説明

水分散性樹脂組成物および塗料

【課題】耐候性、低汚染性に優れる塗膜を形成できる水分散性樹脂組成物および低汚染型水性塗料を提供する。
【解決手段】カルボニル基および不飽和基を有するアクリル樹脂(a)の存在下で、不飽和単量体(b)を乳化重合して得られたアクリル樹脂エマルジョン(c)に、加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)を加え、重合して得られたシリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)と、分子内に2つ以上のヒドラジド基を有する化合物(B)と、コロイド状シリカ(C)とを含む水分散性樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散性樹脂組成物およびこれを含む塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
建物、構造物の美観保護のため、建材等には低汚染型塗料(被覆材)が塗装されている。該塗料としては、珪素系化合物を含む溶剤系塗料、有機無機ハイブリッド樹脂を含む溶剤系塗料が知られている。該塗料からなる塗膜は、表面に親水性のシラノール基を効率的に発生させるため、表面に親油性の汚染物質がなじみ難く、降雨によるセルフクリーニングによる低汚染機能に優れ、建物、構造物の美観を維持できる。
【0003】
低汚染型塗料は、塗膜に低汚染性を発現させるために多量のアルコキシシリル基を含む。しかし、アルコキシシリル基が水との反応性に富むため、水性塗料の設計は難しい。
近年、アクリル樹脂エマルジョンおよびコロイド状シリカを含む低汚染型水性塗料の開発が行われている。コロイド状シリカは、元来、水に対する濡れや硬さを付与するためにアクリル樹脂の変性剤として用いられている。
【0004】
低汚染型水性塗料としては、下記のものが提案されている。
(1)コロイド状シリカとシリコーン変性アクリル樹脂エマルジョンとを含む低汚染型塗料(特許文献1)。
(2)コロイド状シリカと架橋構造を有するシリコーン変性アクリル樹脂エマルジョンとを含む低汚染型塗料(特許文献2)。
(3)コロイド状シリカとシリコーン変性アクリル樹脂エマルジョンと特定の界面活性剤とを含む低汚染型塗料(特許文献3)。
【0005】
しかし、(1)の低汚染型塗料は、塗膜の低汚染性に優れるものはコロイド状シリカの量が多く、耐候性が悪い。
(2)、(3)の低汚染型塗料は、塗膜の低汚染性が不十分である。
【特許文献1】特開平11−116885号公報
【特許文献2】特開2004−067749号公報
【特許文献3】国際公開第2003/066747号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐候性、低汚染性に優れる塗膜を形成できる水分散性樹脂組成物および低汚染型水性塗料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の水分散性樹脂組成物は、下記シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)と、分子内に2つ以上のヒドラジド基を有する化合物(B)と、コロイド状シリカ(C)とを含むことを特徴とする。
シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A):カルボニル基および不飽和基を有するアクリル樹脂(a)の存在下で、不飽和単量体(b)を乳化重合して得られたアクリル樹脂エマルジョン(c)に、加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)を加え、重合して得られたエマルジョン。
【0008】
前記アクリル樹脂(a)は、下記アクリル樹脂(a1)であり、前記不飽和単量体(b)は、下記不飽和単量体(b1)であり、前記アクリル樹脂エマルジョン(c)は、下記アクリル樹脂エマルジョン(c1)であることが好ましい。
アクリル樹脂(a1):有機溶剤中で、カルボニル基含有不飽和単量体およびカルボキシル基含有不飽和単量体を含む不飽和単量体をラジカル重合してアクリル樹脂(a1’)の溶液を得て、該アクリル樹脂(a1’)の溶液に塩基性化合物を加えた後、アクリル樹脂(a1’)にエポキシ基含有不飽和単量体を付加させてアクリル樹脂(a1)の溶液を得て、該アクリル樹脂(a1)の溶液に水を加えて得られた水性溶液または水性分散液に含まれるアクリル樹脂。
不飽和単量体(b1):加水分解性アルコキシシリル基含有不飽和単量体(b11)を含む不飽和単量体。
アクリル樹脂エマルジョン(c1):アクリル樹脂(a1)の存在下で、不飽和単量体(b1)を乳化重合して得られたエマルジョン。
【0009】
前記アクリル樹脂(a)の量は、不飽和単量体(b)100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましい。
加水分解性アルコキシシリル基含有不飽和単量体(b11)の割合は、不飽和単量体(b1)100質量%のうち、0.1〜2質量%であることが好ましい。
加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)の量は、シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)の固形分100質量部に対して、1〜20質量部であることが好ましい。
【0010】
分子内に2つ以上のヒドラジド基を有する化合物(B)のヒドラジド基と、シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)のカルボニル基とのモル比(ヒドラジド基/カルボニル基)は、0.5〜1.5であることが好ましい。
コロイド状シリカ(C)のSiO固形分の量が、シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)の固形分100質量部に対して、3〜15質量部であることが好ましい。
本発明の塗料は、本発明の水分散性樹脂組成物を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水分散性樹脂組成物によれば、耐候性、低汚染性に優れる塗膜を形成できる。
本発明の塗料によれば、耐候性、低汚染性に優れる塗膜を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書においては、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの総称を意味する。
また、本明細書においては、不飽和単量体とは、α,β−エチレン性の不飽和基を有する単量体を意味する。
また、本明細書においては、アクリル樹脂とは、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有する単量体を含む不飽和単量体を重合して得られた重合体を意味する。
【0013】
(アクリル樹脂(a))
アクリル樹脂(a)は、カルボニル基および不飽和基を有するアクリル樹脂である。
カルボニル基としては、ケト基が挙げられる。
不飽和基としては、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられる。
