説明

水分散型アクリル系粘着剤組成物、粘着剤層、及び粘着シート

【課題】剥離時に被着体の帯電を防止でき(帯電防止性)、再剥離性、経時での剥離力(粘着力)上昇防止性に優れ、さらに外観特性(凹みなどによる外観不良が低減されていること)及び被着体に対する低汚染性、特に高湿度環境下で被着体上に生じる白化汚染の防止性(白化汚染防止性)にも優れた粘着剤層を形成しうる、水分散型のアクリル系粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(i)、カルボキシル基含有不飽和モノマー(ii)、並びに、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル及びジエチルアクリルアミドからなる群より選択される少なくとも1種のモノマー(iii)を、モノマー成分として構成されるアクリルエマルション系重合体、及び、イオン性化合物を含有し、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(i)を、前記モノマー成分の全量中に、70〜99.5重量%含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再剥離が可能な粘着剤層を形成しうる水分散型アクリル系粘着剤組成物に関する。詳しくは、帯電防止性、再剥離性、粘着特性、凹みなどによる外観不良が低減され、特に外観特性に優れ、また、被着体に対する低汚染性、及び、経時による剥離力(粘着力)上昇の防止性に優れた粘着剤層を形成しうる水分散型アクリル系粘着剤組成物に関する。また、前記粘着剤組成物から形成される粘着剤層を設けた粘着シートに関する。
【0002】
本発明は、水分散型アクリル系粘着剤組成物に関する。詳しくは、帯電防止性、粘着特性、被着体に対する低汚染性、及び、外観特性に優れた粘着剤層を形成しうる水分散型アクリル系粘着剤組成物に関する。また、前記粘着剤組成物から形成される粘着剤層、前記粘着剤層を設けた粘着シート、及び前記粘着シートを表面保護フィルムとして貼付した光学部材に関する。
【背景技術】
【0003】
偏光板、位相差板、反射防止板などの光学フィルムをはじめとする光学部材(光学材料)の製造・加工工程においては、表面の傷、汚れ防止、切断加工性向上、クラック抑制などの目的で、表面保護フィルムが、光学部材の表面に貼付されて用いられている(特許文献1、2参照)。これら表面保護フィルムとしては、プラスチックフィルム基材の表面に再剥離性の粘着剤層を設けた再剥離性の粘着シートが一般的に用いられている。
【0004】
従来、これらの表面保護フィルム用途には、粘着剤として溶剤型のアクリル系粘着剤が用いられてきたが(特許文献1、2参照)、これら溶剤型アクリル系粘着剤は有機溶媒を含有しているため、塗工時の作業環境性の観点より、水分散型のアクリル系粘着剤への転換が図られている(特許文献3〜5参照)。
【0005】
これらの表面保護フィルムには、光学部材に貼付されている間は十分な接着性を発揮することが求められる。さらに、光学部材の製造工程などで使用された後は剥離されるため、優れた剥離性(再剥離性)が求められる。なお、優れた再剥離性を有するためには、剥離力が小さいこと(軽剥離)に加えて、光学部材などの被着体に貼付後、経時で粘着力(剥離力)が上昇しない特性(剥離力(粘着力)上昇防止性)が必要とされる。
【0006】
また、一般に表面保護フィルムや光学部材は、プラスチック材料により構成されているため、電気絶縁性が高く、摩擦や剥離の際に、静電気を発生する。したがって、表面保護フィルムを偏光板などの光学部材から剥離する際に、静電気が発生してしまい、この際に生じた静電気が残ったままの状態で液晶に電圧を印加すると、液晶分子の配向が損失し、またパネルの欠損が生じてしまう問題がある。
【0007】
さらに、静電気の存在は、埃やクズを吸引するという問題や、作業性低下の問題などを引き起こす可能性を有している。そこで、上記問題点を解消するために、表面保護フィルムに各種帯電防止処理が施されている。
【0008】
静電気の帯電を抑制する試みとして、粘着剤に低分子の界面活性剤を添加し、粘着剤中から界面活性剤を被保護体に転写させて帯電防止する方法(たとえば、特許文献6参照)が開示されている。しかし、かかる方法においては、添加した低分子の界面活性剤が粘着剤表面にブリードし易く、表面保護フィルムに適用した場合、被着体(被保護体)への汚染が懸念される。
【0009】
また、表面保護フィルム(特に光学部材の表面保護フィルム)などにおいては、粘着剤層に「凹み」などの外観不良がある場合には、前記表面保護フィルムを貼付したまま、被着体の検査を行いにくくなるなどの問題が生じる場合がある。このため、表面保護フィルム用途においては、粘着シート(粘着剤層)には優れた外観特性が求められる。
【0010】
さらに、表面保護フィルム用途(特に光学部材の表面保護フィルム用途)などにおいては、粘着シートの剥離の際の被着体(光学部材等)表面への粘着剤の残留(いわゆる「糊残り」)や、粘着剤層に含まれる成分の被着体表面への転写などによる被着体表面の汚染が、光学部材の光学特性への悪影響などの問題となる。このため、粘着剤や粘着剤層には被着体に対する低汚染性が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−961号公報
【特許文献2】特開2001−64607号公報
【特許文献3】特開2001−131512号公報
【特許文献4】特開2003−27026号公報
【特許文献5】特許第3810490号明細書
【特許文献6】特開平9−165460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述のように、これらのいずれにおいても、いまだ上記問題点をバランスよく解決できるものはなく、帯電や汚染が特に深刻な問題となる電子機器関連の技術分野において、帯電防止性等を有する表面保護フィルムへのさらなる改良要請に対応することは難しく、更に、優れた外観特性や再剥離性を有する水分散型アクリル系粘着剤が得られていないのが現状である。
【0013】
従って、本発明の目的は、剥離時に被着体の帯電を防止でき(帯電防止性)、再剥離性、粘着特性、そして粘着特性の中でも、経時での剥離力(粘着力)上昇防止性に優れ、さらに外観特性(凹みなどによる外観不良が低減されていること)、及び、被着体に対する低汚染性、特に高湿度環境下で被着体上に生じる白化汚染の防止性(白化汚染防止性)にも優れた粘着剤層を形成しうる、水分散型のアクリル系粘着剤組成物を提供することにある。また、前記粘着剤組成物による粘着剤層を有する粘着シート、及び前記粘着シートを表面保護フィルムとして貼付した光学部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定組成の原料モノマーより得られるアクリルエマルション系重合体、及び、イオン性化合物を構成成分とし、帯電防止性、再剥離性、粘着特性、剥離力(粘着力)上昇防止性、外観特性、及び低汚染性に優れた粘着剤層を形成しうる水分散型アクリル系粘着剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、 (メタ)アクリル酸アルキルエステル(i)、カルボキシル基含有不飽和モノマー(ii)、並びに、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル及びジエチルアクリルアミドからなる群より選択される少なくとも1種のモノマー(iii)を、モノマー成分として構成されるアクリルエマルション系重合体、及び、イオン性化合物を含有し、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(i)を、前記モノマー成分の全量中に、70〜99.5重量%含有することを特徴とする。
【0016】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、前記イオン性化合物が、イオン液体、及び/又は、アルカリ金属塩であることが好ましい。
【0017】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、前記イオン液体が、非水溶性イオン液体、及び/又は、水溶性イオン液体であることが好ましい。
【0018】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、前記モノマー(ii)を、モノマー成分の全量中に、0.5〜10重量%含有することが好ましい。
【0019】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、前記モノマー(iii)を、モノマー成分の全量中に、0.5〜10重量%含有することが好ましい。
【0020】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、前記アクリルエマルション系重合体が、分子中にラジカル重合性官能基を含む反応性乳化剤を用いて重合されることが好ましい。
【0021】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、前記イオン液体が、下記式(A)〜(E)で表わされるカチオンからなる群より選択される少なくとも1種のカチオンを含有することが好ましい。
【化1】

[式(A)中のRは、炭素数4から20の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよく、RおよびRは、同一または異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよい。但し、窒素原子が2重結合を含む場合、Rはない。]
[式(B)中のRは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよく、R、R、およびRは、同一または異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよい。]
[式(C)中のRは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよく、R、R、およびRは、同一または異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよい。]
[式(D)中のZは、窒素、硫黄、またはリン原子を表し、R、R、R、およびRは、同一または異なって、炭素数1から20の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよい。但しZが硫黄原子の場合、Rはない。]
[式(E)中のRは、炭素数1から18の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよい。]
【0022】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、前記イオン液体のカチオンが、含イミダゾリウム塩型、含ピリジニウム塩型、含モルフォリニウム塩型、含ピロリジニウム塩型、含ピペリジニウム塩型、含アンモニウム塩型、含ホスホニウム塩型、及び、含スルホニウム塩型からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0023】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、前記イオン液体が、下記式(a)〜(d)で表わされるカチオンからなる群より選択される少なくとも1種のカチオンを含有することが好ましい。
【化2】

[式(a)中のRは、水素または炭素数1から3の炭化水素基を表し、Rは、水素または炭素数1から7の炭化水素基を表す。]
[式(b)中のRは、水素または炭素数1から3の炭化水素基を表し、Rは、水素または炭素数1から7の炭化水素基を表す。]
[式(c)中のRは、水素または炭素数1から3の炭化水素基を表し、Rは、水素または炭素数1から7の炭化水素基を表す。]
[式(d)中のRは、水素または炭素数1から3の炭化水素基を表し、Rは、水素または炭素数1から7の炭化水素基を表す。]
【0024】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、前記アルカリ金属塩が、フッ素含有アニオンを含有することが好ましい。
【0025】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、前記アルカリ金属塩が、リチウム塩であることが好ましい。
【0026】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、アルキレンオキシド共重合化合物を含有することが好ましい。
【0027】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、前記アルキレンオキシド共重合化合物が、下記式(iv)で表されるポリエーテル型消泡剤を、さらに含有することが好ましい。
【化3】

[式(1)中、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。m1は0〜40の整数、n1は1以上の整数を表す。EOとPOの付加形態はランダム型又はブロック型である。]
【0028】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、前記アルキレンオキシド共重合化合物が、下記式(vi)で表わされるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【化4】

