説明

水分散型防汚性樹脂組成物及び防汚性シート

【課題】長期間にわたり汚染の防止効果を有し、表示シートを鮮明な状態に維持することができ、視覚的に不体裁になったり、イメージを損なったりしないように処理することができる水分散型防汚性樹脂組成物、及び防汚性シートの提供。
【解決手段】(メタ)アクリル系単量体、一般式CH=CR−COO−(RO)−(RO)−R[但し、RはHまたはCH、R、Rは互いに異なるC〜Cの直鎖もしくは分枝アルキレン基、RはHまたはC〜Cの直鎖もしくは分枝アルキル基を示し、mは1〜50、nは0〜50の整数である。]で表されるオキシアルキレン系単量体、その他の共単量体を共重合したガラス転移点が−40〜+20℃のアクリル系共重合体(A)、コロイダルシリカ(B)、及び、イオン性液体(C)を含有する水分散型防汚性樹脂組成物及び該組成物を基材の片面に塗着されてなる防汚性シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散型防汚性樹脂組成物及び防汚性シートに関し、詳しくは長期間にわたり汚染の防止効果を有し、表示シートを鮮明な状態に維持することができ、視覚的に不体裁になったり、イメージを損なったりしないように処理することができる水分散型防汚性樹脂組成物、及び、汚染の少ない看板、ポスター、道路標識あるいは工事標識等の標識類等として好適であり、必要に応じて汚染の防止部材のみを容易に取替えを行なうことが可能な便宜性に優れたな防汚性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、看板、ポスター、横断幕、垂れ幕、道路標識、案内標識、工事標識等の表示シート、表示板等表示シート類が多く使用されているが、かかる表示シート類は常に汚れのないクリーンな状態を維持させる必要がある。汚れが付着すると見た目に不快感を与え、ときには表示事項を読み難くし、また、商品、事業者のイメージを損なうおそれが生じる。
【0003】
しかし、表示シート類は屋外に取付けられることが多い関係から、塵埃等によって汚染され易い。さらに、これら表示シートの材質がプラスチック材料により構成されているため電気絶縁性が高く、摩擦や剥離の際に静電気が発生し、ゴミ、塵埃等が付着し表面を汚染する問題もある。そこで、こういった不具合を防止し、鮮明な状態を維持するためには、たびたびの洗浄、取替えが必要とされている。
【0004】
屋外装置品の汚染を少なくする方法としては、従来、撥水性の合成樹脂や、撥水性を高めるためにフッ素系材料やシリコン系材料を含む防汚剤を塗布することが行われている。しかし、これらの撥水性を利用したものは、雨水等が付着すると水滴となり、そのまま乾燥されると乾燥跡に汚染物質が付着して点状の汚れを形成する問題がある。
【0005】
近年、汚染を少なくする方法として、表面を親水性化処理することが提案されている(特許文献1、2、3)。これは、表面を親水性にした場合には、親水性汚染物質は付着するが、雨等の自然浄化作用により除去され易く、一方、流失し難い親油性汚染物質は付着し難いという性質を利用するものである。
【特許文献1】特開平11−267585号公報
【特許文献2】特開2004−142161号公報
【特許文献3】特開2003−55480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、2、3には、表示シートの汚染を防ぎ、表示を長期間鮮明な状態に維持することについては提案されていない。
【0007】
また、汚染防止剤を塗布して表示シートの表面を親水性化する方式は、経時的に汚染防止効果が低下した場合、表示シート自体の取替えを必要とする問題がある。
【0008】
このため、汚染防止効果に優れた表示シートが得られ、汚染防止が低下した場合、再生の可能な汚染防止技術の開発が要請されていた。
【0009】
そこで、本発明の課題は、長期間にわたり汚染の防止効果を有し、表示シートを鮮明な状態に維持することができ、視覚的に不体裁になったり、イメージを損なったりしないように処理することができる水分散型防汚性樹脂組成物、及び、必要に応じて汚染の防止部材のみを容易に取替えを行なうことが可能な便宜性に優れた防汚性シートを提供するものである。
【0010】
また本発明の他の課題は以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0012】
(請求項1)
下記(a)〜(c)の単量体の乳化共重合体からなり、ガラス転移点(Tg)が−40〜+20℃のアクリル系共重合体(A)と、コロイダルシリカ(B)と、イオン性液体(C)とを含有してなり、前記アクリル系共重合体(A)100重量部に対し、前記コロイダルシリカ(B)を10〜1000重量部の範囲、前記イオン性液体(C)を0.01〜50重量部の範囲で配合することを特徴とする水分散型防汚性樹脂組成物。
(a)(メタ)アクリル系単量体 99.9重量%以下
(b)一般式CH=CR−COO−(RO)−(RO)−Rで表されるオキシアルキレン系単量体 0.1〜10重量%
[但し、RはHまたはCH、R、Rは互いに異なるC〜Cの直鎖もしくは分枝アルキレン基、RはHまたはC〜Cの直鎖もしくは分枝アルキル基を示し、mは1〜50、nは0〜50の整数である。]
(c)上記単量体(a)〜(b)以外の共単量体 75重量%以下
[但し、単量体(a)〜(c)の合計を100重量%とする。]
【0013】
(請求項2)
前記イオン性液体(C)が、イミダゾリウム塩誘導体、ピリジニウム塩誘導体、アルキルアンモニウム塩誘導体、ホスホニウム塩誘導体又はピラゾリウム塩誘導体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の水分散型防汚性樹脂組成物。
【0014】
(請求項3)
前記アクリル系共重合体(A)の水性分散液中の共重合体粒子の平均粒子径が、0.2μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の水分散型防汚性樹脂組成物。
【0015】
(請求項4)
