説明

水処理装置

【課題】 水処理装置の槽本体を構成する上部槽或いは下部槽の積み重ねを効率よく行うことができ、且つ積み重ね状態を安定化させるのに有効な技術を提供する。
【解決手段】 水処理装置を構成する下部槽120の側壁面120bに複数のコルゲート部121,122を設け、各コルゲート部に、中心点Pに関し点対称となるコルゲート部が存在し、且つ短辺方向の中心線L2に関し線対称となるコルゲート部が存在するように構成するとともに、互いに点対称となるコルゲート部同士の上端部の位置が高さ方向に関し異なるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽本体に被処理水の処理を行う水処理機構を収容する水処理装置に係り、詳しくは槽本体を構成する上部槽或いは下部槽の保管や運搬を容易にするのに有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上部槽及び下部槽のフランジ面同士を接合することによって形成されるフランジ接合式の浄化槽につき、接合前の上部槽或いは下部槽の保管や運搬を容易にする構成が種々提案されている。例えば、下記特許文献1には、浄化槽の上部槽或いは下部槽の側面に形成されるコルゲートの形状を工夫することによって、スペーサー等を用いることなく複数の槽の積み重ねを行う可能性が提示されている。
【特許文献1】実開平5−13596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この種の浄化槽を構成する上部槽或いは下部槽を保管時や運搬時において積み重ねる場合には、積み重ね作業に関する作業性向上を図ることはもちろん、積み重ね対象のバランスの良い積み重ねによって積み重ね状態を安定化させる要請がある。しかしながら、上記特許文献1に記載の浄化槽は、確かにスペーサー等を用いずに複数の槽を積み重ねる可能性を有するものの、積み重ね時のバランス性向上まで考慮した構成になっておらず、積み重ね状態を安定化させるのが難しい。
そこで、本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、水処理装置の槽本体を構成する上部槽或いは下部槽の積み重ねを効率よく行うことができ、且つ積み重ね状態を安定化させるのに有効な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために、本発明が構成される。なお、本発明は、一般家庭等から排出される生活排水をはじめ、各種の被処理水の処理を行う水処理機構を槽本体に収容する水処理装置に適用され得る技術である。
【0005】
(本発明の第1発明)
前記課題を解決する本発明の第1発明は、請求項1に記載されたとおりの水処理装置である。請求項1に記載のこの水処理装置は、槽本体に被処理水の処理を行う水処理機構を収容する装置として構成される。ここでいう「水処理機構」は、各種の被処理水の処理を行うための機構であり、典型的には固液分離処理部、生物処理部、貯留処理部、移送処理部、消毒処理部等を適宜組み合わせることによって構成される。槽本体は、平面視が略長方形となる椀状の上部槽及び下部槽からなり、これら上部槽及び下部槽の接合フランジ面同士を重ね合わせて接合することによって形成されるフランジ接合式の構成になっている。
【0006】
本発明の槽本体は、上部槽及び下部槽の少なくとも一方が、側壁面が内周側へと凹んだ複数のコルゲート部を備える。これらのコルゲート部によって当該槽の側壁面に形成される波型形状は、いわゆる「コルゲート形状」と称呼される補強構造を構成する。特に、本発明では、これら複数のコルゲート部に、当該槽の長辺方向の中心線と短辺方向の中心線が交差する中心点に関し互いに点対称となる少なくとも一組のコルゲート部と、これら少なくとも一組のコルゲート部の各々に対し更に長辺方向の中心線或いは短辺方向の中心線に関し線対称となる別のコルゲート部とを含む構成とされる。また、本発明では、互いに点対称となるコルゲート部同士の上端部の位置が、高さ方向に関し異なる構成とされる。
【0007】
請求項1に記載の水処理装置のこのような構成によれば、上部槽及び下部槽の少なくとも一方の槽を複数積み重ねる際に、当該積み重ねを効率よく行うことが可能となるとともに、積み重ね状態を安定化させることが可能となる。
