説明

水分散型粘着剤組成物、粘着剤層、粘着部材および画像表示装置

【課題】初期接着力に優れた粘着剤層を形成することができる水分散型粘着剤を提供すること。
【解決手段】ガラス転移温度が−55℃以上0℃以下の水分散型の(メタ)アクリル系共重合体(A)、ガラス転移温度が0℃以上180℃以下の水分散型の(メタ)アクリル系共重合体(B)、および、水溶性樹脂(C)を含有する水分散液であって、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)、(B)のいずれか少なくとも一方は、カルボキシル基含有モノマーをモノマー単位として含有しており、前記(A)と(B)のガラス転移温度の差が50℃以上あり、かつ、混合割合が(A)/(B)=50〜95/5〜50(固形分重量比)の範囲である水分散液からなる水分散型粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散型粘着剤に関する。また本発明は当該水分散型粘着剤から形成された粘着剤層、当該粘着剤層が支持基材に積層された粘着部材に関する。
【0002】
本発明の水分散型粘着剤等は各種の用途で適用することができ、例えば、前記のように支持基材の片面または両面に粘着剤層として設けて粘着部材として用いることができる他、基材レスの両面粘着剤層や支持基材の両面に粘着剤層を有する両面粘着テープ等として用いることができる。粘着部材における基材としては、例えば、光学フィルム、表面保護フィルム基材、セパレータ等を用いることができる。前記光学フィルムとしては、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルムや、反射防止フィルム等の表面処理フィルム、プリズムシート、タッチパネルに用いられる透明導電性フィルム、さらにはこれらが積層されているものなどがあげられる。特に、支持基材として光学フィルムを用いて前記粘着剤層を形成した粘着部材は、粘着型光学フィルムとして有用であり、液晶表示装置、有機EL表示装置、CRT、PDP等の画像表示装置および前面板などの画像表示装置と共に使用される部材、に用いられる。また、表面保護フィルムとしては、前記光学フィルム等に適用される各種のプラスチックフィルムなどがあげられる。
【背景技術】
【0003】
液晶表示装置および有機EL表示装置等は、その画像形成方式から、例えば、液晶表示装置では、液晶セルの両側に偏光素子を配置することが必要不可欠であり、一般的には偏光板が貼着されている。また液晶パネルおよび有機ELパネル等の表示パネルには偏光板の他に、ディスプレイの表示品位を向上させるために様々な光学素子が用いられるようになってきている。また液晶表示装置や有機EL表示装置、CRT、PDP等の画像表示装置を保護したり、高級感を付与したり、デザインを差別化するために前面板が使用されている。これら液晶表示装置および有機EL表示装置等の画像表示装置や前面板などの画像表示装置と共に使用される部材には、例えば、着色防止としての位相差板、液晶ディスプレイの視野角を改善するための視野角拡大フィルム、さらにはディスプレイのコントラストを高めるための輝度向上フィルム、表面の耐擦傷性を付与するために用いられるハードコートフィルム、画像表示装置に対する写り込みを防止するためのアンチグレア処理フィルム、アンチリフレクティブフィルム、ローリフレクティブフィルムなどの反射防止フィルム等の表面処理フィルムが用いられている。これらのフィルムは総称して光学フィルムと呼ばれる。
【0004】
前記光学フィルムを液晶セルおよび有機ELパネル等の表示パネル、または前面板に貼着する際には、通常、粘着剤が使用される。また、光学フィルムと液晶セルおよび有機ELパネル等の表示パネル、または前面板、または光学フィルム間の接着は、通常、光の損失を低減するため、それぞれの材料は粘着剤を用いて密着されている。このような場合に、光学フィルムを固着させるのに乾燥工程を必要としないこと等のメリットを有することから、光学フィルムの片側に予め粘着剤層として設けられた粘着型光学フィルムが一般的に用いられる。また、光学フィルム等を保護するために用いられる表面保護フィルムにおいても粘着剤層が設けられている。
【0005】
従来から、上記用途に係る粘着剤層の形成に用いる粘着剤としては、高品位な塗布外観を実現しやすいことから、溶媒として有機溶剤を使用する有機溶剤型粘着剤が用いられている。
【0006】
一方で、近年、環境負荷の観点から有機溶剤の使用を低減することが望まれており、有機溶剤型粘着剤から、分散媒として水を用いて、水中に粘着剤成分を分散させた水分散型粘着剤への転換が望まれている。水分散型粘着剤は、一般に乳化剤などの界面活性剤を水溶性の分散安定化成分として含むため、水分散型粘着剤により形成された粘着剤層は、有機溶剤型粘着剤により形成された粘着剤層に比べて、初期接着力が十分ではなかった。
【0007】
水分散型粘着剤により形成された粘着剤層の初期接着力を向上させるために、水分散型粘着剤に、ポリカルボン酸またはその塩を主成分とする分散剤を含有させることが提案されている(特許文献1)。特許文献1により、水分散型粘着剤により形成された粘着剤層の初期接着力は向上するものの、各種用途において初期接着力はさらなる向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−56248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、初期接着力に優れた粘着剤層を形成することができる水分散型粘着剤を提供することを目的とする。また本発明は、前記水分散型粘着剤層から形成される粘着剤層を提供することを目的とする。
【0010】
また本発明は、前記粘着剤層を有する粘着部材を提供すること、さらには、当該粘着部材を用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記の水分散型粘着剤組成物等により前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち本発明は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位として含有し、かつ、ガラス転移温度(但し、ガラス転移温度はモノマー単位中の単官能モノマーに基づいて算出される)が−55℃以上0℃以下の水分散型の(メタ)アクリル系共重合体(A)、
(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位として含有し、かつ、ガラス転移温度(但し、ガラス転移温度はモノマー単位中の単官能モノマーに基づいて算出される)が0℃以上180℃以下の水分散型の(メタ)アクリル系共重合体(B)、および、水溶性樹脂(C)を含有する水分散液であって、
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)のいずれか少なくとも一方は、カルボキシル基含有モノマーをモノマー単位として含有しており、
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度と、(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度の差が50℃以上あり、かつ、
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)と(メタ)アクリル系共重合体(B)との混合割合が(A)/(B)=50〜95/5〜50(固形分重量比率)の範囲である水分散液からなることを特徴とする水分散型粘着剤組成物、に関する。
【0013】
前記水分散型粘着剤組成物において、前記水溶性樹脂(C)は、カルボキシル基塩を有する水溶性樹脂が好適である。
【0014】
前記水分散型粘着剤組成物において、前記水溶性樹脂(C)の割合が、固形分重量において、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)の合計100重量部に対して、0.5〜15重量部であることが好ましい。
【0015】
前記水分散型粘着剤組成物において、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)は、同一エマルション粒子内に、いずれか一方の共重合体がコア層、もう一方の共重合体がシェル層として存在するコアシェル構造のエマルション粒子を含有するものを用いることができる。また、前記コア層が(メタ)アクリル系共重合体(B)であり、シェル層が(メタ)アクリル系共重合体(A)であることが好ましい。
【0016】
前記水分散型粘着剤組成物において、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)は、それぞれの(メタ)アクリル系共重合体(A)の水分散液および(メタ)アクリル系共重合体(B)の水分散液に由来するものを用いることができる。
【0017】
前記水分散型粘着剤組成物において、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)のいずれか少なくとも一方が、モノマー単位として、アルコキシシリル基含有モノマー(但し、アルコキシシリル基含有モノマーは、ガラス転移温度の算出に係る単官能モノマーからは除く)を含有しており、かつ、当該アルコキシシリル基含有モノマーの割合が、(メタ)アクリル系共重合体(A)または(メタ)アクリル系共重合体(B)の総モノマー単位の0.001〜1重量%であることが好ましい。
【0018】
また本発明は、前記水分散型粘着剤組成物を塗布した後、乾燥することにより形成されたものであることを特徴とする粘着剤層、に関する。
【0019】
前記粘着剤層において、前記(メタ)アクリル系共重合体(B)は、(メタ)アクリル系共重合体(A)から形成される樹脂成分中にドメインとして存在し、当該ドメインは、最大部分の長さが1nm以上200nm以下のドメインの領域の割合が98%以上であることが好ましい。
【0020】
前記粘着剤層は、180度剥離法、温度23℃、剥離速度300mm/分でのガラス板に対する接着力が、5N/25mm以上であることが好ましい。
【0021】
また本発明は、前記支持基材の少なくとも片側に、前記粘着剤層が積層されていることを特徴とする粘着部材。
【0022】
また本発明は前記粘着剤層または前記粘着部材を少なくとも1つ用いていることを特徴とする画像表示装置、に関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、粘着剤層を形成する水分散型粘着剤組成物として、通常の低いガラス転移温度を有する水分散型の(メタ)アクリル系共重合体(A)に加えて、所定の高いガラス転移温度を有する水分散型の(メタ)アクリル系共重合体(B)をベースポリマーとして含有し、かつ、水溶性樹脂(C)を含有する。かかる水分散型粘着剤組成物による形成される粘着剤層において、水分散型の(メタ)アクリル系共重合体(B)は、(メタ)アクリル系共重合体(A)により形成される樹脂中において、ドメインを形成した状態で存在することができる。このような構造に、水溶性樹脂(C)が添加されることで、通常の低いガラス転移温度を有する水分散型の(メタ)アクリル系共重合体(A)に、単に、水溶性樹脂(C)を加えた水分散型粘着剤組成物よりも、高い初期接着力を有する粘着剤層を実現することができたものである。
【0024】
