説明

水処理方法及び水処理システム

【課題】供給水に酸を添加することなく、または酸の添加量を最小限に止めながら、逆浸透膜でのシリカ系及び炭酸カルシウム系スケールの発生を同時に抑制することのできる水処理方法及び水処理システムを提供すること。
【解決手段】シリカ及び硬度成分を含む供給水W1にスケール分散剤を添加する分散剤添加装置12と、スケール分散剤が添加された供給水W1を透過水W2と濃縮水W3とに分離する第1の逆浸透膜モジュール2と、第1の逆浸透膜モジュール2で分離した透過水を脱気処理する気体分離膜モジュールとを含み、前記第1の逆浸透膜モジュール2で分離した濃縮水W3のランゲリア指数を0.3以下、かつシリカ濃度を150mgSiO/L以下に保って分離操作するように構成されている水処理システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透膜モジュールを用いた水処理方法及び水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜を用いた精製水の製造では、安定した透過水量(造水量)を確保するため、膜の一次側でのファウリングやスケールの発生を防止することが肝要である。スケールには、炭酸カルシウムを主体とするものと、シリカを主体とするものに大別されるが、いずれの発生であっても透過水量の減少を招く。
シリカ系スケールの発生を防止するために、濃縮水のpHを6以下、かつシリカ濃度を200〜300mgSiO/Lに保つ方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3187629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記方法は、pH調整のために供給水に対して恒常的に酸を添加する必要があるため、造水コストが増加しやすいという問題があった。また、供給水に対して過剰に酸を添加すると、供給水中の炭酸水素イオン及び炭酸イオンが遊離炭酸(溶存炭酸ガス)に変化することがある。この場合、遊離炭酸は、逆浸透膜を透過してしまうため、精製水の純度が低下するという問題があった。
そこで、供給水に酸を添加することなく、または酸の添加量を最小限に止めながら、逆浸透膜でのシリカ系及び炭酸カルシウム系スケールの発生を同時に抑制することのできる精製水製造に対する強い技術的要請がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、供給水に酸を添加することなく、または酸の添加量を最小限に止めながら、逆浸透膜でのシリカ系及び炭酸カルシウム系スケールの発生を同時に抑制することのできる水処理方法及び水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る水処理方法は、シリカ及び硬度成分を含む供給水を精製するための水処理方法であって、供給水にスケール分散剤を添加する分散剤添加工程と、スケール分散剤が添加された処理水を第1の逆浸透膜モジュールで透過水と濃縮水とに分離する第1の逆浸透膜分離工程と、第1の逆浸透膜分離工程の透過水を気体分離膜モジュールで脱気処理する脱気処理工程と、を含み、逆浸透膜分離工程では、濃縮水のランゲリア指数を0.3以下、かつシリカ濃度を150mgSiO/L以下に保って分離操作することを特徴としている。
【0007】
また、本発明に係る水処理システムは、シリカ及び硬度成分を含む供給水を精製するための水処理システムであって、供給水にスケール分散剤を添加する分散剤添加装置と、スケール分散剤が添加された処理水を透過水と濃縮水とに分離する第1の逆浸透膜モジュールと、前記第1の逆浸透膜モジュールで分離した透過水を脱気処理する気体分離膜モジュールと、を含み、前記第1の逆浸透膜モジュールで分離した濃縮水のランゲリア指数を0.3以下、かつシリカ濃度を150mgSiO/L以下に保って分離操作するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の水処理方法及び水処理システムによれば、第1の逆浸透膜モジュールで除去できない遊離炭酸等の溶存ガスを、後段の気体分離膜モジュールで透過水から脱気することにより、気体分離膜(脱気膜)を通って得られる精製水(透過水)の純度が高められ、品質が向上する。
また、供給水にスケール分散剤を添加することにより、前段の第1の逆浸透膜モジュールで膜分離処理される際における、炭酸カルシウム系スケールの膜面付着を抑制し、高い水回収率(例えば、70%以上)を達成することができる。
また、濃縮水のランゲリア指数を0.3以下、かつシリカ濃度を150mgSiO/L以下に保って、第1の逆浸透膜モジュールで分離操作するので、濃縮水のシリカ濃度が溶解度を超えたとしても、シリカ系スケールのRO膜へ析出を抑制できる。
したがって、供給水に酸を添加することなく、または酸の添加量を最小限に止めながら、逆浸透膜でのシリカ系及び炭酸カルシウム系スケールの発生を同時に抑制することができる。この結果、精製水の純度を損なうことなく、所期の造水量を確保することができる。
【0009】
また、本発明に係る水処理方法において、脱気処理工程の処理水を、電気脱イオンモジュールで脱イオン処理する脱イオン処理工程を含むこととしてもよい。
また、本発明に係る水処理システムにおいて、前記気体分離膜モジュールで脱気処理した処理水を脱イオン処理する、電気脱イオンモジュールを含むこととしてもよい。
【0010】
この場合、気体分離膜モジュールで脱気処理した処理水を、脱イオン処理してより高純度な精製水である脱イオン水とすることができ、精製水の品質が向上する。
また、電気脱イオンモジュールは、脱イオン性能を維持するための所謂再生が不要であるので、取り扱い性に優れ、かつランニングコストが廉価である。
【0011】
また、本発明に係る水処理方法において、脱気処理工程の処理水を、イオン交換樹脂混床塔で脱イオン処理する脱イオン処理工程を含むこととしてもよい。
また、本発明に係る水処理システムにおいて、前記気体分離膜モジュールで脱気処理した処理水を脱イオン処理する、イオン交換樹脂混床塔を含むこととしてもよい。
【0012】
この場合、気体分離膜モジュールで脱気処理した処理水を、脱イオン処理してより高純度な精製水である脱イオン水とすることができ、精製水の品質が向上する。
そして、本発明によれば、第1の逆浸透膜モジュールから送出された透過水中に、塩構成カチオンのみならず、負荷電性のRO膜を透過しやすい塩構成アニオンが残留したとしても、イオン交換樹脂混床塔でこれらの残留イオンを精度よく脱イオン処理して、脱イオン水の純度が十分に高められる。
【0013】
また、本発明に係る水処理方法において、前記気体分離膜モジュールで脱気処理した処理水を、陽イオン交換樹脂単床塔で脱イオン処理する脱イオン処理工程を含むこととしてもよい。
また、本発明に係る水処理システムにおいて、前記気体分離膜モジュールで脱気処理した処理水を脱イオン処理する、陽イオン交換樹脂単床塔を含むこととしてもよい。
【0014】
この場合、気体分離膜モジュールで脱気処理した処理水を、脱イオン処理してより高純度な精製水である脱イオン水とすることができ、精製水の品質が向上する。
詳しくは、第1の逆浸透膜モジュールにおけるRO膜のスキン層が負荷電性である場合、当該RO膜で分離操作された透過水は、塩構成アニオンの残留割合が少なく、塩構成カチオンの残留割合が多い。従って、陽イオン交換樹脂単床塔で、残留割合の多い塩構成カチオンを脱イオン処理することにより、精製水中における残留イオンが精度よく除去されて、純度の高い脱イオン水が製造可能となっている。
また、陽イオン交換樹脂単床塔は、イニシャルコストが廉価であるから、脱イオン水の品質を十分に確保しつつも、設備費用を削減できる。
【0015】
また、本発明に係る水処理方法において、前記気体分離膜モジュールで脱気処理した処理水を、更に第2の逆浸透膜モジュールで透過水と濃縮水とに分離する第2の逆浸透膜分離工程を含むこととしてもよい。
また、本発明に係る水処理システムにおいて、前記気体分離膜モジュールで脱気処理した処理水を更に透過水と濃縮水とに分離する、第2の逆浸透膜モジュールを含むこととしてもよい。
【0016】
この場合、第1の逆浸透膜モジュールで除去しきれなかった透過水中の残留イオンを、第2の逆浸透膜モジュールで精度よく除去するので、より高純度な精製水を製造可能である。
【0017】
また、本発明に係る水処理方法において、第2の逆浸透膜分離工程の透過水を、電気脱イオンモジュールで脱イオン処理する脱イオン処理工程を含むこととしてもよい。
また、本発明に係る水処理システムにおいて、前記第2の逆浸透膜モジュールで分離した透過水を脱イオン処理する、電気脱イオンモジュールを含むこととしてもよい。
【0018】
この場合、第2の逆浸透膜モジュールの透過水を、脱イオン処理してさらに高純度な精製水である脱イオン水とすることができ、精製水の品質が向上する。
また、電気脱イオンモジュールは、脱イオン性能を維持するための所謂再生が不要であるので、取り扱い性に優れ、かつランニングコストが廉価である。
【0019】
また、本発明に係る水処理方法において、第2の逆浸透膜分離工程の透過水を、イオン交換樹脂混床塔で脱イオン処理する脱イオン処理工程を含むこととしてもよい。
また、本発明に係る水処理システムにおいて、前記第2の逆浸透膜モジュールで分離した透過水を脱イオン処理する、イオン交換樹脂混床塔を含むこととしてもよい。
【0020】
この場合、第2の逆浸透膜モジュールの透過水を、脱イオン処理してさらに高純度な精製水である脱イオン水とすることができ、精製水の品質が向上する。
そして、本発明によれば、第2の逆浸透膜モジュールから送出された透過水中に、塩構成カチオンのみならず、負荷電性のRO膜を透過した塩構成アニオンが残留したとしても、イオン交換樹脂混床塔でこれらの残留イオンを精度よく脱イオン処理して、脱イオン水の純度が十分に高められる。
【0021】
また、本発明に係る水処理方法において、第1の逆浸透膜分離工程の透過水を、陽イオン交換樹脂単床塔で脱イオン処理する脱イオン処理工程を含むこととしてもよい。
また、本発明に係る水処理システムにおいて、前記第1の逆浸透膜モジュールの透過水を脱イオン処理する、陽イオン交換樹脂単床塔を含むこととしてもよい。
【0022】
この場合、第2の逆浸透膜モジュールの透過水を、脱イオン処理してさらに高純度な精製水である脱イオン水とすることができ、精製水の品質が向上する。
詳しくは、第2の逆浸透膜モジュールにおけるRO膜のスキン層が負荷電性である場合、当該RO膜で分離操作された透過水は、塩構成アニオンの残留割合が少なく、塩構成カチオンの残留割合が多い。従って、陽イオン交換樹脂単床塔で、残留割合の多い塩構成カチオンを脱イオン処理することにより、精製水中における残留イオンが精度よく除去されて、純度の高い脱イオン水が製造可能となっている。
また、陽イオン交換樹脂単床塔は、イニシャルコストが廉価であるから、脱イオン水の品質を十分に確保しつつも、設備費用を削減できる。
【0023】
また、本発明に係る水処理方法において、スケール分散剤は、ポリカルボン酸及びホスホン酸の混合物からなることとしてもよい。
また、本発明に係る水処理システムにおいて、前記スケール分散剤は、ポリカルボン酸及びホスホン酸の混合物からなることとしてもよい。