具体的には、互いに点対称となるコルゲート部同士の上端部の位置が高さ方向に関し異なるように構成されているため、一方の槽を他方の槽に対し180度回転させた状態で積み重ねることによって、点対称同士のコルゲート部が互いに重なり合うとともに、重なり合うコルゲート部同士の上端部の位置の相違によって、積み重ね状態において下側の槽と上側の槽との間に空間(スペース)が形成されることとなる。従って、スペーサー等を用いることなく、手間とコストを抑えたうえで、複数の槽を上下に効率よく積み重ねることができ、しかも一旦積み重ねた後の分離作業も容易に行うことができる。
また、本発明において、各コルゲート部には、中心点に関し点対称となるコルゲート部が存在し、且つ長辺方向の中心線或いは短辺方向の中心線に関し線対称となるコルゲート部が存在する構成であるため、積み重ねに関与するコルゲート部が当該槽の側壁面にバランス良く配置されることとなる。このような構成によって、槽の積み重ねに際しバランス良く配置されたコルゲート部同士が互いに重なり合う(嵌まり込む)こととなり、従って積み重ね状態における積み重ね対象の安定性向上を図ることが可能となる。
【0008】
(本発明の第2発明)
前記課題を解決する本発明の第2発明は、請求項2に記載されたとおりの水処理装置である。
請求項2に記載のこの水処理装置では、請求項1に記載の上部槽及び下部槽の少なくとも一方は、一組のコルゲート部を複数組備える構成とされる。このような構成によれば、積み重ね時に重なり合うコルゲート部の数を増やすことによって、積み重ねに関する更なる安定性向上を図ることができる。
【0009】
(本発明の第3発明)
前記課題を解決する本発明の第3発明は、請求項3に記載されたとおりの水処理装置である。
請求項3に記載のこの水処理装置では、請求項1または請求項2に記載の上部槽及び下部槽の少なくとも一方は、中心点に関し互いに点対称となる少なくとも一組のコルゲート部に、上端部の位置が高さ方向に関し接合フランジ面の位置と概ね合致するコルゲート部を含む構成とされる。
このような構成によれば、一部のコルゲート部の上端部の位置を接合フランジ面まで延在させることによって、当該コルゲート部と接合フランジとが連接する構造が実現され、コルゲート部の上端部の位置が接合フランジ面よりも下方に位置する場合に比して、槽全体の高い補強効果が得られることとなる。
【0010】
(本発明の第4発明)
前記課題を解決する本発明の第4発明は、請求項4に記載されたとおりの水処理装置である。
請求項4に記載のこの水処理装置では、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の上部槽及び下部槽の少なくとも一方は、中心線に関し互いに線対称となるとともに上端部の位置が高さ方向に関し概ね合致する少なくとも一組のコルゲート部を含む構成とされる。そして、当該少なくとも一組コルゲート部の上端部が内装部材の取り付け座として構成されるようになっている。ここでいう「内装部材」には、槽内に内装される各種の部材や部品が包含され、例えば機器類、配管類、計器類などの固定用若しくは取り付け用の部材を内装部材として用いることができる。
このような構成によれば、槽の積み重ねに関与するコルゲート部を、槽内の内装部材の取り付けに用いることができるため合理的である。
【0011】
(本発明の第5発明)
前記課題を解決する本発明の第5発明は、請求項5に記載されたとおりの水処理装置である。
請求項5に記載のこの水処理装置では、請求項1〜4のいずれかに記載の槽本体は、仕切り板及び被挿入部を少なくとも備える。仕切り板は、下部槽の内部を区画するべく当該下部槽の短辺方向に沿って延在する部材として構成される。被挿入部は、互いに対向する各側壁面において隣接するコルゲート部の間隔を仕切り板の厚みに基づいて設定した部位として構成され、この被挿入部に仕切り板が挿入可能とされる。
このような構成によれば、槽の積み重ねに関与するコルゲート部を、更に仕切り板挿入用のガイドとして用いることが可能となる。
【0012】
(本発明の第6発明)
前記課題を解決する本発明の第6発明は、請求項6に記載されたとおりの水処理装置である。
請求項6に記載のこの水処理装置では、請求項5に記載の被挿入部は、隣接するコルゲート部の間隔が仕切り板の厚みに概ね合致する構成であり、これによって当該被挿入部の挿設された状態の仕切り板の長辺方向への動作が規制される構成とされる。