【0014】
アクリル樹脂(a)としては、下記工程(x1)〜(x3)を経て製造された水性溶液または水性分散液に含まれるアクリル樹脂(a1)が好ましい。
(x1)有機溶剤中で、カルボニル基含有不飽和単量体(a11)およびカルボキシル基含有不飽和単量体(a12)、必要に応じて他の不飽和単量体(a13)を含む不飽和単量体(a10)をラジカル重合してアクリル樹脂(a1’)の溶液を得る工程。
(x2)アクリル樹脂(a1’)の溶液に塩基性化合物を加えた後、アクリル樹脂(a1’)にエポキシ基含有不飽和単量体(a14)を付加させてアクリル樹脂(a1)の溶液を得る工程。
(x3)アクリル樹脂(a1)の溶液に水を加えてアクリル樹脂(a1)の水性溶液または水性分散液を得る工程。
【0015】
工程(x1):
有機溶剤としては、アルコール系溶剤(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等。)、グリコールエーテル系溶剤(エチレングリコール、プロビレングリコール、メチルグリコール、エチルグリコール、ブチルグリコール、エチルジグリコール等。)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン等。)等の各種水溶性溶剤が挙げられる。必要に応じて、水、または、非水溶性溶剤(n−ヘキサン、トルエン、キシレン、ベンゼン、ベンジルアルコール、2−エチルヘキサノール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート等。)を併用してもよい。
【0016】
カルボニル基含有不飽和単量体(a11)としては、ダイアセトンアクリルアミド、ビニルメチルケトン、ダイアセトンアクリレート等が挙げられる。
カルボニル基含有不飽和単量体(a11)の割合は、不飽和単量体(a10)100質量%のうち、1〜20質量%が好ましく、2〜10質量%がより好ましい。カルボニル基含有不飽和単量体(a11)の割合が1質量%以上であれば、塗膜の低汚染性が良好となる。カルボニル基含有不飽和単量体(a11)の割合が20質量%以下であれば、水分散性樹脂組成物の経時安定性が良好となる。
【0017】
カルボキシル基含有不飽和単量体(a12)としては、α,β−不飽和モノまたはジカルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、シトラコン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等。)、カルボキシル基含有ビニル化合物(フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、シュウ酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等。)が挙げられる。
カルボキシル基含有不飽和単量体(a12)の割合は、不飽和単量体(a10)100質量%のうち、5〜50質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。カルボキシル基含有不飽和単量体(a12)の割合が5質量%以上であれば、アクリル樹脂(a1)に水を加えた際にアクリル樹脂(a)がゲル状になりにくい。カルボキシル基含有不飽和単量体(a12)の割合が50質量%以下であれば、塗膜の耐水性が良好となる。
【0018】
不飽和単量体(a10)は、必要に応じて、他の不飽和単量体(a13)を含んでいてもよい。
他の不飽和単量体(a13)としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、重合性ビニル化合物、架橋性単量体等が挙げられる。
【0019】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
重合性ビニル化合物としては、芳香族ビニル化合物(スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルビニルベンゼン等。)、複素環式ビニル化合物(ビニルピロリドン等。)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等。)、ポリアルキレンレングリコール(メタ)アクリレート(エチレングリコール(メタ)アクリレート、ブチレングリコール(メタ)アクリレート等。)、アルキルアミノ(メタ)アクリレート(N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等。)、ビニルエステル化合物(蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチツク酸ビニル(商品名)等。)、モノオレフィン化合物(エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等。)、共役ジオレフィン化合物(ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等。)、アミンイミド基含有ビニル化合物(1,1,1−トリメチルアミンメタクリルイミド等。)、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。)、アミド基または置換アミド基含有不飽和単量体((メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等。)、スルホン酸基含有不飽和単量体(スルホン酸アリル、p−スチレンスルホン酸ナトリウム等。)、不飽和基含有紫外線吸収剤(2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタアクロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等。)、不飽和基含有光安定剤(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート等。)等が挙げられる。
【0021】
架橋性単量体としては、エポキシ基含有不飽和単量体(グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等。)、加水分解性アルコキシシリル基含有不飽和単量体(ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等。)、多官能ビニル化合物(エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート等。)等が挙げられる。架橋性単量体の量は、アクリル樹脂(a1)の溶液が極度な高粘度になる、またはアクリル樹脂(a1)の水溶性を損なうことがない量とする。
【0022】
不飽和単量体(a10)をラジカル重合する際には、通常、開始剤を用いる。
開始剤としては、アゾ系開始剤(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等。)、有機過酸化物類(ベンゾイルパーオキシド等。)等が挙げられる。開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