【0024】
ポリカルボン酸及びホスホン酸の混合物からなるスケール分散剤を用いることにより、炭酸カルシウム系スケールのRO膜面への付着を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の水処理方法及び水処理システムによれば、供給水に酸を添加することなく、または酸の添加量を最小限に止めながら、逆浸透膜でのシリカ系及び炭酸カルシウム系スケールの発生を同時に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る水処理システムの概略構成を示す図である。
【図2】第1実施形態の水処理システムの構成を詳細に示す図である。
【図3】第1実施形態に係るランゲリア指数監視装置の構成を説明する図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る水処理システムの概略構成を示す図である。
【図5】本発明の第3(第4)実施形態に係る水処理システムの概略構成を示す図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係る水処理システムの概略構成を示す図である。
【図7】第5実施形態の水処理システムの構成を詳細に示す図である。
【図8】本発明の第6実施形態に係る水処理システムの概略構成を示す図である。
【図9】本発明の第7(第8)実施形態に係る水処理システムの概略構成を示す図である。
【図10】水処理システムの参考例の構成を説明する図である。
【図11】図10の水処理システムに関する参考データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、図1〜図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る水処理システム1及び水処理方法について説明する。
図1は、第1実施形態の水処理システム1におけるフローの概略構成を示す図であり、図2及び図3は、第1実施形態の水処理システム1の構成を詳細に説明する図である。
【0028】
本実施形態の水処理システム1は、図1に示されるように、供給水W1を透過水W2と濃縮水W3とに分離する第1の逆浸透膜モジュール2と、第1の逆浸透膜モジュール2の透過水W2を脱気処理する気体分離膜モジュール3と、を含んでいる。また、水処理システム1は、供給水W1にpH調整剤を添加するpH調整剤添加装置4と、供給水W1にスケール分散剤を添加する分散剤添加装置12と、を含んでいる。
【0029】
この水処理システム1で精製される原水(供給水W1)は、シリカ及び硬度成分(カルシウムイオン及びマグネシウムイオン)を夾雑成分として含むものである。シリカは、本願においては、JIS K0101:1998「工業用水試験法」の「44.シリカ(SiO)」で規定された全シリカを意味する。
原水としては、例えば、工業用水、水道水、地下水(浅井戸水、深井戸水、湧水又は伏流水等)および地表水(河川水又は湖水等)等の淡水、若しくは工場排水又はこれらの任意の組み合わせによる混合水を処理対象とすることができる。
【0030】
また、水処理システム1は、図2に示すように、濃縮水W3のランゲリア指数を監視するランゲリア指数監視装置30と、濃縮水W3のシリカ濃度を監視するシリカ濃度監視装置40と、第1の逆浸透膜モジュール2の回収率を調整する回収率調整手段である濃縮水排水バルブ15と、を含んでいる。
【0031】
第1の逆浸透膜モジュール2は、特に制限はないが、膜表面に架橋全芳香族ポリアミドからなる負荷電性のスキン層が形成された逆浸透膜(以下、「RO膜」ともいう)を有しているものが好ましい。また、当該逆浸透膜は、濃度500mg/L、pH7.0、温度25℃の塩化ナトリウム水溶液を、操作圧力0.7MPa、回収率15%で供給したときの水透過係数が1.3×10−11・m−2・s−1・Pa−1以上、かつ、塩除去率が99%以上であるものが好ましい。このような逆浸透膜には、細孔がルーズな(水透過係数がより大きな)ナノ濾過膜も含まれる。
【0032】
ここで、操作圧力とは、JIS K3802−1995「膜用語」で定義される平均操作圧力である。操作圧力は、逆浸透膜モジュールの一次側の入口圧力と一次側の出口圧力との平均値を指す。
回収率とは、逆浸透膜モジュールへ供給される水(ここでは塩化ナトリウム水溶液)の流量(A)に対する透過水の流量(B)の割合(%)(すなわち、B/A×100)をいう。尚、上記の「回収率15%」とは、あくまでRO膜を規定するための一例(基準)として用いられる値であり、後述する第1の逆浸透膜モジュール2(第1逆浸透膜装置11)を運転する際の「回収率(水回収率)」とは異なる。
水透過係数は、透過水量[m/s]を膜面積[m]及び有効圧力[Pa]で除した値であり、逆浸透膜での水の透過性能を示す指標である。すなわち、水透過係数は、単位有効圧力を作用させたときに単位時間に膜の単位面積を透過する水の量を意味する。有効圧力は、JIS K3802−1995「膜用語」で定義され、操作圧力(平均操作圧力)から浸透圧差及び二次側圧力を差し引いた圧力である。
塩除去率は、膜を透過する前後の特定の塩類の濃度(ここでは塩化ナトリウム濃度)から計算される値であり、逆浸透膜での溶質の阻止性能を示す指標である。塩除去率は、逆浸透膜モジュールの入口濃度(C)および透過水の濃度(C)から、(1−C/C)×100により求められる。
【0033】
上述のような水透過係数及び塩除去率の条件を満たす逆浸透膜は、RO膜エレメントとして市販されている。RO膜エレメントとしては、例えば、東レ社製:型式名「TMG20−400」、ウンジン・ケミカル社製:型式名「RE8040−BLF」、日東電工社製「ESPA1」等を用いることができる。
【0034】
第1の逆浸透膜モジュール2は、単一又は複数のRO膜エレメントを備えており、該RO膜エレメントにより供給水W1を膜分離処理して、純度の高い精製水である透過水W2を製造するとともに、供給水W1の夾雑成分濃度が高まった濃縮水W3を製造する。RO膜エレメントの形状は、特に限定されず、例えばスパイラルエレメントの他、管形エレメント、中空糸エレメント、平板エレメント及びプリーツ形エレメントのいずれを用いてもよい。
【0035】
また、第1の逆浸透膜モジュール2には、RO膜の一次側に連通して配設され、供給水W1を該RO膜に供給する通水ライン5と、RO膜により供給水W1が濃縮されてなる濃縮水W3を系外へ排出する排水ライン6と、RO膜の二次側に連通して配設され、供給水W1が該RO膜を透過することにより濃縮水W3とは分離された純度の高い透過水W2を、次工程へ送出する通水ライン7と、が接続されている。
尚、本明細書でいう「ライン」とは、流路、経路、管路(配管)等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0036】
第1の逆浸透膜モジュール2の上流側には、加圧ポンプ10が設けられている。加圧ポンプ10は、通水ライン5における下流側の端部近傍に設けられており、供給水W1を加圧して、第1の逆浸透膜モジュール2に送出するように構成されている。
このように、水処理システム1には、加圧ポンプ10と、その下流側の第1の逆浸透膜モジュール2とを含む第1逆浸透膜装置11が設けられている。
【0037】
特に図示しないが、水処理システム1は、通水ライン7に設けられ、第1の逆浸透膜モジュール2から送出される透過水W2の流量を検出する流量センサと、加圧ポンプ10の回転数を出力周波数に応じて可変させるインバータと、流量センサからの流量検知信号に基づいて、インバータヘ指令信号を出力する流量制御部とを備えることが好ましい。この構成によれば、流量センサにより検出される透過水W2の流量に基づくフィードバック制御により、透過水W2の流量を一定に維持するように制御を行うことができる。また、水温の変動などで処理流量が変化するような場合であっても、加圧ポンプの回転数が流量制御部により自動的に調整されて、透過水W2の流量を一定に制御できる。
【0038】
通水ライン5には、図2に示すように、上流側から順に、pH調整剤添加装置4及び分散剤添加装置12が接続されている。
pH調整剤添加装置4は、第1の逆浸透膜モジュール2へ向けて流れる供給水W1に、pH調整剤を添加する装置である。このpH調整剤添加装置4は、pH調整剤である所定の酸性薬剤(例えば塩酸や硫酸)を、通水ライン5を流通する供給水W1に添加するように構成されている。
【0039】
分散剤添加装置12は、第1の逆浸透膜モジュール2へ向けて流れる供給水W1に、スケール分散剤を添加する装置である。この分散剤添加装置12は、スケール分散剤を、通水ライン5を流通する供給水W1に添加するように構成されている。分散剤添加装置12は、供給水W1に対してスケール分散剤を添加することにより、第1の逆浸透膜モジュール2における濃縮水W3中での炭酸カルシウム系スケールの析出(特にRO膜への析出)を抑制する。
【0040】
スケール分散剤の種類は、水溶性であれば特に限定されないが、好ましいものとしては、ポリカルボン酸及びホスホン酸の混合物を挙げることができる。ポリカルボン酸及びホスホン酸の混合物からなるスケール分散剤は、例えばBWA WATER ADDITIVES社から商品名「フロコン260」(フロコン:登録商標)として市販されている。この商品は、前記混合物の33〜37重量%水溶液である。そして、この水溶液を供給水W1に対して1〜5mg/L程度添加することにより、炭酸カルシウム系スケールのRO膜面への付着を効果的に抑制することができる。
【0041】
尚、本実施形態のように、酸性薬剤(pH調整剤)とスケール分散剤を併用する場合には、酸型のスケール分散剤を使用すると、酸性薬剤の使用量を抑制することができる。酸型のスケール分散剤としては、前述のもの以外に、例えばポリスルホン酸等を用いることができる。
【0042】
気体分離膜モジュール3は、液体を透過させずに、溶存ガス(気体)Gを透過させる性質の気体分離膜を備えている。この気体分離膜は、例えば表面にスキン層を有する中空糸膜を複数備え、これら中空糸膜の管外を流通する透過水W2から、真空(減圧)状態とされた管内へと炭酸ガス、酸素ガス等の溶存ガスGを脱気するように構成されている。このような気体分離膜モジュールとしては、例えば中空糸膜がPMP(ポリメチルペンテン)からなる外部灌流式(外圧型)の脱炭酸膜(脱気膜)モジュールを用いることができる。市販の気体分離膜モジュールとしては、例えば、DIC社製:製品名「SEPAREL EF−002A−P」,「SEPAREL EF−040P」等が挙げられる。
【0043】
また、気体分離膜モジュール3には、気体分離膜の上流側に配設され、透過水W2を該気体分離膜に供給する通水ライン7と、真空ポンプ等の減圧手段(不図示)に連結され、気体分離膜により透過水W2から分離した溶存ガスGを排出する通気ライン8と、気体分離膜の下流側に配設され、透過水W2から溶存ガスGが分離された処理水W4を次工程へ送出する通水ライン9と、が接続されている。
【0044】
さて、上述の排水ライン6には、第1の逆浸透膜モジュール2の回収率を変更可能な回収率調整手段としての濃縮水排水バルブ15が設けられている。
上述したように、第1の逆浸透膜モジュール2の回収率は、下記式(1)により求められる。