このような構成によれば、槽の積み重ねに関与するコルゲート部を、仕切り板挿入用のガイドとして用いるとともに、更に仕切り板固定用として用いることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、水処理装置の槽本体を構成する上部槽及び下部槽の少なくとも一方の側壁面に複数のコルゲート部を設け、各コルゲート部に、中心点に関し点対称となるコルゲート部が存在し、且つ長辺方向の中心線或いは短辺方向の中心線に関し線対称となるコルゲート部が存在するように構成するとともに、互いに点対称となるコルゲート部同士の上端部の位置が高さ方向に関し異なるように構成することによって、当該槽の積み重ねをスペーサーを用いることなく効率よく行うことができ、且つ積み重ね状態を安定化させることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態は、一般家庭や工場から排出される排水を、被処理水として処理する水処理装置の構成について説明するものである。
【0015】
本発明における「水処理装置」の一実施の形態である水処理装置100の外観が図1に示される。この水処理装置100は、「浄化槽」或いは「排水処理槽」ともいう。図1に示すように、本実施の形態の水処理装置100は、概括的に見て、槽本体101の内部に水処理機構102を収容する構成を有する。なお、水処理機構102は、被処理水に対し各種の処理を行う構成を有し、特に図示しないものの、固液分離処理部、生物処理部、貯留処理部、移送処理部、消毒処理部等を適宜組み合わせた構成になっている。この水処理機構102が、本発明における「水処理機構」に相当する。
【0016】
本発明における「槽本体」としての槽本体101は、上部槽(「上槽」ともいう)110及び下部槽(「下槽」ともいう)120を備える。この上部槽110が本発明における「上部槽」に対応しており、下部槽120が本発明における「下部槽」に対応している。
上部槽110は、平面視が略長方形となる椀状の槽であり、下部槽120の上部に配置される槽である。この上部槽110は、流入部103、放流部104、マンホール105を少なくとも備える。一方、下部槽120は、平面視が略長方形となる椀状の槽であり、上部槽110の下部に配置される槽である。上部槽110の接合フランジ110aの接合フランジ面と、下部槽120の接合フランジ120aの接合フランジ面とを互いに重ね合わせた状態で接合することによって、フランジ接合式の槽本体101が形成される。
【0017】
(第1実施の形態)
ここで、槽本体101の下部槽の構造に関し、第1実施の形態の下部槽120の具体的な構成を、図2及び図3を参照しながら説明する。図2には第1実施の形態の下部槽120の側面図が示され、図3には第1実施の形態の下部槽120の平面図が示される。
【0018】
図2及び図3に示すように、平面視が略長方形となる下部槽120の長辺側の側壁面120bには、当該側壁面120bが内周側へと凹んだ複数のコルゲート部121,122が設けられている。これらコルゲート部121,122によって側壁面120bに形成される波型形状は、いわゆる「コルゲート形状」と称呼される補強構造を構成する。これら複数のコルゲート部121,122が、本発明における「複数のコルゲート部」を構成する。
【0019】
第1コルゲート部121は、高さ方向(上下方向)に長手状に延在するとともに、その上端部121aの位置が接合フランジ120aの接合フランジ面の位置と概ね合致するコルゲート部として構成される。一方、第2コルゲート部122は、同様に高さ方向(上下方向)に長手状に延在するとともに、その上端部122aの位置が接合フランジ120aの接合フランジ面よりも下方に位置するコルゲート部として構成される。すなわち、第1コルゲート部121と第2コルゲート部122とでは、上端部の位置が高さ方向(上下方向)に関し異なる構成になっている。また、第1コルゲート部121と第2コルゲート部122とでは、内周側へ向かう凹み深さがほぼ同様となるように構成されている。
【0020】
特に、本実施の形態では、下部槽120の側壁面120bにおける、これら第1コルゲート部121及び第2コルゲート部122の配置位置に関しては、図3中の矢印で対応関係を示すように、中心点Pに関し互いに点対称となる四組のコルゲート部を有し、各組において、第1コルゲート部121及び第2コルゲート部122が互いに組み合わせられている。ここで、中心点Pは、長辺方向の中心線L1と短辺方向の中心線L2が交差する点として構成される。また、各組の各コルゲート部に対し、更に短辺方向の中心線L2に関し線対称となる別のコルゲート部が存在し、各組において、第1コルゲート部121及び第2コルゲート部122が互いに組み合わせられている。すなわち、各コルゲート部には、中心点Pに関し互いに点対称となるコルゲート部が存在し、且つ中心線L2に関し互いに線対称となるコルゲート部が存在することとなる。しかも、本実施の形態では、中心点Pに関し互いに点対称となるコルゲート部の組み合わせ同士の上端部121a,122aの位置が高さ方向(上下方向)に関し異なり、また中心線L2に関し互いに線対称となるコルゲート部の組み合わせ同士の上端部121a,122aの位置が高さ方向(上下方向)に関し異なる構成になっている。
