説明

水分散性のシリコーン樹脂

アルキルアルコキシシランとカチオン性アルコキシシランとを含む混合物を反応させ、自己分散したシリコーン樹脂を形成する工程と、続くシリコーン樹脂と水とを混合して分散体を形成する工程によるシリコーン樹脂の水分散体の製造方法が開示される。その結果としてもたらされる分散体は、様々な基板上に塗膜を形成するのに有用であり、実質的に共界面活性剤または揮発性有機溶媒を含まない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年12月22日に出願された米国特許出願第61/288903号明細書の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
有機界面活性剤により安定化された樹脂エマルションは、塗膜が熱または太陽光にさらされたときに弱い特性につながるいくつかの不利益を有する。一旦、基板上に膜が被覆されると、その有機界面活性剤は所定位置に固定されず、他の場所に自由に移動する。これにより、界面活性剤が集中する領域が生じ、熱または太陽光にさらされると表面が黄変することがある。これらの界面活性剤は、ウォータースポット、親水性の残存および膜の質への影響も引き起こし得る。一般的に、有機界面活性剤は、安定な樹脂エマルションを得るための唯一の手段である。水に分散したシリコーン樹脂は、溶媒または分散媒としての揮発性有機化合物の使用を排除するために大変望ましい。現在のところ、揮発性有機化合物の使用が、シリコーン樹脂を供給する最良の方法である。本発明者らは、揮発性有機化合物をほとんど必要としない特定のシリコーン樹脂の分散体を見出した。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、アルキルアルコキシシランとカチオン性アルコキシシランとを含む混合物を反応させ、自己分散しているシリコーン樹脂を形成する工程と、次いでそのシリコーン樹脂と水とを混合して分散体を形成する工程とによるシリコーン樹脂の水分散体の製造方法を提供する。その結果としてもたらされる分散体は、様々な基板上に塗膜を形成するのに有用であり、実質的に共界面活性剤または揮発性有機溶媒を含まない。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本開示は、
(I)(a)80〜99.9重量%の式RSi(OR4−aで表わされるアルキルアルコキシシラン、
(b)0.1〜20重量%の式RSi(OR3−bで表わされるカチオン性アルコキシシラン、を含む混合物を反応させる工程と、
(式中、Rは、1〜30の炭素原子を有するアルキル基であり、
およびRは、独立して、水素、1〜4の炭素原子を有するアルキル基、CHC(O)−、CHCHC(O)−、HOCHCH−、CHOCHCH−、およびCOCHCH−からなる群より選択され、
は、1〜4の炭素原子を有するアルキル基であり、
は、少なくとも1つの第四級アンモニウム置換基を有する一価の炭化水素であり、
aは、1または2、
bは、0,1または2である。)
(II)5〜95重量%の工程(I)の前記混合物と、5〜95重量%の水とを混合して水分散体を形成する工程と、
を具えるシリコーン樹脂の水分散体の製造方法を提供する。
【0005】
(a)アルキルアルコキシシラン
(a)成分は、以下の式で表わされるアルキルアルコキシシランである。
Si(OR4−a
式中、Rは、1〜30の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは、水素、1〜4の炭素原子を有するアルキル基、CHC(O)−、CHCHC(O)−、HOCHCH−、CHOCHCH−、およびCOCHCH−からなる群より選択され、下付き文字「a」は、1または2である。式中、Rは、1〜30の炭素原子、あるいは1〜12の炭素原子、あるいは3〜10の炭素原子、あるいは6〜9の炭素原子、あるいは8の炭素原子を有するアルキル基を表す。
【0006】
(a)成分は、上述したものの単独のアルキルアルコキシシランでもよいし、またはアルキルアルコキシシランの混合物でもよい。好適ないくつかのアルコキシシランは、
メチルトリメトキシシラン、
メチルトリエトキシシラン、