回収率[%]=透過水流量/(透過水流量+排水流量)×100=透過水流量/(給水流量)×100・・・(1)
本実施形態においては、回収率の式(1)における排水流量は、濃縮水W3の流量に相当する。給水流量は、供給水W1の流量に相当する。給水流量は、透過水流量が一定の場合、回収率から求めることもできる。尚、給水流量は、通水ライン5に流量センサ(不図示)を設けて計測してもよい。
【0045】
第1逆浸透膜装置11は、このような回収率を所定範囲に設定して運転される。濃縮水W3のシリカ濃度が溶解度を超えるとRO膜面にシリカが析出しやすいため、回収率は、シリカが析出しない範囲で設定される。本実施形態では、第1の逆浸透膜モジュール2の回収率は、濃縮水W3のシリカ濃度が150mgSiO/L以下となるように設定される。
【0046】
濃縮水排水バルブ15は、排水ライン6を開閉することにより第1逆浸透膜装置11の回収率を調整する。詳しくは、透過水W2流量が一定の条件の下、濃縮水排水バルブ15は、濃縮水W3が排出される流量を調整することにより、第1逆浸透膜装置11の回収率を調整する。濃縮水排水バルブ15の開度が大きい場合には、濃縮水W3が排出される流量が多いため、回収率は低くなる。濃縮水排水バルブ15の開度が小さい場合には、濃縮水W3が排出される流量が少ないため、回収率は高くなる。
【0047】
濃縮水排水バルブ15は、例えば比例制御弁からなり、後述するシリカ濃度監視装置40の制御により、排水流量を無段階に調整するように構成されている。尚、濃縮水排水バルブ15は、排水ライン6に並列配置した複数個の電磁弁等の開閉弁により排水流量を段階的に調整するように構成することもできる。
【0048】
尚、図示を省略するが、上述した通水ライン5、7、9等には、各通水ライン内を流通する水を送出するポンプや、流路を開閉するバルブ等が適宜設けられている。これらのポンプやバルブ等は、図示しない制御装置によって制御される。
【0049】
ランゲリア指数監視装置30は、濃縮水W3を監視する装置であり、濃縮水W3のランゲリア指数を算出するとともに、算出されたランゲリア指数に基づいてpH調整剤添加装置4を制御する。
図3に示されるように、ランゲリア指数監視装置30は、水質検出手段としての水質検出装置20と、ランゲリア指数制御部31と、ランゲリア指数記憶部35とを備えている。ランゲリア指数制御部31は、pH調整剤添加装置4と電気的に接続される。
【0050】
水質検出装置20は、濃縮水W3の水質を検出する。水質検出装置20は、ランゲリア指数を算出する際に用いられる水質に関する情報を検出する。水質検出装置20により検出された水質の検出値の情報は、後述するランゲリア指数制御部31に出力される。
【0051】
水質検出装置20は、図2に示すように、サンプリングライン6aを介して排水ライン6に接続されている。図3において、水質検出装置20は、pH値センサ21と、温度センサ22と、電気伝導率センサ23と、カルシウム硬度センサ24と、総アルカリ度センサ25とを有する。
【0052】
pH値センサ21、温度センサ22、電気伝導率センサ23、カルシウム硬度センサ24、総アルカリ度センサ25それぞれにより検出される検出値は、ランゲリア指数監視装置30の後述するランゲリア指数算出部32がランゲリア指数を算出する際に用いられる。
【0053】
pH値センサ21は、排水ライン6を流通する濃縮水W3のpH値を検出するセンサである。温度センサ22は、排水ライン6を流通する濃縮水W3の水温を検出するセンサである。電気伝導率センサ23は、排水ライン6を流通する濃縮水W3の電気伝導率を検出するセンサである。
【0054】
カルシウム硬度センサ24は、排水ライン6を流通する濃縮水W3のカルシウム硬度を検出するセンサである。カルシウム硬度センサ24としては、例えば、2−ヒドロキシ−1−(2’−ヒドロキシ−4’−スルホ−1’−ナフチルアゾ)−3−ナフトエ酸(略称:HSNN)を含む試薬を添加したときの発色により、カルシウム硬度を検出する比色式センサが用いられる。比色式センサは、所定量の試料水を収容した透明容器へ試薬を添加し、カルシウムイオンとHSNNとの反応による試料水の色相変化を、特定波長の光を照射したときの吸光度から測定する。そして、比色式センサは、測定された吸光度に基づいて、試料水中のカルシウム硬度を測定(検出)する。
【0055】
総アルカリ度センサ25は、排水ライン6を流通する濃縮水W3の総アルカリ度を検出するセンサである。総アルカリ度とは、水中に含まれる炭酸水素塩、炭酸塩、水酸化物等のアルカリ成分の量を炭酸カルシウム(CaCO)の量に換算して表わしたものであり、JIS規格では、酸消費量(pH4.8)と称される。総アルカリ度センサ25としては、例えば、メチルオレンジを含む試薬を添加したときの発色により、総アルカリ度を検出する比色式センサが用いられる。比色式センサは、所定量の試料水を収容した透明容器へ試薬を添加し、アルカリ成分とメチルオレンジの反応による試料水の発色度合を、特定波長の光を照射したときの吸光度から測定する。そして、比色式センサは、測定された吸光度に基づいて、試料水中の総アルカリ度を測定(検出)する。
【0056】
ランゲリア指数監視装置30は、濃縮水W3のランゲリア指数(Langeliar Saturation Index;以下「LSI」ともいう)を算出するとともに、濃縮水W3のランゲリア指数の値を所定範囲に維持するように制御する。ランゲリア指数は、主に、水系における水の腐食傾向およびスケール傾向を評価する指標として用いられる。ランゲリア指数(LSI)は、下記(2)式により求められる。
LSI=pH−pHs・・・(2)
ここで、pHは、水の実際のpH値である。また、pHsは、水中に炭酸カルシウムが溶解も析出もしない平衡状態にあるときの理論上のpH値である。
【0057】
pHsは、下記(3)式により求められる。
pHs=9.3+A値+B値−C値−D値・・・(3)
ここで、A値は、蒸発残留物濃度により定まる補正値である。蒸発残留物濃度は、電気伝導率と相関があるため、所定の換算式を用いて電気伝導率から蒸発残留物濃度を求めることができる。B値は、水温により定まる補正値である。C値は、カルシウム硬度により定まる補正値である。D値は、総アルカリ度により定まる補正値である。A〜D値は、前述の水質検出装置20の検出値から関係式を用いて、或いは数値テーブルを参照して求めることができる。
【0058】
一般に、ランゲリア指数は、正(プラス)の値で絶対値が大きいほど、炭酸カルシウムが析出しやすいことを示す。また、ランゲリア指数は、負(マイナス)の値で絶対値が小さいほど、炭酸カルシウムが析出しにくいことを示す。また、ランゲリア指数が0(ゼロ)の場合には、炭酸カルシウムが析出も溶解もしない平衡状態にある。このことから、濃縮水W3のランゲリア指数が0未満の場合は、RO膜面に炭酸カルシウム系スケールが生成しにくい状態にあり、逆に、0を超える場合は、RO膜面に炭酸カルシウム系スケールが生成しやすいことになる。
【0059】
ところで、本発明の発明者らは、ランゲリア指数が、炭酸カルシウムの析出についての指標としてだけではなく、シリカの析出についての指標となることを見出した。すなわち、実験等によって、ランゲリア指数を所定範囲に調整した場合に、炭酸カルシウムの析出を抑制することができることと同様に、シリカの析出も抑制することができるという知見を得るに至った。
具体的には、濃縮水W3のランゲリア指数を0.3以下の範囲に維持しながら第1逆浸透膜装置11により膜分離処理をすることで、濃縮水W3における炭酸カルシウム系スケールの析出を抑制することができ、かつ、シリカ系スケールの析出を抑制することができる。
【0060】
上記(2)式から明らかなように、濃縮水W3のランゲリア指数は、濃縮水W3のpHの低下とともに小さくなり、pHの上昇とともに大きくなる。従って、濃縮水W3のランゲリア指数は、濃縮水W3のpHを調整することで制御可能である。
具体的には、例えば、pH調整剤添加装置4を用いて、第1逆浸透膜装置11に供給される供給水W1に所定の酸性薬剤(pH調整剤)を添加することにより、濃縮水W3のpH値を低くすることができる。
【0061】
ランゲリア指数制御部31は、ランゲリア指数を算出する算出手段としてのランゲリア指数算出部32と、ランゲリア指数判定部33と、pH調整剤添加装置4を制御する制御手段としてのpH調整剤制御部34とを有する。
ランゲリア指数記憶部35は、ランゲリア指数に関する所定のパラメータや各種テーブル等を記憶する。ランゲリア指数記憶部35に記憶される情報は、ランゲリア指数制御部31により参照される。
【0062】
ランゲリア指数算出部32は、ランゲリア指数記憶部35に記憶された補正テーブル35a(後述)を参照して、水質検出装置20(pH値センサ21、温度センサ22、電気伝導率センサ23、カルシウム硬度センサ24、総アルカリ度センサ25)により検出された検出値を、ランゲリア指数を算出するための情報に補正又は換算する。ランゲリア指数算出部32は、当該ランゲリア指数算出部32により補正された情報及びランゲリア指数の算出式(2)に基づいて、ランゲリア指数を算出する。
【0063】
ランゲリア指数判定部33は、ランゲリア指数算出部32により算出されたランゲリア指数の情報に基づいて、濃縮水W3のランゲリア指数が0.3以下であるか否かについて判定する。
【0064】
pH調整剤制御部34は、ランゲリア指数判定部33の判定結果に基づいて、ランゲリア指数算出部32により算出された濃縮水W3のランゲリア指数が0.3以下の範囲に維持されるように、pH調整剤添加装置4を制御する。
【0065】
ランゲリア指数記憶部35は、ランゲリア指数に関する所定のパラメータや各種テーブル等を記憶する。具体的には、ランゲリア指数記憶部35には、pH調整剤制御部34により制御されるpH調整剤添加装置4のpH調整剤の添加量の情報などが記憶されている。
【0066】
また、ランゲリア指数記憶部35は、補正テーブル35aを有する。補正テーブル35aには、水質検出装置20(pH値センサ21、温度センサ22、電気伝導率センサ23、カルシウム硬度センサ24、総アルカリ度センサ25)より検出された検出値をランゲリア指数算出部32がランゲリア指数を算出する際に用いるA〜D値に補正するためのテーブルが記憶されている。
【0067】
シリカ濃度監視装置40は、濃縮水W3のシリカの濃度を監視する装置であり、検出されたシリカ濃度に基づいて、濃縮水排水バルブ15を制御する。
図2に示されるように、シリカ濃度監視装置40は、シリカ濃度センサ26と、シリカ濃度制御部41とを備えている。シリカ濃度制御部41は、濃縮水排水バルブ15と電気的に接続される。
【0068】
シリカ濃度センサ26は、排水ライン8を流通する濃縮水W3のシリカ濃度を検出するセンサである。シリカ濃度センサ26は、排水ライン6において濃縮水排水バルブ15よりも上流側に位置する部位に接続されている。詳しくは、この排水ライン6には、濃縮水排水バルブ15の上流側においてサンプリングライン6aが設けられており、シリカ濃度センサ26は、該サンプリングライン6aを介して排水ライン6に接続されている。
【0069】
