説明

水分散性セルロースと少なくとも1種の多糖類を含有する増粘剤

【課題】 微細な繊維状セルロースである水分散性セルロースと多糖類を含有させることで、増粘相乗効果を付与し、少量で所望の増粘効果を得ることができる増粘剤を提供する。
【解決手段】 植物細胞壁を原料とする微細な繊維状セルロースである水分散性セルロースと、特定の多糖類を含有させることで、増粘相乗効果を付与し、少量で所望の増粘効果を得ることができる増粘剤を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
微細な繊維状セルロースである水分散性セルロースと少なくとも1種の多糖類を含有し、増粘相乗効果を有することを特徴とする増粘剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より食品や化粧品等の製品を増粘させるための増粘剤として、ガラクトマンナン、グルコマンナン、キサンタンガム等の多糖類が使用されている。これらの多糖類の多くはpH、イオン濃度等により溶解性が左右され所望の機能が発揮できない場合が多いため、前もって増粘剤を水等に溶解させた溶液を製品に添加する場合が多い。この高濃度の多糖類溶液は粘ちょう性が高く取り扱いが難しいことや、一般的に食品や化粧品等に増粘剤を添加できる量は限られることから、少量で所望の増粘効果を発揮できる増粘剤が望まれている。
【0003】
植物細胞壁を原料とした微細な繊維状のセルロースとしては、微小繊維状セルロースやセルロースナノフィブリル等が知られている。これらの微細な繊維状のセルロースは、ある程度高い粘性が付与できるが、一般的な多糖類と比較して価格が高いので、単独で使用するのはコスト的に問題である。
微小繊維状セルロースと多糖類を含有する増粘剤としては特許文献1〜3などが知られている。これらに示されている効果は「ままこ防止」や「整腸作用」等であり、特定の多糖類と組み合わせて使用することで増粘相乗効果が得られることや増粘剤の添加量を軽減できることは記載されていない。
【0004】
特許文献4および5には、約80%以上の一次壁からなる細胞から得られたセルロースナノフィブリルとその他の添加剤を配合した組成物に関する開示があるが、添加剤配合の主目的は、あくまで乾燥物の再分散性改良や、セルロースナノフィブリルの機能補填である。
【0005】
特許文献6には水分散性乾燥組成物と多糖類を含むゲル形成性組成物に関する記述がある。しかしながら特許文献6の実施例に開示されている水分散性乾燥組成物の組成は、水分散性セルロースと水溶性高分子であるカルボキシメチルセルロース・ナトリウムの2成分だけから成り立っている。この水分散性乾燥組成物は、イオン交換水中で、「エースホモジナイザー」(日本精機株式会社製)のような強力な装置を使用して、工業的に非現実的な非常に強いせん断力で分散すれば、粒子が崩壊して、微細な繊維状のセルロースが水中に分散する。しかし工業的に実用的な分散条件、つまり水道水中で、工業的に通常使用される回転型のホモジナイザー(例えば特殊機化工業株式会社製、「T.K.ホモミクサー」)程度のせん断力で分散を施しても、粒子が充分に崩壊せず、分散が不十分であるために、多糖類と併用しても増粘剤としての機能が十分に発現しない。
【0006】
それに対して後述する本発明の増粘剤の構成成分として使用される水分散性乾燥組成物は、水分散性セルロースと、水溶性高分子と、親水性物質の全てを必須成分として含有する。この3成分全てを含有させてはじめて、実用的な分散条件でも粒子が崩壊し、良好な分散性を示す。その結果、多糖類と併用したときに、増粘剤としての機能が十分に発現する。
【0007】
また特許文献6の水分散性乾燥組成物と多糖類を含むゲル形成性組成物を添加し、水分散液を静置しておくと真性のゲル(true gel)を形成するとされている。それに対して本発明の増粘剤は、ゲル化させない、つまり増粘剤を添加する水分散液や液状組成物の流動性は維持し、真性のゲルを形成させないという点で、異なるものである。ゲル化すると、流動性を失って形態が液状でなくなるため、水分散液や液状組成物としての機能や物性を失ってしまうことになり、非常に問題である。
【特許文献1】特許第1731182号公報
【特許文献2】特開昭60−260517号公報
【特許文献3】特許第1850006号公報
【特許文献4】特表2001−520180号公報
【特許文献5】特許第3247391号公報
【特許文献6】特開2004−41119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は微細な繊維状セルロースである水分散性セルロースと、多糖類を含有させることで、増粘相乗効果を付与し、少量で所望の増粘効果を得ることができる増粘剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、植物細胞壁を原料とする微細な繊維状セルロースである水分散性セルロースと、特定の多糖類を含有させることで、課題を解決し、本発明をなすに至った。すなわち本発明は以下の通りである。
【0010】
(1)植物細胞壁を原料とする、微細な繊維状のセルロースであって、水中で安定に懸濁する成分(長径:0.5〜30μm、短径:2〜600nm、長径/短径比:20〜400)を10質量%以上含有し、かつ、0.5質量%水分散液とした時の損失正接が1未満であることを特徴とする水分散性セルロースと、ガラクトマンナン、グルコマンナン、アルギン酸ナトリウムから選択される少なくとも1種の多糖類を含有する組成物であって、水分散性セルロース:多糖類=1:9〜9:1の質量比で含有することを特徴とする増粘剤。
【0011】
(2)水中で安定に懸濁する成分を10質量%以上含有する(1)に記載の水分散性セルロースを50〜90質量%と、水溶性高分子5〜45質量%と、親水性物質5〜45質量%を含むことを特徴とする水分散性乾燥組成物と、(1)記載の多糖類から選択される少なくとも1種の多糖類を含有する組成物であって、水分散性乾燥組成物:多糖類=1:9〜9:1の質量比で含有することを特徴とする増粘剤。
【0012】
(3)(1)または(2)の多糖類がガラクトマンナン、グルコマンナンからなる群より選択されることを特徴とする(1)または(2)記載の増粘剤。
【0013】
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の増粘剤を添加することにより配合された液状組成物。
【0014】
(5)(1)〜(3)のいずれかに記載の増粘剤を添加することにより配合される、pH3〜8または食塩濃度0.001〜20%である液状食品組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、微細な繊維状セルロースである水分散性セルロースと多糖類を含有させることで、増粘相乗効果を付与し、少量で所望の増粘効果を得ることができる増粘剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について、特にその好ましい形態を中心に、具体的に説明する。本発明の水分散性セルロースは植物細胞壁を原料とする。具体的には、低コストで安定的に原料を入手することができて、工業的に使用が可能なものが好ましく、木材(針葉樹、広葉樹)、コットンリンター、ケナフ、マニラ麻(アバカ)、サイザル麻、ジュート、サバイグラス、エスパルト草、バガス、稲わら、麦わら、葦、竹などの天然セルロースを主成分とするパルプが使用される。綿花、パピルス草、ビート、こうぞ、みつまた、ガンピなども使用が可能だが、原料の安定的な確保が困難であること、セルロース以外の成分の含有量が多いこと、ハンドリングが難しいことなどの理由で好ましくない場合がある。再生セルロースを原料とした場合、充分な性能が発揮されないので、再生セルロースは本発明の原料としては含まれない。