【0021】
次に、このような構成の下部槽120の複数を保管時や運搬時などにおいて上下に積み重ねる場合につき、図4及び図5を参照しながら説明する。ここで、図4には、実線で示す下側の下部槽120の上方から、二点鎖線で示す上側の下部槽120を積み重ねる際の様子が示され、図5には図4中のA−A線断面の状態が示される。
【0022】
少なくとも2つの下部槽120を上下に積み重ねる場合には、下側の下部槽120を上側の下部槽120に対し中心点(図3中の中心点P)まわりに180度回転させたのち、図4に示すように上側の下部槽120に対し嵌め込むように挿入する。このとき、下側の下部槽120の第1コルゲート部121の位置が、上側の下部槽120の第2コルゲート部122の位置と合致し、下側の下部槽120の第2コルゲート部122の位置が、上側の下部槽120の第1コルゲート部121の位置と合致する。そして、2つの下部槽120を上下に積み重ねた状態では、図5に示すように、下側の下部槽120の第1コルゲート部121に対し、上側の下部槽120の第2コルゲート部122が嵌まり込み、下側の下部槽120の第2コルゲート部122に対し、上側の下部槽120の第1コルゲート部121が嵌まり込むこととなる。また、下側の下部槽120の第1コルゲート部121の上端部121aの計4箇所に対し、上側の下部槽120の第2コルゲート部122の上端部122aが載置され、これによって積み重ね状態において下側の下部槽120と上側の下部槽120との間に空間(スペース)が形成されることとなる。従って、スペーサー等を用いることなく、手間とコストを抑えたうえで複数の下部槽120を上下に効率よく積み重ねることができ、しかも一旦積み重ねた後の分離作業も容易に行うことができる。
【0023】
また、本実施の形態の下部槽120の構成では、上述のように各コルゲート部には、中心点Pに関し互いに点対称となるコルゲート部が存在し、且つ中心線L2に関し線対称となるコルゲート部が存在する構成であり、従って積み重ねに関与するコルゲート部が側壁面120bにバランス良く配置されることとなる。このような構成によって、下部槽120の積み重ねに際しバランス良く配置されたコルゲート部同士が互いに重なり合う(嵌まり込む)こととなり、従って少なくとも2つの下部槽120の積み重ね状態における安定性向上を図ることが可能となる。
【0024】
更に、本実施の形態の下部槽120の構成では、第1コルゲート部121の上端部121aの位置が接合フランジ120aの接合フランジ面の位置と概ね合致する構成であるため、第1コルゲート部121と接合フランジ120aとが連接する構造が実現されることとなる。このような構造は、特に下部槽120全体の高い補強効果(例えば捩れ強度向上効果)を得るのに有効である。
そのうえ、本実施の形態では、図1に示すように、下部槽120における第1コルゲート部121と、上部槽110におけるコルゲート部111とが、接合フランジ110a,120aの接合フランジ面において互いに当接(連接)するように構成されている。ここで、上部槽110の第1コルゲート部111は、下部槽120のコルゲート部121,122と同様のコルゲート部として構成される。このような構成によれば、下部槽120の第1コルゲート部121と、上部槽110のコルゲート部111とが連接する構造によって、下部槽120のみならず、槽本体101全体の高い補強効果が得られる。
【0025】
(第2実施の形態)
また、槽本体101の下部槽の構造に関し、第2実施の形態の下部槽220の具体的な構成を、図6及び図7を参照しながら説明する。図6には第2実施の形態の下部槽220の側面図が示され、図7には第2実施の形態の下部槽220の平面図が示される。
なお、この第2実施の形態の下部槽220では、2種類のコルゲート部221,222が連接状に形成されたコルゲート部223を、第1実施の形態と同様に下部槽220の積み重ねの際に用いるのに加え、更に槽内の内装部品の取り付け座として用いる構成としている。
