説明

水処理装置

【課題】 槽本体に被処理水に対する所定の水処理を行う水処理機構を収容する水処理装置において、槽本体の上部槽の積み重ね作業の合理化を図るのに有効な技術を提供する。
【解決手段】 本発明に係る水処理装置100は、上部槽110の天板部の上面から上方へと突出状に形成される突出部の構成に関し、第1突出部111のマンホール開口の開口径が、第3突出部113のマンホール開口の開口径よりも小さい構成とされ、また第1突出部111のマンホール開口の下部に当該マンホール開口よりも開口径が拡径されるとともに第3突出部113の形状に対応した拡径領域を備える構成とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽本体に被処理水に対する所定の水処理を行う水処理機構を収容する水処理装置の構築技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上部槽及び下部槽のフランジ面同士を接合することによって形成されるフランジ接合式の浄化槽につき、接合前の上部槽或いは下部槽の保管や運搬を容易にする構成が種々提案されている。例えば、下記特許文献1には、浄化槽の下部槽におけるコルゲート形状を工夫することによって、下部槽同士を180°反転させて積み重ねることが可能とされた構成が開示されている。
【特許文献1】実開平5−13596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この種の浄化槽の上部槽は、その天板部分から上方へとマンホール開口を有する突出部が形成されているため、上部槽同士の積み重ねを想定した場合には、各突出部の位置や形状に関し更なる工夫が必要とされる。特に、設計上の理由によって開口径の異なるマンホール開口を備える上部槽にあっては、上部槽同士の積み重ね作業に際し、一方の上部槽の突出部が他方の上部槽に干渉することが想定されるため、この干渉防止を図ることによって上部槽同士の積み重ね作業を合理的に行う技術が要請される。
そこで、本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、槽本体に被処理水に対する所定の水処理を行う水処理機構を収容する水処理装置において、槽本体の上部槽の積み重ね作業の合理化を図るのに有効な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために、本発明が構成される。なお、本発明は、一般家庭等から排出される生活排水をはじめ、各種の被処理水の処理を行う水処理機構を槽本体に収容する水処理装置に対し適用され得る技術である。
【0005】
本発明に係る水処理装置は、槽本体に被処理水に対する所定の水処理を行う水処理機構を収容する水処理装置として構成される。本発明の水処理装置は、槽本体に水処理機構が収容された後の装置、或いは処理機構が収容される前の槽本体自体として規定される。また、ここでいう「水処理機構」は、各種の被処理水に対し所定の水処理を行うための機構であり、典型的に夾雑物の除去処理を行う部位、被処理水中の有機汚濁物質を嫌気濾床により嫌気処理(還元)する部位、接触濾床により被処理水の好気処理及び濾過処理を行う部位、被処理水中の一時的な貯留や消毒処理を行う部位等を適宜組み合わせることによって構成される。槽本体は、いずれも平面視が略長方形となる椀状の上部槽及び下部槽からなり、これら上部槽及び下部槽の接合フランジ面同士を重ね合わせて接合することによって形成されるフランジ接合式の構成になっている。
【0006】
本発明の上部槽は、複数の突出部及びマンホール開口を有する。複数の突出部は、いずれも上部槽の天板部の上面から上方へと突出状に形成されるとともに、マンホール蓋が載置される構成とされる。マンホール開口は、各突出部において開口状に形成されるとともに載置されたマンホール蓋によって覆われる開口として構成される。また、複数の突出部は、上部槽の長手方向に関し一方端部側に設けられた第1の突出部と、上部槽の長手方向に関し他方端部側に設けられた第2の突出部を含む構成とされる。
【0007】
