説明

水処理装置

【課題】大量に高速の水処理を行うと共に、微細な固形物を確実に捕捉して浄化効率を高める水処理装置を提供する。
【解決手段】多孔質層を筒形状に設けたフィルターカットリッジを複数種類備え、該複数種類の前記フィルターカートリッジは、前記多孔質層の平均空孔径を相違させており、
前記平均空孔径が最大のフィルターカートリッジを粗処理用、平均空孔径が最小のフィルターカートリッジを最終処理用として平均空孔径を大小順として並列し、これらフィルターカートリッジを送液管を介して順次連結して被処理液中に含まれる被除去物を捕捉分離する濾過装置を備え、かつ、前記フィルターカートリッジは個別または連続して逆洗浄する逆洗浄機構を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置に関し、詳しくは、液体から被除去物を精密かつ高速に濾過でき、特に、船舶の原水タンクに貯留されたバラスト水の処理用として好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、工場排水、生活排水等から河川や海洋の汚染が拡大している。
これらの汚染された水に含まれる固形物等を除去処理する場合、水量が大量であるため洗浄処理の高速化が要求される。かつ、汚染の要因となる微生物、プランクトン、菌体を多く含む水処理では、前記の被除去物をミクロン単位の空孔を有する濾過膜で捕捉する必要があり、この場合には濾過膜の通過に時間がかかり、かつ、濾過膜に捕捉粒子が堆積して目詰まりが発生しやすいため、間欠的に洗浄が必要である等の理由から、処理水の高速大量処理が困難である。
【0003】
また、近年、船舶に積載するバラスト水の処理が問題となっている。バラスト水は空荷状態でも安全に航行するために積載される海水であり、バラスト水は出港時に付近の海域から取水し、入港時の積荷の積載時に海洋へ排水される。即ち、出港地の海水からなるバラスト水が入港地で排水され、例えば、日本から出港したオイルタンカーがオイル産油国のクエート等の中近東へ航行してオイルを搭載する場合、日本海域の海水がバラスト水として積載され、中近東の海域で洋上に排水されることとなる。
このようにバラスト水が取水した海域と異なる海域に排水されると、海水中の生物が本来の生息地でない海域に移動させられることとなり、海洋の生態系に大きな影響を及ぼすこととなる。
【0004】
このため、一部の国では既にバラスト水の排出を規制しており、2004年2月には、国際海事機関において、「船舶のバラスト水および沈殿物の規制および管理」のための国際条約が採択され、2009年以降の建造船に対し、基準に適合したバラスト水処理システムの設置が求められ、かつ、95%以上のバラスト水を浄化処理することが求められている。
しかしながら、バラスト水タンクの容量が1500トン〜5000トンの大型のタンカーにおいて、出港から入港までの航海中に洋上で、バラスト水を処理水に交換処理する場合、非常に高速に大量処理する必要がある。しかも、海水中には藻等のミクロン単位の微生物が含まれるため、前記のように高速に大量処理することは困難である。
【0005】
さらに、従来より、非水溶性油分を含む含油排水の処理も必要とされる場合が多い。この種の含油排水として、例えば、油田随伴水がある。油田随伴水は、原油試掘の際、海水を地層の油層に注入して圧力を高めて生産性を確保しており、そのため、油を含む排水が多量に発生し、該含油排水が油田随伴水と称されている。この油田随伴水は、非水性油分を除去処理した後に廃棄する必要がある。
【0006】
従来、本出願人は、特開2000−254544号公報(特許文献1)において、藻等の植物性微生物からなる被除去物を含む原水を、比較的高速で被除去物を分離除去できる磁気分離装置を提供している。
該磁気分離装置は、原水に鉄酸化物粒子を添加して、被除去物に磁性を付与した後に、磁気フィルタを通過させて、被除去物を磁気フィルタに磁着して分離除去している。このように磁気で被除去物を分離除去しているため、磁気フィルタの水通過用の空孔を広くしても被除去物を分離除去でき、水処理の高速化を図ることができる。
しかしながら、磁力を用いる磁気分離装置は、被除去物に磁性粒子が付着せずに磁性が付与されない被除去物を捕捉できず、除去率を確実に高めることは困難である。かつ、該磁気分離装置のみでは、5μm以下の精密濾過が困難である。
【0007】
また、前記含油排水の処理装置としては、特開平5−245472号公報(特許文献2)で、含油排水の油粒子よりも小さい空孔を備えたセラミック分離膜を備えた濾過装置が提供されている。
さらに、5μm以下の粒子を捕捉でき、精密濾過ができるPTFE製の多孔質膜からなる中空糸を本出願人は製品名「ポアフロン」として提供している。該中空糸の集束した中空糸膜モジュールを濾過装置に用いた場合、精密濾過ができる利点がある。
【0008】
しかしながら、前記セラミック分離膜やPTFE製の多孔質膜からなる濾過装置は比較的高価であり、大量の排水処理に用いる場合、該セラミック分離膜やPTFE製の中空糸膜モジュールのみを濾過装置に用いると、コスト高になると共に、目詰まりが発生しやすく、濾過時間がかかる問題がある。
【0009】
【特許文献1】特開2000−254544号公報
【特許文献2】特開平5−245472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、被除去物を含むバラスト水、非水溶性油分を含む油田随伴水等の海洋水、海水淡水化装置の脱塩工程の前処理、河川、工場排水の水等の被処理液を大量処理でき、かつ、該微細な被除去物の捕捉性能も高い水処理装置を安価に提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明は、
多孔質層を筒形状に設けたフィルターカートリッジを複数種類備え、該複数種類のフィルターカートリッジは多孔質層の平均空孔径を相違させており、平均空孔径が最大のフィルターカートリッジを粗処理用、平均空孔径が最小のフィルターカートリッジを最終処理用とし、平均空孔径を大小順として送液管を介して連結して、被処理液中に含まれる被除去物を捕捉分離する濾過装置を備え、かつ、該濾過装置は前記フィルターカートリッジを個別または連続して逆洗浄する逆洗浄機構を備え、
前記フィルターカートリッジの多孔質層は、ポリプロピレン繊維、セルロース繊維とメラミン樹脂、セルロース繊維とフェノール樹脂、セルロース繊維とメラミン樹脂およびフェノール樹脂、セルロース繊維とアクリル繊維およびフェノール樹脂から選択されるいずれか一種または複数種であることを特徴とする水処理装置を提供している。
【0012】
