説明

水分及び酸素捕捉用組成物、硬化体、及び有機EL素子

【課題】水分及び酸素の捕捉性に優れたフィルム等の硬化体を与えることのできる水分及び酸素捕捉用組成物、及び該組成物からなる捕捉剤層を含む有機EL素子を提供する。
【解決手段】水分及び酸素捕捉用組成物は、(イ)(RM[式中、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、環式アルキル基、アリール基、アルコキシ基、カルボキシル基、及びアミノ基からなる群より選ばれる1種であって、複数存在するRは同一又は異なってもよい。nは、2又は3であり、Mの原子価に等しい。Mは、2価又は3価の金属原子である。Mは、少なくとも1つのC−M結合を有する。]で表される有機金属化合物と、(ロ)芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位と、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位とを含む重合体とを含有する。有機EL素子1は、有機EL層2と、水分及び酸素捕捉用組成物からなる捕捉剤層4とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分及び酸素捕捉用組成物、該組成物からなる硬化体、及び該硬化体を含む有機EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
水分及び酸素が進入することによって障害を受ける電子デバイス、たとえばキャパシタ、有機EL素子などは、密封して使用する必要がある。しかし、水分を十分に除去した状態で密封することは非常に困難である。また、使用している間にデバイス中に徐々に進入する水分を除去しなければ、電子デバイスの機能は徐々に低下してしまう。このため、電子デバイス中に水分除去剤を予め配置して、密閉後のデバイスを水分から保護する技術が検討されている。
密閉型電子デバイスの一例としては、例えば有機EL素子が挙げられる。有機EL素子は、直流低電圧駆動、高輝度化、高効率化、薄型化などが可能であることから、近年注目されている素子である。
ここで、有機EL素子とは、陽極と陰極との間に有機電荷輸送層(電子輸送層や正孔輸送層)や有機発光層を設けてなるものである。有機発光層は、陽極と陰極から注入される電子と正孔とが結合する際のエネルギーによって励起され、その励起状態から基底状態に戻る際のエネルギー差により発光する。
しかし、有機EL素子は、水分や酸素の影響を受けやすいため耐久性が低いという問題がある。すなわち、有機EL素子内に入った水分や酸素によって、電極が酸化したり、有機物が変性し、駆動期間の長期化に伴って、輝度、発光効率などの発光特性が著しく低下するという問題がある。
有機EL素子を水分及び酸素から保護する方法の一つとして、素子内に乾燥剤を配置し、素子内部を低湿度・低酸素環境に保つ技術が検討されている(例えば、特許文献1〜6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−148066号公報
【特許文献2】特開2003−142256号公報
【特許文献3】特開2003−338366号公報
【特許文献4】特開2005−230818公報
【特許文献5】特開2006−68729公報
【特許文献6】特開2006−59571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の文献に記載された乾燥剤は、長時間の使用を考慮した場合に吸湿・吸酸素容量が不十分であり、さらに吸湿・吸酸素に伴い体積膨張や不透明化、揮発性成分の発生による膨張等の問題がある。さらに、樹脂と乾燥剤を混合してシート状にして使用するような場合には、吸湿・吸酸素により乾燥剤が分解することにより発生する成分が可塑剤として働き、素子構造の維持に悪影響を与えることがある。このように、従来の技術では実用性を高めることができないため、新たな材料開発が求められている。
また、従来の乾燥剤の中には、耐熱性が不十分であり、高温の使用環境(例えば、80℃程度)において熱流動し変形するものがあった。
また、トップエミッション型の有機EL素子においては、発光層と表示面との間に捕捉剤層を形成させる必要があるため、当該捕捉剤は透明であることが求められる。
さらに、捕捉剤は、通常、液状の捕捉剤(例えば、有機アルミニウム化合物と、溶媒やバインダ等を含む捕捉剤)を有機EL素子の所定の位置に塗布して捕捉剤層を形成させるものであるため、適度な粘度を有し、かつ、捕捉剤層の形成後はクラック等が生じ難いことが求められる。また、有機アルミニウム化合物等とバインダとの相溶性が良好であることも求められる。
そこで、本発明は、水分及び酸素の捕捉性(吸湿性、吸酸素性)及び耐クラック性に優れた硬化体(フィルム等)を、良好な作業性を伴って形成することのできる水分及び酸素捕捉用組成物、該組成物からなる硬化体、該硬化体を含む有機EL素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の有機金属化合物と、特定の共重合体を含有する組成物によれば、本発明の上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[9]を提供するものである。
[1](イ)下記式(1)で表される有機金属化合物、及び
(RM (1)
(式(1)中、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、環式アルキル基、アリール基、アルコキシ基、カルボキシル基、及びアミノ基からなる群より選ばれる1種であって、複数存在するRは同一又は異なってもよい。nは、2又は3であり、Mの原子価に等しい。Mは、2価又は3価の金属原子であり、少なくとも1つのC−M結合を有する。)
(ロ)芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位と、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位とを含む重合体と、
を含有する水分及び酸素捕捉用組成物。
[2] 前記(ロ)成分が、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位を含む重合体ブロックAと、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位を含む重合体ブロックBとを含む重合体である、前記[1]に記載の水分及び酸素捕捉用組成物。