シリカ濃度センサ26としては、例えば、七モリブデン酸六アンモニウムを含む試薬を添加したときの発色により、濃度を検出する比色式センサが用いられる。比色式センサは、所定量の試料水を収容した透明容器へ試薬を添加し、シリカと七モリブデン酸六アンモニウムとの反応による試料水の発色度合を、特定波長の光を照射したときの吸光度から測定する。比色式センサは、測定された吸光度に基づいて、試料水中のシリカ濃度を測定(検出)するように構成されている。
【0070】
シリカ濃度制御部41は、シリカ濃度判定部42と、濃縮水排水バルブ15を制御する制御手段としての回収率調整制御部43とを有する。
【0071】
シリカ濃度判定部42は、シリカ濃度センサ26の検出値に基づいて、濃縮水W3のシリカ濃度が150mgSiO/L以下であるか否かについて判定する。
【0072】
回収率調整制御部43は、シリカ濃度判定部42の判定結果に基づいて、シリカ濃度センサ26で検出された濃縮水W3のシリカ濃度が150mgSiO/L以下に維持されるように、濃縮水排水バルブ15の開度を制御する。
具体的には、回収率調整制御部43は、濃縮水W3のシリカ濃度が150mgSiO/Lを超えた場合には、濃縮水排水バルブ15の開度を増加し、回収率を減少させるように制御する。逆に、濃縮水W3のシリカ濃度が150mgSiO/L未満の場合には、シリカ濃度が150mgSiO/Lを超えない範囲で、回収率を最大限まで増加させるように制御する。
【0073】
ところで、上述したように濃縮水W3のシリカ濃度が溶解度を超えると、シリカがRO膜の膜面に析出して第1逆浸透膜装置11の運転の障害となる可能性がある。シリカの溶解度は、濃縮水W3のpH値や水温の条件により異なるが、一般的には、所定の関数式により算出される。例えば、シリカの溶解度の代表値は、pH値が7で水温25℃の場合、128mgSiO/Lである。
【0074】
しかしながら、本発明は、濃縮水W3のランゲリア指数を0.3以下、かつ、シリカ濃度を150mgSiO/L以下に維持するように運転する。そのため、濃縮水W3中のシリカ濃度がシリカの溶解度を超えた場合(例えば、シリカ濃度が128mgSiO/L以上150mgSiO/L以下の範囲)であっても、RO膜の膜面にシリカが析出することを抑制し、透過水W2の流量を長期間に亘って安定に維持することができる水処理システム1を実現する。
【0075】
次に、第1実施形態の水処理システム1の動作、すなわち水処理方法について、図1及び図2を参照して説明する。
水処理システム1が運転され、ポンプ(図示せず)が起動されると、下記のように水処理が行われ、精製水が製造される。
【0076】
(pH調整剤添加工程)
まず、通水ライン5を流通する供給水W1に対して、pH調整剤添加装置4により酸性薬剤(例えば、塩酸や硫酸)が添加される。供給水W1には、例えば軟水化装置等による軟水化処理が施されておらず、当該供給水W1は、シリカ(全シリカ)及び硬度成分(カルシウムイオン及びマグネシウムイオン)を夾雑成分として含むものである。ここで、pH調整剤添加装置4から供給水W1に添加される酸性薬剤の添加量は、ランゲリア指数監視装置30により、濃縮水W3のランゲリア指数が0.3以下になるように制御される。ただし、酸性薬剤の添加量が所定値を超えると、供給水W1中の炭酸水素イオン及び炭酸イオンが炭酸ガス化しやすくなり、第1の逆浸透膜分離工程で製造される透過水W2中に遊離炭酸が残留するようになるので、酸性薬剤の添加量は、濃縮水W3のランゲリア指数が0以上になるように制御されることが好ましい。
尚、供給水W1に酸性薬剤を添加することなく、濃縮水W3のランゲリア指数を0.3以下に制御可能な場合には、このpH調整剤添加工程は削除しても構わない。
【0077】
(分散剤添加工程)
また、通水ライン5を流通する原水である供給水W1に対して、分散剤添加装置12によりスケール分散剤(例えば、ポリカルボン酸及びホスホン酸の混合物)が添加される。ここで、分散剤添加装置12から供給水W1に添加されるスケール分散剤の添加量は、前記混合物の33〜37重量%水溶液を、供給水W1に対して1〜5mg/L程度である。
尚、分散剤添加工程は、pH調整剤添加工程よりも前に行うこともできる。
【0078】
(第1の逆浸透膜分離工程)
pH調整剤添加工程及び分散剤添加工程を経た供給水W1は、通水ライン5から第1逆浸透膜装置11に流通され、精製される。すなわち、第1逆浸透膜装置11は、供給水W1を、第1の逆浸透膜モジュール2で透過水W2と濃縮水W3とに分離する。
第1の逆浸透膜モジュール2では、濃縮水W3のランゲリア指数を0.3以下、かつ、シリカ濃度を150mgSiO/L以下に保って分離操作する。これにより、溶存塩類等の夾雑成分が除去された精製水である透過水W2を得ることができる。
【0079】
第1逆浸透膜装置11により製造された透過水W2は、通水ライン7へ流入する。一方、第1逆浸透膜装置11で製造された濃縮水W3は、濃縮水排水バルブ15を適宜開閉することにより、排水ライン6を通って水処理システム1の系外へ排水される。
【0080】
(脱気処理工程)
第1逆浸透膜装置11により製造された透過水W2は、通水ライン7を通って気体分離膜モジュール3に供給される。透過水W2が、気体分離膜モジュール3を流通することにより、当該透過水W2中の炭酸ガス等の溶存ガスGが脱気処理される。このように、透過水W2から溶存ガスGが脱気された処理水W4は、通水ライン9を通って需要箇所へ供給される。
【0081】
尚、前述した水処理方法においては、下記の動作が行われている。
第1実施形態の水処理システム1においては、透過水W2の流量は、前述した流量制御部により一定に維持されている。すなわち、流量制御部は、通水ライン7に設けられた流量センサからの流量検知信号をフィードバックしながら、インバータにより加圧ポンプ10の回転数を制御し、透過水W2の流量が予め設定された目標値になるように制御している(定流量制御)。
【0082】
そして、水処理システム1は、定流量制御を実行しながら、pH調整剤添加装置4を制御して、濃縮水W3のランゲリア指数を0.3以下の範囲に維持するとともに、濃縮水排水バルブ15の開度を制御して、濃縮水W3のシリカ濃度を150mgSiO/L以下の範囲に維持するように運転される。
【0083】
濃縮水W3のランゲリア指数の調節について具体的に説明する。水質検出装置20は、排水ライン6を流通する濃縮水W3の水質を検出する。水質検出装置20は、pH値センサ21と、温度センサ22と、電気伝導率センサ23と、カルシウム硬度センサ24と、総アルカリ度センサ25とを備えており、検出された水質情報(pH値、温度、電気伝導率、カルシウム硬度および総アルカリ度)は、ランゲリア指数制御部31のランゲリア指数算出部32に出力される。
【0084】
ランゲリア指数算出部32は、まずランゲリア指数記憶部35の補正テーブル35aを参照して、温度、電気伝導率、カルシウム硬度および総アルカリ度に係る補正値(A〜D値)を求める。そして、ランゲリア指数算出部32は、前述の(2)式および(3)式に基づいて、ランゲリア指数を算出する。
【0085】
ランゲリア指数判定部33は、濃縮水W3のランゲリア指数が0.3以下の範囲にあるか否かを判定する。
ランゲリア指数が0.3以下、かつ0以上の場合は、pH調整剤制御部34がpH調整剤添加装置4の酸性薬剤の添加量を初期値に維持させたまま、その添加を継続させる。ランゲリア指数が0.3を超える場合は、pH調整剤制御部34がpH調整剤添加装置4の酸性薬剤の添加量を前記初期値よりも増加させる。また、ランゲリア指数が0未満の場合は、pH調整剤制御部34がpH調整剤添加装置4の酸性薬剤の添加を停止させる。
ここで、ランゲリア指数が0.3以下の場合には、濃縮水W3のシリカ濃度が溶解度を超えていても、RO膜の膜面におけるシリカの析出が抑制された状態である。また、ランゲリア指数が0.3以下、かつ0以上の場合は、通常はRO膜面における炭酸カルシウムの析出が促進されやすい状態にあるが、前記分散剤添加工程でのスケール分散剤の添加により、炭酸カルシウムの析出が抑制された状態である。
【0086】
濃縮水W3のシリカ濃度の調節について具体的に説明する。シリカ濃度センサ26は、排水ライン6を流通する濃縮水W3のシリカ濃度を検出する。シリカ濃度センサ26で検出されたシリカ濃度の情報は、シリカ濃度制御部41のシリカ濃度判定部42に出力される。
【0087】
シリカ濃度判定部42は、シリカ濃度センサ26から入力されたシリカ濃度の情報に基づいて、シリカ濃度が所定の閾値(150mgSiO/L)以下であるか否かを判定する。
濃縮水W3のシリカ濃度が150mgSiO/Lを超える場合には、回収率調整制御部43が濃縮水排水バルブ15の開度を増加させ、回収率を減少させる。また、濃縮水W3のシリカ濃度が150mgSiO/L未満の場合には、回収率調整制御部43が濃縮水排水バルブ15の開度を減少させ、シリカ濃度が150mgSiO/Lを超えない範囲で、回収率を最大限まで増加させる。
【0088】
以上説明したように、本実施形態の水処理システム1及びこれを用いた水処理方法によれば、第1の逆浸透膜モジュール2で除去できない遊離炭酸等の溶存ガスを、後段の気体分離膜モジュール2で透過水W2から脱気することにより、得られる精製水(処理水W4)の純度が高められ、品質が向上する。
【0089】
また、供給水W1に対して、分散剤添加装置12からスケール分散剤を添加するので、この供給水W1が第1の逆浸透膜モジュール2で膜分離処理される際のRO膜への炭酸カルシウム系スケールの析出が効果的に抑制され、高い水回収率(例えば、70%以上)を確保することができる。
【0090】
また、濃縮水W3のランゲリア指数を0.3以下、かつシリカ濃度を150mgSiO/L以下に維持して、第1の逆浸透膜モジュール2で分離操作するので、濃縮水W3のシリカ濃度が溶解度を超えたとしても、シリカ系スケールの析出を抑制することができる。
【0091】
したがって、供給水に酸を添加することなく、または酸の添加量を最小限に止めながら、シリカ系及び炭酸カルシウム系スケールの発生を同時に抑制することができる。この結果、精製水の純度を損なうことなく、所期の造水量を確保することができる。
【0092】
また、この水処理システム1は、ランゲリア指数監視装置30を備えており、濃縮水W3の水質の検出値に基づいて、濃縮水W3のランゲリア指数を算出するとともに、ランゲリア指数が所定値(0.3)以下の範囲に維持されるように、pH調整剤添加装置4を制御するように構成されている。これにより、水処理システム1は、濃縮水W3のランゲリア指数を所定値以下に精度よく安定して維持することができる。
【0093】
また、例えば、供給水W1の水質の変動が大きい場合に、ランゲリア指数をフィードバック値として、pH調整剤添加装置12を制御することができる。これにより、第1の逆浸透膜モジュール2のRO膜面にスケールが析出されることを抑制できる。
【0094】
また、この水処理システム1は、シリカ濃度監視装置40を備えており、濃縮水W4のシリカ濃度の検出値に基づいて、シリカ濃度が所定値(150mgSiO/L)以下の範囲に維持されるように、濃縮水排水バルブ15を制御するように構成されている。これにより、水処理システム1は、濃縮水W3のシリカ濃度を所定値以下に精度よく安定して維持することができる。
【0095】
また、例えば、供給水W1の水質の変動が大きい場合に、シリカ濃度をフィードバック値として、濃縮水排水バルブ15を制御することができる。これにより、第1の逆浸透膜モジュール2のRO膜面にスケールが析出されることを抑制できる。