前記のように、本発明では、濾過用としてフィルターカートリッジを用いることを特徴としている。フィルターカートリッジは平均空孔径が相違し、かつ、多孔質層の素材が相違するものが多種類ある。空孔径と素材の種類とコストとを考慮して、捕捉する被除去物の粒径に適したフィルターカートリッジを複数種類用い、これらを平均空孔径の大小順に上流から下流に順次連結して用いると、被処理水が大量の場合において、目詰まりの発生率を低減しながら、高速に且つ精密な濾過を安価に行うことができる水処理装置とすることができる。
【0013】
特に、前記フィルターカートリッジを用いると、従来の濾過装置では除去することが困難であった海水中のTEP(Transparent Exopolymer Particles 透明細胞外高分子粒子)や藻等の「ねばねばした成分」を除去できる特徴を有する。しかも、フィルターに付着したTEP等は逆洗浄水で除去できることを本発明者は実験により知見した。
【0014】
よって、本発明の水処理装置は、通常は使い捨てされるフィルターカートリッジを用いながら、逆洗浄機構を付設し、ねばねばした成分からなる被除去物を含む被処理液の除去を行って使用期間を延長させ、交換に伴う処理時間の遅延を減少している。
このように、フィルターカートリッジを用いた濾過装置において、逆洗浄により濾過性能の維持および使用期間を長期化している。かつ、濾過性能が設定基準より低下した場合には、そのまま廃棄することができる。さらに、廃棄して新たなフィルターカートリッジと交換する場合には、カートリッジタイプとしているため、容易に交換でき、専門のメンテナンス業者に依頼する必要はなく、かつ、交換に要する時間を短縮できる。
また、フィルターカートリッジは、例えば、PTFE製の中空糸膜モジュールを用いる場合と比較して、コストを60%以下まで低減することが可能となる。
【0015】
前記逆洗浄機構では、逆洗浄用流体として、圧縮空気、80℃以上の加熱水、120℃以上の蒸気、圧搾蒸気の少なくとも1種を用いている。
特に、圧搾蒸気を用いると、空気圧でフィルターカートリッジに付着した除去物を剥離除去できると共に蒸気で加熱殺菌を同時に行うことができる。
【0016】
前記フィルターカートリッジとして、多孔質層の内周から外周にかけて平均空孔径が150μm以下0.1μm以上の範囲で一定の平均空孔径を有する第1種フィルターカートリッジあるいは/および外周から内周にかけて平均空孔径50μmから0.1μmと次第に小さくした積層型の第2種フィルターカートリッジを用いていることが好ましい。
【0017】
特に、粗濾過用および中濾過用のフィルターカートリッジとして、アクリル繊維とセルロース繊維とからなる多孔質層を備え、平均空孔径が50μm〜20μmである前記第1種フィルターカートリッジを用い、
精密濾過用のフィルターカートリッジとして、ポリプロピレン繊維を積層した多孔質層を備え、平均空孔径が外周側が20μm、内周側を0.3〜0.1μmである前記第2種フィルターカートリッジを用いることが好ましい。
【0018】
前記フィルターカートリッジとして、多孔質層の内周から外周にかけて平均空孔径が150μm以下0.1μm以上の範囲で一定の平均空孔径を有する第1種フィルターカートリッジを用いる場合は、
前記平均空孔径が150μm以下50μm以上の1または複数の前記第1種フィルターカートリッジを粗濾過用とし、
平均空孔径が50μm未満3μm以上の1または複数の前記第1種フィルターカートリッジを中濾過用とし、
平均空孔径が3μm未満0.1以上の1または複数の第1種フィルターカートリッジを精密濾過用として用いる事が好ましい。
【0019】
具体的には、平均空孔径が同一の複数のフィルターカートリッジを軸線を垂直方向として上下に積層し、積層したフィルターカートリッジの中空部を連続させて濾過済み液通路としたユニットを設け、各ユニットを前記逆洗浄機構を設けた容器に収容したモジュールを設け、複数のモジュールを粗濾過用と中濾過用あるいは粗濾過用と中濾過用と精密濾過用のケース内にそれぞれ並設して収容し、
前記各ケースに被処理液入口と濾過済み液出口を設け、これらケースの濾過済み液出口と被処理液入口を前記送液管で順次連結していることが好ましい。
【0020】
前記逆洗浄機構は、前記ケースの濾過済み液出口の連通する共通流路に前記圧搾蒸気等を各ユニットのフィルターカートリッジの中空部からなる濾過済み液通路に前記逆洗浄用流体を流通させている。これにより、フィルターカートリッジの内周面に付着した被除去物を除去してケースに設けた逆洗浄水出口より排出している。
【0021】
前記フィルターカートリッジを備えた濾過装置の下流に、さらに、PTFE製の多孔質膜を備えた濾過装置を設けてもよい。
PTFE製の多孔質膜を備えた濾過装置を下流に付設すると、上流のフィルターカートリッジからなる濾過装置で被除去物の大半を除去できるが、除去できなかった微細な被除去物を確実に除去できる。特に、前記フィルターカートリッジを用いた濾過装置に逆洗浄機構を設けて、処理液のTEP等の「ねばねばした成分」を除去しているため、PTFE製の多孔質膜の目詰まりを防止できる。その結果、使用期間を延長でき、コスト低下も実現できる。
【0022】
前記フィルターカートリッジを備えた濾過装置の上流に、さらに、内外差圧で粗大な被除去物を除去する自動洗浄フィルターを設けることが好ましい。
このように、自動洗浄フィルターを最上流に配置して粗大な被除去物を粗取りすることにより、フィルターカートリッジの目詰まりを抑制でき、使用期間も延長することができる。
前記自動洗浄フィルターとして、例えば、AJバーステック(株)のSAF型自動洗浄フィルター等が好適に用いられる。
該自動洗浄フィルターは、ケース内に流入する処理液を、一次スクリーンにより外周より内周に流通させ、ついで、二次スクリーンを通して内周より外周に流通させ、一次スクリーンおよび二次スクリーンで処理液中の被除去物を捕捉している。使用経過に応じて二次スクリーンの内外面に被除去物が堆積して、二次スクリーンの内外に差圧が発生すると、差圧をセンサで検出し、所定差圧に達すると自動洗浄モードとなる。ケース内には一次スクリーンおよび二次スクリーンの内周側に、吸引ノズルを持った中空の回転シャフトからなるサクションスキャナーを貫通させて配置している。自動洗浄モードになると、サクションスキャナーが回転し、吸引ノズルで二次スクリーンに付着した被除去物を吸引し、外部に排出している。
【0023】
さらに、前記フィルターカートリッジを備えた濾過装置の上流に、前記自動洗浄フィルターを配置する場合にフィルターカートリッジを備えた濾過装置と自動洗浄フィルターの間に、被除去物が含まれる被処理液に磁性粒子を添加し、該磁性粒子が付着して磁性を帯びた被除去物を磁気フィルタで磁着して前記被除去物を分離する磁気分離装置を設けてもよい。
【0024】
