説明

水分散型粘着剤組成物及び粘着シート

【課題】水分散型アクリル系粘着剤において、低温粘着性及び曲面接着性が高度に両立され、且つ貯蔵安定性にも優れた粘着剤組成物、及びこれを用いてなる粘着シートを提供する。
【解決手段】ガラス転移温度が−75〜−30℃であるアクリル系共重合体の水分散体及び数平均分子量が800〜2000であるポリブテンの水分散体を含み、該アクリル系共重合体100質量部に対する該ポリブテンの含有量が1〜50質量部である水分散型粘着剤組成物、並びに該粘着剤組成物を基材の片面又は両面に塗工及び乾燥してなる粘着シート。
また、上記粘着シートは−15℃の環境下、ポリプロピレン板を被着体としてJIS Z 0237に準じて測定される粘着力が1.0N/10mm以上、及び/又は曲面接着性試験において試験片端部の剥がれた距離が10mm以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散型の粘着剤組成物及び粘着シートに関する。さらに詳しくは、貯蔵安定性並びに粘着力及び凝集力のバランスに優れ、特に低温接着性及び曲面接着性に優れる水分散型粘着剤組成物及びこれを用いてなる粘着シート類に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤(感圧接着剤ともいう)は、テープ、ラベル、ステッカー及びシールなどの用途において幅広く利用され、その被着対象物もプラスチック、紙類、金属、ガラス及び陶器など様々な物質に対して適用される。また、被着体の形状も平面状あるいは曲面状等多岐にわたるものである。
一方、粘着剤はその主成分から天然ゴム系、合成ゴム系及びアクリル系等に分類されるが、中でもアクリル系粘着剤は粘着性及び耐候性に優れ、その単量体組成を変化させることにより幅広い粘着特性を付与することが可能であることから多くの粘着製品に使用されている。
【0003】
さらに、近年では環境衛生等の観点から有機溶剤型の粘着剤に変えて水分散型(エマルション型ともいう)の粘着剤が広く用いられるようになってきているが、一般に水分散型アクリル系粘着剤はゴム系及び溶剤型粘着剤に比較して低温での接着性に劣る傾向があり、低温環境下で使用された際には粘着製品の剥がれ等の問題が懸念される。
上記課題に対しては粘着剤の主成分となるポリマーの改質、粘着付与剤等の添加剤の配合検討等の様々な改良が行われており、例えば、特許文献1ではガラス転移点が−40℃〜0℃である環状テルペンフェノール系粘着付与剤を含有する粘着剤組成物が開示されており、特許文献2ではアクリル系樹脂に液状粘着付与樹脂を配合し、架橋剤により架橋せしめた粘着層を有する粘着シートが開示されている。しかし、これらにおいても低温粘着性は十分でない場合があった。又この場合、低温粘着性を向上させるためには粘着性樹脂を十分に柔軟な設計とすることが効果的であるが、反面、凝集力が不足して曲面接着性等が劣るという問題があった。
特許文献3にはアクリル系エマルション及びポリブテンを含有する水性エマルション型粘着剤組成物が開示されているが、同様に低温粘着性及び曲面接着性が十分でない場合があり、さらには貯蔵安定性にも問題を生じる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−144160号公報
【特許文献2】特開2000−319618号公報
【特許文献3】特開2007−63419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、低温粘着性及び曲面接着性が高度に両立され、且つ貯蔵安定性にも優れた水分散型アクリル系粘着剤組成物及びこれを用いてなる粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定のポリブテン水分散体を含む水分散型粘着剤を使用することが有効であることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明は以下の通りである。
1.ガラス転移温度が−75〜−30℃であるアクリル系共重合体の水分散体及び数平均分子量が800〜2000であるポリブテンの水分散体を含み、該アクリル系共重合体100質量部に対する該ポリブテンの含有量が1〜50質量部である水分散型粘着剤組成物。
2.上記アクリル系共重合体が架橋されていることを特徴とする上記1に記載の水分散型粘着剤組成物。
3.上記1又は2のいずれかに記載の水分散型粘着剤組成物を支持体の片面又は両面に塗布してなる粘着シート。
4.−15℃の環境下、ポリプロピレン板を被着体としてJIS Z 0237に準じて測定される粘着力が1.0N/10mm以上であることを特徴とする上記3に記載の粘着テープ。