【0017】
好ましい原料の具体的例は、木材パルプ、コットンリンターパルプ、バガスパルプ、麦わらパルプ、稲わらパルプ、竹パルプなどである。特に好ましいのはイネ科植物の細胞壁を起源としたセルロース性物質であり、具体的にはバガスパルプ、麦わらパルプ、稲わらパルプ、竹パルプである。
【0018】
本発明で使用される微細な繊維状のセルロースの結晶化度は特に定めるものではないが、X線回折法(Segal法)で測定されるところの結晶化度が、50%より大きいことが好ましく、55%以上であればさらに好ましい。本発明物質はセルロース以外の成分を含有するが、それらの成分は非晶性であり、非晶性としてカウントされる。
【0019】
本発明で使用されるセルロースは「微細な繊維状」である。本明細書中で「微細な繊維状」とは、光学顕微鏡および電子顕微鏡にて観察および測定されるところの、長さ(長径)が0.5μm〜1mm程度、幅(短径)が2nm〜60μm程度、長さと幅の比(長径/短径)が5〜400程度であることを意味する。
本発明の水分散性セルロースまたは水分散性乾燥組成物は、水中で安定に懸濁する成分を含有する。
【0020】
具体的には、0.1質量%濃度の水分散液状態として、これを1000Gで5分間遠心分離した時においても、沈降することなく水中に安定に懸濁しているという性質を有する成分であり、高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察・測定される長さ(長径)が0.5〜30μmであり、幅(短径)が2〜600nmであり、長さと幅の比(長径/短径比)が20〜400である繊維状のセルロースからなる。好ましくは、幅が100nm以下であり、より好ましくは50nmである。
【0021】
本発明の増粘剤の構成成分として使用される水分散セルロースまたは水分散性乾燥組成物は、この「水中で安定に懸濁する成分」を10質量%以上含有する。この成分の含有量が10質量%未満であると、前述の機能が十分に発揮されない。含有量は多いほど好ましいが、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50%以上である。なお、この成分の含有量は特に断らない限り、全セルロース中の存在比率を表すものであり、水溶性成分が含まれている場合であってもそれが含まれないように測定・算出される。
【0022】
本発明の水分散性セルロースまたは水分散性乾燥組成物は、0.5質量%濃度の水分散液において、歪み10%、周波数10rad/sの条件で測定される損失正接(tanδ)が1未満であり、好ましくは0.6未満である。0.6未満であるとそれらの性能はさらに秀でたものとなる。損失正接が1以上であると、後述する他の多糖類との増粘相乗効果が劣る。
本発明の水分散性セルロースまたは水分散性乾燥組成物の損失正接を1未満にするためには、植物細胞壁由来のミクロフィブリルを短く切断することなく取り出す必要がある。しかしながら現在の技術では全く「短繊維化」させることなく、「微細化」だけを行うことはできない。(ここで言う「短繊維化」とは繊維を短く切断すること、あるいは短くなった繊維の状態を意味する。また「微細化」とは引き裂くなどの作用を与えて繊維を細くすること、または細くなった繊維の状態を意味する。)つまり損失正接を1未満にするためには、セルロース繊維の「短繊維化」を最低限に抑えつつ「微細化」を進行させることが重要である。そのための好ましい方法を以下に示すが、これらの方法に何ら限定するものではない。
セルロース繊維の「短繊維化」を最低限に抑えつつ「微細化」を進行させるために、原料として選択する植物細胞壁を起源とするセルロース性物質は、平均重合度400〜12000で、かつ、α−セルロース含量(%)が60〜100質量%のものが好ましく、より好ましくはα−セルロース含量(%)が60〜85質量%のものである。
またセルロース繊維の「短繊維化」を最低限に抑えつつ「微細化」を進行させるために使用する装置としては高圧ホモジナイザーが好ましい。高圧ホモジナイザーの具体例としては、エマルジフレックス(AVESTIN,Inc.)、アルティマイザーシステム(株式会社スギノマシン)、ナノマイザーシステム(ナノマイザー株式会社)、マイクロフルイダイザー(MFIC Corp.)、バルブ式ホモジナイザー(三和機械株式会社、Invensys APV社、Niro Soavi社、株式会社イズミフードマシナリー)などがある。高圧ホモジナイザーの処理圧力としては30MPa以上が好ましく、より好ましくは60〜414MPaである。
【0023】
本発明に使用する多糖類はガラクトマンナン、グルコマンナン、アルギン酸ナトリウムからなる群、好ましくはガラクトマンナンとグルコマンナンからなる群から少なくとも1種が選択される。
【0024】
本発明で使用されるガラクトマンナンとは、β−D−マンノースがβ−1,4結合した主鎖と、α−D−ガラクトースがα−1,6結合した側鎖からなる構造を有する多糖類である。ガラクトマンナンの例としては、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム等があり、マンノースとグルコースの比率は、グアーガムで約2:1、ローカストビーンガムで約4:1、タラガムで約3:1である。
【0025】
本発明で使用されるグルコマンナンは、D−グルコースとD−マンノースがβ−1,4結合した構造を有し、グルコースとマンノースの比率が約2:3の多糖類であるが、精製度が低いと独特の刺激臭があるので、精製度の高いものを使用することが望ましい。
【0026】
本発明で使用されるアルギン酸ナトリウムとは、アルギン酸がナトリウムで中和された水溶性の多糖類である。アルギン酸はβ−D−マンヌロン酸(Mと略する)とα−L−グルロン酸(Gと略する)からなる1,4結合のブロック共重合体である。Mからなるブロック(M−M−M−M)と、Gからなるブロック(G−G−G−G)と、両残基が交互に入り交じっているブロック(M−G−M−G)、という3つのセグメントから成り立っている。
【0027】
本発明の増粘相乗効果とは、水分散性セルロース(または水分散性乾燥組成物)と少なくとも1種の多糖類を含有することで、特異的に発現する相乗効果のことである。具体的には、請求項1〜3に記載の増粘剤を使用した、以下の増粘剤水分散液あるいは液状組成物の粘度(粘度Z)が、理論粘度αを上回る場合、つまり「粘度Z>理論粘度α」の関係にある場合、増粘相乗効果を有すると判定する。
【0028】
ここで、 粘度X:粘度Zの調製に用いた増粘剤に含まれる多糖類を、粘度Zの増粘剤と同量添加した場合の、水分散液あるいは液状組成物の粘度
粘度Y:粘度Zの調製に用いた増粘剤に含まれる、水分散性セルロース(または水分散性乾燥組成物)を、粘度Zの増粘剤と同量添加した場合の、水分散液あるいは液状組成物の粘度
粘度Z:請求項1〜3記載の増粘剤の、水分散液あるいは液状組成物の粘度理論粘度
【0029】
