説明

水処理装置

【課題】水系に対し元の水系と異なる成分を添加したり生じさせたりすることなく、水系のスケール防止を行うことができる水処理装置を提供する。
【解決手段】浴槽1の循環ライン6にストレーナ2、ポンプ3及び砂濾過器4が設けられている。ライン6から配管8に分岐した水は、フィルタ10に通水されて異物粒子が除去された後、薬注装置11からスケール防止剤が添加され、逆浸透膜分離装置13に送られる。逆浸透膜分離装置13の透過水は、加熱装置15へ送られ、加温された後、温泉水が添加され、浴槽1に戻る。弁7,9、ポンプ12及び加熱装置15を制御し、硬度計18の検出硬度が0〜80程度となり、温度計19の検出温度が約44℃程度となるように逆浸透膜分離装置13への通水量及び加熱装置15の出力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽からの水を浄化処理して槽に戻す水処理装置に係り、特にこの循環水系におけるスケール析出を防止するよう構成された水処理装置に関する。詳しくは、本発明は、例えば、温泉水や鉱泉水、井戸水などの地下水をかけ流しでなく、浴槽と濾過器などの浄化装置の間を循環させる設備に好適な水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
泉源から地下温水を汲み上げている温泉地では、温泉水中に含有される成分に起因するスケール障害が大きな問題となっている。即ち、温泉なかでも二酸化炭素泉や炭酸水系塩泉、硫酸塩泉などは、豊富なミネラル分を含むため、ミネラル成分と水中の炭酸分、硫酸分とが結合することによりスケールが析出し易い。
【0003】
温泉の涌出量が十分でないなどの理由でかけ流しができない場合には、第2図のように、浴槽1の水をストレーナ2でゴミ除去し、ポンプ3で砂濾過器4に通水して浴槽1に戻すと共に、汚染物質が過度に循環系に濃縮しないように適宜ブローを行いながら利用することが多い。しかし、上記のように、温泉水にはカルシウムやマグネシウムなどのスケール発生成分が多く含まれることが殆どであり、これを直接ボイラや熱交換器などによって加温すると、管路の閉鎖や伝熱面の被覆によるエネルギーロスなどの障害をもたらす。そのため、従来は循環系に薬剤添加や電場印加を行うことで対応していた。
【0004】
例えば、特公平6−42957、特開2002−219490には、泉源から取り出した温泉水に対しポリリン酸ナトリウム添加と磁気処理を施したり、電極が反転する電場印加装置に通水してスケール化傾向を低下させることにより、スケール析出を防止することが記載されている。
【特許文献1】特公平6−42957号公報
【特許文献2】特開2002−219490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしこれらの方法では、薬剤添加や磁場又は電場印加によって地下水の成分が化学的に変化し、元々の温泉水に存在しない成分を生じる恐れがあった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、水系に対し元の水系と異なる成分を添加したり生じさせたりすることなく、水系のスケール防止を行うことができる水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の水処理装置は、槽からの水を浄化処理して該槽に戻す水処理装置において、浄化処理前又は浄化処理後の水の全部又は一部を逆浸透膜分離装置で処理し、該槽に戻すよう構成したことを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の水処理装置は、請求項1において、前記槽は、温泉水、鉱泉水及び地下水の少なくとも1種よりなる天然水が供給される浴槽であること特徴とするものである。
【0009】
請求項3の水処理装置は、請求項1又は2において、前記逆浸透膜分離装置で処理された水を加温する加温手段を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の水処理装置は、請求項1ないし3のいずれか1項において、槽内の水、槽からの水又は槽に戻る水の硬度を検出し、この硬度検出値に基づいて前記逆浸透膜分離装置による処理水量を制御する手段を備えたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項5の水処理装置は、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記逆浸透膜分離装置の濃縮室又はそれよりも上流側にスケール防止剤の添加手段が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、槽からの水を逆浸透膜分離装置で処理して槽に戻すようにしている。この逆浸透膜分離装置による処理によって、スケール成分が除去されるので、水系におけるスケール発生が防止される。
【0013】
本発明は、温泉水、鉱水、地下水など天然水を水源とする浴槽設備に適用するのに好適である。
【0014】
本発明では、浴槽水を浄化処理した後再加熱する場合、この加熱を行う前に逆浸透膜分離装置で処理するのが好ましい。浴槽水の温度は、源泉の温度よりも低いことが通例であるので、源泉からの温泉水や、再加熱後の水を逆浸透膜分離装置で処理する場合に比べて逆浸透膜分離装置でのスケール析出も抑制される。
【0015】
逆浸透膜分離装置でのスケール析出を防止するために、逆浸透膜分離装置の濃縮室又はそれよりも上流側にスケール防止剤を添加することもあるが、このスケール防止剤は逆浸透膜分離装置によって分離されるので、浴槽水に混入することはない。
【0016】
本発明では、槽内の水、槽からの水又は槽に戻る水の硬度を検出し、この検出値に応じて逆浸透膜分離装置で処理する水量を制御するのが好ましい。
【0017】
このようにすれば、水系のスケール成分濃度が過度に高くなることが確実に防止され、スケール防止効果が向上する。また、温泉成分が過度に除去されることも防止され、浴槽水の温泉成分濃度を所定以上に保つこともできる。
【0018】