不飽和単量体(a10)をラジカル重合する際には、分子量をコントロールするために、必要に応じて連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート、2−メルカプトエタノール、β−メルカプトプロピオン酸等が挙げられる。
【0024】
不飽和単量体(a10)をラジカル重合する際の温度は、通常、5〜100℃であり、50〜90℃が好ましい。
【0025】
工程(x2):
工程(x2)においては、塩基性化合物によってアクリル樹脂(a1’)のカルボキシル基をカルボン酸塩とし、該カルボン酸塩と、エポキシ基含有不飽和単量体(a14)のエポキシ基とを反応させることにより、アクリル樹脂(a1’)にエポキシ基含有不飽和単量体(a14)を付加させて、アクリル樹脂(a1)を得る。
【0026】
塩基性化合物としては、アミン化合物(トリエチルアミン、アンモニア、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール等。)、アルカリ金属水酸化物(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等。)等が挙げられ、塗膜の耐水性の点から、アンモニアが好ましい。
塩基性化合物の量は、カルボキシル基の50〜150モル%が好ましい。
【0027】
塩基性化合物を加える際のアクリル樹脂(a1’)の溶液の温度は、通常、5〜100℃であり、50〜90℃が好ましい。
【0028】
エポキシ基含有不飽和単量体(a14)としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エポキシ基含有不飽和単量体(a14)の量は、カルボキシル基含有不飽和単量体(a12)100質量部に対して、0.5〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。エポキシ基含有不飽和単量体(a14)の量が0.5質量部以上であれば、塗膜の低汚染性が良好となる。エポキシ基含有不飽和単量体(a14)の量が10質量部以下であれば、水分散性樹脂組成物の経時安定性が良好となる。
【0029】
エポキシ基含有不飽和単量体(a14)を加える際のアクリル樹脂(a1’)の溶液の温度は、通常、5〜100℃であり、50〜90℃が好ましい。
【0030】
工程(x3):
工程(x3)においては、アクリル樹脂(a1)の溶液に水を加えて、アクリル樹脂(a1)が水に可溶化または分散した状態とし、アクリル樹脂(a1)の水性溶液または水性分散液を得る。
【0031】
アクリル樹脂(a1)を水に可溶化または分散させるために必要な水の量は、通常、アクリル樹脂(a1)の固形分100質量部に対して、60質量部以上である。水の量が60質量部%以上であれば、アクリル樹脂(a1)の水性溶液または水性分散液が安定化し、経時でアクリル樹脂(a1)と水とが分離することがない。
【0032】
アクリル樹脂(a1)の溶液に水を加える際のアクリル樹脂(a1)の溶液の温度は、通常、5〜100℃であり、50〜90℃が好ましい。
【0033】
アクリル樹脂(a1)の水性溶液または水性分散液の固形分濃度は、シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)の固形分濃度の低下を抑える点から、1質量%以上が好ましい。
【0034】
(不飽和単量体(b))
不飽和単量体(b)としては、上述の各種不飽和単量体が挙げられる。
【0035】
不飽和単量体(b)としては、加水分解性アルコキシシリル基含有不飽和単量体(b11)を含む不飽和単量体(b1)が好ましい。
加水分解性アルコキシシリル基含有不飽和単量体(b11)を含むことにより、アクリル樹脂エマルジョン(c)に含まれるアクリル樹脂に加水分解性アルコキシシリル基が導入される。該加水分解性アルコキシシリル基は、加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)の重合体と、アクリル樹脂エマルジョン(c)に含まれるアクリル樹脂とを結合させる役割を果たすため、塗膜の耐候性、低汚染性がさらに向上する。
【0036】
加水分解性アルコキシシリル基含有不飽和単量体(b11)の割合は、不飽和単量体(b1)100質量%のうち、0.1〜2質量%が好ましく、0.2〜1.5質量%がより好ましい。加水分解性アルコキシシリル基含有不飽和単量体(b11)の割合が0.1質量%以上であれば、塗膜の耐候性、低汚染性が良好となる。加水分解性アルコキシシリル基含有不飽和単量体(b11)の割合が2質量%以下であれば、重合安定性、水分散性樹脂組成物の経時安定性が良好となる。
【0037】
(アクリル樹脂エマルジョン(c))
アクリル樹脂エマルジョン(c)は、アクリル樹脂(a)の存在下で、不飽和単量体(b)を乳化重合して得られたエマルジョンである。
アクリル樹脂エマルジョン(c)としては、アクリル樹脂(a1)の存在下で、不飽和単量体(b1)を乳化重合して得られたアクリル樹脂エマルジョン(c1)が好ましい。
【0038】
アクリル樹脂(a)の量は、不飽和単量体(b)100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.2〜4質量部がより好ましく、0.5〜3質量部が特に好ましい。アクリル樹脂(a)の量が0.1質量部以上であれば、低汚染性が良好となる。アクリル樹脂(a)の量が5質量部以下であれば、重合安定性が良好となる。
【0039】
乳化重合は、水性媒体に、アクリル樹脂(a)、不飽和単量体(b)、乳化剤等を加えて乳化液を調製し、該乳化液に開始剤を加えて行う。アクリル樹脂(a)は、水性溶液または水性分散液の状態で加えることが好ましい。
【0040】
乳化剤としては、アニオン性界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム等。)、ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等。)、カチオン性界面活性剤(セシルトリメチルアンモニウムブロミド、ラウリルピリジニウムクロリド等。)、両性界面活性剤(ラウリルベダイン等。)、反応性界面活性剤等が挙げられる。乳化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
開始剤としては、過硫酸塩系開始剤(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等。)、水溶性アゾ系開始剤(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジ塩酸塩等。)、有機過酸化物類(tert−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド等。)、過酸化水素等が挙げられる。開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0042】
乳化重合においては、開始剤とともに還元剤を用いてもよい。
還元剤としては、還元性有機化合物(アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラート金属塩等。)、還元性無機化合物(チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等。)等が挙げられる。