本発明では、特に第1の突出部は、そのマンホール開口の開口径が第2の突出部のマンホール開口の開口径よりも小さく、且つそのマンホール開口の下部に当該マンホール開口よりも開口径が拡径された拡径領域を有する構成とされる。そして、上部槽の少なくとも2つを積み重ねる場合に、一方の上部槽の第2の突出部の上方に他方の上部槽の第1の突出部が覆い被せられる。すなわち、上部槽同士を180°反転させた状態で、一方の上部槽の上方から他方の上部槽を重ね合わせる。このとき、本発明では、他方の上部槽の第1の突出部の拡径領域が、一方の上部槽の第2の突出部を収容するように構成されている。このような構成では、上部槽同士の積み重ね作業時において、一方の上部槽の第2の突出部と、他方の上部槽の天板部の下面との干渉が回避され、また一方の上部槽の第2の突出部が他方の上部槽の第1の突出部の拡径領域に対し下方から嵌め込まれた係合状態が形成されることとなる。
【0008】
本発明の上部槽のこのような構成によれば、上部槽同士の積み重ねを効率よく行うことが可能となるとともに、上部槽同士の積み重ねがなされた後の積み重ね状態を安定化させることが可能となる。また、第1の突出部のマンホール開口の下部に、第2の突出部の形状に対応した拡径領域を設けることによって、第1の突出部のマンホール開口の開口径と、第2の突出部のマンホール開口の開口径が異なる構造であっても、上部槽同士の積み重ね作業が可能とされるため、上部槽におけるマンホール開口の開口径の選択や、マンホール開口の配置に関し自由度を高めることができる。例えば、第1の突出部のマンホール開口の開口径を、上部槽の規格範囲内における最小径に設定することで、マンホール蓋の径(大きさ)を小さくすることができ、これによって槽本体の軽量化を図り、またマンホール蓋の着脱作業に関し作業性向上を図ることができる。一方、第2の突出部のマンホール開口の開口径が、第1の突出部のマンホール開口の開口径よりも大きくなるように設定することで、必要な部位においてはマンホール開口の開口径を上げることによって槽本体内の視認性を確保することができる。本発明では、少なくとも第1の突出部における拡径領域の径と第2の突出部の径との間に対応関係が形成されていれば足りる。
【0009】
また、本発明に係る更なる形態の水処理装置では、上部槽の第1の突出部は、そのマンホール開口の下部に拡径領域を備えることで、このマンホール開口の上縁と拡径領域の下部とを結ぶ視線が、作業者が当該マンホール開口を通じて槽本体外から槽本体内を覗いたときの視野の上限を規定し、これによって作業者が当該マンホール開口を通じて槽本体外から槽本体内を覗いたときの視野を槽本体内における外方へと拡張させた構成とされる。このような構成によれば、第1の突出部のマンホール開口における視野率を向上させることができ、そのぶん第1の突出部のマンホール開口の開口径を抑えた設計が可能となる。また、上部槽同士の積み重ねの際には第2の突出部を収容する第1の突出部の拡径領域が、水処理装置の通常運転時においては、槽本体内の視野率向上に寄与することとなるため合理的である。
【0010】
また、本発明に係る更なる形態の水処理装置では、上部槽の第1の突出部は、先端側筒状領域と、基端側筒状領域と、段差領域を備える二段首構造とされている。先端側筒状領域は、第1の突出部の先端側にマンホール開口を形成する筒状部分とされ、基端側筒状領域は、第1の突出部の基端側に前記拡径領域を形成する筒状部分とされる。また、段差領域は、端側筒状領域と基端側筒状領域との間に形成される直角状の領域とされる。この段差領域では、段差角度が概ね90°とされる。このような構成によれば、上部槽の第1の突出部を二段首構造とすることで、マンホール開口の下方の視野をより外方へと拡張することができ、これによって第1の突出部のマンホール開口における視野率を更に向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、槽本体に被処理水に対する所定の水処理を行う水処理機構を収容する水処理装置において、特に上部槽の天板部の上面から上方へと突出状に形成される複数の突出部の構成に関し、一方端部側に設けられた第1の突出部のマンホール開口の開口径を、他方端部側に設けられた第2の突出部のマンホール開口の開口径よりも小さくし、且つ第1の突出部のマンホール開口の下部に当該マンホール開口よりも開口径が拡径された拡径領域を設ける構成を採用することによって、上部槽同士の積み重ねを効率よく行うことが可能となるとともに、上部槽同士の積み重ねがなされた後の積み重ね状態を安定化させることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明における一実施の形態の汚水処理装置の構成等を図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態は、一般家庭等から排出された生活排水(汚水)の処理を行う装置について説明するものである。
