説明

水処理方法

【課題】 薬品の使用を最低限に抑え、簡単な処理工程で鉄、マンガン、シリカ、フッ素、ヒ素等の複数の水中微量成分を一挙に除去することが可能な水処理方法を提供する。
【解決手段】 被酸化性成分、シリカ及び無機系有害成分を含む被処理原水を貯留した槽内に浸漬した分離膜フィルターで膜ろ過を行い、処理水を得る水処理方法であって、前記被処理原水を酸化剤及び硫酸アルミニウムで処理した後、生じた固形物を前記槽内の前記分離膜フィルターにより固液分離することで、前記被酸化性成分、シリカ及び無機系有害成分を一括除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表流水、湖沼水、ダム貯水、湧水、地下水等の原水中に含まれる被酸化性成分、シリカ及び無機有害物質等の水中微量成分を除去する水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表流水、湖沼水、ダム貯水、湧水、地下水等の原水を処理して、水道法に基づく水質基準(以下、「水道水質基準」、「水質基準」ともいう)を満たす飲料水(水道水)を製造する、いわゆる水道浄水技術は100年以上の歴史を有するが、依然として水道浄水技術の基本は凝集、沈殿及び砂ろ過である。
【0003】
近年、分析技術の高度化による微量有害成分の検出精度の向上、原水の汚染が深刻な水道後進国での水道施設建設の必要性、地球環境の悪化による水質汚染への対処の必要性等に伴い、水道原水に含まれる鉄、マンガン、シリカ、フッ素、ヒ素等の成分(水中微量成分)の更なる除去の必要性が高まっている。
【0004】
このような水中微量成分を除去する方法としては、これまでに多くの方法が提案されている。例えば、鉄及びマンガンの除去方法としては、鉄及びマンガンを酸化し、酸化物微結晶を生成させ、ろ過する方法が知られている。しかし、この方法では、砂ろ過を使用するため、広い設置面積を必要とする嫌いがある。
【0005】
また、シリカの除去方法として、イオンレベルでのシリカの除去が可能な逆浸透膜(RO膜)を用いた方法が提案されている。しかし、この方法によるとRO膜の目詰まりが発生しやすく、最近の技術開発の焦点として分散剤の使用による目詰まり防止方法などが多く併用されるが、実用上処理が煩雑となる。一方、シリカの膜分離(膜ろ過)による単独処理として、他に限外ろ過膜(UF膜)による膜ろ過も検討されているが、この場合にはファウリング(いわゆる膜閉塞)による処理能率の急激な低下が生じるため、特殊な場合を除き、シリカの除去対策として採用し難い。
更に、シリカの他の除去方法として、ポリ塩化アルミニウムや硫酸アルミニウム等の凝集剤でコロイドシリカを粗大化させた後、凝集分離させる方法が行われている。しかし、この方法によっても、除去対象がシリカに限定されており、ワーキングレンジが狭く、また、凝集と分離を別工程で行うため、処理装置の建設費が高くなり、設置面積も大きくなる等の問題が指摘されている。
【0006】
フッ素の除去方法として、例えば、特許文献1に炭酸カルシウム(CaCO)を主体にした吸着材でフッ素を吸着処理する方法が報告されている。しかし、この方法では、吸着設備が必要で且つ吸着剤の再生や交換が煩雑になり、運転費が高くなるといった欠点がある。また、特許文献2には晶析反応でフッ化カルシウム(CaF)を析出させてフッ素を除去する方法が提案されている。しかし、この方法でも、晶析反応で析出させたフッ化カルシウムを除去するための凝集沈殿処理を必要とし、建設費や設置面積が大きくなるといった問題点が残る。
【0007】
また、ヒ素の除去方法については、鉄化合物、或いは、鉄包接化合物、低結晶性鉄化合物による吸着除去が提案されているが、この方法では、特殊な吸着剤が必要であり、また、吸着分離操作も煩雑となり好ましくない(例えば特許文献3参照)。
【0008】
以上に記載した通り、吸着、凝集による微量成分を個別に除去する方法は多々提案されているが、いずれの方法に於いても多くの課題が残されている。その上、上述した方法では、鉄及びマンガンの同時除去以外は、いずれも水中微量成分を個別に除去対象としているため、各水中微量成分の除去にそれぞれ別の処理工程(処理装置)を必要とする。そのため、水処理システム全体に要する建設費、運転費が高くなり、結果として大きな設置面積が必要となり、プラント建設の障害となっていた。
【0009】
一方、飲料水化に使用できる化学薬品は、最終的に水道法に基づく水質基準(以下、水道水質基準ともいう)を満たすという条件から制約が多く、コスト等の点を考慮するとさらに制限されるという問題も起こる。
【0010】
水道浄水処理においては、凝集剤・凝集助剤は広く使用されており、実績も多くあるが、元来、凝集剤、凝集助剤の使用対象は、濁質成分、有機物、色度異臭味等の処理を主体とするものであった。従って、凝集剤、凝集助剤などによるシリカ、フッ素、ヒ素などの処理については、十分な検討がされておらず、上記のような、各水中微量成分に応じた高度な処理技術の必要性が望まれるところであった。
【特許文献1】特許第3672855号公報
【特許文献2】特開2003−225680号公報