請求項1〜3の何れかに記載の水分散型防汚性樹脂組成物が、シート状の基材の片面に塗着されてなり、表面の水の接触角が45度以下で、他面に粘着剤層が形成されてなることを特徴とする防汚性シート。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、長期間にわたり汚染の防止効果を有し、表示シートを鮮明な状態に維持することができ、視覚的に不体裁になったり、イメージを損なったりしないように処理することができる水分散型防汚性樹脂組成物、及び、必要に応じて汚染の防止部材のみを容易に取替えを行なうことが可能な便宜性に優れた防汚性シートを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<水分散型防汚性樹脂組成物>
本発明に用いられるアクリル系共重合体(A)は、下記(a)〜(c)の単量体の乳化共重合体からなり、ガラス転移点(以下、必要により「Tg」と略す)が−40〜+20℃のものである。
【0018】
(メタ)アクリル系単量体(a)としては、アクリレート又はメタアクリレートを使用することができ、これらは炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐アルキル基、炭素数12〜18の直鎖もしくは分岐アルケニル基、炭素数6〜8のシクロアルキル基または炭素数7〜12のアラルキル基を有するものが好ましい。具体的には、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、イソノニルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルメタアクリレート、ステアリルメタアクリレート等を使用することができ、これらは単独または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
(メタ)アクリル系単量体(a)の使用量は、99.9重量%以下であり、単量体(a)〜(c)の合計が100重量%であるので、下記単量体(b)〜(c)の残量である。
【0020】
単量体(b)は、一般式CH=CR−COO−(RO)−(RO)−Rで表わされるオキシアルキレン系単量体(以下、単にオキシアルキレン系単量体と略称することがある)であり、末端がアルキルエーテル化された(ポリ)オキシアルキレン鎖を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルである。
【0021】
上記一般式において、RはHまたはCH、R及びRは互いに相異なるC〜C、好ましくはCまたはCの直鎖もしくは分枝アルキレン基、RはHまたはC〜Cの直鎖もしくは分枝アルキル基を示し、mは1〜50、好ましくは2〜30、nは0〜50、好ましくは0〜30の整数であってm+nは1〜50、好ましくは2〜30の整数である。
【0022】
,Rとしては、例えば、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,2−プロピレン基、2,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,3−ブチレン基、1,2−ブチレン基、2,3−ブチレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基等を挙げることができる。これらのうち、エチレン基、1,2−プロピレン基が好ましい。
【0023】
また、Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができ、これらのうち、メチル基、エチル基であるのが好ましい。
【0024】
単量体(b)の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート、トリエチレングリコールメチルエーテルアクリレート、テトラエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート、ポリエチレングリコール(n=約9)メチルエーテルメタクリレート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアクリレート等を挙げることができ、ポリエチレングリコール(n=2〜10)メチルエーテルメタクリレートの使用が好ましい。
【0025】
単量体(b)は、例えば、ブレンマーPME−100、ブレンマーPME−200、ブレンマーPME−400、ブレンマーPME−1000、ブレンマーAME−400[以上、日本油脂(株)製];NKエステルM−20G、NKエステルM−90G、NKエステルM−230G、NKエステルAM−30G、NKエステルAM−90G、NKエステルAM−230G[以上、新中村化学工業(株)];ビスコート#190[大阪有機化学工業(株)製]等の商品名で市販されている。
【0026】
単量体(b)であるオキシアルキレン系単量体の使用量は、単量体(a)〜(c)の合計100重量%中、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%、特に好ましくは1〜4重量%の範囲が望ましい。単量体(b)の使用量が下限値以下では、共重合に際しての重合安定性が損なわれ、また、上限値以上では、得られる防汚剤層の湿潤時の密着力が得にくくなったりする。
【0027】
単量体(a)〜(b)以外の共単量体(c)としては、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、パーサチック酸ビニル、ピバリン酸ビニル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、プロピオン酸ビニル、スチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン等のビニルモノマー、あるいは、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン等の珪素含有単量体を使用することができる。
【0028】
本発明に用いる共単量体(c)としては、得られるアクリル系共重合体(A)とコロイダルシリカ(B)との分散性の良さなどの観点から、下記一般式(1)で表される珪素含有単量体の使用が好ましい。