【0013】
本発明における「水処理装置」の一実施の形態である汚水処理装置100の外観が図1に示され、図1中の汚水処理装置100における処理フローが図2に示される。
図1に示すように、本実施の形態の汚水処理装置100は、槽状に成形された槽本体101の内部に所定の浄化処理機構102を収容している。この浄化処理機構102は、図2に示すように、夾雑物除去槽105、嫌気濾床槽106、接触濾床槽107、処理水槽108、消毒槽109に大別される。夾雑物除去槽105は、被処理水中に含まれる夾雑物を、流入バッフル(図示省略)などの固液分離手段を用いて被処理水から分離する処理を行う槽であり、被処理水の固液分離機能を果たす。嫌気濾床槽106は、被処理水中の有機汚濁物質を嫌気処理(還元)する機能を果たす。接触濾床槽107は、被処理水の好気処理及び濾過処理を行う機能を果たす。処理水槽108は、消毒槽109へ移流する前の水を一時的に貯留する機能を果たす。消毒槽109は、処理水槽108から流入した水を消毒処理する機能を果たす。この浄化処理機構102が、本発明における「被処理水に対する所定の水処理を行う水処理機構」を構成している。
【0014】
槽本体101の内部に流入した汚水は、浄化処理機構102において上流(図2中の左側)から夾雑物除去槽105、嫌気濾床槽106、接触濾床槽107、処理水槽108、消毒槽109にて順次処理されたのち、槽本体101の外部へ放流される。なお、本実施の形態の汚水処理装置100は、生活排水(汚水)を浄化処理して放流する装置であり、「浄化槽」或いは「排水処理槽」とも称呼される。また、本実施の形態では、汚水処理装置100を構成する各槽において流れる水を「汚水」、「被処理水」ないし「水」と記載する。
【0015】
槽本体101は、上部槽(「上槽」ともいう)110及び下部槽(「下槽」ともいう)120を備える。この槽本体101が、本発明における「槽本体」に相当する。上部槽110は、平面視が略長方形となる椀状の槽であり、下部槽120の上部に配置される槽である。一方、下部槽120は、平面視が略長方形となる椀状の槽であり、上部槽110の下部に配置される槽である。ここでいう上部槽110が、本発明における「上部槽」に相当し、下部槽120が、本発明における「下部槽」に相当する。上部槽110の接合フランジ110aの接合フランジ面と、下部槽120の接合フランジ120aの接合フランジ面とを互いに重ね合わせた状態で接合することによって、フランジ接合式の槽本体101が形成される。
【0016】
上部槽110は、流入部103、放流部104、突出部111,112,113を少なくとも備える。流入部103は、汚水が槽本体101内へと流入する配管部分として構成される。放流部104は、浄化処理機構102において浄化処理された処理後の水を槽本体101外へと放流する配管部分として構成される。突出部111,112,113は、いずれも上部槽110の天板部分の上面から上方に突出する円筒状の部位とされ、上部槽110が長手状に延在する延在線上に各突出部が配置されている。具体的には、上部槽110の一方端部側である流入部103側に第1突出部111が配置され、上部槽110の他方端部側である放流部104側に第3突出部113が配置され、また第1突出部111と第3突出部113との間に第2突出部112が配置されている。各突出部には円形のマンホール開口(後述するマンホール開口114,115,116)が形成されており、またマンホール蓋117aが載置されるマンホール枠117が各突出部の上側に取り付けられている。マンホール枠117にマンホール蓋117aが載置された状態では、マンホール蓋117aによってマンホール開口が塞がれることとなる。
【0017】