α:粘度X、粘度Yから推定される粘度理論値であり、次式から推定されるものである。
理論粘度α=〔β×粘度X+γ×粘度Y〕/(β+γ)
β:粘度Zを求める時に使用した、増粘剤水分散液あるいは液状組成物中に含まれる、多糖類の量(質量%)
γ:粘度Zを求める時に使用した、増粘剤水分散液あるいは液状組成物中に含まれる、水分散性セルロース(または水分散性乾燥組成物)の量(質量%)
β+γ:粘度Zを求める時に使用した、増粘剤水分散液あるいは液状組成物に含まれる、増粘剤の量(質量%)
【0030】
本発明の増粘剤には、増粘剤の他に、デンプン類、油脂類、蛋白質類、ペプチド、アミノ酸類、食塩、各種リン酸塩等の塩類、界面活性剤、乳化剤、酸味料、甘味料、香料、色素、pH調整剤、消泡剤、ミネラル、食物繊維、調味料、酸、アルカリ、アルコール等の成分が適宜配合されていても良い。またペクチン、キサンタンガムのように、増粘相乗効果を付与しない多糖類が適宜配合されていても良い。
【0031】
本発明の増粘剤の構成成分として使用される水分散性乾燥組成物は、水分散性セルロースを50〜90質量%と、水溶性高分子5〜45質量%と、親水性物質5〜45質量%からなる乾燥物である。好ましくは水分散性セルロース:カルボキシメチルセルロース・ナトリウム:親水性物質=60〜75:5〜20:15〜25質量%の範囲であり、さらに好ましくは、62〜73:7〜18:17〜23質量%の範囲からなる乾燥物であり、顆粒状、粒状、粉末状、鱗片状、小片状、シート状を呈する。この組成物は水中に投入し、機械的な剪断力を与えた時、粒子が崩壊し、微細な繊維状のセルロースが水中に分散するようになることが特徴である。水分散性セルロースが50質量%未満になると、セルロースの比率が低くなって効果が発揮されない。90質量%以上になると、相対的にその他の成分の配合比率が下がるので、水中の充分な分散性を確保することができない。
【0032】
本発明に使用される前記水分散性乾燥組成物の成分である水溶性高分子とは、乾燥時におけるセルロース同士の角質化を防止する作用を有するものであり、具体的にはアラビアガム、アラビノガラクタン、アルギン酸およびその塩、カードラン、ガッティーガム、カラギーナン、カラヤガム、寒天、キサンタンガム、グアーガム、酵素分解グアーガム、クインスシードガム、ジェランガム、ゼラチン、タマリンドシードガム、難消化性デキストリン、トラガントガム、ファーセルラン、プルラン、ペクチン、ローカントビーンガム、水溶性大豆多糖類、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、メチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウムなどから選ばれた1種または2種以上の物質が使用される。中でも、カルボキシメチルセルロース・ナトリウムが好ましい。このカルボキシメチルセルロース・ナトリウムとしては、カルボキシメチル基の置換度が0.5〜1.5、好ましくは0.5〜1.0、さらに好ましくは0.6〜0.8である。また1質量%水溶液の粘度は5〜9000mPa・s程度、好ましくは1000〜8000mPa・s程度、さらに好ましくは2000〜6000mPa・s程度のものである。
【0033】
本発明に使用される親水性物質とは冷水への溶解性が高く、粘性を殆どもたらさず、常温で固体の物質であり、デキストリン類、水溶性糖類(ブドウ糖、果糖、庶糖、乳糖、異性化糖、キシロース、トレハロース、カップリングシュガー、パラチノース、ソルボース、還元澱粉糖化飴、マルトース、ラクツロース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖等)、糖アルコール類(キシリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール等)、より選ばれた1種または2種以上の物質である。水溶性高分子は前述の通り、セルロースの角質化を防ぐ効果があるが、物質によっては乾燥組成物内部への導水性が劣るため、水中での機械的剪断力を強く、長い時間与える必要が生じる場合がある。親水性物質は主としてこの導水性を強化する機能があり、具体的には乾燥組成物の水崩壊性を促進させる。この作用としては特にデキストリン類が強いため、デキストリン類を用いるのが好ましい。本発明に使用されるデキストリン類とは、澱粉を酸、酵素、熱で加水分解することによって生じる部分分解物のことであり、グルコース残基が主としてα−1,4結合およびα−1,6結合からなり、DE(dextrose equivalent)として2〜42程度、好ましくは20〜42程度のものが使用される。ブドウ糖や低分子オリゴ糖が除去された分枝デキストリンも使用することができる。
【0034】
本発明に使用する水分散性乾燥組成物には水分散性セルロースと水溶性高分子と親水性物質以外に、デンプン類、油脂類、蛋白質類、食塩、各種リン酸塩等の塩類、乳化剤、酸味料、甘味料、香料、色素等の食品に使用できる成分を適宜配合されていても良い。本発明に使用される水分散性乾燥組成物は、前述の通り、水中に投入し、機械的な剪断力を与えた時、構成単位
(粒子)が崩壊し、微細な繊維状のセルロースが水中に分散するようになる。このとき「機械的な剪断力」とは、0.5質量%水分散液を、回転型のホモジナイザーで、最大でも15000rpmで15分間分散するようなものであり、温度は80℃以下で処理することを意味する。このようにして得られた水分散液は、乾燥前の状態、すなわち、「水中で安定に懸濁する成分」が全セルロース分に対して10質量%以上存在する。そして、この水分散液の0.5質量%における損失正接は1未満である。水分散性セルロース中の「水中で安定に懸濁する成分」の含有量と損失正接の測定条件は後述する。水分散性セルロースは前述したとおり、長径は0.5〜30μm、短径は2〜600nmである。長径/短径比は20〜400である。好ましくは、幅が100nm以下であり、より好ましくは50nmである。
【0035】
本発明の液状組成物とは、室温で液状あるいはペースト状の形態をとるものであり、液状食品組成物、液状化粧品組成物、液状医薬品組成物、液状工業用組成物等が含まれる。これらの液状組成物は、スプレー、チュアパック、レトルト食品、冷凍食品、電子レンジ用食品等のように、形態または用時調製の加工手法が異なっていても本発明に含まれる。
液状食品組成物の例としては、「コーヒー、紅茶、抹茶、ココア、汁粉、ジュース、豆乳、アルコール等の嗜好飲料」、「生乳、加工乳、乳酸菌飲料等の乳成分含有飲料」、「カルシウム強化飲料等の栄養強化飲料並びに食物繊維含有飲料等を含む各種の飲料類」、「コーヒーホワイトナー、ホイッピングクリーム、カスタードクリーム、ソフトクリーム等の乳製品類」、「スープ類」、「シチュー類」、「ソース、タレ、ドレッシング等の調味料類」、「練りがらしに代表される各種練り調味料」、「フルーツソース、フルーツプレパレーションに代表される果肉加工品」、「経管流動食等の流動食類」、「液状あるいはペースト状のサプリメント類」および「液状あるいはペースト状のペットフード類」等があげられる。医薬品組成物の例としては、「シロップ薬」や「医薬品に区分される経管流動食等の流動食類」等があげられる。液状化粧品組成物の例としては、化粧水、乳液、コールドクリーム、バニシングクリーム、マッサージクリーム、エモリエントクリーム、クレンジングクリーム、モイスチャークリーム、ハンドクリーム、美容液、パック、ファンデーション、サンスクリーン化粧料、サンタン化粧料美白乳液、各種ローションなどの皮膚用化粧料と、シャンプー、リンス、ヘアコンディショナー、リンスインシャンプー、ヘアスタイリング剤(ヘアフォームやジェル状整髪料等)、ヘアトリートメント剤(ヘアクリームやトリートメントローション等)、染毛剤やローションタイプの育毛剤あるいは養毛剤などの毛髪用化粧料、さらにはハンドクリーナーのような洗浄剤、プレシェーブローション、アフターシェーブローション、芳香剤や歯磨剤、軟膏、貼布剤等があげられる。液状工業用組成物の例としては、顔料、ペンキ、インク類等があげられる。液状食品組成物は、通常、pH3〜8、食塩濃度0.001〜20%で供給されるため、このような条件下で効果を発現することが求められる。