【0043】
乳化重合においては、必要に応じて連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、上述の各種連鎖移動剤が挙げられる。
連鎖移動剤の量は、塗膜の耐候性等の物性に影響しない範囲で、用途、仕様に応じて適宜調整することが好ましい。
【0044】
不飽和単量体(b)を乳化重合する際の温度は、通常、5〜100℃であり、50〜90℃が好ましい。
【0045】
(加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d))
加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)は、下記式(I)で表される。
(R−Si−(OR4−a ・・・(I)。
式中、aは0〜3の整数であり、Rは炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、アリル基、ビニル基、アクリロイル基またはメタクリロイル基であり、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基またはアリール基である。
【0046】
の炭素数が10以下であれば、反応性が良好である。Rの炭素数は、1〜4の整数が好ましい。なお、Rが2つ以上存在するとき、Rは、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
の炭素数が10以下であれば、アルコキシ基の加水分解性や反応性が良好となる。Rの炭素数は、1〜4の整数が好ましい。なお、Rが2つ以上存在するとき、Rは、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0047】
加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0048】
(シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A))
シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)は、アクリル樹脂エマルジョン(c)に、加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)を加え、重合して得られたエマルジョンである。
【0049】
シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)は、具体的には、下記工程(y1)〜(y3)を経て製造される。
(y1)アクリル樹脂エマルジョン(c)のpHを4〜8に調整する工程。
(y2)pH調整後のアクリル樹脂エマルジョン(c)に、加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)を加え、アクリル樹脂エマルジョン(c)に含まれるアクリル樹脂に加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)を含浸させる工程。
(y3)加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)を重合し、シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)を得る工程。
【0050】
工程(y1):
アクリル樹脂エマルジョン(c)に酸または塩基を添加して、該エマルジョンのpHを4〜8に調整し、該エマルジョンに含まれるアクリル樹脂の表面電荷を高くし、エマルジョンに安定性を付与する。
酸としては、酢酸、乳酸、塩酸、燐酸、硫酸等が挙げられる。
塩基としては、アミン化合物(トリエチルアミン、アンモニア、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール等。)、アルカリ金属水酸化物(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等。)が挙げられ、アンモニアが好ましい。
【0051】
工程(y2):
加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)の量は、アクリル樹脂エマルジョン(c)の固形分100質量部に対して、1〜20質量部が好ましく、3〜18質量部がより好ましい。加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)量が1質量部以上であれば、塗膜の低汚染性が良好となる。加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)量が20質量部以下であれば、重合安定性、水分散性樹脂組成物の経時安定性が良好となる。
【0052】
アクリル樹脂エマルジョン(c)に含まれるアクリル樹脂に加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)を含浸させる際の温度は、通常、5〜100℃であり、50〜90℃が好ましい。
アクリル樹脂エマルジョン(c)に含まれるアクリル樹脂に加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)を含浸させる時間は、10〜120分が好ましく、30〜90分がより好ましい。
【0053】
工程(y3):
アクリル樹脂エマルジョン(c)に含まれるアクリル樹脂に加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)を含浸させた後、加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)を重合することにより、アクリル樹脂エマルジョン(c)に含まれるアクリル樹脂と、加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)の重合体とが複合化したシリコーン変性アクリル樹脂が形成される。
【0054】
加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)を重合する際の温度は、通常、5〜100℃であり、50〜90℃が好ましい。
【0055】
(分子内に2つ以上のヒドラジド基を有する化合物(B))
分子内に2つ以上のヒドラジド基を有する化合物(B)としては、シュウ酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジド等が挙げられる。
【0056】
(コロイド状シリカ(C))
コロイド状シリカ(C)とは、シリカのコロイド状分散液である。
コロイド状シリカ(C)の製造方法は、特に制限されない。
【0057】
コロイド状シリカ(C)としては、下記のものが挙げられる。
日産化学工業社製:スノーテックス30、スノーテックスC、スノーテックスCM、スノーテックスS、スノーテックスXS、スノーテックスXL、スノーテックスYL、スノーテックスZL、スノーテックスMP−2040、スノーテックスN、スノーテックスO、スノーテックスOL(以上商品名)、
触媒化学工業社製:カタロイドSI−30、カタロイドSA(以上商品名)、