(式中、Rは1価の有機基、R,R及びRはアルキレン基、もしくはRは水酸基もしくは有機基、m及びnは0〜1000の整数。但し、m,nが同時に0となることはない。a及びbは0〜100の整数。但し、a,bが同時に0となることはない。)
【0029】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、更に、分子中にカルボキシル基と反応し得る官能基を2個以上有する非水溶性架橋剤を含有することが好ましい。
【0030】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、再剥離用に用いられることが好ましい。
【0031】
本発明の粘着剤層は、前記水分散型アクリル系粘着剤組成物を架橋してなることが好ましい。
【0032】
本発明の粘着剤層は、前記非水溶性架橋剤により架橋してなることが好ましい。
【0033】
本発明の粘着剤層は、溶剤不溶分が90重量以上であり、かつ、23℃における破断伸びが160%以下であることが好ましい。
【0034】
本発明の粘着シートは、前記粘着剤層を、支持体の少なくとも片面に形成することが好ましい。
【0035】
本発明の粘着シートは、前記支持体が、プラスチック基材であることが好ましい。
【0036】
本発明の粘着シートは、表面保護用に用いられることが好ましい。
【0037】
本発明の粘着シートは、光学用途に用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0038】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物のより形成された粘着剤層(粘着シート)は、優れた帯電防止性、粘着特性(接着性)および再剥離性を有する。特に、経時での被着体との剥離力(粘着力)上昇防止性に優れる。また、低汚染性、特に高湿度環境下で保存した際の白化汚染防止性に優れる。さらに、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、特定のモノマー組成のアクリルエマルション系重合体を用いているため、得られた粘着剤組成物は、凹みなどによる外観不良が低減され、非常に優れた外観特性を有する粘着剤層を形成することができる。このため、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、光学フィルムの表面保護用途として特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】電位測定部の概略図
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物(「粘着剤組成物」と称する場合がある)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(i)、カルボキシル基含有不飽和モノマー(ii)、並びに、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル及びジエチルアクリルアミドからなる群より選択される少なくとも1種のモノマー(iii)を、モノマー成分として構成されるアクリルエマルション系重合体、及び、イオン性化合物を含有し、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(i)を、前記モノマー成分の全量中に、70〜99.5重量%含有することを特徴とする。なお、「水分散型」とは、水性媒体に分散可能なことをいい、即ち、水性媒体に分散可能な粘着剤組成物を意味する。前記水性媒体は、水を必須成分とする媒体(分散媒)であり、水単独のほかに、水と水溶性有機溶剤との混合物であっても良い。なお、本発明の粘着剤組成物は、前記水性媒体等を用いた分散液であってもよい。
【0041】
[アクリルエマルション系重合体]
本発明のアクリルエマルション系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(i)、カルボキシル基含有不飽和モノマー(ii)、並びに、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル及びジエチルアクリルアミドからなる群より選択される少なくとも1種のモノマー(iii)を、モノマー成分として構成されるアクリルエマルション系重合体である。なお、本発明では、(メタ)アクリルとは、アクリル及び/又はメタクリルのことをいう。
【0042】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(i)は、主たるモノマー成分として用いられ、主に接着性、剥離性などの粘着剤(又は粘着剤層)としての基本特性を発現する役割を担う。中でも、アクリル酸アルキルエステルは粘着剤層を形成するポリマーに柔軟性を付与し、粘着剤層に密着性、粘着性を発現させる効果を発揮する傾向があり、メタクリル酸アルキルエステルは、粘着剤層を形成するポリマーに硬さを与え、粘着剤層の再剥離性を調節する効果を発揮する傾向がある。前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(i)としては、特に限定されないが、炭素数が2〜16(より好ましくは2〜10、さらに好ましくは4〜8)の、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。なお、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(i)には、メタクリル酸メチルは含まれない。
【0043】
中でも、アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、炭素数が2〜14(より好ましくは4〜9)のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルが好ましく、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸s−ブチル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸イソノニルなどの直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。中でも好ましくは、アクリル酸2−エチルヘキシルである。
【0044】
また、メタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、炭素数が2〜16(より好ましくは2〜10)のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸s−ブチル、メタクリル酸t−ブチルなどの直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルやメタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸イソボルニル等の脂環式のメタクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。
【0045】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(i)は、目的とする粘着性などに応じて適宜選択することができ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0046】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(i)の含有量は、特に限定されないが、本発明のアクリルエマルション系重合体を構成する原料であるモノマー成分の総量(モノマー成分の全量:100重量%)中、70〜99.5重量%であり、好ましくは70〜99重量%であり、より好ましくは85〜98重量%、更に好ましくは87〜96重量%である。前含有量を70重量%以上とすることにより、粘着剤層の接着性、再剥離性が向上するため好ましい。一方、含有量が99.5重量%を超えるとカルボキシル基含有不飽和モノマー(ii)やモノマー(iii)の含有量が低下することにより、粘着剤組成物より形成された粘着剤層の外観が悪くなる場合がある。なお、2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(i)が用いられている場合には、全ての(メタ)アクリル酸アルキルエステル(i)の合計量(総量)が前記範囲を満たせばよい。
【0047】
前記カルボキシル基含有不飽和モノマー(ii)は、本発明のアクリルエマルション系重合体からなるエマルション粒子表面に保護層を形成し、粒子の剪断破壊を防ぐ機能を発揮することができる。この効果はカルボキシル基を塩基で中和することによってさらに向上する。なお、粒子の剪断破壊に対する安定性は、より一般的には機械的安定性という。また、カルボキシル基と反応する架橋剤(本発明においては、非水溶性架橋剤が好ましい。)を1種あるいは2種以上組み合わせることで、水除去による粘着剤層形成段階での架橋点としても作用することもできる。さらに架橋剤(非水溶性架橋剤)を介し、基材との密着性(投錨性)を向上させることもできる。このようなカルボキシル基含有不飽和モノマー(ii)としては、例えば、(メタ)アクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸)、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレートなどが挙げられる。なお、カルボキシル基含有不飽和モノマー(ii)には、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有不飽和モノマーも含むものとする。これらの中でも、粒子表面での相対濃度が高く、より高密度な保護層を形成し易いことから、アクリル酸が好ましい。
【0048】
前記カルボキシル基含有不飽和モノマー(ii)としては、例えば、(メタ)アクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸)、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレートなどが挙げられる。なお、カルボキシル基含有不飽和モノマー(ii)には、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有不飽和モノマーも含むものとする。これらの中でも、粒子表面での相対濃度が高く、より高密度な保護層を形成し易いことから、アクリル酸が好ましい。
【0049】
前記カルボキシル基含有不飽和モノマー(ii)の含有量は、特に限定されないが、本発明のアクリルエマルション系重合体を構成する原料モノマーの総量(モノマー成分の全量:100重量%)中、0.5〜10重量%が好ましく、より好ましくは1〜6重量%、更に好ましくは1〜5重量%、特に好ましくは2〜5重量%、最も好ましくは2〜4重量%である。前記含有量を10重量%以下とすることにより、粘着剤層を形成した後の、被着体(被保護体)である偏光板等の表面の官能基との相互作用の増大を抑制して、経時での剥離力(粘着力)増大を抑制でき、剥離性が向上するため好ましい。また、含有量が10重量%を超える場合には、カルボキシル基含有不飽和モノマー(ii)(例えば、アクリル酸)は一般的に水溶性であるため、水中で重合して増粘(粘度増加)を引き起こす場合がある。また、前記アクリルエマルション系重合体の骨格中にカルボキシル基が多数存在すると、帯電防止剤として配合するイオン性化合物(イオン液体やアルカリ金属塩など)と相互作用してしまい、イオン伝導が妨げられ、被着体への帯電防止性能が得られなくなることが推測されるため、好ましくない。一方、前記含有量を0.5重量%以上とすることにより、エマルション粒子の機械的安定性が向上するため好ましい。また、粘着剤層と支持体(基材)との密着性(投錨性)が向上し、糊残りを抑制できるため好ましい。
【0050】
前記モノマー(iii)(メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、ジエチルアクリルアミドからなる群より選択される少なくとも1種)は、主に外観欠点を減少させる役割を担う。これらのモノマー(iii)は、重合中に他のモノマーと重合し、その重合物が、エマルション粒子を形成することで、エマルション粒子の安定性が増し、ゲル物(凝集物)を減少させる。また、架橋剤として、非水溶性架橋剤を使用した場合には、疎水性の非水溶性架橋剤との親和性が増し、エマルション粒子の分散性を向上させ、分散不良による粘着剤層の凹みを減少させる。さらに、非水溶性(疎水性)イオン液体との親和性が増し、前記イオン液体の添加量が多い場合の分散不良による汚染発生の抑制効果が高くなり、好ましい態様となる。
【0051】
前記モノマー(iii)の含有量は、特に限定されないが、本発明のアクリルエマルション系重合体を構成する原料モノマーの総量(モノマー成分の全量:100重量%)中、0.5〜10重量%が好ましく、より好ましくは1〜6重量%、さらに好ましくは2〜5重量%である。前記含有量を10重量%以下とすることにより、粘着剤層を形成するポリマーが比較的柔軟になり、被着体との密着性が向上する。また、粘着剤層の外観欠点を抑制することができ、好ましい。一方、前記含有量を0.5重量%以上とすることにより、エマルション粒子の機械的安定性が向上するため好ましい。また、モノマー(iii)配合の効果(外観不良の抑止効果)を十分に得られるため好ましい。なお、本発明のアクリルエマルション系重合体を構成するモノマー成分の全量中に、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル及びジエチルアクリルアミドからなる群より選ばれた2種以上のモノマーが含まれる場合には、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル及びジエチルアクリルアミドの含有量の合計(合計含有量)が、前記「モノマー(iii)の含有量」である。
【0052】
本発明のアクリルエマルション系重合体を構成する原料モノマーとしては、特定の機能付与を目的として、前記必須成分[(メタ)アクリル酸アルキルエステル(i)、カルボキシル基含有不飽和モノマー(ii)、モノマー(iii)]以外の他のモノマー成分を併用してもよい。このようなモノマー成分としては、例えば、エマルション粒子内架橋および凝集力向上の目的で、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンなどの多官能モノマーを、それぞれ5重量%未満の割合で添加(使用)してもよい。なお、前記添加量(使用量)は、本発明のアクリルエマルション系重合体を構成する原料モノマーの総量(モノマー成分の全量:100重量%)中の含有量である。
【0053】
前記他のモノマー成分として、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のヒドロキシル基含有不飽和モノマーは、白化汚染をより低減する観点からは添加量(使用量)は少ない方が好ましい。具体的には、ヒドロキシル基含有不飽和モノマーの添加量(本発明のアクリルエマルション系重合体を構成する原料モノマーの総量(モノマー成分の全量:100重量%)中の含有量)は、1重量%未満が好ましく、より好ましくは0.1重量%未満、さらに好ましくは実質的に含まない(例えば、0.05重量%未満)ことが好ましい。ただし、水酸基とイソシアネート基の架橋や金属架橋の架橋等の架橋点の導入を目的とする場合には、0.01〜10重量%程度添加(使用)してもよい。
【0054】
また、本発明のアクリルエマルション系重合体は、前記原料モノマー(モノマー混合物)を、乳化剤、重合開始剤により、エマルション重合することによって得られる。
【0055】
前記エマルション重合に用いる乳化剤としては、分子中にラジカル重合性官能基が導入された反応性乳化剤(ラジカル重合性官能基を含む反応性乳化剤)を用いることが好ましい。これらの乳化剤は単独でまたは2種以上が用いられる。
【0056】
[反応性乳化剤]
前記ラジカル重合性官能基を含む反応性乳化剤(以下、「反応性乳化剤」と称する)は、分子中(1分子中)に少なくとも1つのラジカル重合性官能基を含む乳化剤である。前記反応性乳化剤としては、特に限定されず、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ビニルエーテル基(ビニルオキシ基)、アリルエーテル基(アリルオキシ基)等のラジカル重合性官能基を有する種々の反応性乳化剤から、1種又は2種以上を選択して使用できる。前記反応性乳化剤を用いることにより、乳化剤が重合体中にとりこまれ、乳化剤由来の汚染が低減するため好ましい。
【0057】
前記反応性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどのノニオンアニオン系乳化剤(非イオン性の親水性基を持つアニオン系乳化剤)にプロペニル基やアリルエーテル基等のラジカル重合性官能基(ラジカル反応性基)が導入された形態を有する(又は前記形態に相当する)反応性乳化剤が挙げられる。なお、以下では、アニオン系乳化剤にラジカル重合性官能基が導入された形態を有する反応性乳化剤を「アニオン系反応性乳化剤」と称する。また、ノニオンアニオン系乳化剤にラジカル重合性官能基が導入された形態を有する反応性乳化剤を「ノニオンアニオン系反応性乳化剤」と称する。
【0058】
特に、アニオン系反応性乳化剤(中でも、ノニオンアニオン系反応性乳化剤)を使用した場合に、乳化剤が重合体中にとりこまれることにより、低汚染性を向上させることができる。さらに、特に本発明の非水溶性架橋剤がエポキシ基を有する多官能性エポキシ系架橋剤である場合には、その触媒作用により架橋剤の反応性を向上させることができる。アニオン系反応性乳化剤を使用しない場合、エージングでは架橋反応が終了せず、経時で、粘着剤層の剥離力(粘着力)が変化する問題が生じる場合がある。また、前記アニオン系反応性乳化剤は重合体中にとりこまれるため、エポキシ系架橋剤の触媒として一般的に使用される、第4級アンモニウム化合物(例えば、特開2007−31585号公報参照)のように被着体の表面に析出しないため、白化汚染の原因になり得ないため好ましい。
【0059】
このような反応性乳化剤としては、商品名「アデカリアソープSE−10N」(株式会社ADEKA製)、商品名「アクアロンHS−10」(第一工業製薬(株)製)、商品名「アクアロンHS−05」(第一工業製薬(株)製)、商品名「アクアロンHS−1025」(第一工業製薬(株)製)などの市販品を用いることも可能である。
【0060】
また、特に不純物イオンが問題となる場合があるため、不純物イオンを取り除き、SO42-イオン濃度が100μg/g以下の乳化剤を用いることが望ましい。また、アニオン系乳化剤の場合、アンモニウム塩乳化剤を用いることが望ましい。乳化剤から不純物を取り除く方法としては、イオン交換樹脂法、膜分離法、アルコールを用いた不純物の沈殿ろ過法など適宜な方法を用いることができる。
【0061】
前記反応性乳化剤の配合量(使用量)は、本発明のアクリルエマルション系重合体を構成する原料モノマーの総量(モノマー成分の全量)100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜8重量部、さらに好ましくは1〜7重量部、より更に好ましくは1〜6重量部、特に好ましくは1〜5重量部、より特に好ましくは1〜4.5重量部、最も好ましくは2〜4.5重量部である。配合量を0.1重量部以上とすることにより、安定した乳化を維持できるため好ましい。一方、配合量を10重量部以下とすることにより、架橋後のアクリル系粘着剤皮膜の溶剤不溶分を本発明で規定する範囲内に制御しやすくなり、粘着剤(粘着剤層)の凝集力が向上し被着体への汚染を抑制でき、また乳化剤による汚染を抑制できるため好ましい。
【0062】
前記エマルション重合に用いる重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)などのアゾ系重合開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの過酸化物系重合開始剤;過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤、例えば、過酸化物とアスコルビン酸との組み合わせ(過酸化水素水とアスコルビン酸との組み合わせ等)、過酸化物と鉄(II)塩との組み合わせ(過酸化水素水と鉄(II)塩との組み合わせ等)、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせによるレドックス系重合開始剤などを用いることができる。
【0063】
前記重合開始剤の配合量(使用量)は、開始剤や原料モノマーの種類などに応じて適宜決定することができ、特に限定されないが、架橋後のアクリル系粘着剤皮膜の溶剤不溶分を好ましい範囲内に制御する等の観点から、本発明のアクリルエマルション系重合体を構成する原料モノマーの総量(モノマー成分の全量)100重量部に対して、0.01〜1重量部が好ましく、より好ましくは0.02〜0.5重量部である。
【0064】
前記エマルション重合は、常法により、モノマー成分を水に乳化させた後に、乳化重合することにより行うことができる。これにより、前記アクリルエマルション系重合体をベースポリマーとして含有する水分散液(ポリマーエマルション)を調製することができる。乳化重合の方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、一括仕込み法(一括重合法)、モノマー滴下法、モノマーエマルション滴下法などの公知の乳化重合法を採用することができる。なお、モノマー滴下法、モノマーエマルション滴下法では、連続滴下または分割滴下が適宜選択される。これらの方法は適宜に組み合わせることができる。反応条件などは、適宜選択されるが、重合温度は、例えば、40〜95℃程度であるのが好ましく、重合時間は、30分間〜24時間程度であるのが好ましい。
【0065】
本発明のアクリルエマルション系重合体の溶剤不溶分(溶剤不溶成分の割合、「ゲル分率」と称する場合もある)は、低汚染性や適正な剥離力(粘着力)の観点から、70%(重量%)以上であり、好ましくは75重量%以上、更に好ましくは80重量%以上である。溶剤不溶分が70重量%未満では、アクリルエマルション系重合体中に低分子量体が多く含まれるため、架橋の効果のみでは十分に粘着剤層中の低分子量成分を低減できないため、低分子量成分等に由来する被着体汚染が生じたり、剥離力(粘着力)が高くなりすぎる場合がある。前記溶剤不溶分は、重合開始剤、反応温度、乳化剤や原料モノマーの種類等により制御できる。前記溶剤不溶分の上限値は、特に限定されないが、例えば、99重量%である。なお、本発明において、アクリルエマルション系重合体の溶剤不溶分は、以下の「溶剤不溶分の測定方法」により算出される値である。
【0066】
[溶剤不溶分の測定方法]
アクリルエマルション系重合体:約0.1gを採取し、平均孔径0.2μmの多孔質テトラフルオロエチレンシート(商品名「NTF1122」、日東電工株式会社製)に包んだ後、凧糸で縛り、その際の重量を測定し、前記重量を浸漬前重量とする。なお、前記浸漬前重量は、アクリルエマルション系重合体(前記で採取したもの)と、テトラフルオロエチレンシートと、凧糸の総重量である。また、テトラフルオロエチレンシートと凧糸の合計重量も測定しておき、前記重量を包袋重量とする。次に、前記のアクリルエマルション系重合体をテトラフルオロエチレンシートで包み凧糸で縛ったもの(「サンプル」と称する)を、酢酸エチルで満たした50ml容器に入れ、23℃にて7日間静置する。その後、容器からサンプル(酢酸エチル処理後)を取り出して、アルミニウム製カップに移し、130℃で2時間、乾燥機中で乾燥して酢酸エチルを除去した後、重量を測定し、前記重量を浸漬後重量とする。そして、下記式から溶剤不溶分を算出する。なお、aは浸漬後重量であり、bは包袋重量であり、cは浸漬前重量である。
溶剤不溶分(重量%)=(a−b)/(c−b)×100
【0067】
本発明のアクリルエマルション系重合体の溶剤可溶分(「ゾル分」と称する場合がある)の重量平均分子量(Mw)は、4万〜20万が好ましく、より好ましくは5万〜15万、さらに好ましくは6万〜10万である。アクリルエマルション系重合体の溶剤可溶分の重量平均分子量が4万以上であることにより、粘着剤組成物の被着体への濡れ性が向上し、被着体への接着性が向上する。また、アクリルエマルション系重合体の溶剤可溶分の重量平均分子量が20万以下であることにより、被着体への粘着剤組成物の残留量が低減し、被着体へ低汚染性が向上する。前記アクリルエマルション系重合体の溶剤可溶分の重量平均分子量は、前述のアクリルエマルション系重合体の溶剤不溶分の測定において得られる酢酸エチル処理後の処理液(酢酸エチル溶液)を常温下で風乾して得られるサンプル(アクリルエマルション系重合体の溶剤可溶分)を、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定して求めることができる。具体的な測定方法は、以下の方法が挙げられる。
【0068】
[重量平均分子量(Mw)の測定方法]
GPC測定は、東ソー株式会社製GPC装置「HLC−8220GPC」を用いて行い、ポリスチレン換算値にて分子量を求める。測定条件は下記の通りである。
サンプル濃度:0.2重量%(THF溶液)
サンプル注入量:10μl
溶離
液:THF
流速:0.6ml/min
測定温度:40℃
カラム:
サンプルカラム;TSKguardcolumn SuperHZ−H 1本+TSKgel SuperHZM−H 2本
リファレンスカラム;TSKgel SuperH−RC 1本
検出器:示差屈折計
【0069】
[イオン性化合物]
本発明におけるイオン性化合物は、特に限定されないが、例えば、イオン液体やアルカリ金属塩が挙げられ、前記イオン液体としては、非水溶性イオン液体や水溶性イオン液体が挙げられる。前記イオン性化合物を使用することにより、優れた帯電防止性能を付与することができる。
【0070】
[水溶性(親水性)イオン液体]
本発明における水溶性(親水性)イオン液体とは、25℃で液状を呈する溶融塩(イオン性化合物)をいい、特に限定されないが、優れた帯電防止能が得られる理由から、下記式(A)〜(E)で表される有機カチオン成分と、アニオン成分からなるものが好ましく用いられる。また、水溶性(親水性)イオン液体を、非水溶性(疎水性)架橋剤と共に使用する場合、非水溶性(疎水性)イオン液体を使用する場合に比べて、外観欠点を抑制することができ、有用である。なお、水溶性(親水性)イオン液体を単に、イオン液体(イオン性液体)という場合がある。
【0071】
【化5】

【0072】
前記式(A)中のRは、炭素数4から20の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換されていてもよく、RおよびRは、同一または異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい。但し、窒素原子が2重結合を含む場合、Rはない。
【0073】
前記式(B)中のRは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換されていてもよく、R、R、およびRは、同一または異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい。
【0074】
前記式(C)中のRは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換されていてもよく、R、R、およびRは、同一または異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい。
【0075】
前記式(D)中のZは、窒素、硫黄、またはリン原子を表し、R、R、R、およびRは、同一または異なって、炭素数1から20の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい。但しZが硫黄原子の場合、Rはない。
【0076】
前記式(E)中のRは、炭素数1から18の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよい。
【0077】
式(A)で表されるカチオンとしては、たとえば、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオン、モルフォリニウムカチオンなどがあげられる。
【0078】
具体例としては、たとえば、1−エチルピリジニウムカチオン、1−ブチルピリジニウムカチオン、1−へキシルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−へキシル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3,4−ジメチルピリジニウムカチオン、1−エチル−3−ヒドロキシメチルピリジニウムカチオン、1,1−ジメチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−ブチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−ペンチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−へキシルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−ヘプチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−ブチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−ペンチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−へキシルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−へプチルピロリジニウムカチオン、1,1−ジプロピルピロリジニウムカチオン、1−プロピル−1−ブチルピロリジニウムカチオン、1,1−ジブチルピロリジニウムカチオン、1−プロピルピペリジニウムカチオン、1−ペンチルピペリジニウムカチオン、1,1−ジメチルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−エチルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−ブチルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−ペンチルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−ヘキシルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−へプチルピペリジニウムカチオン、1−エチル−1−プロピルピペリジニウムカチオン、1−エチル−1−ブチルピペリジニウムカチオン、1−エチル−1−ペンチルピペリジニウムカチオン、1−エチル−1−ヘキシルピペリジニウムカチオン、1−エチル−1−へプチルピペリジニウムカチオン、1,1−ジプロピルピペリジニウムカチオン、1−プロピル−1−ブチルピペリジニウムカチオン、1,1−ジブチルピペリジニウムカチオン、2−メチル−1−ピロリンカチオン、1−エチル−2−フェニルインドールカチオン、1,2−ジメチルインドールカチオン、1−エチルカルバゾールカチオン、N−エチル−N−メチルモルフォリニウムカチオンがあげられる。
【0079】
式(B)で表されるカチオンとしては、たとえば、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオンなどがあげられる。
【0080】
具体例としては、たとえば、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,5−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,3−ジメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,3−ジメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオンなどがあげられる。
【0081】
式(C)で表されるカチオンとしては、たとえば、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオンなどがあげられる。
【0082】
具体例としては、たとえば、1−メチルピラゾリウムカチオン、3−メチルピラゾリウムカチオン、1−エチル−2−メチルピラゾリニウムカチオン、1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムカチオン、1−プロピル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムカチオン、1−ブチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムカチオン、1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリニウムカチオン、1−プロピル−2,3,5−トリメチルピラゾリニウムカチオン、1−ブチル−2,3,5−トリメチルピラゾリニウムカチオンなどがあげられる。
【0083】
式(D)で表されるカチオンとしては、たとえば、テトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオンや、前記アルキル基の一部がアルケニル基やアルコキシル基、ヒドロキシル基、シアノ基、さらにはエポキシ基に置換されたものなどがあげられる。
【0084】
具体例としては、たとえば、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラペンチルアンモニウムカチオン、テトラヘキシルアンモニウムカチオン、テトラヘプチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、トリメチルスルホニウムカチオン、トリエチルスルホニウムカチオン、トリブチルスルホニウムカチオン、トリヘキシルスルホニウムカチオン、ジエチルメチルスルホニウムカチオン、ジブチルエチルスルホニウムカチオン、テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオン、テトラヘキシルホスホニウムカチオン、テトラオクチルホスホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、トリブチルエチルホスホニウムカチオン、ジアリルジメチルアンモニウムカチオン、コリンカチオンなどがあげられる。なかでもトリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、ジエチルメチルスルホニウムカチオン、ジブチルエチルスルホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、トリブチルエチルホスホニウムカチオン、トリメチルデシルホスホニウムカチオンなどの非対称のテトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオンや、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、ジアリルジメチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−プロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ブチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ノニルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N,N−ジプロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−プロピル−N−ブチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−ブチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−ペンチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N,N−ジヘキシルアンモニウムカチオン、トリメチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−プロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルプロピルアンモニウムカチオン、トリエチルペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−エチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N,N−ジヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、N−メチル−N−エチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオンが好ましく用いられる。
【0085】
式(E)で表されるカチオンとしては、たとえば、スルホニウムカチオン等が挙げられる。また、前記式(E)中のRの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
【0086】
また、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、前記イオン液体のカチオンが、含イミダゾリウム塩型、含ピリジニウム塩型、含モルフォリニウム塩型、含ピロリジニウム塩型、含ピペリジニウム塩型、含アンモニウム塩型、含ホスホニウム塩型、及び、含スルホニウム塩型からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、これらイオン液体は、前記式(A)、(B)及び(D)のカチオンを含むものに該当する。
【0087】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、前記イオン液体が、下記式(a)〜(d)で表わされるカチオンからなる群より選択される少なくとも1種のカチオンを含有することが好ましい。なお、これらカチオンは、前記式(A)、及び(B)に含まれるものである。
【化6】

