説明

水分散性顔料およびその顔料水分散液

【課題】水およびイオン性水溶液に対して容易に分散され、長時間水分散安定性に優れ、被覆安定性も優れる水分散性顔料を提供し、併せてその水分散性顔料を含有する顔料水分散液水を提供する。
【解決手段】顔料粉体に下記一般式(1)で示されるアルコキシシラン化合物と下記一般式(2)で示されるアルコキシシラン化合物とを同時に表面処理する。
【化4】


(式中、nとkは1以上の整数、mは1〜3の整数であり、xとyはそれぞれ1〜3の整数であり、x+y=4である。また、R,Rは炭素数が1〜10の炭化水素基である。)
Si(OR ・・・(2)
(Rは炭素数が1以上の飽和炭化水素基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メイクアップ化粧料、サンスクリーン化粧料のような水性もしくはエマルジョン系化粧料や、濁り性の入浴剤、水性インキ、水性塗料等の水分散性顔料粉体製品に用いられる水分散性顔料とその水分散性顔料を含有する顔料水分散液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属酸化物のような無機顔料は、その表面電位にもよるが、水との親和性が高い。しかし、水中で顔料粒子同士が表面活性により凝集し、すぐに沈降してしまう。水との親和性をさらに上げるため、顔料粒子表面をアルミナやシリカで処理することも知られているが、このような処理でも凝集、沈降は抑えられない。また、一部の有機顔料やカーボンでは疎水性が強く、水に容易に分散されないため、水分散液を調製することはきわめて難しい。カーボンではその親水性を上げるため、グラフト反応によりその表面に水酸基やカルボキシル基を導入する試みが行われたり、あるいは、プラズマ照射により水酸基のような親水性の官能基を導入する試みが行われている。
【0003】
一方、白濁性の入浴剤に使用される酸化チタンにおいては、例えば、特許文献1に示されるように、アシル化アミノ酸系界面活性剤で被覆されたもの、特許文献2に示されるように、ポリエチレングリコールのような分散性非イオン界面活性剤と脂肪酸石ケンで被覆されたものが提案されている。しかしながら、入浴剤のように使用される時間が短いところでは分散性はよいが、長期間の分散安定性が得られなかったり、被覆剤と被覆される顔料との間に化学結合が存在しないため、被覆安定性に優れていないという問題点がある。
【0004】
また、特許文献3においては、下記一般式(1)にて示されるアルコキシシラン単体で表面処理された顔料が提案されているが、このアルコキシシラン単体で表面処理された顔料では、水に対する初期分散性は良好であるが、長期間の分散安定性が得られないという問題点がある。
【化1】

(式中、nとkは1以上の整数、mは1〜3の整数であり、xとyはそれぞれ1〜3の整数であり、x+y=4である。また、R,Rは炭素数が1〜10の炭化水素基である。)
【0005】
以上のように、顔料を水に分散させようとする場合、金属酸化物の場合には、一般的には親水性を有しているが、その表面電位にもよるが、一般的に中性領域に等電点があるため凝集し易い。このため、等電点が酸性側にあるシリカやアルミナで被覆し、水分散性を上げる技術が一般的であるが、その表面活性のために水分散性が十分ではない。また、カーボンの場合には、グラフト反応あるいはプラズマ照射により、水酸基やカルボキシル基を導入し、水分散性を高めることが可能であるが、これらの方法は工業的にスケールアップが困難で、コスト高になるという問題点がある。一方、白濁入浴剤に用いられるように酸化チタンをアシル化アミノ酸系界面活性剤で被覆したり、ポリエチレングリコールのような水分散性非イオン界面活性剤と脂肪酸石ケンで被覆する方法や、前記一般式(1)のようなアルコキシシラン単体で表面処理する方法では、長時間の水分散安定性が良くなかったり、被覆安定性が優れず、水性の化粧料やインキ、塗料には適さないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平7−17494号公報
【特許文献2】特開平3−294220号公報
【特許文献3】特開2003−26958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたもので、水およびイオン性水溶液に対して容易に分散され、長時間水分散安定性に優れ、顔料との化合結合によって表面被覆することによって被覆安定性も優れる水分散性顔料を提供し、併せてその水分散性顔料を含有する顔料水分散液を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、第1発明による水分散性顔料は、