【0036】
本発明の増粘剤の液状組成物に対する添加量は、特に限定するものではないが、好ましくは0.001質量%以上、1質量%未満、さらに好ましくは0.05〜0.7質量%程度である。
【0037】
本発明のゲル化とは、水分散液あるいは液状組成物を静置しておくと、ゼリーやプリンのようなゲル、つまり真性のゲル(true gel)を形成する機能のことで、静置後24時間の時点で判断する。またゲル化した水分散液および液状組成物は流動性を持たない。
【0038】
次に実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお本願発明にかかる物質の諸物性の評価は以下の手法に拠った。
<セルロース性物質の平均重合度>
ASTM Designation: D 1795−90「Standard Test Method for Intrinsic Viscosity of Cellulose」に準じて行う。
【0039】
<セルロース性物質のα−セルロース含有量>
JIS P 8101−1976(「溶解パルプ試験方法」5.5 αセルロース)に準じて行う。
【0040】
<セルロース性物質の結晶化度>
JIS K 0131−1996(「X線回折分析通則」)に規定されるX線回析装置で得られたX線回折図の回折強度値から、Segal 法により算出したもので次式によって定義される。
結晶化度(%)={(Ic−Ia)/Ic}×100
ここで、Ic:X線回析図の回折角2θ=22.5度での回折強度、Ia:同じく回析角2θ=18.5度付近のベースライン強度(極小値強度)である。
【0041】
<セルロース繊維(粒子)の形状(長径、短径、長径/短径比)>
セルロース繊維(粒子)のサイズの範囲が広いので、一種類の顕微鏡で全てを観察することは不可能である。そこで、繊維(粒子)の大きさに応じて光学顕微鏡、走査型顕微鏡(中分解能SEM、高分解能SEM)を適宜選択し、観察・測定する。
光学顕微鏡を使用する場合は、固形分濃度が0.25質量%の水分散液となるようにサンプルと純水を量り取り、「エクセルオートホモジナイザー」(日本精機株式会社製)で、15000rpmで15分間分散したものを、適当な濃度に調整し、それをスライドガラスにのせ、さらにカバーグラスをのせて観察する。
【0042】
また、中分解能SEM(日本電子株式会社製、「JSM−5510LV」)を使用する場合は、サンプル水分散液を試料台にのせ、風乾した後、Pt−Pdを約3nm蒸着して観察する。
高分解能SEM(株式会社日立サイエンスシステムズ製、「S−5000」)を使用する場合は、サンプル水分散液を試料台にのせ、風乾した後、Pt−Pdを約1.5nm蒸着して観察する。
【0043】
セルロース繊維(粒子)の長径、短径、長径/短径比は撮影した写真から15本(個)以上を選択し、測定した。繊維はほぼまっすぐから、髪の毛のようにカーブしているものがあったが、糸くずのように丸まっていることはなかった。短径(太さ)は、繊維1本の中でもバラツキがあったが、平均的な値を採用した。高分解能SEMは、短径が数nm〜200nm程度の繊維の観察時に使用したのだが、一本の繊維が長すぎて、一つの視野に収まらなかった。そのため、視野を移動しつつ写真撮影を繰り返し、その後写真を合成して解析した。
【0044】
<「水中で安定に懸濁する成分」の含有量>
以下の(1)〜(5)および(3’)〜(5’)より求める。
(1)セルロース濃度が0.1質量%の水分散液となるようにサンプルと純水を量り取り、エースホモジナイザー(日本精機株式会社製、AM−T型)で、15000rpmで15分間分散する。
(2)サンプル液20gを遠沈管に入れ、遠心分離機にて1000Gで5分間遠心分離する。
(3)上層の液体部分を取り除き、沈降成分の質量(a)を測定する。
(4)次いで、沈降成分を絶乾し、固形分の質量(b)を測定する。
(5)下記の式を用いて「水中で安定に懸濁する成分」の含有量(c)を算出する。
c=5000×(k1+k2) [質量%]
【0045】
但し、k1およびk2は下記の式を用いて算出して使用する。(ここで、k1:上層の液体部分に含まれる「微細な繊維状のセルロース」の量、k2:沈殿成分に含まれる「微細な繊維状のセルロース」の量、w1:上層の液体部分に含まれる水の量、w2:沈殿成分に含まれる水の量、s2:沈殿成分に含まれる「水溶性高分子+親水性物質」の量とする。)
k1=0.02−b+s2
k2=k1×w2/w1
(水溶性高分子+親水性物質)/セルロース
=d/f [配合比率]
w1=19.98−a+b−0.02×d/f
w2=a−b
s2=0.02×d×w2/{f×(w1+w2)}
「水中で安定に懸濁する成分」の含有量が非常に多い場合は、沈降成分の重量が小さな値となるので、上記の方法では測定精度が低くなってしまう。その場合は(3)以降の手順を以下のようにして行う。
【0046】
(3’)上層の液体部分を取得し、質量(a’)を測定する。
(4’)次いで、上層成分を絶乾し、固形分の質量(b’)を測定する。
(5’)下記の式を用いて「水中で安定に懸濁する成分」の含有量(c)を算出する。
c=5000×(k1+k2) [質量%]
【0047】
但し、k1およびk2は下記の式を用いて算出して使用する。(ここで、k1:上層の液体部分に含まれる「微細な繊維状のセルロース」の量、k2:沈殿成分に含まれる「微細な繊維状のセルロース」の量、w1:上層の液体部分に含まれる水の量、w2:沈殿成分に含まれる水の量、s2:沈殿成分に含まれる「水溶性高分子+親水性物質」の量とする。)
k1=b’−s2×w1/w2
k2=k1×w2/w1
(水溶性高分子+親水性物質)/セルロース
=d/f [配合比率]
w1=a’−b’
w2=19.98−a’+b’−0.02×d/f
s2=0.02×d×w2/{f×(w1+w2)}
もし、(3)の操作で上層の液体部分と沈降成分の境界が明瞭ではなく分離が難しい場合は適宜セルロース濃度を下げて操作を行う。
【0048】
<損失正接(=損失弾性率/貯蔵弾性率)>
以下の(1)〜(3)の手順で求める。
(1)固形分濃度が0.5質量%の水分散液となるようにサンプルと純水を量り取り、「エクセルオートホモジナイザー」(日本精機株式会社製)で、15000rpmで15分間分散する。
(2)25℃の雰囲気中に3時間静置する。
(3)動的粘弾性測定装置にサンプル液を入れてから5分間静置後、以下の条件で測定し、周波数10rad/sにおける損失正接(tanδ)を求める。
装置:「ARES」(Rheometric Scientific,Inc.製、100FRTN1型)