【0026】
図6及び図7に示すように、平面視が略長方形となる下部槽220の長辺側の側壁面220bには、当該側壁面220bが内周側へと凹んだ複数のコルゲート部223(本発明における「複数のコルゲート部」を構成する)が設けられている。また、各コルゲート部223は、第1コルゲート部221及び第2コルゲート部222が連接された構成を有する。第1コルゲート部221は、高さ方向(上下方向)に長手状に延在するとともに、その上端部221aの位置が接合フランジ220aの接合フランジ面の位置と概ね合致するコルゲート部として構成される。一方、第2コルゲート部222は、同様に高さ方向(上下方向)に長手状に延在するとともに、その上端部222aの位置が接合フランジ220aの接合フランジ面の位置よりも下方に位置するコルゲート部として構成される。すなわち、第1コルゲート部221と第2コルゲート部222とでは、上端部の位置が高さ方向(上下方向)に関し異なる構成になっている。また、第1コルゲート部221と第2コルゲート部222とでは、内周側へ向かう凹み深さがほぼ同様となるように構成されている。
【0027】
特に、下部槽220の側壁面220bにおける、これら第1コルゲート部221及び第2コルゲート部222の配置位置に関しては、図7中の矢印で対応関係を示すように、中心点Pに関し互いに点対称となる四組のコルゲート部を有し、各組において、第1コルゲート部221及び第2コルゲート部222が互いに組み合わせられている。また、各組の各コルゲート部に対し、更に短辺方向の中心線L2に関し線対称となる別のコルゲート部が存在し、各組において、第1コルゲート部221及び第2コルゲート部222が互いに組み合わせられている。すなわち、各コルゲート部には、中心点Pに関し点対称となるコルゲート部が存在し、且つ中心線L2に関し線対称となるコルゲート部が存在することとなる。しかも、本実施の形態では、中心点Pに関し互いに点対称となるコルゲート部の組み合わせ同士の上端部221a,222aの位置が高さ方向(上下方向)に関し異なり、また中心線L2に関し線対称となるコルゲート部の組み合わせ同士の上端部221a,222aの位置が高さ方向(上下方向)に関し異なる構成になっている。
【0028】
また、本実施の形態では、図6及び図7に示すように、中心線L1に関し互いに線対称となる一組の第2コルゲート部222(二点鎖線)の上端部222aの位置が高さ方向(上下方向)に関し概ね合致する構成とし、この第2コルゲート部222の上端部222aを、内装部材224の取り付け座として構成している。この内装部材224は、槽内に内装される部材や部品として構成され、例えば槽内に装着される機器類、配管類、計器類などの固定用若しくは取り付け用の部材として構成される。この内装部材224が、本発明における「内装部材」に相当する。
【0029】
次に、このような構成の下部槽120の複数を保管時や運搬時などにおいて上下に積み重ねる場合につき、図8及び図9を参照しながら説明する。ここで、図8には、実線で示す下側の下部槽220の上方から、二点鎖線で示す上側の下部槽220を積み重ねる際の様子が示され、図9には図8中のB−B線断面の状態が示される。
【0030】
少なくとも2つの下部槽220を上下に積み重ねる場合には、下側の下部槽220を上側の下部槽220に対し中心点(図7中の中心点P)まわりに180度回転させたのち、図8に示すように上側の下部槽220に対し嵌め込むように挿入する。このとき、下側の下部槽220の第1コルゲート部221の位置が、上側の下部槽220の第2コルゲート部222の位置と合致し、下側の下部槽220の第2コルゲート部222の位置が、上側の下部槽220の第1コルゲート部221の位置と合致する。そして、2つの下部槽220を上下に積み重ねた状態では、図9に示すように、下側の下部槽220の第1コルゲート部221に対し、上側の下部槽220の第2コルゲート部222が嵌まり込み、下側の下部槽220の第2コルゲート部222に対し、上側の下部槽220の第1コルゲート部221が嵌まり込むこととなる。また、下側の下部槽220の第1コルゲート部221の上端部221aの計4箇所に対し、上側の下部槽220の第2コルゲート部222の上端部222aが載置され、これによって積み重ね状態において下側の下部槽220と上側の下部槽220との間に空間(スペース)が形成されることとなる。従って、第1実施の形態と同様に、スペーサー等を用いることなく、手間とコストを抑えたうえで複数の下部槽220を上下に効率よく積み重ねることができ、しかも一旦積み重ねた後の分離作業も容易に行うことができる。