[3] 前記(ロ)成分が、
重合体の全量を100質量%とした場合に、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位を10〜50質量%含む、前記[1]又は[2]に記載の水分及び酸素捕捉用組成物。
[4] 前記(ロ)成分が、
芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位を含む重合体ブロックAと、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位を含む重合体ブロックBとを含む共重合体であって、
該共重合体の重量平均分子量が5万〜60万であり、
該共重合体の全量を100質量%とした場合に、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位の含量が10〜50質量%であり、
重合体ブロックAの全体の重量平均分子量が15,000以上であり、
各重合体ブロックAの重量平均分子量が5,000以上である
共重合体である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の水分及び酸素捕捉用組成物。
[5] 上記重合体は、スチレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン・イソプレンブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、及び、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種のものである前記[1]〜[4]のいずれかに記載の水分及び酸素捕捉用組成物。
[6] 有機EL素子用である前記[1]〜[5]のいずれかに記載の水分及び酸素捕捉用組成物。
[7] 前記[1]〜[6]のいずれかに記載の水分及び酸素捕捉用組成物からなる硬化体。
[8] 25℃、厚さ0.5mmにおけるヘイズが5%未満である前記[7]に記載の硬化体。
[9] 前記[7]又は[8]に記載の硬化体を有する有機EL素子。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、水分及び酸素を捕捉することのできる特定の有機金属化合物を用い、かつ特定の重合体をマトリックスとして用いているため、吸湿性、吸酸素性及び耐クラック性に優れた硬化体(フィルム等)を形成することができる。
また、本発明の水分及び酸素捕捉用組成物は、上記特定の有機金属化合物と上記重合体との相溶性に優れ、また、液状で適度な粘度を有するため、硬化体を形成する際の作業性が良好である。
なお、本発明で用いる重合体をさらに特定のものに限定した場合には、耐熱性及び透明性にも優れた硬化体(フィルム等)を形成することができる。この場合、例えば、80℃を超える使用環境においても、熱流動により変形することがない。
上記硬化体は、有機EL素子の封止材等の用途に好適であり、また、透明性に優れる場合には、例えば、トップエミッション型の有機EL素子であっても用いることができる。
本発明によると、外部からの水分及び酸素の進入による経時的な劣化が少ないため、耐久性に優れ、高温環境下であっても変形等を起こすことのない有機EL素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の有機EL素子の一例を示す断面図である。
【図2】トリ(1−フィチル)アルミニウムのH NMRチャートである。
【図3】3−シクロドデシル−1−プロペンのH NMRチャートである。
【図4】トリ(3−シクロドデシルプロピル)アルミニウムのH NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の水分及び酸素捕捉用組成物は、(イ)成分及び(ロ)成分と、他の任意成分とを含む。
以下、各成分ごとに説明する。
[(イ)成分]
本発明の水分及び酸素捕捉用組成物を構成する(イ)成分は、下記式(1)で表される有機金属化合物である。
(RM (1)
(式(1)中、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、環式アルキル基、アリール基、アルコキシ基、カルボキシル基、及びアミノ基からなる群より選ばれる1種であって、複数存在するRは同一又は異なってもよい。nは、2又は3であり、Mの原子価に等しい。Mは、2価又は3価の金属原子であり、少なくとも1つのC−M結合を有する。)
上記特定の有機金属化合物は、当該化合物に含まれるC−M結合(ただし、Cは炭素原子を表し、Mは前記の金属原子を表す。)が水分及び酸素と反応することにより、水分及び酸素に対して捕捉作用を有するものである。このような有機金属化合物を用いることにより、吸湿性及び吸酸素性に優れた硬化体を得ることができる。
【0010】
上記式(1)中、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、環式アルキル基、アリール基、アルコキシ基、カルボキシル基、またはアミノ基である。
上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、テトラメチルヘキサデシル基、オクタデシル基等を挙げることができる。
上記アルケニル基としては、プロペニル基、ブテニル基、オクテニル基、ドデセニル基、オクタデセニル基等を挙げることができる。
上記アルキニル基としては、プロピニル基、フェニルエチニル基等を挙げることができる。
上記環式アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
上記アリール基としては、フェニル基、ベンジル基等を挙げることができる。
上記アルコキシ基としては、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等を挙げることができる。
これらアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基は直鎖状でも、分岐していてもよい。
の炭素数は、通常、1〜30である。
【0011】