ジオメトリー:Double Wall Couette
温度:25℃
歪み:10%(固定)
周波数:1→100rad/s(約170秒かけて上昇させる)
【0049】
<0.4%質量濃度水分散液の調製、ゲル化状態の確認、粘度測定>
まず固形分が1質量%の水分散液となるようにサンプルと水を量り取り、「T.K.ホモミクサー」(特殊機化工業株式会社製)を使用して、8000rpmで10分間分散する。さらにこの1質量%のサンプル水分散液:水を4:6の比率で混合し、さらに5分間分散して、0.4質量%サンプル水溶液を調製する。この時の温度は特に規定するものではないが、サンプルの分散に適した温度を選択する。
【0050】
次にこの0.4質量%サンプル水溶液を、2つのビーカーに充填する。一方のビーカーに充填された0.4質量%サンプル水溶液を、25℃の雰囲気中に24時間静置した後に、ビーカーを傾けて、0.4質量%サンプル水溶液が流動化してこぼれ落ちれば、流動性を維持しており、ゲル化していないと判断する。ただしゲル化状態の確認が不要なサンプルについては、この操作を省略しても良い。またもう一方のビーカーに充填された0.4質量%サンプル水溶液を、25℃の雰囲気中に3時間静置後、静置状態で回転粘度計(B形粘度計、東機産業株式会社製、「TV−10形」)をセットし、60秒後の粘度を読みとる。なお、ローター回転数は3rpmとし、ローターおよびアダプターは粘度によって適宜変更する。
【0051】
<液状組成物(フルーツソース、ソフトヨーグルト、はっ酵乳飲料、焼き肉のたれ、シロップ薬、コーンスープ)のゲル化状態の確認、粘度測定>
後述の実施例により調製された液状組成物を、各々2つのビーカーに充填する。一方のビーカーに充填された液状組成物を24時間静置した後に、ビーカーを傾けて、液状組成物が流動化してこぼれ落ちれば、流動性を維持しており、ゲル化していないと判断する。ただしゲル化状態の確認が不要なサンプルについては、この操作を省略しても良い。またもう一方のビーカーに充填された液状組成物を、3時間静置後、静置状態で回転粘度計(B形粘度計、東機産業株式会社製、「TV−10形」)をセットし、60秒後の粘度を読みとる。なお、ローター回転数は3rpmとし、ローターおよびアダプターは粘度によって適宜変更する。
【0052】
<pH>
pH計(東亜ディーケーケー株式会社製、「HM−50G形」)で測定する。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例と比較例を示して、具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。実施例で使用する水分散性セルロース、水分散性乾燥組成物、グアーガム、グルコマンナン、キサンタンガムについて、次の(1)〜(6)に示す。
【0054】
(1)水分散性乾燥組成物Aの調整:市販木材パルプ(平均重合度=1720、α−セルロース含有量=78質量%)を、6×16mm角の矩形に裁断し、固形分濃度が80質量%になるように水を加えた。これを、水とパルプチップができるだけ分離しないよう注意して、カッターミル(カッティングヘッド/水平刃間隙:2.03mm、インペラー回転数:3600rpm)に1回通した。
【0055】
セルロース濃度が1.5質量%になるように、カッターミル処理品と水を量り取り、繊維の絡みがなくなるまで撹拌した。この水分散液を砥石回転型粉砕機(グラインダー回転数:1800rpm)で処理した。処理回数は2回で、グラインダークリアランスを110→80μmと変えて処理した。
【0056】
次いで得られた水分散液をそのまま高圧ホモジナイザー(処理圧力:55MPa)で18パスし、水分散性セルロースAスラリーを得た。光学顕微鏡で観察したところ、長径が10〜400μm、短径が1〜5μm、長径/短径比が10〜300の微細な繊維状セルロースが観察された。損失正接は0.64だった。「水中で安定に懸濁する成分」の含有量は15質量%だった。それを高分解能SEMで観察したところ、長径が1〜20μm、短径が10〜150nm、長径/短径比が30〜300のきわめて微細な繊維状のセルロースが観察された。
【0057】
水分散性セルロースA:カルボキシメチルセルロース・ナトリウム:デキストリン=70:18:12(重量部)となるように、水分散性セルロースAスラリーにカルボキシメチルセルロース・ナトリウム(1質量%水溶液粘度:約3400mPa・s)とデキストリン(DE:約23)を添加し、15kgを攪拌型ホモジナイザー(特殊機化工業株式会社製、「T.K.AUTO HOMO MIXER」)で、8000rpmで30分間撹拌・混合し、水分散性セルロースA’スラリーを得た。
【0058】
次いでこの混合液をアプリケータにより厚さ2mmでアルミニウム板状にキャストし、熱風乾燥機を使用し、120℃で45分間乾燥してフィルムを得た。これをカッターミル(不二パウダル株式会社製)で、目開き1mmの篩をほぼ全通する程度に粉砕し、水分散性乾燥組成物Aを得た。
水分散性乾燥組成物Aの結晶化度は68%以上、損失正接は0.64であり、「水中で安定に懸濁する成分」の含有量は20質量%だった。それを高分解能SEMで観察したところ、長径が1〜20μm、短径が15〜130nm、長径/短径比が30〜300のきわめて微細な繊維状のセルロースが観察された。
【0059】
(2)水分散性セルロースBの調整:市販麦わらパルプ(平均重合度=930、α−セルロース含有量=68質量%)を、6×12mm角の矩形に裁断し、4質量%となるように水を加え、家庭用ミキサーで5分間撹拌した。これを高速回転型ホモジナイザー(ヤマト科学、「ULTRA−DISPERSER」)で1時間分散した。
この水分散液を砥石回転型粉砕機(グラインダー回転数:1800rpm)で処理した。処理回数は2回で、グラインダークリアランスを60→40μmと変えて処理した。
【0060】
次いで得られた水分散液を水で希釈して2質量%にし、高圧ホモジナイザー(処理圧力:175MPa)で8パスし、水分散性セルロースBスラリーを得た。結晶化度は74%だった。光学顕微鏡で観察したところ、長径が10〜700μm、短径が1〜30μm、長径/短径比が10〜150の微細な繊維状のセルロースが観察された。損失正接は0.43だった。「水中で安定に懸濁する成分」の含有量は89質量%だった。それを高分解能SEMで観察したところ、長径が1〜20μm、短径が6〜300nm、長径/短径比が30〜350のきわめて微細な繊維状のセルロースが観察された。
【0061】
(3)水分散性乾燥組成物Cの調整:市販バガスパルプ(平均重合度=1320、α−セルロース含有量=77%)を、6×16mm角の矩形に裁断し、固形分濃度が77質量%になるように水を加えた。
これを、水とパルプチップができるだけ分離しないよう注意して、カッターミル(カッティングヘッド/水平刃間隙:2.03mm、インペラー回転数:3600rpm)に1回通した。セルロース濃度が2質量%、そしてカルボキシメチルセルロース・ナトリウムの濃度が0.118質量%になるようにカッターミル処理品とカルボキシメチルセルロース・ナトリウム(1質量%水溶液粘度:約3400mPa・s)と水を量り取り、繊維の絡みがなくなるまで撹拌した。
【0062】