【0088】
前記式(a)中のRは、水素または炭素数1から3の炭化水素基を表し、好ましくは水素または炭素数1の炭化水素基であり、Rは、水素または炭素数1から7の炭化水素基を表し、好ましくは炭素数1から6の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1から4の炭化水素基である。
【0089】
前記式(b)中のRは、水素または炭素数1から3の炭化水素基を表し、好ましくは水素または炭素数1の炭化水素基であり、Rは、水素または炭素数1から7の炭化水素基を表し、好ましくは炭素数1から6の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1から4の炭化水素基である。
【0090】
前記式(c)中のRは、水素または炭素数1から3の炭化水素基を表し、好ましくは水素または炭素数1の炭化水素基であり、Rは、水素または炭素数1から7の炭化水素基を表し、好ましくは炭素数1から6の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1から4の炭化水素基である。
【0091】
前記式(d)中のRは、水素または炭素数1から3の炭化水素基を表し、好ましくは水素または炭素数1の炭化水素基であり、Rは、水素または炭素数1から7の炭化水素基を表し、好ましくは炭素数1から6の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1から4の炭化水素基である。
【0092】
一方、アニオン成分としては、水溶性(親水性)イオン液体になることを満足するものであれば特に限定されず、たとえば、Cl、Br、I、BF、PF、ClO、NO、CHCOO、CFCOO、CHSO、CFSO、(CN)、CSO、CCOO、CSO、CSO、CSO、(CHO)PO、(CO)PO、CHOSO、COSO、COSO、n-C13OSO、n-C17OSO、CH(OCOSO、SCN、HSO、CHSOなどが用いられる。なかでも特に、フッ素原子を含むアニオン成分は、低融点のイオン性化合物が得られることから好ましく用いられる。
【0093】
なお、イオン液体の水溶性の判別は、例えば、以下のようにして確認することができる。
【0094】
[水溶性の評価方法]
イオン液体の濃度が10重量%となるように水(25℃)を配合し、攪拌機を用いて回転数300rpm、10分の条件で混合する。次いで、30分間静置した後、分離や白濁がないかを目視にて確認し、上記が確認できないものを水溶性(親水性)イオン液体として判別した。
【0095】
前記水溶性(親水性)イオン液体の具体例としては、1−アリル−3−ブチルイミダゾリウムブロミド、1,3−ジアリルイミダゾリウムブロミド、1,3−ジアリルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート、1,3−ジメチルイミダゾリウムジメチルフォスフェート、1,3−ジメチルイミダゾリウムメチルサルフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムエチルサルフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブチルサルフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルフォスフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムエチルサルフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキシルサルフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム 2−(2−メトキシエトキシ)エチルサルフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムオクチルサルフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムエチルチオシアネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム p−トルエンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムパーフルオロエタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムパーフルオロプロパンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメチルサルフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、3−メチル−1−オクチルイミダゾリウムブロミド、1−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチルピリジニウムパーフルオロエタンスルホネート、1−エチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ヘキシルピリジニウムクロライド、1−エチル−3−メチルピリジニウムエチルサルフェート、1−エチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−3−メチルピリジニウムパーフルオロエタンスルホネート、1−エチル−3−メチルピリジニウムパーフルオロプロパンスルホネート、1−エチル−3−メチルピリジニウムパーフルオロブタンスルホネート、4−メチル−N−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−ヒドロキシメチルピリジニウムエチルサルフェート、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルホネートであり、構造的な特徴としては、アニオン成分としてCl、Br、I、BF、PF、ClO、NO、CHCOO、CFCOO、CHSO、CFSO、(CN)、CSO、CCOO、CSO、CSO、CSO、(CHO)PO、(CO)PO、CHOSO、COSO、COSO、n-C13OSO、n-C17OSO、CH(OCOSO、SCN、HSO、CHSOを持つものが挙げられる。
【0096】
また、水溶性(親水性)イオン液体の市販品としては、例えば、メルク製のEMPES(1−エチル−3−メチルピリジニウムエチルサルフェート)、日本カーリット製のCIL−313(N−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート)、三菱マテリアル製のEtMePy−EF11(N−エチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート)、EtMePy−EF21(N−エチル−3−メチルピリジニウムパーフルオロエタンスルホネート)、EtMePy−EF31(N−エチル−3−メチルピリジニウムパーフルオロプロパンスルホネート)、EtMePy−EF41(N−エチル−3−メチルピリジニウムパーフルオロブタンスルホネート)、EMI−EF11(N−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート)、EMI−EF21(N−エチル−3−メチルイミダゾリウムパーフルオロエタンスルホネート)、EMI−EF31(N−エチル−3−メチルイミダゾリウムパーフルオロプロパンスルホネート)、BuPy−EF21(N−ブチルピリジニウムパーフルオロエタンスルホネート)、EtPy−EF11(N−エチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート)等が挙げられる。
【0097】
[非水溶性(疎水性)イオン液体]
本発明における非水溶性(疎水性)イオン液体とは、25℃で液状を呈する溶融塩(イオン性化合物)をいい、特に限定されないが、優れた帯電防止能が得られる理由から、下記式(A)〜(E)で表される有機カチオン成分と、アニオン成分からなるものが好ましく用いられる。なお、非水溶性(疎水性)イオン液体を単に、イオン液体(イオン性液体)という場合がある。
【0098】
【化7】

【0099】
前記式(A)中のRは、炭素数4から20の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換されていてもよく、RおよびRは、同一または異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい。但し、窒素原子が2重結合を含む場合、Rはない。
【0100】
前記式(B)中のRは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換されていてもよく、R、R、およびRは、同一または異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい。
【0101】
前記式(C)中のRは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換されていてもよく、R、R、およびRは、同一または異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい。
【0102】
前記式(D)中のZは、窒素、硫黄、またはリン原子を表し、R、R、R、およびRは、同一または異なって、炭素数1から20の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい。但しZが硫黄原子の場合、Rはない。
【0103】
前記式(E)中のRは、炭素数1から18の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよい。
【0104】
式(A)で表されるカチオンとしては、たとえば、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオン、モルフォリニウムカチオンなどがあげられる。
【0105】
具体例としては、たとえば、1−エチルピリジニウムカチオン、1−ブチルピリジニウムカチオン、1−へキシルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−へキシル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3,4−ジメチルピリジニウムカチオン、1,1−ジメチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−ブチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−ペンチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−へキシルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−ヘプチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−ブチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−ペンチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−へキシルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−へプチルピロリジニウムカチオン、1,1−ジプロピルピロリジニウムカチオン、1−プロピル−1−ブチルピロリジニウムカチオン、1,1−ジブチルピロリジニウムカチオン、1−プロピルピペリジニウムカチオン、1−ペンチルピペリジニウムカチオン、1,1−ジメチルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−エチルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−ブチルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−ペンチルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−ヘキシルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−へプチルピペリジニウムカチオン、1−エチル−1−プロピルピペリジニウムカチオン、1−エチル−1−ブチルピペリジニウムカチオン、1−エチル−1−ペンチルピペリジニウムカチオン、1−エチル−1−ヘキシルピペリジニウムカチオン、1−エチル−1−へプチルピペリジニウムカチオン、1,1−ジプロピルピペリジニウムカチオン、1−プロピル−1−ブチルピペリジニウムカチオン、1,1−ジブチルピペリジニウムカチオン、2−メチル−1−ピロリンカチオン、1−エチル−2−フェニルインドールカチオン、1,2−ジメチルインドールカチオン、1−エチルカルバゾールカチオン、N−エチル−N−メチルモルフォリニウムカチオンがあげられる。
【0106】
式(B)で表されるカチオンとしては、たとえば、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオンなどがあげられる。
【0107】
具体例としては、たとえば、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,5−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,3−ジメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,3−ジメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオンなどがあげられる。
【0108】
式(C)で表されるカチオンとしては、たとえば、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオンなどがあげられる。
【0109】
具体例としては、たとえば、1−メチルピラゾリウムカチオン、3−メチルピラゾリウムカチオン、1−エチル−2−メチルピラゾリニウムカチオン、1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムカチオン、1−プロピル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムカチオン、1−ブチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムカチオン、1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリニウムカチオン、1−プロピル−2,3,5−トリメチルピラゾリニウムカチオン、1−ブチル−2,3,5−トリメチルピラゾリニウムカチオンなどがあげられる。
【0110】
式(D)で表されるカチオンとしては、たとえば、テトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオンや、前記アルキル基の一部がアルケニル基やアルコキシル基、ヒドロキシル基、シアノ基、さらにはエポキシ基に置換されたものなどがあげられる。
【0111】
具体例としては、たとえば、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラペンチルアンモニウムカチオン、テトラヘキシルアンモニウムカチオン、テトラヘプチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、トリメチルスルホニウムカチオン、トリエチルスルホニウムカチオン、トリブチルスルホニウムカチオン、トリヘキシルスルホニウムカチオン、ジエチルメチルスルホニウムカチオン、ジブチルエチルスルホニウムカチオン、テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオン、テトラヘキシルホスホニウムカチオン、テトラオクチルホスホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、トリブチルエチルホスホニウムカチオン、ジアリルジメチルアンモニウムカチオンなどがあげられる。なかでもトリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、ジエチルメチルスルホニウムカチオン、ジブチルエチルスルホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、トリブチルエチルホスホニウムカチオン、トリメチルデシルホスホニウムカチオンなどの非対称のテトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオンや、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、ジアリルジメチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−プロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ブチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ノニルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N,N−ジプロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−プロピル−N−ブチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−ブチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−ペンチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N,N−ジヘキシルアンモニウムカチオン、トリメチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−プロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルプロピルアンモニウムカチオン、トリエチルペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−エチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N,N−ジヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、N−メチル−N−エチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオンが好ましく用いられる。
【0112】
式(E)で表されるカチオンとしては、たとえば、スルホニウムカチオン等が挙げられる。また、前記式(E)中のRの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
【0113】
また、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、前記イオン液体のカチオンが、含イミダゾリウム塩型、含ピリジニウム塩型、含モルフォリニウム塩型、含ピロリジニウム塩型、含ピペリジニウム塩型、含アンモニウム塩型、含ホスホニウム塩型、及び、含スルホニウム塩型からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、これらイオン液体は、前記式(A)、(B)及び(D)のカチオンを含むものに該当する。
【0114】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、前記イオン液体が、下記式(a)〜(d)で表わされるカチオンからなる群より選択される少なくとも1種のカチオンを含有することが好ましい。なお、これらカチオンは、前記式(A)、及び(B)に含まれるものである。
【化8】

【0115】
前記式(a)中のRは、水素または炭素数1から3の炭化水素基を表し、好ましくは水素または炭素数1の炭化水素基であり、Rは、水素または炭素数1から7の炭化水素基を表し、好ましくは炭素数1から6の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1から4の炭・BR>サ水素基である。
【0116】
前記式(b)中のRは、水素または炭素数1から3の炭化水素基を表し、好ましくは水素または炭素数1の炭化水素基であり、Rは、水素または炭素数1から7の炭化水素基を表し、好ましくは炭素数1から6の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1から4の炭化水素基である。
【0117】
前記式(c)中のRは、水素または炭素数1から3の炭化水素基を表し、好ましくは水素または炭素数1の炭化水素基であり、Rは、水素または炭素数1から7の炭化水素基を表し、好ましくは炭素数1から6の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1から4の炭化水素基である。
【0118】
前記式(d)中のRは、水素または炭素数1から3の炭化水素基を表し、好ましくは水素または炭素数1の炭化水素基であり、Rは、水素または炭素数1から7の炭化水素基を表し、好ましくは炭素数1から6の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1から4の炭化水素基である。
【0119】
一方、アニオン成分としては、非水溶性(疎水性)イオン液体になることを満足するものであれば特に限定されず、たとえば、PF、CFSO、(CFSO、(CFSO、(CSO、(CFSO)(CFCO)N、(FSO、(CSO、(CSO、(CPFなどが用いられる。なかでも特に、イミド構造を含むアニオン成分は、低融点のイオン性化合物が得られることから好ましく用いられる。
【0120】
なお、イオン液体の疎水性の判別は、例えば、以下のようにして確認することができる。
【0121】
[イオン液体の非水溶性(疎水性)の評価方法]
イオン液体の濃度が10重量%となるように水(25℃)を配合し、攪拌機を用いて回転数300rpm、10分の条件で混合する。次いで、30分間静置した後、分離や白濁を目視にて確認し、上記が確認できるものを非水溶性(疎水性)イオン液体として判別した。
【0122】
前記非水溶性(疎水性)イオン液体の具体例としては、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−ヒドロキシメチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,1−ジメチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−エチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−ブチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−ペンチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−へキシルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−へプチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−1−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−1−ブチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−1−ペンチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−1−へキシルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−1−へプチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,1−ジプロピルピロリジニウムビス(トリプルオロメタンスルホニル)イミド、1−プロピル−1−ブチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,1−ジブチルピロリジニウムビス(トリプルオロメタンスルホニル)イミド、1−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ペンチルビベリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,1−ジメチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−エチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−ブチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−ペンチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−ヘキシルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−へプチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−1−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−1−ブチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−1−ペンチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−1−へキシルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−1−へプチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,1−ジプロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−プロピル−1−ブチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,1−ジブチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,1−ジメチルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−エチルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−ブチルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−ペンチルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−へキシルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−へプチルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−1−プロピルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−1−ブチルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−1−ペンチルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−1−へキシルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−1−へプチルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1,1−ジプロピルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−プロピル−1−ブチルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1,1−ジブチルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−プロピルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−ペンチルピペリジニウムビス(ベンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1,1−ジメチルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−エチルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−プロピルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−ブチルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−ペンチルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−へキシルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−へプチルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−1−プロピルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−1−ブチルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−1−ペンチルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−1−へキシルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−1−へプチルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1,1−ジプロピルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−プロピル−1−ブチルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1,1−ジブチルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−プロピル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−プロピル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−ブチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−プロピル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−ブチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−プロピル−2,3,5−トリメチルピラゾリニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−2,3,5−トリメチルピラゾリニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−プロピル−2,3,5−トリメチルピラゾリニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−ブチル−2,3,5−トリメチルピラゾリニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−プロピル−2,3,5−トリメチルピラゾリニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−ブチル−2,3,5−トリメチルピラゾリニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、テトラペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−Nメチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、テトラオクチルホスホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−へキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ノニルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N,N−ジプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ペンチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N,N−ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリメチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチ
ル−N−メチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−エチルアンモニウムビス(トリフルオロメダンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−ブチル−N−へキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N,N−ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリオクチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−エチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−メチル−1−プロピルピペリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミドであり、構造的な特徴としては、アニオン成分としてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、ビス(フルオロスルホニル)イミドを有するものが挙げられる。
【0123】
また、非水溶性(疎水性)イオン液体の市販品としては、例えば、日本カーリット製のCIL−312(N−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、第一工業製薬製のElexcel IL−110(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、Elexcel IL−120(1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、Elexcel IL−130(1−メチル−1−プロピルピペリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、Elexcel IL−210(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、Elexcel IL−220(1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、Elexcel IL−230(1−メチル−1−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)等が挙げられる。
【0124】
前記のようなイオン液体(水溶性、及び非水溶性イオン液体を含む)は、市販のものを使用してもよいが、下記のようにして合成することも可能である。イオン液体の合成方法としては、目的とするイオン液体が得られれば特に限定されないが、一般的には、文献“イオン液体−開発の最前線と未来−”[(株)シーエムシー出版発行]に記載されているような、ハロゲン化物法、水酸化物法、酸エステル法、錯形成法、および中和法などが用いられる。
【0125】
下記にハロゲン化物法、水酸化物法、酸エステル法、錯形成法、および中和法について含窒素オニウム塩を例にその合成方法について示すが、その他の含硫黄オニウム塩、含リンオニウム塩などその他のイオン液体についても同様の手法により得ることができる。
【0126】
ハロゲン化物法は、下記式(1)〜(3)に示すような反応によって行われる方法である。まず3級アミンとハロゲン化アルキルと反応させてハロゲン化物を得る(反応式(1)、ハロゲンとしては塩素、臭素、ヨウ素が用いられる)。
【0127】
得られたハロゲン化物を目的とするイオン液体のアニオン構造(A)を有する酸(HA)あるいは塩(MA、Mはアンモニウム、リチウム、ナトリウム、カリウムなど目的とするアニオンと塩を形成するカチオン)と反応させて目的とするイオン液体(RNA)が得られる。
【0128】
【化9】

【0129】
水酸化物法は、(4)〜(8)に示すような反応によって行われる方法である。まずハロゲン化物(RNX)をイオン交換膜法電解(反応式(4))、OH型イオン交換樹脂法(反応式(5))または酸化銀(AgO)との反応(反応式(6))で水酸化物(RNOH)を得る(ハロゲンとしては塩素、臭素、ヨウ素が用いられる)。
【0130】
得られた水酸化物を前記ハロゲン化法と同様に反応式(7)〜(8)の反応を用いて目的とするイオン液体(RNA)が得られる。
【0131】
【化10】

【0132】
酸エステル法は、(9)〜(11)に示すような反応によって行われる方法である。まず3級アミン(RN)を酸エステルと反応させて酸エステル物を得る(反応式(9)、酸エステルとしては、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、炭酸などの無機酸のエステルやメタンスルホン酸、メチルホスホン酸、ギ酸などの有機酸のエステルなどが用いられる)。
【0133】
得られた酸エステル物を前記ハロゲン化法と同様に反応式(10)〜(11)の反応を用いて目的とするイオン液体(RNA)が得られる。また、酸エステルとしてメチルトリフルオロメタンスルホネート、メチルトリフルオロアセテートなどを用いることにより、直接イオン液体を得ることもできる。
【0134】
【化11】

【0135】
錯形成法は、(12)〜(15)に示すような反応によって行われる方法である。まず4級アンモニウムのハロゲン化物(RNX)、4級アンモニウムの水酸化物(RNOH)、4級アンモニウムの炭酸エステル化物(RNOCOCH)などをフッ化水素(HF)やフッ化アンモニウム(NHF)と反応させてフッ化4級アンモニウム塩を得る(反応式(12)〜(14))。
【0136】
得られたフッ化4級アンモニウム塩をBF,AlF,PF,ASF,SbF,NbF,TaFなどのフッ化物と錯形成反応により、イオン液体を得ることができる(反応式(15))。
【0137】
【化12】

【0138】
中和法は、(16)に示すような反応によって行われる方法である。3級アミンとHBF,HPF,CHCOOH,CFCOOH,CFSOH,(CFSONH,(CFSOCH,(CSONHなどの有機酸とを反応させることにより得ることができる。
【0139】
【化13】

