説明

水処理装置および水処理方法

【課題】円筒状電極と線状電極間の距離を簡易に調整可能とすることでスパークを防止し、ストリーマ放電による水処理を長時間安定して行うことができる水処理装置を提供することを目的としている。
【解決手段】円筒状をした螺旋電極3と、螺旋電極3の円筒内部を貫通するように配置された線状電極4とを少なくとも1対有するとともに、螺旋電極3と線状電極4との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に被処理水Wを水滴化して供給し、水滴M中の被処理物を分解処理するようにした水処理装置1aであって、螺旋電極3が、螺旋電極3の中心軸方向の長さを一定に保ちながら螺旋電極3の内径が可変に形成されている構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上水、下水、排水等に含有される有機物、無機物、微生物を放電により発生するラジカル、オゾン等の活性種により分解処理する水処理装置およびこの水処理装置を用いた水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器内に、円筒状電極とこの円筒状電極の円筒内を臨むように配置された線状電極とを少なくとも1対有するとともに、前記円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に被処理水を1500μm以下の水滴として供給し、水滴中の被処理物を放電によって発生するオゾン、OHラジカル、Oラジカル等の活性種によって分解処理するようにした水処理装置が既に提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、この水処理装置は、円筒状電極と線状電極との間に、円柱状に長いストリーマ放電空間が形成され、この円柱状に長いストリーマ放電空間内に1500μm以下と細かい粒径の水滴を供給するようにしたので、水滴が長い時間放電空間内に曝されるとともに、上記活性種に接触する被処理水の総表面積が大きくなる。
したがって、この水処理装置は、水滴中の有機物が上記活性種によって効率よく分解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−241055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、先に提案された水処理装置は、上記のように処理性能に優れたものであるが、被処理水の電気伝導率が高い場合、正常な放電が行われなくなってしまう問題がある。
【0006】
本発明の発明者がその原因について検討した結果、被処理水の電気伝導率が高くなると、円筒状電極と線状電極間の距離によっては、ストリーマ放電中にスパークが生じやすくなることが判った。
すなわち、被処理水の電気伝導率に適した円筒状電極と線状電極間距離が存在し、その距離を適正化すればスパーク発生は防止できることが判った。
そして、スパークの発生によって、正常なストリーマ放電が阻害されるとともに、スパークが激しい場合は、線状電極がスパークの熱によって伸びる、あるいは、溶断する場合がある。
【0007】
一方、被処理水の電気伝導率は、現場状況や日時の違いによって変化する。しかし、電気伝導率の変化に合せて、その都度、円筒状電極と線状電極間の距離を適正化するために、円筒状電極や線状電極をすべて取り替えていたのでは、コスト、時間が膨大となり、現実的ではない。
したがって、本発明は、上記事情に鑑みて、円筒状電極と線状電極間の距離を簡易に調整可能とすることでスパークを防止し、ストリーマ放電による水処理を長時間安定して行うことができる水処理装置および水処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明にかかる水処理装置(以下、「本発明の水処理装置」は、筒状をした円筒状電極と、円筒状電極の円筒内部を貫通するように配置された線状電極とを少なくとも1対有するとともに、前記円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に被処理水を水滴化して供給し、水滴中の被処理物を分解処理するようにした水処理装置であって、前記円筒状電極は、円筒の中心軸方向の長さを一定に保ちながら円筒内径が可変に形成されていることを特徴としている。
【0009】
本発明の水処理装置において、特に限定されないが、円筒状電極としては、螺旋円筒状に線材を螺旋円筒状に巻回して形成されたものが好ましい。
螺旋ピッチ、螺旋径は、スパークが発生しなければ、特に限定されないが、全体的に径やピッチが等しくなっている円筒形のものが好ましい。
