333(P2011−168333)の分割
【原出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】