【0140】
前記式(1)〜(16)記載のRは、水素または炭素数1から20の炭化水素基を表し、炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよい。
【0141】
前記イオン液体(水溶性、及び非水溶性イオン液体を含む)の配合量としては、使用するポリマーとイオン液体の相溶性により変わるため、一概に定義することができないが、ベースポリマー(アクリル系エマルション系重合体)100重量部(固形分)に対して、0.001〜4.9重量部が好ましく、0.01〜3重量部がより好ましく、0.03〜2重量部がさらに好ましく、0.05〜1重量部が最も好ましい。0.001重量部未満であると十分な帯電防止特性が得られず、4.9重量部を超えると被着体への汚染が増加する傾向がある。
【0142】
[アルカリ金属塩]
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、イオン性化合物であるアルカリ金属塩を使用することができる。前記アルカリ金属塩を含有することにより、得られる粘着剤層(粘着シート)を被着体(被保護体)に貼付後、剥離する際に、帯電防止が図られていない被着体に対して、帯電防止性を付与することができる。また、前記アルカリ金属塩は、前記アクリルエマルション系重合体との相溶性、及びバランスの良い相互作用が期待できる。
【0143】
本発明のアルカリ金属塩としては、特に制限されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムからなる金属塩があげられ、具体的には、たとえば、Li、Na、Kよりなるカチオンと、Cl、Br、I、BF、PF、SCN、ClO、CFSO、(CFSO、(CSO、(CFSO、CSO、CHCOO、CCOO、(CFSO)(CFCO)N、(FSO、(CSO、(CHO)PO、(CO)PO、(CN)、CHOSO、COSO、n−C17OSOよりなるアニオンから構成される金属塩が好適に用いられる。なかでも特に、塩を構成するアニオンとして、フッ素を含有するものを用いることが好ましい。また、LiBr、LiI、LiBF、LiPF、LiSCN、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CFSOCなどのリチウム塩を用いることも、好ましい態様である。リチウム塩は、アルカリ金属塩の中でも、特に高い解離性を示すため、帯電防止性に優れた粘着剤層(粘着シート)を得ることができ、特に帯電防止性が要求される光学部材等の表面保護フィルムとして、使用することができる。なお、これらのアルカリ金属塩は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0144】
本発明に用いられるアルカリ金属塩の配合量については、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、アルカリ金属塩を5重量部以下配合することが好ましく、3重量部以下配合することがより好ましく、2重量部以下配合することが更に好ましく、0.1〜1
重量部配合することが最も好ましい。5重量部より多くなると、被着体(被保護体)への汚染が増加する傾向があるため、好ましくない。
【0145】
[アルキレンオキシド共重合化合物]
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、アルキレンオキシド共重合化合物を含有することが好ましい。前記アルキレンオキシド共重合化合物を含有することにより、自由度の高いポリエーテル鎖間にイオン性化合物のイオンが容易に移動でき、優れた帯電防止効果を発現できることから好ましい。具体的には、ポリエーテル型消泡剤やオルガノポリシロキサン、アセチレンジオール型レベリング剤等が挙げられる。中でも特に、ポリエーテル型消泡剤やオルガノポリシロキサンは、低表面張力のため少量でも高い界面吸着性を持つので、イオン性化合物が配位した状態で界面吸着することができ、優れた帯電防止性を付与することができる点で、有用である。
【0146】
[ポリエーテル型消泡剤]
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、前記アルキレンオキシド共重合化合物を含有することができ、下記式(iv)で表わされるポリエーテル型消泡剤であることが好ましい。
【化14】

【0147】
上記式(iv)中、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。m1は0〜50の整数、n1は1以上の整数を表し、m1は、好ましくは1〜50であり、より好ましくは、1〜30であり、さらに好ましくは5〜20である。また、n1は、好ましくは1〜200であり、より好ましくは、10〜100であり、さらに好ましくは20〜50である。m1及びn1が前記範囲内にあると、低汚染性となり、好ましい。なお、前記EOとPOの付加形態は、ランダム型又はブロック型である。
【0148】
前記式(iv)中、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。n1は1以上の整数であり、ポリエーテル型消泡剤のPO含有率が70〜100重量%となるように適宜調整されるが、例えば、n1は10〜69が好ましい。m1は0〜40の整数(好ましくは、2〜27の整数)を表す。なお、m1が0である場合には、式(iv)は、HO−(PO)n1−Hで表されるポリプロピレングリコールである。
【0149】
前記式(iv)において、EOとPOの付加形態(共重合形態)はランダム型(ランダム状)又はブロック型(ブロック状)である。ブロック型の付加形態の場合の、各ブロックの配列は、例えば、(EOからなるブロック)−(POからなるブロック)−(EOからなるブロック)、(POからなるブロック)−(EOからなるブロック)−(POからなるブロック)、(EOからなるブロック)−(POからなるブロック)、又は、(POからなるブロック)−(EOからなるブロック)である。
【0150】
前記ポリエーテル型消泡剤の中でも、消泡性と低汚染性のバランスが特に良好となることから、式(iv)で表される化合物が好ましく、中でも、EOとPOの付加形態(共重合形態)がブロック型(ブロック状)であり、各ブロックの配列が、(POからなるブロック)−(EOからなるブロック)−(POからなるブロック)であるものが好ましい。即ち、前記ポリエーテル型消泡剤は、EOからなるブロックの両側にPOからなるブロックを有するトリブロック共重合体が好ましい。
【0151】
また、前記ポリエーテル型消泡剤は、下記式(v)で表される化合物であることが好ましい。
【化15】

【0152】
上記式(v)中、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。a及びcは、1以上の整数であることが好ましく、より好ましくは、a及びc1〜100であり、より好ましくは10〜50、さらに好ましくは10〜30である。aとcは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、bは、1以上の整数であることが好ましく、より好ましくは1〜50が好ましく、さらに好ましくは1〜30である。a〜cが、前記範囲内にあると、低汚染性となり、好ましい。
【0153】
前記ポリエーテル型消泡剤((iv)及び(v))を水分散型アクリル系粘着剤組成物中に配合することで、その消泡性により、気泡由来の欠点をなくすことが可能となる。また、ポリエーテル型消泡剤が、粘着剤層と被着体の界面にブリードすることで、剥離調整機能を付与し、軽剥離設計が可能となる(ポリエーテル型消泡剤の配合量を増やすことにより低汚染で軽剥離が実現できる)。また、前記ポリエーテル型消泡剤を用いることにより、詳細な理由は明らかではないが、エーテル基に基づき、イオン性化合物やアクリルエマルション系重合体などとの相溶性や、バランスの良い相互作用を得られることができ、剥離した際に帯電防止されていない被着体(被保護体)への帯電防止が図れ、かつ、被着体への汚染が低減された表面保護フィルムを得ることができ、有用である。
【0154】
前記ポリエーテル型消泡剤のうち、上記式(v)で表わされるものは、ポリオキシエチレンブロックが分子の中央部に位置するブロック型の構造であり、分子の両端部に疎水基であるPOからなるブロックが存在する構造であるため、気−液界面に均一に並びにくく、消泡性を発揮できる。ポリオキシエチレンブロックを分子の両端部に有するPEG−PPG−PEGトリブロック共重合体や、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのジブロック共重合体は、PPG−PEG−PPGトリブロック共重合体に比べて気−液界面に均一に並びやすいため、泡沫を安定させる作用を有する。
【0155】
さらに、前記ポリエーテル型消泡剤((iv)及び(v))は、疎水性が高いため、高湿度環境下で被着体上に生じる白化汚染の原因となりにくく、低汚染性が向上する。親水性の高い化合物(特に水溶性の化合物)の場合には、高湿度環境下では、化合物が水分に溶けて被着体に転写しやすくなったり、被着体にブリードした化合物が膨潤して白化しやすくなったりするため、白化汚染を引き起こしやすい。
【0156】
前記ポリエーテル型消泡剤((iv)及び(v))の、「ポリエーテル型消泡剤の総重量」に対する「POの総重量」の割合[(POの総重量)/(ポリエーテル型消泡剤の総重量)×100](単位:重量%(%))は、50〜95重量%であることが好ましく、より好ましくは55〜90重量%、さらに好ましくは60〜85重量%である。前記割合(PO含有率)が50重量%を未満であると、ポリエーテル型消泡剤の親水性が高くなり、消泡性が失われる場合がある。また、前記割合が95重量%を超えると、ポリエーテル型消泡剤の疎水性が高くなりすぎ、ハジキの原因となる場合がある。前記の「ポリエーテル型消泡剤の総重量」とは、「本発明の粘着剤組成物中の全てのポリエーテル型消泡剤の重量の合計量」であり、「POの総重量」とは、「本発明の粘着剤組成物中の全てのポリエーテル型消泡剤に含まれるPOの重量の合計量」である。なお、前記の「ポリエーテル型消泡剤の総重量」に対する「POの総重量」の割合を、「EO含有率」と称する場合がある。PO含有率の測定方法は、例えば、NMR、クロマト法(クロマトグラフィー)、MALDI−TOFMS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法)またはTOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)が挙げられる。
【0157】
前記ポリエーテル型消泡剤のプロピレンオキシド含有率(「PO含有率」と称する場合がある)は、ポリエーテル型消泡剤中(100重量%)、70〜100重量%であり、好ましくは70〜95重量%、より好ましくは80〜95重量%、さらに好ましくは85〜95重量%、最も好ましくは90〜95重量%である。PO含有率が70重量%未満であると被着体への汚染性が悪化する。また、低汚染性の観点から、PO含有率は95重量%以下が好ましい。なお、前記の「PO含有率」は、「本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物中に含まれる全てのポリエーテル型消泡剤の総重量に対する、全てのポリエーテル型消泡剤中のPO(オキシプロピレン基)の総重量の割合(重量%)」である。PO含有率の測定方法としては、例えば、NMR法(核磁気共鳴)、クロマト法(クロマトグラフィー)、MALDI−TOF MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法)、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)が挙げられる。
【0158】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物(粘着剤組成物)中の、前記ポリエーテル型消泡剤の数平均分子量は、1200〜4000が好ましく、より好ましくは1500〜3500であり、更に好ましくは1750〜3000である。数平均分子量が1200未満では、ポリエーテル型消泡剤の、系(粘着剤組成物の系)への相溶性が高くなりすぎるため、消泡効果が得られない場合があり、また、被着体への汚染が発生する場合がある。一方、数平均分子量が4000を超えると、系への非相溶性が高くなりすぎるため、消泡性は高くなるが、粘着剤組成物を基材等に塗布する際のハジキの原因となる場合があり、被着体への汚染が発生する場合がある。なお、前記数平均分子量(Mn)は、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物中に含まれる全てのポリエーテル型消泡剤についての数平均分子量である。前記数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定して得られたものをいう。具体的な測定方法は、上記[重量平均分子量(Mw)の測定方法]で示したものと同様の手法が挙げられる。
【0159】
前記ポリエーテル型消泡剤は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、日油(株)製、商品名「プロノン#101P」、「プロノン#183」、「プロノン#201」、「プロノン#202B」、「プロノン#352」、「ユニルーブ10MS−250KB」、「ユニルーブ20MT−2000B」;(株)ADEKA製、商品名「アデカプルロニック L−33」、「アデカプルロニック L−42」、「アデカプルロニック L−43」、「アデカプルロニック L−61」、「アデカプルロニック L−62」(数平均分子量:2200)、「アデカプルロニック L−71」、「アデカプルロニック L−72」、「アデカプルロニック L−81」、「アデカプルロニック L−92」、「アデカプルロニック L−101」、「アデカプルロニック 17R−2」(数平均分子量:2000)、「アデカプルロニック 17R−3」、「アデカプルロニック 17R−4」(数平均分子量:2500)、「アデカプルロニック 25R−1」、「アデカプルロニック 25R−2」などが挙げられる。
【0160】
前記ポリエーテル型消泡剤は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0161】
本発明の粘着剤組成物の作製時に前記ポリエーテル型消泡剤を配合する際には、溶媒を用いずポリエーテル型消泡剤のみを配合することが好ましいが、配合作業性を向上させる等の観点から、各種溶媒にポリエーテル型消泡剤を分散または溶解させたものを用いてもよい。前記溶媒としては、2−エチルヘキサノール、ブチルセルソルブ、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロパノールなどが挙げられる。これらの溶媒の中でも、エマルション系への分散性の観点から、エチレングリコールが好ましく用いられる。
【0162】
前記ポリエーテル型消泡剤の配合量(本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物中の含有量)は、アクリルエマルション系重合体100重量部(固形分)に対して、0.01〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜3重量部、さらに好ましくは0.2〜2重量部、最も好ましくは0.5〜1.5重量部、特に好ましくは0.6〜1.5重量部である。前記配合量が0.01重量部未満では、十分な消泡性が得られない(気泡欠点による外観不良が生じやすくなる)場合があり、5重量部を超えると、被着体への汚染が発生し易くなる場合がある。
【0163】
[オルガノポリシロキサン]
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、前記アルキレンオキシド共重合化合物を含有することができ、下記式(vi)で表わされるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【化16】