メチルトリプロポキシシラン、
エチルトリメトキシシラン、
エチルトリブトキシシラン、
プロピルトリメトキシシラン、
プロピルトリエトキシシラン、
イソブチルトリメトキシシラン、
イソブチルトリエトキシシラン、
ブチルトリメトキシシラン、
ブチルトリエトキシシラン、
ヘキシルトリメトキシシラン、
n−オクチルトリエトキシシラン、
n−オクチルトリメトキシシラン、
i−オクチルトリメトキシシラン、
i−オクチルトリエトキシシラン、
ジメチルジメトキシシラン、
ジメチルジエトキシシラン、
ジエチルジメトキシシラン、
ジイソブチルジメトキシシラン、
ジブチルジエトキシシラン、
ジヘキシルジメトキシシランである。
【0007】
そのようなアルキルアルコキシシランは、周知であり、市販されている。代表的な例は、米国特許第5,300,327号明細書(1994年4月5日)、米国特許第5,695,551号明細書(1997年12月9日)、および米国特許第5,919,296号明細書(1999年7月6日)に記載されている。
【0008】
一の実施態様では、RおよびRは、メチルであり、その場合は、(a)成分は、メチルトリメトキシシランである。
【0009】
(b)カチオン性アルコキシシラン
(b)成分は、以下の式で表わされるカチオン性アルコキシシランである。
Si(OR3−b
式中、Rは、メチル、エチル、プロピル、またはブチルのような1〜4の炭素原子を有するアルキル基であり、
は、少なくとも1つの第四級アンモニウム置換基を有する一価の炭化水素基であり、
は、水素、1〜4の炭素原子を有するアルキル基、CHC(O)−、CHCHC(O)−、HOCHCH−、CHOCHCH−、およびCOCHCH−からなる群より選択され、
下付き文字「b」は、0,1または2、あるいは「b」は、0である。
【0010】
カチオン性アルコキシシランの式中の一価の炭化水素基Rは、−R10Xという式であってもよい。
式中、Rは、カチオン性アルコキシシランの式中のケイ素原子に結合し、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、またはイソブチレンのような、1〜4の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレン基である。あるいは、Rは、プロピレンまたはイソブチレンであり、
、R、およびR10は、独立して、1〜20の炭素原子を有する炭化水素基から選択され、R、R、およびR10の合計炭素原子数は、少なくとも6であり、
Xは、フッ化物、塩化物、臭化物もしくはヨウ化物のようなハロゲン化物、酢酸塩、またはトシル基から選択される。
【0011】
これらに限定されないが、代表的なR置換基は、以下のものを含む。
−(CH(CCl
−(CH(CBr
−(CH(CH1429Cl
−(CHCH(C1021Cl
−(CH(CHCHCl
−(CH(CHCHCHOHCl
−(CH(CCl
−(CH(CH1225Cl
−(CH(CH1837Cl
−(CH(CH1837Br
−(CH(C1021CHBr
カチオン性アルコキシシランは、周知であり、多くのものが市販されている。市販品の例としては、Dow Corning(登録商標)5700,5772,およびQ9-6346である。
【0012】
一の実施態様では、カチオン性アルコキシシランの式において、RおよびRは、メチルであり、Rは、−(CH(CH1837Clである。
【0013】
追加のシランおよび/またはシロキサン前駆体を、工程(I)の混合物に加えてもよい。これらは、もたらされるシリコーン樹脂にMまたはQ型シロキシ単位を付与するシランおよび/またはシロキサン前駆体を含む。例えば、一定量のメトキシトリメチルシランおよび/またはテトラエトキシシランを、工程(I)の混合物に加えて、それぞれMおよびQシロキシ単位を導入してもよい。
【0014】
本発明の製造方法の工程(I)は、様々な比率で(a)成分と(b)成分(上述したような)の混合物を形成し、次いで穏やかに混合する工程を含む。混合は、単純な撹拌または振とうでももたらすことができる。次いで、(a)成分と(b)成分は、加水分解および縮合反応において共に反応する。これらの反応は、水および触媒の追加と共に行われる。通常、37%塩酸水溶液のような、強酸性水溶液を加え、これらの反応をもたらす。この反応のための触媒は、塩酸に限定されず、他の酸、塩基、または有機触媒を用いてもよい。