5.曲面接着性試験において試験片端部の剥がれた距離が10mm以下であることを特徴とする上記3又は4に記載の粘着テープ。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水分散型粘着剤組成物によれば、例えば−15℃程度の低温環境下においても十分な粘着力が得られ、且つ優れた曲面接着性が示される。更には、良好な貯蔵安定性が確保される。又、水分散型粘着剤組成物に含まれるアクリル系共重合体が架橋されている場合にはさらに良好な凝集力及び曲面接着性が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ガラス転移温度が−75〜−30℃であるアクリル系共重合体の水分散体及び数平均分子量が800〜2000であるポリブテンの水分散体を含み、該アクリル系共重合体100質量部に対する該ポリブテンの含有量が1〜50質量部である水分散型粘着剤組成物、及びこれを用いてなる粘着シートに関する。
以下、本発明について詳しく説明する。尚、本願明細書においては、アクリル酸又はメタクリル酸を、(メタ)アクリル酸と表す。
【0010】
本発明で使用されるアクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主要構成単位として含む重合体である。又、そのガラス転移温度(Tg)は−75〜−30℃の範囲にある粘着性を有する重合体であり、−75〜−40℃の範囲が好ましい。Tgが−75℃未満の場合は得られる粘着剤の凝集力が不十分となり、曲面接着性等が悪化する傾向があり、−30℃を超える場合は特に低温下での粘着力が十分でない場合がある。
本発明におけるアクリル系共重合体のTgは下記のように示差走査熱量計(DSC)により測定できる。
<ガラス転移温度の測定>
示差走査熱量計「DSC5200」(セイコーインスツルメンツ社製)を用い、窒素雰囲気下で昇温速度が20℃/分の条件により、ガラス転移温度(Tg)を測定した。尚、測定に用いたサンプル量は5〜10mgとした。
【0011】
前記アクリル系共重合体を構成する単量体としては、Tgが低く粘着性を有するアクリル系共重合体が得られる点で炭素数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用が好ましく、例えば(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げられ、好ましい単量体としては(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル等が挙げられる。
【0012】
上記炭素数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量はアクリル系共重合体の全構成単量体を基準にして30〜100質量%が好ましく、50〜99質量%が更に好ましい。30質量%未満の場合は得られる粘着剤組成物の粘着力、タック及び低温粘着性等が不十分となる。
【0013】
本発明のアクリル系共重合体は前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外にも粘着性能を損なわない範囲で、これと共重合可能な他の単量体を使用することができる。共重合可能な単量体としては例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のα、β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル等の炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族系単量体;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂肪族環系ビニル単量体;イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル等の不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート及びポリエチレン−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシブチルアクリルアミド等のエチレン系不飽和カルボン酸アミド及びN−置換化合物;アリルアルコール等の不飽和アルコール;(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸グリシジル、ダイアセトンアクリルアミド等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を使用することができる。
【0014】
本発明のアクリル系共重合体は架橋されていることが好ましい。アクリル系共重合体が架橋されている場合にはさらに良好な凝集力及び曲面接着性を有する粘着剤組成物が得られる。