前記磁気分離装置は比較的大きな粒径の被除去物を短時間で大量処理できる。よって、船舶に搭載される原水タンク内に貯留されるバラスト水の処理装置として適したものとなる。
前記磁気分離装置は、具体的には、まず、バラスト水等の処理液中に磁性粒子を添加し、該磁性粒子を被除去物に付着させて磁性を付与した後、磁気分離装置で高速に原水中の被除去物を分離除去し、該磁気分離装置で処理された処理水をフィルターカートリッジを備えた濾過装置で濾過し、磁気分離装置で除去できなかった被除去物を確実に除去している。
このように、まず、高速に被除去物を除去できる磁気分離装置で被除去物の90%以上等の大半を除去した後に、濾過装置で濾過しているため、海水等の被処理液中の被除去物は少量となり、濾過膜の目詰まりが発生しにくくなり、よって、濾過膜の透過流量の低下を抑制でき、処理時間を短縮化できる。
このように、磁気分離装置とフィルターカートリッジを備えた濾過装置の夫々の利点を生かすと共に欠点を相互に補完することで、大量の原水を高速処理できると共に被除去物の除去率を確実に高めることができる。
【0025】
前記フィルターカートリッジを備えた濾過装置を、さらに、電解装置と接続し、濾過装置で濾過された被処理液を電解処理で殺菌処理してもよい。しかしながら、フィルターカートリッジを備えた濾過装置の逆洗浄機構で、前記80℃以上の温水、120℃以上の蒸気を用いると、処理液の加熱殺菌を行えるため、前記電解処理装置を用いなくともよい。
【0026】
前記被処理液は、海洋水、河川水、含油排水、5μm以上の前記被除去物を含む排水であれば、いずれの場合も本発明の水処理装置は好適に用いられる。
【0027】
特に、船舶に搭載され、該船舶の原水タンクに貯留されたバラスト水からなる前記被処理液の処理用や、油田随伴水の非水溶性油分の除去用に好適に用いられる。
【0028】
本発明の水処理装置でバラスト水の処理をすると、処理された水は、最小サイズ50μm以上の生物の1mあたりの生個体数が10未満、最小サイズ10μm以上50μm未満の生物の1mあたりの生個体数が10未満とすることができる。
バラスト水の処理は船舶の航行中の海洋上でなされる場合、航行日が半日以上で、バラストの総水量が100000トン以下において、バラスト水の排水時に、該バラスト水の95%以上を処理できる設定としている。
該設定としてバラスト水を処理すると、大半の大型船舶において、前記「船舶のバラスト水および沈殿物の規制および管理」のための国際条約が採択された要綱を満たすことができる。
【発明の効果】
【0029】
前述したように、本発明の水処理装置では、平均空孔径が多種類あると共に比較的安価であるフィルターカートリッジを、平均空孔径が大小相違する複数種類を大小順に連結して用いているため、フィルターに目詰まりの発生率を低減しながら、大量の被処理液を精密濾過することができる。
かつ、逆洗浄機構を設けているため、フィルターカートリッジに堆積する被除去物を定期的に除去できるため、通常使い捨てされるフィルターカートリッジの使用期間を延長でき、交換によるデメリットを低減できる。特に、フィルターカートリッジに付着するTEP等を逆洗浄で除去でき、TEPによるフィルターカートリッジの目詰まりを低減できる。
【0030】
また、上流側に自動洗浄フィルターを設けると、被処理液中の粗大な被除去物を粗取りできるため、フィルターカートリッジの目詰まり発生をより低減できる。
前記自動洗浄フィルターに代えて、あるいは、自動洗浄フィルターとフィルターカートリッジの濾過装置との間に、磁気分離装置を設けると、大きな粒径の被除去物を迅速に捕捉でき、フィルターカートリッジの目詰まり発生率をより低減でき、かつ、水処理時間の短縮を図ることができる。
さらにまた、フィルターカートリッジを用いた濾過装置の下流に、PTFE製の多孔質膜を備えた濾過装置を設けると、フィルターカートリッジで除去できなかった微細な被除去物を確実に除去できる。
なお、本発明のフィルターカートリッジを備えた水処理装置は、処理水に応じて前記自動洗浄フィルター、PTFE製の多孔質膜を備えた濾過装置、前記磁気分離装置と組み合わせてもよいが、フィルターカートリッジを備えた水処理装置のみでも、粒径の相違する多種の被処理物が含まれる処理水の処理を好適に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1〜図7に第一実施形態の水処理装置1を示す。該水処理装置1は船舶に搭載し、バラスト水の処理に用いている。
水処理装置1は、図1に示す粗濾過用の第1種の第一フィルターカートリッジ2と図2に示す精密濾過用の第2種の第二フィルターカートリッジ3とを備えた濾過装置からなる。第一、第二フィルターカートリッジ2、3はいずれも円筒形状の多孔質層2a、3aを備え、該多孔質層2a、3aの中空部2b、3bを囲む内周面2c、3cに密着した内筒を備えていない。また、外周面2d、3dに密着した外筒も備えていない。
【0032】
前記第一フィルターカートリッジ2は、図1(C)に示すように、多数本(本実施形態では8本)を中心軸線を同一として上下方向に積層し、積層間を樹脂で固着して1単位のユニット2Uとしている。該ユニット2Uには、各第一フィルターカートリッジ2の内周面2cに囲まれた中空部2bを上下連通した濾過済み液通路6を設けている。
このユニット2Uを多数個(本実施形態では19ユニット)を隙間をあけて断面円形状に並設し、容器4内に収容して、図3(A)に示す1つのモジュール2Mとしている。よって、1つのモジュール2Mは152本の第一フィルターカートリッジ2からなる。
さらに、前記モジュール2Mを複数個(本実施形態では12個)を図4に示すように、1つのケース5内に収容している。よって、1つのケース5−1内には1824個の第一フィルターカートリッジ2を収容している。
【0033】
図2に示す前記第二フィルターカートリッジ3も、第一フィルターカートリッジ2と同様に、図2(C)に示す上下積層したユニット3Uを設け、図3(B)に示すように、多数個のユニット3Uを容器4内に収容したモジュール3Mを設け、該モジュール3Mをケース5内に収容している。
該第二フィルターカートリッジ3を収容したケース5−2内に並設している。
なお、ケース5の個数は限定されない。
【0034】
前記モジュール2M、3Mの容器4は図5(A)(B)に示す同一の構成としている。
以下に、モジュール2Mを収容する容器4について説明し、モジュール3Mを収容する容器4については説明を省略する。
容器4は上閉鎖壁4a、下閉鎖壁4b、周壁4cを備え、下閉鎖壁4bにユニット2Uの下端を固定して、各ユニット2Uを立設している。これらユニット2Uの上端を連結プレート7に固定している。該連結プレート7には各ユニット2Uの濾過済み液通路6に連通する開口7aを設けている。