(式中、Rは1価の有機基、R,R及びRはアルキレン基、もしくはRは水酸基もしくは有機基、m及びnは0〜1000の整数。但し、m,nが同時に0となることはない。a及びbは0〜100の整数。但し、a,bが同時に0となることはない。)
【0164】
前記オルガノポリシロキサンは、ポリオキシアルキレン側鎖の末端が水酸基であることがより好ましい。前記オルガノポリシロキサンを用いることにより、被着体(被保護体)への帯電防止性を発現することができ、有効である。
【0165】
前記オルガノポリシロキサンの配合量については、前記アクリルエマルション系重合体100重量部に対して、5重量部以下が好ましく、0.01〜4重量部配合することがより好ましい。5重量部より多くなると、汚染が発生する傾向があるため、好ましくない。
【0166】
また、前記オルガノポリシロキサンとしては、具体的には、式中のRはメチル基,エチル基,プロピル基等のアルキル基、フェニル基,トリル基等のアリール基又はベンジル基,フェネチル基等のアルキル基で例示される1価の有機基であり、それぞれ水酸基等の置換基を有していてもよい。R,R及びRはメチレン基,エチレン基,プロピレン基等の炭素数1〜8のアルキレン基を用いることができる。ここで、R及びR は異なるアルキレン基であり、RはR又はRと同じであっても、異なっていてもよい。R及びRはそのポリオキシアルキレン側鎖中に溶解し得るアルカリ金属塩の濃度を上げるためにそのどちらか一方が、エチレン基またはプロピレン基であることが好ましい。Rはメチル基,エチル基,プロピル基等のアルキル基またはアセチル基,プロピオニル基等のアシル基で例示される1価の有機基であってもよく、それぞれ水酸基等の置換基を有していてもよい。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。また、分子中に(メタ)アクリロイル基、アリル基、水酸基などの反応性置換基を有していてもよい。上記ポリオキシアルキレン側鎖を有するオルガノポリシロキサンのなかでも、水酸基末端を有するポリオキシアルキレン側鎖を有するオルガノポリシロキサンが、相溶性のバランスがとりやすいと推測されるため好ましい。
【0167】
上記オルガノポリシロキサンの具体例としては、たとえば、市販品としての商品名KF−351A、KF−353、KF−945、KF−6011、KF−889、KF−6004(以上、信越化学工業社製)FZ−2122、FZ−2164、FZ−7001、SH8400、SH8700、SF8410、SF8422(以上、東レ・ダウコーニング社製)、TSF−4440,TSF−4445、TSF−4452、TSF−4460(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製)、BYK−333、BYK−377、BYK−UV3500、BYK−UV3570(ビックケミー・ジャパン社製)などがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0168】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、消泡効果をさらに向上させる目的で、前記ポリエーテル型消泡剤以外のポリオキシアルキレン化合物(「その他のポリオキシアルキレン化合物」と称する場合がある)を含有してもよい。前記のその他のポリオキシアルキレン化合物としては、例えば、炭素数4〜18のモノアルコール(ブチルアルコール、イソアミルアルコール、n−アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール及びステアリルアルコール等)、炭素数4〜18のモノカルボン酸(酪酸、吉草酸、カプリン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸及びステアリン酸等)又は炭素数4〜18のモノアミン(ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン及びステアリルアミン等)と炭素数2もしくは4のアルキレンオキシドとの反応物や、炭素数3〜60のポリオール[グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、フェノール又はアルキルフェノール(オクチルフェノール、ノニルフェノール及びブチルフェノール等)のホルマリン縮合物、糖(グリコシド、蔗糖、イソサッカロース、トレハロース、イソトレハロース、ゲンチアノース、メレチトース、ブランテオース及びラフィノース等)]と炭素数2もしくは4のアルキレンオキシドとの反応物等が挙げられる。
【0169】
前記のその他のポリオキシアルキレン化合物の含有量は、前記ポリエーテル系消泡剤100重量部に対して、100重量部以下が好ましく、より好ましくは1〜70重量部、さらに好ましくは3〜50重量部、最も好ましくは5〜30重量部である。
【0170】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物には、低汚染性の観点から、架橋触媒として用いられる第4級アンモニウム塩を添加しないことが好ましく、さらに第4級アンモニウム化合物を添加しないことが好ましい。従って、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、第4級アンモニウム塩を実質的に含まないことが好ましく、さらに第4級アンモニウム化合物を実質的に含まないことが好ましい。これらの化合物は、エポキシ系架橋剤の反応性を向上させるための触媒等として一般的に使用される。しかし、これらの化合物は、粘着剤層を形成する重合体中に組み込まれず粘着剤層中を自由に移動できるため、被着体表面に析出しやすく、粘着剤組成物中にこれらの化合物が含まれる場合には、白化汚染が引き起こされやすく、低汚染性が達成できない場合がある。具体的には、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物中の第4級アンモニウム塩の含有量は、粘着剤組成物(不揮発分)100重量%に対して、0.1重量%未満が好ましく、より好ましくは0.01重量%未満、さらに好ましくは0.005重量%未満である。さらに、第4級アンモニウム化合物の含有量が前記範囲を満たすことが好ましい。
【0171】
なお、前記架橋触媒を添加しないことが好ましいが、必要な場合に用いられる第4級アンモニウム塩としては、具体的には、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の水酸化アルキルアンモニウムやその塩類、水酸化テトラフェニルアンモニウム等の水酸化アリールアンモニウムやその塩類、トリラウリルメチルアンモニウムイオン、ジデシルジメチルアンモニウムイオン、ジココイルジメチルアンモニウムイオン、ジステアリルジメチルアンモニウムイオン、ジオレイルジメチルアンモニウムイオン、セチルトリメチルアンモニウムイオン、ステアリルトリメチルアンモニウムイオン、ベヘニルトリメチルアンモニウムイオン、ココイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムイオン、ポリオキシエチレン(15)ココステアリルメチルアンモニウムイオン、オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムイオン、ココベンジルジメチルアンモニウムイオン、ラウリルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムイオン、デシルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムイオンや上記化合物の誘導体を陽イオンとする塩基やその塩類などが挙げられる。
【0172】
[架橋剤]
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、前記アクリルエマルション系重合体を、適宜架橋することで、より耐熱性・耐候性などに優れた粘着剤層や粘着シートが得られる。架橋方法の具体的手段としては、特に限定されないが、主に適度な凝集力を得る観点から、非水溶性架橋剤が、特に好ましく用いられる。本発明に用いられる架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン系樹脂、アジリジン誘導体、および金属キレート化合物などが用いられる。なかでも、主に適度な凝集力を得る観点から、イソシアネート化合物やエポキシ化合物が特に好ましく用いられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0173】
[非水溶性架橋剤]
本発明の非水溶性架橋剤は、非水溶性の化合物であり、分子中(1分子中)にカルボキシル基と反応しうる官能基を2個以上(例えば、2〜6個)有する化合物である。1分子中のカルボキシル基と反応しうる官能基の個数は3〜5個が好ましい。1分子中のカルボキシル基と反応しうる官能基の個数が多くなるほど、粘着剤組成物が密に架橋する(即ち、粘着剤層を形成するポリマーの架橋構造が密になる)。このため、粘着剤層形成後の粘着剤層のぬれ広がりを防ぐことが可能となる。また、粘着剤層を形成するポリマーが拘束されるため、粘着剤層中の官能基(カルボキシル基)が被着体面に偏析して、粘着剤層と被着体との剥離力(粘着力)が経時で上昇することを防ぐことが可能となる。一方、1分子中のカルボキシル基と反応しうる官能基の個数が6個を超えて多すぎる場合には、ゲル化物が生じる場合がある。
【0174】
本発明の非水溶性架橋剤におけるカルボキシル基と反応しうる官能基としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ基、イソシアネート基、カルボジイミド基などが挙げられる。中でも、反応性の観点からエポキシ基が好ましい。さらに、反応性が高いため、架橋反応における未反応物が残りにくく低汚染性に有利である、粘着剤層中の未反応のカルボキシル基により被着体との剥離力(粘着力)が経時で上昇することを防止できるという観点から、グリシジルアミノ基が好ましい。即ち、本発明の非水溶性架橋剤としては、エポキシ基を有するエポキシ系架橋剤が好ましく、中でも、グリシジルアミノ基を有する架橋剤(グリシジルアミノ系架橋剤)が好ましい。なお、本発明の非水溶性架橋剤がエポキシ系架橋剤(特にグリシジルアミノ系架橋剤)である場合には、1分子中のエポキシ基(特にグリシジルアミノ基)の個数が2個以上(例えば、2〜6個)であり、3〜5個が好ましい。
【0175】
本発明の非水溶性架橋剤は、非水溶性の化合物である。なお、「非水溶性」とは、25℃における水100重量部に対する溶解度(水100重量部に溶解しうる化合物(架橋剤)の重量)が5重量部以下であることをいい、好ましくは3重量部以下、さらに好ましくは2重量部以下である。非水溶性の架橋剤を使用することにより、架橋せずに残存した架橋剤が、高湿度環境下で被着体上に生じる白化汚染の原因となりにくく、低汚染性が向上する。水溶性の架橋剤の場合には、高湿度環境下では、残存した架橋剤が水分に溶けて被着体に転写しやすくなるため、白化汚染を引き起こしやすい。また、非水溶性架橋剤は、水溶性架橋剤と比較して、架橋反応(カルボキシル基との反応)への寄与が高く、剥離力(粘着力)の経時上昇防止効果が高い。さらに、非水溶性架橋剤は架橋反応の反応性が高いため、エージングで速やかに架橋反応が進行し、粘着剤層中の未反応のカルボキシル基により被着体との剥離力(粘着力)が経時で上昇することを防止できる。なお、前記架橋剤の水に対する溶解度は、例えば、以下のようにして測定しうる。
【0176】
[水に対する溶解度の測定方法]
同重量の水(25℃)と架橋剤を、攪拌機を用いて回転数300rpm、10分の条件で混合し、遠心分離により水相と油相に分ける。次いで、水相を採取し120℃で1時間乾燥して、乾燥減量から水相中の不揮発分(水100重量部に対する不揮発成分の重量部)を求める。
【0177】
具体的には、本発明の非水溶性架橋剤としては、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(例えば、三菱ガス化学(株)製、商品名「TETRAD−C」等)[25℃における水100重量部に対する溶解度2重量部以下]、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン(例えば、三菱ガス化学(株)製、商品名「TETRAD−X」等)[25℃における水100重量部に対する溶解度2重量部以下]等のグリシジルアミノ系架橋剤;Tris(2,3−epoxypropyl)isocyanurate(例えば、日産化学工業(株)製、商品名「TEPIC−G」等)[25℃における水100重量部に対する溶解度2重量部以下]等のその他のエポキシ系架橋剤などが例示される。なお、これら非水溶性架橋剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0178】
本発明の非水溶性架橋剤の配合量(本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物中の含有量)は、本発明のアクリルエマルション系重合体の原料モノマーとして用いられるカルボキシル基含有不飽和モノマー(ii)のカルボキシル基1モルに対する、本発明の非水溶性架橋剤のカルボキシル基と反応しうる官能基のモル数が0.1〜1.3モルとなる配合量とすることが好ましく、0.2〜1.3モルとなる配合量とすることがより好ましい。即ち、「本発明のアクリルエマルション系重合体の原料モノマーとして用いられる全てのカルボキシル基含有不飽和モノマー(ii)のカルボキシル基の総モル数」に対する、「全ての本発明の非水溶性架橋剤のカルボキシル基と反応しうる官能基の総モル数」の割合[カルボキシル基と反応しうる官能基/カルボキシル基](モル比)が0.1〜1.3であることが好ましく、0.2〜1.3であることがより好ましく、更に好ましくは0.3〜1.1、さらに好ましくは0.3〜1.0である。[カルボキシル基と反応しうる官能基/カルボキシル基]を0.1以上とすることにより、粘着剤層中の未反応のカルボキシル基を低減し、カルボキシル基と被着体との相互作用に起因する、経時による剥離力(粘着力)上昇を効果的に防止できるため好ましい。さらに、架橋後のアクリル系粘着剤皮膜の溶剤不溶分や破断伸びを本発明で規定する範囲内に制御しやすくなるため好ましい。また、1.3以下とすることにより、粘着剤層中の未反応の非水溶性架橋剤を低減し、非水溶性架橋剤による外観不良を抑制して、外観特性を向上させることができるため好ましい。
【0179】
特に、本発明の非水溶性架橋剤がエポキシ系架橋剤である場合には、[エポキシ基/カルボキシル基](モル比)が0.2〜1.3であることが好ましく、より好ましく0.3〜1.1、さらに好ましくは0.3〜1.0である。さらに、本発明の非水溶性架橋剤がグリシジルアミノ系架橋剤である場合には、[グリシジルアミノ基/カルボキシル基](モル比)が前記範囲を満たすことが好ましい。
【0180】
なお、例えば、粘着剤組成物中に、カルボキシル基と反応しうる官能基の官能基当量が110(g/eq)の非水溶性架橋剤を4g添加(配合)する場合、非水溶性架橋剤の有するカルボキシル基と反応しうる官能基のモル数は、例えば、以下のように算出できる。
非水溶性架橋剤の有するカルボキシル基と反応しうる官能基のモル数=[非水溶性架橋剤の配合量(添加量)]/[官能基当量]=4/110
例えば、非水溶性架橋剤として、エポキシ当量が110(g/eq)のエポキシ系架橋剤を4g添加(配合)する場合、エポキシ系架橋剤の有するエポキシ基のモル数は、例えば、以下のように算出できる。
エポキシ系架橋剤の有するエポキシ基のモル数=[エポキシ系架橋剤の配合量(添加量)]/[エポキシ当量]=4/110
【0181】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、前記非水溶性架橋剤以外の架橋剤(その他の架橋剤)を含有していてもよい。その他の架橋剤としては、特に限定されないが、多官能性ヒドラジド系架橋剤が好ましい。多官能性ヒドラジド系架橋剤を用いることで、粘着剤組成物より形成される粘着剤層の再剥離性、粘着性(接着性)及び支持体(基材)との投錨性を向上させることができる。多官能性ヒドラジド系架橋剤(単に「ヒドラジド系架橋剤」と称する場合がある)は、分子中(1分子中)にヒドラジド基を少なくとも2個有する化合物である。1分子中のヒドラジド基の個数は、2または3個が好ましく、より好ましくは2個である。このようなヒドラジド系架橋剤に用いられる化合物としては、特に限定されないが、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、ナフタル酸ジヒドラジド、アセトンジカルボン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、トリメリット酸ジヒドラジド、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸ジヒドラジド、ピロメリット酸ジヒドラジド、アコニット酸ジヒドラジドなどのジヒドラジド化合物が好ましく挙げられる。中でも、特に好ましくは、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドである。これらのヒドラジド系架橋剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0182】
前記ヒドラジド系架橋剤は、市販品を用いてもよく、例えば、東京化成工業(株)製「アジピン酸ジヒドラジド(試薬)」、和光純薬工業(株)製「アジポイルジヒドラジド(試薬)」等が使用できる。
【0183】
前記ヒドラジド系架橋剤の配合量(本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物中の含有量)は、アクリルエマルション系重合体の原料モノマーとして用いられるケト基含有不飽和モノマーのケト基1モルに対して、0.025〜2.5モルが好ましく、より好ましくは0.1〜2モル、さらに好ましくは0.2〜1.5モルである。配合量が0.025モル未満では、架橋剤添加の効果が小さく、粘着剤層又は粘着シートが重剥離化するとともに、粘着剤層を形成するポリマーに低分子量成分が残存して、被着体の白化汚染が生じやすくなる場合がある。また2.5モルを超えると、未反応架橋剤成分が汚染の原因となる場合がある。
【0184】
[水分散型アクリル系粘着剤組成物]
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物(粘着剤組成物)は、上述の通り、本発明のアクリルエマルション系重合体、及び、イオン性化合物を必須成分として含有する。さらに、必要に応じて、その他の各種添加剤を含有してよい。
【0185】
なお、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物には、アクリルエマルション系重合体の原料モノマー等と反応(重合)して粘着剤層を形成するポリマーに取り込まれる反応性(重合性)成分以外の、いわゆる非反応性(非重合性)成分(但し、乾燥により揮発して粘着剤層に残存しない水などの成分は除く)は実質的に含まないことが好ましい。非反応性成分が粘着剤層中に残存すると、これらの成分が被着体に転写して、白化汚染の原因となる場合がある。なお、「実質的に含まない」とは、不可避的に混入する場合を除いて積極的に添加しないことをいい、具体的には、これらの非反応性成分の粘着剤組成物(不揮発分)中の含有量は1重量%未満であることが好ましく、より好ましくは0.1重量%未満、さらに好ましくは0.005重量%未満である。
【0186】
前記非反応性成分としては、例えば、特開2006−45412で用いられているリン酸エステル系化合物などの粘着剤層表面にブリードして、剥離性を付与する成分などが挙げられる。また、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウムなどの非反応性乳化剤も挙げられる。
【0187】
なお、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、汚染性に影響を与えない範囲であれば、前記以外の各種添加剤を含有してもよい。各種添加剤としては、例えば、顔料、充填剤、レベリング剤、分散剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、老化防止剤、防腐剤などが挙げられる。
【0188】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物の混合方法としては、公知慣用のエマルションの混合方法を用いることができ、特に限定されないが、例えば、攪拌機を用いた攪拌が好ましい。攪拌条件は、特に限定されないが、例えば、温度は10〜50℃が好ましく、より好ましくは20〜35℃である。攪拌時間は5〜30分が好ましく、より好ましくは10〜20分である。攪拌回転数は、10〜3000rpmが好ましく、より好ましくは30〜1000rpmである。
【0189】
[架橋後のアクリル系粘着剤被膜の溶剤不溶分]
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが50μmになるように塗布した後、120℃で2分間乾燥させ、さらに50℃で3日間エージングして作製した皮膜(「架橋後のアクリル系粘着剤皮膜」、又は、単に「皮膜」と称する場合がある)の溶剤不溶分(ゲル分率)は、低汚染性や再剥離性向上の観点から、90%(重量%)以上であることが好ましく、より好ましくは95重量%以上である。皮膜の溶剤不溶分が90重量%以上である場合、粘着剤組成物は十分に高い架橋度まで架橋するため、粘着剤層(粘着シート)を形成した場合に、被着体への汚染物の転写を低減でき白化汚染を抑制できる。また、重剥離化を抑制し再剥離性が向上する。皮膜の溶剤不溶分の上限値は特に限定されないが、例えば99重量%が好ましい。なお、前記架橋後のアクリル系粘着剤皮膜の溶剤不溶分は、前述のアクリルエマルション系重合体の溶剤不溶分の測定方法と同様の方法で測定することができる。具体的には、前述の「溶剤不溶分の測定方法」において、「アクリルエマルション系重合体」を「架橋後のアクリル系粘着剤皮膜」に読み替えた方法で測定することができる。
【0190】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが50μmになるように塗布した後、120℃で2分間乾燥させ、さらに50℃で3日間エージングして作製した皮膜(架橋後のアクリル系粘着剤皮膜)の23℃における破断伸び(「破断点伸度」とも称する)は、160%以下であり、好ましくは40〜120%、より好ましくは60〜115%である。前記破断伸び(破断点伸度)は粘着剤組成物を架橋させた場合の皮膜の架橋度の目安であり、160%以下であれば、粘着剤層を形成するポリマーの架橋構造が密となる。このため、粘着剤層形成後の粘着剤層のぬれ広がりを防ぐことが可能となる。また、粘着剤層を形成するポリマーが拘束されるため、粘着剤層中の官能基(カルボキシル基)が被着体面に偏析して、被着体との剥離力(粘着力)が経時で上昇することを防ぐことが可能となる。
【0191】
なお、前記架橋後のアクリル系粘着剤皮膜の23℃における破断伸び(破断点伸度)は、引張試験により測定することができる。特に限定されないが、具体的には、例えば、皮膜を丸めて、円柱状のサンプル(長さ50mm、断面積(底面積)1mm2)を作製し、引張試験機を用いて、23℃、50%RHの環境下、初期長(チャック間隔)10mm、引張速度50mm/minの条件で引張試験を行い、破断点の伸びを測定することにより求めうる。
【0192】
前記架橋後のアクリル系粘着剤皮膜は、さらに具体的には、例えば、以下の「架橋後のアクリル系粘着剤皮膜の作製」に従い作製することができる。
【0193】
[架橋後のアクリル系粘着剤皮膜の作製]
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物を、適宜な剥離フィルム上に、乾燥後の厚さが50μmとなるようにコーティングして、その後、熱風循環式オーブンで120℃で2分間乾燥させ、さらに50℃で3日間養生(エージング)を行い、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物の架橋皮膜(架橋後のアクリル系粘着剤皮膜)を作製する。前記剥離フィルムとしては、特に限定されないが、例えば、表面をシリコーン処理したPETフィルムを用いることができ、市販品としては、三菱樹脂(株)製「MRF38」などが挙げられる。
【0194】
[粘着剤層、粘着シート]
本発明の粘着剤層(粘着シート)は、前記再剥離性水分散型アクリル系粘着剤組成物により形成される。粘着剤層の形成方法は特に限定されず、公知慣用の粘着剤層の形成方法を用いることができる。粘着剤層の形成は、支持体(基材)又は剥離フィルム(剥離ライナー)上に、前記粘着剤組成物を塗布した後、乾燥することより形成することができる。なお、粘着剤層を剥離(離型)フィルムに形成した場合には、前記粘着剤層を、支持体(基材)に貼り合せて転写する。
【0195】
前記粘着剤層(粘着シート)の形成にあたって、前記乾燥させる際の温度としては、通常、80〜170℃程度、好ましくは80〜160℃であり、乾燥時間0.5〜30分間程度、好ましくは1〜10分間である。そして、更に、室温〜50℃程度で、1日〜1週間養生(エージング)して、前記粘着剤層(粘着シート)を作製する。
【0196】
前記粘着剤組成物の塗布工程には、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法が挙げられる
【0197】
前記粘着剤層の厚み(乾燥後厚み)としては、通常、1〜100μm程度であり、好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは10〜40μmの範囲に設定される。
【0198】
前記剥離フィルムの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などを挙げることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0199】
前記プラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどが挙げられる。
【0200】
前記剥離フィルムの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。
【0201】
前記剥離フィルムには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記剥離フィルムの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離(離型)処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0202】