また、本発明の水分散型粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、水溶性樹脂(C)を含有していることから、高温多湿環境下における耐久性が良好であり、高温多湿環境下における粘着剤層の白濁化を抑えることができる。水分散型粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温多湿環境下に保存されている間に多量の水分を吸湿し、環境が高温多湿下から室温下に戻った場合には、前記粘着剤層が吸湿した水分は、粘着剤層中において水分子の凝縮等が生じて、粘着剤層が水分を吸収または溶解しきれなくなる。その結果、前記水分が粘着剤層中に析出することで結露が生じて、これが白濁現象の原因であることが究明された。本発明の水分散型粘着剤組成物は、水溶性樹脂(C)を含有することから、高吸湿性の粘着剤層である。かかる高吸湿性の粘着剤層を用いることにより、本発明では、粘着剤層を高温多湿環境下から室温環境下に戻したときにも、十分な吸湿機能を維持することによって水分の析出による結露を抑えることができ、白濁現象が起こらないように抑制することができると考えられる。水溶性樹脂が優れた白濁抑制効果を示す理由は明らかではないが、ベースポリマーである(メタ)アクリル系共重合体(A)およびドメインとし存在する(メタ)アクリル系共重合体(B)の粒子間に水溶性樹脂(C)が均一に存在し、結露抑制に効果のある微視的な水の吸収性サイトとして作用するためであると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の粘着剤層を形成する水分散型粘着剤組成物は、ガラス転移温度が−55℃以上0℃以下の水分散型の(メタ)アクリル系共重合体(A)と、ガラス転移温度が0℃以上180℃以下の水分散型の(メタ)アクリル系共重合体(B)とを含有する水分散液である。
【0026】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度は、上記の通り、−55℃以上0℃以下であり、この範囲において、粘着剤の接着性を確保しながら凝集力の低下を抑えることができる。前記ガラス転移温度は、好ましくは−20℃以下、さらには−30℃以下、さらには−35℃以下、さらには−40℃以下であるのが好ましい。(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度が0℃を超える場合には、粘着剤としての接着性が低下し、ハガレが発生しやすくなる。一方、前記ガラス転移温度は、好ましくは−50℃以上、さらには−45℃以上(好ましくは−45℃超える)であるのが好ましい。(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度が−55℃未満の場合には、粘着剤の凝集力が低下してハガレが発生しやすくなる。
【0027】
前記(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度は、上記の通り、0℃以上180℃以下であり、この範囲において、粘着剤の接着性を確保しながら凝集力の低下を抑えることができる。前記ガラス転移温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらには70℃以上、さらには80℃以上、さらには85℃以上であるのが好ましい。(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度が50℃未満の場合には、粘着剤として凝集力が低下してハガレが発生しやすくなる。一方、前記ガラス転移温度は、加湿ハガレを抑える観点から、110℃以下であるのが好ましく、さらには100℃以下、さらには90℃以下(好ましくは90℃未満)であるのが好ましい。
【0028】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度と前記(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度の差は50℃以上である。前記ガラス転移温度の差は、さらには70℃以上、さらには80℃以上、さらには90℃以上、さらには100℃以上、さらには110℃以上、さらには120℃以上であるのが粘着剤の接着性を確保しながら凝集力の低下を抑える点から好ましい。
【0029】
なお、(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度と(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度は、各重合体を構成するモノマー単位とその割合から、FOXの式:により算出される理論値である。
FOXの式:1/Tg=w/Tg+w/Tg+・・・+w/Tg
(Tg:重合体のガラス転移温度(K)、Tg,Tg,・・・Tg:各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(K)、w,w,・・・w:各モノマーの重量分率)
但し、(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度と(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度の算出は単官能モノマーに基づいて算出される。即ち、前記各重合体が構成モノマー単位として多官能モノマーを含有する場合においても、多官能モノマーは、その使用量が少量であり、共重合体のガラス転移温度への影響が少ないため、ガラス転移温度の算出には含めていない。また、アルコキシシリル基含有モノマーについては多官能性モノマーとして認められるためガラス転移温度の算出には含めていない。なお、上記FOXの式より求められる理論ガラス転移温度は示差走査熱量測定(DSC)や動的粘弾性などにより求められる実測ガラス転移温度とよく一致する。
【0030】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位として含有し、前記ガラス転移温度を満足するものであれば、モノマー単位の種類や成分組成は特に制限されない。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルはアクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0031】
前記(メタ)アクリル系重合体(A)に用いる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、乳化重合の反応性の観点から水に対する溶解度が一定の範囲のものが好ましく、また、ガラス転移温度を制御しやすいことからアルキル基の炭素数が1〜18のアクリル酸アルキルエステルを主成分とすることが好ましい。アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸ステアリル等のアクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル等のアルキル基の炭素数が3〜9のアクリル酸アルキルエステルが好ましい。アクリル酸アルキルエステルは、総モノマー単位の60〜99.9重量%含有するのが好ましく、さらには70〜99.9重量%、さらには80〜99.9重量%、さらには80〜99重量%、さらには80〜95重量%であるのが好ましい。
【0032】
また、(メタ)アクリル系共重合体(A)には、乳化重合の反応性の観点から水に対する溶解度が一定の範囲のものが好ましく、また、ガラス転移温度を制御しやすいことからから、アルキル基の炭素数が1〜18のメタクリル酸アルキルエステルを用いることができる。メタアクリル酸アルキルエステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸イソボルニル等のメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル等が好ましい。メタアクリル酸アルキルエステルは、総モノマー単位の39.9重量%以下であるのが好ましく、さらには30重量%以下、さらには20重量%以下、さらには15重量%以下、さらには10重量%以下であるのが好ましい。
【0033】
一方、(メタ)アクリル系共重合体(B)に用いる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、乳化重合の反応性の観点から水に対する溶解度が一定の範囲のものが好ましく、ガラス転移温度を制御しやすいことから、上記のアルキル基の炭素数が1〜18のメタクリル酸アルキルエステルを主成分とすることが好ましい。当該メタクリル酸アルキルエステルは単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。当該メタクリル酸アルキルエステルの具体例としては、上記同様のものを例示できる。前記例示のなかでも、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル等が好ましい。メタクリル酸アルキルエステルは、総モノマー単位の60〜99.9重量%含有するのが好ましく、さらには70〜99.9重量%、さらには80〜99.9重量%、さらには80〜99重量%、さらには80〜95重量%であるのが好ましい。
【0034】
また、(メタ)アクリル系共重合体(B)には、乳化重合の反応性の観点から水に対する溶解度が一定の範囲のものが好ましく、ガラス転移温度を制御しやすいことから、上記のアルキル基の炭素数が1〜18のアクリル酸アルキルエステルを用いることができる。当該アクリル酸アルキルエステルは単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。当該アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、上記同様のものを例示できる。前記例示のなかでも、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル等のアルキル基の炭素数が3〜9のアクリル酸アルキルエステルが好ましい。アクリル酸アルキルエステルは、総モノマー単位の39.9重量%以下であるのが好ましく、さらには5〜30重量%、さらには5〜20重量%であるのが好ましい。
【0035】
また、(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)のいずれか少なくとも一方は、粘着剤の接着性向上とエマルションへの安定性付与のために、カルボキシル基含有モノマーが用いられる。カルボキシル基含有モノマーとしては、カルボキシル基および(メタ)アクリロイル基、ビニル基等のラジカル重合性の不飽和二重結合を有するものを例示でき、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレートなどが挙げられる。カルボキシル基含有モノマーは、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)のいずれかにモノマー単位として含有されていてもよく、一方にのみ含有されていてもよいが、両者に含有されていることが好ましい。カルボキシル基含有モノマーは、(メタ)アクリル系共重合体(A)または(メタ)アクリル系共重合体(B)の総モノマー単位の0.1〜10重量%含有するのが好ましく、さらには0.5〜7重量%、さらには1〜6重量%であるのが好ましい。
【0036】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)には、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびカルボキシル基含有モノマー以外に、水分散液の安定化、粘着剤層の光学フィルム等の基材に対する密着性の向上、さらには、被着体に対する初期接着性の向上などを目的として、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合に係る重合性の官能基を有する、1種類以上の共重合モノマーを共重合により導入することができる。
【0037】
前記共重合モノマーとしては、アルコキシシリル基含有モノマーが挙げられる。アルコキシシリル基含有モノマーは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を1個以上有し、かつ、アルコキシシリル基を有する、シランカップリング剤系不飽和モノマーである。アルコキシシリル基含有モノマーは、(メタ)アクリル系共重合体(A)へ架橋構造を付与し、またガラスへの密着性を向上するうえで好ましい。