上記式(1)中、Mは2価又は3価の金属原子である。このような金属原子としては、Al、B、Mg、Zn、Ti、Zr等を挙げることができる。中でも、吸湿性、吸酸素性等の観点から、Al、Bが好ましく、Alが特に好ましい。
【0012】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリシクロプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ‐t−ブチルアルミニウム、トリ−2−メチルブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリ(2−エチルヘキシル)アルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリ−n−デシルアルミニウム、トリヘキサデシルアルミニウム、トリステトラメチルヘキサデシルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリベンジルアルミニウム、ジメチルフェニルアルミニウム、ジブチルフェニルアルミニウム、ジイソブチルフェニルアルミニウム、メチルジフェニルアルミニウム、エトキシジエチルアルミニウム、エトキシジ−n−オクチルアルミニウム、トリエチルボラン、トリブチルボラン、トリ−n−オクチルボラン、トリ−n−ドデシルボラン、トリフェニルボラン等を挙げることができる。
上記一般式(1)で表される化合物の中でも、Rが炭素数6以上の基である化合物、例えばトリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリ−n−ドデシルアルミニウム、トリヘキサデシルアルミニウム、トリステトラメチルヘキサデシルアルミニウム等が好ましく、Rが炭素数12以上の基である化合物、例えばトリドデシルアルミニウム、トリ(3−シクロドデシルプロピル)アルミニウム(下式(III)で表される化合物)、トリヘキサデシルアルミニウム、トリステトラメチルヘキサデシルアルミニウム、トリス(3,7,11,15−テトラメチルヘキサデシル)アルミニウム(以下、トリ(1−フィチル)アルミニウムともいう。下式(I)で表される化合物)等が特に好ましい。
これらの化合物は、一種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】

【0015】
本発明では、上記(イ)成分(式(1)で表される有機金属化合物)と、他の捕捉剤を併用することができる。他の捕捉剤としては、化学的に水分子と反応するもの、物理的に水分子を吸着するもの、その他のいずれの物でもよい。
化学的に水分子と反応するものとしては、金属酸化物、硫酸塩、金属ハロゲン化物、(イ)成分以外の有機金属化合物などを挙げることができる。
金属酸化物としては、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウムなどを挙げることができる。硫酸塩としては、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウムなどを挙げることができる。金属ハロゲン化物としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ストロンチウムなどを挙げることができる。(イ)成分以外の有機金属化合物としては、トリアシルシクロボロキシン、ボロンオキサイドオクチレート、アルミニウムオキサイドオクチレートなどを挙げることができる。
物理的に吸着するものとしては、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナなどを挙げることができる。
これらのうち、有機溶媒への分散性、硬化体とした時の透明性の観点から、ボロンオキサイドオクチレート、アルミニウムオキサイドオクチレートが好ましい。
(イ)成分と他の捕捉剤を併用する場合、(イ)成分の割合は、(イ)成分と他の捕捉剤との合計100質量%中、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
【0016】
[(ロ)成分]
本発明の水分及び酸素捕捉用組成物を構成する(ロ)成分は、バインダ(マトリックス)として用いられるものであり、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位と、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位とを含む重合体である。
一般的に前記(イ)成分は塗布性が悪く、その成分のみで膜などに成型することが困難であった。しかし本発明の組成物では、前記(イ)成分と前記(ロ)成分を共に含むため、容易に膜などの成型加工することが可能になった。さらに、前記(イ)成分は反応性が高く、その成分のみで膜などに成型加工する場合には厳密に加工雰囲気を制御して、反応抑制する必要があった。しかし本発明の組成物では、前記(ロ)成分が、前記(イ)成分と加工雰囲気中に存在する水分や酸素との反応を抑制する。このため、加工雰囲気を厳密に制御しなくても、安定した品質の膜などの成型物を作製することが可能になった。
【0017】
さらに、有機EL素子などの密閉型の電気素子では、本発明の組成物により作製された膜などの成型体により、デバイス外部から進入する水分や酸素を捕獲する。進入した水分や酸素の捕獲は、主に前記(イ)成分が分解、酸化することにより達成される。前記(イ)成分が分解すると、式(1)中のRで表される基に由来する有機成分が発生する。このような成分は一般的に揮発性が高く、またバインダー成分((ロ)成分)の可塑剤としての作用を有する場合があり、有機EL素子などの密閉型の電気素子の経年劣化の原因となる可能性がある。これに対して、前記(ロ)成分が芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位と、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位とを含む重合体である場合、このような不具合を抑制することができ好ましい。
本発明においては、前記(ロ)成分が、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位を含む重合体ブロックAと、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位を含む重合体ブロックBとを含む重合体であることが、好ましい。