顔料粉体に下記一般式(1)で示されるアルコキシシラン化合物と下記一般式(2)で示されるアルコキシシラン化合物とを同時に表面処理してなることを特徴とするものである。
【化2】

(式中、nとkは1以上の整数、mは1〜3の整数であり、xとyはそれぞれ1〜3の整数であり、x+y=4である。また、R,Rは炭素数が1〜10の炭化水素基である。)
Si(OR ・・・(2)
(Rは炭素数が1以上の飽和炭化水素基を示す。)
【0009】
また、第2発明による水分散液は、第1発明による水分散性顔料を含有することを特徴とするものである。
【0010】
前記第1発明において、前記一般式(1)(2)に示されるアルコキシシラン化合物の顔料粉体への表面処理量は、その表面処理される顔料粉体の粒子径にもよるが、50質量%以下が好ましく、より好ましくは、0.5〜50質量%である。0.5質量%未満であると、顔料粉体によって十分な水分散性が得られない場合があり、また、50質量%を超えると、アルコキシシラン化合物同士の反応による副生成物生成が起こりやすくなるため好ましくない。また、前記第2発明において、第1発明のアルコキシシラン化合物で表面処理された顔料粉体の水分散液中の濃度は80質量%以下が好ましい。80質量%を超えると分散液の粘度が著しく上昇するためハンドリングが困難となる。一方、濃度の下限については用途に応じて設定されるべきであり、特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0011】
第1発明に係る水分散性顔料によれば、アルコキシシラン基部分が顔料粉体と反応し、顔料粉体表面に一般式(1)の有するポリエチレングリコール基が導入されるので、水との優れた親和性を示し、また、この表面処理顔料粉体を水分散液としたとき、その水分散液は凝集沈降を起こしにくい安定な分散体となる。また、本発明による表面処理では、上記一般式(1)(2)のアルコキシシラン化合物は顔料粉体表面と反応し固着されるため、被覆安定性がきわめて良好である。
【0012】
一方、第2発明に係る水分散液によれば、この水分散液を調製する際に、様々な分散機を利用することができ、分散安定性の優れた分散体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明による水分散性顔料およびその顔料水分散液の具体的な実施の形態について説明する。
【0014】
本発明による水分散性顔料において、上記一般式(1)にて示されるアルコキシシラン化合物としては、メトキシPEG−10プロピルトリメトキシシランが挙げられる。
また、上記一般式(2)にて示されるアルコキシシラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソブトキシシラン等が挙げられる。
【0015】
これらのアルコキシシラン化合物を顔料表面に被覆処理する方法としては、次のような方法がある。
まず、顔料粉体表面に被覆されるべき所定量のアルコキシシラン化合物を濃度が約1〜20質量%となるように適当な溶剤に溶解する。この処理剤溶液中に溶剤に対して10質量%以上のアルカリ性水溶液を加えて撹拌した後、これを一般的なミキサー(例えばヘンシェルミキサーや撹拌反応装置)に入れ、その後被覆されるべき顔料粉体を投入し、一時間以上撹拌する。この後、撹拌しながらミキサーを必要に応じて加熱減圧して溶剤を除去し、場合によっては溶剤を濾過除去して熱処理を行い、粉砕して目的とする水分散性顔料を得る。ここで用いられる溶剤としては、水、イソプロピルアルコール、アセトン、塩化メチレン等のアルコキシシランを溶解しうる極性有機溶媒が好ましい。また、アルカリとしては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム等の化粧品製造で使用されるアルカリが使用可能である。
こうして水分散性顔料粉体の表面には、前記一般式(1)(2)にて示されるアルコキシシランが被覆される。
【0016】
ここで、前記一般式(1)(2)に示されるアルコキシシラン化合物の顔料粉体への表面処理量は、その表面処理される顔料粉体の粒子径にもよるが、50質量%以下が好ましく、より好ましくは、0.5〜50質量%である。0.5質量%未満であると、顔料粉体によって十分な水分散性が得られない場合もあり、また、50質量%を超えると、アルコキシシラン化合物同士の反応による副生成物生成が起こりやすくなるため好ましくない。