【0031】
また、本実施の形態の下部槽220の構成では、上述のように各コルゲート部には、中心点Pに関し点対称となるコルゲート部が存在し、且つ中心線L2に関し線対称となるコルゲート部が存在する構成であり、従って積み重ねに関与するコルゲート部がバランス良く配置されることとなる。このような構成によって、下部槽220の積み重ねに際しバランス良く配置されたコルゲート部同士が重なり合う(嵌まり込む)こととなり、従って第1実施の形態と同様に、少なくとも2つの下部槽220の積み重ね状態における安定性向上を図ることが可能となる。
【0032】
(第3実施の形態)
また、槽本体101の下部槽の構造に関し、第3実施の形態の下部槽320の具体的な構成を、図10及び図11を参照しながら説明する。図10には第3実施の形態の下部槽320の側面図が示され、図11には第3実施の形態の下部槽320の平面図が示される。
上述の第1及び第2実施の形態では、下部槽の側壁面に2種類のコルゲート部を設ける場合について記載したのに対し、この第3の実施の形態では、下部槽の側壁面に3種類以上のコルゲート部を設ける場合について記載している。
【0033】
具体的には、図10及び図11に示すように、平面視が略長方形となる下部槽320の長辺側の側壁面320bには、当該側壁面320bが内周側へと凹んだ複数のコルゲート部321,322,323,324,325(本発明における「複数のコルゲート部」を構成)が設けられている。第2コルゲート部322及び第4コルゲート部324は、高さ方向(上下方向)に長手状に延在するとともに、それらの上端部の位置が接合フランジ320aの接合フランジ面の位置と概ね合致するコルゲート部として構成される。一方、第1コルゲート部321、第3コルゲート部323及び第5コルゲート部325は、同様に高さ方向(上下方向)に長手状に延在するとともに、その上端部の位置が接合フランジ320aの接合フランジ面よりも下方に位置するコルゲート部として構成される。これら第1コルゲート部321、第3コルゲート部323及び第5コルゲート部325では、上端部の位置が高さ方向(上下方向)に関し異なる構成になっている。また、第1〜第5コルゲート部321〜325では、内周側へ向かう凹み深さがほぼ同様となるように構成されている。
【0034】
特に、下部槽320の側壁面320bにおける、これら第1〜第5コルゲート部321〜325の配置位置に関しては、図11中の矢印で対応関係を示すように、中心点Pに関し互いに点対称となる四組のコルゲート部を有し、各組において、第1コルゲート部321及び第4コルゲート部324或いは第2コルゲート部322及び第3コルゲート部323が互いに組み合わせられている。また、各組の各コルゲート部に対し、更に短辺方向の中心線L2に関し線対称となる別のコルゲート部が存在し、各組において、第1コルゲート部321及び第4コルゲート部324或いは第2コルゲート部322及び第3コルゲート部323が互いに組み合わせられている。すなわち、各コルゲート部には、中心点Pに関し互いに点対称となるコルゲート部が存在し、且つ中心線L2に関し互いに線対称となるコルゲート部が存在することとなる。しかも、本実施の形態では、中心点Pに関し互いに点対称となるコルゲート部の組み合わせ同士の上端部の位置が高さ方向(上下方向)に関し異なり、また中心線L2に関し互いに線対称となるコルゲート部の組み合わせ同士の上端部の位置が高さ方向(上下方向)に関し異なる構成になっている。
【0035】
このような構成の下部槽320を積み重ねる場合も、第1及び第2実施の形態として上述の下部槽120,220と同様に、下側の下部槽320を上側の下部槽320に対し中心点(図11中の中心点P)まわりに180度回転させたのち、嵌め込むように挿入する。これにより、スペーサー等を用いることなく、手間とコストを抑えたうえで複数の下部槽320の積み重ね及び分離を効率よく行うことができるとともに、積み重ねた状態における安定性向上を図ることが可能となる。
【0036】
また、本実施の形態では、槽内部を区画する仕切り板の取り付けに関し、コルゲート形状を用いるように構成している。ここで、図12〜図14を参照しながら、第1実施の形態の下部槽120において仕切り板130を取り付けるための具体的な構成について説明する。この仕切り板130が、本発明における「仕切り板」に相当する。
【0037】