また、平面視が略長方形となる上部槽110の長辺側の側壁面には、当該側壁面が内周側へと凹んだ複数のコルゲート部110bが設けられている。同様に、平面視が略長方形となる下部槽120の長辺側の側壁面には、当該側壁面が内周側へと凹んだ複数のコルゲート部120bが設けられている。これら複数のコルゲート部よって側壁面に形成される波型形状は、いわゆる「コルゲート形状」と称呼される補強構造を構成する。また、本実施の形態において、この複数のコルゲート部は、上部槽110或いは下部槽120を180°反転させて積み重ねる際に、上部槽110同士のコルゲート部や、下部槽120同士のコルゲート部が互いに嵌まり込むように配置されている。なお、このコルゲート形状を、上部槽110や下部槽120の隅部に設けることもできる。
【0018】
上記上部槽110の更なる詳細な構成に関しては図3〜図6が参照される。ここで、図3には、本実施の形態の上部槽110を斜め上方からみた斜視図が示される。また、図4〜図6には、図3中における上部槽110のA−A線断面構造、B−B線断面構造、C−C線断面構造がそれぞれ示される。
【0019】
図3及び図4に示すように、上部槽110の第1突出部111は、上部槽110の長手方向に関し一方端部側(上流側)に設けられ、マンホール開口114を有する筒状部分として構成される。このマンホール開口114の開口径は、例えばφ450mmとされる。また、この第1突出部111は、筒状部分の基端側に位置する基端側筒状領域111aと、筒状部分の先端側に位置する先端側筒状領域111bと、基端側筒状領域111aと先端側筒状領域111bとの間に形成される直角状の段差領域111cを備える。第1突出部111の内径に関しては、基端側筒状領域111aの内径d2よりも先端側筒状領域111bの内径d1の方が小さくなるように構成されている。すなわち、この第1突出部111は、基端側筒状領域111aと先端側筒状領域111bによる二段首構造(二段首形状)とされている。また、段差領域111cでは、段差角度が概ね90°とされる。
【0020】
なお、ここでいう第1突出部111が、本発明における「第1の突出部」に相当する。また、この第1突出部111を構成する基端側筒状領域111aが、本発明における「拡径領域」及び「基端側筒状領域」に相当し、この第1突出部111を構成する先端側筒状領域111bが、本発明における「先端側筒状領域」に相当し、また段差領域111cが、本発明における「段差領域」に相当する。
【0021】
図3及び図5に示すように、上部槽110の第2突出部112は、マンホール開口115を有する筒状部分として構成されている。このマンホール開口115の開口径は、例えばφ450mmとされる。また、この第2突出部112の内径は、第1突出部111の先端側筒状領域111bの内径d1と同様の構成とされる。
【0022】
図3及び図6に示すように、上部槽110の第3突出部113は、上部槽110の長手方向に関し他方端部側(下流側)に設けられ、マンホール開口116を有する筒状部分として構成されている。このマンホール開口116の開口径は、第1突出部111や第2突出部112のマンホール開口よりも拡張された設計とされ、例えばφ600mmとされる。また、この第3突出部113の内径d3は、第1突出部111の先端側筒状領域111bの内径d1よりも大きく、且つ第1突出部111の基端側筒状領域111aの内径d2よりも若干小さい構成とされる。この第3突出部113が、本発明における「第2の突出部」に相当する。
【0023】
なお、本実施の形態では、マンホール開口116付近に、接触濾床槽107の濾材、処理水槽108のエアリフトポンプ、消毒槽109の薬剤筒などといった内装部材が局所的ないし集中的に配置されている。従って、マンホール開口116の開口径の設計に関しては、当該マンホール開口の開口径を他のマンホール開口よりも拡張することによって、このような内装部材の点検を容易に行うのに有効とされる。このマンホール開口116の開口径は、第3突出部113の内壁面形状によって規定される。
【0024】
一方、マンホール開口114,115の開口径に関しては、当該マンホール開口の開口径をマンホール開口116よりも小さく抑えることによってマンホール蓋の径(大きさ)を小さくすることができ、これによって槽本体101の軽量化を図り、またマンホール蓋の着脱作業に関し作業性向上を図るのに有効とされる。この場合、マンホール開口114の開口径は、第1突出部111の各部材のうち、先端側筒状領域111bの内壁面形状によって規定され、マンホール開口115の開口径は、第2突出部112の内壁面形状によって規定される。
