説明

水処理装置

【課題】本発明は紫外線照射手段を大量に必要とせず、短時間で大量の水を処理できる水処理装置を提供できることを目的とするものである。
【解決手段】この目的を達成するために本発明のバラスト水処理装置12は、バラスト水流入口13および、バラスト水流出口14を有するバラスト水処理容器15と、このバラスト水処理容器15内に設けた複数の紫外線ランプ16と、スポンジ状のフィルタ17とを備え、フィルタ17は、水流方向に厚みを有し、プランクトンが通過できない部分を上流側に、プランクトンが通過できる部分を下流側に形成し、水流の上流側から下流側に向けて目(開口)の大きさを密から粗に連続的に変化させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を用いて微生物等を処理する水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線を用いて微生物等を処理する水処理装置としては、船舶に搭載するバラスト水処理装置がある。
【0003】
バラスト水とは、船舶の安定航行を行うために、船舶の停泊地において、適宜取り込まれ、また排出されるようになっており、バラスト水を取り込んだ停泊地に生息していた水生生物や細菌類等の生物種が、その環境とは異なる停泊地において排出されると、その排出地における生物種の生態系を破壊させることがあり、生態系の破壊が問題となっている。
【0004】
そこで、上述した生態系の破壊を防止するため、紫外線を用いて微生物等を処理する、バラスト水処理装置が提案されている(例えば下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/039146号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記バラスト水処理装置は、バラスト水流入口、およびバラスト水流出口を有するバラスト水処理容器と、このバラスト水処理容器内に、脱着自在に設けた紫外線照射手段とを備えた構成となっており、水生生物や細菌類等の生物種に対して、直接的、または間接的に紫外線を照射することによって、それらを破壊、殺菌するようにしている。
【0007】
しかしながら、紫外線照射により水生生物や細菌類等の生物種を破壊、殺菌するとともに、短時間で大量の水を処理するためには、高出力の紫外線照射手段が大量に必要となるという課題があった。
【0008】
そこで、本発明は紫外線照射手段を大量に必要とせず、短時間で大量の水を処理できる水処理装置を提供できることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、この目的を達成するために本発明は、水流入口および、水流出口を有する水処理容器と、この水処理容器内の前記水流入口側から前記水流出口側に向けて順次設けた紫外線照射手段とプランクトンを捕捉するフィルタとを備え、前記フィルタは、目(開口)の大きさを変えて、前記プランクトンが通過できる部分と前記プランクトンが通過できない部分を形成し、前記フィルタの上流側で前記プランクトンが通過できない部分の近傍に前記紫外線照射手段を設けたことを特徴とする水処理装置であり、これにより、所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明は、水流入口および、水流出口を有する水処理容器と、この水処理容器内の前記水流入口側から前記水流出口側に向けて順次設けた紫外線照射手段とプランクトンを捕捉するフィルタとを備え、前記フィルタは、目(開口)の大きさを変えて、前記プランクトンが通過できる部分と前記プランクトンが通過できない部分を形成し、前記フィルタの上流側で前記プランクトンが通過できない部分の近傍に前記紫外線照射手段を設けたことを特徴とするものであるので、紫外線照射手段の数量を大量に必要とせず、短時間で大量の水を処理できるものとなる。
【0011】
すなわち、本発明においては、フィルタの目(開口)の大きさを変えてプランクトンが通過できない部分を形成することにより、プランクトンを水流から分離し、フィルタ上に一時的に保持するため、紫外線照射時間を長くできる分、紫外線照射手段の数量を低減しつつ、被処理水中のプランクトンを処理することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1にかかるバラスト水処理装置を用いた船舶を示す斜視図
【図2】同要部を示す図
【図3】同バラスト水処理装置の構成を示す斜視図
【図4】同フィルタとランプの配置を示す構成図
【図5】同プランクトンのフィルタ通過時の状況を示す図
【図6】同フィルタを示す拡大断面図