また、本発明においては、前記(ロ)成分が、重合体の全量を100質量%とした場合に、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位を10〜50質量%含むことが、好ましい。
このようにくり返し単位、ブロック構造、及び、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位の含有量をコントロールすることによって、上述の問題点を解決することができる。
【0018】
(ロ)成分を製造するための単量体として用いられる芳香族ビニル化合物としては、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、N,N−ジエチル−p−アミノスチレン等を挙げることができる。これらのうち、スチレン、α−メチルスチレンが好ましく、スチレンが特に好ましい。
(ロ)成分を製造するための単量体として用いられる共役ジエン化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等を挙げることができる。これらのうち、1,3−ブタジエン、イソプレン及び1,3−ペンタジエンが好ましく、1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
【0019】
共重合体を構成するブロックAは、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位を主に含む重合体ブロックであり、芳香族ビニル化合物の単独重合体ブロック、あるいは、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックであって芳香族ビニル化合物を95質量%以上含有する共重合体ブロックが好ましい。
また、共重合体を構成するブロックBは、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位を主に含む重合体ブロックであり、共役ジエン化合物の単独重合体ブロック、あるいは、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体ブロックであって共役ジエン化合物を95質量%以上含有する共重合体ブロックが好ましい。
なお、共重合体において、共役ジエン部分のビニル結合含量は好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。ビニル結合含量が60質量%未満では、(イ)成分との相溶性が悪化するため好ましくない。
【0020】
(ロ)成分である共重合体の一例は、上記ブロックA(芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック)と、ブロックB(共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック)とを含むものであり、例えば、(A−B)、(A−B)−A、(B−A)−B、(A−B−A)、(B−A−B)、(A−B)X、(B−A)X、(A−B−A)X、(B−A−B)X等の構造を有するブロック重合体を挙げることができる。なお、これらの式中、「A」は上記ブロックA、「B」は上記ブロックB、「X」はカップリング剤残基を示し、mは1以上の整数である。
上記式中の「X」を与えうるカップリング剤としては、アジピン酸ジエチル、ジビニルベンゼン、テトラクロロケイ素、ブチルトリクロロケイ素、テトラクロロスズ、ブチルトリクロロスズ、ジメチルクロロケイ素、テトラクロロゲルマニウム、1,2−ジブロムエタン、1,4−クロロメチルベンゼン、ビス(トリクロロシリル)エタン、エポキシ化アマニ油、トリレンジイソシアネート、1,2,4−ベンゼントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0021】
上記のうち、高温環境化での熱流動防止の観点から、(A−B)、(A−B)−Aで表されるブロック重合体であることが好ましく、(A−B)−Aで表されるブロック重合体であることが特に好ましい。式中、mは製造の簡便さから好ましくは1である。
すなわち、(ロ)成分は、スチレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン・イソプレンブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、及び、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、又は、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体であることが特に好ましい。
【0022】
(ロ)成分である重合体は、重量平均分子量が5〜60万であることが好ましく、7〜30万であることがより好ましい。上記重量平均分子量が5万未満であると、硬化体を形成し難くなるため好ましくない。一方、上記重量平均分子量が60万を超えると、組成物の粘度が上昇して硬化体を形成する際の塗工性等が劣るため好ましくない。
また、重合体中、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位の含有量は10〜50質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることがより好ましい。該含有量が10質量%未満であると、得られる硬化体の耐熱性が低下し、高温の使用環境下において熱流動を起こすことがある。一方、該含有量が50質量%を超えると、(イ)成分(特定の有機金属化合物)との相溶性が低下したり、組成物の粘度が上昇するなどして、硬化体を形成する際の塗工性、作業性が低下する。