【0096】
(第2実施形態)
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態に係る水処理システム51及びこれを用いた水処理方法について説明する。尚、前述の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0097】
本実施形態の水処理システム51は、図4に示すように、第1実施形態で説明した水処理システム1の各構成要素、及び、その通水ライン9の下流側において、気体分離膜モジュール3の処理水W4を脱イオン処理(脱イオン処理工程)する電気脱イオンモジュール(電気脱イオン装置)52を含んでいる。
尚、図4には特に示されていないが、本実施形態の水処理システム51においても、第1実施形態の水処理システム1と同様に、加圧ポンプ10、ランゲリア指数監視装置30、シリカ濃度監視装置40及び濃縮水排水バルブ15が設けられている(図2を参照)。これら部材の構成及び作用効果については、第1実施形態で説明したものと同様であるので、その説明を省略する。
【0098】
電気脱イオンモジュール52は、通水ライン9における気体分離膜モジュール3の下流側に接続されている。電気脱イオンモジュール52は、気体分離膜モジュール3で製造された処理水W4を、イオン交換膜により脱イオン水W5と濃縮水(不図示)とに分離する膜分離処理を行うものである。
【0099】
具体的には、電気脱イオンモジュール52は、脱塩室及び濃縮室を備えている。脱塩室及び濃縮室は、陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜を交互に配置して形成されている。脱塩室には、混床のイオン交換樹脂或いはイオン交換繊維が収容されている。電気脱イオンモジュール52は、脱塩室及び濃縮室に直流電流を通電することにより、第1逆浸透膜装置11で除去しきれなかった透過水W2中のイオンを、気体分離膜モジュール3を流通した処理水W4中から脱塩室において除去し、脱イオン水(高純度の精製水)W5を製造できるように構成されている。
【0100】
本実施形態の水処理システム51及び水処理方法によれば、前述の第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
さらに、気体分離膜モジュール3の処理水W4を、脱イオン処理してより高純度な精製水である脱イオン水W5とすることができ、精製水の品質が向上する。
また、電気脱イオンモジュール52は、脱イオン性能を維持するための所謂再生が不要であるので、取り扱い性に優れ、かつランニングコストが廉価である。
【0101】
尚、前述したように、第1の逆浸透膜モジュール2におけるRO膜のスキン層が負荷電性である場合、当該RO膜で分離操作された透過水W2は、塩構成アニオンの残留割合は少なく、塩構成カチオンの残留割合が多い。従って、例えば、電気脱イオンモジュール52は、残留割合の多い塩構成カチオンのみを脱イオン可能に構成されていてもよい。すなわち、電気脱イオンモジュール52の脱塩室は、陽イオン交換樹脂或いは陽イオン交換繊維のみを収容して形成されていても構わない。
この場合、脱イオン水W5の品質を十分に確保しつつも、電気脱イオンモジュール52のイニシャルコストを削減可能である。
【0102】
(第3実施形態)
次に、図5を参照して、本発明の第3実施形態に係る水処理システム55及びこれを用いた水処理方法について説明する。尚、前述の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0103】
本実施形態の水処理システム55は、図5に示すように、第2実施形態に係る水処理システム51の電気脱イオンモジュール52に代えて、気体分離膜モジュール3の処理水W4を脱イオン処理(脱イオン処理工程)する陽イオン交換樹脂単床塔56を備えている。その他は、第2実施形態と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0104】
陽イオン交換樹脂単床塔56は、通水ライン9における気体分離膜モジュール3の下流側に接続されている。陽イオン交換樹脂単床塔56は、その塔内に陽イオン交換樹脂ビーズのみからなるイオン交換樹脂床を備えており、気体分離膜モジュール3で製造された処理水W4をこのイオン交換樹脂床に流通させることにより、高純度の精製水である脱イオン水W5を製造するように構成されている。具体的には、陽イオン交換樹脂単床塔56は、処理水W4中に残留する塩構成カチオンを脱イオン処理することにより、高純度の精製水を製造する。
【0105】
本実施形態の水処理システム55及び水処理方法によれば、前述の第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
さらに、気体分離膜モジュール3の処理水W4を、脱イオン処理してより高純度な精製水である脱イオン水W5とすることができ、精製水の品質が向上する。
【0106】
ここで、前述したように、第1の逆浸透膜モジュール2におけるRO膜のスキン層が負荷電性である場合、当該RO膜で分離操作された透過水W2は、塩構成アニオンの残留割合が少なく、塩構成カチオンの残留割合が多い。従って、陽イオン交換樹脂単床塔56で、残留割合の多い塩構成カチオンを脱イオン処理することにより、精製水中における残留イオンが精度よく除去されて、純度の高い精製水が製造可能となっている。
また、陽イオン交換樹脂単床塔56は、イニシャルコストが廉価であるから、この水処理システム55は、脱イオン水W5の品質を十分に確保しつつも、設備費用を削減できる。
【0107】
(第4実施形態)
次に、図5を参照して、本発明の第4実施形態に係る水処理システム60及びこれを用いた水処理方法について説明する。尚、前述の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0108】
本実施形態の水処理システム60は、図5に示すように、第1実施形態で説明した水処理システム1の各構成要素、及び、その通水ライン9の下流側において、気体分離膜モジュール3の処理水W4を脱イオン処理(脱イオン処理工程)するイオン交換樹脂混床塔61を含んでいる。その他は、第2実施形態と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0109】
イオン交換樹脂混床塔61は、通水ライン9における気体分離膜モジュール3の下流側に接続されている。イオン交換樹脂混床塔61は、その塔内に陽イオン交換樹脂ビーズ及び陰イオン交換樹脂ビーズからなるイオン交換樹脂床を備えており、気体分離膜モジュール3で製造された処理水W4をイオン交換樹脂床に流通させることにより、高純度の精製水である脱イオン水W5を製造するように構成されている。具体的には、イオン交換樹脂混床塔61は、処理水W4中に残留する塩構成カチオンを陽イオン交換樹脂ビーズで脱イオン処理し、処理水W4中に残留する塩構成アニオンを陰イオン交換樹脂ビーズで脱イオン処理することにより、高純度の精製水を製造する。
【0110】
本実施形態の水処理システム60及び水処理方法によれば、前述の第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
さらに、気体分離膜モジュール3の処理水W4を、脱イオン処理してより高純度な精製水である脱イオン水W5とすることができ、精製水の品質が向上する。
そして、本実施形態によれば、第1の逆浸透膜モジュール2から送出された透過水W2中に、塩構成カチオンのみならず、負荷電性のRO膜を透過した塩構成アニオンが残留したとしても、イオン交換樹脂混床塔61でこれらの残留イオンを処理水W4から精度よく脱イオン処理して、脱イオン水W5の純度が十分に高められる。
【0111】
(第5実施形態)
次に、図6及び図7を参照して、本発明の第5実施形態に係る水処理システム65及びこれを用いた水処理方法について説明する。図6は、第5実施形態の水処理システム65の構成を詳細に説明する図であり、図7は、第5実施形態の水処理システム65の構成を詳細に説明する図である。尚、前述の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0112】
本実施形態の水処理システム65は、図6に示すように、第1実施形態で説明した水処理システム1の各構成要素、及び、その通水ライン9の下流側において、気体分離膜モジュール3の処理水W4を、更に透過水W6と濃縮水W7とに分離する第2の逆浸透膜モジュール16を含んでいる。
また、本実施形態の水処理方法は、第1実施形態で説明した水処理方法の各工程、及び、脱気処理工程の処理水W4を、更に第2の逆浸透膜モジュール16で透過水W6と濃縮水W7とに分離する第2の逆浸透膜分離工程を含んでいる。
【0113】
また、水処理システム65は、図7に示すように、処理水W4にpH調整剤を添加するpH調整剤添加装置17と、pH調整剤添加装置17の添加位置よりも下流側で処理水W4のpH値を検出するpH値センサ27と、を含んでいる。
尚、以下の説明においては、前述の第1実施形態で説明したpH調整剤添加装置4と区別して、前記pH調整剤添加装置17を第2pH調整剤添加装置17と呼ぶ。また、前述の第1実施形態で説明したpH値センサ21と区別して、前記pH値センサ27を第2pH値センサ27と呼ぶ。
【0114】
第2の逆浸透膜モジュール16は、前述の第1実施形態で説明した第1の逆浸透膜モジュール2と同様の構成を有している。尚、第2の逆浸透膜モジュール26のRO膜としては、第1の逆浸透膜モジュール2のRO膜と同一のものを用いることが好ましいが、それ以外のRO膜であっても構わない。第2の逆浸透膜モジュール16は、単一又は複数のRO膜エレメントを備えており、該RO膜エレメントにより処理水W4を膜分離処理して、より純度の高い精製水である透過水W6を製造するとともに、処理水W4の
夾雑成分濃度が高まった濃縮水W7を製造する。
【0115】
また、第2の逆浸透膜モジュール16には、RO膜の一次側と連通して配設され、処理水W4を該RO膜に供給する前記通水ライン9と、RO膜により処理水W4が濃縮された濃縮水W7を通水ライン7へ返送する通水ライン13と、RO膜の二次側と連通して配設され、処理水W4が該RO膜を透過することにより濃縮水W7とは分離された純度の高い透過水W6を、次工程へ送出する通水ライン14と、が接続されている。
【0116】
第2の逆浸透膜モジュール16の上流側には、加圧ポンプ18が設けられている。加圧ポンプ18は、通水ライン9における下流側の端部近傍に設けられており、気体分離膜モジュール3から送出された処理水W4を加圧して、第2の逆浸透膜モジュール16に送出するように構成されている。
このように、水処理システム65には、加圧ポンプ18と、その下流側の第2の逆浸透膜モジュール16とを含む第2逆浸透膜装置19が設けられている。
本実施形態の水処理システム65は、第1逆浸透膜装置11と第2逆浸透膜装置19とを直列的に2段に設ける構成とすることにより、製造される透過水W6の純度を高めるものである。
【0117】
通水ライン9には、図7に示すように、第2pH調整剤添加装置17及び第2pH値センサ27が接続されている。