【0025】
ここで上記構成の上部槽110と同一の上部槽を少なくとも2つ積み重ねる場合について図7〜図9を参照しつつ説明する。この積み重ね作業は、複数の上部槽を保管時や運搬時などにおいて上下に積み重ねる際に有効とされる。
【0026】
図7には、上部槽110の上に別の上部槽210を積み重ねる様子が側面図にて示され、図8には図7の積み重ね状態を上方からみた平面図が示される。図7に示すように、上部槽110の上に別の上部槽210を積み重ねる場合には、上部槽110に対し上部槽210を180°反転させた後、当該上部槽210を上部槽110の覆い被せるように嵌めこみ、これによって積み重ねる。この積み重ね状態では、図8に示すように、上部槽110の第1突出部111の上方に上部槽210の第1突出部111が配置され、上部槽110の第2突出部112の上方に上部槽210の第2突出部112が配置され、上部槽110の第3突出部113の上方に上部槽210の第1突出部111が配置されることとなる。
【0027】
この積み重ね状態において、上部槽110の第3突出部113の上方に上部槽210の第1突出部111が配置された部分の構造に関しては、図9が参照される。図9には、図8中のD−D線断面の様子が示される。前述のように、本実施の形態では、第3突出部113の内径d3を、第1突出部111の基端側筒状領域111aの内径d2よりも若干小さい構成としているため、上部槽110の上に上部槽210を積み重ねた状態では、図9に示すように、上部槽210の第1突出部111の基端側筒状領域111aに、上部槽110の第3突出部113が下方から嵌まり込むこととなる。
【0028】
このとき、上部槽同士の積み重ね作業時において、上部槽110の第3突出部113と、上部槽210の天板部分の下面との干渉が回避される。従って、上部槽同士を積み重ねる際に、当該積み重ねを効率よく行うことが可能となるとともに、上部槽同士の積み重ねがなされた後の積み重ね状態を安定化させるのに有効である。このように、本実施の形態では、第1突出部111の構成に関し、基端側筒状領域111aと先端側筒状領域111bによる二段首構造を採用することで、当該第1突出部111の下側に上部槽の積み重ねに関与する基端側筒状領域111aを設ける一方、前述のように当該第1突出部111の上側に槽本体101の軽量化に関与する先端側筒状領域111bを設けることとしている。
【0029】
また、本実施の形態では、第1突出部111の二段首構造に関しては、槽本体101内の視野率を勘案して、基端側筒状領域111a及び先端側筒状領域111bを形成するのが好ましい。これにより、槽本体101内の視野率を向上させることができ、例えば槽本体101の内壁面に水位基準線(「水位目安線」ともいう)を設ける場合に、当該水位基準線に視認性を向上させることが可能となる。
【0030】
この視野率向上効果に関しては、図10が参照される。図10には、本実施の形態の上部槽110において、作業者がマンホール開口114を通じて槽本体101外から槽本体101内を視認する様子が断面図にて示される。図10では、本実施の形態のように第1突出部111を二段首構造とした場合(以下、「第1の構成」ともいう)を実線で示す一方、この第1の構成と同径のマンホール開口を有する構成であって、第1突出部111を一段構造とした場合(以下、「第2の構成」ともいう)を二点鎖線で示している。
【0031】
図10に示すように、本実施の形態(第1の構成)における第1の視線、すなわち視点Pを起点としてマンホール開口114の上縁と基端側筒状領域111aの下部とを結ぶ視線は、作業者がマンホール開口114を通じて槽本体101外から槽本体101内を覗いたときの視野の上限を規定する。これによって、作業者の視野は、第2の構成にて第2の視線によって上限が規定される視野に比して、槽本体内における外方へと拡張されることとなり、槽本体101内の視野率を向上させることが可能となる。本実施の形態では、特に第1突出部111の基端側筒状領域111aと先端側筒状領域111bとの間に形成される段差領域111cを直角状とした構成を採用することによって、マンホール開口の下方の視野をより外方へと拡張することができ、これによって第1の突出部111のマンホール開口における視野率を更に向上させることが可能となる。また、同一の視野率を確保する場合には、槽本体101内の視野率を向上させることで、そのぶんマンホール開口114の開口径を小さく抑えることができ、これによって槽本体101の軽量化を図り、またマンホール蓋の着脱作業に関し作業性向上を図ることが可能となる。