【特許文献3】特開2008−43921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上述べたように水道浄水における水中微量成分の除去は、一般に鉄・マンガンの同時除去を除いては個別に処理する場合が多く、工程が煩雑でコストが過大になるケースが多かった。したがって、地下水等の原水を処理して水道水質基準を満たす飲料水を得るに際し、原水に含まれる鉄、マンガン、シリカ、フッ素、ヒ素等の水中微量成分を簡単かつ安価に除去する技術の出現が期待されている。
【0012】
本発明は、このような事情に因み鋭意検討されたものであり、本発明の目的は、薬品の使用を最低限に抑え、簡単な処理工程で鉄、マンガン、シリカ、フッ素、ヒ素等の複数の水中微量成分を一挙に除去することが可能な水処理方法を提供することにある。
【問題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明者らは研究を行った結果、被酸化性成分、シリカ及び無機系有害成分を含む被処理原水中に、硫酸アルミニウム及び酸化剤を導入し、分離膜フィルターによる膜ろ過処理を行うことで、被酸化性成分、シリカ及び無機系有害成分を同時に除去することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、水道浄水の凝集剤として一般的に使用される凝集剤としては、例えば、硫酸アルミニウム(硫酸バンドともいう。一般式:Al(SO・nHO)、PAC(ポリ塩化アルミニウム、一般式:Aln(OH)Cl3n−m)、ポリシリカ鉄、アルギン酸ナトリウム、有機高分子凝集剤等を使用することができ、また、凝集助剤としてはアルギン酸ナトリウム、ベントナイト、粉末活性炭、活性珪酸等を用いることができる。
【0014】
しかしながら、硫酸アルミニウム以外の凝集剤及び/又は凝集助剤では、たとえ硫酸アルミニウムと同じアルミニウム系凝集剤であるPAC(ポリ塩化アルミニウム)を使用しても、上記被酸化性成分、シリカ及び無機系有害成分を、硫酸アルミニウムと酸化剤とを組合わせて用いた時のような高い除去率で一括除去し得るという優れた効果を得ることはできなかった。また、勿論、酸化剤単独、或いは凝集剤単独でもこのような効果を得ることはできなかった。
【0015】
したがって、本発明の要旨とするところは、被酸化性成分、シリカ及び無機系有害成分を含む被処理原水を、酸化剤及び硫酸アルミニウムで処理した後、生じた固形物を分離膜フィルターにより固液分離することで、上記被酸化性成分、シリカ及び無機系有害成分を一括除去する水処理方法を提供することにある。
【0016】
また、本発明の他の態様に係る水処理方法は、被酸化性成分、シリカ及び無機系有害成分を含む被処理原水を貯留した槽内に浸漬した分離膜フィルターで膜ろ過を行い、処理水を得る水処理方法であって、上記被処理原水を酸化剤及び硫酸アルミニウムで処理した後、生じた固形物を上記槽内の上記分離膜フィルターにより固液分離することで、上記被酸化性成分、シリカ及び無機系有害成分を一括除去することを特徴としている。
【0017】
上記被酸化性成分が鉄及び/又はマンガンであり、鉄及び/又はマンガンが被処理原水中に0.5mg/L以上含まれていることが好ましい。
上記無機系有害成分は、例えば、ホウ素、ヒ素及びフッ素からなる群より選ばれる少なくとも1つである。
【0018】
上記被酸化性成分が鉄及びマンガンであり、上記無機系有害成分がホウ素、ヒ素、及びフッ素であり、上記処理水中の鉄、マンガン、ホウ素、ヒ素、及びフッ素の濃度が水道法の水質基準に適合することが好ましい。すなわち、上記処理水中の鉄の濃度を0.3mg/L以下、マンガンの濃度を0.05mg/L以下、ホウ素の濃度を1.0mg/L以下、ヒ素の濃度を0.01mg/L以下、及び、フッ素の濃度を0.8mg/L以下とすることが好ましい。
【0019】
上記酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを用い、上記槽内における残留塩素濃度を0.1mg/L以上1.0mg/L以下とすることが好ましい。
上記酸化剤として、次亜塩素酸ナトリウムと空気とを併用し、空気を上記分離膜フィルターの下方に設置した散気手段より供給することが好ましい。
上記槽における被処理原水のHRTが5分以上であることが好ましい。
【0020】
本発明の他の態様に係る水処理方法は、ホウ素、ヒ素及びフッ素からなる群より選ばれる少なくとも1つの無機系有害成分と、鉄及び/又はマンガンと、シリカとを含み、鉄及び/又はマンガンの濃度が0.5mg/L以上である被処理原水を貯留した槽内に、次亜塩素酸ナトリウム及び硫酸アルミニウムを注入した後、生じた固形物を当該槽内に浸漬した分離膜フィルターにより分離し、処理水を得る水処理方法であって、
