説明

水処理用固定床エレメントの製造方法

【課題】水処理用固定床エレメントをいっそう効率良く製造できるようにする。
【解決手段】複数の経糸1と多数の緯糸2とからなる簾状の織物6を形成する。経糸1の長さ方向の両端に固定床の枠体への取付け部9を形成する。隣り合う経糸1どうしの間における緯糸2の部分を経糸1の長さ方向にわたって切断する。各経糸1の長さ方向の中間部に捩じりを加えて経糸1に長さ方向にわたる撚りを与えることで、切断された多数の緯糸2を各経糸1のまわりに螺旋状に配列させるとともに各経糸1から放射状に突出させる。各経糸1をその中間部で切断して、この切断部における縦糸1の端部に固定床の枠体への取付け部9Aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水処理用固定床エレメントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理用固定床エレメントとして、芯材の長さ方向にわたって多数の房状糸を放射状に突出させたものが知られている。このような芯材と房状糸とからなる接触材によれば、房状糸が揺動することによって、汚泥の付着が均一になるとともに余分な汚泥の付着が発生しないという利点がある。
【0003】
このような固定床エレメントを能率よく製造するための方法が、特許文献1において提案されている。すなわち特許文献1には、複数の経糸と多数の緯糸とからなる簾状の織物を形成し、経糸の長さ方向の両端に固定床の枠体への取付け部を形成し、隣り合う経糸どうしの間における緯糸の部分を経糸の長さ方向にわたって切断し、各経糸の長さ方向の中間部に捩じりを加えてこの経糸に長さ方向にわたる撚りを与えることで、切断された多数の緯糸を各経糸のまわりに螺旋状に配列させるとともに各経糸から放射状に突出させ、各経糸に与えられた撚りの状態を固定具によって保持させることが記載されている。
【0004】
図3は、特許文献1に記載の製造方法を説明するもので、複数存在するそれぞれの経糸1のまわりに多数の緯糸2が螺旋状に配列されるとともに各経糸1から放射状に突出された状態が示されている。3は、経糸1の長さ方向の両端に形成された、固定床の枠体への取付け部で、筒状に形成されている。各経糸1の長さ方向の中間部には、各経糸1に与えられた撚りの状態を保持するための固定具4が設けられている。固定具4は、針金などによって構成することができ、たとえばこの針金により経糸1の長さ方向の中間部に縛りを与えることで、撚りの状態を保持することができる。
【0005】
図3に示される段階の前に、上記のように複数の経糸1と多数の緯糸2とからなる簾状の織物が形成され、隣り合う経糸1、1どうしのに間における緯糸2の部分を経糸1の長さ方向にわたって切断され、各経糸1の長さ方向の中間部に捩じりを加えてこの経糸1に長さ方向にわたる撚りが与えられる。
【0006】
図3に、このような製造方法によって得られた固定床エレメントの概略構成を示す。ここで、Lはエレメントの長さを表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−275880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来の製造方法にさらに改善を加えて、水処理用固定床エレメントをいっそう効率良く製造できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため本発明は、複数の経糸と多数の緯糸とからなる簾状の織物を形成し、経糸の長さ方向の両端に固定床の枠体への取付け部を形成し、隣り合う経糸どうしのに間における緯糸の部分を経糸の長さ方向にわたって切断し、各経糸の長さ方向の中間部に捩じりを加えて経糸に長さ方向にわたる撚りを与えることで、切断された多数の緯糸を各経糸のまわりに螺旋状に配列させるとともに各経糸から放射状に突出させ、各経糸を前記中間部で切断して、この切断部における縦糸の端部に固定床の枠体への取付け部を形成するものである。
【発明の効果】
【0010】
このようにすると、一本の経糸に捩りを加えて撚りを与えたうえで切断することで二つのエレメントを製造することができるため、二本の経糸にそれぞれ捩りを加えて撚りを与える場合に比べて、一本の経糸あたりの捩りの回数は増えるものの、全体の作業としては手間をほぼ半減させることができる。作業の機械化も容易である。このため、水処理用固定床エレメントを効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態の水処理用固定床エレメントの製造方法を示す図である。