前記粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで剥離フィルムで粘着剤層を保護してもよい。なお、前記剥離フィルムは、そのまま粘着型光学フィルムのセパレータとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0203】
前記粘着剤層の溶剤不溶分(ゲル分率)は、前述の架橋後のアクリル系粘着剤皮膜と同様に、90%(重量%)以上が好ましく、より好ましくは95重量%以上である。
【0204】
前記粘着剤層の23℃における破断伸び(破断点伸度)は、前述の架橋後のアクリル系粘着剤皮膜と同様に、160%以下が好ましく、より好ましくは40〜160%、更に40〜150%が好ましく、より更に好ましくは60〜150、特に好ましくは40〜120%、最も好ましくは60〜115%である。
【0205】
また、前記粘着剤層を形成するアクリルポリマー(架橋後)のガラス転移温度(Tg)は、−70〜−10℃が好ましく、より好ましくは−70〜−20℃、さらに好ましくは−70〜−40℃、最も好ましくは−70〜−50℃である。ガラス転移温度が−10℃を超えると粘着力が不足して、加工時などに浮きや剥がれが生じる場合がある。また、−70℃未満ではより高速の剥離速度(引張速度)領域で重剥離化し、作業効率が低下するおそれがある。この粘着層を形成するポリマー(架橋後)のガラス転移温度は、例えば、本発明のアクリルエマルション系重合体を調製する際のモノマー組成によっても調整できる。
【0206】
支持体(「基材」又は「支持基材」ともいう)の少なくとも片面に、前記粘着剤層(本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物から形成された粘着剤層)を設けることにより、粘着シート(基材付きの粘着シート;基材の少なくとも片面側に本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シート)を得ることができる。また、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物から形成された粘着剤層はそれ自体でも基材レスの粘着シートとして使用できる。なお、以下では、前記基材付きの粘着シートを「本発明の粘着シート」と称する場合がある。
【0207】
本発明の粘着シート(前記基材付きの粘着シート)は、例えば、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物を、支持体(基材)の少なくとも片面側の表面に塗布し、必要に応じて、乾燥させ、支持体の少なくとも片面側に粘着剤層を形成することにより得られる(直写法)。架橋は、乾燥工程での脱水、乾燥後に粘着シートを加温すること等により行う。また、剥離フィルム上に一旦粘着剤層を設けた後に支持体上に粘着剤層を転写することによって粘着シートを得ることもできる(転写法)。特に限定されないが、粘着剤層は支持体)表面に粘着剤組成物を直接塗布するいわゆる直写法により設けられることが好ましい。本発明の粘着剤層は溶剤不溶分が高いため、転写法では、支持体との十分な投錨性(密着性)が得られない場合がある。
【0208】
本発明の粘着シートの支持体(基材)としては、高い透明性を有する粘着シートが得られる観点から、プラスチック基材(例えば、プラスチックフィルムやプラスチックシート)が好ましい。プラスチック基材の素材としては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン(ポリオレフィン系樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル(ポリエステル系樹脂)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、アクリル、ポリスチレン、アセテート、ポリエーテルスルホン、トリアセチルセルロースなどの透明樹脂が用いられる。これらの樹脂は、1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。前記の中でも、特に限定されないが、ポリエステル系樹脂やポリオレフィン系樹脂が好ましく、さらに、PET、ポリプロピレンおよびポリエチレンが、生産性、成型性の面から好ましく用いられる。即ち、支持体(基材)としては、ポリエステル系フィルムやポリオレフィン系フィルムが好ましく、さらに、PETフィルム、ポリプロピレンフィルムやポリエチレンフィルムが好ましい。前記ポリプロピレンとしては、特に限定されないが、単独重合体であるホモタイプ、α−オレフィンランダム共重合体であるランダムタイプ、α−オレフィンブロック共重合体であるブロックタイプのものが挙げられる。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、リニア低密度ポリエチレン(L−LDPE)が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0209】
前記支持体の厚みは、特に限定されないが、10〜150μmが好ましく、より好ましくは30〜100μmである。
【0210】
また、前記支持体の粘着剤層を設ける側の表面には、粘着剤層との密着力の向上等の目的で、酸処理、アルカリ処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの易接着処理が施されていることが好ましい。また、支持体と粘着剤層の間に、中間層を設けてもよい。この中間層の厚さとしては、例えば0.01〜1μmが好ましく、0.05〜1μmがより好ましく、更に好ましくは0.1〜1μmである。
【0211】
本発明の粘着シートは巻回体とすることができ、剥離フィルム(セパレータ)で粘着剤層を保護した状態でロール状に巻き取ることができる。また、粘着シートの背面(粘着剤層が設けられた側とは反対側の面)にはシリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系若しくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による、離型処理及び/又は防汚処理を施し、背面処理層(離型処理層、防汚処理層など)が設けられていてもよい。本発明の粘着シートとしては、中でも、粘着剤層/支持体/背面処理層の形態が好ましい。
【0212】
さらに、本発明の粘着シートは、帯電防止処理されてなるものがより好ましい。前記の帯電防止処理としては、一般的な帯電防止処理方法を用いることが可能であり、特に限定されないが、例えば、支持体背面(粘着剤層とは反対側の面)に帯電防止層を設ける方法や、支持体に練り込み型帯電防止剤を練り込む方法を用いることができる。
【0213】
帯電防止層を設ける方法としては、帯電防止剤又は帯電防止剤と樹脂成分を含有する帯電防止性樹脂、導電性物質と樹脂成分とを含有する導電性樹脂組成物や導電性ポリマーを塗布する方法や、導電性物質を蒸着あるいはメッキする方法等が挙げられる。
【0214】
前記帯電防止剤としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩などのカチオン性官能基(例えば、第1アミノ基、第2アミノ基、第3アミノ基等)を有するカチオン型帯電防止剤;スルホン酸塩や硫酸エステル塩、ホスホン酸塩、りん酸エステル塩などのアニオン性官能基を有するアニオン型帯電防止剤;アルキルベタインおよびその誘導体、イミダゾリンおよびその誘導体、アラニンおよびその誘導体などの両性イオン型帯電防止剤;アミノアルコールおよびその誘導体、グリセリンおよびその誘導体、ポリエチレングリコールおよびその誘導体などのノニオン型帯電防止剤;更には、前記カチオン型帯電防止剤、アニオン型帯電防止剤、両性イオン型帯電防止剤で示すイオン導電性基を有するモノマーを重合もしくは共重合して得られたイオン導電性重合体が挙げられる。
【0215】
具体的には、前記カチオン型帯電防止剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アシロイルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、アルキルベンジルメチルアンモニウム塩、アシル塩化コリン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートなどの4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレート共重合体、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム基を有するスチレン系共重合体、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム基を有するジアリルアミン共重合体などが挙げられる。前記アニオン型帯電防止剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエトキシ硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、スルホン酸基含有スチレン系共重合体などが挙げられる。前記両性イオン型帯電防止剤としては、アルキルベタ
イン、アルキルイミダゾリウムベタイン、カルボベタイングラフト共重合体などが挙げられる。前記ノニオン型帯電防止剤としては、脂肪酸アルキロールアミド、ジ−(2−ヒドロキシエチル)アルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、脂肪酸グリセリンエステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンジアミン、ポリエーテルとポリエステルとポリアミドから成る共重合体、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0216】
前記導電性ポリマーとしては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどが挙げられる。
【0217】
前記導電性物質としては、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化チタン、酸化亜鉛、インジウム、錫、アンチモン、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト、ヨウ化銅、およびそれらの合金または混合物などが挙げられる。
【0218】
前記樹脂成分としては、ポリエステル、アクリル、ポリビニル、ウレタン、メラミン、エポキシなどの汎用樹脂が用いられる。なお、帯電防止剤が高分子型帯電防止剤の場合には、帯電防止性樹脂には前記樹脂成分を含有させなくてもよい。また、帯電防止樹脂には、架橋剤としてメチロール化あるいはアルキロール化したメラミン系、尿素系、グリオキザール系、アクリルアミド系などの化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物を含有させることも可能である。
【0219】
前記帯電防止層の塗布による形成方法としては、前記帯電防止性樹脂、導電性ポリマー、導電性樹脂組成物を、有機溶剤もしくは水などの溶媒又は分散媒で希釈し、この塗液を支持体(基材)に塗布、乾燥する方法が挙げられる。前記有機溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサノン、n−ヘキサン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどが挙げられる。これらは単独、もしくは複数を組み合わせて使用することが可能である。塗布方法については公知の塗布方法が用いられ、具体的には、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート、含浸およびカーテンコート法が挙げられる。
【0220】
前記の塗布により形成される帯電防止層(帯電防止性樹脂層、導電性ポリマー層、導電性樹脂組成物層)の厚みは、0.001〜5μmが好ましく、より好ましくは0.005〜1μmである。
【0221】
前記導電性物質の蒸着あるいはメッキの方法としては、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、化学蒸着、スプレー熱分解、化学メッキ、電気メッキ法などが挙げられる。
【0222】
前記蒸着あるいはメッキにより形成される帯電防止層(導電性物質層)の厚みは、20〜10000Å(0.002〜1μm)が好ましく、より好ましくは50〜5000Å(0.005〜0.5μm)である。
【0223】
前記練り込み型帯電防止剤としては、前記帯電防止剤が適宜用いられる。前記練り込み型帯電防止剤の配合量は、支持体(基材)の総重量(100重量%)に対して、20重量%以下が好ましく、より好ましくは0.05〜10重量%である。練り込み方法としては、前記練り込み型帯電防止剤が、例えばプラスチック基材に用いられる樹脂に均一に混合できる方法であれば特に限定されず、一般的には加熱ロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、二軸混練機等を用いた方法などが挙げられる。
【0224】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、帯電防止性、接着性、及び、再剥離性(易剥離性)に優れ、再剥離が可能な粘着剤層を形成しうる粘着剤組成物であり、再剥離される用途に用いられる粘着剤層を形成するため(再剥離用)に好ましく用いられる。即ち、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物より形成された粘着剤層を有する粘着シートは再剥離される用途[例えば、建築養生用マスキングテープ、自動車塗装用マスキングテープ、電子部品(リードフレーム、プリント基板等)用マスキングテープ、サンドブラスト用マスキングテープなどのマスキングテープ類、アルミサッシ用表面保護フィルム、光学プラスチック用表面保護フィルム、光学ガラス用表面保護フィルム、自動車保護用表面保護フィルム、金属板用表面保護フィルムなどの表面保護フィルム類、バックグラインドテープ、ペリクル固定用テープ、ダイシング用テープ、リードフレーム固定用テープ、クリーニングテープ、除塵用テープ、キャリアテープ、カバーテープなどの半導体・電子部品製造工程用粘着テープ類、電子機器や電子部品の梱包用テープ類、輸送時の仮止めテープ類、結束用テープ類、ラベル類]等に好ましく用いられる。
【0225】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物から形成された粘着剤層及び本発明の粘着シートは、「凹み」などの外観不良が低減されており、外観特性に優れる。さらに、被着体に貼付され用いられる場合に、被着体に白化汚染などの汚染が生じず、低汚染性に優れる。このため、本発明の粘着シートは、特に優れた外観特性や低汚染性が要求される、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)、フィールドエミッションディスプレイなどのパネルを構成する偏光板、位相差板、反射防止板、波長板、光学補償フィルム、輝度向上フィルムなど光学部材(光学プラスチック、光学ガラス、光学フィルム等)の表面保護用途(光学部材用の表面保護フィルム等)として好ましく用いられる。ただし、用途はこれに限定されるものではなく、半導体、回路、各種プリント基板、各種マスク、リードフレームなどの微細加工部品の製造の際の表面保護や破損防止、あるいは異物等の除去、マスキング等にも使用することができる。
【実施例】
【0226】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、以下の説明において、「部」および「%」は、特に明記のない限り、重量基準である。なお、評価については、それぞれ以下に示す第1〜3発明群に分けて評価を行った。
【0227】
<第1発明群>
<実施例1−1>
(アクリルエマルション系重合体の調製)
容器に、水90重量部、及び、表1に示すように、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)94重量部、メチルメタクリレート(MMA)2重量部、アクリル酸(AA)4重量部、反応性ノニオンアニオン系乳化剤(第一工業製薬(株)製、商品名「アクアロンHS−10」)6重量部を配合した後、ホモミキサーにより攪拌混合し、モノマーエマルションを調製した。次いで、冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器に、水50重量部、重合開始剤(過硫酸アンモニウム)0.01重量部、及び、前記調製したモノマーエマルションのうち10重量%にあたる量を添加し、攪拌しながら、75℃で1時間乳化重合した。その後、さらに重合開始剤(過硫酸アンモニウム)0.07重量部を添加し、次いで、攪拌しながら、残りのモノマーエマルションの全て(90重量%にあたる量)を3時間かけて添加して、その後、75℃で3時間反応させた。次いで、これを30℃に冷却して、濃度10重量%のアンモニア水を加えてpH8に調整して、アクリルエマルション系重合体の水分散液を調製した。
【0228】
(水分散型アクリル系粘着剤組成物の調製)
前記得られたアクリルエマルション系重合体の水分散液に、アクリルエマルション系重合体(固形分)100重量部に対して、イオン液体[日本カーリット(株)製、「CIL−313、N−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート(水溶性イオン液体)]2重量部、非水溶性架橋剤であるエポキシ系架橋剤[三菱ガス化学(株)製、商品名「テトラッド−C」、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エポキシ当量:110、官能基数:4]3重量部を、攪拌機を用いて、23℃、300rpm、10分の攪拌条件で攪拌混合し、その後フィルター[東洋濾紙(株)製、商品名「コンパクトカートリッジフィルターMCP−1−C10S」]でろ過し、水分散型アクリル系粘着剤組成物を調製した。
【0229】
(粘着剤層の形成、粘着シートの作製)
更に、前記得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物を、PETフィルム(東洋紡績(株)製、商品名「E7415」、厚さ:38μm)のコロナ処理面上に、テスター産業(株)製アプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが15μmとなるように塗布(コーティング)し、その後、熱風循環式オーブンを用いて、120℃で2分間乾燥させ、その後、50℃で3日間養生(エージング)して粘着シートを得た。
【0230】
<実施例1−2〜1−8、及び比較例1−1〜1−6>
表1、及び表2に示すように、原料モノマー及び乳化剤の種類、配合量等を変更し、実施例1−1と同様にして、モノマーエマルションを調製した。また、前記モノマーエマルションを用い、実施例1−1と同様にして、水分散型アクリル系粘着剤組成物および粘着シートを得た。なお、各実施例、比較例で得られたアクリルエマルション系重合体の溶剤不溶分および溶剤可溶分の重量平均分子量(Mw)は表1、及び表2に示したとおりである。
【0231】
[評価]
実施例および比較例で得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物および粘着シートについて、下記の測定方法又は評価方法により評価を行った。なお、評価結果は、表1、及び表2に示した。
【0232】
(1)架橋後のアクリル系粘着剤皮膜の破断伸び(架橋後のアクリル系粘着剤皮膜の作製)
実施例および比較例で得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物を、シリコーンで表面処理したPETフィルム(三菱樹脂(株)製、「MRF38」)のシリコーン処理面上に、乾燥後の厚さが50μmとなるようにコーティングして、その後、熱風循環式オーブンで120℃で2分間乾燥させて、50℃で3日間養生を行い、架橋皮膜(架橋後のアクリル系粘着剤皮膜)を得た。
【0233】
(破断伸びの測定)
次いで、前記架橋皮膜(架橋後のアクリル系粘着剤皮膜)を丸めて、円柱状のサンプル(長さ50mm、断面積(底面積)1mm2)を作製した。
引張試験機を用いて、23℃、50%RHの環境下、測定を行った。測定の初期長(初期のチャック間隔)が10mmとなるように、チャックを設定し、引張速度50mm/minの条件で引張試験を行い、破断点の伸び[破断伸び(破断点伸度)]を測定した。
なお、破断伸び(破断点伸度)は、引張試験で、試験片(架橋皮膜の円柱状サンプル)が破断したときの伸びを表し、下記の式で計算される。「破断伸び(破断点伸度)」(%)=(「破断時の試験片の長さ(破断時のチャック間隔)」−「初期長(10mm)」)÷「初期長(10mm)」×100
【0234】
(2)架橋後のアクリル系粘着剤皮膜の溶剤不溶分
前記(1)と同じ方法で、架橋皮膜(架橋後のアクリル系粘着剤皮膜)を作製した。
次いで、前述の「溶剤不溶分の測定方法」に従って、前記架橋皮膜の溶剤不溶分を測定した。
前記架橋皮膜(架橋後のアクリル系粘着剤皮膜):約0.1gを採取し、平均孔径0.2μmの多孔質テトラフルオロエチレンシート(商品名「NTF1122」、日東電工株式会社製)に包んだ後、凧糸で縛り、その際の重量を測定し、該重量を浸漬前重量とした。なお、該浸漬前重量は、架橋皮膜(前記で採取したもの)と、テトラフルオロエチレンシートと、凧糸の総重量である。また、テトラフルオロエチレンシートと凧糸の合計重量も測定しておき、該重量を包袋重量とした。
次に、前記の架橋皮膜をテトラフルオロエチレンシートで包み、凧糸で縛ったもの(「サンプル」と称する)を、酢酸エチルで満たした50ml容器に入れ、23℃にて7日間静置した。その後、容器からサンプル(酢酸エチル処理後)を取り出して、アルミニウム製カップに移し、130℃で2時間、乾燥機中で乾燥して酢酸エチルを除去した後、重量を測定し、該重量を浸漬後重量とした。そして、下記の式から溶剤不溶分を算出した。
溶剤不溶分(重量%)=(d−e)/(f−e)×100(前記の式において、dは浸漬後重量であり、eは包袋重量であり、fは浸漬前重量である。)
【0235】
(3)剥離帯電圧
作製した粘着シートを幅70mm、長さ130mmのサイズにカットし、セパレータを剥離した後、あらかじめ除電しておいたアクリル板(三菱レイヨン社製、アクリライト、厚み:1mm、幅:70mm、長さ:100mm)に貼り合わせた偏光板(日東電工(株)製、商品名「SEG1425DU」表面に、片方の端部が30mmはみ出すようにハンドローラーにて圧着した。続いて、23℃×24±2%RHの環境下に一日放置した後、図1に示すように所定の位置にサンプルをセットする。30mmはみ出した片方の端部を自動巻取り機に固定し、剥離角度150°、剥離速度10m/minとなるように剥離した。このときに発生する偏光板表面の電位を所定の位置に固定してある電位測定機(春日電機社製、KSD−0103)にて測定した。サンプルと電位測定機との距離はアクリル板表面測定時100mmとした。なお、測定は23℃×24±2%RHの環境下で行った。
【0236】
なお、本発明の粘着シートの剥離帯電圧(絶対値)としては、1.0kV以下であることが好ましく、より好ましくは0.8kV以下である。前記剥離帯電圧が1.0kVを超えると、粘着シート剥離時に埃を吸着し易くなり、好ましくない。
【0237】
(4)剥離力(粘着力)上昇防止性(初期剥離力)
作製した粘着シートを幅25mm、長さ100mmのサイズにカットし、セパレータを剥離した後、貼り合わせ機(テスター産業(株)製、小型貼り合わせ機)を用いて、偏光板(日東電工社製、SEG1425DU、幅:70mm、長さ:100mm)に0.25MPa、0.3m/minの条件でラミネートし、評価サンプルを作製した。ラミネート後、23℃×50%RHの環境下に30分間放置した後、万能引張試験機にて剥離速度10m/min、剥離角度180°で剥離したときの剥離力(粘着力)(N/25mm)を測定し、「初期剥離力」とした。測定は23℃×50%RHの環境下で行った。
【0238】
なお、本発明の粘着シートの初期剥離力としては、0.1〜1.5N/25mmであることが好ましく、より好ましくは 0.2〜1.2N/25mmである。前記剥離力を1.5N/25mm以下とすることにより、偏光板や液晶表示装置の製造工程で、粘着シートを剥離しやすく、生産性、取り扱い性が向上するため好ましい。また、0.1N/25mm以上とすることにより、製造工程で粘着シートの浮きや剥がれが抑制され、表面保護用の粘着シートとしての保護機能を十分に発揮できるため好ましい。
【0239】
(40℃×1週間貼付保存後の剥離力:経時剥離力)
また、前記の粘着シートと偏光板との貼り合わせサンプルを、40℃の環境下に、1週間保存した後、23℃50%RHの環境下に2時間放置した後、剥離速度10m/minにて180°剥離試験を行い、粘着シートの偏光板に対する剥離力(粘着力)(N/25mm)を測定し、「経時剥離力」とした。
【0240】
なお、初期剥離力と、経時剥離力との差[(経時剥離力)−(初期剥離力)]が、0.5N/25mm未満であれば、剥離力(粘着力)上昇防止性が優れていると判断できる。なお、本発明の粘着シートの経時剥離力と初期剥離力との差[(経時剥離力)−(初期剥離力)]は、0.5N/25mm未満が好ましく、より好ましくは0.0〜0.2N/25mmである。前記差が0.5N/25mm以上では、剥離力(粘着力)上昇防止性に劣り、粘着シートの再剥離作業性が低下する場合がある。
【0241】
(5)汚染性(白化)[加湿試験]
実施例および比較例で得られた粘着シート(サンプルサイズ:25mm幅×100mm長さ)を、貼り合わせ機(テスター産業(株)製、小型貼り合せ機)を用いて、0.25MPa、0.3m/minの条件で、偏光板(日東電工(株)製、商品名「SEG1425DU」、サイズ:70mm幅×120mm長さ)上に貼り合わせた。
【0242】
前記粘着シートを貼り合わせた偏光板を、粘着シートを貼り合わせたまま、80℃で4時間放置した後、粘着シートを剥離した。その後、粘着シートを剥離した偏光板を加湿環境下(23℃、90%RH)で12時間放置し、偏光板表面を目視にて観察し、以下の基準で低汚染性を評価した。粘着シートの貼付・剥離後に、加湿条件(高湿度条件)下、被着体である偏光板に白化が生じる場合には、光学部材の表面保護フィルム用途としては低汚染性が十分ではない。
低汚染性良好(○):粘着シートを貼付した部分と貼付していない部分で変化が見られなかった。
低汚染性やや不良(△):粘着シートを貼付した部分に薄く白化が見られた。
低汚染性不良(×):粘着シートを貼付した部分にはっきりと白化が見られた。
【0243】
(6)外観(凹みの有無)
実施例および比較例で得られた粘着シートの、粘着剤層表面の状態を目視で観察した。縦10cm×横10cmの観察範囲内の欠点(凹み)の個数を測定し、以下の基準で評価した。薄く
欠点個数が0〜100個:外観が良好である(○)。
欠点個数が101個以上:外観が悪い(×)。
【0244】
【表1】