架橋はカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基及びカルボニル基等の反応性官能基が導入されたアクリル系重合体と架橋性官能基を有する架橋剤との間の架橋反応により行われる。この他にも1分子中に2個以上のビニル基を有する、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等の架橋性単量体の共重合、又はメチロール基含有単量体及び加水分解性シリル基含有単量体等の自己架橋可能な官能基を有する単量体を導入することによっても架橋は可能である。
【0015】
上記架橋剤としては上記反応性官能基と架橋反応し得るものであれば特に限定はされないが、例えばエポキシ系、イソシアネート系、ヒドラジド系、カルボジイミド系及びオキサゾリン系等の架橋剤から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも反応性、粘着性能及び入手のし易さから、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等のヒドラジド系架橋剤が好適に用いられる。
【0016】
架橋剤の添加量は目的とする粘着性能により適宜調整されるものであるが、アクリル系共重合体100質量部当たり0.05〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部が更に好ましい。架橋剤量が10質量部を超えると粘着力が低下する場合があり、0.05質量部未満では架橋による凝集力向上の効果が得られにくい。
【0017】
本発明におけるアクリル系共重合体の水分散体は、上記単量体の混合物を公知の方法によって乳化剤及び重合開始剤の存在下に水性媒体中でラジカル乳化重合することにより容易に製造できる。使用する乳化剤としては、通常の乳化重合の際に用いられる公知の乳化剤を使用することができる。例えば、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性イオン性乳化剤等の各種の乳化剤を用いることができる。アニオン性乳化剤としては、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルジフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、高分子乳化剤等が挙げられる。更に、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルジフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、アセチレンジオール系乳化剤、ソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類、グリセリン高級脂肪酸エステル類、ポリカルボン酸系高分子乳化剤、ポリビニルアルコール等が挙げられる。また、カチオン性乳化剤としては、アルキル(アミド)ベタイン、アルキルジミチルアミンオキシド、特殊乳化剤として、フッ素系乳化剤やシリコーン系乳化剤等が挙げられる。これらの乳化剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
【0018】
また、上記で挙げた非反応性の乳化剤以外にも反応性の乳化剤を使用することができる。この反応性乳化剤とは、エチレン性不飽和基等の重合性官能基を有する乳化剤である。反応性乳化剤としては、反応性基を有する乳化剤であれば特に限定されないが、例えば下記式(1)〜(12)に示される乳化剤が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。反応性乳化剤を使用して製造した場合は、耐水性に優れる粘着層が得られる水分散型粘着剤組成物とすることができる。
【0019】
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

上記一般式(1)〜(12)において、R1はアルキル基、R2は水素原子又はメチル基、R3はアルキレン基、n、mは1以上の整数、l、kは1以上の整数(l+k=3)、Xは水素原子又はSO3NH4、SO3Na、YはSO3NH4又はSO3Naのいずれかである。
【0020】
乳化剤の使用量は、その種類及び重合条件等により選択されるが、単量体100質量部あたり通常0.01〜50質量部であり、好ましくは0.05〜20質量部、さらに好ましくは0.1〜10質量部である。乳化剤の使用量が少ない場合は製造時の安定性が不十分となり凝集物等を生じやすく、一方乳化剤が多すぎる場合は粘着製品使用時に乳化剤が吸湿及び吸水することにより、耐水性の悪化や粘着力の低下を引き起こす。
【0021】