前記プレート7は前記上閉鎖壁4aとの間に濾過済み液取出通路8をあけて配置し、濾過済み液取出通路8を周壁4cの上端に設けた濾過済み液出口9に連通している。
【0035】
容器4の周壁4cの下側に被処理液入口10を設け、図5(B)に示すように、各被処理液入口10を送液分岐管20と接続し、これら送液分岐管20を図6に示す共通送液管21と連通し、該共通送液管21を処理液貯留槽(バラスト水貯留槽)22とポンプ23を介して接続し、かつ、各送液分岐管20の開閉弁24を取り付け、各容器4内に所要圧力で被処理液Q1を供給している。
図7に示すように、容器4内に供給されたバラスト水からなる被処理液Q1は、各ユニット2Uの第一フィルターカートリッジ2に外周面から流入し内周面より前記濾過済み液通路6へと濾過済み液Q2を流出し、これら濾過済み液Q2を前記濾過済み液取出通路8を通して濾過済み液出口9から排出している。
このように、第一フィルターカートリッジ2は外周側から処理液が流通し、内周側から処理済み液が流出する外圧濾過としている。
【0036】
さらに、容器4には逆洗浄機構を設けている。該逆洗浄機構は、前記上閉鎖壁4aに逆洗浄用流体の流入口11を設け、該流入口11に配管12を介して圧搾蒸気供給源13に連結している。なお、該圧搾蒸気に代えて、圧縮空気、80℃以上の加熱水を順次供給するようにしてもよい。
【0037】
前記第一フィルターカートリッジ2の内面側に除去物及びTEP等が堆積した時に、定期的あるいは、フィルターカートリッジの内外面の差圧検出センサーからの検出信号で、前記流入口11に、まず圧縮空気を前記濾過済み液通路6内に流通させて圧縮空気で除去物を剥離している。ついで、温水を供給し、剥離した除去物を逆洗浄水出口14から排出すると共に、フィルターカートリッジの内周面を加熱殺菌している。
【0038】
図7に示すように、前記第一フィルターカートリッジ2を収容したケース5−1の濾過済み液出口9に連通させた濾過済み出口5−1aとケース5−2の処理液入口5−2aを、ポンプ31を介設した送液管30を介して連結している。これにより、ケース5−1で粗濾過した濾過済み液Q2をケース5−2で精密濾過している。
【0039】
前記第一フィルターカートリッジ2は、アクリル繊維とセルロース繊維とからなる多孔質層を備え、外周面から内周面にかけて平均空孔径を50μm〜20μmと略一定とした第1種のフィルターカートリッジとしている。
前記第二フィルターカートリッジ3は、平均空孔径が相違するポリプロピレン繊維を積層した多孔質層を備え、平均空孔径が外周側が20μm、内周側を0.3μmとした第2種のフィルターカートリッジとしている。
【0040】
前記構成からなる水処理装置1では、まず、被処理液は第一フィルターカートリッジ2を収容したケース5−1内で、20μm以上の被除去物を第一フィルターカートリッジ2で捕捉除去できる。さらに、ケース5−1内で捕捉できなかった20μm以下の被除去物をケース5−2で捕捉除去できる。
このように、第一フィルターカートリッジ2で濾過した後に、濾過済み液は送液管30を通してポンプ31により所要の圧力として第二フィルターカートリッジ3を収容したケース5−2へ送液される。該ケース5−2内で第二フィルターカートリッジ3の外周面から内周面へと流通し、其の際、第二フィルターカートリッジ3の外周面から内周面にかけて平均空孔径を20μmから0.3μmへと次第に小さくしているため、大きな粒径の被除去物を外周側で捕捉でき、小さい粒径の被除去物を内周側で捕捉して、精密濾過を行うことができる。
【0041】
前記第一フィルターカートリッジ2、第二フィルターカートリッジ3は前記逆洗浄機構により定期的あるいは差圧検出時に内周側から外周側に向けて圧搾蒸気を供給することにより、捕捉率の低下を低減できる。
また、逆洗浄しても捕捉率が回復しなくなった場合は、第一、第二フィルターカートリッジ3を収容した容器4をケース5より取り外して廃棄し、新たな第一、第二フィルターカートリッジと交換している。よって、第一、第二フィルターカートリッジの交換を容易に行うことができる。
【0042】
「実験例」
セルロース繊維をフェノール樹脂で固定した第一フィルターカートリッジ2をユニットとし、該ユニットを前記容器4に収容し、該容器をケース内に収容して、第一フィルターカートリッジ2のみの濾過装置を作成した。
前記フィルターカートリッジはサイズ248mmL(10インチ)で外径は76mmとした。一本のフィルターカートリッジは6リットル/分で被処理液(海水)を導入した場合、捕捉量は60g/本であった。
ケース内に合計1600本のフィルターカートリッジを収容した。該ケース内の1600本のフィルターカートリッジに対して、海水を350トン/時間で20時間供給し、海水の総処理量を7000トンとした。
ケース内の各モジュールの容器には、2時間運転後毎に、1リットル/分(水換算)で120℃の蒸気を導入して12分間逆洗浄し、さらに、濾過済み液を1000リットル/分で、1分間逆洗浄した。
処理速度は、1600本×6リットル/分、即ち、9.6トン/分で、時間当たり576トンの処理をした。
また、1600本のフィルターカートリッジの濾過済み液を4回逆洗浄液としてつかい、1600×4=6400本のフィルターカートリッジを用いた場合とした。よって、捕捉総量は、6400本×60g=384kgとなった。
【0043】
本実験例では、第一フィルターカートリッジ2のみを用いた実験結果であるが、該第一フィルターカートリッジ2を備えたケースに連続して、第二フィルターカートリッジ3を備えたケースを配置し、第一フィルターカートリッジ3で濾過した濾過済み液を第二フィルターカートリッジ3で濾過した場合も、同様な処理時間と捕捉量になることが見込まれる。
【0044】
図8に第一実施形態の第一変形例を概略的に示す。
第一変形例では、第1種の第一フィルターカートリッジとして平均空孔径が大、中、小の3種類のフィルターカートリッジ2−A、2−B、2−Cを用いている。
フィルターカートリッジ2−Aの平均空孔径は100μm、フィルターカートリッジ2−Bの平均空孔径は50μm、フィルターカートリッジ2−Cの平均空孔径は20μmである。第一フィルターカートリッジ2−Cの下流に送液管30を介して連結する第2種の第二フィルターカートリッジ3は第1実施形態と同じである。
前記のように、第一フィルターカートリッジ2を平均空孔径を3段階にわけて分割して連結すると、各フィルターカートリッジの目詰まりを発生しにくくできる。
第一変形例の第一フィルターカートリッジ2−A〜2−C、第二フィルターカートリッジ3の素材は第一実施形態と同様であり、かつ、詳細に図示していないが、それぞれユニットとし、かつ、複数のユニットを容器内に収容してモジュールを設け、該モジュールをケース内に収容している。かつ、逆洗浄機構は図示していないが、第一実施形態と同様に付設している。
