説明

水分架橋型ポリマー性組成物

本発明は、シロキサン-官能性ポリオレフィンポリマー、および、熱処理済みカーボンブラックを含む、水分架橋型ポリマー性組成物である。本発明はまた、水分架橋型ポリマー性組成物から製造されたコーティング、ならびに、かかるコーティングを電線またはケーブルに対し適用して製造した、電線・ケーブル構造物も含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線・ケーブル用途、特に低電圧屋外用途、および、中・高電圧半導電型シールド用途に有用な、水分架橋型ポリマー性組成物(moisture-crosslinkable polymeric compositions)に関する。
【背景技術】
【0002】
水分架橋は、過酸化物または放射線架橋よりも多くの利点を有する。しかし、現存する水分架橋型ポリマー性組成物の欠点の1つは、押出工程における早発性の架橋(またはスコーチング)である。この早発性架橋は、生産物の平滑性および品質を均一にすることに対する妨げとなる。それゆえ、早発性架橋を防止する水分架橋型ポリマー性組成物が必要とされている。
【0003】
水分架橋型組成物は、(a)ビニルアルコキシシランをエチレンホモポリマーへグラフトし、または、(b)ビニルアルコキシシランをエチレンと重合することにより製造可能である。シラン架橋化学反応が水分架橋型組成物に適用される場合は、水分との反応によって、ペンダントアルコキシシランが加水分解され、続いて、安定、架橋、シロキサン構造へと縮合すると考えられる。現存する水分架橋型ポリマー性組成物では、早発性架橋が充分に防止されない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
適切な水分架橋型ポリマー性組成物が入手可能であれば、従来の熱可塑性樹脂加工機器を用いることができ、設備投資が低額となり、必要な生産場所がより狭くなり、そして、用途の種類の自由度がより高くなる。重要なことに、早発性架橋が防止されると、従来の押出機器表面へのポリマーゲルの接着が防止され、機器の連続操作が容易となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、シロキサン-官能性ポリオレフィンポリマー、および、熱処理カーボンブラックを含む、水分架橋型ポリマー性組成物である。本発明はまた、水分架橋型ポリマー性組成物から製造されたコーティング、ならびに、電線またはケーブルに対してかかる被覆を施して製造する、電線・ケーブル構造物(construction)も含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本明細書に開示の情報を用いて、当業者は本発明の水分架橋型ポリマー性組成物から製造可能な適切な電線・ケーブル構造体類を容易に特定可能である。
【0007】
本発明の水分架橋型ポリマー性組成物は、シロキサン-官能性ポリオレフィンポリマー、および、熱処理カーボンブラックを含む。
【0008】
適切なシロキサン官能性ポリオレフィンポリマー類としては、(a)シラン化合物でグラフトされたエチレンホモポリマー類、および(b)シラン化合物とエチレンの重合生成物が挙げられる。ビニルアルコキシシランは、エチレンホモポリマーへグラフトするのに適するシラン化合物である。重合生成物は、コポリマー類およびターポリマー類を含む。コポリマーの例は、エチレンとビニルアルコキシシランのコポリマーである。ターポリマーの例は、エチレン、不飽和エステル、および、ビニルアルコキシシランのターポリマーである。好適な不飽和エステル類は、4から20の炭素原子を有する。
【0009】
好適には、前記熱処理カーボンブラックは、最低でも400℃の温度において、反応器後熱処理された(post reactor thermally treated)カーボンブラックである。本発明のカーボンブラックは、ファーネスブラック、サーマルブラック、ケッチェン(Ketjen)ブラック、アセチレンブラック、または、ASTM N110、N351、N472、もしくは、N550に記載のいずれのカーボンブラックでもよい。さらに、好適には、前記熱処理済みカーボンブラックの揮発減量は、窒素雰囲気下、900℃において、1.0重量%より小さい。より好適には、前記熱処理済みカーボンブラックの揮発減量は、窒素雰囲気下、900℃において、0.1重量%より小さい。
【0010】
さらに、本組成物は、酸化防止剤類、滑剤類、アンチブロッキング剤類、触媒類、充填剤類、および、加工助剤類のような、他の添加剤類を含有してもよい。
【0011】
別の実施態様において、本発明は、このシロキサン-官能性ポリオレフィンポリマーおよび熱処理カーボンブラックの水分架橋型ポリマー性組成物から製造した被覆である。さらに他の実施態様において、本発明は、この被覆を電線またはケーブルに対し施して製造した、電線・ケーブル構造体である。
【実施例】
【0012】
以下は、本発明を説明する非制限的な実施例である。
【0013】
実施例1〜12:カーボンブラックマスターバッチ比較物
カーボンブラックマスターバッチを、6つの市販のカーボンブラック原料を用いて製造した。
【0014】
市販のカーボンブラック原料は、(1)CC1150 U、(2)CSX362、(3)M8、 (4)M5、(5)M2、および、(6)BP3700を含む。CC1150 UはColumbian Chemicalsより入手可能であるが、他のカーボンブラック原料はCabot Corporationから入手可能である。各カーボンブラックに関して、材料、ASTM D1510に従い測定したヨウ素吸収(mg/g)、および、ASTM D2414に従い測定したDBP吸収(cc/100g)を示す仕様書が、供給者によって提供されていた。各カーボンブラックの水分含有量を、カールフィッシャー滴定法によって測定した。
【0015】
【表1】