上記槽内の残留塩素濃度が0.1mg/L以上1.0mg/L以下となるように次亜塩素酸ナトリウムの注入量を制御すると共に、上記分離膜フィルターの下方に設けられた散気手段により、酸化性ガスを散気することで、酸化性ガスの散気時には、該槽内の酸化反応を補助すると同時に、上記分離膜フィルターの膜表面に沿って上昇する上昇流を生じさせ、上記分離膜フィルターの膜表面を洗浄し、かつ、鉄及び/又はマンガンと次亜塩素酸ナトリウム及び/又は上記酸化性ガスとの反応により生じた酸化鉄及び/又は酸化マンガンを槽内にほぼ均等に存在せしめ、上記槽内の酸化、結晶析出、及び/又は凝集を促進させ、酸化性ガスの停止時には、上記槽内に生じた固形物の少なくとも一部が槽底部に沈降するのを促進し、該槽内に浮遊する固形物の量を調節することで、無機系有害成分と、鉄及び/又はマンガンと、シリカとを一括除去することを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、除去対象となる各微量成分ごとに処理装置を設けなくてもよい。また、分離膜フィルターを浸漬する槽内に酸化剤及び硫酸アルミニウムを注入する場合には、同一槽内で膜分離処理を行うので、別途酸化剤を注入し、反応させるための薬液処理槽や、硫酸アルミニウムを注入し、固液分離を行うための沈殿分離槽等といった処理槽を設ける必要がない。よって、本発明の水処理方法に用いられる装置の小型化を図ることが可能となり、設置面積を減らし、建設費用及び装置駆動時の電力費を低減することができる。
また、膜ろ過処理を組み合わせることで、使用する薬剤を酸化剤と硫酸アルミニウムといった必要最小限の薬剤に留めている。
【0022】
したがって、本発明によれば、多数の薬品を使用せずに単純な装置で、安全かつ安価に、水道原水にイオンレベルで微量に含まれるフッ素、ヒ素等の無機系有害成分及びシリカを、水道原水中に共存する鉄、マンガンなどの被酸化性成分と共に一挙に除去することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0024】
本発明の水処理方法は、被処理原水を貯留した槽(処理槽、反応槽ともいう)内の分離膜フィルターで膜ろ過を行い、処理水を得るに際し、該処理槽内に酸化剤を供給し、該処理槽内を酸化雰囲気とすると共に、硫酸アルミニウムを供給し、被処理原水を処理した後、生じた析出物、凝集体などの固形分を膜ろ過することで、被酸化性成分、シリカ及び無機系有害成分を一括除去する。
【0025】
本発明で用いられる被処理原水(水道用原水)は、分離対象成分(除去対象成分)として、被酸化性成分、シリカ及び無機系有害成分を含むものであれば、特に限定されず、例えば、表流水、湖沼水、ダム貯水、湧水、地下水等を本発明の水処理の対象とできる。
【0026】
分離対象成分となる被酸化性成分としては、例えば、鉄、マンガン等の被酸化性の金属成分、特に被酸化性の遷移金属成分が挙げられる。被酸化性成分は、被処理原水中に少なくとも1種含まれていればよいが、2種以上含まれていてもよい。被酸化性の金属成分が酸化され、金属酸化物(例:酸化鉄、酸化マンガン等)となることで、例えば、新たな鉄及びマンガンなどの被酸化性成分の酸化反応の触媒、シリカなどの析出促進剤(シリカ析出の際のシード)などとして働き、処理槽内での酸化、析出、及び/又は凝集(沈降)等の反応を促進すると考えられる。
【0027】
被処理原水中における被酸化性金属成分の含有量は0.5mg/L以上であることが好ましい。なお、被酸化性金属成分が2種以上含まれている場合は、少なくとも1つの被酸化性金属成分について0.5mg/L以上含まれていればよいが、各被酸化性金属成分が各々0.5mg/L以上含まれていることが好ましい。原水中に含まれる被酸化性金属成分の量が0.5mg/Lに満たない場合には、シリカ及び無機系有害成分が効果的に除去できず、被酸化性の金属成分を追加するために、新たな薬剤の投入が必要となるが、0.5mg/L以上であれば、新たな薬剤を追加せずに、最小限の薬剤(例えば、次亜塩素酸ナトリウム及び硫酸アルミニウム)のみで水中微量成分(例えば、鉄、マンガン、シリカ、ヒ素、フッ素、及びホウ素)の一括除去が可能となる。
【0028】
なお、原水中の被酸化性金属成分の量が0.5mg/Lに満たず、一方でホウ素、ヒ素等の無機系有害成分及びシリカの含有量が多く、除去を必要とする場合には、被酸化性金属成分の量が0.5mg/L以上となるように、原水中に比較的酸化され易い金属成分を加えるとよい。このような酸化され易い金属成分としては、鉄イオンが取り扱い上最も好ましい。具体的には、例えば塩化第二鉄を被処理原水に添加することができる。
【0029】
また、槽内に沈降した被酸化性金属成分の酸化物を含む固形物を槽内の底部から排出した後、再び処理槽内に返送してもよい。被酸化性金属成分の酸化物を含む固形物を循環させることで、固形物中に含まれる、例えば酸化鉄、酸化マンガン等の金属酸化物が酸化触媒として働き、更なる鉄、マンガン等の被酸化性金属成分の酸化が促進させることが可能となる。
【0030】
無機系有害成分としては、例えば、ホウ素、ヒ素及びフッ素などの水道水質基準に定められる成分が挙げられる。無機系有害成分は、1種又は2種以上含まれていてもよい。
【0031】
被処理原水中に含まれる分離対象成分は、イオン、又は化合物などのいずれの状態で存在していてもよい。したがって、イオンの状態で水中に溶解していてもよく、また溶解性又は不溶性の化合物として存在していてもよい。例えば、鉄の場合、被処理原水中に鉄イオンとして存在していてもよく、また酸化鉄、水酸化鉄などの化合物の状態で存在していてもよい。マンガン、シリカ、ホウ素、ヒ素、及びフッ素などの他の成分についても同様である。なお、鉄やマンガンは通常、鉄イオン、マンガンイオンの状態で水道用原水中に存在していることが多い。
【0032】