得られた水分散液をそのまま、高圧ホモジナイザー(処理圧力90MPa)で9パスし、水分散性セルロースCスラリーを得た。光学顕微鏡および中分解能SEMで観察したところ、長径が10〜500μm、短径が1〜25μm、長径/短径比が5〜190の微細な繊維状のセルロースが観察された。損失正接は0.32だった。「水中で安定に懸濁する成分」は99質量%だった。「水中で安定に懸濁する成分」を高分解能SEMで観察したところ、長径が1〜20μm、短径が10〜400nm、長径/短径比が20〜300のきわめて微細な繊維状のセルロースが観察された。
【0063】
水分散性セルロースC:カルボキシメチルセルロース・ナトリウム:デキストリン:ナタネ油=68:12:19.7:0.3(重量部)となるように、水分散性セルロースCスラリーにカルボキシメチルセルロース・ナトリウム(1質量%水溶液粘度:約3400mPa・s)とデキストリン(DE:約28)を添加し、15kgを攪拌型ホモジナイザー(特殊機化工業株式会社製、「T.K.AUTO HOMO MIXER」)で、8000rpmで10分間撹拌・混合した後、前述の高圧ホモジナイザーで20MPa、1パス処理し、水分散性セルロースC’スラリーを得た。
【0064】
水分散性セルロースC’スラリーをドラムドライヤーにて乾燥し、スクレーパーで掻き取り、得られたものをカッターミル(不二パウダル株式会社製)で、目開き2mmの篩をほぼ全通する程度に粉砕し、水分散性乾燥組成物Cを得た。水分散性セルロース組成物Cの結晶化度は57%以上、損失正接は0.52、「水中で安定に懸濁する成分」は100質量%だった。「水中で安定に懸濁する成分」を高分解能SEMで観察したところ、長径が1〜15μm、短径が10〜330nm、長径/短径比が20〜250のきわめて微細な繊維状のセルロースが観察された。
【0065】
(4)グアーガム(ユニテックフーズ株式会社製)
(5)グルコマンナン(清水化学株式会社製)
(6)キサンタンガム(大日本製薬株式会社製)
【0066】
[実施例1]
まず固形分が1質量%の水分散液となるように上記のサンプルと水を量り取り、「T.K.ホモミクサー」(特殊機化工業株式会社製)を使用して、25℃、8000rpmで10分間分散した。さらにこの1質量%のサンプル水分散液:水を4:6の比率で混合し、さらに5分間分散して、0.4質量%サンプル水溶液を調製し、2つのビーカーに充填した。一方のビーカーに充填された0.4質量%サンプル水分散液を、25℃の雰囲気中に24時間静置後、傾けたところ、流動化してビーカーからこぼれ落ち、ゲル化していなかった。
またもう一方のビーカーに充填された0.4質量%サンプル水溶液を、25℃の雰囲気中に3時間静置後、静置状態で回転粘度計(B形粘度計、東機産業株式会社製、「TV−10形」)をセットし、60秒後の粘度を読みとった。なお、ローター回転数は3rpmとし、ローターおよびアダプターは粘度によって適宜変更した。増粘剤は、水分散性乾燥組成物A:グアーガムを6:4の比率で含有するものを選択し、同様に0.4質量%水分散液としてその粘度Z1を測定した。
【0067】
上記の方法で測定した0.4質量%グアーガム水分散液の粘度X1(312mPa・s)と、0.4質量%水分散性乾燥組成物A水分散液の粘度Y1(1780mPa・s)より、以下の式を用いて理論粘度を求めたところ、理論粘度α1は1193mPa・sとなった。
理論粘度α=〔β×粘度X+γ×粘度Y〕/(β+γ)
β:粘度Z1を求める時に使用した、増粘剤水分散液あるいは液状組成物中に含まれる、多糖類の量(質量%)
γ:粘度Z1を求める時に使用した、増粘剤水分散液あるいは液状組成物中に含まれる、水分散性セルロース(または水分散性乾燥組成物)の量(質量%)
β+γ:粘度Zを求める時に使用した、増粘剤水分散液あるいは液状組成物に含まれる、増粘剤の量(質量%)
0.4質量%増粘剤水分散液の粘度Z1(2200mPa・s)と、上記理論粘度α1(1193mPa・s)の関係は、「粘度Z1>理論粘度α1」となり、この増粘剤は増粘相乗効果を有すると判定した。
【0068】
[実施例2]
増粘剤は、水分散性セルロースBスラリー(2質量%濃度)を用いて、水分散性セルロースB:グアーガムを6:4の質量比で含有するものを選択した。0.4質量%増粘剤水分散液を、実施例1と同様の方法で調製し、評価した。この0.4質量%増粘剤水分散液は、流動性を維持し、ゲル化していなかった。
実施例1と同様の方法で得た0.4質量%グアーガム水分散液の粘度X2(312mPa・s)と、0.4質量%水分散性セルロースB水分散液の粘度Y2(849mPa・s)より、理論粘度を求めたところ、理論粘度α2は634mPa・sとなった。
さらに0.4質量%増粘剤水分散液の粘度Z2(1850mPa・s)と、上記理論粘度α2(634mPa・s)の関係は、「粘度Z2>理論粘度α2」となり、この増粘剤は増粘相乗効果を有すると判定した。
【0069】
[実施例3]
増粘剤は、水分散性乾燥組成物C:グアーガムを8:2の質量比で含有するものを選択した。0.4質量%増粘剤水分散液を、実施例1と同様の方法で調製し、評価した。この0.4質量%増粘剤水分散液は、流動性を維持し、ゲル化していなかった。
実施例1と同様の方法で得た0.4質量%グアーガム水分散液の粘度X3(312mPa・s)と、0.4質量%水分散乾燥組成物Cの水分散液の粘度Y3(2010mPa・s)より、理論粘度を求めたところ、理論粘度α3は1670mPa・sとなった。さらに0.4質量%増粘剤水分散液の粘度Z3(2700mPa・s)と、理論粘度α3(1670mPa・s)の関係は、「粘度Z3>理論粘度α3」となり、この増粘剤は増粘相乗効果を有すると判定した。
【0070】
[実施例4]
増粘剤は、水分散性乾燥組成物C:グアーガムを6:4の質量比で含有するものを選択した。0.4質量%増粘剤水分散液を、実施例1と同様の方法で調製し、評価した。この0.4質量%増粘剤水分散液は、流動性を維持し、ゲル化していなかった。
実施例1と同様の方法で得た0.4質量%グアーガム水分散液の粘度X4(312mPa・s)と、0.4質量%水分散乾燥組成物Cの水分散液の粘度Y4(2010mPa・s)より、理論粘度を求めたところ、理論粘度α4は1331mPa・sであった。さらに0.4質量%増粘剤水分散液の粘度Z4(3350mPa・s)と、理論粘度α4(1331mPa・s)の関係は、「粘度Z4>理論粘度α4」となり、この増粘剤は増粘相乗効果を有すると判定した。
【0071】
[実施例5]
増粘剤は、水分散性乾燥組成物C:グアーガムを4:6の質量比で含有するものを選択した。0.4質量%増粘剤水分散液を、実施例1と同様の方法で調製し、評価した。この0.4質量%増粘剤水分散液は、流動性を維持し、ゲル化していなかった。
実施例1と同様の方法で得た0.4質量%グアーガム水分散液の粘度X5(312mPa・s)と、0.4質量%水分散乾燥組成物Cの水分散液の粘度Y5(2010mPa・s)より、理論粘度を求めたところ、理論粘度α5は991mPa・sであった。さらに0.4質量%増粘剤水分散液の粘度Z5(2480mPa・s)と、理論粘度α5(991mPa・s)の関係は、「粘度Z5>理論粘度α5」となり、この増粘剤は増粘相乗効果を有すると判定した。
【0072】
[実施例6]
増粘剤は、水分散性乾燥組成物C:グルコマンナンを6:4の質量比で含有するものを選択した。0.4質量%増粘剤水分散液を、実施例1と同様の方法で調製し、評価した。この0.4質量%増粘剤水分散液は、流動性を維持し、ゲル化していなかった。