日本化学工業社製:シリカドール20、シリカドール20B、シリカドール20P(以上商品名)、
ADEKA社製:アデライトAT−20、アデライトAT−20N(以上商品名)、
扶桑化学工業製:PL−3、PL−7(以上商品名)等。
【0058】
(水分散性樹脂組成物)
本発明の水分散性樹脂組成物は、シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)と、分子内に2つ以上のヒドラジド基を有する化合物(B)と、コロイド状シリカ(C)とを含む組成物である。
【0059】
分子内に2つ以上のヒドラジド基を有する化合物(B)量は、分子内に2つ以上のヒドラジド基を有する化合物(B)のヒドラジド基と、シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)のカルボニル基とのモル比(ヒドラジド基/カルボニル基)が0.5〜1.5となる量が好ましく、該モル比が0.75〜1.25となる量がより好ましい。該モル比が0.5以上であれば、塗膜の耐候性、低汚染性が良好となる。該モル比が1.5以下であれば、塗膜の耐候性が良好となる。
【0060】
コロイド状シリカ(C)のSiO固形分の量は、シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)の固形分100質量部に対して、3〜15質量部が好ましく、5〜13質量部がより好ましい。コロイド状シリカ(C)のSiO固形分の量が3質量部以上であれば、塗膜の低汚染性が良好となる。コロイド状シリカ(C)のSiO固形分の量が15質量部以下であれば、塗膜の艶、耐候性が良好となる。
【0061】
(塗料)
本発明の塗料は、本発明の水分散性樹脂組成物を含む塗料である。
本発明の塗料は、必要に応じて、増粘剤、消泡剤、顔料、分散剤、光安定剤、紫外線吸収剤、防腐剤等を含んでいてもよい。
【0062】
また、本発明の塗料は、必要に応じて、シリコーン成分の硬化促進剤を含んでいてもよい。
硬化促進剤としては、有機・無機アミン類、無機・有機酸類、燐酸エステル類、有機錫化合物、有機シラン化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物等が挙げられる。
【0063】
本発明の塗料を塗布する基材としては、各種建材をはじめ、紙、繊維、金属等が挙げられる。
塗布方法は、特に限定されない。
【0064】
以上説明した本発明の水分散性樹脂組成物および塗料にあっては、カルボニル基および不飽和基を有するアクリル樹脂(a)の存在下で、不飽和単量体(b)を乳化重合して得られたアクリル樹脂エマルジョン(c)に、加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)を加え、重合して得られたシリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)と、分子内に2つ以上のヒドラジド基を有する化合物(B)と、コロイド状シリカ(C)とを含むため、耐候性、低汚染性に優れる塗膜を形成できる。
【実施例】
【0065】
以下に、実施例により本発明を詳細に説明する。
本実施例における「部」は質量部を示し、「%」は質量%を示す。
【0066】
(理論Tg)
アクリル樹脂の理論Tgは、下記式(II)および式(III)から計算した。
1/T=(W/T+W/T+W/T+・・・W/T) ・・・(II)、
Tg=T−273 ・・・(III)。
式中、Tgは、アクリル樹脂のガラス転移温度(摂氏温度;℃)であり、
Tは、アクリル樹脂のガラス転移温度(絶対温度;K)であり、
は、アクリル樹脂を構成する各不飽和単量体の質量分率であり、
は、アクリル樹脂を構成する各不飽和単量体のホモポリマーのガラス転移温度(K)である。
【0067】
(固形分)
試料を105℃で1時間乾燥し、揮発残分を測定した。
【0068】
(粘度)
B型粘度計を用いて23℃における粘度を測定した。
【0069】
(pH)
pHメーターを用いてpHを測定した。
【0070】
(最低造膜温度(MFT))
熱勾配式最低造膜温度測定装置を用いてMFTを測定した。
【0071】
(初期光沢)
塗板(フレキ板)について、デジタル変角光沢計(スガ試験機社製、UGV−5D)を用いて60度における光沢を測定した。
【0072】
(耐候性)
塗板(フレキ板)について、メタリングウエザーメーター(スガ試験機社製)を用い下記条件で試験し、400時間照射後の光沢保持率を測定した。
ブラックパネル温度:63℃、
湿度:50%RH、
照度1.55kW/m
1サイクル:照射2時間→照射+降雨2分(3サイクル)→結露2時間(雰囲気:30℃、95%RH、塗板:25℃)の8時間サイクル。
【0073】
(低汚染性)
塗板(トタン板)を45°に折り曲げ、45°面および垂直面が南向きになるように、屋外(兵庫県龍野市)に暴露し、3ヶ月暴露後の雨筋の状態を下記基準にて評価した。
○:雨筋が少なく、ぼけて目立たない。
△:雨筋が薄く分かる。
×:雨筋が濃い。
【0074】
(略号)
AIBN:2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、
γ−MPTMS:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、
γ−MPMDMS:γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、
MTMS:メチルトリメトキシシラン、
TEOS:テトラエトキシシラン、
DMDMS:ジメチルジメトキシシラン、
ADH;アジピン酸ジヒドラジド。
【0075】
〔実施例1〕
(アクリル樹脂(a)の製造)
工程(x1):
撹拌機、温度計、環流凝縮機を備えた重合装置内に、エタノールの210部、メチルメタクリレートの4部、tert−ブチルメタクリレートの4部、ブチルアクリレートの2部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの3部、メタクリル酸の5部、ダイアセトンアクリルアミドの1部、アクリルアミドの50%水溶液の2部、AIBNの0.1部、n−ドデシルメルカプタンの1部を入れ、昇温した。還流を確認してから20分保持し反応をスタートさせた。
【0076】
ついで、重合装置内に、エタノールの90部、メチルメタクリレートの36部、tert−ブチルメタクリレートの36部、ブチルアクリレートの18部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの27部、メタクリル酸の45部、ダイアセトンアクリルアミドの9部、アクリルアミドの50%水溶液の18部、AIBNの0.9部を混合したものを、還流を保ちながら、4時間かけて滴下した。還流を続け、1時間反応し、アクリル樹脂(a1’)の溶液を得た。その後、60℃に冷却した。
【0077】
工程(x2):
重合装置内に、25%アンモニア水の25部とイオン交換水の115部を混合したものを徐々に加え、1時間保持した。
重合装置内に、グリシジルメタクリレートの1.5部を加え、1時間保持し、アクリル樹脂(a1)の溶液を得た。
【0078】
工程(x3):
重合装置内に、イオン交換水の354部を徐々に加えて、室温(25℃)に冷却し、アクリル樹脂(a1)の水性溶液を得た。