本発明で用いられる酸化剤としては、例えば、塩素、次亜塩素酸ナトリウム、二酸化塩素などの塩素系酸化剤、オゾンガス、過酸化水素等、空気、酸素などの酸素系酸化剤、過マンガン酸カリウム、及び過マンガン酸ナトリウム等の如何なる物であっても良い。また、酸化剤は、固体、液体、及び気体(酸化性ガス)のいずれであってもよい。酸化剤は、一種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このような酸化剤の中でも、取扱い容易性、経済性、また、鉄を3価の酸化物とし、マンガンを4価の酸化物とすることが可能等の点から、次亜塩素酸ナトリウムを用いる事が好ましい。
【0033】
酸化剤の導入量は、原水中の被酸化性成分の濃度、酸化剤の種類、酸化剤が溶液等の場合は酸化剤の濃度、HRT(水理学的滞留時間)、及び処理槽の大きさ等によって適切な量を決定するため、特に限定されるものではない。
【0034】
例えば、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いて、被酸化性分として鉄及びマンガンを酸化する場合には、槽内の残留塩素濃度が0.05mg/L以上5.0mg/L以下、好ましくは0.1mg/L以上1.0mg/L以下となるように、次亜塩素酸ナトリウムの導入量を決定することが好ましい。
【0035】
残留塩素濃度が下限値未満であると、被酸化性成分の濃度の如何によらず、酸化の進行が遅くなり、酸化処理に長時間要する(HRTを長くせざるを得なくなる)傾向にある。また、残留塩素濃度が下限値未満の場合、被酸化性の鉄、マンガン等の金属成分が水酸化第二鉄Fe(OH)や水酸化マンガンMn(OH)のような水酸化物の形態となり、分離膜に付着してファウリングを形成しやすくなる等の傾向にある。唯、残塩濃度を上記下限値以上とすることで、被酸化性の鉄、マンガン等の金属成分を、例えば酸化第二鉄Fe・nHOや二酸化マンガンMnOのような完全な酸化状態(酸化物の状態)にすることが可能となるため、ファウリングが生じ難くなる。また一方で、残留塩素濃度が上記上限値を超えると、HRTを小さくすることはできるが処理槽の環境管理が難しくなる傾向にある。
【0036】
酸化剤として、液状又は固形状の酸化剤と酸化性ガスとを組合せて使用する場合には、最適な液状又は固形状の酸化剤の添加量は、ガスの吹き込み方法及び量等を勘案して決定する。例えば、次亜塩素酸ナトリウムと空気吹込みを併用する場合には、添加する次亜塩素酸ナトリウムの量は、空気吹き込みの方法及び量に応じて低減することが可能となる。
【0037】
本発明では分離膜フィルターとして浸漬型の膜を利用しており、膜分離効率を向上させる等の観点から、分離膜フィルターの下方に散気管(散気手段)を設置し、分離膜フィルターを揺動させるよう、バブリング(散気)を行ってもよい。
また、このバブリングにより、攪拌器を新たに設けなくても、処理槽内の被処理原水を攪拌することができ、槽内に導入する酸化剤や硫酸アルミニウムといった薬剤を略均一に行き渡らせることが可能となり、これらの薬剤導入に伴い生じる金属酸化物を含む固形物も、被処理原水中に略均一分散することができ、酸化、析出、凝集反応も処理槽内で略均一に行うことが可能となる。この際、バブリングガスとして空気等の酸化作用を有するガス(酸化性ガス)を吹込むと、処理槽内の酸化反応を補助することが可能となり、他の酸化剤を用いている場合には、その酸化剤の添加量を減らすことが可能となるため好ましい。
【0038】
散気管は、散気管より発生する気体により生じる気体と液体とが混合した上昇流(気液混合上昇流)が分離膜間を満遍なく通過し、分離膜フィルターの表面に沿って上昇し、膜表面の付着物を洗浄し得るよう配置する事が望ましい。バブリングは、連続的に行っても間欠的に行ってもよいが、バブリングを間欠的に行うと、バブリングの休止時に、酸化、析出及び/又は凝集などによって処理槽内に生じた固形物のうち、少なくとも一部を、膜ろ過によらず、処理槽下部へ沈降させ、分離することができ、膜の負担を軽減することが可能となるので好ましい。
また、バブリングの間隔を調整することで、処理槽内の鉄及び/又はマンガンなどの酸化物の浮遊量を調節することも可能となる。バブリングの間隔は、反応層中の固形物の量、膜差圧の回復程度等によって決定され、特に限定されるものではない。例えば、膜閉塞の防止効果と処理槽内の反応を促進させる酸化物の浮遊量とのバランスが良好となる等の観点からは、5〜60分間散気、1〜10分間停止の間隔、更に云えば8〜10分間散気、1〜2分間停止の間隔で行うことが好ましい。また、吸引ろ過についても吸引−停止の間隔をバブリングの間隔に合わせて行うのが好ましいがこれは特に本発明を限定するものではない。
【0039】
更に、散気管の下方に傾斜板を設けると、固形物の処理槽下部への沈降を促進させることができ、一旦沈降した固形物が浮上するのを防止することも可能となるので有効である。
【0040】
処理槽における被処理原水のHRTは、酸化等の反応を十分に促進させる等の観点から、5分以上であることが望ましい。また、処理効率、経済性等の観点から、HRTは30分以下であることが望ましい。
【0041】