【0045】
図9に第一実施形態の第二変形例を概略的に示す。
第二変形例では、第1種の第一フィルターカートリッジは第一変形例と同様に2−A〜2−Cを用い、下流に配置する第2種の第二フィルターカートリッジ3も、フィルターカートリッジ3−A、3−Bで構成している。フィルターカートリッジ3−Aは外周側が20μm、内周側が3μmとし、フィルターカートリッジ3−Bは外周側が2μm、内周側が0.3μmとしている。
第二変形例の第一フィルターカートリッジ2−A〜2−C、第二フィルターカートリッジ3−A、3−Bの素材、フィルターカートリッジをユニットとし、該ユニットを複数本容器内に収容してモジュールとし、複数のモジュールをケース内に収容している構成は図示していないが第一実施形態と同様である。
【0046】
図10に第一実施形態の第三変形例を示す。
第三変形例は、第一フィルターカートリッジ2および第二フィルターカートリッジ3は、第一実施形態で用いるフィルターカートリッジに対して軸線方向の長さは3倍とし、かつ、多孔質層の外周面に環状に連続する凸部2x、3xと凹部2y、3yとを軸線方向に交互に設けたラジアルプリーツ構造とし、表面積を大として処理量を増大させている。
【0047】
図11(A)(B)に第二実施形態の水処理装置を概略的に示す。
第二実施形態では、第一実施形態の第一フィルターカートリッジ2、第二フィルターカートリッジ3を備えた濾過装置の上流に自動洗浄フィルター35を配置し、該自動洗浄フィルター35で第一フィルターカートリッジ2で濾過する前に自動洗浄フィルター35が粗大な被除去物を粗取りするようにしている。第一フィルターカートリッジ2、第二フィルターカートリッジ3は第一実施形態と同様にユニットとし、かつ、詳細に図示していないが、第一実施形態と同様に、複数のユニットを容器内に収容してモジュールとし、複数のモジュールをケース5−1、5−2に夫々収容している。
【0048】
自動洗浄フィルター35として、AJバーステック(株)のSAF型自動洗浄フィルターを用いている。
該自動洗浄フィルター35は図11(B)に示すように、ケース35a内に流入する処理液を、一次スクリーン35bにより外周より内周に流通させ、ついで、二次スクリーン35cを通して内周より外周に流通させ、一次スクリーン35bおよび二次スクリーン35cで被処理液中の被除去物を捕捉している。
前記ケース35aの中心部に、吸引ノズルを持った中空の回転シャフトからなるサクションスキャナー35dを貫通させて配置している。
使用経過に応じて二次スクリーン35cの内外面に被除去物が堆積して、二次スクリーンの内外に差圧が発生すると、差圧をセンサ(図示せず)で検出し、所定差圧に達すると自動洗浄モードとなる。
該自動洗浄モードになると、サクションスキャナー35dの回転シャフトが回転し、吸引ノズルで二次スクリーン35cに付着した被除去物を吸引し、外部に排出している。この自動洗浄フィルター35から排出した被処理水を前記第一フィルターカートリッジ2を収容したケース5−1の容器4内に供給している。
ケース5−1およびケース5−2内の構成および濾過作用は第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0049】
このように、フィルターカートリッジを用いた濾過装置の上流に自動洗浄フィルター35を設置すると、続いて濾過するフィルターカートリッジ2の目詰まり発生を大幅に低減でき、フィルターカートリッジ2の交換頻度を少なくすることができる。
【0050】
図12(A)(B)に第三実施形態を示す。
第三実施形態では、第一実施形態の第二フィルターカートリッジ3を収容したケース5−2の下流に、さらに、図12(B)に示すPTFE製の中空糸の集束体からなる中空糸膜モジュール40を配置している。該中空糸膜モジュール40へ送液管を介して、第二フィルターカートリッジから濾過済み液を送液し、中空糸膜モジュール40で最終濾過を行っている。
この場合、中空糸膜モジュール40での中空糸40aの平均空孔半径は0.2〜0.1μmとしている。
このように、最下流に中空糸膜モジュール40を配置すると、第二フィルターカートリッジ3でも捕捉できなかった超微細な被除去物を捕捉できると共に細菌までも捕捉することができる。かつ、PTFE製の中空糸は、耐久性、耐薬品性に優れている利点がある。
なお、第二実施形態の自動洗浄フィルター35を最上流に配置し、続いて、第一実施形態のフィルターカートリッジを備えた濾過装置を配置し、最下流に前記中空糸膜モジュール40を配置してもよい。
【0051】
図13に第三実施形態の変形例を示す。
該変形例は、中空糸膜モジュール40の下流に電解装置57を配置し、送液管30を介して連結し、第一フィルターカートリッジ2、第二フィルターカートリッジ3、中空糸膜モジュール40で濾過処理した濾過済み液を電解装置57で殺菌処理している。
かつ、該電解装置57での処理済み液を中空糸膜モジュール40へ逆洗浄液用送液管36を介して戻し、電解処理済み液を中空糸膜モジュール40の各中空糸40aの逆洗浄液として用いている。
【0052】
前記第一〜第三実施形態の水処理装置は、船舶に搭載してバラスト水の処理に用いているが、該バラスト水の処理に限定されず、油田随伴水、河川処理等の種々の水処理装置としても用いられる。
【0053】
図14乃至図17に本発明の第四実施形態を示す。
第四実施形態は図14に示すように、オイルタンカー等の大型船舶100に搭載し、積載したバラスト水に含まれる海洋生物等の固形物からなる被除去物の除去処理を航行中に洋上で行うものである。
大型船舶100は船底側に複数のバラスト水タンク50を備え、バラスト水の総量は、例えば、1500〜5000トン程度である。前記複数のバラスト水タンク50に貯留されたバラスト水Q3を順次バラスト水処理装置51へ送給して、処理水と交換した後に、空きとなったバラスト水タンク50に再貯留し、バラスト水を全て処理水としてバラスト水タンク50に戻して貯留している。
【0054】
前記水処理装置51は、図15に示すように、バラスト水タンク50から配管104を介して供給されるバラスト水に磁性粒子52を添加して混合する原水貯留槽53と、該原水貯留槽53から供給されるバラスト水を処理する2台の磁気分離装置54と、該磁気分離装置54で処理された処理水を一時的に貯留する一時貯留槽55と、該一時貯留槽55から供給される処理水を再処理する前記第一フィルターカートリッジ2を収容した濾過装置56Aと第二フィルターカートリッジ3を収容した濾過装置56Bと、該濾過装置56Bと接続した電解装置57を備えている。
【0055】