重合開始剤としては過酸化物及びアゾ系化合物等の公知のラジカル重合開始剤を使用することが可能であり、これらのラジカル重合開始剤は組み合わせて用いることもできる。また、過酸化物と、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム、酒石酸、クエン酸、ホルムアルデヒドスルホキシラートの金属塩、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、塩化第二鉄等の還元剤とを併用したレドックス重合開始系によっても重合させることができる。
【0022】
上記過酸化物としては、過酸化水素;過硫酸塩(過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等)等の無機過酸化物;ハイドロパーオキサイド(クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド(tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等)、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル(tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート等)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、過コハク酸等の有機過酸化物が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
又、上記アゾ化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
ラジカル重合開始剤の使用量は、その種類、及び重合条件等により選択されるが、上記単量体100質量部に対して、通常0.01〜10質量部である。
【0024】
上記乳化重合における単量体の重合は、通常、攪拌及び還流冷却しながら、水系媒体中、加熱された反応系で行われ、その具体的な方法を以下に例示する。
〔1〕水系媒体に、単量体、乳化剤及びラジカル重合開始剤を個別に添加しながら、もしくは、これらのうちの2種又は3種を組み合わせて添加しながら重合する方法。
〔2〕水系媒体、並びに、一部又は全ての単量体及び/もしくは一部又は全ての乳化剤の混合物に、ラジカル重合開始剤、並びに、残りの単量体及び/又は残りの乳化剤を添加しながら重合する方法。
上記各態様において、原料成分の添加方法は一括添加法、連続添加法及び分割添加法のいずれでもよい。連続添加法の場合、供給速度は一定でも不定でもよい。また、分割添加法の場合、原料成分の添加間隔は一定でも、不定でもよい。
更に、上記重合工程の初期において、反応系における単量体及び水系媒体の質量比は、水系媒体の量を100質量部としたときに、単量体量が30〜300質量部であることが好ましい。
【0025】
上記水系媒体としては、水のみを、あるいは、水及び水溶性有機溶媒(アルコール、ケトン、エーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等)とからなる混合物を用いることができる。この水系媒体が混合物である場合、水の含有量は水系媒体を100質量%としたときに、通常30質量%以上である。
【0026】
また、上記乳化重合においては、得られるエマルションの用途等に応じて連鎖移動剤を用いることができる。
この連鎖移動剤としては、メルカプト基含有化合物(エタンチオール、ブタンチオール、ドデカンチオール、ベンゼンチオール、トルエンチオール、α−トルエンチオール、フェネチルメルカプタン、メルカプトエタノール、3−メルカプトプロパノール、チオグリセリン、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、α−メルカプトイソ酪酸、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸エチル、チオ酢酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、tert−テトラデシルメルカプタン等)、キサントゲンジスルフィド化合物(ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等)、チウラムジスルフィド化合物(テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等)、ハロゲン化炭化水素(四塩化炭素、臭化エチレン等)、芳香族炭化水素(ペンタフェニルエタン、α−メチルスチレンダイマー等)等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