酸化剤の導入量の制御方法は、特に限定されず、如何なる方法によっても良い。一例を挙げると、例えば、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合には、処理槽内に残留塩素計(残留塩素センサ)を設置し、その残留塩素濃度を連続的に検出し、検出された残塩濃度に応じて次亜塩素酸ナトリウムの注入量をコントロールしてもよい。また、分離膜フィルターの二次側(処理水側)の配管中に残留塩素計を設置し、検出された残塩濃度に応じて所定量の次亜塩素酸ナトリウムを注入するよう制御してもよい。
【0042】
本発明で用いられる硫酸アルミニウムは、一般に水道浄水の凝集剤として使用されるものを用いることができる。硫酸アルミニウムの添加量は、原水に含まれる被酸化性成分の濃度のみならず、ホウ素、ヒ素等の無機系有害成分及びシリカの含有量等によっても調整される。分離対象成分の濃度と硫酸アルミニウム添加量の関係は、特に限定するものではなく、例えば、分離対象成分の濃度10〜70mg/Lに対し、硫酸アルミニウムをAlに換算した値(以下、Al換算値という)で5〜100mg/L、好ましくは10〜50mg/Lを添加すると効果的である。
なお、ここで分離対象成分濃度とは、除去対象とする全ての水中微量成分の合計(例えば、被酸化性成分、シリカ、フッ素、ホウ素及びヒ素を除去対象とする場合には、これら全体の合計)の濃度をいう。
【0043】
硫酸アルミニウムの添加量の制御方法としては、例えば、被処理原水の処理量に比例して硫酸アルミニウムを注入する比例制御(所定の注入率で注入量を制御)、又は、被処理原水の処理量を一定にした上で原水処理量に対し定量的に注入する定量注入等が挙げられるが、後者の方が設備コストが安価で済み、好ましい。
【0044】
本発明では、分離膜フィルターの一次側に供給された被処理水を分離膜フィルターを通して二次側に透過させることで処理水(ろ過水)を得る。具体的には、分離膜フィルターの一次側となる処理槽に分離膜フィルターを浸漬して、分離膜フィルターの二次側にある処理水出口を減圧状態としてろ過処理を行う浸漬型の膜ろ過(分離膜浸漬型ろ過)を基本とし、膜分離は膜壁の外側(一次側)から内側(二次側)に向かって被処理水が通過する際にろ過処理が行われる。
分離膜フィルターの孔径(膜孔径)は、特に限定するものではないが、被酸化性成分の酸化により生じた酸化物微粒子の粒径、及び、該酸化物微粒子又は他の水中微量成分を含む凝集体の大きさ等を考慮すると、0.0001μm以上1.0μm以下、好ましくは0.005μm以上0.5μm以下であることが望ましい。膜孔径が上記範囲内にあると、透水能力、処理効率、凝集体の透過阻止能力のバランスに優れる傾向にある。
【0045】
分離膜フィルターの素材は、有機素材であっても無機素材であってもよく、特に限定されない。
有機素材を用いた分離膜フィルターの例としては、例えば、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、PTFE、又はPVDFなどの有機素材から構成される中空糸膜、平膜又は管状膜等が用いられる。
また、無機素材を用いた分離膜フィルターの例としては、例えばセラミックなどの無機素材で構成される管状膜又はモノリス膜等を用いることができる。単独又は複数の分離膜フィルターよりなる浸漬膜モジュールの形状としては、分離膜フィルターの開口部の全てを集水管に直結させた形状のものが用いられる。
【0046】
ろ過に必要な膜ろ過差圧は、いかなる方法により得られてもよいが、例えば、水位差から生じる水頭圧を利用した自然流下で得るもの、真空ポンプ等のポンプによる吸引によるもの、又はこれらの併用が挙げられる。吸引による場合は、例えば上記分離膜フィルターの開口部に連結された集水管の他端部が処理水出口となるので、この処理水出口を真空ポンプ等で吸引し、減圧状態とすることによりろ過を行うことができる。
【0047】
次に、本発明に用いられる水処理装置について、図1を参照しながら説明する。なお、図1の装置は、一典型例であり、本発明はこれに限定されるものではない。したがって、図1に記載の装置の構成要素のうち、本発明の本質的部分ではない構成要素については置換又は省略することができる。
【0048】
図1は、本発明の水処理方法に用いられる水処理装置の一態様を示す概略図である。図1に示すように、本実施形態の水処理装置は、被処理原水を貯留する処理槽1、処理槽1に配置される浸漬膜モジュール2、ブロワ3から送られるバブリングガスを散気する散気管4、処理槽1に被処理原水を導入する被処理原水導入手段、処理槽1に酸化剤を導入する酸化剤導入手段、処理槽1に硫酸アルミニウムを導入する硫酸アルミニウム導入手段、及び浸漬膜モジュール2から処理水を吸引する吸引手段としての処理水ポンプ10から主に構成されている。なお、酸化剤導入手段は、図示しない酸化剤タンク、酸化剤タンクと処理槽1とを繋ぐ酸化剤導入配管7、及び定量ポンプから主に構成される。また、硫酸アルミニウム導入手段は、図示しない硫酸アルミニウムタンク、硫酸アルミニウムタンクと処理槽1とを繋ぐ硫酸アルミニウム導入配管8、及び定量ポンプから主に構成される。
【0049】
本実施形態では、被処理原水として、ホウ素、ヒ素及びフッ素からなる群より選ばれる少なくとも1つの無機系有害成分と、鉄と、マンガンと、シリカとを含み、かつ、鉄成分の濃度が0.5mg/L以上である原水を用い、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムの水溶液を用い、バブリングガスとして空気を用い、かつ、被処理原水を連続処理する例について説明する。