また、螺旋ピッチは、特に限定されないが、円筒状電極の側面の開口率が、円筒状電極の内径が変化しても、常に、50%以上となるようなピッチとすることが好ましい。
【0010】
本発明において、上記開口率とは、円筒状電極の周壁の全表面に占める螺旋ループする線材間の隙間部分の総面積である。
因みに、円筒状電極が上下方向で均一な径の円筒をしている場合において、図3に示すように、円筒状電極の中心軸方向の全長をLmm、線材の線径をD1mm、螺旋ピッチをPmm、巻き数をNとするとしたとき、(L−N×D1)/L×100で現される。また、N=L/Pの関係があるので、Nに代入すると、開口率は、(L−L/P×D1)/L×100とあらわすことができる。
【0011】
したがって、開口率が50%以上とは、(L−L/P×D1)/L×100≧50の関係を満足するということになる。
これをPについて解くと、P≧D1/0.5となり、螺旋ピッチは線径のみで決まる。従って、例えば、線径5mmの線材を用いて開口率50%以上の円筒状電極を得るには、電極の中心軸方向の全長に関係なく、ピッチPは5÷0.5=10mmとなり、10mm以上のピッチで巻けば開口率50%以上確保できることになる。
【0012】
円筒状電極の内径D2は、線状電極との間でストリーマ放電を生じさせることができれば、特に限定されないが、放電のしやすさから40mm〜70mmの間で内径D2を変化させることが好ましい。
【0013】
また、本発明の水処理装置において、上記螺旋状に線材を巻回した円筒状電極の内径を変化させる方法としては、特に限定されないが、たとえば、線材の一端が第1電極受部に支持され、他端が第2電極受部に支持されているとともに、前記第1電極受部および第2電極受部は、両電極受部の線材支持部間の円筒状電極の中心軸方向の距離を一定に保ちながら、少なくともいずれか一方の電極受部が、前記線材の端を支持した状態で円筒の中心軸周りに回転可能に形成されている構成とすることが好ましい。
【0014】
上記のような構成にすれば、いずれか一方の電極受部を回転不可状態としておき、他方を回転可能にして、この回転可能となった電極受部を螺旋の巻き方向と逆方向に回転させることによって、螺旋の径が大きくなる。そして、その状態で回転可能になった電極受部を回転不可状態に固定することによって、中心軸方向の長さが変わらず、内径の大きな円筒状電極とすることができる。
また、電極受部を螺旋の巻き方向に回転させることによって、螺旋の径が小さくなる。そして、その状態で回転可能になった電極受部を回転不可状態に固定することによって、中心軸方向の長さが変わらず、内径の小さな円筒状電極とすることができる。
すなわち、簡単な構造で容易に円筒状電極の内径を可変とすることができる。
【0015】
本発明の水処理装置において、上記線状電極の材質としては、導電性があり耐食性、耐熱性に優れたものであれば、特に限定されないが、ステンレス鋼、タングステン鋼、チタン鋼、炭素が好適である。
線状電極の線径はストリーマ放電が安定に発生すれば特に限定されないが、放電のし易さ安定性から0.1mmから5mmが好ましい。
【0016】
本発明の水処理装置において、ストリーマ放電空間に供給される水滴の粒径は、1500μm以下が好ましく、10μm以上1500μm以下が好ましいが、その理由は、粒径が大きくなりすぎると、ストリーマ放電空間のプラズマに接触する体積あたりの表面積が小さくなり、処理効率が悪くなるためである。
本発明の水処理装置において、水滴の粒径の測定方法は液浸法による。水滴はシリコンオイルを満たしたシャーレに、シャーレの上部に設置した噴射ノズルの先端から水滴を噴霧し、噴射軸に対して垂直に置かれたシャーレにより採取した。採取した水滴は素早く撮像し、サイズ毎の粒径をカウントし、ザウター平均粒径を求め水滴の粒径とした。
【0017】
本発明の水処理装置において、被処理水を水滴化して供給する手段(以下、「水滴供給手段」と記す)としては、被処理水を粒径が1500μm以下の水滴にして供給することができれば、特に限定されないが、例えば、噴射ノズルが好適である。
また、上記水滴供給手段としては、被処理水を蒸気化して供給する蒸気発生装置でも構わない。この蒸気発生装置としては、特に限定されず、加熱式、超音波式及びこれらを併用したものが挙げられる。
【0018】
上記水滴供給手段として噴射ノズルを用いる場合、その噴角は、噴射ノズルから噴射される水滴の最外縁がストリーマ放電空間の最外縁に沿うように調整されていることが好ましい。
すなわち、ストリーマ放電空間の最外縁より外側まで広がるように水滴を噴射させても効率が落ちるとともに、容器の内壁面にぶつかり、大きな水滴となり内壁面に沿って流れ落ちて効率が悪くなるおそれがある。