共重合体を構成するブロックAは、好ましくは、ブロックAの全体の重量平均分子量が15,000以上で、かつ、各ブロックAの重量平均分子量が5,000以上であり、より好ましくは、ブロックAの全体の重量平均分子量が20,000以上で、かつ、各ブロックAの重量平均分子量が8,000以上である。ブロックA全体の重量平均分子量が15,000未満、あるいは5,000未満の重量平均分子量を有するブロックAを含むと、得られる硬化体の耐熱性が低下する傾向がある。重量平均分子量の上限は、ブロックAの全体(1つまたは複数存在するブロックAの合計)で、好ましくは30万以下、より好ましくは15万以下であり、各ブロックAで、好ましくは15万以下である。ブロックA全体の重量平均分子量が30万を超えるか、あるいは15万を超える重量平均分子量を有するブロックAを含むと、(イ)成分との相溶性が低下したり、組成物の粘度が上昇するなどして、硬化体を形成する際の塗工性、作業性が低下する傾向がある。
なお、上記重量平均分子量は、いずれも、テトラヒドロフランを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めたポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0023】
(ロ)成分(重合体)の製造方法としては、特に限定されないが、例えば単量体を有機溶媒中で有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としてリビングアニオン重合する方法を挙げることができる。
上記有機溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、キシレンなどの炭化水素系溶媒を挙げることができる。上記有機アルカリ金属化合物としては、有機リチウム化合物、例えばn−ブチルリチウム等が好ましく用いられる。
重合開始剤の使用量は、単量体100質量部あたり0.02〜0.2質量部が好ましく、反応温度は、通常、−30〜150℃である。
なお、反応の際、必要に応じて各種分子量調節剤を添加することができる。分子量調節剤としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル、ブチルエーテル等を挙げることができる。
【0024】
[他の任意成分]
また、本発明の水分及び酸素捕捉用組成物には、必要に応じて、各種添加剤を配合することができる。各種添加剤としては、例えば、軟化剤、相溶化剤等を挙げることができる。
【0025】
本発明の水分及び酸素捕捉用組成物は、上記(イ)成分、上記(ロ)成分、及び他の任意成分を、これらと反応しない有機溶媒に均一に溶解することにより得られる。このような有機溶媒としては、トルエン、キシレン、パラフィン、流動パラフィン、デカリン、ジグライムなど非水溶媒である芳香族有機溶媒、脂肪族溶媒、エーテル系溶媒等を挙げることができる。有機溶媒の配合量は、特に限定しないが、上記(イ)成分と上記(ロ)成分とが均一に溶解する量であることが好ましい。
【0026】
本発明の水分及び酸素捕捉用組成物は、粘度が50〜20,000cPであることが好ましい。粘度が前記範囲であることにより、組成物をODF法により直接、素子基板へ塗布し、硬化させることができる。これにより、水分及び酸素除去用硬化物をフイルム状などの成形体として予め作製して、素子へ組み込む工程を経る必要が無くなるので、工程を簡略化することができる。また、本発明の組成物に光酸発生剤などを添加して、感光性を付与すれば、微細なパターニングが可能となる。
なお、上記粘度は、フォーリング・ニードル法により測定される値を示す。さらに上記粘度は組成物を溶媒等で希釈して使用する場合は、塗布時の組成の状態での粘度を意味するものとする。
【0027】
本発明の水分及び酸素捕捉用組成物中、(イ)成分と(ロ)成分との合計100質量%中、(イ)成分の配合割合は、10〜70質量%であることが好ましい。該配合割合が10質量%以上であると、水分及び酸素の捕捉性能を十分に得ることができる。また、該配合割合が70質量%以下であると、(ロ)成分がポリマーマトリックスとして十分に機能する。
本発明の水分及び酸素捕捉用組成物は、有機EL素子、有機TFT、有機太陽電池、有機CMOSセンサー等の封止材に用いることができ、特に有機EL素子の封止材に好適に用いられる。
【0028】
次に、本発明の硬化体について説明する。
本発明の硬化体は、上記水分及び酸素捕捉用組成物を基材上に塗布して塗膜を形成した後、該塗膜を乾燥させて溶媒を除去することにより得られる。
塗布方法としては、スピンコータ、ロールコータ、スプレーコータ、ディスペンサ、インクジェット装置等を用いる方法を挙げることができる。
乾燥の際の温度は、特に限定されないが、例えば、5℃〜100℃である。
得られた硬化体は、通常、フィルムの形状を有する。該フィルム(硬化体)の厚さは、特に限定されないが、例えば0.1〜1.0mmである。
得られた硬化体(フィルム等)は、優れた透明性を有する。硬化体は、厚さが0.5mmである場合に、好ましくはヘイズ(曇価)が5%未満である。
【0029】
次に、図面を参照しつつ、本発明の有機EL素子の一例を説明する。
図1は、本発明の有機EL素子の一例を模式的に示す断面図である。
図1中、有機EL素子1は、有機EL層2と、有機EL層2を収納して外気から遮断するための構造体3と、構造体3内に形成された捕捉剤層4とからなる。
有機EL層2は、有機材料からなる有機発光材料層が、互いに対向する一対の電極の間に挟持されてなる構造であればよく、例えば陽極/電荷(正孔)輸送剤/発光層/陰極など公知の構造をとることができる。
捕捉剤層4は、上記水分及び酸素捕捉用組成物の硬化体である。捕捉剤層4は、図1に示すように有機EL層2と離間して形成させてもよいし、有機EL層2を被覆するように形成させてもよい。
図1中、構造体3は、基板3aと、封止キャップ3bと、接着剤3cとからなる。基板としてはガラス基板等、封止キャップとしてはガラスからなる構造体等を挙げることができる。なお、構造体3の構造は、有機EL層を収納することができればよく、特に限定されない。
【実施例】
【0030】
以下に本発明に関して実施例を挙げて説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。なお、重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって分析した。ビニル結合含量は、赤外分光法によって分析した。組成物の調製は、露点−80℃の乾燥窒素雰囲気下で行なった。
【0031】
[合成例1 トリス(3,7,11,15−テトラメチルヘキサデシル)アルミニウムの合成]