鉄、マンガン、シリカ及び無機系有害成分を含む被処理原水は、被処理原水導入手段としての被処理原水導入配管6を介して図示しない定量ポンプにより処理槽1内に導入される。
【0050】
本実施形態では、処理槽1は、原水貯留槽(原水槽)を兼ねている。このように処理槽1が原水槽を兼ねることにより、原水槽の設置にかかる面積、費用等を低減することが可能となる。ここで、原水槽とは、処理前の原水を一時的に貯留しておくための水槽(タンク)を指し、例えば地下水を処理する場合、或いは浄水場等において表流水を処理する場合等に、処理前の原水(例えば、地下水や表流水)を貯留するいわゆる原水タンクをいう。
【0051】
処理槽1内には、複数の分離膜フィルターから構成される浸漬膜モジュール2が設置されている。浸漬膜モジュール2の下方には、散気管4が配置されており、ブロワ3から連続的又は間欠的に送られた空気が散気管4より気泡5として放出され、分離膜フィルターの間を通り上昇する。その際、この気泡5により気液混合上昇流が生じ、浸漬膜モジュール2を揺動させ、分離膜フィルター間に被処理原水中に浮遊する固形物(析出物、凝集体)13が滞留したり、分離膜フィルターの表面に固形物13が付着するのを抑制し、また、付着した固形物13を除去することが可能となるので、膜分離効率を向上させることができる。
【0052】
次に、処理槽1に次亜塩素酸ナトリウム及び硫酸アルミニウムが、それぞれ酸化剤導入配管7及び硫酸アルミニウム導入配管8を介して定量ポンプにより導入される。処理槽1内では、前述のように散気管4より供給される空気により気液混合上昇流が生じており、処理槽1内がこの上昇流により攪拌されるため、処理槽1内に導入された次亜塩素酸ナトリウム及び硫酸アルミニウムを処理槽1全体に行き渡らせることができる。このため、鉄及び/又はマンガンの酸化反応が処理槽1内で略均一に行われることになる。
また、この酸化反応により生じた、触媒及び/又は析出促進剤等として働くことが可能な、鉄及び/又はマンガンの酸化物を、処理槽1内に略均一に分散することが可能となるので、処理槽1内で生じる酸化、析出、及び/又は凝集等の各種反応を略均一に行うことが可能となる。したがって、酸化反応の一層の促進、或いはシリカ等の微量成分の凝集(沈降)の一層の促進を図ることが可能となると考えられる。
【0053】
次亜塩素酸ナトリウムの導入量は、処理槽内の残留塩素濃度が0.05mg/L以上5.0mg/L以下、好ましくは0.1mg/L以上1.0mg/L以下となるように調節される。具体的には、処理槽1内には残留塩素センサ15が設置されており、処理槽1内の残留塩素濃度が測定される。残留塩素濃度の測定値は、図示しない制御部に送られ、制御部において予め設定された設定範囲と比較される。
制御部は、残留塩素濃度の測定値が残留塩素濃度の設定範囲の下限値より低いと判断した場合には、次亜塩素酸ナトリウムの導入量を現在供給されている量より増加するように、酸化剤導入手段を構成する定量ポンプに指示を与え、残留塩素濃度の測定値が設定範囲に収まった時に次亜塩素酸ナトリウムの導入量をそのまま固定するよう指示を送る。
また、制御部が残留塩素濃度の測定値が残留塩素濃度の設定範囲の上限値より高いと判断した場合には、現在供給されている量を減少させるように定量ポンプに指示し、残留塩素濃度の測定値が設定範囲に収まった時に次亜塩素酸ナトリウムの導入量をそのまま固定するよう指示を送る。これらの制御は、連続的に行われる。
【0054】
硫酸アルミニウムについては、被処理原水中に含まれる分離対象成分の濃度を測定し、分離対象成分の濃度10〜70mg/Lに対し、硫酸アルミニウムをAlに換算した値(以下、Al換算値という)で5〜100mg/L、好ましくは10〜50mg/Lとなるように、処理槽1内に導入する。
【0055】
なお、本実施形態の水処理装置には、必要に応じて、金属成分添加手段(金属成分添加装置)を設けてもよい。金属成分添加手段は、図示しない金属成分タンク、金属成分と処理槽1を繋ぐ金属成分導入配管9及び定量ポンプより主に構成される。原水中に含まれる被酸化性金属成分の量が0.5mg/Lに満たない場合には、被酸化性金属成分の量が0.5mg/L以上となるように、鉄イオン等の比較的酸化され易い金属成分を、金属成分導入配管9を介して定量ポンプにより処理槽1内の被処理原水に加えられる。
【0056】
散気管4の下方には、傾斜板12が配置されている。酸化剤及び硫酸アルミニウムの導入により処理槽1内で生じた固形物13の少なくとも一部は、傾斜板12を経て、処理槽1の下部に集積される。傾斜板12は、固形物13が処理槽1の下部へ沈降するのを促すと共に、再び浮上するのを防止する役割を果たす。集積された固形物13は処理槽1の下部に配置したバルブ14を開閉して外部へ適宜排出される。これにより、過剰の固形物が被処理原水中に浮遊することによる膜閉塞を防止すること等が可能となる。
【0057】
処理槽1内で酸化剤及び硫酸アルミニウムで処理された被処理原水は、分離膜フィルターを介して処理水ポンプ10により吸引することにより、固形物がろ別され、清澄な処理水が取り出され、処理水配管11を介して図示しない貯水タンク等に送られる。