【0038】
前記アルコキシシリル基含有モノマーとしてはアルコキシシリル基含有(メタ)アクリレートモノマーや、アルコキシシリル基含有ビニルモノマーなどが含まれる。アルコキシシリル基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチル−トリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチル−トリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリブトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキル−トリアルコキシシラン;例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチル−メチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチル−メチルジエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジブトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジブトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキル−アルキルジアルコキシシランや、これらに対応する(メタ)アクリロイルオキシアルキル−ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。また、アルコキシシリル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシランなどのビニルトリアルコキシシランの他、これらに対応するビニルアルキルジアルコキシシランや、ビニルジアルキルアルコキシシラン、例えば、ビニルメチルトリメトキシシラン、ビニルメチルトリエトキシシラン、β−ビニルエチルトリメトキシシラン、β−ビニルエチルトリエトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリエトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリブトキシシランなどのビニルアルキルトリアルコキシシランの他、これらに対応する(ビニルアルキル)アルキルジアルコキシシランや、(ビニルアルキル)ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
【0039】
アルコキシシリル基含有モノマーは、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)のいずれかに含有されていてもよく、一方にのみ含有されていてもよい。アルコキシシリル基含有モノマーの割合は、(メタ)アクリル系共重合体(A)または(メタ)アクリル系共重合体(B)の総モノマー単位の0.001〜1重量%であることが好ましく、さらには0.01〜0.5重量%、さらには0.02〜0.1重量%であるのが好ましい。0.001重量%未満では、アルコキシシリル基含有モノマーを用いる効果(架橋構造の付与、ガラスへの密着性)を十分には得られず、一方、1重量%を超えると、粘着剤層の架橋度が高くなりすぎて、経時での粘着剤層の割れなどが発生するおそれがある。
【0040】
また、共重合モノマーとしては、リン酸基含有モノマーが挙げられる。リン酸基含有モノマーは、ガラスへの密着性を向上させる効果がある。
【0041】
リン酸基含有モノマーとしては、例えば、下記一般式(1):
【化1】

(一般式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基を示し、R2は炭素数1〜4のアルキレン基、mは2以上の整数を示し、M1およびM2は、それぞれ独立に、水素原子またはカチオンを示す。)で表されるリン酸基またはその塩を示す。)で表されるリン酸基含有モノマーが挙げられる。
【0042】
なお、一般式(1)中、mは、2以上、好ましくは、4以上、通常40以下であり、mは、オキシアルキレン基の重合度を表す。また、ポリオキシアルキレン基としては、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等が挙げられ、これらポリオキシアルキレン基は、これらのランダム、ブロックまたはグラフトユニットなどであってもよい。また、リン酸基の塩に係る、カチオンは、特に制限されず、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、例えば、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属などの無機カチオン、例えば、4級アミン類などの有機カチオンなどが挙げられる。
【0043】
リン酸基含有モノマーの割合は、(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)のいずれかに含有されていてもよく、一方にのみ含有されていてもよい。リン酸基含有モノマーの割合は、(メタ)アクリル系共重合体(A)または(メタ)アクリル系共重合体(B)の総モノマー単位の0.1〜20重量%であることが好ましい。0.1重量%未満では、リン酸基含有モノマーを用いる効果(線状気泡発生の抑制)を十分には得られず、一方、20重量%を超えると、重合安定性の点で好ましくない。
【0044】
前記アルコキシシリル基含有モノマー、リン酸基含有モノマー以外の共重合モノマーの具体例としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;例えば、(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;例えば、スチレンなどのスチレン系モノマー;例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのエポキシ基含有モノマー;例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシル基含有モノマー;例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどの窒素原子含有モノマー;例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどのアルコキシ基含有モノマー;例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー;例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどの官能性モノマー;例えば、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系モノマー;例えば、ビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー;例えば、塩化ビニルなどのハロゲン原子含有モノマー;その他、例えば、N−ビニルピロリドン、N−(1−メチルビニル)ピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリンなどのビニル基含有複素環化合物や、N−ビニルカルボン酸アミド類などが挙げられる。
【0045】
また、共重合性モノマーとして、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;例えば、N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー;例えば、N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマー;例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマーが挙げられる。
【0046】
また、共重合性モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;その他、例えば、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルや、フッ素(メタ)アクリレートなどの複素環や、ハロゲン原子を含有するアクリル酸エステル系モノマーなどが挙げられる。
【0047】
さらに、共重合性モノマーとして、水分散型粘着剤組成物のゲル分率の調整などのために、前記アルコキシシリル基含有モノマー以外の、多官能性モノマーを用いることができる。多官能モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上有する化合物などが挙げられる。例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートや、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの他、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物;ジビニルベンゼン等の多官能ビニル化合物;ダイアセトンアクリルアミド;(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル等の反応性の異なる不飽和二重結合を有する化合物等が挙げられる。また、多官能性モノマーとしては、ポリエステル、エポキシ、ウレタンなどの骨格にモノマー成分と同様の官能基として(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上付加したポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどを用いることもできる。
【0048】
前記アルコキシシリル基含有モノマー、リン酸基含有モノマー以外の共重合性モノマーは、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)のいずれかにモノマー単位として含有されていてもよく、一方にのみ含有されていてもよい。これら共重合性モノマーが単官能モノマーの場合にはその割合は、エマルションの粘度が高くなりすぎず、またエマルションの安定性の点から、(メタ)アクリル系共重合体(A)または(メタ)アクリル系共重合体(B)の総モノマー単位の20重量%以下であることが好ましく、さらには10重量%以下、さらには5重量%以下であるのが好ましい。共重合性モノマーが多官能モノマーの場合にはその割合は、エマルションの安定性の点から、(メタ)アクリル系共重合体(A)または(メタ)アクリル系共重合体(B)の総モノマー単位の5重量%以下であることが好ましく、さらには3重量%以下、さらには1重量%以下であるのが好ましい。
【0049】
本発明の水分散型粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)を含有するが、これらは、例えば、それぞれの(メタ)アクリル系共重合体(A)の水分散液および(メタ)アクリル系共重合体(B)の水分散液を調製し、これらを混合することにより得ることができる。
【0050】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の水分散液および(メタ)アクリル系共重合体(B)の水分散液は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有するモノマー成分を界面活性剤およびラジカル重合開始剤の存在下に水中で重合することにより得られる。前記重合の形態としては、乳化重合または懸濁重合、分散重合が挙げられ、乳化重合の場合にはポリマーエマルションが、懸濁重合の場合にはポリマーサスペンジョン、分散重合の場合にはポリマーディスパージョンが得られる。前記粘着剤の種類に応じて粘着性のポリマーの種類や重合手段が選択される。また、界面活性剤は、乳化重合の場合には乳化剤が、懸濁重合の場合には分散剤が、各重合形態に応じて適宜に選択される。