200mLの三口フラスコに、トリイソブチルアルミニウム2.32g(11.7ミリモル)、1−フィテン10.0g(35.6ミリモル)、及びヘプタン15mLをグローブボックス中で仕込み、一晩還流した。その後、55℃まで冷却し、この温度で真空ポンプによって減圧しながら溶媒を留去し室温まで冷却して、トリ(1−フィチル)アルミニウム10.4gを無色透明油状物として得た。収率は定量的であった。得られた化合物のH NMRチャートを、図2に示す。測定においては、内部標準物質としてトルエン−d8(ピークδ2.1付近)を用いた。
【0032】
[実施例1]
内容積5リットルのオートクレーブに脱気・脱水したシクロヘキサン2,500g、テトラヒドロフラン75g、スチレン85gを入れ、n−ブチルリチウム0.475gを加えて45℃から断熱重合を行なった。10分後に反応溶液を20℃まで冷却し、1,3−ブタジエン360gを加え、さらに重合を行なった。20分後にスチレン55gを加え、さらに重合を行なった。
10分後に反応停止剤としてエタノールを加え、反応溶液を常温、常圧に戻してオートクレーブより抜き出し、脱水エタノールに撹拌投入して重合体を沈殿させ、得られた沈殿物をシクロヘキサンに再溶解させた。この再溶解させた溶液を前記と同様にエタノールに再沈後、シクロヘキサンに再溶解する作業を3回繰り返した後、溶媒を減圧除去することにより重合体を得た。
得られた重合体の重量平均分子量は120,000であった。また、スチレンブロック全体での重量平均分子量は25,000であり、各スチレンブロックの重量平均分子量は15,000、10,000であると算出された。また、得られた重合体中、スチレンの含有量は28質量%であり、ビニル結合含量は80%であった。
得られた重合体をトルエンに溶解し、25質量%の濃度で重合体を含むトルエン溶液を調製した。さらに、トリス(3,7,11,15−テトラメチルヘキサデシル)アルミニウムを、添加後の溶液全体中で20質量%の濃度になるように加えて激しく撹拌した。この溶液を基板上に塗布し常温で乾燥させることによりフィルムを得た。
【0033】
[実施例2]
内容積5リットルのオートクレーブに脱気・脱水したシクロヘキサン2,500g、テトラヒドロフラン75g、スチレン70gを入れ、n−ブチルリチウム0.5gを加えて45℃からの断熱重合を行なった。10分後に反応溶液を20℃まで冷却し、イソプレン360gを加え、さらに重合を行なった。20分後にスチレン70gを加え、さらに重合を行なった。
10分後に反応停止剤としてエタノールを加え、反応溶液を常温、常圧に戻してオートクレーブより抜き出し、脱水エタノールに撹拌投入して重合体を沈殿させ、得られた沈殿をシクロヘキサンに再溶解させた。この再溶解させた溶液を前記と同様にエタノールに再沈後、シクロヘキサンに再溶解する作業を3回繰り返した後、溶媒を減圧除去することにより重合体を得た。
得られた重合体の重量平均分子量は118,000であった。また、スチレンブロック全体での重量平均分子量は24,000であり、各スチレンブロックの重量平均分子量は12,000、12,000であると算出された。また、得られた重合体中、スチレンの含有量は28質量%であり、ビニル結合含量は80%であった。
得られた重合体をトルエンに溶解し、25質量%の濃度で重合体を含むトルエン溶液を調製した。さらに、トリヘキサデシルアルミニウムを、添加後の溶液中の濃度が20質量%になるように加えて激しく撹拌した。この溶液を基盤上に塗布し常温で乾燥させることによりフィルムを得た。
【0034】
[実施例3]
内容積5リットルのオートクレーブに脱気・脱水したシクロヘキサン2,500g、テトラヒドロフラン75g、スチレン180gを入れ、n−ブチルリチウム0.6gを加えて45℃からの断熱重合を行なった。10分後に反応溶液を20℃まで冷却し、1,3−ブタジエン260gを加え、さらに重合を行なった。20分後にスチレン60gを加え、さらに重合を行った。
以下、実施例1と同様の操作を行ない、重合体、及びフィルムを得た。
得られた重合体の重量平均分子量は88,000であった。また、スチレンブロック全体での重量平均分子量は34,000であり、各スチレンブロックの重量平均分子量は25,500、8,500であると算出された。また、得られた重合体中、スチレンの含有量は48質量%であり、ビニル結合含量は79%であった。
[実施例4]
内容積5リットルのオートクレーブに脱気・脱水したシクロヘキサン2,500g、テトラヒドロフラン75g、スチレン90gを入れ、n−ブチルリチウム0.475gを加えて45℃からの断熱重合を行なった。10分後に反応溶液を20℃まで冷却し、イソプレン320gを加え、さらに重合を行なった。20分後にスチレン90gを加え、さらに重合を行なった。
以下、実施例2と同様の操作を行ない、重合体、及びフィルムを得た。得られた重合体の重量平均分子量は116,000であった。また、スチレンブロック全体での重量平均分子量は32,000であり、各スチレンブロックの重量平均分子量は16,000、16,000であると算出された。また、得られた重合体中、スチレンの含有量は36質量%であり、ビニル結合含量は77%であった。
【0035】
[実施例5]
内容積5リットルのオートクレーブに脱気・脱水したシクロヘキサン2,500g、テトラヒドロフラン75g、スチレン30gを入れ、n−ブチルリチウム0.55gを加えて45℃からの断熱重合を行なった。10分後に反応溶液を20℃まで冷却し、1,3−ブタジエン460gを加え、さらに重合を行なった。20分後にスチレン10gを加え、さらに重合を行なった。
以下、実施例1と同様の操作を行ない、重合体、及びフィルムを得た。得られた重合体の重量平均分子量は123,000であった。また、スチレンブロック全体での重量平均分子量は6,000であり、各スチレンブロックの重量平均分子量は4,500、1,500であった。また、得られた重合体中、スチレンの含有量は8質量%であり、ビニル結合含量は80%であった。
[実施例6]
内容積5リットルのオートクレーブに脱気・脱水したシクロヘキサン2,500g、テトラヒドロフラン75g、スチレン15gを入れ、n−ブチルリチウム0.6gを加えて45℃からの断熱重合を行なった。10分後に反応溶液を20℃まで冷却し、イソプレン470gを加え、さらに重合を行なった。20分後にスチレン15gを加え、さらに重合を行なった。