【0015】
通常、反応は、不活性雰囲気下で起こるべきである。不活性雰囲気でない場合、空気中の水蒸気が一部のアルコキシ基と反応し、反応に加えられた水の量に基づいて計算された反応の度合いを阻害する。
【0016】
水および触媒(塩酸水溶液のような)を追加する速度を監視して、固体ゲル粒子の形成を回避すべきである。遅い撹拌速度も、追加中のゲル粒子の形成に影響を及ぼし得る。これらのゲル粒子はろ過して取り除くことができるが、それにより生成物の全体の分子量が低下する。例えば、300rpmの撹拌速度が、フラスコの内容物の撹拌のために妥当な速度である。
【0017】
反応は、高温において進めるべきである。通常、反応混合物は、初めに還流温度まで加熱され、次いで、120〜140℃、あるいは125〜135℃の温度範囲とされ、(メタノールのような)アルコール反応生成物を除去する。最終生成物の重合度に重要なことは、還流にかかる時間であり、それは水と、シランのアルコキシ基との反応に影響を及ぼす。それに続くディーン・スターク・トラップを用いたアルコールの回収の間の約130℃までの加熱により、アルコール、塩酸、および他の沸点の低い不純物を除去する。必要に応じて低分子量オリゴマーと同様に不純物も除去するために、それに続く蒸留を行ってもよい。
【0018】
本発明の製造方法の工程(I)によりもたらされる反応生成物は、シリコーン樹脂構造を有する。一の実施態様では、シリコーン樹脂の反応生成物は、以下の実験式を有するオルガノポリシロキサンを含む:
【化1】

(式中、Rは、上記規定と同じであり、
は、上記規定のRまたはRであり、
Zは、水素原子、RまたはRであり、
c=0.0012〜0.25、
d=0.4988〜1.8であり、c+dは、0.5〜1.8の範囲であり、
eは、0.0〜3.0の範囲である。)
【0019】
本発明のシリコーン樹脂構造は、オルガノポリシロキサンである。オルガノポリシロキサンは、独立して(RSiO0.5)、(RSiO)、(RSiO1.5)、または(SiO)シロキシ単位から選択されるシロキサンの単位を有するポリマーであり、本明細書において、シロキシ単位は、それぞれM、D、T、およびQシロキシ単位と称され、式中、Rは、一価の有機基である。これらのシロキシ単位を様々な手法により組み合わせて、環状、直鎖、または分岐構造を形成することができる。もたらされるポリマーの構造の化学的および物理的性質は、オルガノポリシロキサンに存在するシロキシ単位の種類と数によって異なり得る。例えば、オルガノポリシロキサンは、揮発性または低粘性液体、高粘性液体/樹脂、エラストマーまたはゴム、および樹脂となり得る。本発明のオルガノポリシロキサンは、(RSiO0.5)、(RSiO)、(RSiO1.5)、または(SiO)シロキシ単位のどのような組み合わせを有していてもよく、上述したような実験式を有するオルガノポリシロキサンを与える。もたらされるシリコーン樹脂中の各シロキシ単位の量は、工程(I)の反応混合物において用いられるシランの選択と量に依存する。
【0020】
工程(I)による反応生成物は、次いで、水と混合され、分散体を形成する。本発明の製造方法の工程(II)によれば、5〜95重量%の工程(I)の混合物と、5〜95重量%の水とを混合して水分散体を形成する。これらの成分の混合物を、通常、ローター・ステーター・ミキサー、ホモジナイザー、ソノレーター、マイクロ流動化装置、コロイドミル、高速回転もしくは高せん断刃を具えた撹拌槽、または超音波処理装置のような装置において、混合またはせん断し、エマルションを形成することができる。高エネルギーの混合または高速せん断が有益である一方で、本発明の製造方法の利点の一つは、それらが絶対に必要ではないことである。多くの場合、低エネルギーの混合または穏やかな撹拌は、本発明の分散体またはエマルションの適用目的のための安定化を達成するのに十分である。さらに、本発明の他の利点は、分散体またはエマルションが、さらなる界面活性剤または共界面活性剤の追加を必要としないことである。