【0017】
本発明により表面被覆される顔料粉体としては、従来公知のものが使用でき、その形状(球状、棒状、針状、板状、不定形状、鱗片状、紡錘状等)や粒子径(煙霧状、微粒子、顔料級等)、粒子構造(多孔質、無孔質等)を問わず、いずれのものも使用することができ、例えば無機粉体、有機粉体、界面活性剤金属塩粉体、有色顔料、パール顔料、金属粉末顔料等が挙げられる。
具体的には、無機粉体としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ボロン、シリカ等が挙げられる。
また、有機粉体としては、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、シリコーンレジンパウダー、シリコーンエラストマー粉体、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、セルロース、シルクパウダー、ナイロンパウダー、12ナイロン、6ナイロン、アクリルパウダー、アクリルエラストマー、スチレン・アクリル酸共重合体、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネイト樹脂、微結晶繊維粉体、デンプン末、ラウロイルリジン等が挙げられる。
界面活性剤金属塩粉体(金属石鹸)としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、セチルリン酸亜鉛、セチルリン酸カルシウム、セチルリン酸亜鉛ナトリウム等が挙げられる。
また、有色顔料としては、酸化鉄、水酸化鉄、チタン酸鉄の無機赤色顔料、γ−酸化鉄等の無機褐色系顔料、黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色顔料、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色顔料、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の無機緑色顔料、紺青、群青等の無機青色系顔料、微粒子酸化チタン、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化亜鉛等の微粒子粉体、タール系色素をレーキ化したもの、天然色素をレーキ化したもの、及びこれらの粉体を複合化した合成樹脂粉体等が挙げられる。
パール顔料としては、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母等が挙げられる。
金属粉末顔料としては、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー、ステンレスパウダー等から選ばれる粉体が挙げられる。
また、タール色素としては、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色206号、橙色207号等が挙げられる。
天然色素としては、カルミン酸、ラッカイン酸、カルサミン、ブラジリン、クロシン等から選ばれる顔料が挙げられる。
【0018】
本発明の水分散液は、ディスパーやホモジナイザーのような一般的な分散機やビーズミルのような分散機を用いて調製することができる。さらに好ましくは、分散体を調製する際に、適当な分散剤、例えば非イオン界面活性剤のポリオキシエチレンラウリルエーテル(以下、POE(8)ラウリルエーテルのように記す。)、POE(20)セチルエーテル、POE(6)ステアリルエーテル、POE(30)オレイルエーテル、POE(20)ソルビタンモノラウレート、POE(20)ソルビタンモノパルミテート、POE(20)ソルビタントリステアレート、POE(20)ソルビタンモノオレエート、POE(20)ソルビタンモノステアレート、デカグリセリルモノラウレート、POE(40)硬化ヒマシ油等のほか、POE(10)オクチルフェノールエーテル、POE(35)ノニルフェノールエーテル、ポリエチレングリコール、オキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー(エチレンオキシド60%平均分子量〜5,400)等が0.1〜30質量%配合された場合、さらに安定な分散液を得ることができる。
【0019】