アクリル樹脂(a1)の理論Tgは85℃であった。アクリル樹脂(a1)の水性溶液の固形分は19.8%であり、粘度(BM型粘度計、60rpm、23℃)は50mPa・sであり、pHは6.8であった。
【0079】
(アクリル樹脂エマルジョン(c)の製造)
脱イオン水の190部、アデカリアソープSR−10(ADEKA製、アニオン反応性界面活性剤)の9部、不飽和単量体(b1){メチルメタクリレートの158部、シクロヘキシルメタクリレートの150部、2−エチルヘキシルアクリレートの170部、γ−MPTMSの2部、メタクリル酸の10部およびダイアセトンアクリルアミドの10部}、アクリル樹脂(a1)の水性溶液の25部をホモミキサーにて混合、乳化して乳化液を調製した。
不飽和単量体(b1)の100部に対するアクリル樹脂(a1)の固形分の量は、1.0部であった。
加水分解性アルコキシシリル基含有不飽和単量体(b11)(γ−MPTMS)の割合は、不飽和単量体(b1)のうち、0.4%であった。
【0080】
撹拌機、温度計、環流凝縮機を備えた重合装置内に、脱イオン水の250部、アデカリアソープSR−10の1部、ピロリン酸ナトリウムの1部を入れ、窒素置換を十分に行った後、昇温した。内温を75℃に保ちながら、乳化液の5%を重合装置内に加えた。ついで、過硫酸カリウム1部を加えて重合を開始し、80℃で15分反応させた。ついで、乳化液の残り95%、2.5%過硫酸カリウム水溶液の40部を、内温80℃に保ちながら4時間かけて滴下した。80℃で2時間保持し、30℃に冷却し、アクリル樹脂エマルジョン(c1)を得た。
不飽和単量体(b1)からなるアクリル樹脂の理論Tgは15℃であった。アクリル樹脂エマルジョン(c1)の固形分は50.9%であった。
【0081】
(シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)の製造)
工程(y1):
引き続き、重合装置内に25%アンモニア水の2部を加え、アクリル樹脂エマルジョン(c1)のpHを5に調整した。
【0082】
工程(y2):
重合装置内に、MTMSの40部、TEOSの10部を徐々に加え、1時間保持した。 アクリル樹脂エマルジョン(c1)の固形分100部に対する加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)(MTMSとTEOSの合計)の量は、9.7部であった。
【0083】
工程(y3):
重合装置の内温を80℃に昇温し、2時間保持した後、室温(25℃)に冷却し、シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)を得た。シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)の固形分は50.7%であった。
【0084】
(水分散性樹脂組成物の調製)
引き続き、重合装置内に、ADHの5.3部をイオン交換水の20部に溶解したものを加えた後、25%アンモニア水を用いてpHを約8に調整した。
分子内に2つ以上のヒドラジド基を有する化合物(B)(ADH)のヒドラジド基と、シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)のカルボニル基とのモル比(ヒドラジド基/カルボニル基)は、1.0であった。
【0085】
重合装置内に、スノーテックスC(SiO固形分:20%)の218.8部を加え、水分散性樹脂組成物を得た。
シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)の固形分100部に対するコロイド状シリカ(C)のSiO固形分の量は、8.1部であった。
水分散性樹脂組成物の固形分は44.9%であり、粘度(BM型粘度計、60rpm、23℃)は50mPa・sであり、pHは8.2であり、MFTは43℃であった。
【0086】
(塗料の調製)
ミルベースの調製:
容器内を、ホモディスパーを用いて約2000rpmで撹拌しながら、該容器内に、脱イオン水の67.3部、増粘剤としてナトロゾール250HR(ハーキュレース社製)の0.7部、中和剤として25%アンモニア水の0.2部、防腐剤としてアモルデンFS−14D(大和化学工業社製)の0.9部、分散剤としてポイズ521(花王社製)の3.4部、消泡剤としてSNデフォーマー371(サンノプコ社製)の0.9部、酸化チタンとしてタイペークCR−97(石原産業社製)の171.2部を順に仕込み、約2000rpmで1時間撹拌した。その後、120メッシュのテフロン(登録商標)メッシュで濾過し、合計244.6部、固形分濃度70%(酸化チタンを固形分として計算)のミルベースを得た。
【0087】
レットダウン:
別容器に、前記ミルベースの244.6部を入れ、水分散組成物の750部、造膜助剤としてCS−12(チッソ社製)の60部、粘性調整剤としてアデカノールUH−550(旭電化工業社製)の1部を加え、ホモディスパーを用いて約2000rpmで10分間撹拌した。その後、150メッシュのテフロン(登録商標)メッシュで濾過し、合計1055.6部のグロス塗料を得た。
【0088】
(塗板の製造)
塗料を約800mPa・s(BH型粘度計、20rpm、23℃)に粘度調整し、シーラー処理したフレキ板(4×50×50mm)、およびトタン板(JIS G3302、SGCC、0.5×100×300mm)にスプレーを用いて150g/mで2回吹きした後、23℃、65%RHで1週間養生し、塗板を得た。
該塗板について評価を行った。結果を表5に示す。
【0089】
〔実施例2〜14〕
(アクリル樹脂(a)の製造)
実施例1と同様にしてアクリル樹脂(a1)の水性溶液を得た。
【0090】
(アクリル樹脂エマルジョン(c)の製造)
加水分解性アルコキシシリル基含有不飽和単量体(b11)の種類、量を表1、表2に示す種類、量に変更し、アクリル樹脂(a1)の水性溶液の量を表1、表2に示す量に変更した以外は、実施例1と同様にしてアクリル樹脂エマルジョン(c1)を得た。
不飽和単量体(b1)の100部に対するアクリル樹脂(a1)の固形分の量、および不飽和単量体(b1)中の加水分解性アルコキシシリル基含有不飽和単量体(b11)(γ−MPTMSまたはγ−MPMDMS)の割合を、表1、表2に示す。
【0091】
(シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)の製造)
アクリル樹脂エマルジョン(c1)を実施例2〜14のアクリル樹脂エマルジョン(c1)に変更し、加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)の種類、量を表1、表2に示す種類、量に変更した以外は、実施例1と同様にしてシリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)を得た。
アクリル樹脂エマルジョン(c1)の固形分100部に対する加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)の量を、表1、表2に示す。
【0092】
(水分散性樹脂組成物の調製)
分子内に2つ以上のヒドラジド基を有する化合物(B)(ADH)の量を表3、表4に示す量に変更し、コロイド状シリカ(C)の種類、量を表3、表4に示す種類、量に変更した以外は、実施例1と同様にして水分散性樹脂組成物を調製した。