なお、本発明の水処理装置において、上記噴角(噴霧角度)とは、ノズルからミスト状の水滴にされて噴射された水滴が、放物線を描きつつ落下するため、ノズルの噴射口から出た直後の被処理水ミストの広がり角度を意味する。
【0019】
噴射ノズルによる水滴の噴射方向は、特に限定されないが、例えば、ストリーマ放電空間の上側から下側、ストリーマ放電空間の下側から上側、あるいは、円筒状電極の側方からストリーマ放電空間方向のいずれでも構わない。
噴射ノズルの数は、特に限定されず、1つ以上備えていればよい。また、円筒状電極及び線状電極を2対以上備えるような場合は、噴射ノズルは2つ以上備えていてもよい。
【0020】
本発明の水処理装置は、円筒状電極及び線状電極は、処理効率を考えると2対以上備えていることが好ましい。
例えば、円筒状電極及び線状電極を2対以上、円筒状電極の中心軸を平行にして配置すれば、上記のように円筒状電極が、線材を螺旋円筒状に巻回して形成され、螺旋ピッチ間に隙間が形成されている場合、噴射ノズルから噴射された水滴が、螺旋ピッチ間の隙間を水通過する。したがって、円筒状電極の内側に一旦入った水滴がこの隙間を介して一旦外側に出て、隣接する円筒状電極内に入り、再び円筒状電極内で形成されるストリーマ放電空間を通過し、効率よく処理が行なわれる。
【0021】
また、上記のように、円筒状電極及び線状電極を複数対設けた場合、噴射ノズルの噴射軸方向が、各円筒状電極の中心軸に平行になっていて、噴射ノズルの噴射軸から遠い位置に配置された円筒状電極の噴射ノズル側端面が、前記噴射軸に近い位置に配置された円筒状電極の噴射ノズル側端面に比べ、前記噴射ノズルから遠い位置に設けられている構成とすると、噴射ノズルから噴射された水滴が、効率よく各円筒状電極内、すなわち、ストリーマ放電空間内に供給できる。
【0022】
また、上記水滴供給手段として、噴射ノズルを用い、この噴射ノズルから噴射されるミスト状になった水滴の最外縁がストリーマ放電空間の最外縁に沿うように噴射ノズルの噴角を調整すれば、被処理水を円筒状電極の径に併せて効率的にストリーマ放電空間に供給することができ、より効率的に処理を行うことができる。
また、上記のように円筒状電極及び線状電極を2対以上備えている構成の場合、ストリーマ放電空間へ無駄なく、被処理水ミストを供給して効率よく処理することができるように、噴射ノズルの噴射軸方向と、各円筒状電極の中心軸とが平行になっていて、噴射ノズルの噴射軸から遠い位置に配置された円筒状電極の噴射ノズル側端面が噴射軸に近い位置に配置された円筒状電極の噴射ノズル側端面に比べ、噴射ノズルから遠い位置に設けられているように円筒状電極を配置してもよい。
【0023】
さらに、本発明の水処理装置においては、円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加する高圧電源や、ストリーマ放電空間を通過してきた水滴を受けて貯める貯水槽と、この貯水槽に貯められた水を被処理水として水滴供給手段に送るポンプとからなる被処理水循環構造を備えていてもよい。
さらに、上記貯水槽に貯められた水を被処理水として水滴供給手段に送るポンプとからなる被処理水循環構造を備えていれば、被処理水中の有機物の分解率を向上させることができる。
【0024】
円筒状電極と線状電極との間に印加される充電電圧は、ストリーマ放電が起きる電圧であれば、特に限定されない。
【0025】
本発明にかかる水処理方法は、筒状をした円筒状電極と、円筒状電極の円筒内部を貫通するように配置された線状電極とを少なくとも1対有するとともに、前記円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に被処理水を水滴化して供給し、水滴中の被処理物を分解処理するようにした水処理方法であって、前記円筒状電極を円筒内径が可変に形成し、被処理水中の被処理物濃度が高くなると、円筒状電極の円筒内径を大きくすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
本発明の水処理装置は、以上のように、筒状をした円筒状電極と、円筒状電極の円筒内部を貫通するように配置された線状電極とを少なくとも1対有するとともに、前記円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に被処理水を水滴化して供給し、水滴中の被処理物を分解処理するようにした水処理装置であって、前記円筒状電極は、円筒の中心軸方向の長さを一定に保ちながら円筒内径が可変に形成されているので、円筒状電極と線状電極間の距離を被処理水の電気伝導率に応じた適正な距離に短時間で容易に変えることができる。すなわち、低コストで、スパークの発生を抑えることができる。