【0245】
【表2】

【0246】
表1、及び表2において、重合開始剤、乳化剤、架橋触媒の配合量、添加量は、実配合量(商品の配合量)で示した。なお、アクリルエマルション系重合体は固形分の重量で示した。
【0247】
なお、表1中の配合内容については、固形分の重量を示した。なお、表1で用いた略号は、以下のとおりである。
2EHA :2−エチルヘキシルアクリレート(アクリル酸2−エチルヘキシル)
MMA :メチルメタクリレート(メタクリル酸メチル)
Vac :酢酸ビニル
DEAA :ジエチルアクリルアミド
AA :アクリル酸
HS10:第一工業製薬(株)製、商品名「アクアロンHS−10」(反応性ノニオンアニオン系乳化剤)
SE−10N:(株)ADEKA製、商品名「アデカリアソープSE−10N」(反応性ノニオンアニオン系乳化剤)
T/C(テトラッドC):三菱ガス化学(株)製、商品名「TETRAD−C」(1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エポキシ当量:110、官能基数:4)
T/X(テトラッドX):三菱ガス化学(株)製、商品名「TETRAD−X」(1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン、エポキシ当量:100、官能基数:4)
CC−36:(株)ADEKA製、商品名「アデカコール CC−36」(ポリエーテル型第4級アンモニウムクロライド)
CIL−313:日本カーリット(株)製、N−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート(水溶性)
EtMePy−EF21:三菱マテリアル電子化成(株)製、N−エチル−3−メチルピリジニウムパーフルオロエタンスルホネート(水溶性)
EMI−EF31:三菱マテリアル電子化成(株)製、N−エチル−3−メチルイミダゾリウムパーフルオロプロパンスルホネート(水溶性)
IL−130:第一工業製薬(株)製、1−メチル−1−プロピルピペリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(非水溶性)
25R−1:(株)ADEKA製、商品名「アデカプルロニック 25R−1」(PO含有率:90重量%、数平均分子量:2800、ポリエーテル型消泡剤)
17R−4:(株)ADEKA製、商品名「アデカプルロニック 17R−4」(PO含有率:60重量%、数平均分子量:2500、ポリエーテル型消泡剤)
【0248】
表1の結果より、実施例においては、帯電防止性、粘着特性、経時での剥離力(粘着力)上昇防止性に優れ、さらに、外観特性、及び低汚染性に優れた粘着シートを得られることが確認できた。
【0249】
一方、表2の結果より、比較例1−1においては、特定のモノマー(メタクリ酸メチル等)や水溶性(親水性)イオン液体を配合していないため、帯電防止性や外観特性に劣る結果となった。また、比較例1−2においては、特定のモノマー(メタクリ酸メチル等)を配合しておらず、かつ、疎水性イオン液体を配合しているため、汚染性や外観特性に劣る結果となった。比較例1−3においては、特定のモノマー(メタクリ酸メチル等)や水溶性(親水性)イオン液体を配合せず、更に架橋触媒である第4級アンモニウム塩を配合したため、帯電防止性や汚染性、外観特性においても劣る結果となった。特に、前記架橋触媒を配合したため、汚染性が劣る結果となった。比較例1−4においては、水溶性(親水性)イオン液体を配合していないため、帯電防止性に劣る結果となった。また、アクリルエマルション系共重合体の溶剤可溶分重量平均分子量が高いため、汚染性がやや劣る結果となった。また、比較例1−5においては、特定のモノマー(メタクリ酸メチル等)を配合しなかったため、外観特性が劣る結果となった。比較例1−6においては、特定モノマー(メタクリ酸メチル等)を配合せず、かつ、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの配合量も所望の範囲を超えたため、粘着特性や剥離力上昇防止性、外観特性、汚染性に劣る結果となった。また、水溶性(親水性)イオン液体を配合しなかったため、帯電防止性も劣る結果となった。
【0250】
<第2発明群>
<実施例2−1>
(アクリルエマルション系重合体の調製)
容器に、水90重量部、及び、表3に示すように、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)94重量部、メチルメタクリレート(MMA)2重量部、アクリル酸(AA)4重量部、反応性ノニオンアニオン系乳化剤(第一工業製薬(株)製、商品名「アクアロンHS−10」)6重量部を配合した後、ホモミキサーにより攪拌混合し、モノマーエマルションを調製した。次いで、冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器に、水50重量部、重合開始剤(過硫酸アンモニウム)0.01重量部、及び、前記調製したモノマーエマルションのうち10重量%にあたる量を添加し、攪拌しながら、75℃で1時間乳化重合した。その後、さらに重合開始剤(過硫酸アンモニウム)0.07重量部を添加し、次いで、攪拌しながら、残りのモノマーエマルションの全て(90重量%にあたる量)を3時間かけて添加して、その後、75℃で3時間反応させた。次いで、これを30℃に冷却して、濃度10重量%のアンモニア水を加えてpH8に調整して、アクリルエマルション系重合体の水分散液を調製した。
【0251】
(水分散型アクリル系粘着剤組成物の調製)
前記得られたアクリルエマルション系重合体の水分散液に、アクリルエマルション系重合体(固形分)100重量部に対して、イオン液体[第一工業製薬(株)製、「IL−110、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(非水溶性イオン液体)]0.5重量部、非水溶性架橋剤であるエポキシ系架橋剤[三菱ガス化学(株)製、商品名「テトラッド−C」、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エポキシ当量:110、官能基数:4]3重量部を、攪拌機を用いて、23℃、300rpm、10分の攪拌条件で攪拌混合し、水分散型アクリル系粘着剤組成物を調製した。
【0252】
(粘着剤層の形成、粘着シートの作製)
更に、前記得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物を、PETフィルム(東洋紡績(株)製、商品名「E7415」、厚さ:38μm)のコロナ処理面上に、テスター産業(株)製アプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが15μmとなるように塗布(コーティング)し、その後、熱風循環式オーブンを用いて、120℃で2分間乾燥させ、その後、50℃で3日間養生(エージング)して粘着シートを得た。
【0253】
<実施例2−2〜2−8、及び比較例2−1〜2−5>
表3、及び表4に示すように、原料モノマー及び乳化剤の種類、配合量等を変更し、実施例2−1と同様にして、モノマーエマルションを調製した。また、前記モノマーエマルションを用い、実施例2−1と同様にして、水分散型アクリル系粘着剤組成物および粘着シートを得た。なお、各実施例、比較例で得られたアクリルエマルション系重合体の溶剤不溶分および溶剤可溶分の重量平均分子量(Mw)は表3、及び表4に示したとおりである。
【0254】
[評価]
実施例および比較例で得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物および粘着シートについて、下記の測定方法又は評価方法により評価を行った。なお、評価結果は、表3、及び表4に示した。
【0255】
(1)架橋後のアクリル系粘着剤皮膜の破断伸び(架橋後のアクリル系粘着剤皮膜の作製)
実施例および比較例で得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物を、シリコーンで表面処理したPETフィルム(三菱樹脂(株)製、「MRF38」)のシリコーン処理面上に、乾燥後の厚さが50μmとなるようにコーティングして、その後、熱風循環式オーブンで120℃で2分間乾燥させて、50℃で3日間養生を行い、架橋皮膜(架橋後のアクリル系粘着剤皮膜)を得た。
【0256】
(破断伸びの測定)
次いで、前記架橋皮膜(架橋後のアクリル系粘着剤皮膜)を丸めて、円柱状のサンプル(長さ50mm、断面積(底面積)1mm2)を作製した。
引張試験機を用いて、23℃、50%RHの環境下、測定を行った。測定の初期長(初期のチャック間隔)が10mmとなるように、チャックを設定し、引張速度50mm/minの条件で引張試験を行い、破断点の伸び[破断伸び(破断点伸度)]を測定した。
なお、破断伸び(破断点伸度)は、引張試験で、試験片(架橋皮膜の円柱状サンプル)が破断したときの伸びを表し、下記の式で計算される。「破断伸び(破断点伸度)」(%)=(「破断時の試験片の長さ(破断時のチャック間隔)」−「初期長(10mm)」)÷「初期長(10mm)」×100
【0257】
(2)架橋後のアクリル系粘着剤皮膜の溶剤不溶分
前記(1)と同じ方法で、架橋皮膜(架橋後のアクリル系粘着剤皮膜)を作製した。
次いで、前述の「溶剤不溶分の測定方法」に従って、前記架橋皮膜の溶剤不溶分を測定した。
前記架橋皮膜(架橋後のアクリル系粘着剤皮膜):約0.1gを採取し、平均孔径0.2μmの多孔質テトラフルオロエチレンシート(商品名「NTF1122」、日東電工株式会社製)に包んだ後、凧糸で縛り、その際の重量を測定し、該重量を浸漬前重量とした。なお、該浸漬前重量は、架橋皮膜(前記で採取したもの)と、テトラフルオロエチレンシートと、凧糸の総重量である。また、テトラフルオロエチレンシートと凧糸の合計重量も測定しておき、該重量を包袋重量とした。
次に、前記の架橋皮膜をテトラフルオロエチレンシートで包み凧糸で縛ったもの(「サンプル」と称する)を、酢酸エチルで満たした50ml容器に入れ、23℃にて7日間静置した。その後、容器からサンプル(酢酸エチル処理後)を取り出して、アルミニウム製カップに移し、130℃で2時間、乾燥機中で乾燥して酢酸エチルを除去した後、重量を測定し、該重量を浸漬後重量とした。そして、下記の式から溶剤不溶分を算出した。
溶剤不溶分(重量%)=(d−e)/(f−e)×100(前記の式において、dは浸漬後重量であり、eは包袋重量であり、fは浸漬前重量である。)
【0258】
(3)剥離帯電圧
作製した粘着シートを幅70mm、長さ130mmのサイズにカットし、セパレータを剥離した後、あらかじめ除電しておいたアクリル板(三菱レイヨン社製、アクリライト、厚み:1mm、幅:70mm、長さ:100mm)に貼り合わせた偏光板(日東電工(株)製、商品名「SEG1425DU」表面に、片方の端部が30mmはみ出すようにハンドローラーにて圧着した。続いて、23℃×24±2%RHの環境下に一日放置した後、図1に示すように所定の位置にサンプルをセットする。30mmはみ出した片方の端部を自動巻取り機に固定し、剥離角度150°、剥離速度10m/minとなるように剥離した。このときに発生する偏光板表面の電位を所定の位置に固定してある電位測定機(春日電機社製、KSD−0103)にて測定した。サンプルと電位測定機との距離はアクリル板表面測定時100mmとした。なお、測定は23℃×24±2%RHの環境下で行った。
【0259】
なお、本発明の粘着シートの剥離帯電圧(絶対値)としては、1.0kV以下であることが好ましく、より好ましくは0.8kV以下である。前記剥離帯電圧が1.0kVを超えると、粘着シート剥離時に埃を吸着し易くなり、好ましくない。
【0260】
(4)剥離力(粘着力)上昇防止性(初期剥離力)
作製した粘着シートを幅25mm、長さ100mmのサイズにカットし、セパレータを剥離した後、貼り合わせ機(テスター産業(株)製、小型貼り合わせ機)を用いて、偏光板(日東電工社製、SEG1425DU、幅:70mm、長さ:100mm)に0.25MPa、0.3m/minの条件でラミネートし、評価サンプルを作製した。ラミネート後、23℃×50%RHの環境下に30分間放置した後、万能引張試験機にて剥離速度10m/min、剥離角度180°で剥離したときの剥離力(粘着力)(N/25mm)を測定し、「初期剥離力」とした。測定は23℃×50%RHの環境下で行った。
【0261】
なお、本発明の粘着シートの初期剥離力としては、0.1〜1.5N/25mmであることが好ましく、より好ましくは 0.2〜1.2N/25mmである。前記剥離力を1.5N/25mm以下とすることにより、偏光板や液晶表示装置の製造工程で、粘着シートを剥離しやすく、生産性、取り扱い性が向上するため好ましい。また、0.1N/25mm以上とすることにより、製造工程で粘着シートの浮きや剥がれが抑制され、表面保護用の粘着シートとしての保護機能を十分に発揮できるため好ましい。
【0262】
(40℃×1週間貼付保存後の剥離力:経時剥離力)
また、前記の粘着シートと、偏光板との貼り合わせサンプルを、40℃の環境下に、1週間保存した後、23℃50%RHの環境下に2時間放置した後、剥離速度10m/minにて180°剥離試験を行い、粘着シートの偏光板に対する剥離力(粘着力)(N/25mm)を測定し、「経時剥離力」とした。
【0263】
なお、初期剥離力と、経時剥離力との差[(経時剥離力)−(初期剥離力)]が、0.5N/25mm未満であれば、剥離力(粘着力)上昇防止性が優れていると判断できる。なお、本発明の粘着シートの経時剥離力と初期剥離力との差[(経時剥離力)−(初期剥離力)]は、0.5N/25mm未満が好ましく、より好ましくは0.0〜0.2N/25mmである。前記差が0.5N/25mm以上では、剥離力(粘着力)上昇防止性に劣り、粘着シートの再剥離作業性が低下する場合がある。
【0264】
(5)汚染性(白化)[加湿試験]
実施例および比較例で得られた粘着シート(サンプルサイズ:25mm幅×100mm長さ)を、貼り合わせ機(テスター産業(株)製、小型貼り合せ機)を用いて、0.25MPa、0.3m/minの条件で、偏光板(日東電工(株)製、商品名「SEG1425DU」、サイズ:70mm幅×120mm長さ)上に貼り合わせた。
【0265】
前記粘着シートを貼り合わせた偏光板を、粘着シートを貼り合わせたまま、80℃で4時間放置した後、粘着シートを剥離した。その後、粘着シートを剥離した偏光板を加湿環境下(23℃、90%RH)で12時間放置し、偏光板表面を目視にて観察し、以下の基準で低汚染性を評価した。粘着シートの貼付・剥離後に、加湿条件(高湿度条件)下、被着体である偏光板に白化が生じる場合には、光学部材の表面保護フィルム用途としては低汚染性が十分ではない。
低汚染性良好(○):粘着シートを貼付した部分と貼付していない部分で変化が見られなかった。
低汚染性やや不良(△):粘着シートを貼付した部分に薄く白化が見られた。
低汚染性不良(×):粘着シートを貼付した部分にはっきりと白化が見られた。
【0266】
(6)外観(凹み・ゲル物の有無)
実施例および比較例で得られた粘着シートの、粘着剤層表面の状態を目視で観察した。縦10cm×横10cmの観察範囲内の欠点(凹み及びゲル物)の個数を測定し、以下の基準で評価した。薄く
欠点個数が0〜100個:外観が良好である(○)。
欠点個数が101個以上:外観が悪い(×)。
【0267】
【表3】