図12及び図13に示すように、この実施の形態では、下部槽120の側壁面120bにおいて第1コルゲート部121と第2コルゲート部122の間に、仕切り板用の被挿入部125を設ける。そして、被挿入部125の間隔aが上下方向に関しほぼ一定となるように構成するとともに、この被挿入部125の間隔aが、仕切り板130の長辺方向に関する部分(上端及び下端における折り返し部分)の板厚bと概ね合致するか或いは若干大きくなるように構成する。この被挿入部125が、本発明における「被挿入部」に相当する。
【0038】
このような構成において、下部槽120に仕切り板130を取り付ける場合には、図12中の矢印で示すように、被挿入部125の上方から仕切り板130を挿入していく。このとき、被挿入部125は、仕切り板130を下部槽120の下方へ向けて円滑に誘導するための仕切り板誘導手段としての機能を発揮する。そして、仕切り板130を所望の設置位置まで挿入した状態では、仕切り板130の下端が被挿入部125の底部に当たることによって仕切り板130の挿入方向の動作が規制されるとともに、長辺方向への移動動作が規制されることとなる。このように、本実施の形態によれば、仕切り板130の形状に基づいて被挿入部125の間隔aを適宜設定することによって、下部槽120の積み重ねに関与するコルゲート部121,122を、更に仕切り板ガイド用、仕切り板ストッパー用及び仕切り板固定用として用いることが可能となる。
【0039】
また、図12及び図13に示す実施の形態において、被挿入部125の間隔のうち上部の間隔cを下部の間隔aよりも拡張させた傾斜状の構成(図14参照)を用いることもできる。このような構成によれば、下部槽120の積み重ねに関与するコルゲート部121,122を、仕切り板ガイド用、仕切り板ストッパー用及び仕切り板固定用として用いることが可能となるうえに、更に被挿入部125の挿入口側の間隔を広げることによって、被挿入部125への仕切り板130の誘導を円滑に行うことができ、また仕切り板130の接着のために被挿入部125内に予め塗布した接着材が、当該仕切り板130の挿入の際に削がれるのを抑えることが可能となる。
【0040】
〔他の実施の形態〕
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0041】
上記実施の形態では、槽本体の下部槽におけるコルゲート形状について記載したが、本発明を上部槽の構成に対して適用することもできる。また、下部槽同士を積み重ねる構成、上部槽同士を積み重ねる構成、上部槽と下部槽を積み重ねる構成に関し、本発明のコルゲート形状を用いることができる。また、上記実施の形態では、下部槽の長辺部分の側壁面におけるコルゲート形状について記載したが、下部槽の短辺部分の側壁面におけるコルゲート形状に対して本発明を適用することもできる。
【0042】
また、上記実施の形態では、例えば下部槽120において、第1コルゲート部121の上端部121aの高さ方向に関する位置が接合フランジ120aの接合フランジ面の位置に概ね合致する場合について記載したが、本発明では、この第1コルゲート部121の上端部121aの位置は、接合フランジ面の位置に概ね合致してもよいし、或いは接合フランジ面の位置よりも下方に適宜設定されてもよい。
【0043】
また、本発明では、槽の側壁面に設ける複数のコルゲート部のうち、その全部または一部が積み重ねに関与するコルゲート部であればよく、例えば槽の側壁面の全てのコルゲート部が積み重ねに関与する構成であってもよいし、或いは積み重ねに関与するコルゲート部と積み重ねに関与しないコルゲート部とが共存する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明における「水処理装置」の一実施の形態である水処理装置100の外観を示す図である。
【図2】第1実施の形態の下部槽120の側面図である。
【図3】第1実施の形態の下部槽120の平面図である。
【図4】実線で示す下側の下部槽120の上方から、二点鎖線で示す上側の下部槽120を積み重ねる際の様子を示す図である。
【図5】図4中のA−A線断面の状態を示す図である。
【図6】第2実施の形態の下部槽220の側面図である。
【図7】第2実施の形態の下部槽220の平面図である。
【図8】実線で示す下側の下部槽220の上方から、二点鎖線で示す上側の下部槽220を積み重ねる際の様子を図である。
【図9】は図8中のB−B線断面の状態を示す図である。
【図10】第3実施の形態の下部槽320の側面図である。