【0051】
前記水分散型粘着剤組成物における(メタ)アクリル系共重合体(A)の水分散液および(メタ)アクリル系共重合体(B)の水分散液としては、乳化重合により得られたポリマーエマルションを用いたエマルション型粘着剤が好ましい。
【0052】
また本発明の水分散型粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)を、同一エマルション粒子内に、いずれか一方の共重合体がコア層、もう一方の共重合体がシェル層として存在するコアシェル構造のエマルション粒子として含有することができる。
【0053】
前記コアシェル構造のエマルション粒子は、(1)コア層が(メタ)アクリル系共重合体(A)であり、シェル層が(メタ)アクリル系共重合体(B)の場合と、(2)コア層が(メタ)アクリル系共重合体(B)であり、シェル層が(メタ)アクリル系共重合体(A)の場合とがある。本発明のコアシェル構造のエマルション粒子は、前記(1)および(2)のいずれの構造も採用できるが、経時ハガレを効果的に抑えるには、前記(2)の構造であるのが好ましい。
【0054】
前記コアシェル構造のエマルション粒子は、コア層の共重合体を乳化重合により形成した後、コア層の共重合体の存在下に、シェル層の共重合体を乳化重合する多段階の乳化重合により得ることができる。即ち、各乳化重合では、コア層またはシェル層の共重合体のモノマー単位に係るモノマー成分である、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有するモノマー成分を界面活性剤(乳化剤)およびラジカル重合開始剤の存在下に水中で重合することにより、コア層またはシェル層の共重合体を形成する。
【0055】
前記モノマー成分の乳化重合は、常法により、モノマー成分を水に乳化させた後に、乳化重合することにより行う。これにより(メタ)アクリル系共重合体(A)または(メタ)アクリル系共重合体(B)をベースポリマーとして含有する水分散液(ポリマーエマルション)を調製する。乳化重合では、例えば、上記したモノマー成分とともに、界面活性剤(乳化剤)、ラジカル重合開始剤、必要に応じて連鎖移動剤などが適宜配合される。より具体的には、例えば、一括仕込み法(一括重合法)、モノマー滴下法、モノマーエマルション滴下法などの公知の乳化重合法を採用することができる。なお、モノマー滴下法、モノマーエマルション滴下法では、連続滴下または分割滴下が適宜選択される。これらの方法は適宜に組み合わせることができる。反応条件などは、適宜選択されるが、重合温度は、例えば、40〜95℃程度であるのが好ましく、重合時間は30分間〜24時間程度であるのが好ましい。
【0056】
乳化重合に用いられる界面活性剤(乳化剤)は、特に制限されず、乳化重合に通常使用される各種の界面活性剤が用いられる。界面活性剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤が用いられる。アニオン系界面活性剤の具体例としては、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩類;ポリオエキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類;モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸エステル塩およびその誘導体類;ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩類;ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物等を例示することができる。ノニオン系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート等のポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類;オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等のグリセリン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル等を例示することができる。
【0057】
また、上記非反応性界面活性剤の他に、界面活性剤としては、エチレン性不飽和二重結合に係るラジカル重合性官能基を有する反応性界面活性剤を用いることができる。反応性界面活性剤としては、前記アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤に、プロペニル基やアリルエーテル基などのラジカル重合性官能基(ラジカル反応性基)が導入されたラジカル重合性界面活性剤などが挙げられる。これら界面活性剤は、適宜、単独または併用して用いられる。これらの界面活性剤の中でも、ラジカル重合性官能基を有したラジカル重合性界面活性剤は、水分散液の安定性、粘着剤層の耐久性の観点から、好ましく使用される。
【0058】
アニオン系反応性界面活性剤の具体例としては、アルキルエーテル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンKH−05、KH−10、KH−20、旭電化工業株式会社製アデカリアソープSR−10N、SR−20N、花王株式会社製ラテムルPD−104等);スルフォコハク酸エステル系(市販品としては、例えば、花王株式会社製ラテムルS−120、S−120A、S−180P、S−180A、三洋化成株式会社製エレミノールJS−2等);アルキルフェニルエーテル系もしくはアルキルフェニルエステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンH−2855A、H−3855B、H−3855C、H−3856、HS−05、HS−10、HS−20、HS−30、BC−05、BC−10、BC−20、旭電化工業株式会社製アデカリアソープSDX−222、SDX−223、SDX−232、SDX−233、SDX−259、SE−10N、SE−20N);(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製アントックスMS−60、MS−2N、三洋化成工業株式会社製エレミノールRS−30等);リン酸エステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製H−3330PL,旭電化工業株式会社製アデカリアソープPP−70等)が挙げられる。ノニオン系反応性界面活性剤としては、例えばアルキルエーテル系(市販品としては、例えば、旭電化工業株式会社製アデカリアソープER−10、ER−20、ER−30、ER−40、花王株式会社製ラテムルPD−420、PD−430、PD−450等);アルキルフェニルエーテル系もしくはアルキルフェニルエステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50、旭電化工業株式会社製アデカリアソープNE−10、NE−20、NE−30、NE−40等);(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製RMA−564、RMA−568、RMA−1114等)が挙げられる。
【0059】
前記界面活性剤の配合割合は、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有するモノマー成分100重量部に対して、0.3〜5重量部であるのが好ましい。界面活性剤の配合割合により粘着特性、さらには重合安定性、機械的安定性などの向上を図ることができる。前記界面活性剤の配合割合は、0.3〜4重量部がより好ましい。
【0060】
ラジカル重合開始剤としては、特に制限されず、乳化重合に通常使用される公知のラジカル重合開始剤が用いられる。例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩などのアゾ系開始剤;例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩系開始剤;例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤;例えば、フェニル置換エタンなどの置換エタン系開始剤;例えば、芳香族カルボニル化合物などのカルボニル系開始剤などが挙げられる。これら重合開始剤は、適宜、単独または併用して用いられる。また、乳化重合を行なうに際して、所望により重合開始剤とともに還元剤を併用するレドックス系開始剤とすることができる。これにより、乳化重合速度を促進したり、低温において乳化重合をおこなったりすることが容易になる。このような還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、エルソルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラートなどの金属塩等の還元性有機化合物;チオ硫酸案トリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物;塩化第一鉄、ロンガリット、二酸化チオ尿素などを例示できる。
【0061】
また、ラジカル重合開始剤の配合割合は、適宜選択されるが、モノマー成分100重量部に対して、例えば、0.02〜1重量部程度であり、好ましくは0.02〜0.5重量部、より好ましくは0.08〜0.3重量部である。0.02重量部未満であると、ラジカル重合開始剤としての効果が低下する場合があり、1重量部を超えると、水分散液(ポリマーエマルション)に係る(メタ)アクリル系共重合体(A)の分子量が低下し、水分散型粘着剤組成物の耐久性が低下する場合がある。なお、レドックス系開始剤の場合には、還元剤は、モノマー成分の合計量100重量部に対して、0.01〜1重量部の範囲で用いるのが好ましい。前述したように、コアシェル構造のエマルション粒子は、コア層の共重合体を乳化重合により形成した後、シェル層の共重合体を乳化重合する多段階の乳化重合により得ることができる。このとき、コア層の共重合体の乳化重合、およびシェル層の共重合体の乳化重合において、モノマー成分に対する開始剤の使用量は上記と同様である。
【0062】
連鎖移動剤は、必要により、水分散型の(メタ)アクリル系ポリマーの分子量を調節するものであって、通常、乳化重合に通常使用される連鎖移動剤が用いられる。例えば、1−ドデカンチオール、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸2−エチルへキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノール、メルカプトプロピオン酸エステル類などのメルカプタン類などが挙げられる。これら連鎖移動剤は、適宜、単独または併用して用いられる。また、連鎖移動剤の配合割合は、モノマー成分100重量部に対して、例えば、0.001〜0.3重量部である。
【0063】
このような乳化重合によって、(メタ)アクリル系共重合体(A)または(メタ)アクリル系共重合体(B)を水分散液(エマルション)として調製することができる。このような水分散型の(メタ)アクリル系共重合体(A)または(メタ)アクリル系共重合体(B)は、その平均粒子径が、例えば、0.05〜3μm、好ましくは、0.05〜1μmに調整される。平均粒子径が0.05μmより小さいと、水分散型粘着剤組成物の粘度が上昇する場合があり、1μmより大きいと、粒子間の融着性が低下して凝集力が低下する場合がある。
【0064】