上記乳化重合における、単量体の重合温度は、単量体の種類及びラジカル重合開始剤の種類等により適宜選択されるが、通常60〜95℃である。
【0028】
ポリブテンはポリオレフィン樹脂の1種であり親油性の高い材料として知られており、溶剤、潤滑剤、絶縁剤、及び可塑剤等の幅広い分野で用いられている。
本発明で使用されるポリブテンの数平均分子量は800〜2000であることが必要であり、更に好ましくは900〜1500である。数平均分子量が800未満の場合は粘着剤組成物の曲面接着性の低下が見られ、2000を超える場合には粘着剤組成物の安定性が不十分となることがあり、また曲面接着性の低下も見られる。
【0029】
上記ポリブテンとしては市販のものを使用することが可能であるが、本発明においては水分散体の形態で用いられることが必要である。ポリブテンは親水性が乏しく水への溶解性に劣るため、樹脂自体のままでアクリル系共重合体の水分散体と混合等された結果得られた粘着剤組成物は貯蔵安定性等が不十分な場合があるが、水分散体として用いることにより安定な粘着剤組成物を得ることができる。また、水分散されたポリブテンを用いた場合にはアクリル系共重合体と均一に混合されるため、低温粘着力や曲面接着性等においても良好な性能が示される。
ポリブテンの水分散体は水系乳化分散液として市販されているものを用いることができ、例えばエマウェット10E、エマウェット10H、エマウェット30E、エマウェット30H(いずれも日油社製)等を挙げることができる。
【0030】
また、本発明ではポリブテンを公知の方法により水分散化した後に使用することもできる。具体的には、ポリブテン、乳化剤及び水等を混合した後、常圧若しくは加圧下で、必要に応じて加熱等を行いながら攪拌混合することによりポリブテンの水分散体が得られる。
攪拌混合を行う機器としては、ホモミキサー等の各種ミキサー、コロイドミル、高圧乳化機、及び高圧吐出型乳化機などの各種乳化機が用いられる。
【0031】
ポリブテンの水分散体を得る際に使用する乳化剤は特に制限されることはなく、アニオン系、ノニオン系、カチオン系の各種の乳化剤が使用できるが、アクリル系重合体の水分散液と混合した際の安定性の観点からアニオン系乳化剤及びノニオン系乳化剤を単独または併用で用いることが好ましい。また、その使用割合はポリブテン100質量部に対して1〜50質量部が好ましく、1〜30質量部が特に好ましい。
乳化剤の量が1質量部未満の場合は安定な水分散体が得られ難く、50質量部を超えると得られる粘着剤組成物の耐水性及び凝集力の低下を引き起こす。
【0032】
本発明における前記アクリル系共重合体100質量部に対する前記ポリブテンの含有量は固形分として1〜50質量部であることが必要であり、好ましくは3〜20質量部である。
ポリブテンの含有量が1質量部未満では低温接着性への効果が十分現れず、50質量部を超えると凝集力及び曲面接着性が低下するために好ましくない。
【0033】
本発明における粘着剤組成物は、上記したようにアクリル系共重合体の水分散液及びポリブテンの水分散液を含んでなるものであるが、用途等により必要に応じて分散剤、消泡剤、増粘剤、粘着付与剤、可塑剤、潤滑剤、成膜助剤、繊維助剤、洗浄剤、帯電防止剤、均染剤、湿潤剤、及びレベリング剤、架橋剤等の一般的な添加剤を添加したものであっても良い。
【0034】
このようにして得られる粘着剤組成物は各種基材の片面又は両面に塗工後、水分を乾燥することにより粘着剤層を形成し、粘着シート又は粘着テープ等の粘着製品として好適に用いることができる。基材としては、紙類、フィルム、布、不織布、及び金属箔等を用いることができ、粘着剤組成物の塗工は直接これらの基材上に行っても良いし、離型紙等に塗工して乾燥した後に基材に転写しても良い。
粘着シートに形成される粘着剤の厚みは用途により選択されるが、通常は1〜100μmの範囲であり、5〜80μmの範囲が好ましく、10〜50μmの範囲が更に好ましい。
【0035】
本発明における粘着シートは、−15℃の環境下、ポリプロピレン板を被着体としてJIS Z 0237に準じて測定される粘着力(今後、低温粘着力という)が1.0N/10mm以上であることが好ましい。本発明における低温粘着力は、後述する実施例の欄
にも記載の通り、厚さ50μmのポリプロピレンフィルム基材の片面に厚さ25μmの粘着剤層が形成された粘着シートを試験片とする180度剥離強度測定により得られた値をいう。
【0036】
また、本発明における粘着シートは曲面接着性試験において試験片端部の剥がれた距離が10mm以下であることが好ましい。
曲面接着性の試験方法は後述する実施例の欄に記載の通りであり、試験片には厚さ50μmのポリプロピレンフィルム基材の片面に厚さ25μmの粘着剤層が形成された粘着シートを使用する。曲面接着性は、粘着シートを物品のコーナー部等の曲面部に貼付けた際に長期間に渡り剥がれることなく保持することができる特性を表すものである。