【0032】
以上のように、本実施の形態によれば、上部槽同士の積み重ねを効率よく行うことが可能となるとともに、上部槽同士の積み重ねがなされた後の積み重ね状態を安定化させることが可能となる。また、第1突出部111の先端側筒状領域111bの下部に、第3突出部113の形状に対応した基端側筒状領域111aを設けることによって、第1突出部111のマンホール開口114の開口径と、第3突出部113のマンホール開口116の開口径が異なる構造であっても、上部槽同士の積み重ね作業が可能とされるため、上部槽におけるマンホール開口の開口径の選択や、マンホール開口の配置に関し自由度を高めることができる。例えば、第1突出部111のマンホール開口114の開口径を、上部槽110の規格範囲内における最小径に設定することで、マンホール蓋117aの径(大きさ)を小さくすることができ、これによって槽本体101の軽量化を図り、またマンホール蓋117aの着脱作業に関し作業性向上を図ることができる。一方、第3突出部113のマンホール開口116の開口径が、第1突出部111のマンホール開口114の開口径よりも大きくなるように設定することで、必要な部位においてはマンホール開口の開口径を上げることによって槽本体101内の視認性を確保することができる。
【0033】
また、本実施の形態によれば、上部槽110の第1突出部111は、先端側筒状領域111bの下部に基端側筒状領域111aを備えることで、マンホール開口114の上縁と基端側筒状領域111aとを結ぶ視線を含む視野を形成し、これによってマンホール開口114の下方の視野を外方へと拡張させた構成とされる。このような構成によれば、第1突出部111のマンホール開口114における視野率を向上させることができ、そのぶん第1突出部111のマンホール開口114の開口径を抑えた設計が可能となる。また、上部槽同士の積み重ねの際には第3突出部113を収容する第1突出部111の基端側筒状領域111aが、水処理装置100の通常運転時においては、槽本体101内の視野率向上に寄与することとなるため合理的である。
【0034】
〔他の実施の形態〕
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0035】
上記実施の形態では、第1突出部111の基端側筒状領域111aと先端側筒状領域111bとの間に形成される段差領域111cを直角状とする場合について記載したが、本発明では、基端側筒状領域111aと先端側筒状領域111bとの間に形成される形状に関しては種々変更可能である。
【0036】
また、上記実施の形態では、上部槽110の各突出部に形成されたマンホール開口は、いずれも円形のマンホール開口である場合について記載したが、本発明では、各突出部のマンホール開口を円形或いは角形とすることができる。例えば、上記構成の上部槽110において、第1突出部111及び第3突出部113のマンホール開口をいずれも角形とした構成や、第1突出部111のマンホール開口を円形とし、第3突出部113のマンホール開口を角形とした構成を採用することができる。これらの構成においては、第3突出部113を、当該第3突出部113が第1突出部111の基端側筒状領域111aを収容可能な形状とすることによって、上記実施の形態と同様に上部槽同士の積み重ね作業の合理化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明における「水処理装置」の一実施の形態である水処理装置100の外観を示す図である。
【図2】図1中の汚水処理装置100における処理フローを示す図である。
【図3】本実施の形態の上部槽110を斜め上方からみた斜視図である。
【図4】図3中における上部槽110のA−A線断面構造を示す図である。