なお、化粧料に配合される前記水分散性顔料の配合量としては、化粧料の総量に対して0.1〜100質量%が好ましく、より好ましくは1〜60質量%である。また、化粧料の剤型としては、二層状、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、ジェル状、スプレー、ムース状等、従来公知の剤型を使用することができる。特に、サンスクリーン剤の用途には、二層状、油中水型エマルジョン、ジェル状が好ましく、また、ファンデーションの用途には、固形エマルジョン状、ジェル状、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、ムース状等が好ましい。
【実施例】
【0020】
次に、本発明による水分散性顔料およびその顔料水分散液の具体的な実施例について説明する。なお、本発明は、以下に述べる実施例に限定されるものではない。
【0021】
(製造実施例1)
羽根付撹拌反応装置に酸化チタン1kgに対して、上記一般式(1)のアルコキシシランとしてのメトキシPEG−10プロピルトリメトキシシラン2質量%、上記一般式(2)のアルコキシシランとしてのテトラエトキシシラン7質量%、28%アンモニア水15質量%を、イソプロピルアルコール1kg中に加え、混合溶液を作製した。次に、この混合溶液を、酸化チタン1kgが撹拌されている撹拌装置中に投入し、4時間撹拌した。この後、スラリーを濾過して溶剤を除去し、残った顔料ケーキを80℃で加熱処理して溶剤を完全除去した後、アトマイザーで粉砕して前記シラン化合物で表面処理された顔料を得た。また、酸化チタンと同様にして、表面処理された微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、黄色酸化鉄、およびベンガラを得た。
【0022】
(製造実施例2)
羽根付撹拌反応装置に酸化チタン1kgに対して、上記一般式(1)のアルコキシシランとしてのメトキシPEG−10プロピルトリメトキシシラン2質量%、上記一般式(2)のアルコキシシランとしてのテトラエトキシシラン18質量%、28%アンモニア水15質量%を、イソプロピルアルコール1kg中に加え、混合溶液を作製した。次に、この混合溶液を、酸化チタン1kgが撹拌されている撹拌装置中に投入し、4時間撹拌した。この後、スラリーを濾過して溶剤を除去し、残った顔料ケーキを80℃で加熱処理して溶剤を完全除去した後、アトマイザーで粉砕して前記シラン化合物で表面処理された顔料を得た。また、酸化チタンと同様にして、表面処理された微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、黄色酸化鉄、およびベンガラを得た。
【0023】
(製造比較例1)
羽根付撹拌反応装置に酸化チタン1kgに対して、上記一般式(1)のアルコキシシランとしてのメトキシPEG−10プロピルトリメトキシシラン2質量%を、イソプロピルアルコール1kg中に加え、混合溶液を作製した。次に、この混合溶液を、酸化チタン1kgが撹拌されている撹拌装置中に投入し、4時間撹拌した。この後、スラリーを濾過して溶剤を除去し、残った顔料ケーキを80℃で加熱処理して溶剤を完全除去した後、アトマイザーで粉砕して前記シラン化合物で表面処理された顔料を得た。また、酸化チタンと同様にして、表面処理された微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、黄色酸化鉄、およびベンガラを得た。
【0024】
(製造比較例2)
羽根付撹拌反応装置に酸化チタン1kgに対して、上記一般式(2)のアルコキシシランとしてのテトラエトキシシラン7質量%、28%アンモニア水15質量%を、イソプロピルアルコール1kg中に加え、混合溶液を作製した。次に、この混合溶液を、酸化チタン1kgが撹拌されている撹拌装置中に投入し、4時間撹拌した。この後、スラリーを濾過して溶剤を除去し、残った顔料ケーキを80℃で加熱処理して溶剤を完全除去した後、アトマイザーで粉砕して前記シラン化合物で表面処理された顔料を得た。また、酸化チタンと同様にして、表面処理された微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、黄色酸化鉄、およびベンガラを得た。
【0025】
(製造比較例3)