したがって、スパークによってストリーマ放電を阻害することがなくなり、長時間安定した水処理能力を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の水処理装置の第1の実施の形態を模式的にあらわした図である。
【図2】図1の水処理装置の円筒状電極である螺旋電極の径調整構造を説明する図であって、同図(a)は図1のX−X線断面図、同図(b)は図1の水処理装置の螺旋電極部分の拡大側面断面図である。
【図3】図1の螺旋電極を拡大してあらわす正面図である。
【図4】本発明の水処理装置の第2の実施の形態を模式的にあらわした図である。
【図5】本発明の水処理装置の第3の実施の形態を模式的にあらわした図である。
【図6】本発明の水処理装置の第4の実施の形態を模式的にあらわした図である。
【図7】本発明の水処理装置の第5の実施の形態を模式的にあらわした図である。
【図8】本発明の水処理装置の第6の実施の形態を模式的にあらわした図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本発明の水処理装置の第1の実施の形態をあらわしている。
【0029】
図1に示すように、この水処理装置1aは、容器(処理槽)2と、円筒状電極である螺旋電極3と、線状電極4と、被処理水タンク5と、被処理水ポンプ70と、噴射ノズル7と、被処理水供給ホース71と、高圧電源であるパルスパワー発生装置8とを備えている。
容器2は、例えば、アクリル樹脂、FRPの絶縁材料や、内面が絶縁材で被覆されたステンレス鋼などの金属材料で形成されている。
【0030】
螺旋電極3は、図3に示すように、例えば、ステンレス鋼製の線径D1が3〜10mmの線材31が、開口率50%以上となる螺旋ピッチPで、全長Lが5〜100cm、最小内径(無負荷状態での螺旋内径)D2が40mmとなるように、螺旋円筒形状に巻回されて形成されている。
【0031】
そして、螺旋電極3は、螺旋の中心軸が、後述する噴射ノズル7の噴射軸方向に一致するように配置されているとともに、螺旋電極3の下端が第1電極受部9aの第1支持アーム92にボルト92aおよびナット92bを介して支持され、螺旋電極3の上端が第2電極受部9bの第2支持アーム95にリベット96を介して支持されている。
【0032】
第1電極受部9aは、たとえば、ステンレス鋼、タングステン鋼、チタン鋼、炭素等の導電性材料で形成された受部本体91と支持アーム92とを備えている。
受部本体91は、内径が螺旋電極3の最大外径(内径を最大にしたときの外径)以上の孔91aを中央に備えたリング状をしていて、外周縁部が容器2に固定されている。
支持アーム92は、図2(b)に示すように、一端がステンレス鋼、タングステン鋼、チタン鋼等の導電性材料で形成されたボルト92aおよびナット92bによって受部本体91に固定され、他端がボルト92aおよびナット92bによって受部本体91に固定されている。
【0033】
第2電極受部9bは、たとえば、塩化ビニル樹脂、四フッ化エチレン樹脂、シリコン樹脂等の絶縁性があり、耐食性、耐熱性に優れた材料で形成された受部本体93と、筒状支持部94と、第2支持アーム95とを備えている。
受部本体93は、内径が螺旋電極3の最大外径(内径を最大にしたときの外径)以上の孔93bを中央に備え、容器2の内径より小さい外径のリング状をしている。
また、受部本体93は、段状に縮径する嵌合突部93aを備えるとともに、図2(a)に示すように、周縁部に上下方向に貫通する2つの円弧状のガイド溝93cが中心軸を挟んで対称に設けられている。
【0034】
筒状支持部94は、図2(b)に示すように、本体支持部94aと、脚部94bとを備えている。
本体支持部94aは、受部本体93の外径とほぼ同じ外径で、嵌合突部93aが中心軸周りに回転可能に嵌り込り込むリング状をしているとともに、ガイド溝93cを介して螺合された固定ボルト93dによって受部本体93を抜け止め状態に支持している。
【0035】
脚部94bは、円筒状をしていて、その上端が本体支持部94aに接着や融着によって固定されているとともに、下端がボルトナット、接着や融着によって第1電極受部9aの受部本体91に固定されている。
第2支持アーム95は、その一端がリベット96によって受部本体93に固定され、他端が本体支持部94aに固定されている。
受部本体93の外径とほぼ同じ外径をした筒状をしていて、下端が第1電極受部9aの受部本体91の上面に受けられている
【0036】