【0268】
【表4】

【0269】
表3、及び表4において、重合開始剤、乳化剤、架橋触媒の配合量、添加量は、実配合量(商品の配合量)で示した。なお、アクリルエマルション系重合体は固形分の重量で示した。
【0270】
なお、表3中の配合内容については、固形分の重量を示した。なお、表3で用いた略号は、以下のとおりである。
2EHA :2−エチルヘキシルアクリレート(アクリル酸2−エチルヘキシル)
MMA :メチルメタクリレート(メタクリル酸メチル)
Vac :酢酸ビニル
DEAA :ジエチルアクリルアミド
AA :アクリル酸
HS10:第一工業製薬(株)製、商品名「アクアロンHS−10」(反応性ノニオンアニオン系乳化剤)
SE−10N:(株)ADEKA製、商品名「アデカリアソープSE−10N」(反応性ノニオンアニオン系乳化剤)
T/C(テトラッドC):三菱ガス化学(株)製、商品名「TETRAD−C」(1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エポキシ当量:110、官能基数:4、非水溶性架橋剤)
T/X(テトラッドX):三菱ガス化学(株)製、商品名「TETRAD−X」(1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン、エポキシ当量:100、官能基数:4、非水溶性架橋剤)
CC−36:(株)ADEKA製、商品名「アデカコール CC−36」(ポリエーテル型第4級アンモニウムクロライド、架橋触媒)
IL−110:第一工業製薬(株)製、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(非水溶性イオン液体)
IL−120:第一工業製薬(株)製、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(非水溶性イオン液体)
IL−130:第一工業製薬(株)製、1−メチル−1−プロピルピペリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(非水溶性イオン液体)
25R−1:(株)ADEKA製、商品名「アデカプルロニック 25R−1」(オキシプロピレン基含有率:90重量%、数平均分子量:2800、ポリエーテル型消泡剤)
17R−4:(株)ADEKA製、商品名「アデカプルロニック 17R−4」(オキシプロピレン基含有率:60重量%、数平均分子量:2500、ポリエーテル型消泡剤)
【0271】
表3の結果より、実施例においては、帯電防止性、粘着特性、経時での剥離力(粘着力)上昇防止性に優れ、さらに、外観特性、及び低汚染性に優れた粘着シートを得られることが確認できた。
【0272】
一方、表4の結果より、比較例2−1においては、特定のモノマーや非水溶性イオン液体を配合しなかったため、帯電防止性や外観特性に劣る結果となった。また、比較例2−2においては、特定のモノマーを配合しなかったため、汚染性や外観特性に劣る結果となった。比較例2−3においては、非水溶性イオン液体を配合しなかったため、帯電防止性に劣る結果となった。また、架橋触媒である第4級アンモニウム塩を配合したため、汚染性に劣る結果となった。比較例2−4においては、非水溶性イオン液体を配合していないため、帯電防止性に劣る結果となった。また、比較例2−5においては、非水溶性イオン液体や、特定モノマーを特定の割合配合しなかったため、帯電防止性だけでなく、粘着特性や剥離力上昇防止性、外観特性、汚染性においても劣る結果となった。
【0273】
<第3発明群>
<実施例3−1>
(アクリルエマルション系重合体
の調製)
容器に、水90重量部、及び、表5に示すように、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)92重量部、メタクリル酸メチル(MMA)4重量部、アクリル酸(AA)4重量部、反応性ノニオンアニオン系乳化剤(第一工業製薬(株)製、商品名「アクアロンHS−10」)3重量部を配合した後、ホモミキサーにより攪拌混合し、モノマーエマルションを調製した。
【0274】
次いで、冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器に、水50重量部、重合開始剤(過硫酸アンモニウム)0.01重量部、及び、前記モノマーエマルションのうち、10重量%にあたる量を添加し、攪拌しながら、65℃で1時間乳化重合した。その後、さらに重合開始剤(過硫酸アンモニウム)0.05重量部を添加し、次いで、攪拌しながら、残りのモノマーエマルションの全て(90重量%にあたる量)を3時間かけて添加し、その後、75℃で3時間反応させた。次いで、これを30℃に冷却して、濃度10重量%のアンモニア水を加えてpH8に調整して、アクリルエマルション系重合体の水分散液(アクリルエマルション系重合体の濃度:41重量%)を調製した。
【0275】
(水分散型アクリル系粘着剤組成物の調製)
前記アクリルエマルション系重合体の水分散液に、アクリルエマルション系重合体(固形分)100重量部に対して、非水溶性架橋剤であるエポキシ系架橋剤[三菱ガス化学(株)製、商品名「TETRAD−C」、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エポキシ当量:110、官能基数:4]2重量部、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム[有効成分100重量%]1重量部を、攪拌機を用いて、23℃、300rpm、10分の攪拌条件で攪拌混合し、水分散型アクリル系粘着剤組成物を調製した。
【0276】
(粘着剤層の形成、粘着シートの作製)
さらに、前記水分散型アクリル系粘着剤組成物を、PETフィルム(東洋紡績(株)製、商品名「E7415」、厚さ:38μm)のコロナ処理面上に、テスター産業(株)製アプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが15μmとなるように塗布(コーティング)し、その後、熱風循環式オーブンで、120℃で2分間乾燥させ、さらにその後、室温で1週間養生(エージング)して、粘着シートを得た。
【0277】
<実施例3−2〜3−8、比較例3−1〜3−4>
表5に示すように、原料モノマー及び乳化剤等の種類、配合量等を変更し、実施例3−1と同様にして、モノマーエマルションを調製した。なお、表中に記載のない添加剤については、実施例3−1と同様の配合量で調製した。また、前記モノマーエマルションを用い、実施例3−1と同様にして、水分散型アクリル系粘着剤組成物および粘着シートを得た。
【0278】
[評価]
実施例および比較例で得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物および粘着シートについて、下記の測定方法又は評価方法により評価を行った。なお、評価結果については、表5に示した。
【0279】
<架橋後のアクリル系粘着剤皮膜の作製>
実施例および比較例で得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物を、シリコーンで表面処理したPETフィルム(三菱樹脂(株)製、「MRF38」)のシリコーン処理面上に、乾燥後の厚さが50μmとなるようにコーティングして、その後、熱風循環式オーブンで120℃で2分間乾燥させて、50℃で3日間養生を行い、架橋皮膜(架橋後のアクリル系粘着剤皮膜)を得た。
【0280】
<破断伸びの測定>
次いで、前記架橋皮膜(架橋後のアクリル系粘着剤皮膜)を丸めて、円柱状のサンプル(長さ50mm、断面積(底面積)1mm2)を作製した。
引張試験機を用いて、23℃、50%RHの環境下、測定を行った。測定の初期長(初期のチャック間隔)が10mmとなるように、チャックを設定し、引張速度50mm/分の条件で引張試験を行い、破断点の伸び[破断伸び(破断点伸度)]を測定した。
なお、破断伸び(破断点伸度)は、引張試験で、試験片(架橋皮膜の円柱状サンプル)が破断したときの伸びを表し、下記の式で計算される。
「破断伸び(破断点伸度)」(%)=100×(「破断時の試験片の長さ(破断時のチャック間隔)」−「初期長(10mm)」)/「初期長(10mm)」
【0281】
<架橋後のアクリル系粘着剤皮膜の溶剤不溶分>
前記架橋皮膜(架橋後のアクリル系粘着剤皮膜)と同様の方法で作製した。次いで、前述の「溶剤不溶分の測定方法」に従って、前記架橋皮膜の溶剤不溶分を測定した。
前記架橋皮膜(架橋後のアクリル系粘着剤皮膜):約0.1gを採取し、平均孔径0.2μmの多孔質テトラフルオロエチレンシート(商品名「NTF1122」、日東電工株式会社製)に包んだ後、凧糸で縛り、その際の重量を測定し、この重量を浸漬前重量とした。なお、該浸漬前重量は、架橋皮膜(前記で採取したもの)と、テトラフルオロエチレンシートと、凧糸の総重量である。また、テトラフルオロエチレンシートと凧糸の合計重量も測定しておき、この重量を包袋重量とした。
次に、前記架橋皮膜をテトラフルオロエチレンシートで包み凧糸で縛ったもの(「サンプル」と称する)を、酢酸エチルで満たした50ml容器に入れ、23℃にて7日間静置した。その後、容器からサンプル(酢酸エチル処理後)を取り出して、アルミニウム製カップに移し、130℃で2時間、乾燥機中で乾燥して酢酸エチルを除去した後、重量を測定し、該重量を浸漬後重量とした。そして、下記の式から溶剤不溶分を算出した。
溶剤不溶分(重量%)=(d−e)/(f−e)×100(前記式において、dは浸漬後重量であり、eは包袋重量であり、fは浸漬前重量である。)
【0282】
<剥離帯電圧>
作製した粘着シートを幅70mm、長さ130mmのサイズにカットし、セパレータを剥離した後、あらかじめ除電しておいたアクリル板(三菱レイヨン社製、アクリライト、厚み:1mm、幅:70mm、長さ:100mm)に貼り合わせた偏光板(日東電工(株)製、商品名「SEG1425DU」表面に、片方の端部が30mmはみ出すようにハンドローラーにて圧着した。続いて、23℃×24±2%RHの環境下に一日放置した後、図1に示すように所定の位置にサンプルをセットする。30mmはみ出した片方の端部を自動巻取り機に固定し、剥離角度150°、剥離速度10m/分となるように剥離した。このときに発生する偏光板表面の電位を所定の位置に固定してある電位測定機(春日電機社製、KSD−0103)にて測定した。サンプルと電位測定機との距離はアクリル板表面測定時100mmとした。なお、測定は23℃×24±2%RHの環境下で行った。
【0283】
なお、本発明の粘着シートの剥離帯電圧(絶対値)としては、1.0kV以下であることが好ましく、より好ましくは0.8kV以下である。前記剥離帯電圧が1.0kVを超えると、被着体である偏光板の液晶配向が乱れるため、好ましくない。
【0284】
<初期粘着(剥離)力>
作製した粘着シートを幅25mm、長さ100mmのサイズにカットし、セパレータを剥離した後、貼り合わせ機(テスター産業(株)製、小型貼り合わせ機)を用いて、偏光板(日東電工社製、SEG1425DU、幅:70mm、長さ:100mm)に0.25MPa、0.3m/分の条件でラミネートし、評価サンプルを作製した。
ラミネート後、23℃×50%RHの環境下に30分間放置した後、万能引張試験機にて剥離速度0.3m/分、剥離角度180°で剥離したときの粘着力(N/25mm)を測定し、「初期粘着力」とした。測定は23℃×50%RHの環境下で行った。
【0285】
なお、本発明の粘着シートの初期粘着力としては、0.01〜0.5N/25mmであることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.3N/25mmである。前記粘着力を0.5N/25mm以下とすることにより、偏光板や液晶表示装置の製造工程で、粘着シートを剥離しやすく、生産性、取り扱い性が向上するため好ましい。また0.01N/25mm以上とすることにより、製造工程で粘着シートの浮きや剥がれが抑制され、表面保護用の粘着シートとしての保護機能を十分に発揮できるため、好ましい。
【0286】
<汚染性(白化)[加湿試験]>
実施例および比較例で得られた粘着シート(サンプルサイズ:25mm幅×100mm長さ)を、貼り合わせ機(テスター産業(株)製、小型貼り合せ機)を用いて、0.25MPa、0.3m/分の条件で、偏光板(日東電工(株)製、商品名「SEG1425DU」、サイズ:70mm幅×120mm長さ)上に貼り合わせた。
【0287】
前記粘着シートを貼り合わせた偏光板を、粘着シートを貼り合わせたまま、80℃で4時間放置した後、粘着シートを剥離した。その後、粘着シートを剥離した偏光板を加湿環境下(23℃、90%RH)で12時間放置し、偏光板表面を目視にて観察し、以下の基準で低汚染性を評価した。粘着シートの貼付・剥離後に、加湿環境(高湿度条件)下、被着体である偏光板に白化が生じる場合には、光学部材の表面保護フィルム用途としては低汚染性が十分ではない。
低汚染性良好(○):粘着シートを貼付した部分と貼付していない部分で変化が見られなかった。
低汚染性不良(×):粘着シートを貼付した部分に白化が見られた。
【0288】
<外観特性(凹み・ゲル物の有無)>
実施例および比較例で得られた粘着シートの、粘着剤層表面の状態を目視で観察した。縦10cm×横10cmの観察範囲内の欠点(凹み及びゲル物)の個数を測定し、以下の基準で評価した。
欠点個数が0〜100個:外観が良好である(○)。
欠点個数が101個以上:外観が悪い(×)。
【0289】
【表5】

【0290】
なお、表5中の配合内容については、固形分の重量を示した。なお、表5で用いた略号は、以下のとおりである。
【0291】
2EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル(2−エチルヘキシルアクリレート)
MMA:メタクリル酸メチル(メチルメタクリレート)
Vac:酢酸ビニル
DEAA:ジエチルアクリルアミド
AA:アクリル酸
HS10:第一工業製薬(株)製、商品名「アクアロンHS−10」(反応性ノニオンアニオン系乳化剤)
SE−10N:(株)ADEKA製、商品名「アデカリアソープSE−10N」(反応性ノニオンアニオン系乳化剤)
T/C:三菱ガス化学(株)製、商品名「TETRAD−C」(1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エポキシ当量:110、官能基数:4)(非水溶性架橋剤)
T/X:三菱ガス化学(株)製、商品名「TETRAD−X」1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン、エポキシ当量:100、官能基数:4)(非水溶性架橋剤)
LiCFSO:トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(有効成分50重量%)、フッ素含有のアルカリ金属塩(帯電防止剤)
SF−106:ADEKA製、商品名「アデカミンSF−106」(ジメチルジアルキルオキシエチレンアンモニウムクロライド、固形分80重量%、非アルカリ金属塩(帯電防止剤)
17R−2:(株)ADEKA製、商品名「アデカプルロニック17R−2」(数平均分子量2000、PO含有率80重量%)(ポリエーテル型消泡剤)
17R−4:(株)ADEKA製、商品名「アデカプルロニック17R−4」(数平均分子量2500、PO含有率60重量%)(ポリエーテル型消泡剤)
KF−353:信越シリコーン(株)製、商品名「KF−353」(アルキレンオキサイド含有ポリシロキサン、HLB値:10)
【0292】
表5の評価結果より、全ての実施例において、帯電防止性、粘着特性、低汚染性、及び、外観特性に優れた粘着剤層(粘着シート)が得られることが確認でき、光学用途等への使用に適していることが確認できた。
【0293】
一方、比較例3−1においては、モノマー(iii)や帯電防止剤であるアルカリ金属塩を配合しなかったため、外観特性や帯電防止性に劣る結果となった。また、比較例3−2においては、モノマー(iii)を配合せず、帯電防止剤としてアルカリ金属塩以外のものを配合したため、低汚染性が実現できず、更に、外観特性や帯電防止性も得られない結果となった。比較例3−3においては、主成分の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(i)の配合割合を所望の範囲よりも低く設定し、更にその他の原料モノマーの配合割合を高くし、比較例3−4においては、カルボキシル基含有不飽和モノマー(ii)を配合しなかったため、アクリルエマルション系重合体の調製時に、凝集物が発生してしまい、粘着シートの作製ができなかった。
【符号の説明】
【0294】
1 電位測定器
2 粘着シート
3 偏光板
4 アクリル板
5 サンプル固定台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(i)、カルボキシル基含有不飽和モノマー(ii)、並びに、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル及びジエチルアクリルアミドからなる群より選択される少なくとも1種のモノマー(iii)を、モノマー成分として構成されるアクリルエマルション系重合体、及び、イオン性化合物を含有し、
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(i)を、前記モノマー成分の全量中に、70〜99.5重量%含有することを特徴とする水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項2】
前記イオン性化合物が、イオン液体、及び/又は、アルカリ金属塩であることを特徴とする請求項1に記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項3】
前記イオン液体が、非水溶性イオン液体、及び/又は、水溶性イオン液体であることを特徴とする請求項2に記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項4】
前記モノマー(ii)を、モノマー成分の全量中に、0.5〜10重量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項5】
前記モノマー(iii)を、モノマー成分の全量中に、0.5〜10重量%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項6】
前記アクリルエマルション系重合体が、分子中にラジカル重合性官能基を含む反応性乳化剤を用いて重合されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項7】
前記イオン液体が、下記式(A)〜(E)で表わされるカチオンからなる群より選択される少なくとも1種のカチオンを含有することを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【化1】


[式(A)中のRは、炭素数4から20の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよく、RおよびRは、同一または異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよい。但し、窒素原子が2重結合を含む場合、Rはない。]
[式(B)中のRは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよく、R、R、およびRは、同一または異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよい。]
[式(C)中のRは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよく、R、R、およびRは、同一または異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよい。]
[式(D)中のZは、窒素、硫黄、またはリン原子を表し、R、R、R、およびRは、同一または異なって、炭素数1から20の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよい。但しZが硫黄原子の場合、Rはない。]
[式(E)中のRは、炭素数1から18の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよい。]
【請求項8】
前記イオン液体のカチオンが、含イミダゾリウム塩型、含ピリジニウム塩型、含モルフォリニウム塩型、含ピロリジニウム塩型、含ピペリジニウム塩型、含アンモニウム塩型、含ホスホニウム塩型、及び、含スルホニウム塩型からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項9】
前記イオン液体が、下記式(a)〜(d)で表わされるカチオンからなる群より選択される少なくとも1種のカチオンを含有することを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【化2】


[式(a)中のRは、水素または炭素数1から3の炭化水素基を表し、Rは、水素または炭素数1から7の炭化水素基を表す。]
[式(b)中のRは、水素または炭素数1から3の炭化水素基を表し、Rは、水素または炭素数1から7の炭化水素基を表す。]
[式(c)中のRは、水素または炭素数1から3の炭化水素基を表し、Rは、水素または炭素数1から7の炭化水素基を表す。]
[式(d)中のRは、水素または炭素数1から3の炭化水素基を表し、Rは、水素または炭素数1から7の炭化水素基を表す。]
【請求項10】
前記アルカリ金属塩が、フッ素含有アニオンを含有することを特徴とする請求項2、4、5、及び6のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項11】
前記アルカリ金属塩が、リチウム塩であることを特徴とする請求項2、4、5、6、及び10のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項12】
アルキレンオキシド共重合化合物を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項13】
前記アルキレンオキシド共重合化合物が、下記式(iv)で表されるポリエーテル型消泡剤を、さらに含有することを特徴とする請求項12に記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【化3】


[式(1)中、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。m1は0〜40の整数、n1は1以上の整数を表す。EOとPOの付加形態はランダム型又はブロック型である。]
【請求項14】
前記アルキレンオキシド共重合化合物が、下記式(vi)で表わされるオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項12に記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【化4】


(式中、Rは1価の有機基、R,R及びRはアルキレン基、もしくはRは水酸基もしくは有機基、m及びnは0〜1000の整数。但し、m,nが同時に0となることはない。a及びbは0〜100の整数。但し、a,bが同時に0となることはない。)
【請求項15】
更に、分子中にカルボキシル基と反応し得る官能基を2個以上有する非水溶性架橋剤を含有することを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項16】
再剥離用に用いられることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物を架橋してなることを特徴とする粘着剤層。
【請求項18】
前記非水溶性架橋剤により架橋してなることを特徴とする請求項17に記載の粘着剤層。
【請求項19】
溶剤不溶分が90重量以上であり、かつ、23℃における破断伸びが160%以下であることを特徴とする請求項17又は18に記載の粘着剤層。
【請求項20】
請求項17〜19のいずれかに記載の粘着剤層を、支持体の少なくとも片面に形成することを特徴とする粘着シート。
【請求項21】
前記支持体が、プラスチック基材であることを特徴とする請求項20に記載の粘着シート。
【請求項22】
表面保護用に用いられることを特徴とする請求項20又は21に記載の粘着シート。
【請求項23】
光学用途に用いられることを特徴とする請求項22に記載の粘着シート。
【請求項24】
請求項23に記載の粘着シートが貼付されていることを特徴とする光学部材。

【図1】
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【公開番号】特開2013−100483(P2013−100483A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−224526(P2012−224526)
【出願日】平成24年10月9日(2012.10.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】