【0029】
【化1】

【0030】
〔式中、Rは水素もしくはメチル基;Xは単結合、炭素数1〜12の直鎖もしくは分枝アルキレン基、COOZまたはCONHZであり、ZおよびZはそれぞれ独立して炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝アルキレン基;Rは炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基;Yは同一でも相異なっていてもよく、ハロゲン、ORまたはOZORであり、Rは水素、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基または炭素数1〜6のアシル基、Zは炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝アルキレン基、Rは水素または水素原子の1部が水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基;nは0〜2の整数;を示す〕
【0031】
このような珪素含有単量体としては、Xが単結合のもの、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリブロモシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−プロポキシシラン、ビニルトリ−i−プロポキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(2−ヒドロキシメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルジエトキシシラノール、ビニルエトキシシラジオール、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン等;Xが炭素数1〜12の直鎖もしくは分枝アルキレン基のもの、例えば、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン等;XがCOOZまたはCONHZで、Z及びZが炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝アルキレン基であるもの、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、2−アクリルアミドエチルトリエトキシシラン等;を挙げることができる。
【0032】
共単量体(c)の含有量は、多くなると充分な粘着強度が得にくくなるため、単量体(a)〜(c)の合計100重量%に対して、一般に75重量%、好ましくは0〜50重量%、さらに好ましくは5〜50重量%である。
【0033】
共単量体(c)の使用量は、その種類により変わるので一義的には決められないが、接着力と柔軟性とのバランス、及び、これらと凝集力とのバランスなどを所望に応じて調節するのに役立つので、そのような目的に合致するように上記範囲内の量で適宜に選択することができる。
【0034】
本発明に用いられるアクリル系共重合体(A)は、前記単量体(a)〜(c)を共重合してなるもので、そのTgは−40〜+20℃であることが必要であり、好ましくは−30〜+10℃の範囲である。Tgが該上限温度を超えて高温の場合は、得られる防汚剤層の柔軟性が不足しがちとなり好ましくなく、一方、下限温度より低い時には、防汚シートとしての防汚性能と塵埃の付着防止機能が得られない。なお、本発明において、アクリル系共重合体(A)のTgはDSC法で測定した値をいう。
【0035】
本発明に用いられるアクリル系共重合体の水性分散液を製造する好適な方法としては、例えば、前記(a)〜(c)の単量体を、適当な界面活性剤を重合用乳化剤として用いて、水性媒体中で乳化共重合する態様を挙げることができる。
【0036】
本発明に用いる界面活性剤は、得られる防汚剤層の耐水性の良さなどの観点から、分子内にラジカル重合可能な不飽和基を有する、いわゆる「反応性乳化剤」の使用が好ましい。このような反応性乳化剤としては、例えば、「エレミノールJS−2」、「エレミノールRS−30」〔以上、三洋化成工業(株)製〕、「アクアロンKH−05」、「アクアロンKH−10」〔以上、第一工業製薬(株)製〕、「アデカリアソープSE、SRシリーズ」〔旭電化工業(株)製〕、「ラテムルS−180」、「ラテムルS−180A」〔以上、花王(株)製〕等のアニオン系反応性乳化剤;例えば、「アデカリアソープ NE、ERシリーズ」〔旭電化工業(株)製〕、「ラテムルPD−420」、「ラテムルPD−430」、「ラテムルPD−450」〔以上、花王(株)製〕等のノニオン性乳化剤;などを挙げることができる。
【0037】
前記反応性乳化剤の使用量は、単量体(a)〜(c)の合計100重量部に対して、例えば、0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部程度の量を例示することができる。該使用量が該下限値以上であれば、得られる水分散型防汚性樹脂組成物の機械的安定性が良好であるので好ましく、一方、該上限値以下であれば、形成される防汚剤層の凝集力及び耐水性が優れているので好ましい。
【0038】
また、乳化共重合に際しては、前記反応性乳化剤と共に、公知のノニオン系界面活性剤類やアニオン系界面活性剤類など各種界面活性剤を重合用乳化剤として併用することができる。ノニオン系界面活性剤類として、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類;例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン高級脂肪酸エステル類;例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類;例えば、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート等のポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類;例えば、オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等のグリセリン高級脂肪酸エステル類;例えば、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー;等を例示することができる。