【実施例】
【0037】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。以下の記載において「部」は質量部を意味し、「%」は質量%を意味する。
また、各例において得られたアクリル系共重合体の水分散体、粘着剤組成物及び粘着シートについては、以下の物性及び性質を測定することにより評価した。
(1)アクリル系共重合体の特性
a)固形分
測定サンプル約1gを秤量(a)し、次いで、通風乾燥機155℃、30分間乾燥後の残分を測定(b)し、以下の式より算出した。測定には秤量ビンを使用した。その他の操作については、JIS K 0067−1992(化学製品の減量及び残分試験方法)に準拠した。
固形分(%)=(b/a)×100
【0038】
b)粘度
液温25℃の条件下、BM型粘度計を用い、回転数12rpmにおける90秒後の粘度を測定した。
【0039】
c)pH
液温25℃の条件下、pHメーターにて測定した。
【0040】
d)粒子径
レーザー回折・散乱式の粒度分析計マイクロトラックMT−3000(日機装社製)を用いて測定した。体積基準によるメジアン径を粒子径とした。
【0041】
(2)粘着剤組成物
a)貯蔵安定性
粘着剤組成物を容量110mlのガラス瓶に約100ml採り、密栓して50℃雰囲気下で1ヶ月静置した。1ヶ月後の粘着剤組成物の状態を以下の基準に従って目視で判定した。
○:凝集、増粘、沈殿、分離なく良好。
△:凝集、増粘、沈殿、分離のいずれかが若干見られる。
×:凝集、増粘、沈殿、分離のいずれかが顕著に見られる。
【0042】
(3)粘着シート
a)粘着力
被着体としてステンレス板及びポリプロピレン板を用い、23℃、50%RHの条件において、JIS Z 0237に準じて180度剥離強度を測定し、得られた値を粘着力とした。
【0043】
b)低温粘着力
被着体としてポリプロピレン板を用い、−15℃の温度条件下、JIS Z 0237に準じて180度剥離強度を測定し、得られた値を低温粘着力とした。
【0044】
c)保持力
粘着シートを用いてJIS Z 0237に準じて保持力を測定した。測定温度40℃で1kgの荷重を掛けて剥がれ落ちるまでの時間を測定し、その保持時間を保持力とした。尚、24時間以上保持した場合は「1440分」と記載した。
【0045】
d)曲面接着性
粘着シートを25mm×20mmのサイズにカットして試験片とした。23℃、50%RHの条件下、10mm径のポリエチレン製丸棒に試験片を貼付け、手で軽く圧着した後に放置した。1週間後、試験片両端部の剥がれた距離の総計を測定した。
【0046】
合成例1:ポリブテンの水分散体A−1の製造
ポリブテン(JX日鉱日石エネルギー社製、商品名「日石ポリブテンHV−300」、数平均分子量1400)50部、ポリオキシエチレンソルビタンモノヤシ油脂肪酸エステル(花王社製、商品名「レオドールTW−L120」、HLB16.7)10部、及びイオン交換水40部を採り、90℃に加熱下、ホモミキサー(特殊機械工業(株)社製、T.K. HOMO MIXER MARKII)により回転数6000rpmで30分間攪拌混合し、ポリブテンの水分散体A−1を得た。
【0047】
合成例2:ポリブテンの水分散体A−2の製造
ポリブテンとして商品名で「日石ポリブテンHV−35」(JX日鉱日石エネルギー社製、数平均分子量750)を用いた以外は合成例1と同様の操作を行いポリブテンの水分散体A−2を得た。
【0048】
実施例1
攪拌機、還流冷却器、2個の滴下ロート、温度計、窒素導入管を備えた反応器内にイオン交換水50部を仕込み、攪拌下で80℃に昇温した。別容器にイオン交換水35部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(花王社製、商品名「ネオペレックスG−15」、有効成分16%)5部、アクリル酸2−エチルヘキシル(以下、「HA」という)41部、アクリル酸n−ブチル(以下、「BA」という)50部、スチレン(以下、「ST」という)6部、及びアクリル(以下、「AA」という)酸3部を仕込み、攪拌することにより単量体乳化物を調整した。得られた単量体乳化物のうちの0.5%に相当する量を反応器中に添加し、10分後に5%過硫酸アンモニウム水溶液4部を添加した。更に10分後、残りの単量体乳化物及び5%過硫酸アンモニウム水溶液6部をそれぞれ別の滴下ロートより4時間かけて連続的に反応器内に滴下して乳化重合させた。滴下終了後、反応容器内を80℃に1時間保持した後、系を冷却して重合を終了させてアクリル系共重合体の水分散体E−1を得た。E−1の物性を表1に示す。