【図11】第3実施の形態の下部槽320の平面図である。
【図12】第1実施の形態の下部槽120において仕切り板130を取り付けるための構成を説明する図である。
【図13】第1実施の形態の下部槽120において仕切り板130を取り付けるための構成を説明する図である。
【図14】第1実施の形態の下部槽120において仕切り板130を取り付けるための構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0045】
100…水処理装置
101…槽本体
102…水処理機構
103…流入部
104…放流部
105…マンホール
110…上部槽
110a,120a,220a,320a…接合フランジ
120,220,320…下部槽
120b,220b…側壁面
121,221,321…第1コルゲート部
121a,122a…上端部
122,222,322…第2コルゲート部
125…被挿入部
130…仕切り板
224…内装部材
323…第3コルゲート部
324…第4コルゲート部
325…第5コルゲート部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽本体に被処理水の処理を行う水処理機構を収容する水処理装置であって、
前記槽本体は、平面視が略長方形となる椀状の上部槽及び下部槽からなり、これら上部槽及び下部槽の接合フランジ面同士を接合することによって形成される構成であり、
前記上部槽及び下部槽の少なくとも一方は、側壁面が内周側へと凹んだ複数のコルゲート部を備え、これら複数のコルゲート部に、当該槽の長辺方向の中心線と短辺方向の中心線が交差する中心点に関し互いに点対称となる少なくとも一組のコルゲート部と、前記少なくとも一組のコルゲート部の各々に対し更に長辺方向の中心線或いは短辺方向の中心線に関し線対称となる別のコルゲート部とを含むとともに、互いに点対称となる前記コルゲート部同士の上端部の位置が高さ方向に関し異なる構成であることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理装置であって、
前記上部槽及び下部槽の少なくとも一方は、前記一組のコルゲート部を複数組備えることを特徴とする水処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水処理装置であって、
前記上部槽及び下部槽の少なくとも一方は、前記中心点に関し互いに点対称となる前記少なくとも一組のコルゲート部に、前記上端部の位置が高さ方向に関し前記接合フランジ面の位置と概ね合致するコルゲート部を含む構成であることを特徴とする水処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の水処理装置であって、
前記上部槽及び下部槽の少なくとも一方は、前記中心線に関し互いに線対称となるとともに前記上端部の位置が高さ方向に関し互いに概ね合致する少なくとも一組のコルゲート部を含み、当該少なくとも一組のコルゲート部の上端部が内装部材の取り付け座として構成されることを特徴とする水処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の水処理装置であって、
前記槽本体は、前記下部槽の内部を区画するべく当該下部槽の短辺方向に沿って延在する仕切り板と、互いに対向する各側壁面において隣接するコルゲート部の間隔が前記仕切り板の厚みに基づいて設定された被挿入部とを備え、当該被挿入部に対し前記仕切り板が挿入可能な構成であることを特徴とする水処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の水処理装置であって、
前記被挿入部は、隣接するコルゲート部の間隔が前記仕切り板の厚みに概ね合致する構成であり、これによって当該被挿入部に挿入された状態の前記仕切り板の長辺方向への動作が規制されることを特徴とする水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−255608(P2006−255608A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−77503(P2005−77503)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(390021348)フジクリーン工業株式会社 (71)
【Fターム(参考)】