【0039】
また、アニオン系界面活性剤類としては、例えば、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類;例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類;例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類;例えば、ポリエキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類;例えば、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類;モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸エステル塩及びその誘導体類;等を例示することができる。
【0040】
得られたアクリル系共重合体(A)の水性分散液中の共重合体粒子の平均粒子径は、0.2μm以下が好ましく、より好ましくは0.1μm以下であることである。平均粒子径が該上限値を超えて大き過ぎては、耐水性が不足しがちになり好ましくない。なお、本発明でいう平均粒子径は、動的光散乱法により測定されたものである。
【0041】
コロイダルシリカ(B)としては、粒子径1〜100nmのシリカ粒子がコロイド状に水中に分散した水性分散液が使用でき、例えば、スノーテックスXS、OXS、S、OS、20、30、40、O、C、AK、50、O−40、CM、20L、OL、XL、ZL、UP、OUP、PS−S、PS−M、45、MP−2040、MP−4540M[日産化学工業(株)]、カタロイド−S シリーズ[触媒化成工業(株)製]、アデライト AT シリーズ[旭電化工業(株)製]等の商品名で市販されているものを挙げることができる。
【0042】
コロイダルシリカ(B)の配合量は、アクリル系共重合体(A)100重量部に対し、10〜1000重量部の範囲であり、より好ましくは20〜500重量部の範囲であり、特に好ましくは25〜400重量部の範囲である。
【0043】
イオン性液体(C)としては、有機窒素系、有機燐系、有機硫黄系のものが使用でき、例えば、イミダゾリウム塩誘導体[下記式(2)〜(4)]、ピリジニウム塩誘導体[下記式(5)]、アルキルアンモニウム塩誘導体[下記式(6)]、ホスホニウム塩誘導体[下記式(7)]、ピラゾリウム塩誘導体[下記式(8)]等が挙げられる。
【0044】
【化2】

【0045】
【化3】

【0046】
【化4】

【0047】
【化5】

【0048】
【化6】

【0049】
【化7】

【0050】
【化8】

【0051】
イオン性液体(C)の例示化合物としては、1,3−ジメチルイミダゾリウムメチル硫酸塩、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムニトレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロポスフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム−2−(2−メトキシエトキシ)エチルサルフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメチル硫酸塩、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムオクチル硫酸塩、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムクロライド、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)メチッド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−メチル−3−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)イミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)イミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートn、1−プロピル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドなどのイミダゾリウム塩誘導体;1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムブロマイド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムクロライド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−4−メチルピリジニウムテトラフルオロボレートなどのピリジニウム塩誘導体;テトラブチルアンモニウムヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、テトラブチルアンモニウムノナフルオロブタンスルホネート、テトラペンチルアンモニウムメタンスルホネート、テトラペンチルアンモニウムチオシアネート、メチルートリ−n−ブチルアンモニウムメチル硫酸塩、ジエチルメチル(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート、ジエチルメチル(2−メトキシエチル)アンモニウムビス((トリフルオロメチルスルホニル)イミドなどのアルキルアンモニウム塩誘導体;テトラブチルホスホニウムメチル硫酸塩、テトラブチルホスホニウムニトラート、テトラブチルホスホニウム−p−トルエンスルホネート、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムビス(2,2,4−トリメチルペンチル)次亜りん酸塩、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムブロマイド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムクロライド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムデカン酸塩、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムジシアナミド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムテトラフルオロボレートなどのホスホニウム塩誘導体;1−エチル−2,3,5,−トリメチルピラゾリウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、1−プロピル−2,3,5,−トリメチルピラゾリウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、1−ブチル−2,3,5,−トリメチルピラゾリウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、1−メチル−2,3,5,−トリメチルピラゾリウムビストリフルオロメタンスルホニルイミドなどのピラゾリウム塩誘導体等が例示できる。
【0052】
イオン性液体(C)の配合量は、アクリル系共重合体(A)100重量部に対し、一般的に、0.01〜50重量部の範囲であり、より好ましくは0,025〜40重量部の範囲であり、特に好ましくは0.05〜20重量部の範囲である。0.01重量部未満であると十分な塵埃の付着防止特性が得られず、50重量部を超えると熱可塑性樹脂製のフィルム層の密着強度が低下するため好ましくない。
【0053】
<防汚性シート>
得られた水分散型防汚性樹脂組成物は、シート状の基材2の表面に塗布し、乾燥または硬化して塗膜化されて防汚剤層3が形成される。硬化条件は特に限定されないが、通常、60〜150℃の温度で1〜20分間行なう。防汚剤層3の厚みは、通常0.1〜15μm、好適には0.5〜10μmである。
【0054】
本発明の防汚性シート1は、図1に示すように、シート状の基材2の一面に親水性樹脂組成物からなる防汚剤層3を形成すると共に、他面に感圧接着剤による粘着剤層11を形成することによって構成される。
【0055】
防汚性シート1は、通常は使用初期(施工直後から1ヶ月以内)に、表面の水接触角が45度以下、好ましくは40度以下となるように調製される。防汚性シート1表面の水接触角が45度以下であれば、耐汚染性を効果的に高め、長期にわたって維持することが可能となる。
【0056】
シート状の基材2としては、発明の目的に照らして、可撓性を有する材料が望ましく、例えば、セロファン、セルロイド、あるいは、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のエチレン系重合体、あるいは、ポリプロピレン、プロピレンを主成分とするプロピレン・α−オレフィン共重合体等のプロピレン系重合体、ポリエステル、ポリアミド、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。中でも、アクリル系重合体、あるいは、ポリエステル系重合体等が耐候性と耐熱性の面から望ましいい。
【0057】
熱可塑性樹脂のシート状の基材2は、Tダイ押出し成形、キャスト成形、カレンダー成形、インフレーション成形法によってフィルム状に形成することができる。また、得られたシートを二軸延伸することも腰、引張強度等を改良する上で望ましい方法である。
【0058】
本発明において、シートとは厚みに関係なく平坦なものを広く指称するものとし、シート状基材2としては、一般に、フィルム、シート、板状体、布状体と称されるものを使用することができ、一般には、厚さが5〜300μm、好ましくは15〜200μmの範囲のものが使用される。
【0059】
なお、各種表示部材に適応可能とする観点から可撓性材料が使用される。また、シート状の基材2は、2種以上の熱可塑性樹脂を積層した積層シートとすることもでき、図2に示すように、強度の優れた基層4の表面に塗着性の優れた表層5を積層した積層シートを基材2として用いることができる。
【0060】
また、横膜、間仕切りシート等、強度を要する用途に使用する場合には、図3に示すように、熱可塑性樹脂を一軸延伸して得られた延伸線条体6a、6bを経緯糸として織成した布状体7、あるいは、図4に示すように、延伸線条体6a、6bを縦横に交差するように並列し、その交点を熱融着して得られた交差結合布(ソフ)からなる布状体7に、必要に応じて熱可塑性樹脂のフィルム10が積層されたシート状の基材2を使用することができる。
【0061】
延伸線条体6としては、熱可塑性樹脂を使用することができ、熱可塑性樹脂としては、機械的強度の優れた熱可塑性樹脂が用いられ、具体的には、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のエチレン系重合体、あるいは、ポリプロピレン、メタロセン触媒を用いて製造されたポリプロピレン、プロピレンを主成分とするプロピレン・α−オレフィン共重合体等のプロピレン系重合体、ポリエステル、ポリアミド等を用いることができる。中でも、エチレン系重合体、あるいは、プロピレン系重合体等のポリオレフィンが望ましい。
【0062】
布状体7を形成する延伸線条体6としては、テープ状体、モノフィラメント、長繊維、短繊維等を使用することができ、必要に応じて撚糸される。
【0063】
得られた布状体7は、布状体7のままでシート状の基材2として使用することができるが、熱可塑性樹脂のフィルム状体10と積層した積層樹脂膜とすることが望ましい。
【0064】