したがって、螺旋電極3は、固定ボルト93d、および、ボルト92a・ナット92bの締め付けを弛めて、第2電極受部9bの受部本体93を図2(a)の矢印方向に回転させると、その内径が拡径する。そして、螺旋電極3の内径が所望の径まで拡径すると、固定ボルト93d、および、ボルト92a・ナット92bを締め付ければ、螺旋状態が拡径状態に維持される。
水処理中は、固定ボルト93d、および、ボルト92a・ナット92bは、固く締め付けるのが好ましい。特に第1電極受部9aはアースに接続されているため接続が弱く、すき間があいているとスパッタリング等が発生し、腐食を起こす可能性がある。
【0037】
一方、上記拡径状態から矢印と反対方向に固定ボルト93d、および、ボルト92a・ナット92bの締め付けを弛めて、第2電極受部9bの受部本体93を図2(a)の矢印と反対方向に回転させると、その内径が縮径する。
すなわち、螺旋電極3は、その中心軸方向の長さを変えることなく、その内径が可変となっている。
【0038】
線状電極4は、ステンレス鋼製の線径0.1〜5mmの線材によって形成されていて、螺旋電極3の上下に配置された線状電極固定治具41を介して、螺旋電極3の中心軸に沿うように支持され、螺旋電極3と絶縁された状態になっている。
線状電極固定治具41は、例えば、線状電極4の挿通孔を備えた袋ナットを、治具本体の割りを設けたねじ筒部に締め込むことによって、ねじ筒部を縮径させて線状電極4の端部をねじ筒部の内面で着脱可能に把持できる構造になっている。
【0039】
被処理水タンク5は、容器2内に噴射された水滴を容器2の下方で受けて貯めるようになっている。
被処理水ポンプ70は、被処理水タンク5内の被処理水Wを、被処理水供給ホース71を介して噴射ノズル7に送るようになっている。
【0040】
噴射ノズル7は、被処理水供給ホース71を介して送られてきた被処理水を粒径が1500μm以下の水滴からなる被処理水ミストMにして螺旋電極3の上部開口に向かって噴射するようになっている。
また、噴射ノズル7の噴角は、噴射される被処理水ミストMの最大広がり部でストリーマ放電空間の最外縁である螺旋電極3の内壁面に沿うような角度に調整されている。
【0041】
パルスパワー発生装置8は、放射状螺旋電極3が陰極、線状電極4が陽極となるように放射状螺旋電極3及び線状電極4に接続され、螺旋電極3と線状電極4との間にパルス状に高電圧を印加して螺旋電極3と線状電極4との間でストリーマ放電を起こすようになっている。
【0042】
この水処理装置1aは、上記のようになっており、被処理水タンク5に有機物等を含む被処理水Wを仕込むとともに、パルスパワー発生装置8によって、放射状螺旋電極3と線状電極4との間に、高電圧をパルス状に印加し、螺旋電極3内に上下方向に円柱状となったストリーマ放電空間を形成する。
そして、被処理水ポンプ70を駆動させて、被処理水タンク5内の被処理水Wを、ホース71を介して噴射ノズル7に送り、螺旋電極3の上方から螺旋電極3の中心軸方向に向かって噴射することによって被処理水Wを循環しながら処理するようになっている。
【0043】
すなわち、ストリーマ放電によって、オゾン、OHラジカル、Oラジカル等の活性種がストリーマ放電空間内に発生し、噴射ノズル7から噴射された被処理水ミストM中の水滴が円筒状をしたストリーマ放電空間内を落下していく間にこれら活性種に接触し、各水滴中の有機物が効率よく酸化分解処理される。
【0044】
しかも、この水処理装置1aは、螺旋電極3が、中心軸方向の長さを変えずにその内径を変化させることができる、すなわち、被処理水の電気伝導率に応じて螺旋電極3と線状電極4との距離を簡易に調整できるので、スパークの発生を抑えることができる。
したがって、スパークによってストリーマ放電を阻害することがなくなり、長時間安定した水処理能力を確保できる。すなわち、被処理水中の有機物などを効率よく分解処理することができるとともに、長時間その処理能力を持続できる。
さらに、螺旋電極3が、線材31を螺旋筒状に巻回することによって形成されているので、電極にスパークの原因となる溶接部分や電極面の凹凸をなくすことができ、スパークの発生をより抑えることができる。
【0045】
図4は、本発明にかかる水処理装置の第2の実施の形態をあらわしている。
図4に示すように、この水処理装置1bは、同じサイズ及び同じ形状の螺旋電極3及び線状電極4が4対容器2内で水平方向に並ぶように配置されている以外は、上記水処理装置1aと同様になっている。
なお、図4では、第1電極受部9aおよび第2電極受部9bが図示省略されている。
【0046】
図5は、本発明にかかる水処理装置の第3の実施の形態をあらわしている。
図5に示すように、この水処理装置1cは、噴射ノズル7が螺旋電極3の下方に設けられ、被処理水ミストを垂直上向き噴射するようにした以外は、上記水処理装置1bと同様になっている。