【図2】図1よりも前の製造工程を示す図である。
【図3】従来の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明にもとづき水処理用固定床エレメントを製造する際には、まず、図2に示すように、製造しようとするエレメントの長さLに比べて約2倍強の長さを有する経糸1を複数準備する。そして、この複数の経糸1と多数の緯糸2とによって簾状の織物6を製造する。すなわち、経糸1どうしは所定の間隔をおいて疎に配置し、緯糸2どうしはほとんど間隔をおかずに密に配置する。詳細には、隣り合う経糸1どうしは、製造されるエレメントにおける房状の接触材の直径に対応した距離だけ互いに離れている。
【0013】
緯糸2の両端は、織物6の両側端に配置された二つの経糸1から、房状の接触材の半径に対応した長さだけ、それぞれ側方にはみ出している。経糸1にはポリエステル強力糸などを利用するのが好ましく、また緯糸2には、ハイバルク加工により嵩高に構成されたアクリル繊維などを利用するのが好ましい。
【0014】
このような織物6が製造されたなら、図1(a)に示すように、織物6における複数の経糸1の両端側に対応する部分にわたってキャンバスなどの添え布8を当てがい、この添え布8とともに経糸1の長さ方向に沿った織物6の両端を袋状に縫製して、固定床の枠体への取付け部9を形成する。すなわち、一対の取付け部9、9の間に複数の経糸1がわたされた状態となる。取付け部9は、図1に示すように、緯糸2の方向に袋状すなわち筒状となるように構成され、その両端が開口している。
【0015】
次に、隣り合う経糸1どうしの中間の位置における緯糸2の部分を、一方の取付け部9から他方の取付け部9にわたって、すなわち経糸1の長さ方向にわたって切断する。そして、各経糸1における長さ方向の中間部7に、それぞれ捩じりを加える。これにより、経糸1における捩じりを加えた部分の両側では、互いに反対方向の撚りが入り、経糸1の長さ方向にわたって、緯糸2が経糸1のまわりに螺旋状に配列されるとともに経糸1から放射状に突出されることになる。
【0016】
各経糸1について同様の処理を施したなら、これら経糸1の長さ方向の中間部7すなわち捩じりを加えた部分を切断する。図1(a)において、10は切断線を表す。そして、経糸1に施した撚りを保持したまま、図1(b)(c)に示すように、切断個所における複数の経糸1の端部にわたって同様にキャンバスなどの添え布8を当てがい、この添え布8とともに経糸1の長さ方向に沿った織物6の両端を袋状に縫製して、固定床の枠体への取付け部9Aを形成する。
【0017】
すなわち、所要の長さLの約2倍の長さの複数の経糸1に撚りを付与したうえで、これら経糸1の長さ方向における中間部7を切断することで、複数の経糸1を有する長さLの二つのエレメントを効率良く製造することができる。このようにすると、生産性が高く、また従来に比べて経糸1の長さを約2倍にするだけで良いために製造のための機械化が容易であり、しかも特殊な製造技術は必要がないため品質的にも安定させることができ、均一なエレメントを得ることができる。
【符号の説明】
【0018】
1 経糸
2 緯糸
6 織物
7 中間部
9 取付け部
9A 取付け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の経糸と多数の緯糸とからなる簾状の織物を形成し、経糸の長さ方向の両端に固定床の枠体への取付け部を形成し、隣り合う経糸どうしのに間における緯糸の部分を経糸の長さ方向にわたって切断し、各経糸の長さ方向の中間部に捩じりを加えて経糸に長さ方向にわたる撚りを与えることで、切断された多数の緯糸を各経糸のまわりに螺旋状に配列させるとともに各経糸から放射状に突出させ、各経糸を前記中間部で切断して、この切断部における縦糸の端部に固定床の枠体への取付け部を形成することを特徴とする水処理用固定床エレメントの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−167321(P2010−167321A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9407(P2009−9407)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(591215878)エヌ・イー・ティ株式会社 (10)
【Fターム(参考)】