フィルム状体10を形成する熱可塑性樹脂としては、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のエチレン系重合体、あるいは、ポリプロピレン、メタロセン触媒を用いて製造されたポリプロピレン、プロピレンを主成分とするプロピレン・α−オレフィン共重合体等のプロピレン系重合体、ポリエステル、ポリアミド等を用いることができる。中でも、エチレン系重合体、あるいは、プロピレン系重合体等のポリオレフィンが望ましく、特にメタロセン触媒を用いて製造されたエチレン系重合体又はプロピレン系重合体が好ましい。
【0065】
熱可塑性樹脂のフィルム状体10を積層する方法としては、自体公知の手段によって行なうことができ、たとえば、延伸線条体6で形成された布状体7をラミネーターに供給し、該布状体7と溶融状態のフィルム状体10とを重ねると共に、弾性ロールと金属ロールとで挟圧して布状体7と溶融した熱可塑性樹脂のフィルム状体10とを積層することができる。両面に熱可塑性樹脂のフィルム状体10を積層するときは、同様の方法によって他の面に溶融した熱可塑性樹脂のフィルム状体10を積層することによって、図5に示すように、布状体7を芯材としてその両面に熱可塑性樹脂のフィルム状体10、10が積層されたサンドイッチ構造とすることができる。
【0066】
また、上記のシート状の基材2を構成する熱可塑性樹脂には、発明の効果を損なわない範囲で、適宜、各種の添加剤を配合することができ、具体的には、フェノール系、有機ホスファイト系、ホスナイトなどの有機リン系、チオエーテル系等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系等の光安定剤;ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系等の紫外線吸収剤;ノニオン系、カチオン系、アニオン系等の帯電防止剤;ビスアミド系、ワックス系、有機金属塩系等の分散剤;アルカリ土類金属塩のカルボン酸塩系等の塩素補足剤;アミド系、ワックス系、有機金属塩系、エステル系等の滑剤;ヒドラジン系、アミンアシド系等の金属不活性剤;抗菌剤等が挙げられる。
【0067】
シート状の基材2の他の面には感圧接着剤が塗布されて粘着剤層11が形成される。シート状基材2の粘着剤層11を塗布する面には、粘着剤との密着力を高めるため、その表面にサンドブラスト処理等の物理的処理や、火炎処理、コロナ処理もしくはプラズマ処理等の物理化学的処理、あるいは、プライマー処理等を施すことが好ましい。粘着剤は、通常、適宜の有機溶剤に溶解され、又は、エマルジョンとされて、シート状基材2上に塗工された後乾燥され、あるいは、離型処理が施された工程紙上に塗工後乾燥されたものが支持体上に転写されて、シート状基材2と粘着剤層4が積層された防汚性シート1とされる。塗工手段や乾燥方法に制限はなく、公知のものを採用できる。
【0068】
本発明に用いられる粘着剤としては、粘着テープ用の粘着剤として一般的に用いられるものでよく、例えば、アクリル樹脂系粘着剤、天然ゴムや合成ゴム等のゴム系粘着剤、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体やスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体並びにこれらの水素添加物等のブロック共重合体系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体系粘着剤、ポリビニルエーテル樹脂系粘着剤、シリコン樹脂系粘着剤等が挙げられるが、なかでも耐久性や耐候性に優れ、取り扱い時の汚れも少ないアクリル樹脂系粘着剤が好適に用いられる。これらの粘着剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0069】
これらの粘着剤の形態は、特に限定されるものではなく、例えば、溶液型粘着剤、エマルジョン型粘着剤、反応型粘着剤、光重合可能なモノマー型粘着剤等のいずれの形態であってもよい。
【0070】
また、これらの粘着剤には、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて、ポリイソシアネート系化合物やアジリジン系化合物、金属キレート系化合物等の架橋剤や、粘着性付与剤、カップリング剤、充填剤、軟化剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、消泡剤、難燃剤、帯電防止剤等の各種添加剤の1種もしくは2種以上が添加されていてもよい。
【0071】
また、シート状基材2上に形成される粘着剤層11は、特に限定されるものではないが、その厚みが10μm〜0.5mmであることが好ましい。粘着剤層11の厚みが10μm未満であると、防汚性シート1の粗面への接着性や凹凸追従性が不十分となることがあり、逆に粘着剤層11の厚みが0.5mmを超えると、粘着性や接着力はもはやそれ以上向上しないにもかかわらず、コスト高となる。
【0072】
アクリル樹脂系粘着剤についてさらに詳細に述べれば、アクリル樹脂系粘着剤としては、カルボキシル基含有単量体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を重合させて得られるアクリル系ポリマーが用いられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基の炭素数は4〜12程度が望ましく、具体的には、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、特に、n−ブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートが好適である。カルボキシル基含有単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等のモノカルボン酸;フマル酸、マレイン酸等のジカルボン酸やこれらのモノエステル等が挙げられる。これらのカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体のうち、アクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。カルボキシル基含有重合性単量体は、単量体全体の1〜20重量%程度が望ましい。
【0073】