【図7】同光触媒粉の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、短時間で大量の水処理が要求されるバラスト水を例として、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1の1は、港2に係留している船舶を示し、この船舶1の喫水線3の下方にはシーチェスト4が設けられている。
【0015】
図2は図1における船舶1のバラスト水の取り込み、排出経路を示している。すなわち、船舶1内にバラスト水を取り込む場合には、まず船舶1内の切換弁5をシーチェスト4側に切換え、切換弁7を流入口8側に切換え、次に船舶1内のポンプ9を駆動する。
【0016】
すると、シーチェスト4から例えば海水がバラスト水として流入し、その後、ポンプ9、流入口8を介してバラストタンク10内に取り込まれる。
【0017】
また、バラストタンク10内のバラスト水を排出する場合には、切換弁5を流出口11側に切換え、切換弁7を流入口8とは反対側に切換え、次にポンプ9を駆動する。
【0018】
すると、バラストタンク10内のバラスト水は流出口11から切換弁5、ポンプ9、切換弁7を介してシーチェスト4を介して船舶1外に排出される。
【0019】
図3は図2におけるポンプ9から切換弁7までの間に介在されたバラスト水処理装置12を示している。
【0020】
このバラスト水処理装置12は、図3〜図5に示すように、バラスト水流入口13および、バラスト水流出口14を有するバラスト水処理容器15と、このバラスト水処理容器15内に設けた紫外線照射手段の一例である複数の紫外線ランプ16と、スポンジ状のフィルタ17とを備えている。
【0021】
図3では紫外線ランプ16とスポンジ状のフィルタ17を交互に各7段(紫外線ランプ16は8段)設け、紫外線ランプ16は1段に3本設けている。紫外線ランプ16としては、メンテ作業の省力化のため長寿命が要求されており、1万時間以上の長寿命のアマルガムランプを使用するのが好ましい。
【0022】
そして、図4に示すようにフィルタ17は、水流方向に厚みを有し、エンボス加工により、プランクトンが通過できない部分を上流側に、プランクトンが通過できる部分を下流側に形成し、水流の上流側から下流側に向けて目(開口)の大きさを密から粗に連続的に変化させている。
【0023】
フィルタ17の目(開口)の大きさは、例えば5μmのプランクトン23に対しては、粗の開孔径を6μm(密の開孔径は例えば1μm)としている。
【0024】
また、図4に示すように、紫外線ランプ16は保護管18に内蔵され、フィルタ17の目(開口)の大きさが粗の部分の上流側に設置されている。
【0025】
また、フィルタ17は、図6に示すように、基材20に、光触媒粉21を、耐紫外線バインダー22(例えばテトラエトキシシランを加水分解し縮重合して得られるシリカ)にて付着させた構成とした。
【0026】
また、フィルタ17の基材20には光触媒粉21を担持しており、光触媒粉21は、図7にも示しているが、アナタース型酸化チタンとフッ素とを含み、前記アナタース型酸化チタンとフッ素が化学結合している酸化チタン光触媒であり、その詳細な内容は、本願特許出願人が先に出願しているWO2008/132824号公報に詳細に記載されている。
【0027】
上記構成において、バラスト水流入口13からバラスト水処理容器15内に流入した水は、交互に各7段(紫外線ランプ16は8段)設けられた紫外線ランプ16とスポンジ状のフィルタ17を通過する。
【0028】
この通過の際、流入水は目(開口)の大きさの影響はほとんど受けずにそのままフィルタ17を通過するため、フィルタ17による圧力損失の増加を抑制した状態でフィルタ17の密な部分を通過できないプランクトンを水流から分離できる。
【0029】
そして流入水に含まれた5μmのプランクトン23は、紫外線ランプ16がフィルタ17の目(開口)の大きさが粗の部分の上流側に設置されているため、フィルタ17の目(開口)の大きさが粗の部分に直接到達することはなく、まずフィルタ17の目(開口)の大きさが密の部分に当たり、図5に示すように、密から粗に連続的に変化しているフィルタ17上を転がり、目(開口)の大きさが粗の部分まで移動するため、長時間、紫外線ランプ16の照射を受けることになる。
【0030】
すなわち、数μm以下の小さいプランクトン24は、図5に示すように、密から粗に連続的に変化しているフィルタ17の途中でフィルタ17を通過するが、5μmのプランクトン23はフィルタ17の最下流側、下流側に凸形状の先端近傍から通過するため、殺滅しにくい大きいプランクトンほどフィルタ17上に留まることになるため、大きいプランクトンへの紫外線照射時間も長くなり、プランクトンの殺滅効果を向上させている。
【0031】
言い換えれば、プランクトンの殺滅効果を同じとすれば、紫外線ランプ16の数量が低減できることになる。
【0032】