第2pH調整剤添加装置17は、気体分離膜モジュール3から第2の逆浸透膜モジュール16へ向けて送出された処理水W4に、pH調整剤を添加する装置である。この第2pH調整剤添加装置17は、pH調整剤である所定のアルカリ性薬剤(例えば水酸化ナトリウム)を、通水ライン9を流通する処理水W4に添加するように構成されている。
【0118】
第2pH値センサ27は、通水ライン9を流通する処理水W4のpH値を検出するセンサである。第2pH値センサ27は、通水ライン9において第2pH調整剤添加装置17が接続されるpH調整剤の添加位置よりも下流側に接続されている。第2pH値センサ27は、第2pH調整剤添加装置17によりpH調整剤が添加された処理水W4のpH値を検出するように構成されている。第2pH値センサ27により検出されたpH値は、pH調整剤制御部36に出力される。
尚、以下の説明においては、前述の第1実施形態で説明したpH調整剤制御部34と区別して、前記pH調整剤制御部36を第2pH調整剤制御部36と呼ぶ。
【0119】
第2pH調整剤制御部36は、第2pH値センサ27により検出されるpH値の情報に基づいて、濃縮水W3のpH値が所定の範囲(例えば、pH値が8以上)に維持されるように、第2pH調整剤添加装置17を制御する。具体的には、濃縮水W3のpH値が前記所定の範囲に維持されるように、アルカリ性薬剤の添加量を増加させる。
【0120】
特に図示しないが、水処理システム65は、通水ライン14に設けられ、第2の逆浸透膜モジュール16から送出される透過水W6の流量を検出する流量センサと、加圧ポンプ18の回転数を出力周波数に応じて可変させるインバータと、流量センサからの流量検知信号に基づいて、インバータヘ指令信号を出力する流量制御部とを備えることが好ましい。この構成によれば、流量センサにより検出される透過水W6の流量に基づくフィードバック制御により、透過水W6の流量を一定に維持するように制御を行うことができる。また、水温の変動などで処理流量が変化するような場合であっても、加圧ポンプの回転数が流量制御部により自動的に調整されて、透過水W6の流量を一定に制御できる。
【0121】
尚、図示を省略するが、上述した通水ライン9、14等には、各通水ライン内を流通する水を送出するポンプや、流路を開閉するバルブ等が適宜設けられている。これらのポンプやバルブ等は、図示しない制御装置によって制御される。
【0122】
本実施形態における水処理システム65のランゲリア指数監視装置30及びシリカ濃度監視装置は、前述の第1実施形態と同様の構成を有しているため、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0123】
次に、図6及び図7を参照して、第5実施形態の水処理システム65の動作、すなわち水処理方法について説明する。
水処理システム65が運転され、ポンプ(図示せず)が起動されると、下記のように水処理が行われ、精製水が製造される。
【0124】
まず、pH調整剤添加工程、分散剤添加工程、第1の逆浸透膜分離工程及び脱気処理工程が行われる。これら工程については、第1実施形態で説明したものと同様であるので、その説明を省略する。
尚、以下の説明においては、第1実施形態で説明した前記pH調整剤添加工程(第1pH調整剤添加装置4により供給水W1に酸性薬剤を添加するpH調整剤添加工程)と区別するため、第2pH調整剤添加装置17により処理水W4にアルカリ性薬剤を添加するpH調整剤添加工程を、第2のpH調整剤添加工程と呼ぶ。
【0125】
(第2のpH調整剤添加工程)
気体分離膜モジュール3から送出され通水ライン9を流通する処理水W4に対して、第2pH調整剤添加装置17によりアルカリ性薬剤(例えば、水酸化ナトリウム)が添加される。ここで、第2pH調整剤添加装置17から処理水W4に添加されるアルカリ性薬剤の添加量は、第2pH値センサ27により検出されるpH値に基づいて、第2pH調整剤制御部36によって調整される。ここでの添加量の調整は、例えばフィードバック制御を利用することができる。
【0126】
(第2の逆浸透膜分離工程)
第2のpH調整剤添加工程を経てアルカリ性薬剤が添加された処理水W4は、通水ライン9から第2逆浸透膜装置19に流通され、更に精製される。すなわち、第2逆浸透膜装置19は、処理水W4を、第2の逆浸透膜モジュール16で透過水W6と濃縮水W7とに分離する。これにより、溶存塩類等の夾雑成分が更に除去された精製水である透過水W6を得ることができる。
【0127】
第2逆浸透膜装置19により製造された透過水W6は、通水ライン14を通って需要箇所へ供給される。一方、第2逆浸透膜装置19で製造された濃縮水W7は、返送ライン13を通って通水ライン5へ流入し、供給水W1と混合して再利用される。
尚、濃縮水W7は、返送ライン13を通って水処理システム65の系外へ排水されても構わない。
【0128】
本実施形態の水処理システム65は、ランゲリア指数監視装置30により、濃縮水W3のランゲリア指数が0.3以下になるように制御されている。また、シリカ濃度監視装置40により、濃縮水W3のシリカ濃度が150mgSiO/L以下になるように制御されている。これにより、第1の逆浸透膜モジュール2におけるRO膜の膜面にシリカ系スケールが析出することが抑制される。また、透過水W2は、第1の逆浸透膜モジュール2により供給水W1のシリカ濃度が例えば10%以下にまで低減された水であるので、第2の逆浸透膜モジュール16においては、RO膜の膜面にシリカが析出するおそれはない。
【0129】
また、本実施形態の水処理方法においては、下記の動作が行われている。尚、第1実施形態で説明した水処理方法の動作と同様の動作については、その詳細な説明を省略する。
前記同様の動作としては、ランゲリア指数監視装置30によるランゲリア指数の監視及び制御(第1pH調整剤添加装置12の制御による目標ランゲリア指数(0.3以下)への調整)、並びにシリカ濃度監視装置40によるシリカ濃度の監視及び制御(濃縮水排水バルブ15の制御による目標シリカ濃度(150mgSiO/L以下)への調整)である。
【0130】
第5実施形態の水処理システム65においては、透過水W6の流量は、前述した流量制御部により一定に維持されている。すなわち、流量制御部は、通水ライン14に設けられた流量センサからの流量検知信号をフィードバックしながら、インバータにより加圧ポンプ18の回転数を制御し、透過水W6の流量が予め設定された目標値になるように制御している(定流量制御)。
【0131】
また、第2pH値センサ27は、通水ライン9を流通する処理水W4のpH値を検出する。第2pH値センサ27で検出されたpH値の情報は、第2pH調整剤制御部36に出力される。
【0132】
第2pH調整剤制御部36は、第2pH値センサ27から入力されたpH値の情報に基づいて、処理水W4のpH値が所定の範囲(例えば、pH値が8以上)にあるか否かを判定する。
また、第2pH調整剤制御部36は、第2pH値センサ27から入力されたpH値の情報に基づいて、第2pH調整剤添加装置17を制御し、アルカリ性薬剤の添加量を再調整する。具体的には、処理水W4のpH値が前記所定の範囲に維持されるように、アルカリ性薬剤の添加量を増減させる。
【0133】
ここで、処理水W4のpH値を所定の範囲(pH値8以上)に維持する理由について説明する。
本実施形態では、予め供給水W1に対して第1pH調整剤添加装置12から酸性薬剤が添加されていることにより、該供給水W1中の炭酸水素イオン及び炭酸イオンが溶存炭酸ガスに変化することがある。そうすると、気体分離膜モジュール3で除去すべき溶存炭酸ガスの量が相対的に増加し、処理水W4中に溶存炭酸ガスが残留しやすくなる結果、処理水W4の純度が低下することがある。そこで、処理水W4のpH値を8以上とすることにより、残留している溶存炭酸ガスを炭酸水素イオン及び炭酸イオンに再イオン化する。これにより、第2の逆浸透膜モジュール16において、処理水W4に由来する溶存炭酸ガスをほぼ完全に除去することが可能になり、透過水W6の純度を向上させることができるのである。
【0134】
本実施形態の水処理システム65及び水処理方法によれば、前述の第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
さらに、第1の逆浸透膜モジュール2で除去しきれなかった透過水W2中に残存する溶存塩類等の夾雑成分を、第2の逆浸透膜モジュール16で処理水W4から除去するので、より高純度な精製水である透過水W6を製造可能である。
また、このように高純度な精製水を製造しつつも、処理水W4を膜分離処理して製造された濃縮水W7については、第1の逆浸透膜モジュール2の上流側の通水ライン5に戻し再利用しているので、造水コストが削減される。
【0135】
(第6実施形態)
次に、図8を参照して、本発明の第6実施形態に係る水処理システム70及びこれを用いた水処理方法について説明する。尚、第5実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0136】
本実施形態の水処理システム70は、図9に示すように、第5実施形態に係る水処理システム65の各構成要素、及び、その通水ライン14の下流側において、第2の逆浸透膜モジュール16の透過水W6を脱イオン処理(脱イオン処理工程)する電気脱イオンモジュール(電気脱イオン装置)52を含んでいる。
【0137】
また、水処理システム70は、第5実施形態の水処理システム65に係る第2pH値センサ27、第2pH調整剤制御部36、加圧ポンプ10、18、ランゲリア指数監視装置30、シリカ濃度監視装置40及び濃縮水排水バルブ15を備えている(図7を参照)。これら部材の構成及び作用効果については、第5実施形態で説明したものと同様であるので、その説明を省略する。
【0138】
電気脱イオンモジュール52は、通水ライン14における第2の逆浸透膜モジュール16の下流側に接続されている。電気脱イオンモジュール52は、第2の逆浸透膜モジュール16(第2逆浸透膜装置19)で製造された透過水W6を、イオン交換膜により脱イオン水W8と濃縮水(不図示)とに分離する膜分離処理を行うものである。電気脱イオンモジュール52の構成については、前述の第2実施形態で説明したものと同様であるので、その説明を省略する。
【0139】
本実施形態の水処理システム70及び水処理方法によれば、前述の第5実施形態と同様の作用効果を奏する。
さらに、第2の逆浸透膜モジュール16の透過水W6を、脱イオン処理してより高純度な精製水である脱イオン水W8とすることができ、精製水の品質が向上する。
また、電気脱イオンモジュール52は、脱イオン性能を維持するための所謂再生が不要であるので、取り扱い性に優れ、かつランニングコストが廉価である。
【0140】
尚、前述したように、第1、第2の逆浸透膜モジュール2、16におけるRO膜のスキン層が負荷電性である場合、当該RO膜で分離操作された透過水W6は、塩構成アニオンの残留割合が少なく、塩構成カチオンの残留割合が多い。従って、例えば、電気脱イオンモジュール52は、残留割合の多い塩構成カチオンのみを脱イオン可能に構成されていてもよい。すなわち、電気脱イオンモジュール52の脱塩室は、陽イオン交換樹脂或いは陽イオン交換繊維のみを収容してされていても構わない。
この場合、脱イオン水W8の品質を十分に確保しつつも、電気脱イオンモジュール52のイニシャルコストを削減可能である。
【0141】
(第7実施形態)