なお、図5では、第1電極受部9aおよび第2電極受部9bが図示省略されている。
【0047】
この水処理装置1cによれば、被処理水ミストMが、放電空間の下側から放電空間に向かって噴射されるので、被処理水ミストM中の各水滴が一旦上昇した後、その重力により下降することにより、放電空間での滞留時間が増加し、より効率的に処理することができる。
【0048】
図6は、本発明にかかる水処理装置の第4の実施の形態をあらわしている。
図6に示すように、この水処理装置1dは、噴射ノズル7を螺旋電極3の側方に設け、被処理水ミストMを螺旋電極3の側面から水平方向に噴射するようにした以外は、上記水処理装置1aと同様になっている。
なお、図6では、第1電極受部9aおよび第2電極受部9bが図示省略されている。
【0049】
図7は、本発明にかかる水処理装置の第5の実施の形態をあらわしている。
図7に示すように、この水処理装置1eは、噴射ノズル7の噴射軸Cに近い側の2本の螺旋電極3aより、遠い側の2本の螺旋電極3bの中心軸方向の長さが短くなっているとともに、短い螺旋電極3bの上端面を長い螺旋電極3aの上端面より噴射ノズル7から離れた位置、すなわち、下方に位置するように配置し、噴射ノズル7から噴射された被処理水ミストMの最外縁が短い螺旋電極3b内に確実に納まるように調整した以外は、上記水処理装置1bと同様になっている。
なお、図7では、第1電極受部9aおよび第2電極受部9bが図示省略されている。
【0050】
図8は、本発明にかかる水処理装置の第6の実施の形態をあらわしている。
図8に示すように、この水処理装置1fは、螺旋電極3及び線状電極4からなる電極対を6対備え、1つの電極対を線状電極4が容器本体21の中心軸に一致するように配置し、他の5つの電極対をその周囲を放射状に囲むように同一円周上に等間隔で並ぶように配置した以外は、上記水処理装置1aと同様になっている。
なお、図8では、第1電極受部9aおよび第2電極受部9bが図示省略されている。
【0051】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、パルスパワー発生装置を備えていたが、パルスパワー発生装置は市販のものを別途容易するようにしても構わない。
上記の実施の形態では、円筒状電極が螺旋電極であったが、円筒形状を保ちつつ、その内径を変化させることができれば、円筒状電極は螺旋電極でなくても構わない。
上記の実施の形態では、固定ボルト92aの締め込みによって受部本体93を回転位置で固定するようにしていたが、解除機構付きのワンウエークラッチを設けて、螺旋電極3の拡径方向に回転させる場合は、クラッチの働きによって戻りを防止するようにしてもよい。
上記第6の実施の形態の水処理装置では、1つの電極対の周囲を5つの電極対で囲む2重構造であったが、さらに外側に多くの電極対を3重、4重に配置するようにしても構わないし、第5の実施の形態の水処理装置のように容器本体の外側に配置された円筒状電極の上端面の位置を内側に配置された円筒状電極の上端面より下方に設けるようにしても構わない。
【0052】
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と対比させて説明する。
【0053】
(実施例1)
図1に示す水処理装置1aと同じ形状をした水処理装置を用い、被処理水の電気伝導率を0.1mS/cm、3.1mS/cm、10.2mS/cmに調整した被処理水を、以下の実験条件で脱色性評価及、スパーク発生評価および連続運転時間評価を実施した。このとき、螺旋電極内径は、表1に示す各被処理水に適した径にそれぞれ調整した。
〔実験条件〕
容器:透明アクリル樹脂製
被処理水:精製水にインジゴカルミンが20ppmの濃度に成るように調整し、更に電気伝導率が0.1mS/cm、3.1mS/cm、10.2mS/cmになるようにNaClを溶解させた水溶液
被処理水量:7リットル
被処理水の噴射速度(循環速度):12〜15L/分
充電電圧:27kV
放電回数:100回/秒
螺旋電極3の材質:線径5mmのステンレス鋼線
螺旋電極3の長さ:300mm
螺旋電極3の内径:0.1mS/cmのとき40mm、3mS/cmのとき50mm、10mS/cmのとき60mmに調整した。
螺旋電極3の開口率75%(内径50mmのとき)
線状電極の材質、外径1mm、長さ500mmのタングステン鋼線
噴射ノズル7の噴角:30°
噴射ノズル7から螺旋電極3までの距離:被処理水ミストの最外縁が螺旋電極3の上端最外縁にほぼ一致するように調整した。
(脱色性評価)