【0021】
一の実施態様では、本発明のエマルションは、実質的に共界面活性剤を含まない。理論によって拘束されることを望まないが、本発明者らは、カチオン性アルコキシシランと、アルキルアルコキシシランとの反応によりもたらされる反応生成物が、水分散性のシリコーン樹脂を形成することができ、その水分散性のシリコーン樹脂が、そのエマルションを安定化させるために界面活性剤としても働き得ると考える。そのため、さらなる界面活性剤または共界面活性剤の追加は必須ではない。本明細書で用いる「実質的に共界面活性剤を含まない」という用語は、本発明のエマルションに対して1000ppmよりも大量の界面活性剤または共界面活性剤を意図的に追加することを排除することを意味する。本発明に係る組成物には、少量の共界面活性剤が、不純物、または、他の意図しない使用のような追加によって存在してもよいことが理解される。
【0022】
本開示は、本発明の分散体を表面に塗布してそのエマルションを硬化させることによる塗膜の形成方法をさらに提供する。硬化は単にその分散体を乾燥させるか、あるいはその塗膜を加熱して水の除去を加速することにより、達成することができる。
【0023】
この分散体から成型されるフィルムは、オルガノポリシロキサン塗膜を置き換える高温塗膜として有用であり、オルガノポリシロキサン塗膜は、優れた耐高温性を有するが、有機溶媒中で供給されなければならない。低揮発性の有機内容物の使用制限が増えるにつれ、より厳しい環境規制のためもはや許容されないそれらの空白を埋めるための材料としての原動力となる。
【0024】
本開示に係る組成物は、コンクリートおよび石工製品、テキスタイル、紙、板紙、皮革製品、ならびにセルロース系材料を覆う様々な表面の処理に採用することができる。皮革製品の例としては、衣服、靴およびブーツが挙げられる。テキスタイルは、日よけ、テント、防水シート、レインウェアー、カバー、スリッカー、キャンバス、アスベスト、グラスファイバー、天然繊維、ピートモス、天然および合成糸、織および不織材料、カーペットならびにカーペット繊維を含む。本明細書において予期されるセルロース系材料は、木材、木製品、ファイバーボード、ヒマラヤスギ、アメリカスギ、モミ、ベニヤ板、および構造木材を含む。処理してもよいコンクリートおよび石工表面は、重量および軽量コンクリート、石こう、コンクリートブロック、軽量コンクリートブロック、柔らかい泥れんが、ケイ灰れんが、れんがタイル、セラミックタイル、砂岩、しっくい、粘度れんが、天然石および天然岩、屋根瓦、ケイ酸カルシウムれんが、石綿セメント、スラグ石およびスラグれんが、化粧しっくい、石灰岩、砕石、大理石、グラウト、モルタル、テラゾ、クリンカー、軽石、テラコッタ、磁器、日干しれんが、サンゴ、白雲石およびアスファルト、の製品と表面を含む。本発明の組成物を用いて処理してもよい非セメント系表面は、真珠岩、気泡ガラス、バーミキュライト、雲母および珪藻土を含む。以下に説明する例におけるそのような材料の代表的なものは、(i)中性セメント質砂石;(ii)塗り固められた塩基性セメント質材料;(iii)マツ、アメリカスギおよびヒマラヤスギの形態の木材だったセルロース材料である。
【実施例】
【0025】
以下の例は、本発明の好ましい実施態様を明示するためのものである。当業者は、以下の例において開示され、発明者により発見された技術が本発明の実施において機能することを表すものであり、それによってその実施における好ましい態様に貢献することを理解する。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、その開示された具体的な実施態様において多くの変更が可能であること、および同様の結果を得られることを理解する。全ての百分率は重量%である。全ての測定は、特に断りのない限り、23℃において行った。
【0026】
実施例1