次に、図9を参照して、本発明の第7実施形態に係る水処理システム75及びこれを用いた水処理方法について説明する。尚、第6実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0142】
本実施形態の水処理システム75は、図9に示すように、第6実施形態に係る水処理システム70の電気脱イオンモジュール52に代えて、第2の逆浸透膜分離工程の透過水W6を脱イオン処理(脱イオン処理工程)する陽イオン交換樹脂単床塔56を備えている。その他は、第6実施形態と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
また、陽イオン交換樹脂単床塔56の構成は、第3実施形態で説明したものと同様であるため、その説明を省略する。
【0143】
本実施形態の水処理システム75及び水処理方法によれば、前述の第5実施形態と同様の作用効果を奏する。
さらに、第2の逆浸透膜モジュール16の透過水W6を、脱イオン処理してより高純度な精製水である脱イオン水W8とすることができ、精製水の品質が向上する。
【0144】
ここで、前述したように、第1、第2の逆浸透膜モジュール2、16におけるRO膜のスキン層が負荷電性である場合、当該RO膜で分離操作された透過水W6は、塩構成アニオンの残留割合は少なく、塩構成カチオンの残留割合が多い。従って、陽イオン交換樹脂単床塔56で、残留割合の多い塩構成カチオンを脱イオン処理することにより、精製水中における残留イオンが精度よく除去されて、純度の高い精製水が製造可能となっている。
また、陽イオン交換樹脂単床塔56は、イニシャルコストが廉価であるから、この水処理システム75は、脱イオン水W8の品質を十分に確保しつつも、設備費用を削減できる。
【0145】
(第8実施形態)
次に、図9を参照して、本発明の第8実施形態に係る水処理システム80及びこれを用いた水処理方法について説明する。
本実施形態の水処理システム80は、図9に示すように、第7実施形態に係る陽イオン交換樹脂単床塔56に代えて、第2の逆浸透膜分離工程の透過水W6を脱イオン処理(脱イオン処理工程)するイオン交換樹脂混床塔61を備えている。その他は、第7実施形態と同様であるため、説明を省略する。
また、イオン交換樹脂混床塔61の構成は、第4実施形態で説明したものと同様であるため、その説明を省略する。
【0146】
本実施形態の水処理システム80及び水処理方法によれば、前述の第5実施形態と同様の作用効果を奏する。
さらに、第2の逆浸透膜モジュール16の透過水W6を、脱イオン処理してより高純度な精製水である脱イオン水W8とすることができ、精製水の品質が向上する。
そして、本実施形態によれば、第2の逆浸透膜モジュール16から送出された透過水W6中に、塩構成カチオンのみならず、負荷電性のRO膜を透過した塩構成アニオンが存在したとしても、イオン交換樹脂混床塔61でこれらの残留イオンを精度よく脱イオン処理して、脱イオン水W8の純度が十分に高められる。
【0147】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0148】
例えば、前述の実施形態では、水処理方法には、第1pH調整剤添加装置4により酸性薬剤が添加される第1pH調整剤添加工程と、第2pH調整剤添加装置17によりアルカリ性薬剤が添加される第2のpH調整剤添加工程とが含まれるとしたが、第1pH調整剤添加装置4と第2pH調整剤添加装置17のいずれか又は両方を備えない構成としてもよい。すなわち、本発明においては、pH調整剤を添加することなく、濃縮水W3のランゲリア指数を0〜0.3の範囲に維持できる場合には、pH調整剤添加工程は必須ではない。
【0149】
また、上記実施の形態においては、気体分離膜モジュール3の気体分離膜として、外部灌流式(外圧型)の脱炭酸膜(脱気膜)を用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、内部灌流式(内圧型)等の脱炭酸膜を用いても構わない。ただし、外部灌流式の脱炭酸膜を用いた場合には、透過水W2中の遊離炭酸等のガスを精度よく高効率に除去できることから、より好ましい。
【0150】
また、上記実施の形態においては、濃縮水W3が、排水ライン6から系外に排出される場合について説明したが、例えば、濃縮水W3の一部が系外に排出されるとともに、残部を第1の逆浸透膜モジュール2の上流側の通水ライン7へ還流させる構成であってもよい。
【0151】
また、上記実施の形態においては、水質検出装置20が、排水ライン6を流通する濃縮水W3の水質を検出する場合について説明したが、水質検出装置20が、通水ライン7を流通する透過水W2の水質を検出してもよい。ただし、水質検出装置20を通水ライン7に接続した場合には、通水ライン7において検出した値を、排水ライン6において検出した場合における濃縮水W3の検出値に換算して用いることが好ましい。
【0152】
また、例えば、電気伝導率(蒸発残留物)、カルシウム硬度及び総アルカリ度は、通水ライン7を流通する透過水W2の検出値に濃縮水W3の濃縮倍率を乗じて推定計算することにより、検出値としてもよい。
また、温度は、透過水W2の温度を濃縮水W3の温度とみなすことにより、検出値としてもよい。
また、pH値は、透過水W2のpH値と所定の濃縮倍率における濃縮水W3のpH値との関係式を予め実験等により求めておき、この関係式に基づいて換算してもよい。
また、ランゲリア指数記憶部35に、これらの換算式や関係式等を記憶させるように構成してもよい。
【0153】
また、水質検出装置20は、通水ライン5を流通する供給水W1の水質を検出してもよい。ただし、水質検出装置20を通水ライン5に接続した場合には、通水ライン5において検出した値を、排水ライン6において検出した場合における処理水W4の検出値に換算して用いることが好ましい。
また、水質検出装置20は、通水ライン6を流通する濃縮水W3の水質、及び、通水ライン7(又は通水ライン5)を流通する透過水W2(又は供給水W1)の水質の両方を検出するように構成されていてもよい。
【0154】
また、pH値センサ21、温度センサ22、電気伝導率センサ23、カルシウム硬度センサ24及び総アルカリ度センサ25のうちいずれか一つ以上により構成された一の水質検出装置20が、排水ライン6を流通する濃縮水W3の水質を検出するように構成され、pH値センサ21、温度センサ22、電気伝導率センサ23、カルシウム硬度センサ24及び総アルカリ度センサ25のうちいずれか一つ以上により構成された他の水質検出装置20が、通水ライン7(又は通水ライン5)を流通する透過水W2(又は供給水W1)の水質を検出するように構成してもよい。
【0155】
また、水質検出装置20は、上記センサのうち一部のセンサが省略されて構成されていてもよく、例えば、電気伝導率(蒸発残留物)は、pHsに対して影響が小さい項目であるため、電気伝導率センサ23を省略し、ランゲリア指数記憶部36に電気伝導率の設定値を記憶させておき、その値を使用するように構成してもよい。
【0156】
また、カルシウム硬度につき、供給水W1の水質が安定している場合には、カルシウム硬度センサ24を省略するとともに、ランゲリア指数記憶部35にカルシウム硬度の設定値を記憶させて、その値を使用するように構成してもよい。
【0157】
また、総アルカリ度につき、供給水W1の水質が安定している場合には、総アルカリ度センサ25を省略するとともに、ランゲリア指数記憶部35に総アルカリ度の設定値を記憶させて、その値を使用するように構成してもよい。
【0158】
更に、シリカ濃度監視装置40に関しては、供給水W1のシリカ濃度が安定している場合には、シリカ濃度センサ26を省略するとともに、シリカ濃度判定部42に供給水W1のシリカ濃度の設定値を記憶させて、その値に基づいて回収率調整制御部43の制御を行わせるように構成してもよい。
【0159】
その他、本発明の前述の実施形態で説明した構成要素を、適宜組み合わせても構わない。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前述の構成要素を周知の構成要素に置き換えることも可能である。
【0160】
<実験例>
実験例1〜3
電気伝導率159mS/m、硬度414mgCaCO/L、シリカ濃度44mgSiO/L、総アルカリ度90mgCaCO/L、及びpH7.6の水質に調整された試験用の供給水を給水タンクに貯留し、この供給水を逆浸透膜エレメント(ウンジン・ケミカル社製:型式名「RE8040−BLF」)1本装填した逆浸透膜モジュールへ加圧ポンプで加圧しながら連続的に供給し、透過水流量1000L/h、回収率75%、温度25℃の条件で運転した。透過水流量は、加圧ポンプの回転数を調節により制御した。尚、逆浸透膜モジュールへの通水はクロスフロー方式とし、透過水流量に対して系内の循環流量が5倍となるように、濃縮水の一部を加圧ポンプの一次側へ循環させた。このような供給水の処理運転中に、濃縮水の一部を定期的にサンプルとして採取し、濃縮水のシリカ濃度が概ね135〜150mgSiO/L、及び濃縮水の電気伝導率が概ね510〜530mS/mに維持されていることを確認した。
【0161】
本実験例では、逆浸透膜モジュールへの供給水のpH値を硫酸の添加により6〜6.6に調整することで濃縮水のpH値を8〜9程度に調整し、ランゲリア指数(LSI)をそれぞれ−0.2(実験例1)、0.1(実験例2)、0.3(実験例3)に制御した。また、供給水に対し、スケール分散剤としてBWA WATER ADDITIVES社の商品名「フロコン260」(フロコン:登録商標)を原液のまま濃度が2.5mg/Lになるように添加した。
【0162】
比較実験例1
供給水への硫酸添加により濃縮水のランゲリア指数を0.5に制御した点を除き、実験例1〜3と同様の条件で供給水を処理した。
【0163】
比較実験例2
供給水への硫酸添加による濃縮水のランゲリア指数の制御をしなかった点を除き、実験例1〜3と同様の条件で供給水を処理した。
【0164】
比較実験例3
供給水への硫酸添加により濃縮水のランゲリア指数を0.2に制御し、かつ回収率を増加させて濃縮水のシリカ濃度を170mgSiO/L程度にまで高めた点を除き、実験例1〜3と同様の条件で供給水を処理した。
【0165】
比較実験例4
供給水へのスケール分散剤を添加しなかった点を除き、ランゲリア指数を0.3に制御した実験例3と同様の条件で供給水を処理した。
【0166】
比較実験例5
供給水への硫酸添加によるランゲリア指数の制御、及び、供給水へのスケール分散剤の添加をしなかった点を除き、実験例1〜3と同様の条件で供給水を処理した。
【0167】
評価
実験例1〜3及び比較実験例1〜5のそれぞれにおいて、水処理運転中の逆浸透膜エレメントに作用する有効圧力の変化を経時的に測定した。そして、有効圧力の測定値、透過水流量の設定値、及び逆浸透膜エレメントの有効膜面積から、水透過係数を所定時間経過毎に算出した。初期状態の水透過係数は、逆浸透膜エレメントの個体差により多少のばらつきがあるため、水処理運転の開始から1時間経過時点の数値を初期値とした。また、水処理運転の開始から24時間経過時点での透過水の電気伝導率を測定した。電気伝導率は、透過水の水質を示す指標であり、数値が低いほど透過水にイオン成分(夾雑成分)が少ないこと、すなわち水質が良好なことを表している。結果を表1に示す。表中における濃縮水のランゲリア指数、シリカ濃度及び電気伝導率は、水処理運転中の平均値である。尚、比較実験例5は、120時間経過時点の水透過係数が初期値の15%未満まで低下したため、この時点で水処理運転を中止した。