更に、E−1を100部に対して中和剤として25%アンモニア水、増粘剤として商品名で「アロンB−500」(東亞合成社製)、および合成例1で得られたポリブテンの水分散体A−1 10部(アクリル系共重合体100質量部に対して固形分10質量部のポリブテンに相当)を配合して、pH7.5、粘度10,000mPa・sの粘着剤組成物を得た。
次いで厚さ50μmのポリプロピレンフィルムの表面に、乾燥後における粘着剤層の厚さが25μmになるように粘着剤組成物を塗布し、次いで熱風循環式乾燥機にて100℃で2分間乾燥して粘着シートを作製した。
得られた粘着剤組成物についての貯蔵安定性、及び粘着シートの粘着物性の評価結果を表2に示す。
【0049】
実施例2〜8
ポリブテンの水分散体A−1の代わりに表2の配合処方欄に示す化合物を用いる以外は実施例1と同様の操作を行い粘着剤組成物及び粘着シートを得た。得られた粘着剤組成物についての貯蔵安定性、及び粘着シートの粘着物性の評価結果を表2に示す。
【0050】
実施例9及び10
アクリル系共重合体の合成において、イオン交換水35部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王社製、商品名「ラテムルE−118B」、有効成分26%)2部、及びポリオキシエチレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(花王社製、商品名「ラテムルPD−104」、有効成分20%)3部、HA55.9部、BA33部、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」という)10部、AA1部、ダイアセトンアクリルアミド(以下、「DAAM」という)0.1部、及びドデシルメルカプタン(以下、「DM」という)0.1部から単量体乳化物を調整した以外は実施例1と同様の操作を行いアクリル系共重合体の水分散体E−2を得た。E−2の物性値を表1に示す。
次いで、アクリル系共重合体の水分散液としてE−2を、ポリブテンの水分散体A−1の代わりに表2の配合処方欄に示す化合物を用いる以外は実施例1と同様の操作を行い粘着剤組成物及び粘着シートを得た。得られた粘着剤組成物についての貯蔵安定性、及び粘着シートの粘着物性の評価結果を表2に示す。
【0051】
実施例11
アクリル系共重合体の合成において、イオン交換水35部、ネオペレックスG−15 5部、HA95部、ST2部、及びAA3部から単量体乳化物を調整した以外は実施例1と同様の操作を行いアクリル系共重合体の水分散体E−3を得た。E−3の物性値を表1に示す。
次いで、アクリル系共重合体の水分散液としてE−3を、ポリブテンの水分散体A−1の代わりに表2の配合処方欄に示す化合物を用いる以外は実施例1と同様の操作を行い粘着剤組成物及び粘着シートを得た。得られた粘着剤組成物についての貯蔵安定性、及び粘着シートの粘着物性の評価結果を表2に示す。
【0052】
実施例12
アクリル系共重合体の合成において、イオン交換水35部、ネオペレックスG−15 5部、BA82部、ST8部、MMA7部、及びAA3部から単量体乳化物を調整した以外は実施例1と同様の操作を行いアクリル系共重合体の水分散体E−4を得た。E−4の物性値を表1に示す。
次いで、アクリル系共重合体の水分散液としてE−4を、ポリブテンの水分散体A−1の代わりに表2の配合処方欄に示す化合物を用いる以外は実施例1と同様の操作を行い粘着剤組成物及び粘着シートを得た。得られた粘着剤組成物についての貯蔵安定性、及び粘着シートの粘着物性の評価結果を表2に示す。
【0053】
比較例1
ポリブテンの水分散体A−1を用いない点以外は実施例1と同様の操作を行い粘着剤組成物及び粘着シートを得た。得られた粘着剤組成物についての貯蔵安定性、及び粘着シートの粘着物性の評価結果を表3に示す。
【0054】
比較例2〜4、7及び8
ポリブテンの水分散体A−1の代わりに表3の配合処方欄に示す化合物を用いる以外は実施例1と同様の操作を行い粘着剤組成物及び粘着シートを得た。得られた粘着剤組成物についての貯蔵安定性、及び粘着シートの粘着物性の評価結果を表3に示す。
【0055】
比較例5
アクリル系共重合体の合成において、イオン交換水35部、ネオペレックスG−15 5部、HA20部、BA49部、ST13部、MMA15部、及びAA3部から単量体乳化物を調整した以外は実施例1と同様の操作を行いアクリル系重合体の水分散体E−5を得た。E−5の物性値を表1に示す。
次いで、アクリル系共重合体の水分散液としてE−5を、ポリブテンの水分散体A−1の代わりに表3の配合処方欄に示す化合物を用いる以外は実施例1と同様の操作を行い粘着剤組成物及び粘着シートを得た。得られた粘着剤組成物についての貯蔵安定性、及び粘着シートの粘着物性の評価結果を表3に示す。
【0056】
比較例6