なお、アデライトAT−20およびシリカドール20のSiO固形分は20%であり、スノーテックスCMのSiO固形分は30%である。
【0093】
分子内に2つ以上のヒドラジド基を有する化合物(B)(ADH)のヒドラジド基と、シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)のカルボニル基とのモル比(ヒドラジド基/カルボニル基)を、表3、表4に示す。
シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)の固形分100部に対するコロイド状シリカ(C)のSiO固形分の量を、表3、表4に示す。
水分散性樹脂組成物の固形分、粘度(BM型粘度計、60rpm、23℃)、pH、MFTを、表3、表4に示す。
【0094】
(塗料の調製)
水分散性樹脂組成物を実施例2〜14の水分散性樹脂組成物に変更した以外は、実施例1と同様にして塗料を調製した。
ただし、水分散性樹脂組成物の固形分に応じて、実施例1と同量のシリコーン変性アクリル樹脂が含まれるように、水分散性樹脂組成物の量を調整した。
【0095】
(塗板の製造)
塗料を実施例2〜14の塗料に変更した以外は、実施例1と同様にして塗板を製造した。
該塗板について評価を行った。結果を表5、表6に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
【表3】

【0099】
【表4】

【0100】
【表5】

【0101】
【表6】

【0102】
〔比較例1〕
(アクリル樹脂エマルジョン(c’)の製造)
アクリル樹脂(a1)の水性溶液を加えない以外は、実施例1と同様にしてアクリル樹脂エマルジョン(c’)を得た。
不飽和単量体(b1)の100部に対するアクリル樹脂(a1)の固形分の量、および不飽和単量体(b1)中の加水分解性アルコキシシリル基含有不飽和単量体(b11)(γ−MPTMSまたはγ−MPMDMS)の割合を、表7に示す。
【0103】
(シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A’)の製造)
アクリル樹脂エマルジョン(c1)を比較例1のアクリル樹脂エマルジョン(c’)に変更した以外は、実施例1と同様にしてシリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A’)を得た。
アクリル樹脂エマルジョン(c’)の固形分100部に対する加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)の量を、表7に示す。
【0104】
(水分散性樹脂組成物の調製)
シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)を比較例1のシリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A’)に変更した以外は、実施例1と同様にして水分散性樹脂組成物を調製した。
【0105】
分子内に2つ以上のヒドラジド基を有する化合物(B)(ADH)のヒドラジド基と、シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A’)のカルボニル基とのモル比(ヒドラジド基/カルボニル基)を、表8に示す。
シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A’)の固形分100部に対するコロイド状シリカ(C)のSiO固形分の量を、表8に示す。
水分散性樹脂組成物の固形分、粘度(BM型粘度計、60rpm、23℃)、pH、MFTを、表8に示す。
【0106】
(塗料の調製)
水分散性樹脂組成物を比較例1の水分散性樹脂組成物に変更した以外は、実施例1と同様にして塗料を調製した。
ただし、水分散性樹脂組成物の固形分に応じて、実施例1と同量のシリコーン変性アクリル樹脂が含まれるように、水分散性樹脂組成物の量を調整した。
【0107】
(塗板の製造)
塗料を比較例1の塗料に変更した以外は、実施例1と同様にして塗板を製造した。
該塗板について評価を行った。結果を表9に示す。
【0108】
〔比較例2〕
(アクリル樹脂(a)の製造)
実施例1と同様にしてアクリル樹脂(a1)の水性溶液を得た。
【0109】
(アクリル樹脂エマルジョン(c)の製造)
実施例1と同様にしてアクリル樹脂エマルジョン(c)を得た。
【0110】
(シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A’)の製造)
加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)を加えない以外は、実施例1と同様にしてシリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A’)を得た。
アクリル樹脂エマルジョン(c1)の固形分100部に対する加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)の量を、表7に示す。
【0111】
(水分散性樹脂組成物の調製)
シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)を比較例2のシリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A’)に変更した以外は、実施例1と同様にして水分散性樹脂組成物を調製した。
【0112】
分子内に2つ以上のヒドラジド基を有する化合物(B)(ADH)のヒドラジド基と、シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A’)のカルボニル基とのモル比(ヒドラジド基/カルボニル基)を、表8に示す。
シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A’)の固形分100部に対するコロイド状シリカ(C)のSiO固形分の量を、表8に示す。
水分散性樹脂組成物の固形分、粘度(BM型粘度計、60rpm、23℃)、pH、MFTを、表8に示す。
【0113】
(塗料の調製)
水分散性樹脂組成物を比較例2の水分散性樹脂組成物に変更した以外は、実施例1と同様にして塗料を調製した。
ただし、水分散性樹脂組成物の固形分に応じて、実施例1と同量のシリコーン変性アクリル樹脂が含まれるように、水分散性樹脂組成物の量を調整した。
【0114】
(塗板の製造)
塗料を比較例2の塗料に変更した以外は、実施例1と同様にして塗板を製造した。
該塗板について評価を行った。結果を表9に示す。
【0115】
〔比較例3〕
(アクリル樹脂(a)の製造)
実施例1と同様にしてアクリル樹脂(a1)の水性溶液を得た。
【0116】
(アクリル樹脂エマルジョン(c)の製造)
実施例1と同様にしてアクリル樹脂エマルジョン(c)を得た。
【0117】
(シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)の製造)