また、前記水分散液の分散安定性を保つために、前記水分散液に係る(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)のいずれか少なくとも一方は、モノマー単位としてカルボキシル基含有モノマーを含有しているが、当該カルボキシル基含有モノマー等を中和することが好ましい。中和は、例えば、アンモニア、水酸化アルカリ金属等により行なうことができる。
【0065】
本発明の水分散型の(メタ)アクリル系共重合体(A)または(メタ)アクリル系共重合体(B)は、通常、重量平均分子量は100万以上のものが好ましい。特に重量平均分子量で100万〜400万のものが耐熱性、耐湿性の点で好ましい。重量平均分子量が100万未満であると耐熱性、耐湿性が低下し好ましくない。また乳化重合で得られる粘着剤はその重合機構より分子量が非常に高分子量になるので好ましい。ただし、乳化重合で得られる粘着剤は一般にはゲル分が多くGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定できないので分子量に関する実測定での裏付けは難しいことが多い。
【0066】
本発明の水分散型粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)と(メタ)アクリル系共重合体(B)とを、割合が(A)/(B)=50〜95/5〜50(固形分重量比率)の範囲で含有する。なお、コアシェル構造のエマルション粒子は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)と(メタ)アクリル系共重合体(B)とを、同一エマルション粒子内に、(A)/(B)=50〜95/5〜50(重量比率)の範囲で含有する。この範囲で、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)と(メタ)アクリル系共重合体(B)を用いることにより、粘着剤の接着性を確保しながら凝集力の低下を抑えることができる。前記割合は、(メタ)アクリル系共重合体(A)と(メタ)アクリル系共重合体(B)の各固形分重量の合計を100(重量%)とした場合の割合である。
【0067】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の割合(固形分重量比率)は50重量%以上であり、60重量%以上が好ましく、さらには70重量%以上が好ましい。(メタ)アクリル系共重合体(A)の割合(固形分重量比率)が50重量%未満では、粘着剤の接着性が低下しハガレが発生しやすくなる。一方、(メタ)アクリル系共重合体(A)の割合(固形分重量比率)は95重量%以下であり、さらには90重量%以下、さらには85重量%以下、さらには85重量%未満で用いるのが好ましい。(メタ)アクリル系共重合体(A)の割合(固形分重量比率)が85重量%未満であれば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびカルボキシル基含有モノマー以外のモノマー単位を有していなくとも効果が良好である。(メタ)アクリル系共重合体(A)の割合液(固形分重量比率)が95重量%を超える場合には、粘着剤の凝集力が低下してハガレが発生しやすくなる。なお、本発明において、(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)の固形分重量は、調製された(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)に係る水分散液から求められる値を基準とする。

【0068】
本発明の水分散型粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)の他に、水溶性樹脂(C)を含有する。水溶性樹脂(C)は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)との混合性、粘着剤層を形成した場合の外観、色味、耐久性等の点から、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)が水中に分散含有されている水分散液、水媒体内で混合して水分散型粘着剤組成物を調製する際に、特にpHが中性から塩基性域で凝集を起こさず、安定した分散液を形成できるものが好ましい。
【0069】
水溶性樹脂(C)における「水溶性」は、25℃における水100gに対する溶解度が5g以上の場合をいう。前記水溶性樹脂(C)の水100gに対する溶解度は、10〜50gであることが好ましい。
【0070】
水溶性樹脂(C)としては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、ビニルピロリドン、アクリルアミド等の親水性モノマーのいずれか少なくとも1種を重合して得られる重合体または共重合体が挙げられる。カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマーとしては、上記(メタ)アクリル系ポリマーの共重合モノマー単位として例示されているものと同様のものを例示できる。
【0071】
また、水溶性樹脂(C)としては、前記親水性モノマーと他の共重合性モノマーとの共重合体が挙げられる。親水性モノマーと共重合することができる他の共重合性モノマーとしては、上記(メタ)アクリル系共重合体の主成分として例示されている炭素数4〜14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートアルキルの他、上記(メタ)アクリル系ポリマーの共重合モノマー単位として例示されている、上記親水性モノマー以外の共重合性モノマーを例示することができ、例えば、スチレン系モノマー;オレフィン系モノマー;メチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0072】
前記親水性モノマーの重合または共重合により得られる水溶性樹脂の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーを重合して得られるポリ(メタ)アクリル酸等のポリカルボン酸系ポリマー、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーと他のモノマーとの共重合体である、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体、(メタ)メタクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体、(メタ)メタクリル酸/アクリルアミド/(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体;スチレン/無水マレイン酸共重合体、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体、アクリルアミド/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、メチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0073】
前記親水性モノマーの重合または共重合により得られる水溶性樹脂のなかでも、カルボキシル基含有モノマーをモノマー単位として含有するもの、即ち、カルボキシル基を含有する水溶性樹脂は、当該カルボキシル基の全部または一部がカルボキシル基の塩を形成しているものが好ましい。カルボキシル基の塩は、前記水溶性樹脂に、水溶性塩基性成分を加えることによりカルボキシル基を中和することにより行なうことができる。水溶性塩基性成分としては、水分散型の(メタ)アクリル系ポリマーのカルボキシル基の中和に用いたものと同様のものを用いることができる。水溶性樹脂のカルボキシル基の塩を形成するカチオンとしては、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、例えば、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属などの無機カチオン;例えば、3級アミン類などの有機カチオン、アンモニウムカチオンなどが挙げられる。これらのなかでも、アンモニウムカチオンまたはナトリウムカチオンが好ましい。
【0074】
前記親水性モノマーの重合または共重合により得られる水溶性樹脂としては、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)と混合性(透明性、分散安定性)の面より、カルボキシル基の塩を含有する水溶性樹脂が好ましい。特に、ポリ(メタ)アクリル酸の塩(特にアンモニウム塩またはナトリウム塩)や、(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの共重合体の塩(特にアンモニウム塩またはナトリウム塩)が、光学特性の維持、分散時の安定性の点から好ましい。
【0075】
カルボキシル基の塩を含有する水溶性樹脂の具体的な商品としては、例えば、ポリカルボン酸アンモニウム塩系分散剤(例えば、日華化学(株)製の商品名ディスパテックスSMA,ロームアンドハース(株)製の商品名オロタン165A,第一工業製薬(株)製の商品名DKSディスコートN−14)、スチレンマレイン酸樹脂半エステル系分散剤(例えば、荒川化学工業(株)製の商品名アラスター703S)などが挙げられる。また、ポリカルボン酸ナトリウム塩系分散剤(例えば、サンノプコ(株)製の商品名SNディスパーサント5034,ノプコスパース44C,(株)日本触媒社製の商品名アクアリックDL−40,DL−365、花王(株)製の商品名ポイズ521,第一工業製薬(株)製の商品名エパン785)などが挙げられる。また、ポリビニルピロリドンの商品名としては(株)日本触媒製の商品名K−30などが挙げられる。
【0076】
上記以外の水溶性樹脂としては、例えば、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン、澱粉及びその誘導体;が挙げられる。
【0077】
また、前記水溶性樹脂(C)は、1重量%水溶液での表面張力が、25〜80mN/mを満足するものが好ましい。この範囲の表面張力を満足するものはガラスとの接着性が向上し好ましい。前記表面張力は、60〜80mN/mであるのがより好ましい。この範囲の表面張力を満足するものは、加湿下に晒した後の白濁が少なく、透明性を要求される光学分野にも好適である。前記表面張力値が高いほど、水溶性樹脂(C)の疎水性成分が少なくなり、つまりカルボキシル基等の親水性成分の濃度が高く、接着性に効果が得られる。
【0078】
本発明の水分散型粘着剤組成物における、上記水溶性樹脂(C)の割合は、固形分重量において、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)の合計100重量部に対して、0.5〜15重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましく、さらには1〜10重量部が好ましい。水溶性樹脂(C)の割合が配合部数0.5重量部未満では、初期接着性の効果が得られ難く、一方、15重量部を超えると弾性率が高くなり過ぎ、接着力が低下傾向になる。
【0079】
本発明の水分散型粘着剤組成物は、水分散型の(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)並びに水溶性樹脂(C)を含有する水分散液であり、水分散型の(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)を含有する水分散液に、上記水溶性樹脂(C)を配合することにより調製することができる。その他、本発明の水分散型粘着剤組成物は、前記水分散型の(メタ)アクリル系共重合体(A)および/または(メタ)アクリル系共重合体(B)を含有する水分散液を調製する過程において、乳化重合時に用いる原料モノマーとして、上記親水性モノマーを乳化重合時の分散安定性を損なわない範囲で併用することで、前記水分散型の(メタ)アクリル系共重合体(A)および/または(メタ)アクリル系共重合体(B)を製造するとともに、別に水溶性樹脂(C)を副反応により同時に形成することにより調製することもできる。