実施例1と同様の方法で得た0.4質量%グルコマンナン水分散液の粘度X6(372mPa・s)と、0.4質量%水分散乾燥組成物Cの水分散液の粘度Y6(2010mPa・s)より、理論粘度を求めたところ、理論粘度α6は1355mPa・sであった。さらに0.4質量%増粘剤水分散液の粘度Z6(3280mPa・s)と、理論粘度α6(1355mPa・s)の関係は、「粘度Z6>理論粘度α6」となり、この増粘剤は増粘相乗効果を有すると判定した。
【0073】
〔実施例7〕
水分散性乾燥組成物Cとグアーガムを6:4の質量比で粉末混合した増粘剤(以下増粘剤aと言う)を用いて、以下の手順でフルーツソースAを調製し、評価を行った。ビーカーに、水14.32質量%と果糖ブドウ糖液糖(王子コーンスターチ株式会社製、「F−55」)40質量%を入れて60℃に加温し、「T.K.ホモミクサー」(特殊機化工業株式会社製)で攪拌しながら、0.68質量%の上記増粘剤aと、5質量%のグラニュー糖(第一糖業株式会社製)を粉末混合したものを添加し、8000rpmで10分間分散させた。
【0074】
さらに分散装置をプロペラ攪拌翼に交換し、80℃に暖めて殺菌した40質量%のイチゴピューレ(冷凍イチゴを解凍し、裏ごししたもの)を加え、400rpmで攪拌した。液温が80℃に達してから2分間経過するまで攪拌を続け、殺菌処理して、これをフルーツソースAとした。フルーツソースAを2つのビーカーに充填し、一方のビーカーを25℃で24時間静置した後、ビーカーを傾けたところ、流動化してこぼれ落ち、ゲル化していなかった。またもう一方のビーカーに充填されたフルーツソースAを、25℃で3時間静置後、粘度を測定したところ、19800mPa・sであり、pHは3.4であった。
【0075】
〔実施例8〕
実施例7のフルーツソースAを使用して、以下の手順でソフトヨーグルトBを調製し、評価した。クリーンベンチ内で、下記の攪拌用ヨーグルト85質量%と、実施例7で調製したフルーツソースA15質量%を混合した。次にプロペラ攪拌翼を使用して、5℃、400rpmで1分間攪拌し、これをソフトヨーグルトBとした。この時のソフトヨーグルトBにおける増粘剤aの含有量は、0.1質量%であった。
【0076】
ソフトヨーグルトBを2つのビーカーに充填した。一方のビーカーを、5℃で22時間静置して、さらに25℃で2時間静置した後に、ビーカーを傾けたところ、流動化してこぼれ落ち、ゲル化していなかった。またもう一方のビーカーに充填されたソフトヨーグルトBを、5℃で1時間静置して、さらに25℃で2時間静置した後、粘度を測定したところ、2400mPa・sであり、pHは4.3であった。
【0077】
ここで使用する攪拌ヨーグルトの製造方法は、以下の通りである。
21.7質量%の水と、75質量%の牛乳(南日本酪農協同株式会社製、乳脂肪分3.5%以上、無脂乳固形分8.3%)をステンレスビーカーに注ぎ、プロペラ攪拌翼を使用して、25℃で200rpmで攪拌しながら、3.3質量%の脱脂粉乳(雪印乳業株式会社製)を添加し、10分間攪拌を続けた。
【0078】
その溶液を、高圧ホモジナイザーを使用し、15MPaの処理圧力で均質化し、プロペラ攪拌翼を用いて、80℃、200rpmで更に30分間攪拌し、殺菌処理した。更にクリーンベンチ内で、200rpmで攪拌しながら、20分で30℃まで冷却した。この溶液に0.01%質量%水溶液としたスターター(ダニスコ カルター社製、「MSK−Mix AB N 1−45 Visbybac DIP」)を、外割で0.32質量%加え、スパチュラで攪拌し、発酵用容器に充填した。これをインキュベーターに移し、42℃で12時間発酵させた。発酵後5℃の冷蔵庫に移し、3日間経過したものを攪拌用ヨーグルト(無脂乳固形分9.4%以上)とした。
【0079】
〔実施例9〕
実施例7のフルーツソースAと実施例8の攪拌ヨーグルトを使用して、以下の手順では発酵乳飲料Cを調製し、評価した。
クリーンベンチ内で、実施例7のフルーツソースAを30質量%、実施例8の攪拌ヨーグルト50質量%、水20質量%を、プロペラ攪拌翼を使用して400rpmで、2分間混合した。この溶液を、高圧ホモジナイザーを使用して、15MPaの処理圧力で均質化し、耐熱容器に充填し、85℃の湯浴中で15分間殺菌処理したものを、はっ酵乳飲料Cとした。この時のはっ酵乳Cにおける増粘剤aの含有
量は、0.2質量%であった。はっ酵乳飲料Cを2つのビーカーに充填し、一方のビーカーを5℃で23時間静置して、さらに25℃で1時間静置した。このビーカーを傾けたところ、はっ酵乳飲料Cは流動化してこぼれ落ち、ゲル化していなかった。またもう一方のビーカーを、5℃で2時間静置して、さらに25℃で1時間静置した後に、はっ酵乳飲料Cの粘度を測定したところ、4460mP・sの粘度を示し、pHは4.0であった。
【0080】
〔実施例10〕
水分散性乾燥組成物C:グアーガム:キサンタンガム=5:4:1の質量比で粉末混合した増粘剤(以下増粘剤bと言う)を用いて、以下の手順で焼き肉のたれDを調製し、評価を行った。水44.6質量%と果糖ブドウ糖液糖(王子コーンスターチ株式会社製、「F−55」)15質量%を入れて60℃に加温し、「T.K.ホモミクサー」(特殊機化工業株式会社製)で攪拌しながら、0.4質量%の上記増粘剤bと、グラニュー糖(第一糖業株式会社製)5質量%を粉末混合したものを添加し、8000rpmで10分間分散させた。更に分散装置をプロペラ攪拌翼に交換し、しょうゆ25質量%(キッコーマン株式会社製、食塩濃度16%)、食塩5質量%(財団法人塩事業センター製)、旭味1質量%(日本たばこ産業株式会社製)、りんご酢5質量%(株式会社ミツカン製、酸度5.0%)、おろしたまねぎ2質量%、おろしにんにく1質量%、りんご果汁1質量%(アイク株式会社製、果汁100%)を加え、400rpmで攪拌し、液温が80℃に達してから3分間経過するまで攪拌を続け、殺菌処理したものを、焼き肉のたれDとした。この焼き肉のたれD中に含まれる増粘剤bの含有量は0.4質量%であり、焼き肉のたれDの食塩濃度は9%であった。焼き肉のたれDを2つのビーカーに充填し、一方のビーカーを25℃で24時間静置した後、ビーカーを傾けたところ、流動化してビーカーからこぼれ落ち、ゲル化していなかった。またもう一方のビーカーを、25℃で3時間静置後、焼き肉のたれDの粘度を測定したところ、1200mPa・sであり、pHは4.2であった。
【0081】
〔実施例11〕
実施例10で使用した増粘剤bを用いて、以下の手順でシロップ薬Eを調製し、評価を行った。
果糖ブドウ糖液糖(王子コーンスターチ株式会社製、「F−55」)20質量%と、37.95質量%精製水(日本薬局方)をプロペラ攪拌翼で攪拌しながら、以下に示す1質量%増粘剤b水分散液を40質量%と、以下に示す医薬品混合物dを2.05質量%加え、300rpmで30分間分散させた。
【0082】
この溶液を、高圧ホモジナイザーを使用し、15MPaの処理圧力で、2回均質化する。これをシロップ薬Eとした。このシロップ薬Eに含まれる増粘剤bの含有量は0.4質量%であった。シロップ薬Eを2つのビーカーに充填し、一方のビーカーを25℃で24時間静置後、ビーカーを傾けたところ、流動化してビーカーからこぼれ落ち、ゲル化していなかった。またもう一方のビーカーを、25℃で3時間静置後、シロップ薬Eの粘度を測定したところ、2810mPa・sであった。1質量%増粘剤b水分散液の調製:「T.K.ホモミクサー」(特殊機化工業株式会社製)で攪拌しながら、精製水99質量%に、増粘剤bを1質量%添加し、40℃、8000rpmで10分間分散させた。界面活性剤cの調製:ソルビトールから誘導される脂肪酸エステルである「スパン80」、およびそのポリオキシエチレン鎖付加誘導体である「ツイン80」を5:5の質量比で混合した。