前記原水貯留槽53と磁気分離装置54との間の配管P1にポンプ58を介設し、該ポンプ58の吐出側で配管P1を2本に分岐し、分岐管を2台の磁気分離装置54A、54Bに接続し、バラスト水を所要の水圧とで磁気分離装置54A、54Bに供給している。この2台の磁気分離装置54A、54Bは配管P2を介して一時貯留槽55に接続し、磁気分離した処理水を一時貯留している。
一時貯留槽55と濾過装置56Aとの配管P3にポンプ59を介設し、ポンプ59の吐出側で濾過装置56Aと接続し、濾過装置56Aを配管を介して濾過装置56Bに接続している。該濾過装置56Bで濾過処理した処理水は配管P4へ送給し、配管P4を配管101を介して空きのバラスト水タンク50へ接続している。前記配管101と前記バラスト水を水処理装置51へ供給する前記配管104とには夫々ポンプ102、103を介設している。
また、前記濾過装置56Bの濾過槽から濾過されずに残存した濃縮液を取り出す配管P5を介して電解装置57と接続している。電解装置57で電解処理した処理水の一部は配管P6でバラスト水タンク50へと接続すると共に処理水の一部は配管P7で濾過装置56へと戻し、濾過膜の逆洗浄水として用いている。
【0056】
前記原水貯留槽53には、貯留するバラスト水Q3に粉末状の磁性粒子52を添加する投入口53aを設けている。該磁性粒子52として表面に水酸基を有する鉄酸化物粒子を用いている。該原水貯留槽53の内部にバラスト水と磁性粒子52とを撹拌混合する撹拌手段(不図示)を付設しており、バラスト水に含まれる被除去物に磁性粒子52を付着させて磁性を付与し、担磁バラスト水としている。
【0057】
前記原水貯留槽53に添加する磁性粒子52は平均粒径が1μm〜50μmで、バラスト水量を100質量%とすると、磁性粒子52は0.2〜5質量%で添加している。
【0058】
前記磁気分離装置54は、図16に示すように、ハウジング63内を隔壁64により隔てて2台の磁気分離装置54A、54Bとしている。
各磁気分離装置54A,54B内に大径の処理管60を横架し、該処理管60の一端の供給口60aを前記担磁バラスト水を供給する配管P1と接続し、他端の取出口60bを配管P2と接続している。該処理管60は非磁性ステンレス、またはFRPやプラスチックからなる透磁性材で形成している。
前記処理管60の内部には円板形状とした磁気フィルタ61を軸線方向と直交方向に一定ピッチをあけて多数(本実施形態では24枚)並設している。かつ、該処理管60内で多数枚の磁気フィルタ61を供給口60a側に向けて取出口60bから一定ピッチを保持した状態で移動可能に配置している。
さらに、前記処理管60には、供給口60aに近接した外周に磁気フィルタ取出口60cを設けると共に、取出口60bに近接した外周に磁気フィルタ入口60dを外周に設け、径方向に出入可能としている。
【0059】
前記各磁気フィルタ61は磁性体からなる金属線材のメッシュからなる。本実施形態では、ステンレス網から形成し、直径30mm、メッシュで囲まれる空孔の1辺の長さを約5mmとし、25mmの空孔とし、5μm以上の固形物を磁着して捕捉できるようにしている。また、該ステンレス網からなる磁気フィルタ61を前記処理管60内に20枚程度を一定ピッチで並設している。
【0060】
前記処理管60の外周面には超電導磁石62を外嵌固定している。該超電導磁石62は
酸化物超電導線材が巻回されたコイル62aで形成し、該コイル62aを超電導温度に保持する冷却容器62b内に収容している。
本実施形態では、ビスマス2223系の酸化物超電導線材のダブルパンケーキコイルから構成している。
前記超電導磁石62で発生する磁場内に、前記処理管60内の全ての磁気フィルタ61を位置する設定とし、よって、全ての磁気フィルタ61は超電導磁石により強い磁場を発生させるようにしている。
該コイルは、例えば、室温ボア径30mm、マグネットサイズの内径50mm、外径150mm、高さ200mmとし、液体窒素冷却(68K)では、0.5T(200A通電時)、冷凍機冷却(20K)では4T(200A通電時)の特性を示す。
【0061】
前記磁気フィルタ61には除去する固形物が付着するため、定期的に洗浄する必要があるため、各磁気分離装置54A、54B内に夫々圧縮空気を吹き付ける磁気フィルタ洗浄器65を設置し、該磁気フィルタ洗浄器65と前記処理管60の磁気フィルタ取出口60cと磁気フィルタ入口60dとを循環搬送管66A、66Bで接続している。
前記磁気フィルタ取出口60cから循環搬送管66Aを通して磁気フィルタ洗浄器65に洗浄前の磁気フィルタ61を搬送し、洗浄後の磁気フィルタ61を循環搬送管66Bを通してフィルタ入口60dに搬送している。該搬送は空気圧または負圧で磁気フィルタ61を搬送している。
前記磁気フィルタ洗浄器65内では、図17に示すように、位置決め保持した磁気フィルタ61の一面側に圧縮空気を吹き付けるノズル67を設けると共に、他方側に除去した固形物を受容する保管68を設けている。
【0062】
前記濾過装置56A、56Bは、それぞれ前記第一フィルターカートリッジ2を収容した第一実施形態と同様のケース5−1、第二フィルターカートリッジ3を収容したケース5−2からなり送液管30を介して連結した構成としている。前記のように、第一フィルターカートリッジ2の平均空孔径は5μm〜3μmの範囲とし、第二フィルターカートリッジ3の外周面側を2μm、内周面側を0.3μmの積層型としている。
これら第一フィルターカートリッジ2、第二フィルターカートリッジ3の素材、これらのユニットおよび容器に収容してモジュールとした形態は前記第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0063】
前記第二フィルターカートリッジ3を備えた濾過装置56Bで濾過されずに残存した濃縮液を取り出す配管P5を介して電解装置57と接続している。この濾過槽に残存する濃縮液は、磁気分離工程および濾過工程で処理する原水の1〜5%程度である。
電解装置57は、電解槽に陰極及び陽極となるアルミニウム電極を吊り下げて処理液中に浸漬し電気分解を行う構成としている。
前記処理液には海水中に含まれる塩化物イオン(Cl)が溶解しているので、電極反応により陽極板で塩素イオンを塩素(Cl)に変換すると共に、陰極板で水酸化物イオン(OH)を生成し、塩素(Cl)と水酸化物イオン(OH)の反応により次亜塩素酸イオン(ClO)を生成している。
このようにして生成した次亜塩素酸イオン(ClO)により、前記国際条約に規定された細菌類を基準値以下の濃度まで死滅させることができるようにしている。
【0064】
前記電解装置57で電解処理した処理水の一部は、前記のように配管P6を介してバラスト水タンク50へと接続し、処理水の残部は定期的に配管P7を通して濾過槽56に供給し、逆洗浄水として用いている。