実施例1と同様にしてシリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)を得た。
【0118】
(水分散性樹脂組成物の調製)
コロイド状シリカ(C)を加えない以外は、実施例1と同様にして水分散性樹脂組成物を調製した。
【0119】
分子内に2つ以上のヒドラジド基を有する化合物(B)(ADH)のヒドラジド基と、シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)のカルボニル基とのモル比(ヒドラジド基/カルボニル基)を、表8に示す。
シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)の固形分100部に対するコロイド状シリカ(C)のSiO固形分の量を、表8に示す。
水分散性樹脂組成物の固形分、粘度(BM型粘度計、60rpm、23℃)、pH、MFTを、表8に示す。
【0120】
(塗料の調製)
水分散性樹脂組成物を比較例3の水分散性樹脂組成物に変更した以外は、実施例1と同様にして塗料を調製した。
ただし、水分散性樹脂組成物の固形分に応じて、実施例1と同量のシリコーン変性アクリル樹脂が含まれるように、水分散性樹脂組成物の量を調整した。
【0121】
(塗板の製造)
塗料を比較例3の塗料に変更した以外は、実施例1と同様にして塗板を製造した。
該塗板について評価を行った。結果を表9に示す。
【0122】
〔比較例4〕
(アクリル樹脂(a)の製造)
実施例1と同様にしてアクリル樹脂(a1)の水性溶液を得た。
【0123】
(アクリル樹脂エマルジョン(c)の製造)
実施例1と同様にしてアクリル樹脂エマルジョン(c)を得た。
【0124】
(シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)の製造)
実施例1と同様にしてシリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)を得た。
【0125】
(水分散性樹脂組成物の調製)
分子内に2つ以上のヒドラジド基を有する化合物(B)(ADH)を加えない以外は、実施例1と同様にして水分散性樹脂組成物を調製した。
【0126】
分子内に2つ以上のヒドラジド基を有する化合物(B)(ADH)のヒドラジド基と、シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)のカルボニル基とのモル比(ヒドラジド基/カルボニル基)を、表8に示す。
シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)の固形分100部に対するコロイド状シリカ(C)のSiO固形分の量を、表8に示す。
水分散性樹脂組成物の固形分、粘度(BM型粘度計、60rpm、23℃)、pH、MFTを、表8に示す。
【0127】
(塗料の調製)
水分散性樹脂組成物を比較例4の水分散性樹脂組成物に変更した以外は、実施例1と同様にして塗料を調製した。
ただし、水分散性樹脂組成物の固形分に応じて、実施例1と同量のシリコーン変性アクリル樹脂が含まれるように、水分散性樹脂組成物の量を調整した。
【0128】
(塗板の製造)
塗料を比較例4の塗料に変更した以外は、実施例1と同様にして塗板を製造した。
該塗板について評価を行った。結果を表9に示す。
【0129】
【表7】

【0130】
【表8】

【0131】
【表9】

【0132】
以上の結果から、本発明の水分散性樹脂組成物を用いた塗料は、塗膜の耐候性、低汚染性に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の水分散性樹脂組成物および塗料は、建築塗料、サイジングボード用塗料、モルタル被服材等の様々なコーティング剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)と、
分子内に2つ以上のヒドラジド基を有する化合物(B)と、
コロイド状シリカ(C)と
を含む、水分散性樹脂組成物。
シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A):カルボニル基および不飽和基を有するアクリル樹脂(a)の存在下で、不飽和単量体(b)を乳化重合して得られたアクリル樹脂エマルジョン(c)に、加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)を加え、重合して得られたエマルジョン。
【請求項2】
前記アクリル樹脂(a)が、下記アクリル樹脂(a1)であり、
前記不飽和単量体(b)が、下記不飽和単量体(b1)であり、
前記アクリル樹脂エマルジョン(c)が、下記アクリル樹脂エマルジョン(c1)である、請求項1に記載の水分散性樹脂組成物。
アクリル樹脂(a1):有機溶剤中で、カルボニル基含有不飽和単量体およびカルボキシル基含有不飽和単量体を含む不飽和単量体をラジカル重合してアクリル樹脂(a1’)の溶液を得て、
該アクリル樹脂(a1’)の溶液に塩基性化合物を加えた後、アクリル樹脂(a1’)にエポキシ基含有不飽和単量体を付加させてアクリル樹脂(a1)の溶液を得て、
該アクリル樹脂(a1)の溶液に水を加えて得られた水性溶液または水性分散液に含まれるアクリル樹脂。
不飽和単量体(b1):加水分解性アルコキシシリル基含有不飽和単量体(b11)を含む不飽和単量体。
アクリル樹脂エマルジョン(c1):アクリル樹脂(a1)の存在下で、不飽和単量体(b1)を乳化重合して得られたエマルジョン。
【請求項3】
前記アクリル樹脂(a)の量が、不飽和単量体(b)100質量部に対して、0.1〜5質量部である、請求項1または2に記載の水分散性樹脂組成物。
【請求項4】
加水分解性アルコキシシリル基含有不飽和単量体(b11)の割合が、不飽和単量体(b1)100質量%のうち、0.1〜2質量%である、請求項2に記載の水分散性樹脂組成物。
【請求項5】
加水分解性アルコキシシリル基含有アルキルシリケート化合物(d)の量が、アクリル樹脂エマルジョン(c)の固形分100質量部に対して、1〜20質量部である、請求項1〜4のいずれかに記載の水分散性樹脂組成物。
【請求項6】
分子内に2つ以上のヒドラジド基を有する化合物(B)のヒドラジド基と、シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)のカルボニル基とのモル比(ヒドラジド基/カルボニル基)が、0.5〜1.5である、請求項1〜5のいずれかに記載の水分散性樹脂組成物。
【請求項7】
コロイド状シリカ(C)のSiO固形分の量が、シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(A)の固形分100質量部に対して、3〜15質量部である、請求項1〜6のいずれかに記載の水分散性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の水分散性樹脂組成物を含む塗料。

【公開番号】特開2009−161675(P2009−161675A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1512(P2008−1512)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【Fターム(参考)】