【0080】
上記水溶性樹脂(C)を、水分散型の(メタ)アクリル系共重合体(A)および/または(メタ)アクリル系共重合体(B)の製造とともに形成させる際に用いる親水性モノマーとしては、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリルアミド等が好ましい。通常、水分散型の(メタ)アクリル系共重合体(A)および/または(メタ)アクリル系共重合体(B)の製造にはカルボキシル基含有モノマーが用いられるためカルボキシル基含有モノマーの他に、親水性モノマーとして、ヒドロキシル基含有モノマーやN−ビニルピロリドン等を用いることが好ましい。ヒドロキシル基含有モノマーやN−ビニルピロリドンを用いて、水分散型の(メタ)アクリル系共重合体(A)および/または(メタ)アクリル系共重合体(B)の製造とともに水溶性樹脂(C)を形成するには、通常、前記アルキル(メタ)アクリレート100重量部に対して、ヒドロキシル基含有モノマーやN−ビニルピロリドンを0.2〜10重量部程度が好ましく、0.5〜5重量部で用いるのがより好ましい。
【0081】
なお、本発明の水分散型粘着剤組成物は、前記水分散型の(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)、並びに水溶性樹脂(C)を含有する水分散液を含有するが、これら各水分散液の固形分重量の合計は、水分散型粘着剤組成物に係る水分散液の固形分重量の80重量%以上、さらには90重量%以上、さらには95重量%以上になるように、さらには100%になるように用いるのが好ましい。即ち、水分散型粘着剤組成物に係る水分散液には、(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)、並びに水溶性樹脂(C)の他に、他の成分を用いることができる。他の成分の割合は10重量%以下の割合で用いるのが粘着剤層のヘイズの悪化を抑制する点から好ましい。
【0082】
なお、本発明の水分散型粘着剤組成物が、水分散型の(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)を、コアシェル構造のエマルション粒子として含有する場合には、エマルション粒子を主成分として含有するが、当該コアシェル構造のエマルション粒子の調製の際には、コアシェル構造に関与しなかった、(メタ)アクリル系共重合体(A)のエマルションと、(メタ)アクリル系共重合体(B)のエマルションが生成する場合がある。従って、本発明の水分散型粘着剤組成物は、コアシェル構造のエマルション粒子の他に、(メタ)アクリル系共重合体(A)のエマルションと(メタ)アクリル系共重合体(B)のエマルションを含有してもよい。
【0083】
前記他の成分としては、必要に応じて、架橋剤を含有することができる。水分散型粘着剤組成物が水分散型アクリル系粘着剤の場合に用いられる架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、金属キレート系架橋剤などの一般に用いられているものを使用できる。これら架橋剤は、官能基含有単量体を用いることにより(メタ)アクリル系共重合体(A)中に導入した官能基と反応して架橋する効果を有する。
【0084】
前記架橋剤の配合割合は特に限定されないが、通常、(メタ)アクリル系共重合体(A)の水分散液と(メタ)アクリル系共重合体(B)の各固形分重量の合計を100重量部に対して、架橋剤(固形分)10重量部程度以下の割合で配合される。前記架橋剤の配合割合は、0.001〜10重量部が好ましく、さらには0.01〜5重量部、さらには0.01〜2重量部度程度が好ましい。なお、架橋剤によって、粘着剤層に凝集力を付与できるものの、架橋剤を用いると、密着性が悪くなり加湿ハガレが生じやすくなる傾向がある。
【0085】
さらには、本発明の水分散型粘着剤組成物は、必要に応じて、粘度調整剤、剥離調整剤、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤(顔料、染料など)、pH調整剤(酸または塩基)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等を、また本発明の目的を逸脱しない範囲で各種の添加剤を適宜に使用することもできる。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着剤層などとしても良い。これら添加剤もエマルションとして配合することができる。
【0086】
本発明の粘着剤層は、上記水分散型粘着剤組成物により形成される。粘着剤層の形成は、支持基材に上記水分散型粘着剤組成物を塗布した後、乾燥することより形成することができる。支持基材は各種の材料を用いることができ、例えば、光学フィルム、表面保護フィルム基材やセパレータ(または離型フィルム)があげられる。
【0087】
本発明の粘着部材は、支持基材の片面または両面に前記粘着剤層を積層したものである。本発明の粘着部材は、前記水分散型粘着剤組成物を、支持基材に塗布し、乾燥することにより形成される。粘着剤層を離型フィルムに形成した場合には、当該粘着剤層は支持基材に貼り合せて転写する。
【0088】
上記水分散型粘着剤組成物の塗布工程には、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法が挙げられる。
【0089】
また、前記塗布工程では、形成される粘着剤層が所定の厚み(乾燥後厚み)になるようにその塗布量が制御される。粘着剤層の厚み(乾燥後厚み)は、通常、1〜100μm程度、好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは10〜40μmの範囲に設定される。
【0090】
次いで、粘着剤層の形成にあたっては、塗布された水分散型粘着剤組成物に対して乾燥が施される。乾燥温度は、通常、80〜170℃程度、好ましくは80〜160℃であり、乾燥時間0.5〜30分間程度、好ましくは1〜10分間である。
【0091】
本発明の粘着剤層では、前記(メタ)アクリル系共重合体(B)は、(メタ)アクリル系共重合体(A)から形成される樹脂成分中に最大部分の長さが1nm以上200nm以下のドメインとして存在している。ドメインの最大部分の長さが、前記範囲において、良好な初期接着力を得ることできる。一方、ドメインの最大部分の長さが、200nmを超える場合には、粘着剤層のヘイズが高くなり、偏光解消が生じるようになり、光学用途で使用し難くなる。前記観点から、ドメインの最大部分の長さは、5〜150nmであるのが好ましく、さらには10〜100nmであるのが好ましい。
【0092】
前記(メタ)アクリル系共重合体(B)に基づく、前記ドメインのサイズに係る制御は、(メタ)アクリル系共重合体(B)の水分散液に係る粒子径を、ドメインのサイズに反映させることができる。
【0093】
前記最大部分の長さが1nm以上200nm以下のドメインの領域の割合は98%以上であることが好ましく、さらには100%であることが好ましい。なお、前記最大部分の長さに係るドメインの領域の割合は、最大部分の長さが1nm以上200nm以下の確認にあたって、例外的な極大ドメインは除かれることを意味する。
【0094】
ドメインの最大部分の長さは、透過型電子顕微鏡(TEM)により、任意の場所(写真の画像サイズ:大きさ300nm×300nm〜5000nm×5000nm)を3箇所撮影した各撮影写真について最大ドメインを決定し、かつ3つの撮影写真の最大ドメインのなかで、最も大きな長さを有するドメインの最大部分の長さとした。なお、極大ドメインは除くため、TEM画像は、1nm以上200nm以下のドメインが3個以上あるものを採用し、2個以下のものは採用していない。
【0095】
また、本発明の粘着剤層は、粘着剤層の厚さが23μmの場合のヘイズ値が1%以下であり、0〜1%を満足することができ、光学フィルム用粘着剤層に要求される透明性を有している。前記ヘイズ値は0〜0.8%であることが好ましく、さらには0〜0.5%であることが好ましい。前記ヘイズ値が1%を超えると偏光解消が生じて光学フィルム用途として好ましくない。
【0096】
本発明の粘着剤層は、180度剥離法、温度23℃、剥離速度300mm/分でのガラス板に対する接着力が、5N/25mm以上を満足することができる。前記接着力として、5N/25mm以上を有する場合には、ガラスに対する接着力を維持して、耐久性を満足するうえで好ましい。また、前記接着力は5〜20N/25mmであるのが好ましく、さらには5〜15N/25mmであるのが好ましく、さらには5〜10N/25mmであるのが好ましい。
【0097】
離型フィルムの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などを挙げることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0098】
そのプラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどが挙げられる。
【0099】
前記離型フィルムの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。前記離型フィルムには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記離型フィルムの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0100】
前記粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで離型フィルムで粘着剤層を保護してもよい。なお、上記の剥離フィルムは、そのまま粘着部材のセパレータとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0101】
また、支持基材の表面に、粘着剤層との間の密着性を向上させるために、アンカー層を形成したり、コロナ処理、プラズマ処理などの各種易接着処理を施した後に粘着剤層を形成することができる。また、粘着剤層の表面には易接着処理をおこなってもよい。
【0102】
上記アンカー層の形成材としては、好ましくは、ポリウレタン、ポリエステル、分子中にアミノ基を含むポリマー類、オキサゾリニル基を含むポリマー類から選ばれるアンカー剤が用いられ、特に好ましくは、分子中にアミノ基を含んだポリマー類、オキサゾリニル基を含むポリマー類である。分子中にアミノ基を含むポリマー類、オキサゾリニル基を含むポリマー類は、分子中のアミノ基、オキサゾリニル基が粘着剤中のカルボキシル基等と反応またはイオン性相互作用などの相互作用を示すため、良好な密着性が確保される。
【0103】
分子中にアミノ基を含むポリマー類としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリジン、ジメチルアミノエチルアクリレート等の含アミノ基含有モノマーの重合体などを挙げることができる。
【0104】
前記支持基材が光学フィルムの場合には、粘着部材として粘着型光学フィルムが用いられる。光学フィルムとしては、液晶表示装置等の画像表示装置の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。例えば、光学フィルムとしては偏光板が挙げられる。偏光板は偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。
【0105】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に5〜80μm程度である。
【0106】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0107】