【0016】
熱処理カーボンブラックの水分含有量は、200ppmより低いであろうことが期待される。
【0017】
各カーボンブラックマスターバッチを、(1)アクリル酸エチル含有量が18重量%であり、メルトインデックスが20g/10分である、エチレン・アクリル酸エチルコポリマー(EEA)、(2)カーボンブラック、(3)室温型硬化(高硬化速度)縮合触媒(ambient cure (fast cure speed) condensation catalyst)、ならびに、(4)酸化防止剤混合物を用いて製造した。マスターバッチは、以下の重量パーセントで製造した。(1)47%EAA、(2)45%カーボンブラック、(3)4%縮合触媒、および、(4)4%酸化防止剤混合物。
【0018】
【表2】

【0019】
熱処理カーボンブラックから製造された、または熱処理済みカーボンブラックを含むカーボンブラックマスターバッチの水分含有量は、200ppmより低いであろうことが期待される。
【0020】
実施例13〜19:押出ケーブル類
各カーボンブラックマスターバッチを、市販のシラン−リアクター(silane-reactor)コポリマーと、マスターバッチ5.8対シラン−エチレンコポリマー94.2の比率でドライブレンドした。ブレンドされた組成物を、ブラベンダー押出機を用いて14AWG銅線上に押出し、30milの肉厚を得た。各押出ケーブル(実施例13〜18)の表面は粗く、早発性の架橋によるスコーチを示していた。
【0021】
対象ケーブルを、The Dow Chemical Companyから SI−LINK(商標)PEモイスチャーキュアとして市販されている、非室温硬化(低硬化速度)3成分、シラン架橋システム(実施例19)を用いて押出した。対象ケーブルは、押出後に平滑な表面を示し、この押出条件が、早発性の硬化を伴わない平滑な表面を製造可能であることを実証した。
【0022】
熱処理カーボンブラックから製造される、または、熱処理カーボンブラックを含む室温硬化型(高硬化速度)水分硬化ポリマー性組成物は、押出後に平滑な表面を示すであろうことが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)シロキサン官能性ポリオレフィンポリマー、および、
b)熱処理カーボンブラック、
を含む、水分架橋型ポリマー性組成物
【請求項2】
前記シロキサン官能性ポリオレフィンポリマーが、シラン化合物がグラフトされたエチレンホモポリマーである、請求項1の水分架橋型ポリマー性組成物。
【請求項3】
前記シラン化合物が、ビニルアルコキシシランである、請求項2の水分架橋型ポリマー性組成物。
【請求項4】
前記シロキサン官能性ポリオレフィンポリマーが、シラン化合物とエチレンの重合生成物である、請求項1の水分架橋型ポリマー性組成物。
【請求項5】
前記シロキサン官能性ポリオレフィンポリマーが、エチレンとビニルアルコキシシランのコポリマーである、請求項4の水分架橋型ポリマー性組成物。
【請求項6】
前記シロキサン官能性ポリオレフィンポリマーが、エチレン、不飽和エステル、および、ビニルアルコキシシランのターポリマーである、請求項4の水分架橋型ポリマー性組成物。
【請求項7】
前記シラン化合物が、ビニルアルコキシシランである、請求項4の水分架橋型ポリマー性組成物。
【請求項8】
前記熱処理カーボンブラックが、最低でも400℃の温度において、反応器後熱処理されたカーボンブラックである、請求項1の水分架橋型ポリマー性組成物。
【請求項9】
前記カーボンブラックが、ファーネスブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック、および、アセチレンブラックからなる群より選択される、請求項8の水分架橋型ポリマー性組成物。
【請求項10】
前記熱処理カーボンブラックの揮発減量が、窒素雰囲気下、900℃において、1.0重量%より小さい、請求項1の水分架橋型ポリマー性組成物。
【請求項11】
前記熱処理カーボンブラックの揮発減量が、窒素雰囲気下、900℃において、0.1重量%より小さい、請求項1の水分架橋型ポリマー性組成物。
【請求項12】
請求項1の水分架橋型ポリマー性組成物より製造されるコーティング。
【請求項13】
電線またはケーブルに対して請求項12の被覆を施して製造される、電線・ケーブル構造物。

【公表番号】特表2006−518797(P2006−518797A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503606(P2006−503606)
【出願日】平成16年2月18日(2004.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/004463
【国際公開番号】WO2004/076548
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】