上記の実験条件で処理開始からのインジゴカルミンの分解完了時間を測定した。なお、分解完了時間は、紫外可視分光光度計(島津製作所社製商品名UVmini−1240)を用いて610nmでの被処理水の吸光度を1分ごとに調べ、吸光度が0になった時間を分解完了時間とした。
(スパーク発生評価)
脱色性評価終了後そのまま運転し運転開始から1時間ごとに6時間まで3分間のスパークの回数を容器2の外側から目視で数え、6回の平均値を求めた。
(連続運転時間評価)
脱色性評価終了後そのまま48時間運転し、運転開始から線状電極4が伸びる、あるいは、溶断する時間を測定した。
【0054】
(比較例1)
螺旋電極内径を50mm一定で行った以外は実施例1と同様にして脱色性評価、スパーク発生評価および連続運転時間評価を行った。
【0055】
上記実施例1及び比較例1で評価した脱色性評価、スパーク発生評価および連続運転時間評価の結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
上記表1から、本発明の水処理装置のように、被処理水の電気伝導率に応じて螺旋電極の内径を変化させれば、すなわち、電気伝導率が高くなるにつれて内径を大きくすれば、スパーク発生が防止できるため、有機物が短時間で効率よく分解処理でき、線状電極が伸びたり、溶断したりせず、長時間連続して水処理を行えることがよくわかる。
また、電機伝導率0.1mS/cmのように、スパーク評価は実施例1、比較例1ともに0回であるが電極径を調整し螺旋電極と線状電極間距離を最適にすることで脱色速度が向上する効果も認められる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の水処理装置は、特に限定されないが、例えば、有機物を含む排水の浄化、汚染水の殺菌などに用いることができる。
【符号の説明】
【0059】
1a,1b,1c,1d,1e,1f 水処理装置
2 容器
3 螺旋電極(円筒状電極)
4 線状電極
5 被処理水タンク
7 噴射ノズル
8 パルスパワー発生装置(高圧電源)
9a 第1電極受部
9b 第2電極受部
91 受部本体
91a 孔
92 第1支持アーム
92a ボルト
92b ナット
93 受部本体
93a 嵌合突部
93b 孔
93c ガイド溝
93d 固定ボルト
94 筒状支持部
94a 本体支持部
94b 脚部
95 第2支持アーム
96 リベット
W 被処理水
M 被処理水ミスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をした円筒状電極と、円筒状電極の円筒内部を貫通するように配置された線状電極とを少なくとも1対有するとともに、前記円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に被処理水を水滴化して供給し、水滴中の被処理物を分解処理するようにした水処理装置であって、
前記円筒状電極は、円筒の中心軸方向の長さを一定に保ちながら円筒内径が可変に形成されていることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
円筒状電極は、螺旋円筒状に巻回されて形成された線材で形成されている請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
上記線材の一端が第1電極受部に支持され、他端が第2電極受部に支持されているとともに、前記第1電極受部および第2電極受部は、両電極受部の線材支持部間の円筒状電極の中心軸方向の距離を一定に保ちながら、少なくともいずれか一方の電極受部が、前記線材の端を支持した状態で円筒の中心軸周りに回転可能に形成されている請求項2に記載の水処理装置。
【請求項4】
筒状をした円筒状電極と、円筒状電極の円筒内部を貫通するように配置された線状電極とを少なくとも1対有するとともに、前記円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に被処理水を水滴化して供給し、水滴中の被処理物を分解処理するようにした水処理方法であって、
前記円筒状電極を円筒内径が可変に形成し、被処理水の電気伝導率が高くなるに伴い、円筒状電極の円筒内径を大きく変化させることを特徴とする水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−86040(P2013−86040A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230314(P2011−230314)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】