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。なお、偏光子の片側には、透明保護フィルムが接着剤層により貼り合わされるが、他の片側には、透明保護フィルムとして、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などが挙げられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0108】
また光学フィルムとしては、例えば反射板や反透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視覚補償フィルム、輝度向上フィルム、表面処理フィルム等の液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層となるものが挙げられる。これらは単独で光学フィルムとして用いることができる他、前記偏光板に、実用に際して積層して、1層または2層以上用いることができる。
【0109】
表面処理フィルムは、前面板に貼り合せても設けられる。表面処理フィルムとしては、表面の耐擦傷性を付与するために用いられるハードコートフィルム、画像表示装置に対する写り込みを防止するためのアンチグレア処理フィルム、アンチリフレクティブフィルム、ローリフレクティブフィルムなどの反射防止フィルム等が挙げられる。前面板は、液晶表示装置や有機EL表示装置、CRT、PDP等の画像表示装置を保護したり、高級感を付与したり、デザインにより差別化したりするために、前記画像表示装置の表面に貼り合せて設けられる。また前面板は、3D−TVにおけるλ/4板の支持体として用いられる。例えば、液晶表示装置では、視認側の偏光板の上側に設けられる。本発明の粘着剤層を用いた場合には、前面板として、ガラス基材の他に、ポリカーボネート基材、ポリメチルメタクリレート基材等のプラスチック基材においてもガラス基材と同様の効果を発揮する。
【0110】
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板と他の光学層の接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0111】
本発明の粘着型光学フィルムは液晶表示装置等の各種画像表示装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セル等の表示パネルと粘着型光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による粘着型光学フィルムを用いる点を除いて特に限定は無く、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型、VA型、IPS型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0112】
液晶セル等の表示パネルの片側又は両側に粘着型光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学フィルムは液晶セル等の表示パネルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0113】
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置:OLED)について説明する。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
【0114】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0115】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0116】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0117】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
【0118】
位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1/4波長板で構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0119】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1/4波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
【0120】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0121】
上記のように有機EL表示装置では、鏡面反射を遮るために、有機ELパネルに、位相差板および偏光板を組み合わせた楕円偏光板または円偏光板を粘着剤層を介して用いることができるが、その他に、楕円偏光板または円偏光板を有機ELパネルに直接貼り合わせずに、楕円偏光板または円偏光板をタッチパネルに粘着剤層を介して貼り合わせたものを、有機ELパネルに適用することができる。
【0122】
本発明において適用される、タッチパネルとしては、光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などの各種の方式を採用できる。抵抗膜方式のタッチパネルは、透明導電性薄膜を有するタッチ側のタッチパネル用電極板と透明導電性薄膜を有するディスプレイ側のタッチパネル用電極板を、透明導電性薄膜同士が対向するようにスペーサを介して対向配置してなるものである。他方、静電容量方式のタッチパネルは、通常、所定のパターン形状を有する透明導電性薄膜を備えた透明導電性フィルムがディスプレイ表示部の全面に形成されている。本発明の粘着型光学フィルムは、タッチ側、ディスプレイ側のいずれの側にも適用される。
【実施例】
【0123】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。
【0124】
製造例1
(モノマーエマルション(A1)の調製)
容器に、原料として、アクリル酸ブチル380部、アクリル酸20部および3−メタクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン(信越化学工業(株)製,KBM−503)0.12部およびを加えて混合して、モノマー混合物(A1)を得た。次いで、調製したモノマー混合物(A1)320部に対して、反応性界面活性剤(アニオン性)であるアクアロンHS−10(第一工業製薬(株)製)3.2部、イオン交換水214部を加え、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)を用い、5分間、6000(rpm)で攪拌し、モノマーエマルション(A1)を調製した。
【0125】
(モノマーエマルション(B1)の調製)
別の容器に、原料として、アクリル酸ブチル15部、アクリル酸5部、メタクリル酸メチル80部および3−メタクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン(信越化学工業(株)製,KBM−503)0.03部を加えて混合して、モノマー混合物(B1)を得た。次いで、上記割合で調製したモノマー混合物(B1)80部に対して、反応性界面活性剤(アニオン性)であるアクアロンHS−10(第一工業製薬(株)製)8.8部、イオン交換水362部を加え、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)を用い、5分間、6000(rpm)で攪拌し、モノマーエマルション(B1)を調製した。
【0126】
(コアシェル構造のエマルション粒子を含有する水分散液の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートおよび攪拌羽根を備えた反応容器に、上記で調製したモノマーエマルション(B1)を仕込み、次いで、反応容器を十分窒素置換した後、過硫酸アンモニウム0.04部(モノマー混合物(B1)80部に対して0.05%)を添加して、撹拌しながら65℃で1時間重合してコア層になる共重合体を得た。次いで、過硫酸アンモニウム0.12部(モノマー混合物(A1)320部に対して0.0375%)をさらに添加し、その10分後から、反応容器を65℃に保ったまま、モノマーエマルション(A1)を3時間かけて滴下し、その後、3時間重合して、シェル層を形成し、固形分濃度42%の、コアシェル構造のポリマーエマルション粒子を含有する水分散液を得た。次いで、上記ポリマーエマルション粒子を含有する水分散液を室温まで冷却した後、これに、濃度10%のアンモニア水を添加してpHを8にし、かつ、固形濃度分41%に調整した、コアシェル構造のエマルション粒子を含有する水分散液(B1−A1)を得た。
【0127】
製造例2
(モノマーエマルション(A2)の調製)
製造例1で調製したモノマー混合物(A1)400部に対して、反応性界面活性剤(アニオン性)であるアクアロンHS−10(第一工業製薬(株)製)4部、イオン交換水268部を加え、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)を用い、5分間、6000(rpm)で攪拌し、モノマーエマルション(A2)を調製した。
【0128】
((メタ)アクリル系共重合体エマルション係る水分散液(A2)の調製)
次に、冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートおよび攪拌羽根を備えた反応容器に、上記で調製したモノマーエマルション(A2)のうちの136部、反応性界面活性剤(アニオン性)であるアクアロンHS−10(第一工業製薬(株)製)8部およびイオン交換水308部を仕込み、次いで、反応容器を十分窒素置換した後、過硫酸アンモニウム0.1部を添加して、撹拌しながら65℃で1時間重合した。次いで、過硫酸アンモニウム0.3部をさらに添加し、その10分後から、反応容器を65℃に保ったまま、残りのモノマーエマルションを3時間かけて滴下し、その後、3時間重合して、固形分濃度42%のポリマーエマルションを得た。次いで、上記ポリマーエマルションを室温まで冷却した後、これに、濃度10%のアンモニア水を添加してpHを8にし、固形分濃度41%の(メタ)アクリル系共重合体エマルションに係る水分散液(A2)を得た。
【0129】
製造例3
(モノマーエマルション(B2)の調製)
容器に、メタクリル酸メチル360部、アクリル酸ブチル32部、アクリル酸8部および3−メタクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン(信越化学工業(株)製,KBM−503)0.12部を加えて混合して、モノマー混合物(B2)を得た。次いで、調製したモノマー混合物(B2)400部に対して、反応性界面活性剤(アニオン性)であるアクアロンHS−10(第一工業製薬(株)製)4部、イオン交換水268部を加え、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)を用い、5分間、6000(rpm)で攪拌し、モノマーエマルション(B2)を調製した。
【0130】
((メタ)アクリル系共重合体エマルション係る水分散液(B2)の調製)
次に、冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートおよび攪拌羽根を備えた反応容器に、上記で調製したモノマーエマルション(B2)のうちの136部、反応性界面活性剤(アニオン性)であるアクアロンHS−10(第一工業製薬(株)製)8部およびイオン交換水308部を仕込み、次いで、反応容器を十分窒素置換した後、過硫酸アンモニウム0.1部を添加して、撹拌しながら65℃で1時間重合した。次いで、過硫酸アンモニウム0.3部をさらに添加し、その10分後から、反応容器を65℃に保ったまま、残りのモノマーエマルションを3時間かけて滴下し、その後、3時間重合して、固形分濃度42%のポリマーエマルションを得た。次いで、上記ポリマーエマルションを室温まで冷却した後、これに、濃度10%のアンモニア水を添加してpHを8にし、固形分濃度41%の(メタ)アクリル系共重合体エマルションに係る水分散液(B2)を得た。