羽根付撹拌反応装置に酸化チタン1kgに対して、上記一般式(2)のアルコキシシランとしてのテトラエトキシシラン18質量%、28%アンモニア水15質量%を、イソプロピルアルコール1kg中に加え、混合溶液を作製した。次に、この混合溶液を、酸化チタン1kgが撹拌されている撹拌装置中に投入し、4時間撹拌した。この後、スラリーを濾過して溶剤を除去し、残った顔料ケーキを80℃で加熱処理して溶剤を完全除去した後、アトマイザーで粉砕して前記シラン化合物で表面処理された顔料を得た。また、酸化チタンと同様にして、表面処理された微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、黄色酸化鉄、およびベンガラを得た。
【0026】
(実施例1)
製造実施例1で作製した各シラン化合物表面処理顔料2質量部を精製水98質量部中に投入し、ホモミキサーにて混合撹拌して、顔料水分散液を得た。この後、顔料水分散液を試験管に移して静置し、経時的な分散挙動を目視により評価した。
【0027】
(実施例2)
製造実施例2で作製した各シラン化合物表面処理顔料2質量部を精製水98質量部中に投入し、ホモミキサーにて混合撹拌して、顔料水分散液を得た。この後、顔料水分散液を試験管に移して静置し、経時的な分散挙動を目視により評価した。
【0028】
(比較例1)
製造比較例1で作製した各シラン化合物表面処理顔料2質量部を精製水98質量部中に投入し、ホモミキサーにて混合撹拌して、顔料水分散液を得た。この後、顔料水分散液を試験管に移して静置し、経時的な分散挙動を目視により評価した。
【0029】
(比較例2)
製造比較例2で作製した各シラン化合物表面処理顔料2質量部を精製水98質量部中に投入し、ホモミキサーにて混合撹拌して、顔料水分散液を得た。この後、顔料水分散液を試験管に移して静置し、経時的な分散挙動を目視により評価した。
【0030】
(比較例3)
製造比較例3で作製した各シラン化合物表面処理顔料2質量部を精製水98質量部中に投入し、ホモミキサーにて混合撹拌して、顔料水分散液を得た。この後、顔料水分散液を試験管に移して静置し、経時的な分散挙動を目視により評価した。
【0031】
(比較例4)
製造実施例1〜2および製造比較例1〜3で使用した未処理顔料2質量部を精製水98質量部中に投入し、ホモミキサーにて混合撹拌して、顔料水分散液を得た。この後、顔料水分散液を試験管に移して静置し、経時的な分散挙動を目視により評価した。
【0032】
表1に、上記実施例1,2および比較例1〜4の、ホモミキサーによる混合撹拌後24時間経過後の分散挙動観察結果が示されている。
【表1】

【0033】
表1に示される結果から明らかなように、一般式(1)および(2)のアルコキシシランを同時に被覆処理した顔料に関しては、どの顔料についても良好な水分散性を示していることがわかる(実施例1,2参照)。一方、一般式(1)のアルコキシシランのみを被覆処理した顔料に関しては、良好な水分散性を示す顔料および、分散後1時間以内に沈降する顔料の両方が確認された(比較例1参照)。また、一般式(2)のアルコキシシランのみを被覆処理した顔料および、未被覆処理顔料に関しては、どの顔料についても分散後に1時間以内に沈降した(比較例2〜4参照)。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明による水分散性顔料とその水分散性顔料を含有する顔料水分散液は、分散性の非常に高いメイクアップ化粧料、サンスクリーン化粧料のような水性あるいはエマルジョン系化粧料、濁り性の入浴剤、あるいは水性インキ、水性塗料等の水分散性顔料粉体製品に適用して好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料粉体に下記一般式(1)で示されるアルコキシシラン化合物と下記一般式(2)で示されるアルコキシシラン化合物とを同時に表面処理してなることを特徴とする水分散性顔料。
【化3】

(式中、nとkは1以上の整数、mは1〜3の整数であり、xとyはそれぞれ1〜3の整数であり、x+y=4である。また、R,Rは炭素数が1〜10の炭化水素基である。)
Si(OR ・・・(2)
(Rは炭素数が1以上の飽和炭化水素基を示す。)
【請求項2】
請求項1に記載の水分散性顔料を含有することを特徴とする水分散液。

【公開番号】特開2011−105832(P2011−105832A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261440(P2009−261440)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(391015373)大東化成工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】