以下、実施例2と同様の操作を行ない、重合体、及びフィルムを得た。得られた重合体の重量平均分子量は109,000であった。また、スチレンブロック全体での重量平均分子量は4,000であり、各スチレンブロックの重量平均分子量は2,000、2,000であった。また、得られた重合体中、スチレンの含有量は6質量%であり、ビニル結合含量は80%であった。
[実施例7]
内容積5リットルのオートクレーブに脱気・脱水したシクロヘキサン2,500g、テトラヒドロフラン75g、スチレン225gを入れ、n−ブチルリチウム0.575gを加えて45℃からの断熱重合を行なった。10分後に反応溶液を20℃まで冷却し、1,3−ブタジエン205gを加え、さらに重合を行なった。20分後にスチレン70gを加え、さらに重合を行なった。
以下、実施例1と同様の操作を行ない、重合体、及びフィルムを得た。得られた重合体の重量平均分子量は87,000、スチレンブロック全体での重量平均分子量は44,000であり、各スチレンブロックの重量平均分子量は33,000、10,700であった。また、得られた重合体中、スチレンの含有量は59質量%であり、ビニル結合含量は80%であった。
【0036】
[評価方法]
得られたフィルムについて、透明性、吸湿性、及び耐熱性を、下記の方法により評価した。結果を表1に示す。なお、吸酸素性は、吸湿性と相関性があることが知られているので、評価を省略した。
(1)透明性
厚さ0.7mmの溶融成形アルミノケイ酸薄板ガラス(コーニング社製、商品名「Corning 1737」)2枚の間に、フィルム(厚さ0.5mm)を挟み、全光線透過率ヘイズ測定装置(BYK−Gardner社製、商品名「Haze−Gard plus4725」)を用いて、JIS K7105で規定される測定方法に準じて25℃における全光線透過率(%)及びヘイズ(%)を測定した。
ヘイズが5%未満であり透明性に優れている場合を「○」、ヘイズが5%以上であり透明性に劣る場合を「×」とした。
(2)吸湿性
内径3cmのガラスシャーレに、実施例、比較例の各フィルムで厚さが0.6mmのものを調整し、湿度計と温度計を装着した内容積800cmの真空デシケーターに、先に調整したフィルムをガラスシャーレごと入れ、真空デシケーター内部の湿度と温度の変化を観察した。観察により得られた相対湿度(Hr、%)、摂氏温度(Tc、℃)の値と、下記式より絶対湿度(Ha、%)を求め、2時間後の絶対湿度が初期絶対湿度からどれだけ減少したかを吸水率とすることにより評価した。
Ha=4.0×10−3{exp(6.4×10−2・Tc)}Hr ・・・(式)
(3)耐熱性
得られたフィルム(厚さ1.0mm)を100mm×5mmに打ち抜き、その長辺の両端を重さ3.7gのクリップで挟み、85℃、85%RHの条件の恒温恒湿室に前記の長辺の中央で吊り下げ放置し、4時間後に長辺の長さの増加率を測定することにより評価した。
(4)膜質
目視にて、膜にクラック又は凹凸が発生していない場合を「○」、膜にわずかにクラック又は凹凸が観測された場合を「△」、膜に多くのクラック又は凹凸が観測された場合を「×」とした。
【0037】
【表1】

【0038】
表1から、本発明の組成物によると、吸湿性に優れたフィルムが得られることがわかる。
なお、共役ジエン系共重合体中、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック(スチレンブロック)の重量平均分子量、芳香族ビニル化合物(スチレン)の含有量がいずれも小さすぎる実施例5、6では、耐熱性に劣り、フィルムが破断した。したがって耐熱性が要求される場合には、共役ジエン系共重合体中、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック(スチレンブロック)の重量平均分子量、芳香族ビニル化合物(スチレン)の含有量が特定の範囲内である組成物(実施例1〜4)が好適である。
芳香族ビニル化合物(スチレン)の含有量が大きすぎる実施例7では、フィルムの透明性に劣ることがわかる。したがって、フィルムの透明性が要求される場合には、芳香族ビニル化合物(スチレン)の含有量が特定の範囲内である組成物(実施例1〜4)が好適である。
【0039】
[合成例2 3−シクロドデシル−1−プロペンの合成]
削状マグネシウム15.5g(0.637モル)と無水テトラヒドロフラン600mLを1,000mLの反応容器に入れ、ブロモシクロドデカン150g(0.607モル)のうち30gを滴下した。これを50℃に加熱し、反応が開始したらバスから外して弱く還流する程度の状態を保ちつつ残りのブロモシクロドデカンを滴下した。滴下終了後、2時間還流し、室温まで冷却した。これを氷水浴で冷却し、3−ブロモ−1−プロペン57.8mL(0.668モル)を内温30℃にて滴下し、滴下終了後、一晩還流を行った。室温まで冷却後、氷水浴下で1規定塩化水素水を滴下して有機層を分取した後、有機層は水200mLで3回洗浄した。有機層は、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過、濃縮を順次行った。得られた残渣を蒸留に付し、109〜110℃/3.2mmHgの条件で得た留分から、目的化合物である3−シクロドデシル−1−プロペン43gを無色透明な液体として得た。収率は34%であった。得られた化合物のH NMRチャートを図3に示す。H NMRチャートは日本電子社製のラムダ300を用いて測定した(以降でも同様)。測定においては、溶媒としてCDCl、内部標準物質としてTMSを用いた。
【0040】
[合成例3 トリ(3−シクロドデシルプロピル)アルミニウムの合成]
200mLの三口フラスコに、トリイソブチルアルミニウム10g(50.4ミリモル)、3−シクロドデシル−1−プロペン31.9g(153ミリモル)、及びヘプタン50mLをグローブボックス中で仕込み、一晩還流した。その後、55℃まで冷却し、この温度で真空ポンプにて減圧しながら溶媒を留去し室温まで冷却して、水あめ状の無色透明油状物を得た。これをグローブボックス内で数日放置することによって、トリ(3−シクロドデシルプロピル)アルミニウムの白色固体33gを得た。収率は定量的であった。得られた化合物のH NMRチャートを図4に示す。測定においては、内部標準物質としてトルエン−d8(ピークδ2.1付近)を用いた。
【0041】
[実施例8]