【図5】図3中における上部槽110のB−B線断面構造を示す図である。
【図6】図3中における上部槽110のC−C線断面構造を示す図である。
【図7】上部槽110の上に別の上部槽210を積み重ねる様子を示す側面図である。
【図8】図7の積み重ね状態を上方からみた平面図である。
【図9】図8中のD−D線断面の様子を示す図である。
【図10】本実施の形態の上部槽110において、作業者がマンホール開口114を通じて槽本体101外から槽本体101内を視認する様子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
100…水処理装置
101…槽本体
102…浄化処理機構
103…流入部
104…放流部
105…夾雑物除去槽
106…嫌気濾床槽
107…接触濾床槽
108…処理水槽
109…消毒槽
110,210…上部槽
110a,120a…接合フランジ
110b,120b…コルゲート部
111…第1突出部
111a…基端側筒状領域
111b…先端側筒状領域
111c…段差領域
112…第2突出部
113…第3突出部
114,115,116…マンホール開口
117…マンホール枠
117a…マンホール蓋
120…下部槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽本体に被処理水に対する所定の水処理を行う水処理機構を収容する水処理装置であって、
前記槽本体は、いずれも平面視が略長方形となる椀状の上部槽及び下部槽からなり、これら上部槽及び下部槽の接合フランジ面同士を接合することによって形成される構成であり、
前記上部槽は、当該上部槽の天板部の上面から上方へと突出状に形成されるとともに、マンホール蓋が載置される複数の突出部と、各突出部において開口状に形成されるとともに載置された前記マンホール蓋によって覆われるマンホール開口を有し、
前記複数の突出部は、前記上部槽の長手方向に関し一方端部側に設けられた第1の突出部と、前記上部槽の長手方向に関し他方端部側に設けられた第2の突出部を含み、前記第1の突出部は、そのマンホール開口の開口径が前記第2の突出部のマンホール開口の開口径よりも小さく、且つそのマンホール開口の下部に当該マンホール開口よりも開口径が拡径された拡径領域を有する構成であり、
前記上部槽の少なくとも2つを積み重ねる際に、一方の前記上部槽の前記第2の突出部の上方に他方の前記上部槽の前記第1の突出部が覆い被せられ、他方の前記上部槽の前記第1の突出部の前記拡径領域が、一方の前記上部槽の前記第2の突出部を収容するように構成されており、これによって一方の前記上部槽の前記第2の突出部と、他方の前記上部槽の天板部の下面との干渉が回避される構成であることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理装置であって、
前記上部槽の第1の突出部は、そのマンホール開口の下部に前記拡径領域を備えることで、前記マンホール開口の上縁と前記拡径領域の下部とを結ぶ視線が、作業者が当該マンホール開口を通じて槽本体外から槽本体内を覗いたときの視野の上限を規定し、これによって前記視野を槽本体内における外方へと拡張させた構成であることを特徴とする水処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の水処理装置であって、
前記上部槽の前記第1の突出部は、当該第1の突出部の先端側に前記マンホール開口を形成する筒状部分としての先端側筒状領域と、当該第1の突出部の基端側に前記拡径領域を形成する筒状部分としての基端側筒状領域と、前記先端側筒状領域と前記基端側筒状領域との間に形成される直角状の段差領域を備える二段首構造とされていることを特徴とする水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−43880(P2008−43880A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222079(P2006−222079)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【出願人】(390021348)フジクリーン工業株式会社 (71)
【Fターム(参考)】