【0058】
本実施形態では、得られる処理水は、水道法に基づく水質基準に定められた値の範囲内、即ち、鉄分の濃度が0.3mg/L以下、マンガンの濃度が0.05mg/L以下、ホウ素の濃度が1.0mg/L以下、ヒ素の濃度が0.01mg/L以下、及び、フッ素の濃度が0.8mg/L以下となることを目指すが、より好ましくは各々の濃度が各々の濃度の半分程度以下になることが望ましい。
【0059】
なお、上記実施形態では、処理槽1下部より排出された固形物13は、外部へ排出することとしたが、少なくとも一部の固形物13を図示しない返送ライン(配管)を介して処理槽1内に返送してもよい。また、上記実施形態では、被処理原水を連続処理する例について説明したが、バッチ処理とすることを妨げるものではない。また、上記実施形態では、処理槽1が原水槽を兼ねる例について説明したが、処理槽1の前に原水槽を別途設けてもよい。
【実施例1】
【0060】
地下水を原水として原水槽に流入し、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを、原水槽内の残留塩素濃度が0.2mg/Lになるようにコントロールして注入した。また別に、硫酸アルミニウムを、原水槽内濃度で20mg/L(Al換算値)となるよう添加した。原水槽内には分画0.01μmのPVDF製浸漬型UF中空糸膜フィルターモジュールを配置し、吸引ポンプによってOUT−IN方式で30KPaのろ過差圧の下、10分吸引1分停止の間隔で膜ろ過線流速約1m/m/日で連続的にろ過処理を行った。HRTは30分であった。
浸漬膜モジュールの下方には散気管を配置し、酸化の補助と膜のファウリング防止を兼ねてフィルターモジュールの底部面積あたり20Nm/m/時で空気バブリングを行った。散気管の下方に傾斜板があり、酸化・析出・凝集体は、順次、錐形の原水槽底部に堆積したので様子を見て原水槽底部のバルブを開いて排出した。
【0061】
比較例として硫酸アルミニウムを添加しない系(比較例1)、硫酸アルミニウムに替えてPAC(ポリ塩化アルミニウム)を添加した系(比較例2)を用い、実施例1と同様の条件で試行した。
【0062】
実施例1、比較例1、及び比較例2の結果を、第1表に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
第1表に示すように、実施例1、比較例1及び比較例2のいずれでも、鉄及びマンガン成分はいずれの場合も99%近くの高い除去率で除去された。したがって、原水を酸化剤で処理し、膜分離することにより鉄及びマンガンは高い除去率で除去されると考えられる。これに対し、シリカ、ホウ素、ヒ素、及びフッ素成分は、原水を酸化剤及び硫酸アルミニウムを用いて処理した場合には、90%以上の除去率が達成されたのに対し(実施例1)、硫酸アルミニウムを添加しない系(比較例1)及び同じアルミ系凝集剤のPACを添加した系(比較例2)ではシリカ、ホウ素、ヒ素、及びフッ素成分は殆ど除去されなかった。
【実施例2】
【0065】
鉄及びマンガン成分の含有量が少ない地下水を原水として原水槽に流入し、これに鉄成分として塩化第二鉄水溶液を原水槽に注入し、鉄の含有量が0.6mg/Lになるように調整した。酸化剤として原水槽での残留塩素濃度が0.2mg/Lにコントロールして次亜塩素酸ナトリウムを注入した。
また別に、硫酸アルミニウムを原水槽内濃度で20mg/L(Al換算値)となるよう添加した。原水槽内には分画0.01μmのPVDF製浸漬型UF中空糸膜フィルターモジュールを配置し、吸引ポンプによってOUT−IN方式で30KPaのろ過差圧の下、10分吸引1分停止の間隔で膜ろ過線流速約1m/m/日で連続的にろ過処理を行った。HRTは30分であった。
浸漬膜モジュールの下方には散気管を配置し、酸化の補助と膜ろ過ファウリングの防止を兼ねてフィルターモジュールの底部面積あたり20Nm/m/時で空気バブリングを行った。散気管の下方には傾斜板を配置し、酸化・析出・凝集体は、順次、錐形の原水槽底部に堆積したので様子を見て原水槽底部のバルブを開いて排出した。
【0066】
比較例として、鉄の含有量が0.4mg/Lになるように塩化第二鉄水溶液を原水槽に注入した系(比較例3)と塩化第二鉄水溶液を原水槽に注入しない系(比較例4)を用いて、実施例2と同様の条件で実験を行った。
【0067】
実施例2、比較例3、及び比較例4の結果を、第2表に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
第2表に示すように、被酸化性成分の鉄が0.5mg/L以上原水中に含まれる系では、酸化剤及び硫酸アルミニウムによる処理により、鉄は勿論、シリカ、ホウ素、ヒ素、及びフッ素成分は90%以上除去されたのに対し(実施例2)、原水中に含まれる被酸化性成分の鉄が0.5mg/L未満の系(比較例3及び4)ではシリカ、ホウ素、ヒ素、及びフッ素成分は殆ど除去されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