医薬品混合物dの調製:アセトアミノフェン(日本薬局方):界面活性剤cを、200:5の質量比で混合した。
【0083】
〔実施例12〕
実施例7で使用した増粘剤aを配合し、以下の手順でコーンスープFを調整し、評価を行った。
水88.6質量%を「T.K.ホモミクサー」(特殊機化工業株式会社製)で攪拌しながら、増粘剤aを0.4質量%添加し、80℃、7000rpmで5分間分散した。さらに11質量%の多糖類を含有しない市販乾燥スープ(株式会社ポッカ製)を添加して、5分間分散し、コーンスープFとした。食塩濃度は0.73質量%となった。
コーンスープFを2つのビーカーに充填し、一方のビーカーを25℃で24時間静置後、ビーカーを傾けたところ、流動化してビーカーからこぼれ落ち、ゲル化していなかった。
またもう一方のビーカーを、25℃で3時間静置後、コーンスープFの粘度を測定したところ、13840mPa・sであり、pHは6.8であった。
【0084】
〔比較例1〕
実施例7の増粘剤aの代わりに、グアーガムを配合してフルーツソースGを調製し、評価を行った。25℃で3時間静置後、実施例7と同条件でフルーツソースGの粘度を測定したところ、6905mPa・sであり、実施例7と比較すると粘性が顕著に劣っていた。またフルーツソースGのpHは、3.4であった。
【0085】
〔比較例2〕
実施例7の増粘剤aの代わりに、水分散性乾燥物Cを配合してフルーツソースHを調製し、評価を行った。25℃で3時間静置後、フルーツソースHの粘度を測定したところ、14500mPa・sであり、実施例7と比較すると粘性が劣っていた。またフルーツソースHのpHは、3.4であった。
【0086】
〔比較例3〕
実施例8のフルーツソースAの代わりに、比較例1のフルーツソースGを使用して、実施例8と同様の手順でソフトヨーグルトIを調製し、評価した。
5℃で1時間調温し、更に25℃で2時間調温した後の、ソフトヨーグルトIの粘度は、1700mPa・sであり、実施例8と比較すると粘性が劣っていた。またソフトヨーグルトIのpHは、4.3であった。この時のソフトヨーグルトIにおけるグアーガムの含有量は、0.1質量%であった。
【0087】
〔比較例4〕
実施例9のフルーツソースAの代わりに、比較例1のフルーツソースGを使用して、実施例9と同様の方法で、はっ酵乳飲料Jを調製し、評価した。5℃で2時間冷却し、更に25℃で1時間調温した後、はっ酵乳飲料Jの粘度を測定したところ、1800mP・sの粘度を示し、実施例9と比較すると粘性が劣っていた。またpHを測定したところ、4.0であった。
【0088】
〔比較例5〕
実施例10の増粘剤bの代わりに、グアーガム:キサンタンガムを4:1の質量比で混合したものを配合し、実施例10と同様に、焼き肉のたれKを調製し、評価を行った。
25℃で3時間静置後、焼き肉のたれKの粘度を測定したところ、370mPa・sと、実施例10よりも、顕著に低い粘度を示した。また焼き肉のたれKのpHは4.2であった。
【0089】
〔比較例6〕
実施例10の増粘剤bの代わりに、水分散性乾燥組成物Cを配合し、実施例10と同様に、焼き肉のたれLを調製し、評価を行った。25℃で3時間静置後、焼き肉のたれLの粘度を測定したところ、785mPa・sと、実施例10よりも、低い粘度を示した。また焼き肉のたれLのpHは4.2であった。
【0090】
〔比較例7〕
実施例11の増粘剤bの代わりに、グアーガム:キサンタンガムを4:1の質量比で混合したものを配合し、実施例11と同様に、シロップ薬Mを調製し、評価を行った。
25℃で3時間静置後、シロップ薬Mの粘度を測定したところ、1120mPa・sであり、実施例11よりも低い粘度を示した。
【0091】
〔比較例8〕
実施例11の増粘剤bの代わりに、水分散性乾燥組成物Cを配合し、実施例11と同様に、シロップ薬Nを調製し、評価を行った。25℃で3時間静置後、シロップ薬Nの粘度を測定したところ、2110mPa・sであり、実施例11よりも低い粘度を示した。
【0092】
〔比較例9〕
実施例12の増粘剤aの代わりに、グアーガムを配合し、実施例12と同様に、コーンスープOを調製し、評価を行った。 25℃で3時間静置後、コーンスープOの粘度を測定したところ、5460mPa・sであり、実施例12よりも顕著に低い粘度を示した。またコーンスープOのpHは6.8であった。
【0093】
〔比較例10〕
実施例12の増粘剤aの代わりに、水分散性乾燥組成物Cを配合し、実施例12と同様に、コーンスープPを調製し、評価を行った。25℃で3時間静置後、コーンスープPの粘度を測定したところ、7660mPa・sであり、実施例12よりも低い粘度を示した。またコーンスープPのpHは6.8であった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の微細な繊維状セルロースである水分散性セルロースと、少なくとも1種類の多糖類を含有する増粘剤は、増粘相乗効果を有し、少量で所望の増粘効果を得ることができる。つまり増粘剤の添加量を低減することが可能である。この性質は、食品分野のみならず、医薬品、化粧品等の用途においても使用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物細胞壁を原料とする、微細な繊維状のセルロースであって、水中で安定に懸濁する成分(長径:0.5〜30μm、短径:2〜600nm、長径/短径比:20〜400)を10質量%以上含有し、かつ、0.5質量%水分散液とした時の損失正接が1未満であることを特徴とする水分散性セルロースと、ガラクトマンナン、グルコマンナン、アルギン酸ナトリウムから選択される少なくとも1種の多糖類を含有する組成物であって、水分散性セルロース:多糖類=1:9〜9:1の質量比で含有することを特徴とする増粘剤。
【請求項2】
水中で安定に懸濁する成分を10質量%以上含有する請求項1記載の水分散性セルロースを50〜90質量%と、水溶性高分子5〜45質量%と、親水性物質5〜45質量%を含むことを特徴とする水分散性乾燥組成物と、請求項1記載の多糖類から選択される少なくとも1種の多糖類を含有する組成物であって、水分散性乾燥組成物:多糖類=1:9〜9:1の質量比で含有することを特徴とする増粘剤。
【請求項3】
請求項1または2記載の多糖類がガラクトマンナン、グルコマンナンからなる群より選択されることを特徴とする請求項1または2記載の増粘剤。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載の増粘剤を添加することにより配合された液状組成物。
【請求項5】
請求項1〜3いずれかに記載の増粘剤を添加することにより配合される、pH3〜8または食塩濃度0.001〜20%である液状食品組成物。

【公開番号】特開2008−48602(P2008−48602A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352169(P2004−352169)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】