【0065】
前記水処理装置51において、磁気分離装置54における処理水量は、設置体積1m当たり200t以上/時間に設定している。また、濾過装置56における処理水量は、設置体積1m当たり100t以上/時間〜200t以下/時間に設定している。水処理装置51全体の処理水量は、設置体積1m当たり100t以上/時間としている。
【0066】
次に、前記水処理装置51で行うバラスト水の処理工程を説明する。
まず、バラスト水を貯留したバラスト水タンク50に貯留したバラスト水Q3を水処理装置51の原水貯留槽53に供給して貯留する。
次に、原水貯留槽53に貯留されたバラスト水に、磁性粒子52を添加して混合し、該バラスト水中の固形物に磁性粒子52を付着させ、磁性を付与する(磁性付与工程)。
【0067】
原水貯留槽53内において、バラスト水中に浮遊及び沈殿する固形物の90%以上に磁性粒子を前記水素結合で付着させ、固形物に磁性を付与でき、原水貯留槽53内のバラスト水を担磁バラスト水とする。なお、添加した磁性粒子52のうち固形物に付着しない磁性粒子52はバラスト水中に分散して浮遊する。
【0068】
次に、前記磁性が付与された固形物を含む担磁バラスト水を、磁気分離装置54に供給し、該磁気分離装置54内の処理管60内を流通させる。
処理管60内には上流側から下流側にかけて多数枚の磁気フィルタ61を並設しているため、これら磁気フィルタ61の空孔を囲むステンレス線材が超電導磁石62により強磁気を発生するため、該磁気フィルタ61を担磁バラスト水が通過する時、ステンレス線に磁着し、前記担磁バラスト水から固形物を分離除去する(磁気分離工程)。
【0069】
該磁気分離工程でバラスト水中の5μm以上の被除去物からなる固形物には磁性粒子52が多く付着するため強く磁化され、5μm以上の固形物は殆ど分離でき、バラスト水Q3中の固形物の略90%以上を分離除去できる。
これに対して、5μm未満の固形物には磁性粒子が付着されにくく、かつ、付着しても磁性粒子の個数が少ないため弱く磁化される。よって、5μm未満の固形物は磁気分離工程では分離除去されない場合があり、磁気分離工程で得られた処理水中には5μm未満の超微細な固形物が残存しやすい。また、固形物に付着せずに浮遊する磁性粒子も残存する場合がある。
【0070】
磁気分離装置54の1時間当たりの処理水量は後段に配設する濾過装置56の1時間当たりの処理水量よりも大きいため、磁気分離装置54で処理した処理水を、一時的に、一時貯留槽55に一旦貯留する。一時貯留槽55内に貯留した処理水はポンプ59で吐出量を調整しながら、濾過装置56に加圧供給する。
【0071】
濾過装置56A、続いて濾過装置56B内に加圧供給した処理水をそれぞれ第一フィルターカートリッジ2、第二フィルターカートリッジ3で外周面から内周面へと処理液を通過させ、外圧濾過により、第一、第二フィルターカートリッジ2、3の多孔質層で処理水中に残存する5μm未満で0.1μm以上の固形物を捕捉して除去する。(濾過工程)
該濾過装置56Bでは0.1μm以上の粒子を捕捉できる設定としているため、バラスト水中に含まれる0.1μm以上の固形物や細菌を除去できる。
かつ、該濾過装置で濾過する処理水は前段の磁気分離工程で処理水中の固形物の90%近くが分離除去されているため、第一、第二フィルターカートリッジ2、3に付着する固形物が非常に少なく、よって、処理液が透過する空孔が小さくとも処理流量の低下はすくなく、比較的高速に濾過することができる。
さらに、濾過工程でも除去できずに残存する濃縮液は電解装置57に送給して電解処理することで、濃縮液中に含まれる0.1μm未満の細菌も殺菌できる。
【0072】
このように、前記バラスト水の水処理装置51では、磁気分離工程と濾過工程により、バラスト水に含まれる0.1μm以上の海洋生物を分離除去でき、バラスト水中に含まれる固形物の95%以上を確実に分離することができる。
詳細には、磁気分離工程でバラスト水中の固形物の90質量%以上を除去し、濾過工程で、前記磁気分離工程で固形物が分離除去された処理水中の固形物及び磁性粒子を捕捉し、バラスト水中の固形物の98質量%以上を除去している。
【0073】
また、水処理装置51では、固形物を捕捉して分離する磁気分離装置54および濾過装置56A、56Bのフィルターカートリッジを定期的に交換して、透過流量を低下させず、処理の効率化を図っている。
即ち、磁気分離装置54では、磁気フィルタ61のステンレス鋼線の周りに固形物が付着し、該ステンレス鋼線で囲まれた空孔面積が減少して処理流量が低下するため、固形物の付着量が多い、供給口側の磁気フィルタ取出口60cから磁気フィルタ61を順番に取り出して磁気フィルタ洗浄器65へと搬送している。
この搬送の間に磁気フィルタ61は超電導磁石62の磁場から外れるため減磁され、よって、超電導磁石62自体を減磁する必要はなく、磁気分離装置を連続運転している。
かつ、処理管60から1枚の磁気フィルタ61が取り出されると、再生した磁気フィルタ61を下流端の磁気フィルタ入口62dから処理管60内に挿入するため、常時所要枚数の磁気フィルタ61が処理管60に並設でき、多数枚の磁気フィルタ61を通過させることで磁気分離性能を低下させない。
また、磁気フィルタ洗浄器65内では、圧縮空気により磁気フィルタ61から吹き飛ばした固形物を保管68で収容しているため、バラスト水から分離除去した固形物を装置外に飛散させない。
【0074】
前記のように、本発明の水処理装置は、磁気分離装置で高速に大量のバラスト水から固形物を分離除去できると共に、該磁気分離装置で除去できなかった微細な固形物を確実に除去できるため、バラスト水の浄化装置として好適に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の水処理装置及び水処理方法は、バラスト水等の処理のみならず、油田随伴水、海水淡水化装置の脱塩工程の前処理、製紙排水の処理、半導体、鉄鋼、食品等の工場排水の処理、病院の排水処理等の固形物を多く含む工業排水の浄化装置として広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の水処理装置の第一実施形態で用いる第一フィルターカートリッジを示し、(A)は斜視図、(B)は断面図、(C)はユニットとした状態を示す正面図である。
【図2】本発明の水処理装置の第一実施形態で用いる第二フィルターカートリッジを示し、(A)は斜視図、(B)は断面図、(C)はユニットとした状態を示す正面図である。
【図3】(A)(B)はモジュールとした状態を示す概略斜視図である。
【図4】複数のモジュールをケース内に収容した状態を示す概略斜視図である。
【図5】前記モジュールを示し、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