メチルトリメトキシシラン(267.48g)および3−(トリメトキシシリル)−プロピル−N,N−ジメチル−オクタデシルアンモニウム・クロリド(13.31g)の43重量%メタノール溶液(Dow Corning(登録商標)Corporation DC-5700)の混合物を、0.51重量%の塩酸(27.08g)を用いて加水分解した。その反応混合物を加熱して60分間還流して、次いで130℃まで加熱して70分間還流し、その間に副生成物のメタノールを蒸留により除去した。冷却後、メタノール(27.3g)を追加した。その混合物を120℃まで加熱して99トールにおいて60分間の蒸留によりメタノールを除去した。冷却、メタノール(27.3g)の追加、および真空蒸留のサイクルを繰り返した。結果物をろ過して、黄色で、半透明の、半固体生成物を生じた。
【0027】
実施例2
実施例1において述べたものと同様の手順に続いて、その反応容器に、メチルトリメトキシシラン(270.18g)、および3−(トリメトキシシリル)−プロピル−N,N−ジメチル−オクタデシルアンモニウム・クロリド(6.51g)の43重量%メタノール溶液を加えた。これを0.51重量%の塩酸(27.27g)を用いて加水分解した。その反応混合物を加熱して66分間還流し、次いで110℃に上げて150分間保持した。この蒸留により副生成物のメタノールを除去した。冷却後、メタノール(27.3g)を追加した。再び加熱して120℃にして70トールの真空圧を21分間保持した。最後に、温度を55℃に下げて、再びメタノール(27.3g)を追加した。その蒸留プロセスを繰り返して、温度と圧力を33分間保持した。その樹脂を、カートリッジフィルターを用いて多少の圧力によりろ過した。その反応生成物の粘度を、ブックフィールドデジタル粘度計LVT DV-Iモデルを用いて、LVT-3スピンドルを60rpmとして測定したところ、14.0cPだった。GPCによる重量平均分子量および数平均分子量は、それぞれ、439および392g/モルだった。
【0028】
実施例3
2.5オンスの円筒ガラスに、4.01gの実施例2で得られた反応生成物および36.00gの脱イオン化された水を加えた。その混合物を、超音波コンバーターを具えたMisonix(登録商標)Sonicator 3000を用いて最高の激しさで30秒間せん断した。30秒間の中断の後、さらに30秒間最高の激しさでせん断した。そのせん断後、白色で、不透明な樹脂の分散体が得られた。Nanotrac(商標)150 パーティクルアナライザ(Microtrac社)を用いて、粒子径測定を行い、約320nmに中心がある単分散粒度分布が得られた。その分散体を加工した後、直径6cmのポリスチレン製のシャーレ内に膜を成型した。その膜は、透明で、硬く、丈夫であった。
【0029】
実施例4
実施例1の手順に続いて、反応容器に、メチルトリメトキシシラン(264.78g)およびN−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウム・クロリド(16.40g)の50%メタノール溶液を加えた。そのシランを加水分解するために、これを0.68重量%の塩酸(27.32g)を用いた。その反応を加熱して60分間還流した。次いで、127℃まで加熱して51分間で副生成物のメタノールを除去して回収した。その内容物を冷却して、洗浄液としてメタノール(27.3g)を追加した。その混合物を加熱して、真空にした。冷却後にそのメタノールストリッププロセスを繰り返した。その最終生成物は、かすんだ/半透明のわずかに白色がかった液体だった。粘度を測定したところ、12.0cPであり、分子量は、462g/モルであった。
【0030】
実施例5
実施例3の手順に続いて、3.99gの実施例4の反応生成物、および36.92gの脱イオン化された水をMisonix(登録商標)Sonicator 3000を用いてせん断した。約223nmに中心がある単分散粒度分布が得られた。その分散体は、白色で、不透明な液体だった。6cmのポリスチレン製のシャーレ内に成型した膜は、柔らかく、透明で、青色がかっていた。
【0031】
比較例
実施例3の手順に続いて、4.00gのWacker MSE 100および、36.00gの脱イオン化された水とをMisonix(登録商標)Sonicator 3000を用いてせん断した。このシリコーン樹脂は、水に分散しなかった。そのシリコーン樹脂は、小瓶の底に樹脂層を形成した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)(a)80〜99.9重量%の式RSi(OR4−aで表わされるアルキルアルコキシシラン、