得られたトリ(3−シクロドデシルプロピル)アルミニウムを、実施例1で作製した重合体を25質量%の濃度で含むトルエン溶液に添加し、添加後の溶液全体中で該エラストマーが20質量%の濃度になるように加えて激しく撹拌した。溶液の調製は露点−75℃の乾燥窒素雰囲気下で行った。この溶液を基板上に塗布し100℃で20分間乾燥させることによりフィルムを得た。
[実施例9]
トリドデシルアルミニウムを、実施例1で作製した重合体を25質量%の濃度で含むトルエン溶液に添加し、添加後の溶液全体中で該エラストマーが20質量%の濃度になるように加えて激しく撹拌した。溶液の調製は露点−75℃の乾燥窒素雰囲気下で行った。この溶液を基板上に塗布し100℃で20分間乾燥させることによりフィルムを得た。
[実施例10]
トリオクチルアルミニウムを、実施例1で作製した重合体を25質量%の濃度で含むトルエン溶液に添加し、添加後の溶液全体中で該エラストマーが20質量%の濃度になるように加えて激しく撹拌した。溶液の調製は露点−75℃の乾燥窒素雰囲気下で行った。この溶液を基板上に塗布し100℃で20分間乾燥させることによりフィルムを得た。
[実施例11]
ジイソブチルアルミニウムハイドライドを、実施例1で作製した重合体を25質量%の濃度で含むトルエン溶液に添加し、添加後の溶液全体中で該エラストマーが20質量%の濃度になるように加えて激しく撹拌した。溶液の調製は露点−75℃の乾燥窒素雰囲気下で行った。この溶液を基板上に塗布し100℃で20分間乾燥させることによりフィルムを得た。
[実施例12]
トリオクチロキシアルミニウムを、実施例1で作製した重合体を25質量%の濃度で含むトルエン溶液に添加し、添加後の溶液全体中で該エラストマーが20質量%の濃度になるように加えて激しく撹拌した。溶液の調製は露点−75℃の乾燥窒素雰囲気下で行った。この溶液を基板上に塗布し100℃で20分間乾燥させることによりフィルムを得た。
【0042】
【表2】

【0043】
表2の結果から、実施例1の重合体(成分(ロ))、及び、種々の金属化合物(成分(イ))を用いて形成された実施例8〜12のフィルムは、透明性、膜質及び吸湿性に優れることがわかる。
【符号の説明】
【0044】
1 有機EL素子
2 有機EL層
3 構造体
3a 基板
3b 封止キャップ
3c 接着剤
4 捕捉剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)下記式(1)で表される有機金属化合物、及び
(RM (1)
(式(1)中、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、環式アルキル基、アリール基、アルコキシ基、カルボキシル基、及びアミノ基からなる群より選ばれる1種であって、複数存在するRは同一又は異なってもよい。nは、2又は3であり、Mの原子価に等しい。Mは、2価又は3価の金属原子であり、少なくとも1つのC−M結合を有する。)
(ロ)芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位と、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位とを含む重合体と、
を含有する水分及び酸素捕捉用組成物。
【請求項2】
前記(ロ)成分が、
芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位を含む重合体ブロックAと、
共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位を含む重合体ブロックBと
を含む重合体である、請求項1に記載の水分及び酸素捕捉用組成物。
【請求項3】
前記(ロ)成分が、
重合体の全量を100質量%とした場合に、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位を10〜50質量%含む、
請求項1又は2に記載の水分及び酸素捕捉用組成物。
【請求項4】
前記(ロ)成分が、
芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位を含む重合体ブロックAと、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位を含む重合体ブロックBとを含む共重合体であって、
該共重合体の重量平均分子量が5万〜60万であり、
該共重合体の全量を100質量%とした場合に、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位の含量が10〜50質量%であり、
重合体ブロックAの全体の重量平均分子量が15,000以上であり、
各重合体ブロックAの重量平均分子量が5,000以上である
共重合体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水分及び酸素捕捉用組成物。
【請求項5】
上記重合体は、スチレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン・イソプレンブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、及び、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種のものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の水分及び酸素捕捉用組成物。
【請求項6】
有機EL素子用である請求項1〜5のいずれか1項に記載の水分及び酸素捕捉用組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の水分及び酸素捕捉用組成物からなる硬化体。
【請求項8】
25℃、厚さ0.5mmにおけるヘイズが5%未満である請求項7に記載の硬化体。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の硬化体を有する有機EL素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−45015(P2010−45015A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109816(P2009−109816)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】