【0131】
実施例1
(水分散型粘着剤組成物の調製)
固形分換算の重量で、製造例1で調製したコアシェル構造のエマルション粒子を含有する水分散液(B1−A1)の100部に対して、ポリカルボン酸アンモニウム塩系水溶性樹脂(ロームアンドハース(株)製のオロタン165A,1%水溶液の表面張力は30.3[mN/m])を5部添加して、水分散型粘着剤組成物を調製した。
【0132】
(粘着剤層の形成および粘着部材の作成)
上記水分散型粘着剤組成物を、乾燥後の厚みが23μmとなるように、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート基材上にダイコーターにより塗布した後、100℃で2分間乾燥して、粘着剤層を形成した粘着部材を得た。なお、ポリエチレンテレフタレート基材は、易接着処理を施したものを用いた。
【0133】
一方、上記ポリエチレンテレフタレート基材の代わりに、剥離処理を施した厚さ38μmの離型フィルム(ポリエチレンテレフタレート基材)を用いて、当該剥離処理面に、上記同様の操作により厚さ23μmの粘着剤層を形成した。
【0134】
実施例2〜8、比較例1〜4
(水分散型粘着剤組成物の調製)
実施例1において、用いた(メタ)アクリル系共重合体エマルションの種類、使用割合、水溶性樹脂の種類、使用割合を表1に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして水分散型粘着剤組成物を得た。
【0135】
なお、実施例2〜4、比較例3では、(メタ)アクリル系共重合体に関して、コアシェル構造のエマルション粒子を含有する水分散液(B1−A1)を用いた。実施例5〜6、比較例4では、(メタ)アクリル系共重合体エマルション係る水分散液(A2)および(B2)を混合して用いた。比較例1、2では(メタ)アクリル系共重合体エマルション係る水分散液(A2)を単独で用いた。
【0136】
(粘着剤層の形成および粘着部材の作成)
上記水分散型粘着剤組成物を用いて実施例1と同様にして粘着剤層を形成した粘着部材を得た。また、実施例1と同様にして離型フィルムに粘着剤層を形成した。
【0137】
上記各例で得られた(メタ)アクリル系共重合体エマルション等のガラス転移温度(上記FOX式に基づく理論値)を表1に示す。ガラス転移温度の計算には、下述する各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(K)を用いて算出した。アクリル酸ブチル(228.15K)、アクリル酸(379.15K)、メタクリル酸メチル(378.15K)。ガラス転移温度の算出結果は、製造例1のコア層に係る(メタ)アクリル系共重合体(B1)は71.2℃、シェル層に係る(メタ)アクリル系共重合体(A1)は−40.2℃、製造例2の(メタ)アクリル系共重合体(A2)は−40.2℃、製造例3の(メタ)アクリル系共重合体(B)は86.3℃である。
【0138】
水溶性樹脂(C)の表面張力は、イオン交換水を用いて1%水溶液に調整した後、島津製作所社製の自動接触角測定装置(ST−1S型)と、そのプローブとしてガラス製張力測定板を使用して、20℃の条件下においてウィルヘルミ法により求めた。測定値は表1にも示す。
【0139】
上記実施例および比較例で得られた粘着剤層および粘着部材について以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0140】
[ドメインの大きさいの確認]
粘着部材から粘着剤層のみを取り出し、ヨウ素およびルテニウム酸にて染色した。染色した粘着剤層をミクロトームにて80nm厚の超薄切片を作成してサンプルを作成した。作成したサンプルを透過型電子顕微鏡(TEM)である(株)日立ハイテクノロジーズ製のH-7650にて観察した。ドメインの部分はルテニウムにより濃く染色されている部分とし、(メタ)アクリル系共重合体エマルション粒子は比較的に薄く染色されている部分とした。得られた画像を、画像処理ソフトを使用して写真とし、その写真からドメインの最大部分の長さを測定した。結果を表1に示す。
【0141】
ドメインの最大部分の長さは、透過型電子顕微鏡(TEM)により、任意の場所を3箇所撮影した各撮影写真について最大ドメインを決定し、かつ3つの撮影写真の最大ドメインのなかで、最も大きな長さを有するドメインの最大部分の長さとした。なお、最大部分の長さに係るドメインには、例外的な極大ドメインは除かれる。そのため、TEM画像は、1nm以上200nm以下のドメインが3個以上あるものを採用し、2個以下のものは採用していない。
【0142】
実施例の粘着剤層は、ドメインに関し、最大部分の長さが1nm以上200nm以下のドメインの割合が98%以上を満足していた。比較例1ではエマルション粒子が確認されたのみであった。
【0143】
(接着力評価)
実施例、比較例で作製した粘着部材(シート)を25mm幅×150mm長さに裁断し、これをガラス板に対して2kgローラーを1往復して貼付した。その後、50℃、0.5MPaのオートクレーブ中に15分間放置し、次いで23℃に冷却して、180度方向に300mm/分の速度で、引張試験器により剥離した際の接着力(N/25mm)を測定した。
【0144】
(ヘイズ評価)
各例で得られた、離型フィルムに設けた厚さ23μmの粘着剤層について140℃で90分間加熱処理を行った。その後、離型フィルムを剥離し、ガラスに貼付したものをサンプル(初期)とした。この初期サンプルのヘイズ値を測定した。またこのサンプルを、60℃、90%RHの恒温恒湿機中に500時間投入して加熱処理をした後、サンプルを取り出し、室温(23℃、55%RH)に60分間放置した後にヘイズ値(%)を測定した。へイズ値の測定は、25℃の雰囲気下で、(株)村上色彩技術研究所社製の「HAZEMETER HM−150型」を用いて、JISK−7136に準じて行った。加熱処理した後のサンプルのヘイズ値が2.5未満であれば「○」、2.5以上5.0未満であれば「△」、5.0以上であれば「×」とした。
【0145】
【表1】

【0146】
表1中、オロタン165Aは、ロームアンドハース(株)製のポリカルボン酸アンモニウム塩(1%水溶液の表面張力は30.3[mN/m]);
SNディスパーサント5034は、サンノプコ(株)製のポリカルボン酸ナトリウム塩(1%水溶液の表面張力は70.0[mN/m]);
アクアリックDL−365は、(株)日本触媒製のポリアクリル酸ナトリウム塩(1%水溶液の表面張力は73.1[mN/m]);
エパン785は、第一工業製薬(株)製の水溶性樹脂(1%水溶液の表面張力は40.4[mN/m])、を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位として含有し、かつ、ガラス転移温度(但し、ガラス転移温度はモノマー単位中の単官能モノマーに基づいて算出される)が−55℃以上0℃以下の水分散型の(メタ)アクリル系共重合体(A)、
(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位として含有し、かつ、ガラス転移温度(但し、ガラス転移温度はモノマー単位中の単官能モノマーに基づいて算出される)が0℃以上180℃以下の水分散型の(メタ)アクリル系共重合体(B)、および、水溶性樹脂(C)を含有する水分散液であって、
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)のいずれか少なくとも一方は、カルボキシル基含有モノマーをモノマー単位として含有しており、
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度と、(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度の差が50℃以上あり、かつ、
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)と(メタ)アクリル系共重合体(B)との混合割合が(A)/(B)=50〜95/5〜50(固形分重量比)の範囲である水分散液からなることを特徴とする水分散型粘着剤組成物。
【請求項2】
前記水溶性樹脂(C)が、カルボキシル基塩を有する水溶性樹脂であることを特徴とする請求項1記載の水分散型粘着剤組成物。
【請求項3】
前記水溶性樹脂(C)の割合が、固形分重量比において、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)の合計100重量部に対して、0.5〜15重量部であることを特徴とする請求項1または2記載の水分散型粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)は、同一エマルション粒子内に、いずれか一方の共重合体がコア層、もう一方の共重合体がシェル層として存在するコアシェル構造のエマルション粒子を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水分散型粘着剤組成物。
【請求項5】
前記コア層が(メタ)アクリル系共重合体(B)であり、シェル層が(メタ)アクリル系共重合体(A)であることを特徴とする請求項4記載の光学フィルム用水分散型粘着剤組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)は、それぞれの(メタ)アクリル系共重合体(A)の水分散液および(メタ)アクリル系共重合体(B)の水分散液に由来するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水分散型粘着剤組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)のいずれか少なくとも一方が、モノマー単位として、アルコキシシリル基含有モノマー(但し、アルコキシシリル基含有モノマーは、ガラス転移温度の算出に係る単官能モノマーからは除く)を含有しており、かつ、当該アルコキシシリル基含有モノマーの割合が、(メタ)アクリル系共重合体(A)または(メタ)アクリル系共重合体(B)の総モノマー単位の0.001〜1重量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の水分散型粘着剤組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の水分散型粘着剤組成物を塗布した後、乾燥することにより形成されたものであることを特徴とする粘着剤層。
【請求項9】
前記粘着剤層において、前記(メタ)アクリル系共重合体(B)は、(メタ)アクリル系共重合体(A)から形成される樹脂成分中にドメインとして存在し、当該ドメインは、最大部分の長さが1nm以上200nm以下のドメインの領域の割合が98%以上であることを特徴とする請求項8記載のとする粘着剤層。
【請求項10】
前記粘着剤層は、180度剥離法、温度23℃、剥離速度300mm/分でのガラス板に対する接着力が、5N/25mm以上であることを特徴とする請求項8または9記載の粘着剤層。
【請求項11】
支持基材の少なくとも片側に、請求項8〜10のいずれかに記載の粘着剤層が積層されていることを特徴とする粘着部材。
【請求項12】
請求項8〜10のいずれかに記載の粘着剤層または請求項11記載の粘着部材を少なくとも1つ用いていることを特徴とする画像表示装置。





【公開番号】特開2012−126789(P2012−126789A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278129(P2010−278129)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】