本発明で使用されるアクリル樹脂系粘着剤には、ガラス転移温度や極性等を調整する目的で少量の改質成分単量体が共重合されていてもよい。このような単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、ビニルピロリドン等が例示できる。
【0074】
アクリル系ポリマーには、分子内にカルボキシル基と反応する官能基を2個以上有する多官能性化合物、または多官能性化合物及び分子内に前記官能基を1個有する単官能性化合物を配合することによって架橋することができる。この種の官能基含有化合物としては、例えば、イソシアネート基含有化合物、エポキシ基(或いはグリシジル基)含有化合物、アジリジニル基含有化合物、金属錯体、メラミン系化合物等が例示できる。
【0075】
また、粘着剤組成中に少量の可塑剤を配合することが好ましい。配合される可塑剤の種類は限定されるものではなく、例えば、脂肪族多価カルボン酸のエステル、芳香族多価カルボン酸のエステル、リン酸エステル等の低分子可塑剤やポリエステルのような高分子可塑剤等が例示できるが、脂肪族2塩基酸のエステルが特に有効であり、中でもアジピン酸ジエステルが最も好適である。その配合量は0.05〜4重量%が好ましい。
【0076】
粘着剤層11の上には、図5に示すように、巻き戻す際の剥離力(展開力ともいう)を軽くするために、離型処理された離型紙12を貼付するのが一般的である。離型処理としては、必要により硬化反応を伴うシリコン系離型剤、フッ素系離型剤、長鎖アルキルグラフトポリマー系離型剤の塗布等を挙げることができる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例によって何ら限定されるものではない。
【0078】
<アクリル系共重合体の水性分散液の調製>
(調製例1)
還流冷却管、温度計、撹拌機、逐次滴下装置を取り付けたフラスコ中に、イオン交換水70重量部、初期添加乳化剤として「アクアロンKH−10」[第一工業製薬(株)製〕0.15重量部、重合開始剤として過硫酸アンモニウム(APS)0.04重量部及び還元剤としてメタ重亜硫酸ナトリウム(SMBS)0.04重量部を仕込み、内温を70℃に昇温させた。
【0079】
一方、別の容器にイオン交換水20重量部、乳化剤として「ラテムルPD−430」[花王(株)製]3重量部、「ラテムルPD−450」[花王(株)製]5重量部を仕込み攪拌して溶解し、次いでこれにエチルアクリレート(EA)87重量部、ブチルアクリレート(BA)10重量部、「ブレンマーPME−100」3重量部[メトキシポリエチレングリコール(n≒2)モノメタクリレート;日本油脂(株)製]、及び「KBM−503」〔3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;信越化学工業(株)製〕0.01重量部からなる単量体混合物を加えて攪拌し、単量体プレミックスを得た。
【0080】
反応器の内容物を窒素気流下に攪拌し、内容物温度を70℃に保ちながら、上記単量体プレミックス、4重量%APS水溶液を逐次添加して重合を開始させ、約4時間重合反応を行った。重合反応終了後、同温度でさらに約1時間攪拌を継続してから冷却し、アンモニア水を用いてpH調整して、アクリル系共重合体の水性分散液を得た。アクリル系共重合体の共重合組成、粘度、固形分、平均粒子径及びTgを表1に示した。
【0081】
調製例2、比較調製例1
調製例1において、EAを用いず、BAの使用割合を代え(比較調製例1)、または、BAの代わりにメチルメタクリレート(MMA)を用いる(調製例2)以外は、調製例1と同様にしてアクリル系共重合体の水性分散液を得た。アクリル系共重合体の共重合組成、粘度、固形分、平均粒子径及びTgを表1に示した。
【0082】
調製例3
調製例1において、ブレンマーPME−100を用いる代わりにブレンマーPME−400[メトキシポリエチレングリコール(n≒9)モノメタクリレート;日本油脂(株)製]を用いる以外は、参考例1と同様にしてアクリル系共重合体の水性分散液を得た。アクリル系共重合体の共重合組成、粘度、固形分、平均粒子径及びTgを表1に示した。
【0083】
調製例4
調製例1において、初期添加乳化剤を使用しない以外は調製例1と同様にしてアクリル系共重合体の水性分散液を得た。アクリル系共重合体の共重合組成、粘度、固形分、平均粒子径及びTgを表1に示した。
【0084】
【表1】

【0085】
実施例1
(水分散型防汚性樹脂組成物の調製)
調製例1で得られたアクリル系共重合体(A)の水性分散液100重量部(固形分約50重量部)に対し、イオン交換水850重量部、コロイダルシリカ(B)「スノーテックス30」[日産化学工業(株)製]50重量部、及びイオン性液体(C)1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(EMIB)の50重量%水溶液1重量部を撹拌混合して水分散型防汚性樹脂組成物を調製した。
【0086】
(試験用防汚シートの調製)
厚さ50μmのアクリル製透明フィルム「サンデュレン014NST」[商品名、(株)カネカ製]に、上記アクリル系共重合体を用いて調製した水性分散液水分散型防汚性樹脂組成物をそれぞれグラビア塗機にて0.5μmの厚さに塗布し、これを100℃で1分間乾燥硬化させて防汚剤層を形成した。
【0087】
その後、離型剤の上にアクリル系粘着剤組成物「ニッセツPE−121/CK−401=100重量部/1.5重量部の混合物」[商品名、日本カーバイド工業(株)製]溶液を乾燥時の粘着剤層の厚みが約25g/mとなるように塗布し、100℃で1分間熱風循環式乾燥機にて乾燥した粘着剤を貼り合わせ、23℃、65%RHの条件で7日間架橋させて防汚性シートを得た。
【0088】
(評価方法)
上記調製によって得られた試験用防汚シートを用いて以下の試験方法によって評価を行った。その結果を表2に示した。
【0089】
(試験方法)
a.接触角:
試験用防汚シートの防汚剤層表面に蒸留水を1滴滴下し、1分間後の接触角を測定した。
【0090】
表面の水接触角が45度以下であれば、耐汚染性を効果的に高め、長期にわたって清潔な状態を維持することが可能となる。
【0091】