【図6】複数のモジュールの配管経路を示す図面である。
【図7】ケースを連結した状態を示す概略図である。
【図8】第一実施形態の第一変形例を示す概略図である。
【図9】第一実施形態の第二変形例を示す概略図である。
【図10】第一実施形態の第三変形例を示す概略図である。
【図11】第二実施形態を示し、(A)は概略構成図、(B)は自動洗浄フィルターの断面図である。
【図12】第三実施形態を示し、(A)は概略構成図、(B)は中空糸膜モジュールの概略斜視図である。
【図13】第三実施形態の変形例を示す概略図である。
【図14】第四実施形態の水処理装置を船舶に搭載している状態を示す概略図である。
【図15】第四実施形態の水処理装置の構成を示す図面である。
【図16】第四実施形態の水処理装置の磁気分離装置を示す構成図である。
【図17】磁気分離装置の一部拡大説明図である。
【符号の説明】
【0077】
1 水処理装置
2 第一フィルターカートリッジ
2U ユニット
2M モジュール
3 第二フィルターカートリッジ
3U ユニット
3M モジュール
4 容器
5 ケース
6 濾過済み液通路
9 濾過済み液出口
10 被処理液入口
11 逆洗浄用流体の流入口
13 逆洗浄用の圧搾蒸気供給源
30 送液管
31 ポンプ
35 自動洗浄フィルター
40 中空糸膜モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質層を筒形状に設けたフィルターカートリッジを複数種類備え、該複数種類のフィルターカートリッジは多孔質層の平均空孔径を相違させており、平均空孔径が最大のフィルターカートリッジを粗処理用、平均空孔径が最小のフィルターカートリッジを最終処理用とし、平均空孔径を大小順として送液管を介して連結して、被処理液中に含まれる被除去物を捕捉分離する濾過装置を備え、かつ、該濾過装置は前記フィルターカートリッジを個別または連続して逆洗浄する逆洗浄機構を備え、
前記フィルターカートリッジの多孔質層は、ポリプロピレン繊維、セルロース繊維とメラミン樹脂、セルロース繊維とフェノール樹脂、セルロース繊維とメラミン樹脂およびフェノール樹脂、セルロース繊維とアクリル繊維およびフェノール樹脂から選択されるいずれか一種または複数種であることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記逆洗浄機構では、逆洗浄用流体として、圧縮空気、80℃以上の加熱水、120℃以上の蒸気、圧搾蒸気の少なくとも1種を用いている請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記フィルターカートリッジとして、多孔質層の内周から外周にかけて平均空孔径が150μm以下0.1μm以上の範囲で一定の平均空孔径を有する第1種フィルターカートリッジ、あるいは/および外周から内周にかけて平均空孔径50μmから0.1μmと次第に小さくした積層型の第2種フィルターカートリッジを用いている請求項1または請求項2に記載の水処理装置。
【請求項4】
粗濾過用および中濾過用のフィルターカートリッジとして、アクリル繊維とセルロース繊維とからなる多孔質層を備え、平均空孔径が50μm〜20μmである前記第1種フィルターカートリッジを用い、
精密濾過用のフィルターカートリッジとして、ポリプロピレン繊維を積層した多孔質層を備え、平均空孔径が外周側が20μm、内周側を0.3〜0.1μmである前記第2種フィルターカートリッジを用いている請求項3に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記フィルターカートリッジとして、多孔質層の内周から外周にかけて平均空孔径が150μm以下0.1μm以上の範囲で一定の平均空孔径を有する第1種フィルターカートリッジを用い、
前記平均空孔径が150μm以下50μm以上の1または複数の前記第1種フィルターカートリッジを粗濾過用とし、
平均空孔径が50μm未満3μm以上の1または複数の前記第1種フィルターカートリッジを中濾過用とし、
平均空孔径が3μm未満0.1以上の1または複数の第1種フィルターカートリッジを精密濾過用として用いている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記平均空孔径が同一の複数のフィルターカートリッジを軸線を垂直方向として上下に積層し、積層したフィルターカートリッジの中空部を連続させて濾過済み液通路としたユニットを設け、各ユニットを前記逆洗浄機構を設けた容器に収容したモジュールを設け、複数のモジュールを粗濾過用と中濾過用あるいは粗濾過用と中濾過用と精密濾過用のケース内にそれぞれ並設して収容し、
前記各ケースに被処理液入口と濾過済み液出口を設け、これらケースの濾過済み液出口と被処理液入口を前記送液管で順次連結している請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項7】
前記フィルターカートリッジを備えた濾過装置の下流に、さらに、PTFE製の多孔質膜を備えた濾過装置を設けている請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記フィルターカートリッジを備えた濾過装置の上流に、さらに、内外差圧で粗大な被除去物を除去する自動洗浄フィルターを設けている請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項9】
前記フィルターカートリッジを備えた濾過装置の上流に、または該濾過装置と前記自動洗浄フィルターの間に、被除去物が含まれる被処理液に磁性粒子を添加し、該磁性粒子が付着して磁性を帯びた被除去物を磁気フィルタで磁着して前記被除去物を分離する磁気分離装置を設けている請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項10】
前記被処理液は、海洋水、河川水、含油排水、5μm以上の前記被除去物を含む排水のいずれか一種である請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項11】
船舶に搭載され、該船舶の原水タンクに貯留されたバラスト水の処理用である請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−119999(P2010−119999A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298852(P2008−298852)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】