(b)0.1〜20重量%の式RSi(OR3−bで表わされるカチオン性アルコキシシラン、を含む混合物を反応させる工程と、
(式中、Rは、1〜30の炭素原子を有するアルキル基であり、
およびRは、独立して、水素、1〜4の炭素原子を有するアルキル基、CHC(O)−、CHCHC(O)−、HOCHCH−、CHOCHCH−、およびCOCHCH−からなる群より選択され、
は、1〜4の炭素原子を有するアルキル基であり、
は、少なくとも1つの第四級アンモニウム置換基を有する一価の炭化水素であり、
aは、1または2、
bは、0,1または2である。)
(II)5〜95重量%の工程(I)の前記混合物と、5〜95重量%の水とを混合して水分散体を形成する工程と、
を具えるシリコーン樹脂の水分散体の製造方法。
【請求項2】
前記アルキルアルコキシシランが、メチルトリメトキシシランである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記カチオン性アルコキシシランが、(CHO)Si−(CH(CH1837Clである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程(I)における反応が、前記アルキルアルコキシシランとカチオン性シランとを加水分解および縮合して、オルガノポリシロキサン樹脂を形成する工程を有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記反応をもたらすために塩酸を用いる、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記工程(I)の反応生成物が、下記実験式を有するオルガノポリシロキサン樹脂を含む、請求項1に記載の製造方法。
【化1】

(式中、Rは、上記規定と同じであり、
は、上記規定のRまたはRであり、
Zは、水素原子、RまたはRであり、
c=0.0012〜0.25、
d=0.4988〜1.8であり、c+dは、0.5〜1.8の範囲であり、
eは、0.0〜3.0の範囲である。)
【請求項7】
工程(I)における前記混合物が、実質的に、
(a)80〜99.9重量%の式RSi(OR4−aで表わされるアルキルアルコキシシランと、
(b)0.1〜20重量%の式RSi(OR3−bで表わされるカチオン性アルコキシシランと、からなる、請求項1に記載の製造方法。
(式中、Rは、1〜30の炭素原子を有するアルキル基であり、
およびRは、独立して、水素、1〜4の炭素原子を有するアルキル基、CHC(O)−、CHCHC(O)−、HOCHCH−、CHOCHCH−、およびCOCHCH−からなる群より選択され、
は、1〜4の炭素原子を有するアルキル基であり、
は、少なくとも1つの第四級アンモニウム置換基を有する一価の炭化水素であり、
aは、1または2、
bは、0,1または2である。)
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に係る製造方法により製造される分散体。
【請求項9】
前記分散体が、エマルションである、請求項8に記載の分散体。
【請求項10】
前記エマルションが、実質的に共界面活性剤を含まない、請求項9に記載のエマルション。
【請求項11】
請求項8に記載の分散体を表面に塗布して、前記エマルションを硬化させる、塗膜の形成方法。
【請求項12】
前記エマルションを乾燥させることにより硬化させる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の方法により製造された硬化した塗膜組成物。

【公表番号】特表2013−515154(P2013−515154A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546140(P2012−546140)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/061498
【国際公開番号】WO2011/087780
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】