本発明では、逆浸透膜分離装置で処理する水量は、上記のように、浴槽温度を所定範囲に保ちつつスケール発生が防止されるように、硬度センサ検出値に基づくフィードバック制御で調節することが望ましいが、ブローおよび補給を、浴槽温度を所定範囲に保ちつつスケール防止効果が奏されるように、定期的に行うようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、第1図を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
温泉の浴槽1内の水(湯)が循環ライン6によって循環される。このライン6には、毛髪などのゴミを除去するストレーナ2、ポンプ3及び砂濾過器4が設けられ、循環水を浄化処理している。ライン6のうちストレーナ2よりも上流側に弁7が設けられ、この弁7よりも上流側から配管8が分岐している。この配管8に分岐した水は、バルブ9から濾過度が例えば10μm程度のフィルタ10に通水されて異物粒子が除去された後、薬注装置11からスケール防止剤が添加され、ポンプ12から逆浸透膜分離装置(RO装置)13へ送られ、逆浸透膜分離処理される。なお、配管8に流量計を設けてもよい。
【0021】
逆浸透膜分離装置13の濃縮水はブロー水として系外に排出される。逆浸透膜分離装置13の透過水は、配管14を介して追焚ボイラ等の加熱装置15へ送られ、加温された後、配管16及びライン6の末端部6aを介して浴槽1に戻る。
【0022】
この配管16には、配管17から必要に応じ温泉水が導入され、戻り水又は温泉水と戻り水との混合水が浴槽1に導入される。
【0023】
ライン6のうち配管17との合流点よりも下流側の末端部6aには、硬度計18と温度計19とが設けられ、これらの検出値が制御装置20に入力される。
【0024】
制御装置20は、これらの検出値に基づいて、弁7,9、ポンプ12及び加熱装置15を制御し、硬度計18の検出硬度が0〜80特に50〜60程度となり、温度計19の検出温度が42〜46℃特に約44℃程度となるように逆浸透膜分離装置13への通水量及び加熱装置15の出力を制御する。
【0025】
薬注装置11は、スケール防止剤を添加して逆浸透膜分離装置13でのスケール析出を防止するためのものであり、配管8内の流量や硬度計18の検出硬度値に基づいて薬注量が制御される。スケール防止剤としては例えばポリリン酸塩、ポリアクリル酸塩、ホスホン酸塩などが用いられる。
【0026】
この薬注装置で添加されたスケール防止剤は、逆浸透膜分離装置13で膜分離され、ブロー水と共に系外に排出されるので、浴槽水に混入することはない。
【0027】
このように、第1図の設備によると、浴槽1内の浴槽水の硬度成分濃度及び温度が適正に保たれるので、各ラインや機器でのスケール析出が防止される。また、浴槽水にスケール防止剤成分が混入することもなく、浴槽水の成分は源泉(温泉水)由来のものとなる。
【0028】
[別の実施の形態]
上記実施の形態では、ライン6に浄化手段としてストレーナ2と砂濾過器4とを設置しているが、これに限定されるものではなく、カートリッジフィルタ、活性炭濾過器などを設置してもよい。
【0029】
また、逆浸透膜分離装置13でのスケール析出防止のために、逆浸透膜分離装置13を冷却したり、逆浸透膜分離装置13の濃縮室又はそれよりも上流側の水に対し希釈水を添加したり、該水を冷却したりしてもよい。希釈水として水道水など温泉とは異なる水源の水を用いたとしても、この希釈水中の成分は逆浸透膜分離装置13で除去されるので、浴槽1や循環系の水の成分に影響はない。
【0030】
硬度計18は浴槽1に設けられてもよく、ライン6のうち末端部6aよりも上流側に設けられてもよい。
【0031】
[実施例]
第1図において、温泉水硬度150(asCaCOmg/L)、温泉水量0〜6m/hr、浴槽1の容量10m、ライン6のポンプ3の吐出量40t/hr、逆浸透膜分離装置13の透過水量2m/hr、硬度計18による検出硬度の目標値を80、温度計19による検出温度の目標値を44℃とし、薬注装置11のスケール防止剤としてポリリン酸ナトリウムを添加後の水中の目標濃度5mg/Lにて添加した。その結果、3ヶ月経過してもスケールは析出せず、本発明の効果が確認された。
【0032】
[比較例]
比較のために、この実施例において逆浸透膜分離装置13への通水を停止したこと以外は同様にして運転を行ったところ、0.5日経過後から浴槽壁にスケールが付着し始めた。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態を示す系統図である。
【図2】従来例を示す系統図である。
【符号の説明】
【0034】
1 浴槽
2 ストレーナ
4 砂濾過器
10 フィルタ
13 逆浸透膜分離装置
15 加熱装置
18 硬度計
19 温度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽からの水を浄化処理して該槽に戻す水処理装置において、
浄化処理前又は浄化処理後の水の全部又は一部を逆浸透膜分離装置で処理し、該槽に戻すよう構成したことを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
請求項1において、前記槽は、温泉水、鉱泉水及び地下水の少なくとも1種よりなる天然水が供給される浴槽であること特徴とする水処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記逆浸透膜分離装置で処理された水を加温する加温手段を備えたことを特徴とする水処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、槽内の水、槽からの水又は槽に戻る水の硬度を検出し、この硬度検出値に基づいて前記逆浸透膜分離装置による処理水量を制御する手段を備えたことを特徴とする水処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記逆浸透膜分離装置の濃縮室又はそれよりも上流側にスケール防止剤の添加手段が設けられていることを特徴とする水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−155182(P2010−155182A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333615(P2008−333615)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】