b.耐水性:
50μmのアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムの蒸着面に試験用防汚シートを、その貼着面積が50×50mmになるように貼りつけた。これを60℃の温水中に48時間浸漬した後の、試験用防汚シートの白化の様子を観察し、以下の基準に従って評価した。
【0092】
○: 白化せず
△: 周辺部のみ白化
×: 全面白化
【0093】
c.防汚性能:
土木用防汚材料促進I種試験(カーボンブラックの5重量%水道水分散液を使用)に準拠して、白色度L値の差を測定した。
【0094】
d.接着力:
JIS−Z0237に準拠して測定した。
【0095】
e.塵埃の付着防止性能
空中に浮遊している塵埃の表面付着の状況を目視にて以下の基準に従って比較した。
【0096】
○: 付着物が無く良好
×: 付着物がある
【0097】
実施例2〜3、比較例1〜2
実施例1において、コロイダルシリカ(B)「スノーテックス30」の使用割合を代え、または、「スノーテックス30」を使用しない以外は実施例1と同様にして水分散型防汚性樹脂組成物を調製し、また試験用防汚シートの調製し、同様に評価を行った。その結果を表2に示した。
【0098】
実施例4〜5、比較例3
実施例1において、調製例1のアクリル系共重合体の水性分散液を用いる代わりに、調製例2、3、又は、比較調製例1のアクリル系共重合体の水性分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして水分散型防汚性樹脂組成物を調製し、また試験用防汚シートの調製し、同様に評価を行った。その結果を表2に示した。
【0099】
実施例6
実施例1において、調製例1のアクリル系共重合体の水性分散液を用いる代わりに、調製例4のアクリル系共重合体の水性分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして水分散型防汚性樹脂組成物を調製し、また試験用防汚シートの調製し、同様に評価を行った。その結果を表2に示した。
【0100】
実施例7〜8
実施例1において、コロイダルシリカ(B)「スノーテックス30」を用いる代わりに「スノーテックスPS−S」、又は「スノーテックスOUT」[日産化学工業(株)製]を用いた以外は、実施例1と同様にして水分散型防汚性樹脂組成物を調製し、また試験用防汚シートの調製し、同様に評価を行った。その結果を表2に示した。
【0101】
実施例9、比較例4
実施例1において、イオン性液体(C)「EMIB」の50重量%水溶液1重量部を用いる代わりにジエチルメチル(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート(EMEAB)の50重量%水溶液0.5重量部を用いるか、又は「EMIB」を使用しない以外は実施例1と同様にして水分散型防汚性樹脂組成物を調製し、また試験用防汚シートの調製し、同様に評価を行った。その結果を表2に示した。
【0102】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明に係る防汚性シートの一例を示す縦断面図
【図2】本発明に係る防汚性シートの他の例を示す縦断面図
【図3】本発明に係る防汚性シートの他の例を示す図で、(A)は平面図、(B)は縦断面図
【図4】本発明に係る防汚性シートの他の例を示す縦断面図
【図5】本発明に係る防汚性シートの他の例を示す縦断面図
【符号の説明】
【0104】
1:防汚性シート
2:シート状の基材
3:防汚剤層
4:基層
5:表層
6:延伸線条体
7:布状体
10:フィルム状体
11:粘着剤層
12:剥離紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(c)の単量体の乳化共重合体からなり、ガラス転移点(Tg)が−40〜+20℃のアクリル系共重合体(A)と、コロイダルシリカ(B)と、イオン性液体(C)とを含有してなり、前記アクリル系共重合体(A)100重量部に対し、前記コロイダルシリカ(B)を10〜1000重量部の範囲、前記イオン性液体(C)を0.01〜50重量部の範囲で配合することを特徴とする水分散型防汚性樹脂組成物。
(a)(メタ)アクリル系単量体 99.9重量%以下
(b)一般式CH=CR−COO−(RO)−(RO)−Rで表されるオキシアルキレン系単量体 0.1〜10重量%
[但し、RはHまたはCH、R、Rは互いに異なるC〜Cの直鎖もしくは分枝アルキレン基、RはHまたはC〜Cの直鎖もしくは分枝アルキル基を示し、mは1〜50、nは0〜50の整数である。]
(c)上記単量体(a)〜(b)以外の共単量体 75重量%以下
[但し、単量体(a)〜(c)の合計を100重量%とする。]
【請求項2】
前記イオン性液体(C)が、イミダゾリウム塩誘導体、ピリジニウム塩誘導体、アルキルアンモニウム塩誘導体、ホスホニウム塩誘導体又はピラゾリウム塩誘導体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の水分散型防汚性樹脂組成物。
【請求項3】
前記アクリル系共重合体(A)の水性分散液中の共重合体粒子の平均粒子径が、0.2μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の水分散型防汚性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の水分散型防汚性樹脂組成物が、シート状の基材の片面に塗着されてなり、表面の水の接触角が45度以下で、他面に粘着剤層が形成されてなることを特徴とする防汚性シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−50473(P2008−50473A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228471(P2006−228471)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(390019264)ダイヤテックス株式会社 (53)
【Fターム(参考)】