このようなプランクトンの殺滅効果を向上させたフィルタ17を7段通過するため、上流側のフィルタ17通過時には死滅していないプランクトンも、フィルタ17を通過するごとに紫外線によるダメージを受け、最終の7段目のフィルタ17通過時には、死滅させることができる。
【0033】
そして紫外線照射により殺滅されたプランクトン23は、バラスト水流出口14からバラスト水処理容器15の外へ排出される。
【0034】
そして、バラスト水処理容器15のバラスト水流出口14から切換弁7を介してバラストタンク10内、または切換弁7、を介してシーチェスト4から船舶1外に排出される。
【0035】
また、本実施形態においては、フィルタ17に前述した光触媒を保持させているので、上述のごとく、フィルタ17上に長時間留まるプランクトン23は、紫外線ランプ16から照射される紫外線により活性化された光触媒の殺滅効果も加えられることにより、紫外線ランプ16の紫外線照射だけに比べ、より効果的に殺滅できることになる。
【0036】
以上のように、フィルタの目(開口)の大きさを変えてプランクトンが通過できない部分を形成することにより、プランクトンを水流から分離し、フィルタ上に一時的に保持するため、紫外線照射時間を長くできる分、紫外線照射手段の数量を低減しつつ、被処理水中のプランクトンを処理することができるものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように本発明は、水流入口および、水流出口を有する水処理容器と、この水処理容器内の前記水流入口側から前記水流出口側に向けて順次設けた紫外線照射手段とプランクトンを捕捉するフィルタとを備え、前記フィルタは、目(開口)の大きさを変えて、前記プランクトンが通過できる部分と前記プランクトンが通過できない部分を形成し、前記フィルタの上流側で前記プランクトンが通過できない部分の近傍に前記紫外線照射手段を設けたことを特徴とするものであるので、紫外線照射手段の数量を大量に必要とせず、短時間で大量の水を処理できるものとなる。
【0038】
すなわち、本発明においては、フィルタの目(開口)の大きさを変えてプランクトンが通過できない部分を形成することにより、プランクトンを水流から分離し、フィルタ上に一時的に保持するため、紫外線照射時間を長くできる分、紫外線照射手段の数量を低減しつつ、被処理水中のプランクトンを処理することができるものとなる。
【0039】
このため、紫外線によるプランクトンを殺滅させる効果を高めることができる。
【0040】
したがって、船舶のバラスト水処理装置としての活用が期待される。
【符号の説明】
【0041】
1 船舶
2 港
3 喫水線
4 シーチェスト
5 切換弁
7 切換弁
8 流入口
9 ポンプ
10 バラストタンク
11 流出口
12 バラスト水処理装置
13 バラスト水流入口
14 バラスト水流出口
15 バラスト水処理容器
16 紫外線ランプ
17 フィルタ
18 保護管
20 基材
21 光触媒粉
22 耐紫外線バインダー
23、24 プランクトン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水流入口および、水流出口を有する水処理容器と、
この水処理容器内の前記水流入口側から前記水流出口側に向けて順次紫外線照射手段とプランクトンを捕捉するフィルタとを備え、
前記フィルタは、
目(開口)の大きさを変えて、前記プランクトンが通過できる部分と前記プランクトンが通過できない部分を形成し、
前記フィルタの上流側で前記プランクトンが通過できない部分の近傍に前記紫外線照射手段を設けたことを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記フィルタは、
水流方向に厚みを有し、
前記プランクトンが通過できない部分を上流側に、前記プランクトンが通過できる部分を下流側に形成したことを特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記フィルタと紫外線照射手段を交互に複数設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記フィルタに光触媒粉を担持した請求項1から3のいずれか一つに記載の水処理装置。
【請求項5】
前記光触媒粉はアナタース型酸化チタンとフッ素を含み、前記アナタース型酸化チタンとフッ素が化学結合している酸化チタン光触媒であることをと特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−223707(P2012−223707A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93761(P2011−93761)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】