【0168】
【表1】

【0169】
表1によると、実験例1〜3では、150時間経過時点の水透過係数が初期値の96〜97%に維持されており、比較実験例1〜5に比べて逆浸透膜エレメントのスケール付着による閉塞が顕著に抑制されていることが分かる。また、実験例1〜3は、比較実験例1〜5に比べて透過水の電気伝導率が同程度の数値となっており、水質の良好な透過水が得られていることが分かる。更に、実験例1〜3では、濃縮水のランゲリア指数が0未満の場合には、透過水の電気伝導率が若干高くなる傾向が見られるため、濃縮水のランゲリア指数を0以上に維持するのが好ましいことも分かる。
【0170】
<参考例>
次に、本発明の参考例として、水処理システム100及びこれを用いた水処理方法について、図10及び図11を参照して説明する。
【0171】
一般に、逆浸透膜(RO膜)を用いて精製水を製造するROシステム(水処理システム)において、単一(一段)の逆浸透膜装置(RO装置)により処理された精製水の純度が不十分な場合には、複数(例えば二段)のRO装置を直列に接続して、水処理を行うようにしている。このような多段のROシステムにおいて、さらなる純度の向上を目指す場合、RO膜による水処理のみでは除去することが困難な遊離炭酸等の炭酸成分を除去する目的で、脱炭酸手段、及び、最終純度アップ用にポリッシャ(イオン交換樹脂混床塔)が設けられることがある。
【0172】
前記脱炭酸手段としては、例えばアルカリ薬注(アルカリ性の薬剤を供給水に添加する)が考えられる。この場合、炭酸成分のイオン化促進作用により、その下流側のRO装置によって炭酸水素イオンや炭酸イオンが除去され、純度向上の効果が得られる。しかしながらその反面、薬品を取り扱うことによる危険が伴い、また薬品補充等のメンテナンス費用が嵩むこととなる。
また、純度アップの目的で前記ポリッシャを設けた場合、高純度の精製水が得られる反面、イオン交換樹脂の薬品再生費用などコスト面でのデメリットが生じる。
【0173】
このような事情を鑑みて、図10に示される本参考例の水処理システム100は、供給水(例えば原水)を透過水と濃縮水とに分離する第1の逆浸透膜装置(図におけるRO装置(前段))と、前記第1の逆浸透膜装置の透過水を脱気処理する脱炭酸膜装置と、前記脱炭酸膜装置の処理水を更に透過水と濃縮水とに分離する第2の逆浸透膜装置(図におけるRO装置(後段))と、前記第2の逆浸透膜装置の透過水を脱イオン処理する陽イオン交換樹脂単床塔(図におけるカチオンポリッシャ)とを含んでいる。
また、本参考例の水処理方法は、供給水を第1の逆浸透膜装置で透過水と濃縮水とに分離する第1の逆浸透膜分離工程と、第1の逆浸透膜分離工程の透過水を脱炭酸膜装置で脱気処理する脱気処理工程と、脱気処理工程の処理水を第2の逆浸透膜装置で更に透過水と濃縮水とに分離する第2の逆浸透膜分離工程と、第2の逆浸透膜分離工程の透過水を陽イオン交換樹脂単床塔で脱イオン処理する脱イオン処理工程とを含んでいる。
すなわち、本参考例の水処理システム100及び水処理方法は、前述した第7実施形態の水処理システム75及び水処理方法に類似の構成を備えている(図9を参照)。
【0174】
図10において、本参考例の水処理システム100及び水処理方法によれば、前述した脱炭酸手段として、アルカリ薬注の代わりに脱炭酸膜装置を用いているので、薬品取り扱いの危険がなく、またメンテナンス費用の削減が可能である。
【0175】
また、最終の純度向上手段として、従来のように混床樹脂のポリッシャを用いるのではなく、本参考例ではカチオンポリッシャを用いているので、水質に見合った無駄のない純度アップが行える。さらに、再生サイクルの延長が期待できることから、イニシャルのみならずトータルとしてのコスト削減が可能となる。
詳しくは、図10に示される水処理システム100のように、複数のRO装置を脱炭酸膜装置を間に挟んで直列に設けた場合、一般的なRO膜の性質(負荷電性)から、後段のRO装置に供給される処理水は、塩構成カチオンがリッチの水質になる。このような水質に対しては、混床樹脂を用いる代わりに、陽イオン交換樹脂を用いるだけで、十分な純度が得られるのである。
【0176】
ここで、脱炭酸(脱気処理)を伴う多段のROシステムの挙動について、下記1〜3により詳述する。
1.脱炭酸による水のpH値変化
脱炭酸により水(透過水)からCOが取り除かれると、以下の反応によりpH値が上昇する。
CO+HO→(←)HCO+H
すなわち、上式における左辺のCOが取り除かれることにより、上式の反応は左方にシフトする。つまりHが減少することにより、pH値が上昇する。
2.pH値によるRO膜表面の荷電性変化
一般的なRO膜(例えばポリアミド膜)は、膜表面が負の荷電性を有しており、この荷電性は膜表面の水のpH値に依存する。つまり、pH値が上昇すると、膜の負荷電性がより高められる(膜のカルボキシル基のイオン化が促進される)。
3.RO膜の荷電性によるイオン透過の挙動
RO膜表面の負荷電性が上昇すると、同符号であるアニオンの除去率は高められるが、異符号のカチオンについては膜を透過しやすくなり、除去率が低下する。また、膜表面のイオン濃度が低いほど、この挙動が顕著に現れる。
よって、上記1〜3により、脱炭酸を伴う多段のROシステムにおける処理水(後段のRO装置を流通した透過水)は、塩構成カチオンがリッチの水質になる。
【0177】
以上、本参考例のように多段のRO装置、脱炭酸膜装置及びカチオンポリッシャを組み合わせたROシステム100によれば、従来のROシステムと比較して、安定して高純度な精製水の製造が可能であり、低コストのシステムを構築できる。
【0178】
尚、図11に示されるグラフは、カチオンポリッシャを用いたROシステムの純度データとして、脱炭酸手段にアルカリ薬注を用いた試験結果である(すなわち本参考例とは異なる)。
この結果から、脱炭酸手段として、アルカリ薬注の代わりに脱炭酸膜装置を用いた場合(本参考例に相当)においても、後段のRO装置で得られた透過水のpH値の変化(アルカリ側にシフト)は発生し、同様の効果が得られると考えられる。
【符号の説明】
【0179】
1、51、55、60、65、70、75、80 純水の製造システム
2 第1の逆浸透膜モジュール
3 気体分離膜モジュール
12 分散剤添加装置
16 第2の逆浸透膜モジュール
52 電気脱イオンモジュール
56 陽イオン交換樹脂単床塔
61 イオン交換樹脂混床塔
W1 供給水
W2 第1の逆浸透膜分離工程(第1の逆浸透膜モジュール)の透過水
W3 第1の逆浸透膜分離工程(第1の逆浸透膜モジュール)の濃縮水
W4 処理水
W6 第2の逆浸透膜分離工程(第2の逆浸透膜モジュール)の透過水
W7 第2の逆浸透膜分離工程(第2の逆浸透膜モジュール)の濃縮水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ及び硬度成分を含む供給水を精製するための水処理方法であって、
供給水にスケール分散剤を添加する分散剤添加工程と、
スケール分散剤が添加された処理水を第1の逆浸透膜モジュールで透過水と濃縮水とに分離する第1の逆浸透膜分離工程と、
第1の逆浸透膜分離工程の透過水を気体分離膜モジュールで脱気処理する脱気処理工程と、を含み、
逆浸透膜分離工程では、濃縮水のランゲリア指数を0.3以下、かつシリカ濃度を150mgSiO2/L以下に保って分離操作する、水処理方法。
【請求項2】
脱気処理工程の処理水を、電気脱イオンモジュールで脱イオン処理する脱イオン処理工程を含む、請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】
脱気処理工程の処理水を、イオン交換樹脂混床塔で脱イオン処理する脱イオン処理工程を含む、請求項1に記載の水処理方法。
【請求項4】
脱気処理工程の処理水を、陽イオン交換樹脂単床塔で脱イオン処理する脱イオン処理工程を含む、請求項1に記載の水処理方法。
【請求項5】
脱気処理工程の処理水を、更に第2の逆浸透膜モジュールで透過水と濃縮水とに分離する第2の逆浸透膜分離工程を含む、請求項1に記載の水処理方法。
【請求項6】
第2の逆浸透膜分離工程の透過水を、電気脱イオンモジュールで脱イオン処理する脱イオン処理工程を含む、請求項5に記載の水処理方法。
【請求項7】
第2の逆浸透膜分離工程の透過水を、イオン交換樹脂混床塔で脱イオン処理する脱イオン処理工程を含む、請求項5に記載の水処理方法。
【請求項8】
第2の逆浸透膜分離工程の透過水を、陽イオン交換樹脂単床塔で脱イオン処理する脱イオン処理工程を含む、請求項5に記載の水処理方法。
【請求項9】
スケール分散剤は、ポリカルボン酸及びホスホン酸の混合物からなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項10】
シリカ及び硬度成分を含む供給水を精製するための水処理システムであって、
供給水にスケール分散剤を添加する分散剤添加装置と、
スケール分散剤が添加された処理水を透過水と濃縮水とに分離する第1の逆浸透膜モジュールと、
前記第1の逆浸透膜分離モジュールで分離した透過水を脱気処理する気体分離膜モジュールと、を含み、
前記第1の逆浸透膜モジュールで分離した濃縮水のランゲリア指数を0.3以下、かつシリカ濃度を150mgSiO2/L以下に保って分離操作するように構成されている、水処理システム。
【請求項11】
前記気体分離膜モジュールで脱気処理した処理水を脱イオン処理する、電気脱イオンモジュールを含む、請求項10に記載の水処理システム。
【請求項12】
前記気体分離膜モジュールで脱気処理した処理水を脱イオン処理する、イオン交換樹脂混床塔を含む、請求項10に記載の水処理システム。
【請求項13】
前記気体分離膜モジュールで脱気処理した処理水を脱イオン処理する、陽イオン交換樹脂単床塔を含む、請求項10に記載の水処理システム。
【請求項14】
前記気体分離膜モジュールで脱気処理した処理水を、更に透過水と濃縮水とに分離する第2の逆浸透膜モジュールを含む、請求項10に記載の水処理システム。
【請求項15】
前記第2の逆浸透膜モジュールで分離した透過水を脱イオン処理する、電気脱イオンモジュールを含む、請求項14に記載の水処理システム。
【請求項16】
前記第2の逆浸透膜モジュールで分離した透過水を脱イオン処理する、イオン交換樹脂混床塔を含む、請求項14に記載の水処理システム。
【請求項17】
前記第2の逆浸透膜モジュールで分離した透過水を脱イオン処理する、陽イオン交換樹脂単床塔を含む、請求項14に記載の水処理システム。
【請求項18】
前記スケール分散剤は、ポリカルボン酸及びホスホン酸の混合物からなる、請求項10〜17のいずれか1項に記載の水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−187472(P2012−187472A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51557(P2011−51557)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】