アクリル系共重合体の合成において、イオン交換水35部、ネオペレックスG−15 5部、アクリル酸イソノニル(以下、「INA」という)94部、MMA3部、及びAA3部から単量体乳化物を調整した以外は実施例1と同様の操作を行いアクリル系重合体の水分散体E−6を得た。E−6の物性値を表1に示す。
次いで、アクリル系共重合体の水分散液としてE−6を、ポリブテンの水分散体A−1の代わりに表3の配合処方欄に示す化合物を用いる以外は実施例1と同様の操作を行い粘着剤組成物及び粘着シートを得た。得られた粘着剤組成物についての貯蔵安定性、及び粘着シートの粘着物性の評価結果を表3に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
各実施例及び比較例で使用したポリブテン及び粘着付与剤等の詳細を以下に示す。
・A−1:JX日鉱日石エネルギー社製ポリブテン、商品名「HV−300」(数平均分子量1400)のエマルション化品、有効成分50%
・A−2:JX日鉱日石エネルギー社製ポリブテン、商品名「HV−35」(数平均分子量750)のエマルション化品、有効成分50%
・エマウェット10E:日油社製、ポリブテンエマルション(数平均分子量1000)、有効成分50%
・エマウェット30E:日油社製、ポリブテンエマルション(数平均分子量1350)、有効成分50%
・エマウェット200E:日油社製、ポリブテンエマルション(数平均分子量2650)、有効成分50%
・スーパーエステルNS−100H:荒川化学工業社製、特殊ロジンエステルエマルション(軟化点100℃)、有効成分50%
・スーパーエステルE−865−NT:荒川化学工業社製、重合ロジンエステルエマルション(軟化点165℃)、有効成分50%
・ニッサンポリブテン30N:日油社製、ポリブテン(数平均分子量1350)
【0061】
本発明の粘着剤組成物を使用した実施例1〜12の粘着シートはいずれも低温粘着力の評価において1.0N/10mm以上の値が得られ、低温下でも良好な接着性を有することが確認された。また曲面接着性についても試験片端部の剥がれた距離は10mm以下であり、曲面への接着性にも優れる結果が得られた。
中でもアクリル共重合体100質量部に対するポリブテンの含有量が3〜20質量%である場合には、低温接着性と曲面接着性が高度にバランス化される結果となった。
【0062】
一方、ポリブテンを含まない比較例1及び比較例3、並びにTgが−30℃より高いアクリル系共重合体を使用した比較例5では十分な低温接着性が得られなかった。また、ポリブテンの含有量が多い比較例2、数平均分子量が本発明で規定する範囲外であるポリブテンを含有する比較例7及び比較例8、並びにTgが−75℃より低いアクリル系共重合体を使用した比較例6では曲面接着性が悪化する結果が得られた。
比較例4は水分散化されていないポリブテンを用いた実験例であるが、粘着剤組成物の貯蔵安定性が不十分であり、アクリル系共重合体とポリブテンが十分に均一化されていないためか低温接着性及び曲面接着性等の粘着性能も不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の粘着剤組成物は十分な貯蔵安定性を示し、かつ、該粘着剤組成物を各種基材に塗布、乾燥してなる粘着シートは低温接着性および曲面接着性が高度に両立することが可能であり、例えば低温環境下での使用や各種形状の被着体に対する粘着シートまたは粘着テープとして有効に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度が−75〜−30℃であるアクリル系共重合体の水分散体及び数平均分子量が800〜2000であるポリブテンの水分散体を含み、該アクリル系共重合体100質量部に対する該ポリブテンの含有量が1〜50質量部である水分散型粘着剤組成物。
【請求項2】
前記アクリル系共重合体が架橋されていることを特徴とする請求項1に記載の水分散型粘着剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載の水分散型粘着剤組成物を支持体の片面又は両面に塗布してなる粘着シート。
【請求項4】
−15℃の環境下、ポリプロピレン板を被着体としてJIS Z 0237に準じて測定される粘着力が1.0N/10mm以上であることを特徴とする請求項3に記載の粘着シート。
【請求項5】
曲面接着性試験において試験片端部の剥がれた距離が10mm以下であることを特徴とする請求項3又は4に記載の粘着シート。

【公開番号】特開2012−121988(P2012−121988A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273523(P2010−273523)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】