近年、地球環境の悪化等に伴う水道原水汚染の進行への対処、水道後進国での水道施設建設需要の急増、省エネルギー、省資源等を達成するために、水道浄水技術の革新が必要となっている。本発明は、簡単な設備で効率良く複数の水中微量成分を同時に除去することが可能であり、小規模施設等での飲料水(水道水)の製造に好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、本発明の水処理方法に用いられる水処理装置の一態様を示す概略図である。
【符号の説明】
【0072】
1 処理槽(原水槽)
2 浸漬膜モジュール
3 ブロワ
4 散気管
5 気泡
6 被処理原水導入配管
7 酸化剤導入配管
8 硫酸アルミニウム導入配管
9 金属成分導入配管
10 処理水ポンプ
11 処理水配管
12 傾斜板
13 固形物
14 バルブ
15 残留塩素センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被酸化性成分、シリカ及び無機系有害成分を含む被処理原水を貯留した槽内に浸漬した分離膜フィルターで膜ろ過を行い、処理水を得る水処理方法であって、
前記被処理原水を酸化剤及び硫酸アルミニウムで処理した後、生じた固形物を前記槽内の前記分離膜フィルターにより固液分離することで、前記被酸化性成分、シリカ及び無機系有害成分を一括除去することを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
前記被酸化性成分が鉄及び/又はマンガンであり、鉄及び/又はマンガンが被処理原水中に0.5mg/L以上含まれていることを特徴とする請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】
前記無機系有害成分が、ホウ素、ヒ素及びフッ素からなる群より選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1又は2に記載の水処理方法。
【請求項4】
前記被酸化性成分が鉄及びマンガンであり、前記無機系有害成分がホウ素、ヒ素、及びフッ素であり、前記処理水中の鉄の濃度を0.3mg/L以下、マンガンの濃度を0.05mg/L以下、ホウ素の濃度を1.0mg/L以下、ヒ素の濃度を0.01mg/L以下、及び、フッ素の濃度を0.8mg/L以下とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水処理方法。
【請求項5】
前記酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを用い、前記槽内における残留塩素濃度を0.1mg/L以上1.0mg/L以下とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の水処理方法。
【請求項6】
前記酸化剤として、次亜塩素酸ナトリウムと空気とを併用し、空気を前記分離膜フィルターの下方に設置した散気手段により供給することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の水処理方法。
【請求項7】
前記槽における被処理原水のHRTが5分以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の水処理方法。
【請求項8】
被酸化性成分、シリカ及び無機系有害成分を含む被処理原水を、酸化剤及び硫酸アルミニウムで処理した後、生じた固形物を分離膜フィルターにより固液分離することで、前記被酸化性成分、シリカ及び無機系有害成分を一括除去することを特徴とする水処理方法。
【請求項9】
ホウ素、ヒ素及びフッ素からなる群より選ばれる少なくとも1つの無機系有害成分と、鉄及び/又はマンガンと、シリカとを含み、鉄及び/又はマンガンの濃度が0.5mg/L以上である被処理原水を貯留した槽内に、次亜塩素酸ナトリウム及び硫酸アルミニウムを注入した後、生じた固形物を当該槽内に浸漬した分離膜フィルターにより分離し、処理水を得る水処理方法であって、
前記槽内の残留塩素濃度が0.1mg/L以上1.0mg/L以下となるように次亜塩素酸ナトリウムの注入量を制御すると共に、前記分離膜フィルターの下方に設けられた散気手段により、酸化性ガスを散気することで、酸化性ガスの散気時には、該槽内の酸化反応を補助すると同時に、前記分離膜フィルターの膜表面に沿って上昇する上昇流を生じさせ、前記分離膜フィルターの膜表面を洗浄し、かつ、鉄及び/又はマンガンと次亜塩素酸ナトリウム及び/又は前記酸化性ガスとの反応により生じた酸化鉄及び/又は酸化マンガンを槽内にほぼ均等に存在せしめ、前記槽内の酸化、結晶析出、及び/又は凝集を促進させ、酸化性ガスの停止時には、前記槽内に生じた固形物の少なくとも一部が槽底部に沈降するのを促進し、該槽内に浮遊する固形物の量を調節することで、無機系有害成分と、鉄及び/又はマンガンと、シリカとを一括除去することを特徴とする水処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−36180(P2010−36180A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226485(P2008−226485)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(596136316)株式会社ウェルシィ (18)
【Fターム(参考)】